有価証券報告書-第21期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表を作成するに当たり、重要である会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりであります。
この連結財務諸表の作成において、損益または資産の状況に影響を与える見積り、判断は、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいた合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
① 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産を計上しており、その繰延税金資産の回収可能性がないと考えられる金額については、その資産の帳簿価額を調整するため評価性引当額を設定しております。繰延税金資産の評価は将来の課税所得の見積りと税務上の実現可能と見込まれる計画に依拠します。仮に将来の市場環境や経営成績の悪化により将来の課税所得が見込みを下回る場合は繰延税金資産の金額が大きく影響を受ける可能性があります。
② 貸倒引当金
当社グループは、営業債権及び利息を含む金融債権について、顧客の返済能力を考慮し、回収不能額を見積もった上で、貸倒引当金を計上しています。また、特定の顧客について債務の返済が困難であることが明らかになった場合には、債権の担保資産の価格を考慮の上、個別に引当を行います。貸倒引当金の金額に重大な影響を及ぼす状況としては、国内及び主な海外市場の経済状況の悪化や医療関係諸制度の変更に伴い顧客の財政状態が悪化した場合や、債権の担保となっている顧客の資産価値が下落した場合が考えられます。
③ 投資有価証券
当社グループは、毎期末に投資有価証券の評価の見直しを行っております。
その他有価証券のうち時価のあるものについては、決算期末日の市場価格等に基づく時価法によっております(評価差額は、全部純資産直入法により処理し、時価と比較する取得原価は移動平均法により算定)。時価が著しく下落したときは、その回復可能性につきまして、合理的な判断を行うようにしております。
また、その他有価証券のうち時価のないものについては、移動平均法による原価法によっております。実質価額が著しく低下したときは、事業計画等によりその回復可能性につきまして、合理的な判断を行うようにしております。
④ 収益認識
SMO事業収入は、治験の実態等を鑑み、治験症例単位ごとの業務終了に基づく検収基準により計上しております。
(2) 経営成績
医療業界は世界的に治療技術の発展が目覚ましい状況が続いています。遺伝子治療は免疫不全症・血液系疾患・代謝異常症などの難治性疾患に対する革新的な治療法として注目され、再生医療分野では様々な幹細胞から、再生医療等製品が創出されることが期待されています。そのような世界的な潮流の中で、当社グループは、新しい医療技術・医薬品の開発に貢献すべく、遺伝子治療・再生医療の領域において技術開発を推進するとともに、医薬品等の臨床開発を多角的に支援しています。
創業以来の中核事業であるSMO(Site Management Organization:治験施設支援機関)事業におきましては、製薬企業の医薬品の開発ニーズが、がんやその他の希少疾患に変化してきているとともに、医薬品・医療機器等の開発のグローバル化、開発期間の短縮化、ならびに開発手法の変化等により臨床試験に対するニーズも多様化してきています。このような市場環境の変化に対応すべく、CRC(臨床研究コーディネーター)の質を高めるため、教育研修制度や社内認定制度等の充実を図るとともに、積極的なM&Aや業務提携により、高度専門医療機関を中心とした医療機関との提携を広げています。その一環として当社グループは、平成29年6月に㈱エシックをグループに迎えいれました。これらにより、地域中核病院との提携やがん・腎疾患領域を中心として支援領域が拡大しています。
CRO(Contract Research Organization:開発業務受託機関)事業では、オーストラリアを核として、欧米や日本を含むアジア・オセアニア地域の製薬企業等の医薬品開発を支援しています。平成28年12月に子会社化し、平成29年8月に完全子会社となったCMAX CLINICAL RESEARCH PTY LTDは南オーストラリア州において臨床試験実施施設を運営しており、グローバルな大規模臨床試験や被験薬をヒトに対して世界で初めて投与するFIH(First In Human)試験を含む早期臨床試験等の支援を行っています。CMAX CLINICAL RESEARCH PTY LTDの豊富な実績とサービスの品質は国際的に高く評価されており、当社グループのSMO事業やCRO事業の更なる品質強化と事業発展を目指した取り組みを進めています。
先端医療事業では、臨床用および研究用のiPS細胞作製キットCytoTune®-iPSを全世界で販売するとともに、茨城県つくば市にあるGMP(Good Manufacturing Practice:医薬品等の製造管理および品質管理に関する基準)ベクター製造施設・CPC(Cell Processing Center:細胞培養加工施設)において、医薬品製造受託機関として、臨床用ベクター・遺伝子治療製剤・再生医療等製品を受託製造しています。また、基盤技術として持つセンダイウイルスベクター等のベクター技術を用いた遺伝子治療製剤等の研究開発を進めています。
メディカルサポート事業においては、クリニックモールの開設・運営を通じて患者様の利便を図り通院の負担を軽減する医療環境の提案を行っています。医療機関・薬局などに対しては、新規開業のための診療圏の調査や物件紹介等を行うことに加え、グループの知見を活かし、クリニックの開業を目指す医師を強力にサポートしています。
当社グループが数年に渡り実施してきた積極的なM&A、海外への事業展開、設備整備ならびに人材育成等の戦略的な投資が成果として収益に現れてくるとともに、事業発展に向けた基盤が整ってきています。今後の更なる発展に向け、SMO事業およびCRO事業において安定した売上・利益を確保するとともに、当社グループの保有する知的資産や各事業間の相乗効果を最大限に活用して事業を推進してまいります。
その結果、売上高は8,621百万円(前年同期比76.3%増)、営業利益は1,044百万円(前年同期比392.2%増)、経常利益は1,092百万円(前年同期比300.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,558百万円(前年同期比663.0%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいて記載しております。
SMO事業
当セグメントにおきましては、大学病院や専門医療センター等の基幹病院との提携拡大が進んでおり、がんや難治性疾患等の疾患領域の新規受託が好調に推移しています。当社グループが支援する臨床試験の件数は堅調に推移しており、その中でも特にがん領域の割合が伸びています。難治性疾患を中心に臨床試験が複雑化かつ高度化していることに伴い、支援内容や受託単価の見直しを図っており、収益の拡大に繋がっています。また、迅速な試験実施支援により組入が順調に進捗するとともに、臨床薬理試験の受託が堅調に推移しました。加えて平成29年6月に㈱エシックをグループに迎えいれたことにより、支援疾患領域および支援地域が拡大し、売上が大きく向上しました。また経営資源や人的資源を有効活用することで利益も好調に推移しています。
その結果、売上高は6,292百万円(前年同期比74.2%増)、営業利益は1,694百万円(前年同期比95.6%増)となりました。
CRO事業
当セグメントにおきましては、南オーストラリア州のCMAX CLINICAL RESEARCH PTY LTDを中心とした事業拡大を図っており、同社において受託している早期臨床試験が順調に進捗しています。また、積極的な営業活動を進めているアジア地域の製薬企業等からの新規受託も好調に推移しています。国内においては、企業主導の臨床試験支援を行うとともに、大学での難治性疾患等の医師主導型治験・臨床研究支援を行っており、当社グループの注力領域である先端医療製品等の臨床試験支援へと事業拡大を図っています。
その結果、売上高は1,324百万円(前年同期比223.6%増)、営業利益は37百万円(前年同期は営業損失18百万円)となりました。
先端医療事業
当セグメントにおきましては、GMPベクター製造施設・CPCにおいて、国内外の製薬企業・研究機関・バイオベンチャー等からの臨床用ベクターを用いた製剤や試薬等の受託製造が堅調に推移しています。また、臨床用・研究用のiPS細胞作製キットを全世界で販売することに加え、センダイウイルスベクターを用いたiPS細胞を作製する技術の、企業や研究機関等に対するライセンスの件数が増加しています。このように、技術ライセンス供与を積極的に実施することで、センダイウイルスベクターを用いた事業機会を創出し、基盤技術の利用拡大を目指しています。
開発を進めている虚血肢治療製剤については、日本、オーストラリア、および中国での臨床試験を推進しています。
その結果、売上高は423百万円(前年同期比34.6%増)、営業利益は22百万円(前年同期比69.8%増)となりました。
メディカルサポート事業
当セグメントにおきましては、開発事業者や不動産会社などと連携して、駅からのアクセスや地域の医療機関の需要など、様々な条件を満たす主に新築の物件を厳選し、クリニックモールを開設しています。また、クリニックモールでの開業を検討する医師に対して開業支援を手がけるとともに、開業後の医療機関に臨床試験を紹介するなどその経営を多角的に支援しており、収益は堅調に推移しています。
さらにクリニックモール事業で培ったネットワークや不動産取引のノウハウを活かして不動産事業を手がけております。規模の拡大等により長期化しているプロジェクトについては、平成31年3月期での成約を目指して引き続き推進してまいります。
その結果、売上高は568百万円(前年同期比5.2%増)、営業利益は110百万円(前年同期比25.3%増)となりました。
その他
その他の事業におきましては、ITインフラを活用した事業等により、売上高は12百万円(前年同期比14.6%減)、営業損失は14百万円(前年同期は営業損失52百万円)となりました。
生産、受注及び販売の状況
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記金額は販売価格によっております。
3 上記金額には消費税等は含まれておりません。
4 CRO事業、先端医療事業、メディカルサポート事業、及びその他は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載しておりません。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 上記金額には消費税等は含まれておりません。
2 CRO事業、先端医療事業、メディカルサポート事業、及びその他は、提供するサービスの性格上、受注状況の記載に馴染まないため、記載しておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2 上記金額には消費税等は含まれておりません。
3 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、100分の10以上の販売先がないため、記載を省略しております。
(3) 財政状態
総資産につきましては、前連結会計年度末より2,748百万円増加し、11,267百万円となりました。これは現金及び預金、投資有価証券が増加したことが主な要因となっております。
負債につきましては、前連結会計年度末より1,476百万円増加し、5,521百万円となりました。これは長期借入金、退職給付に係る負債が増加したことが主な要因となっております。
純資産につきましては、前連結会計年度末より1,272百万円増加し、5,745百万円となりました。これは、利益剰余金が増加したことが主な要因となっております。
セグメントごとの財政状態は、次のとおりであります。
SMO事業
当セグメント資産は、前連結会計年度末と比べて1,318百万円増加し、3,766百万円となりました。これは現金及び預金が増加したことが主な要因となっております。
当セグメント負債は、前連結会計年度末と比べて548百万円増加し、2,431百万円となりました。これは㈱エシックを連結子会社化したことに伴い、賞与引当金、退職給付に係る負債が増加したことが主な要因となっております。
CRO事業
当セグメント資産は、前連結会計年度末と比べて17百万円減少し、1,248百万円となりました。
当セグメント負債は、前連結会計年度末と比べて57百万円増加し、331百万円となりました。これは長期借入金が増加した一方、短期借入金が減少したことが主な要因となっております。
先端医療事業
当セグメント資産は、前連結会計年度末と比べて48百万円増加し、961百万円となりました。これは現金及び預金が増加したことが主な要因となっております。
当セグメント負債は、前連結会計年度末と比べて52百万円増加し、235百万円となりました。これは短期借入金が増加したことが主な要因となっております。
メディカルサポート事業
当セグメント資産は、前連結会計年度末と比べて40百万円増加し、2,985百万円となりました。これは販売用不動産が増加した一方、長期貸付金が減少したことが主な要因となっております。
当セグメント負債は、前連結会計年度末と比べて23百万円増加し、2,121百万円となりました。これは短期借入金が増加した一方、長期借入金が減少したことが主な要因となっております。
(4) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末のキャッシュ・フローについては、営業活動により1,612百万円増加し、投資活動により88百万円増加し、財務活動により10百万円減少した結果、現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、期首残高436百万円よりも1,947百万円増加し、2,383百万円(前年同期比446.6%増)となりました。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、1,612百万円(前年同期は826百万円の支出)となりました。
これは、税金等調整前当期純利益の計上1,824百万円が主な要因となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は、88百万円(前年同期は1,648百万円の支出)となりました。
これは、投資有価証券の取得による支出1,010百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入1,000百万円が主な要因となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、10百万円(前年同期は2,029百万円の取得)となりました。
これは、長期借入金の借入による収入656百万円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出583百万円が主な要因となっております。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループの資金状況における運転資金及び設備投資資金につきましては、主として営業活動によるキャッシュ・フロー及び銀行等からの借入金により資金調達をしております。資金計画につきましては営業活動により得られた資金を有効活用しております。当社は、当事業年度末現在の現金及び現金同等物、今後の営業活動によって得られるキャッシュ・フロー並びに既存の調達による資金が、当面の営業活動を維持するのに十分な水準であると考えております。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注)1 いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3 キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを使用しております。
4 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利息を支払っている全ての負債を対象としております。
5 平成28年3月期、平成29年3月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率、インタレスト・カバレッジ・レシオは、営業キャッシュ・フローがマイナスであるため表示しておりません。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表を作成するに当たり、重要である会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりであります。
この連結財務諸表の作成において、損益または資産の状況に影響を与える見積り、判断は、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいた合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
① 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産を計上しており、その繰延税金資産の回収可能性がないと考えられる金額については、その資産の帳簿価額を調整するため評価性引当額を設定しております。繰延税金資産の評価は将来の課税所得の見積りと税務上の実現可能と見込まれる計画に依拠します。仮に将来の市場環境や経営成績の悪化により将来の課税所得が見込みを下回る場合は繰延税金資産の金額が大きく影響を受ける可能性があります。
② 貸倒引当金
当社グループは、営業債権及び利息を含む金融債権について、顧客の返済能力を考慮し、回収不能額を見積もった上で、貸倒引当金を計上しています。また、特定の顧客について債務の返済が困難であることが明らかになった場合には、債権の担保資産の価格を考慮の上、個別に引当を行います。貸倒引当金の金額に重大な影響を及ぼす状況としては、国内及び主な海外市場の経済状況の悪化や医療関係諸制度の変更に伴い顧客の財政状態が悪化した場合や、債権の担保となっている顧客の資産価値が下落した場合が考えられます。
③ 投資有価証券
当社グループは、毎期末に投資有価証券の評価の見直しを行っております。
その他有価証券のうち時価のあるものについては、決算期末日の市場価格等に基づく時価法によっております(評価差額は、全部純資産直入法により処理し、時価と比較する取得原価は移動平均法により算定)。時価が著しく下落したときは、その回復可能性につきまして、合理的な判断を行うようにしております。
また、その他有価証券のうち時価のないものについては、移動平均法による原価法によっております。実質価額が著しく低下したときは、事業計画等によりその回復可能性につきまして、合理的な判断を行うようにしております。
④ 収益認識
SMO事業収入は、治験の実態等を鑑み、治験症例単位ごとの業務終了に基づく検収基準により計上しております。
(2) 経営成績
医療業界は世界的に治療技術の発展が目覚ましい状況が続いています。遺伝子治療は免疫不全症・血液系疾患・代謝異常症などの難治性疾患に対する革新的な治療法として注目され、再生医療分野では様々な幹細胞から、再生医療等製品が創出されることが期待されています。そのような世界的な潮流の中で、当社グループは、新しい医療技術・医薬品の開発に貢献すべく、遺伝子治療・再生医療の領域において技術開発を推進するとともに、医薬品等の臨床開発を多角的に支援しています。
創業以来の中核事業であるSMO(Site Management Organization:治験施設支援機関)事業におきましては、製薬企業の医薬品の開発ニーズが、がんやその他の希少疾患に変化してきているとともに、医薬品・医療機器等の開発のグローバル化、開発期間の短縮化、ならびに開発手法の変化等により臨床試験に対するニーズも多様化してきています。このような市場環境の変化に対応すべく、CRC(臨床研究コーディネーター)の質を高めるため、教育研修制度や社内認定制度等の充実を図るとともに、積極的なM&Aや業務提携により、高度専門医療機関を中心とした医療機関との提携を広げています。その一環として当社グループは、平成29年6月に㈱エシックをグループに迎えいれました。これらにより、地域中核病院との提携やがん・腎疾患領域を中心として支援領域が拡大しています。
CRO(Contract Research Organization:開発業務受託機関)事業では、オーストラリアを核として、欧米や日本を含むアジア・オセアニア地域の製薬企業等の医薬品開発を支援しています。平成28年12月に子会社化し、平成29年8月に完全子会社となったCMAX CLINICAL RESEARCH PTY LTDは南オーストラリア州において臨床試験実施施設を運営しており、グローバルな大規模臨床試験や被験薬をヒトに対して世界で初めて投与するFIH(First In Human)試験を含む早期臨床試験等の支援を行っています。CMAX CLINICAL RESEARCH PTY LTDの豊富な実績とサービスの品質は国際的に高く評価されており、当社グループのSMO事業やCRO事業の更なる品質強化と事業発展を目指した取り組みを進めています。
先端医療事業では、臨床用および研究用のiPS細胞作製キットCytoTune®-iPSを全世界で販売するとともに、茨城県つくば市にあるGMP(Good Manufacturing Practice:医薬品等の製造管理および品質管理に関する基準)ベクター製造施設・CPC(Cell Processing Center:細胞培養加工施設)において、医薬品製造受託機関として、臨床用ベクター・遺伝子治療製剤・再生医療等製品を受託製造しています。また、基盤技術として持つセンダイウイルスベクター等のベクター技術を用いた遺伝子治療製剤等の研究開発を進めています。
メディカルサポート事業においては、クリニックモールの開設・運営を通じて患者様の利便を図り通院の負担を軽減する医療環境の提案を行っています。医療機関・薬局などに対しては、新規開業のための診療圏の調査や物件紹介等を行うことに加え、グループの知見を活かし、クリニックの開業を目指す医師を強力にサポートしています。
当社グループが数年に渡り実施してきた積極的なM&A、海外への事業展開、設備整備ならびに人材育成等の戦略的な投資が成果として収益に現れてくるとともに、事業発展に向けた基盤が整ってきています。今後の更なる発展に向け、SMO事業およびCRO事業において安定した売上・利益を確保するとともに、当社グループの保有する知的資産や各事業間の相乗効果を最大限に活用して事業を推進してまいります。
その結果、売上高は8,621百万円(前年同期比76.3%増)、営業利益は1,044百万円(前年同期比392.2%増)、経常利益は1,092百万円(前年同期比300.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,558百万円(前年同期比663.0%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいて記載しております。
SMO事業
当セグメントにおきましては、大学病院や専門医療センター等の基幹病院との提携拡大が進んでおり、がんや難治性疾患等の疾患領域の新規受託が好調に推移しています。当社グループが支援する臨床試験の件数は堅調に推移しており、その中でも特にがん領域の割合が伸びています。難治性疾患を中心に臨床試験が複雑化かつ高度化していることに伴い、支援内容や受託単価の見直しを図っており、収益の拡大に繋がっています。また、迅速な試験実施支援により組入が順調に進捗するとともに、臨床薬理試験の受託が堅調に推移しました。加えて平成29年6月に㈱エシックをグループに迎えいれたことにより、支援疾患領域および支援地域が拡大し、売上が大きく向上しました。また経営資源や人的資源を有効活用することで利益も好調に推移しています。
その結果、売上高は6,292百万円(前年同期比74.2%増)、営業利益は1,694百万円(前年同期比95.6%増)となりました。
CRO事業
当セグメントにおきましては、南オーストラリア州のCMAX CLINICAL RESEARCH PTY LTDを中心とした事業拡大を図っており、同社において受託している早期臨床試験が順調に進捗しています。また、積極的な営業活動を進めているアジア地域の製薬企業等からの新規受託も好調に推移しています。国内においては、企業主導の臨床試験支援を行うとともに、大学での難治性疾患等の医師主導型治験・臨床研究支援を行っており、当社グループの注力領域である先端医療製品等の臨床試験支援へと事業拡大を図っています。
その結果、売上高は1,324百万円(前年同期比223.6%増)、営業利益は37百万円(前年同期は営業損失18百万円)となりました。
先端医療事業
当セグメントにおきましては、GMPベクター製造施設・CPCにおいて、国内外の製薬企業・研究機関・バイオベンチャー等からの臨床用ベクターを用いた製剤や試薬等の受託製造が堅調に推移しています。また、臨床用・研究用のiPS細胞作製キットを全世界で販売することに加え、センダイウイルスベクターを用いたiPS細胞を作製する技術の、企業や研究機関等に対するライセンスの件数が増加しています。このように、技術ライセンス供与を積極的に実施することで、センダイウイルスベクターを用いた事業機会を創出し、基盤技術の利用拡大を目指しています。
開発を進めている虚血肢治療製剤については、日本、オーストラリア、および中国での臨床試験を推進しています。
その結果、売上高は423百万円(前年同期比34.6%増)、営業利益は22百万円(前年同期比69.8%増)となりました。
メディカルサポート事業
当セグメントにおきましては、開発事業者や不動産会社などと連携して、駅からのアクセスや地域の医療機関の需要など、様々な条件を満たす主に新築の物件を厳選し、クリニックモールを開設しています。また、クリニックモールでの開業を検討する医師に対して開業支援を手がけるとともに、開業後の医療機関に臨床試験を紹介するなどその経営を多角的に支援しており、収益は堅調に推移しています。
さらにクリニックモール事業で培ったネットワークや不動産取引のノウハウを活かして不動産事業を手がけております。規模の拡大等により長期化しているプロジェクトについては、平成31年3月期での成約を目指して引き続き推進してまいります。
その結果、売上高は568百万円(前年同期比5.2%増)、営業利益は110百万円(前年同期比25.3%増)となりました。
その他
その他の事業におきましては、ITインフラを活用した事業等により、売上高は12百万円(前年同期比14.6%減)、営業損失は14百万円(前年同期は営業損失52百万円)となりました。
生産、受注及び販売の状況
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 生産高(百万円) | 前年同期比(%) |
SMO事業 | 6,061 | 56.3 |
合計 | 6,061 | 56.3 |
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記金額は販売価格によっております。
3 上記金額には消費税等は含まれておりません。
4 CRO事業、先端医療事業、メディカルサポート事業、及びその他は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載しておりません。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前年同期比(%) | 受注残高(百万円) | 前年同期比(%) |
SMO事業 | 7,421 | 46.2 | 8,557 | 71.6 |
合計 | 7,421 | 46.2 | 8,557 | 71.6 |
(注) 1 上記金額には消費税等は含まれておりません。
2 CRO事業、先端医療事業、メディカルサポート事業、及びその他は、提供するサービスの性格上、受注状況の記載に馴染まないため、記載しておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高 (百万円) | 前年同期比(%) |
SMO事業 | 6,292 | 74.2 |
CRO事業 | 1,324 | 223.6 |
先端医療事業 | 423 | 34.6 |
メディカルサポート事業 | 568 | 5.2 |
その他 | 12 | △14.6 |
合計 | 8,621 | 76.3 |
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2 上記金額には消費税等は含まれておりません。
3 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、100分の10以上の販売先がないため、記載を省略しております。
(3) 財政状態
総資産につきましては、前連結会計年度末より2,748百万円増加し、11,267百万円となりました。これは現金及び預金、投資有価証券が増加したことが主な要因となっております。
負債につきましては、前連結会計年度末より1,476百万円増加し、5,521百万円となりました。これは長期借入金、退職給付に係る負債が増加したことが主な要因となっております。
純資産につきましては、前連結会計年度末より1,272百万円増加し、5,745百万円となりました。これは、利益剰余金が増加したことが主な要因となっております。
セグメントごとの財政状態は、次のとおりであります。
SMO事業
当セグメント資産は、前連結会計年度末と比べて1,318百万円増加し、3,766百万円となりました。これは現金及び預金が増加したことが主な要因となっております。
当セグメント負債は、前連結会計年度末と比べて548百万円増加し、2,431百万円となりました。これは㈱エシックを連結子会社化したことに伴い、賞与引当金、退職給付に係る負債が増加したことが主な要因となっております。
CRO事業
当セグメント資産は、前連結会計年度末と比べて17百万円減少し、1,248百万円となりました。
当セグメント負債は、前連結会計年度末と比べて57百万円増加し、331百万円となりました。これは長期借入金が増加した一方、短期借入金が減少したことが主な要因となっております。
先端医療事業
当セグメント資産は、前連結会計年度末と比べて48百万円増加し、961百万円となりました。これは現金及び預金が増加したことが主な要因となっております。
当セグメント負債は、前連結会計年度末と比べて52百万円増加し、235百万円となりました。これは短期借入金が増加したことが主な要因となっております。
メディカルサポート事業
当セグメント資産は、前連結会計年度末と比べて40百万円増加し、2,985百万円となりました。これは販売用不動産が増加した一方、長期貸付金が減少したことが主な要因となっております。
当セグメント負債は、前連結会計年度末と比べて23百万円増加し、2,121百万円となりました。これは短期借入金が増加した一方、長期借入金が減少したことが主な要因となっております。
(4) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末のキャッシュ・フローについては、営業活動により1,612百万円増加し、投資活動により88百万円増加し、財務活動により10百万円減少した結果、現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、期首残高436百万円よりも1,947百万円増加し、2,383百万円(前年同期比446.6%増)となりました。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、1,612百万円(前年同期は826百万円の支出)となりました。
これは、税金等調整前当期純利益の計上1,824百万円が主な要因となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は、88百万円(前年同期は1,648百万円の支出)となりました。
これは、投資有価証券の取得による支出1,010百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入1,000百万円が主な要因となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、10百万円(前年同期は2,029百万円の取得)となりました。
これは、長期借入金の借入による収入656百万円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出583百万円が主な要因となっております。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループの資金状況における運転資金及び設備投資資金につきましては、主として営業活動によるキャッシュ・フロー及び銀行等からの借入金により資金調達をしております。資金計画につきましては営業活動により得られた資金を有効活用しております。当社は、当事業年度末現在の現金及び現金同等物、今後の営業活動によって得られるキャッシュ・フロー並びに既存の調達による資金が、当面の営業活動を維持するのに十分な水準であると考えております。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
平成28年3月期 | 平成29年3月期 | 平成30年3月期 | |
自己資本比率(%) | 60.9 | 50.7 | 50.4 |
時価ベースの自己資本比率(%) | 208.7 | 183.5 | 318.5 |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) | - | - | 1.5 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) | - | - | 37.2 |
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注)1 いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3 キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを使用しております。
4 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利息を支払っている全ての負債を対象としております。
5 平成28年3月期、平成29年3月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率、インタレスト・カバレッジ・レシオは、営業キャッシュ・フローがマイナスであるため表示しておりません。