有価証券報告書-第15期(2023/04/01-2024/03/31)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の状況
① 事業全体の状況
(単位:百万円)
(注)2023年4月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っております。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり当期純利益を算定しております。
「2023中期経営計画」の最終年度である2024年3月期は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和などにより、経済活動の正常化が見られた一方、国内の生乳取引価格や円安進行にともなう海外輸入原材料価格の上昇が、当社グループ業績にも影響を及ぼしました。
食品セグメントでは、原材料価格の上昇に対して、多くの商品カテゴリーで価格改定を実施し、コスト上昇分の吸収に努めました。また、価格改定による数量減の影響を最小限にとどめるべく、主力商品の価値訴求強化や積極的なマーケティング活動に取り組み、徐々に数量回復の兆しも出てきました。海外では、中国における生産販売能力を強化し、販売エリア拡大と高付加価値商品の売上拡大を進めました。菓子や業務用の牛乳・クリーム事業は好調に推移したものの、経済情勢の変化や競争激化の影響により市販用の牛乳・ヨーグルト事業が苦戦しました。米国においては、チョコレートスナックを中心に取り組み、販路を着実に広げました。アジアにおいても、シンガポールに新たなチョコレートのラインを導入し、アジア各国や中東への輸出を積極的に進めました。
医薬品セグメントでは、感染症領域に経営資源を集中し、ワクチンと感染症治療薬のトップ企業としての競争優位性確立に取り組みました。新型コロナウイルス感染症に対する次世代mRNAワクチン(レプリコン)「コスタイベ筋注用」については、2023年11月に国内の製造販売承認を取得し、現在、変異株への対応を進めています。同感染症に対する小児用の不活化ワクチンについても、最終段階となる変異株対応の臨床試験を実施しています。加えて、新薬パイプラインの開発加速にも取り組み、5種混合ワクチン「クイントバック®水性懸濁注射用」や、造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病(慢性GVHD)の治療薬である選択的ROCK2阻害剤「レズロック®錠」の製造販売承認を取得しました。海外では、受託製造/受託製造開発(CMO/CDMO)事業の強化・拡大に注力し、インドに完成した新製造棟における商業出荷に向けた準備を確実に進めるなど、生産能力の向上にも努めました。
サステナビリティに関しては、「2023中期経営計画」の基本コンセプトである「明治ROESG®経営の実践」に基づき事業との融合に取り組みました。酪農分野での温室効果ガス(GHG)排出量削減に向け、J-クレジット制度を活用したビジネスモデルの構築に取り組んだほか、カカオ生産を持続可能なものにするため、フルーツや機能素材としてのカカオの可能性を追求し、新しい価値創造にも挑戦してきました。
なお、2024年4月9日付「通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」で公表のとおり、食品セグメントにおいて、中国で牧場を運営する持分法適用会社のAustAsia Group Ltd.が、中国国内における飼料代高騰や生乳価格下落の影響により収益性が悪化したことなどを受け、AustAsia Group Ltd.に係る減損損失62億円を、持分法による投資損失として営業外費用に計上しました。また、中国の市販向け牛乳・ヨーグルト事業において、競合他社との価格競争が激化したことなどによる収益性の悪化を受け、牛乳・ヨーグルト事業に係る有形固定資産の減損損失143億円を特別損失に計上しました。
この結果、当連結会計年度の売上高は 1兆1,054億94百万円(前期比 4.1%増)、営業利益は 843億22百万円(同 11.8%増)、経常利益は 760億20百万円(同 2.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は 506億75百万円(同 27.0%減)となりました。また、ROEは 6.9%、1株当たり当期純利益は 181.64円となりました。
② セグメントの状況
(単位:百万円)
(注) 売上高、セグメント利益は、セグメント間の取引を消去する前の金額によっております。
セグメントの業績の詳細は、次のとおりであります。
Ⅰ.食品
当セグメントにはヨーグルト・チーズ事業 (プロバイオティクス、ヨーグルト、チーズ)、ニュートリション事業 (乳幼児ミルク、スポーツ栄養、流動食、美容)、チョコレート・グミ事業、牛乳事業、業務用食品事業、フローズン・調理食品事業 (アイスクリーム、調理食品、バター・マーガリン類)、海外事業 (海外子会社、輸出)、その他・国内子会社 (国内独立系子会社、キャンデー、OTC)による製造・販売、運送等が含まれております。
売上高は、価格改定効果もあり前連結会計年度を上回りました。幅広い事業で前連結会計年度を上回り、特に業務用食品事業や海外事業は大幅に上回りました。
セグメント利益は前連結会計年度を大幅に上回りました。価格改定効果が原材料コストの上昇や数量減の影響をカバーしました。
事業別の概況は、次のとおりです。
■ヨーグルト・チーズ事業 (プロバイオティクス、ヨーグルト、チーズ)
売上高は前連結会計年度並みとなりました。プロバイオティクスは前連結会計年度並みとなりましたが、ヨーグルトはドリンクタイプの大容量品の終売の影響で減収となりました。チーズは需要拡大や販促強化により、スライスチーズを中心に伸長しました。
営業利益は前連結会計年度を大幅に上回りました。原材料コストが増加しましたが、価格改定効果がコスト増や数量減の影響を上回りました。価格改定による数量への影響を最小化すべくマーケティング投資を強化しました。
■ニュートリション事業 (乳幼児ミルク、スポーツ栄養、流動食、美容)
売上高は前連結会計年度を上回りました。乳幼児ミルクは、価格改定効果に加え、外出機会の増加などにより液体ミルクが大幅に伸長したことで増収となりました。スポーツプロテイン「ザバス」は、粉末タイプが増収となったことに加え、たんぱく質配合量を20gに増量した商品の発売により、ドリンクタイプも大幅に伸長しました。
営業利益は前連結会計年度を大幅に上回りました。原材料コストが増加しましたが、価格改定効果がコスト増や数量減の影響を上回りました。
■チョコレート・グミ事業
売上高は前連結会計年度並みとなりました。チョコレートは、主力の「チョコレート効果」が好調に推移したほか、人流回復やインバウンド需要によりナッツチョコレートが大幅に伸長しました。グミは、子会社譲渡による減収の影響を受けましたが、主力品が好調に推移し、前連結会計年度並みとなりました。
営業利益は、価格改定効果に加えて、構造改革による製造間接費の減少により前連結会計年度を上回りました。
■牛乳事業
売上高は、価格改定効果に加え、「明治おいしい牛乳」シリーズの中小容量品が好調に推移したことにより前連結会計年度を上回りました。
営業利益は、国内生乳価格上昇の影響を受けたものの、価格改定効果や中小容量品の数量増などにより前連結会計年度から損失額が縮小しました。
■業務用食品事業
売上高は前連結会計年度を大幅に上回りました。人流回復により市場が拡大した影響もあり、クリームやバター、カカオなどが伸長しました。
営業利益は、原材料コストと減価償却費などの製造間接費が増加しましたが、価格改定効果や数量増により前連結会計年度を大幅に上回りました。
■フローズン・調理食品事業 (アイスクリーム、調理食品、バター・マーガリン類)
売上高は前連結会計年度を上回りました。アイスクリームは、主力の「明治エッセルスーパーカップ」や付加価値型新商品が好調に推移しました。バター・マーガリン類も好調に推移しました。調理食品は、2023年2月に冷凍ピザを終売した影響により減収となりました。
営業利益は前連結会計年度を大幅に上回りました。価格改定効果が原材料コストや拡売費の増加を上回りました。
■海外事業 (海外子会社、輸出)
売上高は、前連結会計年度を大幅に上回りました。中国の業務用市乳事業や菓子事業、米国や東南アジアの子会社が好調に推移しました。
営業利益は、前連結会計年度から損失額が拡大しました。中国の子会社が、市販用の牛乳・ヨーグルト事業において拡売費が増加したことに加え、2023年1月の天津工場稼働に伴う新規開拓費用や減価償却費も増加したことにより、大幅減益となりました。米国や東南アジアの子会社は増益となりました。
■その他・国内子会社 (国内独立系子会社、キャンデー、OTC)
売上高は前連結会計年度並みとなりました。糖類を扱う商社などが好調に推移しましたが、ガムなどの終売や子会社譲渡が影響しました。
営業利益は、原材料コストの増加に加え、ガムなどの終売影響により前連結会計年度を大幅に下回りました。
Ⅱ.医薬品
当セグメントには、国内医薬品事業、海外医薬品事業、ヒト用ワクチン事業、動物薬事業(動物薬、動物用ワクチン)が含まれております。
売上高は前連結会計年度を上回りました。国内医薬品事業と海外医薬品事業は前連結会計年度を上回り、ヒト用ワクチン事業と動物薬事業は前連結会計年度を下回りました。
セグメント利益は、海外医薬品事業やヒト用ワクチン事業の増益により、前連結会計年度を上回りました。
事業別の概況は、次のとおりです。
■国内医薬品事業
売上高は前連結会計年度を上回りました。抗菌薬「スルバシリン」や「メイアクト」に加え、血漿分画製剤が増収となりました。
営業利益は、薬価改定の影響に加え、アストラゼネカ社の新型コロナウイルスワクチンに関する受託収入の減少や研究開発費の増加により前連結会計年度を大幅に下回りました。
■海外医薬品事業
売上高は前連結会計年度を上回りました。ロイヤリティ収入が減少しましたが、為替影響に加え、スペインやタイの子会社が好調に推移しました。
営業利益は前連結会計年度を大幅に上回りました。海外子会社の増収やインドの子会社の原価低減が寄与しました。
■ヒト用ワクチン事業
売上高は前連結会計年度並みとなりました。4種混合ワクチン「クアトロバック」は好調に推移しましたが、インフルエンザワクチンやB型肝炎ワクチン「ビームゲン」が減収となりました。
営業利益は前連結会計年度を大幅に上回りました。生産効率化に加え、ロイヤリティ収入も寄与しました。
■動物薬事業(動物薬、動物用ワクチン)
売上高は、低収益品の品目数削減の影響を受けましたが、海外向け販売の寄与により前連結会計年度並みとなりました。
営業利益は、原材料コストの増加などにより前連結会計年度を大幅に下回りました。
③ 2023中期経営計画の振り返り(2022年3月期~2024年3月期)
「2023中期経営計画」で掲げた2024年3月期の各指標の達成状況については次表のとおりであります。食品セグメントにおける価格改定などもあり連結売上高目標は達成したものの、コスト高騰などの影響により連結営業利益は目標に届かず、ROEやROICの目標も未達となりました。「明治ROESG®」については、5つのESG外部指標は全て目標水準を達成したものの、ROEが低下したことにより目標未達となりました。
2023中期経営計画における明治ROESG®の計算式および2024年3月期の実績は、次のとおりであります。

2023中期経営計画の総括は次のとおりであります。
●明治ROESG®を掲げ、利益成長とサステナビリティ活動の同時実現を目指した3年間
・食品
国内コア事業の成長力回復は道半ば。海外事業は、米国が順調に拡大。
先行投資してきた中国の一部事業で減損発生
・医薬品
構造改革を断行し、安定して収益が得られるビジネスモデルに転換。
mRNA技術の獲得など次の成長をけん引するパイプラインも充実
・新領域への挑戦
新たな製品やビジネスモデルの創出に向けて、ベンチャー企業やアカデミアとの連携が進む
・サステナビリティ
着実に取り組み、ESG評価は上昇。事業との融合に必要な評価基準などの整備にも取り組む
●ROICを活用した経営管理体制の確立を進める中で、運用方法改善の必要性が生じる。
事業単位や組織などを見直し、ROICによるマネジメントの定着を急ぐ
●ROICの観点から設備投資の一部を選別。戦略的な投資やESG投資は計画通りに進む
●政策保有株式の縮減や固定資産の圧縮に取り組み、強固な財務体質を維持。10期連続で増配
④ 来期の見通しについて
2025年3月期は、世界経済や国内の消費動向に加え、為替の変動、人件費や物流費の上昇などが懸念されますが、当社グループは当期より始まる「2026中期経営計画」の基本方針に則り、目標達成に向けて各戦略を着実に実行してまいります。
食品セグメントでは、国内は、既存ブランドにおける価値訴求強化と高付加価値商品の投入に取り組みます。プロバイオティクスやヨーグルト、チョコレートなどの健康機能を訴求するほか、スポーツプロテインや流動食における提供価値の進化を目指します。また、サステナビリティと事業の融合にも取り組み、栄養による社会課題解決に向け、2023年6月に策定した「Meiji NPS(明治栄養プロファイリングシステム)」を活用し、栄養価値の高い商品の開発・改良を目指します。好調な業務用事業でも、当社の強みを活かした独自商品の展開により、売上規模拡大や収益性向上に取り組みます。海外は、中国において構造改革に注力します。苦戦している市販の牛乳・ヨーグルトは、独自価値商品を投入し、付加価値商品の構成比の拡大に取り組みます。好調な業務用の牛乳・クリームは新規販売先を開拓し、新工場が稼働するチョコレートやフローズンデザートは販売エリアの拡大を目指します。米国では、チョコレートスナックを中心に販路を拡大します。アジアでは、チョコレートや乳幼児ミルクの展開を加速させます。欧州では、ダノン社との協業による粉ミルクの展開を強化します。
医薬品セグメントでは、国内は、社会課題となっている感染症領域に経営資源を集中し、ワクチンと感染症薬のトップ企業としての競争優位性確立と収益性の強化に引き続き取り組みます。人流回復により感染症が流行し、高いレベルで需要が続いている抗菌薬の安定供給に取り組むほか、新たに上市する製品の拡売に注力します。また、当社グループが持つ感染症に関する高い技術・設備や豊富な経験を活かし、2024年秋冬シーズンにおいて、新型コロナウイルス感染症に対する次世代mRNAワクチン(レプリコン)「コスタイベ筋注用」を上市していきます。海外は、CMO/CDMO事業の成長による収益最大化に取り組みます。メドライクグループの生産能力を増強し、既存の生産能力も効率的に活用します。
⑤ 主要な経営指標の推移
(注)2021年度の期首より「収益認識に関する会計基準」等を適用しており、上記の2021年度以降の指標については当該会計基準等を適用した後の金額となっております。
(2)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績を事業のセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)セグメント間の取引は含まれておりません。
② 受注実績
当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を立てて生産しております。
一部受注生産を行っておりますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はありません。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績を事業のセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.総販売実績に対する売上の割合が10%以上の相手先はありません。
2.セグメント間の取引は含まれておりません。
(3)財政状態の分析
資産の部では、現金及び預金が前連結会計年度末に比べて 433億38百万円増加し、1,068億58百万円となりました。コミットメントラインの設定額200億円と合わせた手元流動性の残高は1,268億58百万円で、2023中期経営計画で目安としておりました手元流動性の水準(連結売上高の1か月程度)を確保いたしました。受取手形及び売掛金は、前連結会計年度末に比べて 292億38百万円増加し、2,022億39百万円となりました。これは食品セグメント及び医薬品セグメントでの増売や、期末日が金融機関休業日であった影響などによるものであります。有形固定資産は前連結会計年度末に比べて 72億47百万円減少し、4,805億7百万円となりました。これは中国のアイスクリーム工場における設備投資による増加の一方、明治産業㈱及び㈱スリーエスアンドエルの連結除外に伴う減少、中国の牛乳・ヨーグルト事業における固定資産の減損損失の計上などがあったためであります。投資有価証券は、前連結会計年度末に比べて 247億14百万円減少し、879億35百万円となりました。これは主に政策保有株式の売却による減少や、AustAsia Group Ltd.における持分法投資損失の計上などによるものであります。その結果、当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて 690億70百万円増の 1兆2,052億88百万円となりました。
負債の部では、支払手形及び買掛金が前連結会計年度末に比べて 150億36百万円増加し、1,273億48百万円となりました。これは主に期末日が金融機関休業日であった影響によるものであります。未払法人税等が税金費用の増加などにより前連結会計年度末に比べて 58億23百万円増加し、171億22百万円となりました。また、流動負債のその他が未払設備代の増加などにより前連結会計年度末に比べて 259億97百万円増加し、884億75百万円となりました。有利子負債(社債、借入金)は、社債の償還などにより前連結会計年度末に比べて 144億44百万円減少し、499億26百万円となりました。その結果、当連結会計年度における負債合計は、前連結会計年度末に比べて 325億88百万円増の 4,174億94百万円となりました。
純資産の部では、純資産合計が前連結会計年度末に比べて 364億81百万円増の 7,877億93百万円となりました。これは政策保有株式の売却に伴いその他有価証券評価差額金が 98億75百万円減少した一方、利益剰余金が 241億15百万円、為替換算調整勘定が 126億46百万円増加したことなどによるものであります。
この結果、流動比率は前連結会計年度末に比べて 2.2ポイント減の174.7%、デット・エクイティ・レシオは0.02ポイント減の0.07倍、自己資本比率は 0.8ポイント減の61.9%となりましたが、資金の流動性及び財務の安定性を維持しております。なお、1株当たり純資産は前連結会計年度末に比べて 121円3銭増加し、2,674円72銭となりました。
自己資本及び自己資本比率の推移は、次のとおりであります。
(4)資本の財源及び資金の流動性
① 資本政策の方針
事業活動により得た資金は、持続的な成長に向けて、将来への成長投資や研究開発へ積極的に充当してまいります。また、グループ全体の資本効率の観点から、成長投資については財務規律との調和を図るとともに、政策保有株式などの非事業用資産については縮減します。
株主還元についても経営における重要課題と認識しており、各年度で総還元性向50%以上を目安とし、1株当たり配当額の継続的な増配を目指します。
② 資金調達の方針
資金調達については、資金需要や金利環境等を踏まえつつ、多様化した調達手段の中から資本コストの低減を第一義として、負債により調達することを基本方針とします。一方で、負債の増加に伴う信用リスクの観点から、原則としてデット・エクイティ・レシオは0.5倍までを上限とし、金融情勢に左右されないような高い信用格付の維持にも努めます。なお、本報告書提出時点において、当社は日本格付研究所より「ダブルAマイナス(安定的)」の信用格付を取得しております。
主要な金融機関とは良好な取引関係を維持しており、加えて強固な財務体質を有していることから、当社グループの事業拡大、運営に必要な投資資金及び運転資金の金融機関からの調達に関しては問題なく実施できると認識しております。なお、国内の金融機関との間で合計200億円のコミットメントラインを設定しており、期中の現預金残高とコミットメントライン設定額を合わせた手元流動性の水準を、連結売上高の1か月程度に設定することで、緊急時の流動性を確保いたします。
また、グループ会社を対象に、資金調達の安定化と調達コストの低減を図るため、グループファイナンス制度を導入しております。
当社は、「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」の実現に向けた活動に必要な資金調達の手段として、ICMA(国際資本市場協会:International Capital Market Association)の定めるグリーンボンド原則及びソーシャルボンド原則に基づいた、「サステナビリティファイナンス・フレームワーク」を策定しており、2021年4月に第10回無担保社債(サステナビリティボンド、5年100億円)を発行して資金を調達しました。今後も、本フレームワークに基づき、サステナビリティファイナンスを積極的に活用し、社会課題解決への貢献を一層進めてまいります。
③ キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フロー関連指標の推移は、次のとおりであります。
(注)各指標の算出方法
自己資本比率:(純資産の部-非支配株主持分)/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額(期末株価終値×発行済株式総数)/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い(利息の支払額)
※ 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式総数をベースに計算しております。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ 229億69百万円収入増の 1,079億83百万円の収入となりました。これは売上債権が増加した一方で、棚卸資産の減少や仕入債務の増加、法人税等の支払額の減少などがあったためであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ 121億84百万円支出減の 246億4百万円の支出となりました。これは前連結会計年度において横浜研究所の売却などがあり、有形及び無形固定資産の売却による収入が減少した一方で、有形固定資産の取得による支出の減少、政策保有株式の売却による収入や明治産業㈱及び㈱スリーエスアンドエルの子会社株式の売却による収入があったためであります。
これにより、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計額)は、前連結会計年度より 351億54百万円収入増の 833億78百万円の収入となりました。
創出したフリー・キャッシュ・フローについては、配当金の支払いにより株主還元を行うとともに、有利子負債の返済に充当しております。配当については増配を実施し、株主還元の充実に努めました。今後も安定的継続的な利益還元を実施します。なお、配当金の支払額は前連結会計年度より 18億37百万円支出増の 264億44百万円、配当性向は 52.3%であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ 109億62百万円支出減の 437億72百万円の支出となりました。これは前連結会計年度において自己株式の取得による支出があったことなどによるものです。
これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は 1,028億32百万円となりました。
当連結会計年度においては、事業活動に伴う運転資金は金融機関からの借入れ及びコマーシャル・ペーパーにより調達いたしました。
当連結会計年度におけるキャッシュアロケーションは、次のとおりであります。

配当金及びEPS(1株当たり当期純利益)の推移は、次のとおりであります。
(注)2015年10月1日付および2023年4月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を実施しており、2013年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、1株当たり配当金及び1株当たり当期純利益を算定しております。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
(1) 経営成績の状況
① 事業全体の状況
(単位:百万円)
売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 親会社株主に帰属する当期純利益 | 1株当たり 当期純利益 (円 銭) | |
当連結会計年度 | 1,105,494 | 84,322 | 76,020 | 50,675 | 181.64 |
前連結会計年度 | 1,062,157 | 75,433 | 74,160 | 69,424 | 247.39 |
前年同期比(%) | 104.1% | 111.8% | 102.5% | 73.0% | - |
(注)2023年4月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っております。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり当期純利益を算定しております。
「2023中期経営計画」の最終年度である2024年3月期は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和などにより、経済活動の正常化が見られた一方、国内の生乳取引価格や円安進行にともなう海外輸入原材料価格の上昇が、当社グループ業績にも影響を及ぼしました。
食品セグメントでは、原材料価格の上昇に対して、多くの商品カテゴリーで価格改定を実施し、コスト上昇分の吸収に努めました。また、価格改定による数量減の影響を最小限にとどめるべく、主力商品の価値訴求強化や積極的なマーケティング活動に取り組み、徐々に数量回復の兆しも出てきました。海外では、中国における生産販売能力を強化し、販売エリア拡大と高付加価値商品の売上拡大を進めました。菓子や業務用の牛乳・クリーム事業は好調に推移したものの、経済情勢の変化や競争激化の影響により市販用の牛乳・ヨーグルト事業が苦戦しました。米国においては、チョコレートスナックを中心に取り組み、販路を着実に広げました。アジアにおいても、シンガポールに新たなチョコレートのラインを導入し、アジア各国や中東への輸出を積極的に進めました。
医薬品セグメントでは、感染症領域に経営資源を集中し、ワクチンと感染症治療薬のトップ企業としての競争優位性確立に取り組みました。新型コロナウイルス感染症に対する次世代mRNAワクチン(レプリコン)「コスタイベ筋注用」については、2023年11月に国内の製造販売承認を取得し、現在、変異株への対応を進めています。同感染症に対する小児用の不活化ワクチンについても、最終段階となる変異株対応の臨床試験を実施しています。加えて、新薬パイプラインの開発加速にも取り組み、5種混合ワクチン「クイントバック®水性懸濁注射用」や、造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病(慢性GVHD)の治療薬である選択的ROCK2阻害剤「レズロック®錠」の製造販売承認を取得しました。海外では、受託製造/受託製造開発(CMO/CDMO)事業の強化・拡大に注力し、インドに完成した新製造棟における商業出荷に向けた準備を確実に進めるなど、生産能力の向上にも努めました。
サステナビリティに関しては、「2023中期経営計画」の基本コンセプトである「明治ROESG®経営の実践」に基づき事業との融合に取り組みました。酪農分野での温室効果ガス(GHG)排出量削減に向け、J-クレジット制度を活用したビジネスモデルの構築に取り組んだほか、カカオ生産を持続可能なものにするため、フルーツや機能素材としてのカカオの可能性を追求し、新しい価値創造にも挑戦してきました。
なお、2024年4月9日付「通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」で公表のとおり、食品セグメントにおいて、中国で牧場を運営する持分法適用会社のAustAsia Group Ltd.が、中国国内における飼料代高騰や生乳価格下落の影響により収益性が悪化したことなどを受け、AustAsia Group Ltd.に係る減損損失62億円を、持分法による投資損失として営業外費用に計上しました。また、中国の市販向け牛乳・ヨーグルト事業において、競合他社との価格競争が激化したことなどによる収益性の悪化を受け、牛乳・ヨーグルト事業に係る有形固定資産の減損損失143億円を特別損失に計上しました。
この結果、当連結会計年度の売上高は 1兆1,054億94百万円(前期比 4.1%増)、営業利益は 843億22百万円(同 11.8%増)、経常利益は 760億20百万円(同 2.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は 506億75百万円(同 27.0%減)となりました。また、ROEは 6.9%、1株当たり当期純利益は 181.64円となりました。
② セグメントの状況
(単位:百万円)
報告セグメント | 合計 | ||||||||
食品 | 医薬品 | ||||||||
前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減 | 前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減 | 前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減 | |
売上高 | 865,609 | 900,127 | 34,518 | 197,280 | 206,109 | 8,829 | 1,062,889 | 1,106,237 | 43,347 |
セグメント 利益 | 55,874 | 64,315 | 8,440 | 21,721 | 22,717 | 995 | 77,596 | 87,032 | 9,436 |
(注) 売上高、セグメント利益は、セグメント間の取引を消去する前の金額によっております。
セグメントの業績の詳細は、次のとおりであります。
Ⅰ.食品
当セグメントにはヨーグルト・チーズ事業 (プロバイオティクス、ヨーグルト、チーズ)、ニュートリション事業 (乳幼児ミルク、スポーツ栄養、流動食、美容)、チョコレート・グミ事業、牛乳事業、業務用食品事業、フローズン・調理食品事業 (アイスクリーム、調理食品、バター・マーガリン類)、海外事業 (海外子会社、輸出)、その他・国内子会社 (国内独立系子会社、キャンデー、OTC)による製造・販売、運送等が含まれております。
売上高は、価格改定効果もあり前連結会計年度を上回りました。幅広い事業で前連結会計年度を上回り、特に業務用食品事業や海外事業は大幅に上回りました。
セグメント利益は前連結会計年度を大幅に上回りました。価格改定効果が原材料コストの上昇や数量減の影響をカバーしました。
事業別の概況は、次のとおりです。
■ヨーグルト・チーズ事業 (プロバイオティクス、ヨーグルト、チーズ)
売上高は前連結会計年度並みとなりました。プロバイオティクスは前連結会計年度並みとなりましたが、ヨーグルトはドリンクタイプの大容量品の終売の影響で減収となりました。チーズは需要拡大や販促強化により、スライスチーズを中心に伸長しました。
営業利益は前連結会計年度を大幅に上回りました。原材料コストが増加しましたが、価格改定効果がコスト増や数量減の影響を上回りました。価格改定による数量への影響を最小化すべくマーケティング投資を強化しました。
■ニュートリション事業 (乳幼児ミルク、スポーツ栄養、流動食、美容)
売上高は前連結会計年度を上回りました。乳幼児ミルクは、価格改定効果に加え、外出機会の増加などにより液体ミルクが大幅に伸長したことで増収となりました。スポーツプロテイン「ザバス」は、粉末タイプが増収となったことに加え、たんぱく質配合量を20gに増量した商品の発売により、ドリンクタイプも大幅に伸長しました。
営業利益は前連結会計年度を大幅に上回りました。原材料コストが増加しましたが、価格改定効果がコスト増や数量減の影響を上回りました。
■チョコレート・グミ事業
売上高は前連結会計年度並みとなりました。チョコレートは、主力の「チョコレート効果」が好調に推移したほか、人流回復やインバウンド需要によりナッツチョコレートが大幅に伸長しました。グミは、子会社譲渡による減収の影響を受けましたが、主力品が好調に推移し、前連結会計年度並みとなりました。
営業利益は、価格改定効果に加えて、構造改革による製造間接費の減少により前連結会計年度を上回りました。
■牛乳事業
売上高は、価格改定効果に加え、「明治おいしい牛乳」シリーズの中小容量品が好調に推移したことにより前連結会計年度を上回りました。
営業利益は、国内生乳価格上昇の影響を受けたものの、価格改定効果や中小容量品の数量増などにより前連結会計年度から損失額が縮小しました。
■業務用食品事業
売上高は前連結会計年度を大幅に上回りました。人流回復により市場が拡大した影響もあり、クリームやバター、カカオなどが伸長しました。
営業利益は、原材料コストと減価償却費などの製造間接費が増加しましたが、価格改定効果や数量増により前連結会計年度を大幅に上回りました。
■フローズン・調理食品事業 (アイスクリーム、調理食品、バター・マーガリン類)
売上高は前連結会計年度を上回りました。アイスクリームは、主力の「明治エッセルスーパーカップ」や付加価値型新商品が好調に推移しました。バター・マーガリン類も好調に推移しました。調理食品は、2023年2月に冷凍ピザを終売した影響により減収となりました。
営業利益は前連結会計年度を大幅に上回りました。価格改定効果が原材料コストや拡売費の増加を上回りました。
■海外事業 (海外子会社、輸出)
売上高は、前連結会計年度を大幅に上回りました。中国の業務用市乳事業や菓子事業、米国や東南アジアの子会社が好調に推移しました。
営業利益は、前連結会計年度から損失額が拡大しました。中国の子会社が、市販用の牛乳・ヨーグルト事業において拡売費が増加したことに加え、2023年1月の天津工場稼働に伴う新規開拓費用や減価償却費も増加したことにより、大幅減益となりました。米国や東南アジアの子会社は増益となりました。
■その他・国内子会社 (国内独立系子会社、キャンデー、OTC)
売上高は前連結会計年度並みとなりました。糖類を扱う商社などが好調に推移しましたが、ガムなどの終売や子会社譲渡が影響しました。
営業利益は、原材料コストの増加に加え、ガムなどの終売影響により前連結会計年度を大幅に下回りました。
Ⅱ.医薬品
当セグメントには、国内医薬品事業、海外医薬品事業、ヒト用ワクチン事業、動物薬事業(動物薬、動物用ワクチン)が含まれております。
売上高は前連結会計年度を上回りました。国内医薬品事業と海外医薬品事業は前連結会計年度を上回り、ヒト用ワクチン事業と動物薬事業は前連結会計年度を下回りました。
セグメント利益は、海外医薬品事業やヒト用ワクチン事業の増益により、前連結会計年度を上回りました。
事業別の概況は、次のとおりです。
■国内医薬品事業
売上高は前連結会計年度を上回りました。抗菌薬「スルバシリン」や「メイアクト」に加え、血漿分画製剤が増収となりました。
営業利益は、薬価改定の影響に加え、アストラゼネカ社の新型コロナウイルスワクチンに関する受託収入の減少や研究開発費の増加により前連結会計年度を大幅に下回りました。
■海外医薬品事業
売上高は前連結会計年度を上回りました。ロイヤリティ収入が減少しましたが、為替影響に加え、スペインやタイの子会社が好調に推移しました。
営業利益は前連結会計年度を大幅に上回りました。海外子会社の増収やインドの子会社の原価低減が寄与しました。
■ヒト用ワクチン事業
売上高は前連結会計年度並みとなりました。4種混合ワクチン「クアトロバック」は好調に推移しましたが、インフルエンザワクチンやB型肝炎ワクチン「ビームゲン」が減収となりました。
営業利益は前連結会計年度を大幅に上回りました。生産効率化に加え、ロイヤリティ収入も寄与しました。
■動物薬事業(動物薬、動物用ワクチン)
売上高は、低収益品の品目数削減の影響を受けましたが、海外向け販売の寄与により前連結会計年度並みとなりました。
営業利益は、原材料コストの増加などにより前連結会計年度を大幅に下回りました。
③ 2023中期経営計画の振り返り(2022年3月期~2024年3月期)
「2023中期経営計画」で掲げた2024年3月期の各指標の達成状況については次表のとおりであります。食品セグメントにおける価格改定などもあり連結売上高目標は達成したものの、コスト高騰などの影響により連結営業利益は目標に届かず、ROEやROICの目標も未達となりました。「明治ROESG®」については、5つのESG外部指標は全て目標水準を達成したものの、ROEが低下したことにより目標未達となりました。
指標 | 2022年3月期 実績 | 2023年3月期 実績 | 2024年3月期 実績 | 2023中期経営計画 (2024年3月期) 当初目標 | |
統合目標 | 明治ROESG® | 12.3ポイント | 13.8ポイント | 12.2ポイント | 13ポイント |
成長性・収益性 | 連結売上高 | 1兆130億円 | 1兆621億円 | 1兆1,054億円 | 1兆800億円 |
・食品セグメント | 8,260億円 | 8,656億円 | 9,001億円 | 8,745億円 | |
・医薬品セグメント | 1,879億円 | 1,972億円 | 2,061億円 | 2,090億円 | |
連結営業利益(率) | 929億円 (9.2%) | 754億円 (7.1%) | 843億円 (7.6%) | 1,200億円 (11.1%) | |
・食品セグメント | 759億円 | 558億円 | 643億円 | 1,020億円 | |
・医薬品セグメント | 186億円 | 217億円 | 227億円 | 185億円 | |
海外売上高 | 929億円 | 1,200億円 | 1,323億円 | 1,345億円 | |
効率性・ 安全性 | ROIC | 8.4% | 6.3% | 6.2% | 10%以上 |
株主還元 | ROE | 13.5% | 10.0% | 6.9% | 11%以上 |
2023中期経営計画における明治ROESG®の計算式および2024年3月期の実績は、次のとおりであります。

2023中期経営計画の総括は次のとおりであります。
●明治ROESG®を掲げ、利益成長とサステナビリティ活動の同時実現を目指した3年間
・食品
国内コア事業の成長力回復は道半ば。海外事業は、米国が順調に拡大。
先行投資してきた中国の一部事業で減損発生
・医薬品
構造改革を断行し、安定して収益が得られるビジネスモデルに転換。
mRNA技術の獲得など次の成長をけん引するパイプラインも充実
・新領域への挑戦
新たな製品やビジネスモデルの創出に向けて、ベンチャー企業やアカデミアとの連携が進む
・サステナビリティ
着実に取り組み、ESG評価は上昇。事業との融合に必要な評価基準などの整備にも取り組む
●ROICを活用した経営管理体制の確立を進める中で、運用方法改善の必要性が生じる。
事業単位や組織などを見直し、ROICによるマネジメントの定着を急ぐ
●ROICの観点から設備投資の一部を選別。戦略的な投資やESG投資は計画通りに進む
●政策保有株式の縮減や固定資産の圧縮に取り組み、強固な財務体質を維持。10期連続で増配
④ 来期の見通しについて
2025年3月期は、世界経済や国内の消費動向に加え、為替の変動、人件費や物流費の上昇などが懸念されますが、当社グループは当期より始まる「2026中期経営計画」の基本方針に則り、目標達成に向けて各戦略を着実に実行してまいります。
食品セグメントでは、国内は、既存ブランドにおける価値訴求強化と高付加価値商品の投入に取り組みます。プロバイオティクスやヨーグルト、チョコレートなどの健康機能を訴求するほか、スポーツプロテインや流動食における提供価値の進化を目指します。また、サステナビリティと事業の融合にも取り組み、栄養による社会課題解決に向け、2023年6月に策定した「Meiji NPS(明治栄養プロファイリングシステム)」を活用し、栄養価値の高い商品の開発・改良を目指します。好調な業務用事業でも、当社の強みを活かした独自商品の展開により、売上規模拡大や収益性向上に取り組みます。海外は、中国において構造改革に注力します。苦戦している市販の牛乳・ヨーグルトは、独自価値商品を投入し、付加価値商品の構成比の拡大に取り組みます。好調な業務用の牛乳・クリームは新規販売先を開拓し、新工場が稼働するチョコレートやフローズンデザートは販売エリアの拡大を目指します。米国では、チョコレートスナックを中心に販路を拡大します。アジアでは、チョコレートや乳幼児ミルクの展開を加速させます。欧州では、ダノン社との協業による粉ミルクの展開を強化します。
医薬品セグメントでは、国内は、社会課題となっている感染症領域に経営資源を集中し、ワクチンと感染症薬のトップ企業としての競争優位性確立と収益性の強化に引き続き取り組みます。人流回復により感染症が流行し、高いレベルで需要が続いている抗菌薬の安定供給に取り組むほか、新たに上市する製品の拡売に注力します。また、当社グループが持つ感染症に関する高い技術・設備や豊富な経験を活かし、2024年秋冬シーズンにおいて、新型コロナウイルス感染症に対する次世代mRNAワクチン(レプリコン)「コスタイベ筋注用」を上市していきます。海外は、CMO/CDMO事業の成長による収益最大化に取り組みます。メドライクグループの生産能力を増強し、既存の生産能力も効率的に活用します。
⑤ 主要な経営指標の推移
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(注)2021年度の期首より「収益認識に関する会計基準」等を適用しており、上記の2021年度以降の指標については当該会計基準等を適用した後の金額となっております。
(2)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績を事業のセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
食品 | 930,277 | 111.6 |
医薬品 | 156,894 | 114.2 |
報告セグメント計 | 1,087,172 | 112.0 |
合計 | 1,087,172 | 112.0 |
(注)セグメント間の取引は含まれておりません。
② 受注実績
当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を立てて生産しております。
一部受注生産を行っておりますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はありません。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績を事業のセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
食品 | 899,406 | 104.0 |
医薬品 | 206,088 | 104.5 |
報告セグメント計 | 1,105,494 | 104.1 |
合計 | 1,105,494 | 104.1 |
(注)1.総販売実績に対する売上の割合が10%以上の相手先はありません。
2.セグメント間の取引は含まれておりません。
(3)財政状態の分析
資産の部では、現金及び預金が前連結会計年度末に比べて 433億38百万円増加し、1,068億58百万円となりました。コミットメントラインの設定額200億円と合わせた手元流動性の残高は1,268億58百万円で、2023中期経営計画で目安としておりました手元流動性の水準(連結売上高の1か月程度)を確保いたしました。受取手形及び売掛金は、前連結会計年度末に比べて 292億38百万円増加し、2,022億39百万円となりました。これは食品セグメント及び医薬品セグメントでの増売や、期末日が金融機関休業日であった影響などによるものであります。有形固定資産は前連結会計年度末に比べて 72億47百万円減少し、4,805億7百万円となりました。これは中国のアイスクリーム工場における設備投資による増加の一方、明治産業㈱及び㈱スリーエスアンドエルの連結除外に伴う減少、中国の牛乳・ヨーグルト事業における固定資産の減損損失の計上などがあったためであります。投資有価証券は、前連結会計年度末に比べて 247億14百万円減少し、879億35百万円となりました。これは主に政策保有株式の売却による減少や、AustAsia Group Ltd.における持分法投資損失の計上などによるものであります。その結果、当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて 690億70百万円増の 1兆2,052億88百万円となりました。
負債の部では、支払手形及び買掛金が前連結会計年度末に比べて 150億36百万円増加し、1,273億48百万円となりました。これは主に期末日が金融機関休業日であった影響によるものであります。未払法人税等が税金費用の増加などにより前連結会計年度末に比べて 58億23百万円増加し、171億22百万円となりました。また、流動負債のその他が未払設備代の増加などにより前連結会計年度末に比べて 259億97百万円増加し、884億75百万円となりました。有利子負債(社債、借入金)は、社債の償還などにより前連結会計年度末に比べて 144億44百万円減少し、499億26百万円となりました。その結果、当連結会計年度における負債合計は、前連結会計年度末に比べて 325億88百万円増の 4,174億94百万円となりました。
純資産の部では、純資産合計が前連結会計年度末に比べて 364億81百万円増の 7,877億93百万円となりました。これは政策保有株式の売却に伴いその他有価証券評価差額金が 98億75百万円減少した一方、利益剰余金が 241億15百万円、為替換算調整勘定が 126億46百万円増加したことなどによるものであります。
この結果、流動比率は前連結会計年度末に比べて 2.2ポイント減の174.7%、デット・エクイティ・レシオは0.02ポイント減の0.07倍、自己資本比率は 0.8ポイント減の61.9%となりましたが、資金の流動性及び財務の安定性を維持しております。なお、1株当たり純資産は前連結会計年度末に比べて 121円3銭増加し、2,674円72銭となりました。
自己資本及び自己資本比率の推移は、次のとおりであります。
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(4)資本の財源及び資金の流動性
① 資本政策の方針
事業活動により得た資金は、持続的な成長に向けて、将来への成長投資や研究開発へ積極的に充当してまいります。また、グループ全体の資本効率の観点から、成長投資については財務規律との調和を図るとともに、政策保有株式などの非事業用資産については縮減します。
株主還元についても経営における重要課題と認識しており、各年度で総還元性向50%以上を目安とし、1株当たり配当額の継続的な増配を目指します。
② 資金調達の方針
資金調達については、資金需要や金利環境等を踏まえつつ、多様化した調達手段の中から資本コストの低減を第一義として、負債により調達することを基本方針とします。一方で、負債の増加に伴う信用リスクの観点から、原則としてデット・エクイティ・レシオは0.5倍までを上限とし、金融情勢に左右されないような高い信用格付の維持にも努めます。なお、本報告書提出時点において、当社は日本格付研究所より「ダブルAマイナス(安定的)」の信用格付を取得しております。
主要な金融機関とは良好な取引関係を維持しており、加えて強固な財務体質を有していることから、当社グループの事業拡大、運営に必要な投資資金及び運転資金の金融機関からの調達に関しては問題なく実施できると認識しております。なお、国内の金融機関との間で合計200億円のコミットメントラインを設定しており、期中の現預金残高とコミットメントライン設定額を合わせた手元流動性の水準を、連結売上高の1か月程度に設定することで、緊急時の流動性を確保いたします。
また、グループ会社を対象に、資金調達の安定化と調達コストの低減を図るため、グループファイナンス制度を導入しております。
当社は、「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」の実現に向けた活動に必要な資金調達の手段として、ICMA(国際資本市場協会:International Capital Market Association)の定めるグリーンボンド原則及びソーシャルボンド原則に基づいた、「サステナビリティファイナンス・フレームワーク」を策定しており、2021年4月に第10回無担保社債(サステナビリティボンド、5年100億円)を発行して資金を調達しました。今後も、本フレームワークに基づき、サステナビリティファイナンスを積極的に活用し、社会課題解決への貢献を一層進めてまいります。
③ キャッシュ・フローの状況
区分 | 前連結会計年度 (百万円) | 当連結会計年度 (百万円) | 増減額 (百万円) |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 85,013 | 107,983 | 22,969 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △36,788 | △24,604 | 12,184 |
フリー・キャッシュ・フロー | 48,224 | 83,378 | 35,154 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △54,734 | △43,772 | 10,962 |
現金及び現金同等物に係る換算差額 | 2,576 | 2,286 | △289 |
現金及び現金同等物の増減額(△減少) | △3,933 | 41,893 | 45,827 |
現金及び現金同等物の期首残高 | 64,872 | 60,939 | △3,933 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 60,939 | 102,832 | 41,893 |
キャッシュ・フロー関連指標の推移は、次のとおりであります。
区分 | 第11期 | 第12期 | 第13期 | 第14期 | 第15期 |
自己資本比率(%) | 56.3 | 58.2 | 60.3 | 62.7 | 61.9 |
時価ベースの自己資本比率(%) | 111.5 | 96.8 | 83.3 | 77.4 | 78.4 |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) | 0.9 | 0.8 | 0.6 | 0.8 | 0.5 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) | 157.0 | 197.2 | 246.3 | 193.6 | 266.3 |
(注)各指標の算出方法
自己資本比率:(純資産の部-非支配株主持分)/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額(期末株価終値×発行済株式総数)/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い(利息の支払額)
※ 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式総数をベースに計算しております。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ 229億69百万円収入増の 1,079億83百万円の収入となりました。これは売上債権が増加した一方で、棚卸資産の減少や仕入債務の増加、法人税等の支払額の減少などがあったためであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ 121億84百万円支出減の 246億4百万円の支出となりました。これは前連結会計年度において横浜研究所の売却などがあり、有形及び無形固定資産の売却による収入が減少した一方で、有形固定資産の取得による支出の減少、政策保有株式の売却による収入や明治産業㈱及び㈱スリーエスアンドエルの子会社株式の売却による収入があったためであります。
これにより、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計額)は、前連結会計年度より 351億54百万円収入増の 833億78百万円の収入となりました。
創出したフリー・キャッシュ・フローについては、配当金の支払いにより株主還元を行うとともに、有利子負債の返済に充当しております。配当については増配を実施し、株主還元の充実に努めました。今後も安定的継続的な利益還元を実施します。なお、配当金の支払額は前連結会計年度より 18億37百万円支出増の 264億44百万円、配当性向は 52.3%であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ 109億62百万円支出減の 437億72百万円の支出となりました。これは前連結会計年度において自己株式の取得による支出があったことなどによるものです。
これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は 1,028億32百万円となりました。
当連結会計年度においては、事業活動に伴う運転資金は金融機関からの借入れ及びコマーシャル・ペーパーにより調達いたしました。
当連結会計年度におけるキャッシュアロケーションは、次のとおりであります。

配当金及びEPS(1株当たり当期純利益)の推移は、次のとおりであります。

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。