有価証券報告書-第10期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
当連結会計年度末における「資産の部」は123,771百万円となり、前連結会計年度末に比べ15,017百万円(前連結会計年度比+13.8%)増加しました。これは主に、現金預金が2,870百万円、受取手形・完成工事未収入金等が8,391百万円、建物・構築物が1,482百万円、機械、運搬具及び工具器具備品が1,034百万円それぞれ増加したことによるものであります。
また、「負債の部」は75,010百万円となり、前連結会計年度末に比べ10,115百万円(前連結会計年度比+15.6%)増加しました。これは主に、支払手形・工事未払金等が3,560百万円、短期借入金が5,921百万円それぞれ増加したことによるものであります。
一方、「純資産の部」は48,761百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,902百万円(前連結会計年度比+11.2%)増加しました。これは主に、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによる利益剰余金の増加によるものであります。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の39.9%から38.9%となりました。
② 経営成績の状況
当社グループを取り巻く事業環境は、鉄構セグメントにおける鋼製橋梁並びに土木セグメントの主力を占めるPC橋梁に関しましては、新設事業はこれまでの緩やかな減少傾向が続くと見込まれる一方で、近年急速に注目されている老朽化対策としての補修・保全工事が全国的に増加してきており、特に高速道路会社からの大規模更新工事や床版取替を中心とした大規模修繕事業の発注が本格化してきています。
また、鉄構セグメントの鉄骨事業や建築セグメントに関しましては、総じて堅調に推移する民間設備投資の効果もあり、当面は首都圏の大型再開発ビルや東京オリンピック・パラリンピック関連投資を中心に底堅く推移することが見込まれるとともに、東京オリンピック・パラリンピック以降においても急激な落ち込みはないものと考えています。
一方で、建設関連業界においては人手不足が顕在化しており、また現在進みつつある少子高齢化社会の問題と昨今の「働き方改革」への対応も含め、当社グループにおいても早急な対応が求められています。加えて、当社グループの主力事業である橋梁事業においては補修・保全工事の増加により、工場製作中心の請負構造より現場施工が中心の請負構造が増加することになり、この事業構造の変化への対応も必要となっており、これらも含め人材の確保・育成が今後の企業経営の大きな課題となってきていると認識しています。当社グループでは今後限られた人材の有効活用による施工体制の整備に加え、CIMへの取り組みやIoTを活用した合理化・省力化を通じた生産性の向上が不可欠と考えています。
また、当社グループのコア事業においては上記課題の他、鋼材を中心とした原材料費や輸送関連コストが上昇しはじめ、収益悪化リスクとなっており、当社グループではこれらのリスクの回避・軽減化に努力してまいる所存です。
このような状況の中、当社グループでは2017年度を初年度とする3ヵ年の第1次中期経営計画を策定し、安定的な事業ボリュームの確保と事業収益の拡大を重視する取り組みを推進することで、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。
その結果、当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高107,250百万円(前連結会計年度比3.7%増)、営業利益4,436百万円(同24.9%減)、経常利益4,586百万円(同47.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,070百万円(同50.0%減)となりました。受注高につきましては122,177百万円(同12.7%増)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高等を含めて記載しています。)
(鉄構セグメント)
鉄構セグメントにおきましては、売上高は、鋼製橋梁事業は前連結会計年度並みの水準にとどまったものの、鉄骨事業において首都圏大型工事の製作が順調に進んだことで、52,788百万円(前連結会計年度比14.9%増)と増加しました。損益面は、設計変更の獲得額が前連結会計年度に比べ減少したことで、営業利益3,771百万円(同9.4%減)となりました。受注高は、年度当初に受注した高速道路会社の大型補修工事をはじめとして、年度を通して国交省・高速道路会社・都道府県からの新設橋梁の受注を獲得できた結果、セグメント全体の受注高は62,606百万円(同32.3%増)となり、前連結会計年度を大幅に上回るとともに、次期繰越高も高い水準となりました。
(土木セグメント)
土木セグメントにおきましては、前連結会計年度からの豊富な繰越高を受け、高速道路会社をはじめとした大型工事が順調に進捗したことで、売上高は31,266百万円(前連結会計年度比8.1%増)と増加しました。損益面は、工期の長い高速道路会社の大型工事が竣工するにあたり設計変更を獲得できたことで、営業利益は1,871百万円(同104.7%増)と前連結会計年度に比べ大幅に増加しました。受注高は、主力の新設PC橋梁の受注が伸び悩んだため、全体でも29,058百万円(同5.7%減)に止まり、前連結会計年度を下回りました。次期繰越高につきましても、前連結会計年度を下回ったものの、引き続き高い水準を維持しています。
(建築セグメント)
建築セグメントにおきましては、繰越工事高は横ばいであったものの、システム建築に比べ工事の進捗の遅い一般建築割合の増加に加え、当連結会計年度における受注が中盤以降に集中したことで、当連結会計年度の出来高が伸びず、売上高は12,818百万円(前連結会計年度比30.0%減)となりました。損益面は、売上高が減少したことに加え、採算性の高いシステム建築の割合が低下したことで、営業利益は825百万円(同64.2%減)となりました。受注高は第2四半期以降に受注を積み上げることができたことで、18,235百万円(同0.3%減)と前連結会計年度並みの水準を維持するとともに、繰越高は前連結会計年度を上回りました。
(その他)
その他におきましては、売上高は12,563百万円(前連結会計年度比3.8%増)となりましたが、損益面は、販売費及び一般管理費が増加したことで営業損失26百万円(前連結会計年度は営業利益200百万円)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,869百万円増加し11,240百万円(前連結会計年度比+34.3%)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、3,328百万円の資金増加(前連結会計年度は13,855百万円の資金増加)となりました。これは主に、仕入債務の増加によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、3,232百万円の資金減少(前連結会計年度は3,338百万円の資金減少)となりました。これは主に、設備投資による固定資産の取得等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、2,774百万円の資金増加(前連結会計年度は8,223百万円の資金減少)となりました。これは主に、借入金の増加によるものであります。
(注) 「第2 事業の状況」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額で表示しています。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。
(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。
(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載していません。
なお、参考のため連結子会社である川田工業㈱個別の事業の状況は次のとおりであります。
a.生産実績
(注)1 生産高は、当事業年度工事総費用を契約高に換算したものであります。
2 生産高には、外注生産高が含まれています。
b.受注実績
(注)1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含みます。従って、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれています。
2 当事業年度の次期繰越工事高のうち請負金額40億円以上の主なものは、次のとおりであります。
c.販売実績
(注)1 前事業年度の完成工事高のうち請負金額20億円以上の主なものは、次のとおりであります。
当事業年度の完成工事高のうち請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上となる相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
前事業年度
100分の10以上の相手先はありません。
当事業年度
渋谷駅街区東棟新築工事共同企業体(代表 東急建設㈱) 7,391百万円 11.3%
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表作成にあたっては、当連結会計年度末日における資産・負債の報告金額並びに当連結会計年度における収益・費用の報告金額に関する見積り、判断及び仮定を使用する必要があります。その詳細は「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されています。
これらの中で当連結会計年度の報告に大きく影響を与えるものに工事進行基準の適用があり、これによる売上高は、94,888百万円を計上しています。
また、前連結会計年度同様、工事損失引当金の計上は大きな影響があります。当連結会計年度末においては、当社グループは、昨今の受注環境の悪化を背景とした未成工事の将来の損失に備え、1,498百万円を計上しています。
また、見積りの中で大きな影響を持つものとして、繰延税金資産の評価があります。当社グループは、各社の将来の収益力を源泉とした課税所得に基づくタックスプランニングを行い、充分に回収可能性を検討し同資産の評価額を決定しています。当連結会計年度においては、グループ各社の回収可能性を検討した結果、繰延税金資産は1,666百万円となっています。
このほか、当社グループの保有する資産に将来キャッシュ・フローを見積もり、その見積もった将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、帳簿価額を回収可能価額まで直接減額しています。当連結会計年度において検討した結果、減損損失として211百万円を計上しています。
② 当連結会計年度の経営成績等状況に関する認識及び分析・検討内容
(イ)当社グループの当連結会計年度の経営成績については、売上高は大型工事が順調に進捗したことにより、前連結会計年度に比べ3.7%増の107,250百万円となりましたが、営業利益は採算性の高い工事の減少並びに研究開発費などの販売費及び一般管理費の増加により、前連結会計年度に比べ24.9%減の4,436百万円となりました。また、経常利益は持分法による投資利益が前連結会計年度より2,821百万円減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ47.3%減の4,586百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は法人税等の増加により、前連結会計年度に比べ50.0%減の4,070百万円となりました。
(ロ)当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、次のとおりであります。
・当社グループを取り巻く事業環境は、基本的に建設市場が縮小していく中での供給過剰状態にあり競争が熾烈であります。
・鉄構セグメントの鋼橋事業、土木セグメントのPC橋事業、その他のソフトウエア事業並びに橋梁用品販売の市場は公共工事予算、特に道路関係予算の影響を直接受けます。発注先の入札制度等の改革も大きな影響があります。
・鉄構セグメントの鉄骨事業は、超高層ビルを主体としたオフィス需要の影響を受け、建築セグメントの建築事業は民間非住宅需要や住宅マンション需要による民間設備投資に影響を強く受けます。
・鉄構セグメントの主要な材料は熱延鋼板等の鋼材であり、原料価格、高炉各社の供給体制・経営戦略、海外のインフラ需要等の影響を強く受けます。
・地震等の自然災害や突発的事象に起因する生産工場等の設備の損壊、電力・水道等のインフラ途絶による操業の中断は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(ハ)セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
当社グループとしましては、法令等遵守意識の徹底はもとより、内部統制システムを効率的に実施することにより、信頼の確保に最大限の努力をしてまいります。
当社の基本戦略は、当社グループの企業が各々持つ専門的な技術を活かしてシナジー効果を高め売上と利益の拡大を継続的に図るとともに、関連する新市場への進出を図ることであります。当社グループのコアコンピタンスである公共建設事業においては、入札制度改革の中で技術力による差別化の重要性を強く認識し、設計・製作・施工技術の強化を図るとともに、発注価格を市場価格ととらえ、グループ全体としてのコスト縮減を図り、利益を確保することにより、内部留保の厚みを増すと共に、配当を安定的かつ継続的に行うことを重要課題として取り組みます。
・鉄構セグメントにおける鋼橋分野では、複合構造橋梁・合成床版の拡販と海外市場並びに土木・海洋土木構造物市場への展開に努力してまいります。鉄骨分野では、採算性を重視した選別受注に努め、大重量を扱える利点を損なうことなく新たな構造への対応を図るとともに、鉄骨建方への挑戦を続けてまいります。また、海外市場へは十分なリスク管理のもとで展開を図ってまいります。
・土木セグメントにおけるPC橋分野では、「PC」・「保全」・「プレキャスト」の3本柱を主体とする事業体制を確立し、プロジェクト・マネジメントを取り入れ、受注と利益拡大、固定費圧縮、原価低減の徹底を図ります。
・建築セグメントにおける建築分野では、工事規模の適正化を図り、技術提案等によるコスト削減を更に進め、システム建築市場の拡張を図ります。
・その他のソフトウエア事業並びに橋梁用品販売事業は新商品の拡販と引き続き固定費の圧縮を行うことにより採算性の向上を図ります。ロボティクス事業では、人間型ロボット等で蓄積されたデバイス技術の商用化と位置づけた次世代産業型ロボットの受注機会拡大と収益力の向上を図ります。
・持分法適用会社である佐藤工業㈱との業務提携につきましても、技術交流、保有資産の相互利用等を通じ、相互補完体制の確立・強化を図っています。
(ニ)当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。
・資金需要
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは橋梁やビル用鉄骨製作に係る原材料費、外注費、労務費、それらについての一般管理費等があります。また、設備資金需要としては橋梁及び同関連製品やビル用鉄骨を製作・加工する工場用の土地や建物、機械設備のほか、航空関連事業を営むために必要なヘリコプターの機体や整備工場や格納庫等があります。
・財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するために、内部資金の活用とともに金融機関からの借入を中心とした資金調達を行っています。
運転資金需要については当社グループのコア事業が個別受注型の事業形態であるため、受注した案件の金額や工期、回収条件によって必要となる運転資金の額や時期が異なります。そのことを踏まえ、その時々の受注内容を全体として管理しながら必要な運転資金を調達しています。また基本的には複数年に亘る案件がほとんどであるため、調達に際しては必要金額の全体を俯瞰した上で、短期資金と長期資金とを組み合わせ、資金調達の安定性と流動性を確保するとともに、金利面については過度の金利変動リスクを回避すべく、一部資金調達においては金利スワップなどの手段を活用しています。
金融機関とは177億円の当座貸越契約を締結するなど、十分な借入枠を確保するとともに、平素より業績や資金の状況について説明を行うことで、信頼関係の維持を図っています。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
当連結会計年度末における「資産の部」は123,771百万円となり、前連結会計年度末に比べ15,017百万円(前連結会計年度比+13.8%)増加しました。これは主に、現金預金が2,870百万円、受取手形・完成工事未収入金等が8,391百万円、建物・構築物が1,482百万円、機械、運搬具及び工具器具備品が1,034百万円それぞれ増加したことによるものであります。
また、「負債の部」は75,010百万円となり、前連結会計年度末に比べ10,115百万円(前連結会計年度比+15.6%)増加しました。これは主に、支払手形・工事未払金等が3,560百万円、短期借入金が5,921百万円それぞれ増加したことによるものであります。
一方、「純資産の部」は48,761百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,902百万円(前連結会計年度比+11.2%)増加しました。これは主に、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによる利益剰余金の増加によるものであります。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の39.9%から38.9%となりました。
② 経営成績の状況
当社グループを取り巻く事業環境は、鉄構セグメントにおける鋼製橋梁並びに土木セグメントの主力を占めるPC橋梁に関しましては、新設事業はこれまでの緩やかな減少傾向が続くと見込まれる一方で、近年急速に注目されている老朽化対策としての補修・保全工事が全国的に増加してきており、特に高速道路会社からの大規模更新工事や床版取替を中心とした大規模修繕事業の発注が本格化してきています。
また、鉄構セグメントの鉄骨事業や建築セグメントに関しましては、総じて堅調に推移する民間設備投資の効果もあり、当面は首都圏の大型再開発ビルや東京オリンピック・パラリンピック関連投資を中心に底堅く推移することが見込まれるとともに、東京オリンピック・パラリンピック以降においても急激な落ち込みはないものと考えています。
一方で、建設関連業界においては人手不足が顕在化しており、また現在進みつつある少子高齢化社会の問題と昨今の「働き方改革」への対応も含め、当社グループにおいても早急な対応が求められています。加えて、当社グループの主力事業である橋梁事業においては補修・保全工事の増加により、工場製作中心の請負構造より現場施工が中心の請負構造が増加することになり、この事業構造の変化への対応も必要となっており、これらも含め人材の確保・育成が今後の企業経営の大きな課題となってきていると認識しています。当社グループでは今後限られた人材の有効活用による施工体制の整備に加え、CIMへの取り組みやIoTを活用した合理化・省力化を通じた生産性の向上が不可欠と考えています。
また、当社グループのコア事業においては上記課題の他、鋼材を中心とした原材料費や輸送関連コストが上昇しはじめ、収益悪化リスクとなっており、当社グループではこれらのリスクの回避・軽減化に努力してまいる所存です。
このような状況の中、当社グループでは2017年度を初年度とする3ヵ年の第1次中期経営計画を策定し、安定的な事業ボリュームの確保と事業収益の拡大を重視する取り組みを推進することで、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。
その結果、当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高107,250百万円(前連結会計年度比3.7%増)、営業利益4,436百万円(同24.9%減)、経常利益4,586百万円(同47.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,070百万円(同50.0%減)となりました。受注高につきましては122,177百万円(同12.7%増)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高等を含めて記載しています。)
(鉄構セグメント)
鉄構セグメントにおきましては、売上高は、鋼製橋梁事業は前連結会計年度並みの水準にとどまったものの、鉄骨事業において首都圏大型工事の製作が順調に進んだことで、52,788百万円(前連結会計年度比14.9%増)と増加しました。損益面は、設計変更の獲得額が前連結会計年度に比べ減少したことで、営業利益3,771百万円(同9.4%減)となりました。受注高は、年度当初に受注した高速道路会社の大型補修工事をはじめとして、年度を通して国交省・高速道路会社・都道府県からの新設橋梁の受注を獲得できた結果、セグメント全体の受注高は62,606百万円(同32.3%増)となり、前連結会計年度を大幅に上回るとともに、次期繰越高も高い水準となりました。
(土木セグメント)
土木セグメントにおきましては、前連結会計年度からの豊富な繰越高を受け、高速道路会社をはじめとした大型工事が順調に進捗したことで、売上高は31,266百万円(前連結会計年度比8.1%増)と増加しました。損益面は、工期の長い高速道路会社の大型工事が竣工するにあたり設計変更を獲得できたことで、営業利益は1,871百万円(同104.7%増)と前連結会計年度に比べ大幅に増加しました。受注高は、主力の新設PC橋梁の受注が伸び悩んだため、全体でも29,058百万円(同5.7%減)に止まり、前連結会計年度を下回りました。次期繰越高につきましても、前連結会計年度を下回ったものの、引き続き高い水準を維持しています。
(建築セグメント)
建築セグメントにおきましては、繰越工事高は横ばいであったものの、システム建築に比べ工事の進捗の遅い一般建築割合の増加に加え、当連結会計年度における受注が中盤以降に集中したことで、当連結会計年度の出来高が伸びず、売上高は12,818百万円(前連結会計年度比30.0%減)となりました。損益面は、売上高が減少したことに加え、採算性の高いシステム建築の割合が低下したことで、営業利益は825百万円(同64.2%減)となりました。受注高は第2四半期以降に受注を積み上げることができたことで、18,235百万円(同0.3%減)と前連結会計年度並みの水準を維持するとともに、繰越高は前連結会計年度を上回りました。
(その他)
その他におきましては、売上高は12,563百万円(前連結会計年度比3.8%増)となりましたが、損益面は、販売費及び一般管理費が増加したことで営業損失26百万円(前連結会計年度は営業利益200百万円)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,869百万円増加し11,240百万円(前連結会計年度比+34.3%)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、3,328百万円の資金増加(前連結会計年度は13,855百万円の資金増加)となりました。これは主に、仕入債務の増加によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、3,232百万円の資金減少(前連結会計年度は3,338百万円の資金減少)となりました。これは主に、設備投資による固定資産の取得等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、2,774百万円の資金増加(前連結会計年度は8,223百万円の資金減少)となりました。これは主に、借入金の増加によるものであります。
(注) 「第2 事業の状況」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額で表示しています。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前期比(%) | 受注残高(百万円) | 前期比(%) |
鉄構 | 62,606 | +32.3 | 86,469 | +12.8 |
土木 | 29,058 | △5.7 | 32,481 | △6.4 |
建築 | 18,235 | △0.3 | 17,264 | +45.7 |
その他 | 12,277 | +2.5 | 1,093 | △20.8 |
合計 | 122,177 | +12.7 | 137,307 | +10.2 |
(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前期比(%) |
鉄構 | 52,788 | +14.9 |
土木 | 31,266 | +8.1 |
建築 | 12,818 | △30.0 |
その他 | 12,563 | +3.8 |
合計 | 109,438 | +4.0 |
(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載していません。
なお、参考のため連結子会社である川田工業㈱個別の事業の状況は次のとおりであります。
a.生産実績
セグメントの名称 | 前事業年度 (自 2016年4月1日 至 2017年3月31日) | 当事業年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) |
金額(百万円) | 金額(百万円) | |
鉄構 | 45,736 | 52,786(15.4%増) |
建築 | 18,073 | 12,462(31.0%減) |
その他 | 363 | 462(27.1%増) |
合計 | 64,174 | 65,711( 2.4%増) |
(注)1 生産高は、当事業年度工事総費用を契約高に換算したものであります。
2 生産高には、外注生産高が含まれています。
b.受注実績
期別 | セグメントの名称 | 前期繰越工事高(百万円) | 当期受注工事高(百万円) | 計 (百万円) | 当期完成工事高(百万円) | 次期繰越工事高(百万円) |
前事業年度 (自 2016年4月1日 至 2017年3月31日) | 鉄構 | 75,286 | 47,097 | 122,384 | 45,723 | 76,660 |
建築 | 11,857 | 18,297 | 30,155 | 18,308 | 11,847 | |
その他 | - | 164 | 164 | 164 | - | |
合計 | 87,144 | 65,559 | 152,704 | 64,196 | 88,508 | |
当事業年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) | 鉄構 | 76,660 | 62,477 | 139,138 | 52,613 | 86,524 |
建築 | 11,847 | 18,235 | 30,082 | 12,818 | 17,264 | |
その他 | - | 154 | 154 | 154 | - | |
合計 | 88,508 | 80,867 | 169,375 | 65,587 | 103,788 |
(注)1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含みます。従って、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれています。
2 当事業年度の次期繰越工事高のうち請負金額40億円以上の主なものは、次のとおりであります。
渋谷駅街区東棟新築工事共同企業体 | 渋谷駅街区東棟新築工事 | 2018年11月完成予定 |
首都高速道路㈱ | 高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事 | 2025年7月 〃 |
首都高速道路㈱ | (修)上部工補強工事1-207 | 2020年1月 〃 |
中日本高速道路㈱ | 名古屋第二環状自動車道 服部高架橋他2橋(鋼上部工)工事 | 2019年5月 〃 |
鹿島建設㈱ | 鉄骨17 地上鉄骨製作B棟-2 | 2019年3月 〃 |
c.販売実績
セグメントの名称 | 前事業年度 (自 2016年4月1日 至 2017年3月31日) | 当事業年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) |
金額(百万円) | 金額(百万円) | |
鉄構 | 45,723 | 52,613(15.1%増) |
建築 | 18,308 | 12,818(30.0%減) |
その他 | 164 | 154( 6.3%減) |
合計 | 64,196 | 65,587( 2.2%増) |
(注)1 前事業年度の完成工事高のうち請負金額20億円以上の主なものは、次のとおりであります。
日鉄住金物産㈱ | 六本木三丁目東地区再開発 |
東日本高速道路㈱ | 東京外環自動車道 高州高架橋(鋼上部工)北工事 |
首都高速道路㈱ | (高負)YK42工区(1-2)YK43工区(B(1)・D(1)連結路)上部・橋脚工事 |
㈱竹中工務店 | 朝日中之島西地区タワー |
西日本高速道路㈱ | 新名神高速道路 八幡ジャンクション橋(鋼上部工)工事 |
当事業年度の完成工事高のうち請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。
大塚倉庫㈱ | (仮称)大塚倉庫㈱赤穂営業所 赤穂第3倉庫新築工事 |
㈱竹中工務店 | 構真柱・地下・地上低層鉄骨工事 |
㈱大林組 | 鉄骨工事(C棟) |
西日本高速道路㈱ | 新名神高速道路 北山川橋(鋼上部工)工事 |
西日本高速道路㈱ | 高松自動車道 津田川橋他2橋(鋼上部工)工事 |
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上となる相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
前事業年度
100分の10以上の相手先はありません。
当事業年度
渋谷駅街区東棟新築工事共同企業体(代表 東急建設㈱) 7,391百万円 11.3%
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表作成にあたっては、当連結会計年度末日における資産・負債の報告金額並びに当連結会計年度における収益・費用の報告金額に関する見積り、判断及び仮定を使用する必要があります。その詳細は「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されています。
これらの中で当連結会計年度の報告に大きく影響を与えるものに工事進行基準の適用があり、これによる売上高は、94,888百万円を計上しています。
また、前連結会計年度同様、工事損失引当金の計上は大きな影響があります。当連結会計年度末においては、当社グループは、昨今の受注環境の悪化を背景とした未成工事の将来の損失に備え、1,498百万円を計上しています。
また、見積りの中で大きな影響を持つものとして、繰延税金資産の評価があります。当社グループは、各社の将来の収益力を源泉とした課税所得に基づくタックスプランニングを行い、充分に回収可能性を検討し同資産の評価額を決定しています。当連結会計年度においては、グループ各社の回収可能性を検討した結果、繰延税金資産は1,666百万円となっています。
このほか、当社グループの保有する資産に将来キャッシュ・フローを見積もり、その見積もった将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、帳簿価額を回収可能価額まで直接減額しています。当連結会計年度において検討した結果、減損損失として211百万円を計上しています。
② 当連結会計年度の経営成績等状況に関する認識及び分析・検討内容
(イ)当社グループの当連結会計年度の経営成績については、売上高は大型工事が順調に進捗したことにより、前連結会計年度に比べ3.7%増の107,250百万円となりましたが、営業利益は採算性の高い工事の減少並びに研究開発費などの販売費及び一般管理費の増加により、前連結会計年度に比べ24.9%減の4,436百万円となりました。また、経常利益は持分法による投資利益が前連結会計年度より2,821百万円減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ47.3%減の4,586百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は法人税等の増加により、前連結会計年度に比べ50.0%減の4,070百万円となりました。
(ロ)当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、次のとおりであります。
・当社グループを取り巻く事業環境は、基本的に建設市場が縮小していく中での供給過剰状態にあり競争が熾烈であります。
・鉄構セグメントの鋼橋事業、土木セグメントのPC橋事業、その他のソフトウエア事業並びに橋梁用品販売の市場は公共工事予算、特に道路関係予算の影響を直接受けます。発注先の入札制度等の改革も大きな影響があります。
・鉄構セグメントの鉄骨事業は、超高層ビルを主体としたオフィス需要の影響を受け、建築セグメントの建築事業は民間非住宅需要や住宅マンション需要による民間設備投資に影響を強く受けます。
・鉄構セグメントの主要な材料は熱延鋼板等の鋼材であり、原料価格、高炉各社の供給体制・経営戦略、海外のインフラ需要等の影響を強く受けます。
・地震等の自然災害や突発的事象に起因する生産工場等の設備の損壊、電力・水道等のインフラ途絶による操業の中断は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(ハ)セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
当社グループとしましては、法令等遵守意識の徹底はもとより、内部統制システムを効率的に実施することにより、信頼の確保に最大限の努力をしてまいります。
当社の基本戦略は、当社グループの企業が各々持つ専門的な技術を活かしてシナジー効果を高め売上と利益の拡大を継続的に図るとともに、関連する新市場への進出を図ることであります。当社グループのコアコンピタンスである公共建設事業においては、入札制度改革の中で技術力による差別化の重要性を強く認識し、設計・製作・施工技術の強化を図るとともに、発注価格を市場価格ととらえ、グループ全体としてのコスト縮減を図り、利益を確保することにより、内部留保の厚みを増すと共に、配当を安定的かつ継続的に行うことを重要課題として取り組みます。
・鉄構セグメントにおける鋼橋分野では、複合構造橋梁・合成床版の拡販と海外市場並びに土木・海洋土木構造物市場への展開に努力してまいります。鉄骨分野では、採算性を重視した選別受注に努め、大重量を扱える利点を損なうことなく新たな構造への対応を図るとともに、鉄骨建方への挑戦を続けてまいります。また、海外市場へは十分なリスク管理のもとで展開を図ってまいります。
・土木セグメントにおけるPC橋分野では、「PC」・「保全」・「プレキャスト」の3本柱を主体とする事業体制を確立し、プロジェクト・マネジメントを取り入れ、受注と利益拡大、固定費圧縮、原価低減の徹底を図ります。
・建築セグメントにおける建築分野では、工事規模の適正化を図り、技術提案等によるコスト削減を更に進め、システム建築市場の拡張を図ります。
・その他のソフトウエア事業並びに橋梁用品販売事業は新商品の拡販と引き続き固定費の圧縮を行うことにより採算性の向上を図ります。ロボティクス事業では、人間型ロボット等で蓄積されたデバイス技術の商用化と位置づけた次世代産業型ロボットの受注機会拡大と収益力の向上を図ります。
・持分法適用会社である佐藤工業㈱との業務提携につきましても、技術交流、保有資産の相互利用等を通じ、相互補完体制の確立・強化を図っています。
(ニ)当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。
・資金需要
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは橋梁やビル用鉄骨製作に係る原材料費、外注費、労務費、それらについての一般管理費等があります。また、設備資金需要としては橋梁及び同関連製品やビル用鉄骨を製作・加工する工場用の土地や建物、機械設備のほか、航空関連事業を営むために必要なヘリコプターの機体や整備工場や格納庫等があります。
・財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するために、内部資金の活用とともに金融機関からの借入を中心とした資金調達を行っています。
運転資金需要については当社グループのコア事業が個別受注型の事業形態であるため、受注した案件の金額や工期、回収条件によって必要となる運転資金の額や時期が異なります。そのことを踏まえ、その時々の受注内容を全体として管理しながら必要な運転資金を調達しています。また基本的には複数年に亘る案件がほとんどであるため、調達に際しては必要金額の全体を俯瞰した上で、短期資金と長期資金とを組み合わせ、資金調達の安定性と流動性を確保するとともに、金利面については過度の金利変動リスクを回避すべく、一部資金調達においては金利スワップなどの手段を活用しています。
金融機関とは177億円の当座貸越契約を締結するなど、十分な借入枠を確保するとともに、平素より業績や資金の状況について説明を行うことで、信頼関係の維持を図っています。