有価証券報告書-第12期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/07/31 10:39
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
当連結会計年度末における「資産の部」は139,093百万円となり、前連結会計年度末に比べ11,030百万円(前連結会計年度比+8.6%)増加しました。これは主に、受取手形・完成工事未収入金等が9,465百万円、関係会社株式が2,168百万円それぞれ増加したことによるものであります。
また、「負債の部」は78,463百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,645百万円(前連結会計年度比+7.8%)増加しました。これは主に、支払手形・工事未払金等が5,034百万円、短期借入金が8,507百万円それぞれ増加した一方、未払法人税等が1,132百万円、未成工事受入金が3,896百万円それぞれ減少したことによるものであります。
一方、「純資産の部」は60,630百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,384百万円(前連結会計年度比+9.7%)増加しました。これは主に、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによる利益剰余金の増加によるものであります。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の42.6%から43.0%となりました。
② 経営成績の状況
当社グループは、2017年5月に「第1次中期経営計画(2017年度~2019年度)」を策定し、基本方針に基づき、その実現に向けて各種施策を取り組んでまいりました。計画期間中は、政府による経済政策の推進や老朽化を迎えている社会インフラの維持保全ニーズの高まりにより公共投資は堅調に推移し、また企業収益の改善や首都圏を中心とした再開発が活況を呈すなど民間設備投資も増加基調となり、総じて良好な事業環境のもと、受注及び利益の確保に努めてきた結果、業績は増収増益を継続し、数値目標を達成することができました。
しかしながら、今後の建設業を取り巻く事業環境については、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により民間設備投資の縮小が懸念され、公共投資についても、新設から保全・補修へと構造変化が進んでいることから、大きな転換期を迎えています。また建設産業全体の課題である担い手不足の深刻化が見込まれることに加え、ICT、ロボット、AIなど先進的な技術革新が急速に進み、建設生産プロセスにおけるデジタル化の進展が予想されています。
こうした事業環境に対し、2020年6月に「第2次中期経営計画(2020年度~2022年度)」を策定し、各種施策を取り組んでいくことで、転換期における持続的な成長を実現し、魅力溢れる企業集団を目指してまいります。
当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高127,048百万円(前連結会計年度比7.3%増)、営業利益6,759百万円(同11.4%増)、経常利益8,543百万円(同0.03%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は6,449百万円(同6.4%増)となりました。受注高につきましては、前連結会計年度において過去最高を記録した中、112,000百万円の受注目標を定めていましたが、鉄構並びに建築セグメントが伸び悩んだため106,384百万円(同24.9%減)になりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高等を含めて記載しています。)
(鉄構セグメント)
鉄構セグメントにおきましては、売上高は、鉄骨事業において首都圏再開発工事の減少を関西地区の工事で補うことができたことで前連結会計年度とほぼ同じボリュームでしたが、橋梁事業において高速道路会社発注の大型新設鋼製橋梁や大規模更新工事が順調に進捗したことにより、61,691百万円(前連結会計年度比16.3%増)と前連結会計年度を大幅に上回る結果となりました。損益面は、鉄骨事業において当第3四半期までに大型工事の設計変更獲得や採算性が高い工事の進捗が順調に推移したことに加え、当第4四半期においても発注者との設計変更協議が順調に進んだことで高い収益性を維持しました。その一方で、橋梁事業において採算性の厳しい工事が進捗したことや一部工事で設計変更協議を進めてきた中、当連結会計年度での設計変更の獲得までには至らず、結果として原価が先行したことにより、営業利益は4,307百万円(同5.7%減)となりました。受注高は、鉄骨事業において、当第4四半期で首都圏を中心とした大型再開発工事の受注を積み重ねることができたことで前連結会計年度を上回る結果となったものの、橋梁事業において発注量が前連結会計年度に比べ大幅に減少する中、豊富な繰越案件を抱えていたことで、応札に必要な配置予定技術者が逼迫し、応札案件の絞り込みを余儀なくされたことで受注高は、42,056百万円(同23.1%減)となりました。
(土木セグメント)
土木セグメントにおきましては、売上高は、高速道路会社の保全工事を中心に順調に進捗したことに加え、当連結会計年度に大型工事の設計変更が獲得できたことにより、36,662百万円(前連結会計年度比9.8%増)と前連結会計年度を上回る結果となりました。損益面は、床版取替工事の更新事業において当連結会計年度での設計変更の獲得までには至らず、原価が先行した工事があったものの、新設PC橋梁と保全工事の大型案件において設計変更の獲得ができたことにより、営業利益は2,968百万円(同65.9%増)と大幅に改善しました。受注高は、前連結会計年度からの豊富な繰越高を受け、選別受注を行ったこともあり前年同期より減少したものの、国土交通省、高速道路会社を中心に受注を積み重ねることができたことで38,498百万円(同24.9%減)となりました。この結果、当連結会計年度における次期繰越高は過去最高となりました。
(建築セグメント)
建築セグメントにおきましては、売上高は、前連結会計年度からの豊富な繰越高を受け、繰越高におけるシステム建築及びS造建築の大型工事は概ね順調に進捗したものの、当連結会計年度の受注高が落ち込んだことにより売上高は19,951百万円(前連結会計年度比7.2%減)となりました。損益面は、売上ボリュームが減少した中、システム建築及びS造建築の採算性改善により粗利益は増加したものの、事務所移転に伴い管理費が増加したことにより、営業利益1,376百万円(同11.5%減)となりました。受注高は、当第4四半期でシステム建築を中心とした大型工事の受注を積み重ねることができましたが、当第3四半期までの伸び悩みを補うまでには至らなかったことで13,479百万円(同40.9%減)となりました。
(その他)
その他におきましては、売上高は12,641百万円(前連結会計年度比1.9%増)、損益面につきましては、ソフトウエア関連及び橋梁付属物販売の売上増加による利益が増加したことなどにより、営業利益668百万円(同61.2%増)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,354百万円減少し9,275百万円(前連結会計年度比△12.7%)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、4,126百万円の資金減少(前連結会計年度は13,031百万円の資金増加)となりました。これは主に、売上債権の増加によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、2,764百万円の資金減少(前連結会計年度は3,811百万円の資金減少)となりました。これは主に、設備投資による固定資産の取得等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、5,535百万円の資金増加(前連結会計年度は9,847百万円の資金減少)となりました。これは主に、借入金の増加によるものであります。
(注) 「第2 事業の状況」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額で表示しています。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)
鉄構42,056△23.168,510△22.3
土木38,498△24.952,1663.6
建築13,479△40.912,114△34.8
その他12,349△3.71,218△19.3
合計106,384△24.9134,009△15.5

(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)
鉄構61,69116.3
土木36,6629.8
建築19,951△7.2
その他12,6411.9
合計130,9478.8

(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載していません。
なお、参考のため連結子会社である川田工業㈱個別の事業の状況は次のとおりであります。
a.生産実績
セグメントの名称前事業年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
当事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
金額(百万円)金額(百万円)
鉄構52,76163,658(20.7%増)
建築21,02919,570( 6.9%減)
その他416272(34.7%減)
合計74,20883,501(12.5%増)

(注)1 生産高は、当事業年度工事総費用を契約高に換算したものであります。
2 生産高には、外注生産高が含まれています。
b.受注実績
期別セグメントの名称前期繰越工事高(百万円)当期受注工事高(百万円)
(百万円)
当期完成工事高(百万円)次期繰越工事高(百万円)
前事業年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
鉄構86,52454,643141,16852,96388,205
建築17,26422,81140,07521,48918,586
その他-160160160-
合計103,78877,616181,40574,613106,791
当事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
鉄構88,20541,984130,19061,50068,689
建築18,58613,47932,06619,95112,114
その他-171171171-
合計106,79155,635162,42781,62380,803

(注)1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含みます。従って、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれています。
2 当事業年度の次期繰越工事高のうち請負金額40億円以上の主なものは、次のとおりであります。
首都高速道路㈱高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事2025年7月完成予定
㈱竹中工務店八重洲二丁目北地区第一種市街地再開発事業新築工事 A-1街区2021年8月 〃
首都高速道路㈱(修)上部工補強工事1-2072020年10月 〃
清水建設㈱鉄骨関連その他工事2022年2月 〃
中日本高速道路㈱名古屋第二環状自動車道 服部高架橋他2橋(鋼上部工)工事2021年1月 〃

c.販売実績
セグメントの名称前事業年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
当事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
金額(百万円)金額(百万円)
鉄構52,96361,500(16.1%増)
建築21,48919,951( 7.2%減)
その他160171( 6.3%増)
合計74,61381,623( 9.4%増)

(注)1 前事業年度の完成工事高のうち請負金額20億円以上の主なものは、次のとおりであります。
東日本高速道路㈱北海道横断自動車道 塩谷川橋(鋼上部工)工事
大成建設㈱新国立競技場整備事業(第2期)
渋谷駅南街区プロジェクト新築工事共同企業体渋谷駅南街区プロジェクトJVに伴うB-1棟地上1節~7節本体鉄骨現場工事(工期延伸)
国土交通省平成26年度 三遠南信天龍峡大橋鋼上部工事
日本梱包運輸倉庫㈱(仮称)日本梱包運輸倉庫㈱狭山梱包センター第4期柏原倉庫建設工事

当事業年度の完成工事高のうち請負金額20億円以上の主なものは、次のとおりであります。
渋谷駅街区東棟新築工事共同企業体渋谷駅街区東棟新築工事
鹿島建設㈱(仮称)OH-1計画新築工事
中日本高速道路㈱名古屋第二環状自動車道 飛島ジャンクションCランプ橋他3橋(鋼上部工)工事
首都高速道路㈱(改)小松川JCT陸側上部工事
合同会社シャロンテック天戸町(仮称)天戸町特定流通業務施設計画

2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上となる相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
前事業年度
100分の10以上の相手先はありません。
当事業年度
100分の10以上の相手先はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(イ)財政状態
財政状態の状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりでありますが、その中の特徴といたしましては、事業に関わる売掛債権(受取手形・完成工事未収入金等)が9,465百万円、また短期借入金が8,507百万円、いずれも前連結会計年度に比べ大きく増加した点が挙げられます。これは特に鉄構セグメントの中の橋梁事業において複数の大型案件が進んでいることで運転資金が増加し、それを主に借入金で賄ったためであります。
また、関係会社株式が同じく2,168百万円増加していますが、これは持分法適用会社に係る持分法による投資利益を2,247百万円計上したことによるものであります。
(ロ)経営成績
当連結会計年度は2017年を初年度とする第1次中期経営計画の最終年度でしたが、その経営計画期間中は概ね良好な事業環境に支えられ、当初の最終年度目標を2年目にクリアし、3年目の当連結会計年度は売上高、営業利益において過去最高を記録するなど当初計画は十分達成できたと考えています。その一方で当該期間中は総じて高い水準を維持してきた受注残高は、最終年度においては複数セグメントにおいて受注が低迷したことで、前連結会計年度に比べ減少しており、翌連結会計度以降の事業展開に課題を残す形となりました。
当連結会計年度の経営成績の具体的な内容としましては、売上高は橋梁事業の大型新設工事や大規模更新工事が順調に進捗した鉄構セグメントと高速道路会社の保全工事が順調に推移した土木セグメントが牽引し、さらに大型工事の設計変更が獲得できたことから、前連結会計年度に比べ7.3%増の127,048百万円と前連結会計年度を大幅に上回りました。営業利益は、原価低減に加え、設計変更の獲得により採算性の改善が図れたことで、前連結会計年度に比べ11.4%増の6,759百万円となりました。経常利益は持分法による投資利益が前連結会計年度より545百万円減少したため、前連結会計年度からほぼ横ばいの8,543百万円となりましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税等の減少により前連結会計年度に比べ6.4%増の6,449百万円となりました。
なお、セグメントごとの経営成績の状況につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(ハ)当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの事業は基本的に個別受注方式でありますので、それぞれの事業の市場環境や発注状況が事業ボリュームや採算性に大きな影響を与えますが、その具体的な内容は以下のとおりです。
鉄構セグメントにおける鋼橋事業並びに土木セグメントにおけるPC橋事業の市場は、その相当部分が公共事業となる国、地方自治体からの発注と同様の色彩が強い道路会社からの発注であるため、政策や財政状況の悪化などにより発注状況が変化します。次に鉄構セグメントにおける鉄骨事業と建築セグメントの建築事業が対象とする市場は、民間設備投資に係るものであるため、景気動向に左右される傾向にあります。
その他の影響を与える要因やリスクにつきましては「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(ニ)セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容について
当社の基本戦略は、当社グループの企業が各々持つ専門的な技術を活かしてシナジー効果を高め売上と利益の拡大を継続的に図るとともに、関連する新市場への進出を図ることでありますが、セグメント別の認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
鉄構セグメントの鋼橋事業では、当面は一定程度の発注規模が見込まれていますが、長期的には緩やかな減少が想定されています。そのような状況の下、ますます受注競争が激化することが見込まれますが、当社グループでは受注力の強化に向けて入札における技術提案力を向上させ、適切な入札価格の設定を行うことで適正な事業量の確保・拡大を目指します。また、鋼橋市場の縮小により工場で製作する鋼構造製品の減少に備え、複合構造橋梁・合成床版の拡販と土木・海洋土木構造物市場への展開に努力してまいります。
また同セグメントの鉄骨事業では、これまで東京都内の再開発案件を中心に事業展開を行ってきましたが、東京五輪前の案件が一段落した後、現在は五輪後の案件の商談本格化までの端境期が想定以上に長引いています。そういう状況下でも鉄骨製作とともに建て方まで一貫して対応できる強みを生かし、採算性を確保しながら事業収益の維持拡大を目指してまいります。
土木セグメントでは「PC」・「更新」・「保全」の3本柱を主体とする事業体制を確立し、プロジェクト・マネジメントを取り入れ、受注と利益拡大、固定費圧縮、原価低減の徹底を図ります。なかでも特に現在拡大しつつある道路会社の床版取替えを中心とした更新工事市場での受注確保と採算性の確立で一層の収益拡大を目指してまいります。
建築セグメントにおける建築分野では、得意とするシステム建築市場を中心に適正な事業ボリュームを確保しつつ、技術提案等によるコスト削減を進め、収益性の高いセグメントを目指します。
その他のソフトウエア事業並びに橋梁用品販売事業は新商品の拡販と引き続き固定費の圧縮を行うことにより採算性の向上を図ります。ロボティクス事業では、人間型ロボット等で蓄積されたデバイス技術の商用化と位置づける次世代産業型ロボットの受注拡大と収益力の向上を図ります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
・キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
その中で、当連結会計年度のキャッシュ・フローの特徴的な点として親会社株主に帰属する当期純利益を6,449百万円計上したにも関わらず、営業活動によるキャッシュ・フローが4,126百万円のマイナスとなっています。これは鉄構セグメントの橋梁事業で複数の大型案件が進行していることで運転資金が膨れ上がり、売上債権が9,465百万円増加したことが主な要因です。これに対し、短期借入金を8,507百万円増加させて対応いたしましたため、財務活動によるキャッシュ・フローは5,535百万円の増加となりました。
当該運転資金の膨れ上がりは翌連結会計年度以降解消に向かう見込みであります。
・資金需要
当社グループの事業活動における資金需要には大きく分けて運転資金と設備資金があります。
運転資金需要の主なものは橋梁やビル用鉄骨製作に係る原材料費、外注費、労務費、一般管理費等があります。当連結会計年度におきましては特に鉄構セグメントで増加いたしました。
また、設備資金需要としては橋梁及び同関連製品やビル用鉄骨を製作・加工する工場用の土地や建物、機械設備のほか、航空関連事業を営むに必要なヘリコプターの機体や整備工場や格納庫等があります。当連結会計年度におきましては全体で3,844百万円の設備投資を行っていますが、その内訳は「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載のとおりであります。
・財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するために、内部資金の活用とともに金融機関からの借入を中心とした資金調達を行っています。
運転資金需要については当社グループのコア事業が個別受注型の事業形態であるため、受注した案件の金額や工期、回収条件によって必要となる運転資金の額や時期が異なります。そのことを踏まえ、その時々の受注内容を全体として管理しながら必要な運転資金を調達しています。また基本的には複数年に亘る案件がほとんどであるため、調達に際しては必要金額の全体を俯瞰した上で、短期借入と長期借入を組み合わせ、資金調達の弾力性を確保しています。短期資金については金融機関14行との間で総額218億円の当座貸越契約を個別に締結し、十分な借入枠を確保するとともに、長期資金については年間の調達計画を作成の上、その計画に沿って随時調達を行っています。
金融機関に対しては平素より業績や資金の状況について説明を行うことで信頼関係を維持し、財務の安定性と流動性を確保しています。
また、金利面につきましては過度の金利変動リスクを回避すべく、一部の借入については金利スワップなどの手段で金利の固定化を図り、変動金利部分と固定金利部分のバランスを取っています。
・経営資源の配分
当社グループでは事業活動から得られる営業キャッシュ・フローにつきましては将来に向けての「設備投資」と「財務体質強化」、「株主還元」に適切なバランスをもって配分する方針としています。そういう中で現在の当社グループの置かれた状況を踏まえ、2020年度を初年度とする第2次中期経営計画においてはその期間中の配分計画は以下のとおりです。
営業キャッシュ・フロー(3年間計) 150億円
設備投資 100億円株主還元 15億円財務体質強化 35億円

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表作成にあたっては、当連結会計年度末日における資産・負債の報告金額並びに当連結会計年度における収益・費用の報告金額に関する見積り、判断及び仮定を使用する必要があります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、将来においてこれらの見積りとは異なる結果となる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等不確実性が大きく、将来の業績予想に反映させることが困難な要素もありますが、期末時点で入手している情報を基に見積りを行っています。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しています。
(収益の認識基準)
当社グループの完成工事高の計上は進捗部分について成果の確実性が認められる工事については工事進行基準を、その他の工事については工事完成基準を適用しています。工事進行基準採用工事につきましては将来の最終見込工事原価を合理的に見積もっていますが、市況の変動等外的要因によりその見積り額が変動した場合、翌期以降の損益に影響を与える可能性があります。
当連結会計年度においては、工事進行基準による売上高を114,490百万円計上しています。
(工事損失引当金)
当社グループは、手持受注工事のうち連結会計年度末において損失の発生が見込まれ、かつ、その金額を合理的に見積もることが出来る工事については、翌期以降に見込まれる損失を工事損失引当金として計上しています。工事施工途中において当初予想しえなかった追加原価の発生等、当初の見積りと結果が異なった場合、翌期以降の損益に影響を与える可能性があります。
当連結会計年度末においては、昨今の受注環境の悪化を背景とした未成工事の将来の損失に備え、1,946百万円を計上しています。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、繰延税金資産の計上にあたり、各社の将来の収益力を源泉とした課税所得の見積りに基づくタックスプランニングを行い、充分に回収可能性を検討し、評価額を決定しています。経営者は当該回収可能性の評価は合理的であると判断していますが、将来の業績及び課税所得の実績変動により、当初の見積り額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が追加計上される可能性があります。
なお、当社及び一部の国内子会社は、連結納税制度を適用しているため、繰延税金資産の回収可能性の判断については、連結納税グループ全体の課税所得の見積りにより判断しています。
当連結会計年度末においては、グループ各社の回収可能性を検討した結果、繰延税金資産は2,323百万円となっています。
(固定資産の減損)
当社グループでは、固定資産の帳簿価額について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合には、減損の判定を行っています。資産グループの回収可能価額は、事業用資産については将来キャッシュ・フローを基にした使用価値により、遊休資産及び処分予定の資産については売却予定額を基にした正味売却価額によりそれぞれ測定しています。経営者は将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額の見積りは合理的であると考えていますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フローや回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。
当連結会計年度末において検討した結果、減損損失として353百万円を計上しています。