有価証券報告書-第13期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
当連結会計年度末における「資産の部」は147,408百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,314百万円(前連結会計年度比+6.0%)増加しました。これは主に、受取手形・完成工事未収入金等が3,108百万円、関係会社株式が2,891百万円それぞれ増加したことによるものであります。
また、「負債の部」は80,443百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,980百万円(前連結会計年度比+2.5%)増加しました。これは主に、短期借入金が9,349百万円、未成工事受入金が2,442百万円それぞれ増加した一方、支払手形・工事未払金等が9,432百万円減少したことによるものであります。
一方、「純資産の部」は66,964百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,334百万円(前連結会計年度比+10.4%)増加しました。これは主に、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによる利益剰余金の増加によるものであります。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の43.0%から44.8%となりました。
② 経営成績の状況
当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症が長期化していることもあり、これまで以上に不透明で厳しい状況が予想されます。
鉄構セグメントの鋼製橋梁事業や土木セグメントに大きく影響する公共投資は、新設橋梁の発注量の減少傾向が続く一方で、高速道路会社の大規模更新や補修・保全など老朽化や防災・減災対策などの発注が増加しており、概ね堅調に推移すると思われます。
鉄構セグメントの鉄骨事業や建築セグメントが関わる民間投資につきましては、新型コロナウイルス感染症の拡大が続き収束時期が見通せない環境下では設備投資への慎重姿勢が拡がることは避けられず、その結果として案件減少による受注競争激化が予想されるとともに、採算性の悪化が危惧されています。
こうした中、当社グループは昨年6月に「KAWADA VISION~10年後のあるべき姿~」を策定し、その実現に向けた「第2次中期経営計画(2020年度~2022年度)」を公表し、当該計画に定める各種施策に取り組んでいます。
その結果、当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高115,545百万円(前連結会計年度比9.1%減)、営業利益5,565百万円(同17.7%減)、経常利益8,048百万円(同5.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は6,340百万円(同1.7%減)となりました。受注高につきましては、鉄構セグメントにおける鋼製橋梁事業での受注が伸びたことで118,978百万円(同11.8%増)になりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高等を含めて記載しています。)
(鉄構セグメント)
当セグメントの中の鋼製橋梁事業につきましては、受注は大型特定更新工事や高速道路会社発注の大型工事を積み上げることができたことに加え、当第4四半期において高速道路会社や国土交通省発注の大型工事における設計変更協議が完了したことで、前連結会計年度を大幅に上回る結果となりました。売上高は、高速道路会社や北陸新幹線敦賀延伸関連の大型工事が概ね順調に進捗したことで前連結会計年度を上回ることができました。損益面は、一部工事で設計変更の獲得までには至っていない工事があるものの、当第4四半期において、高速道路会社や国土交通省発注の大型工事での設計変更交渉が想定以上に進捗したことなどにより大幅に改善いたしました。
鉄骨事業につきましては、受注は当第4四半期に首都圏及び関西地区において大型再開発工事の受注を積み上げることができましたが、当第3四半期までの伸び悩みを補うまでには至らず、前連結会計年度を下回る結果となりました。売上高につきましては、首都圏及び関西地区とも順調に進捗しましたが、前連結会計年度において大型工事の設計変更獲得があった反動で、前連結会計年度に対し減少いたしました。損益につきましても同様の理由に加え、案件の端境期における受注競争激化で採算性が悪化し、減少いたしました。
セグメント全体では売上高61,287百万円(前連結会計年度比0.7%減)、営業利益4,406百万円(同2.3%増)となりました。また受注高は、65,193百万円(同55.0%増)となりました。
(土木セグメント)
土木セグメントにつきましては、受注高は当第4四半期に高速道路会社発注の大型床版取替工事を受注できたものの、PC橋梁の新設事業や保全事業が伸び悩んだことで、31,315百万円(前連結会計年度比18.7%減)と前連結会計年度を下回りました。
売上高は、新設事業及び高速道路の床版取替を中心とした更新事業を中心に工事が順調に進捗したものの、前連結会計年度において複数の大型工事の設計変更獲得があった反動で、34,625百万円(同5.6%減)となり、また、営業利益につきましても2,524百万円(同15.0%減)といずれも前連結会計年度に対し減少する結果となりました。
(建築セグメント)
建築セグメントにつきましては、新型コロナウイルス感染症が長期化する中、当連結会計年度に受注を予定していた案件が計画の見直しや先送りとなったことにより、受注高は10,390百万円(前連結会計年度比22.9%減)に止まりました。また、前期からの繰越工事高の減少に加え、当期の受注の伸び悩みにより売上高は10,647百万円(同46.6%減)と大きく減少いたしました。損益面は、売上ボリュームが大幅に減少する中、一部システム建築及びS造建築の採算性が改善したものの、売上ボリューム減少による減益を補うまでには至らず、営業利益648百万円(同52.9%減)となりました。
(その他)
その他につきましては、航空機使用事業を中心に新型コロナウイルス感染症の影響が長期化しており、売上高は11,734百万円(前連結会計年度比7.2%減)、営業利益431百万円(同35.5%減)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,492百万円増加し10,767百万円(前連結会計年度比+16.1%)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、2,547百万円の資金減少(前連結会計年度は4,126百万円の資金減少)となりました。これは主に、仕入債務の減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、4,183百万円の資金減少(前連結会計年度は2,764百万円の資金減少)となりました。これは主に、設備投資による固定資産の取得等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、8,220百万円の資金増加(前連結会計年度は5,535百万円の資金増加)となりました。これは主に、借入金の増加によるものであります。
(注) 「第2 事業の状況」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額で表示しています。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。
(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。
(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載していません。
なお、参考のため連結子会社である川田工業㈱個別の事業の状況は次のとおりであります。
a.生産実績
(注)1 生産高は、当事業年度工事総費用を契約高に換算したものであります。
2 生産高には、外注生産高が含まれています。
b.受注実績
(注)1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含みます。従って、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれています。
2 当事業年度の次期繰越工事高のうち請負金額60億円以上の主なものは、次のとおりであります。
c.販売実績
(注)1 前事業年度の完成工事高のうち請負金額20億円以上の主なものは、次のとおりであります。
当事業年度の完成工事高のうち請負金額20億円以上の主なものは、次のとおりであります。
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上となる相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
前事業年度
100分の10以上の相手先はありません。
当事業年度
100分の10以上の相手先はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(イ)財政状態
財政状態の状況につきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりでありますが、当連結会計年度におきましても前連結会計年度に引き続き鉄構セグメントの中の橋梁事業において複数の大型案件が進行したことで、運転資金が増加しました。その結果、売掛債権(受取手形・完成工事未収入金等)が3,108百万円、短期借入金が9,349百万円、いずれも前連結会計年度に比べ大きく増加いたしました。
また、関係会社株式が同じく2,891百万円増加していますが、これは持分法適用会社に係る持分法による投資利益を2,516百万円計上したことによるものであります。
(ロ)経営成績
当連結会計年度は第2次中期経営計画の初年度でしたが、前連結会計年度においてすべてのセグメントで受注高が減少したことに加え、当連結会計年度においても新型コロナウイルス感染症の影響で民間設備投資が抑制されたことで民間事業関連事業の受注が低迷し、厳しい事業環境となりました。
当連結会計年度の経営成績の具体的な内容としましては、売上高は、鉄構セグメントの中の橋梁事業は大型新設工事や大規模更新工事が順調に進捗したことで増加しましたが、建築セグメントが大幅な減収となったことで、前連結会計年度に比べ9.1%減の115,545百万円と前連結会計年度を大幅に下回りました。営業利益は、設計変更が前倒しで獲得できた鉄構セグメントは多少増加したものの、売上高が減少した土木や建築セグメントで減益となったことで、前連結会計年度に比べ1,193百万円減の5,565百万円となりました。経常利益は持分法による投資利益が前連結会計年度より269百万円増加したことや海外子会社の清算に伴う配当等もあり、前連結会計年度から495百万円減少の8,048百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失が前連結会計年度に比べ減少したことで、前連結会計年度とおおよそ同程度の6,340百万円となりました。
なお、セグメントごとの経営成績の状況につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(ハ)当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの事業は基本的に個別受注方式でありますので、それぞれの事業の市場環境や発注状況が事業ボリュームや採算性に大きな影響を与えますが、その具体的な内容は以下のとおりです。
鉄構セグメントにおける鋼橋事業並びに土木セグメントにおけるPC橋事業の市場は、その相当部分が公共事業となる国や地方自治体からの発注と、同様の色彩が強い高速道路会社からの発注であるため、政策や財政状況の悪化などにより発注状況が変化します。次に鉄構セグメントにおける鉄骨事業と建築セグメントの建築事業が対象とする市場は、民間設備投資に係るものであるため、景気動向に左右される傾向にあります。
また、当社グループの損益においては持分法適用関連会社である佐藤工業株式会社を筆頭とする佐藤工業グループの持分法投資損益が大きく影響する傾向にあります。すなわち当社グループは佐藤工業株式会社の49.9%の株式を保有しており、佐藤工業グループの資本及び対応する期間損益が持分割合に応じて当社グループの損益に反映されることになりますが、佐藤工業グループの事業規模が当社グループより大きいこともあり、その資本及び対応する期間損益の状況によって当社グループの経常損益以下に影響が生じる可能性があります。
その他、影響を与える要因やリスクにつきましては「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(ニ)セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容について
当社の基本戦略は、当社グループの企業が各々持つ専門的な技術を活かしてシナジー効果を高め売上と利益の拡大を継続的に図るとともに、関連する新市場への進出を図ることでありますが、セグメント別の認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
鉄構セグメントの鋼橋事業では、当面は関西方面での大型案件や「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」に係る道路の4車線化に向けた発注等が見込まれることから、一定程度の発注量が見込まれていますが、長期的には緩やかな減少が想定されています。そのような状況の下、ますます受注競争が激化することが見込まれますが、当社グループでは受注力の強化に向けて入札における技術提案力を向上させ、適切な入札価格の設定を行うことで適正な事業量と収益の確保・拡大を目指します。また、新設鋼橋市場の縮小により工場で製作する鋼構造製品の減少に備え、複合構造橋梁・合成床版の拡販と土木・海洋構造物市場等への展開に努力してまいります。
また同セグメントの鉄骨事業では、これまで東京都内の再開発案件を中心に事業展開を行ってきましたが、東京五輪前の案件が一段落した後、現在は五輪後の案件の商談本格化までの端境期が想定以上に長引き、受注競争が激化してきています。そういう状況の下、鉄骨製作とともに建方まで一貫して対応できる強みを生かしつつ、工場の操業度等も勘案の上全体としての事業収益の維持拡大を目指してまいります。
土木セグメントではPC橋梁市場において「新設」・「更新」・「保全」の3本柱を主体とする事業体制を確立し、プロジェクト・マネジメントを取り入れ、受注と利益拡大、固定費圧縮、原価低減の徹底を図ります。なかでも特に現在拡大しつつある道路会社の床版取替えを中心とした更新工事市場での受注確保と採算性の確立で一層の収益拡大を目指してまいります。
建築セグメントにおける建築分野では、当面は引き続き新型コロナウイルス感染症の影響による市場の低迷が見込まれますが、得意とするシステム建築市場を中心に事業ボリュームを確保しつつ、技術提案等によるコスト削減を進め、収益性の高いセグメントを目指します。
その他のソフトウエア事業並びに橋梁用品販売事業は新商品の拡販と引き続き固定費の圧縮を行うことにより採算性の向上を図ります。ロボティクス事業では、人間型ロボット等で蓄積されたデバイス技術の商用化と位置づける次世代産業型ロボットの受注拡大と収益力の向上を図ります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
・キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
その中で、当連結会計年度のキャッシュ・フローの特徴的な点として税金等調整前当期純利益を8,043百万円計上したにも関わらず、営業活動によるキャッシュ・フローが2,547百万円のマイナスとなっています。これは前連結会計年度に続き、鉄構セグメントの橋梁事業で長期の大型案件が複数進行していることで運転資金が膨れ上がり、売上債権が3,108百万円増加したことや仕入債務が9,432百万円減少したことが主な要因です。これに対し、短期借入金を9,349百万円増加させて対応いたしましたため、財務活動によるキャッシュ・フローは8,220百万円のプラスとなりました。
当該運転資金の膨れ上がりは翌連結会計年度以降解消に向かう見込みであります。
・資金需要
当社グループの事業活動における資金需要には大きく分けて運転資金と設備資金があります。
運転資金需要の主なものは橋梁やビル用鉄骨製作に係る原材料費、外注費、労務費、一般管理費等があります。当連結会計年度におきましては特に鉄構セグメントで増加いたしました。
また、設備資金需要としては橋梁及び同関連製品やビル用鉄骨を製作・加工する工場用の土地や建物、機械設備のほか、航空関連事業に必要なヘリコプターの機体や整備工場や格納庫等があります。当連結会計年度におきましては全体で3,323百万円の設備投資を行っていますが、その内訳は「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載のとおりであります。
・財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するために、内部資金の活用とともに金融機関からの借入を中心とした資金調達を行っています。
運転資金需要については当社グループのコア事業が個別受注型の事業形態であるため、受注した案件の金額や工期、回収条件によって必要となる運転資金の額や時期が異なります。そのことを踏まえ、その時々の受注内容を全体として管理しながら必要な運転資金を調達しています。また基本的には複数年に亘る案件がほとんどであるため、調達に際しては必要金額の全体を俯瞰した上で、短期借入と長期借入を組み合わせ、資金調達の弾力性を確保しています。短期資金については金融機関14行との間で総額311億円の当座貸越契約を個別に締結し、十分な借入枠を確保するとともに、長期資金については年間の調達計画を作成の上、その計画に沿って随時調達を行っています。
金融機関に対しては平素より業績や資金の状況について説明を行うことで信頼関係を維持し、財務の安定性と流動性を確保しています。
また、金利面につきましては過度の金利変動リスクを回避すべく、一部の借入については金利スワップなどの手段で金利の固定化を図り、変動金利部分と固定金利部分のバランスを取っています。
・経営資源の配分
当社グループでは事業活動から得られる営業キャッシュ・フローにつきましては将来に向けての「設備投資」と「財務体質強化」、「株主還元」に適切なバランスをもって配分する方針としています。そういう中で現在の当社グループの置かれた状況を踏まえ、2020年度を初年度とする第2次中期経営計画においてはその期間中の配分計画は以下のとおりとしています。
初年度であります当連結会計年度におきましては、設備投資3,323百万円、株主還元472百万円を実施しています。その一方で、財務体質強化につきましては運転資金の高止まりで遅れていますが、今後工事代金の回収により第2次中期経営計画の期限までの達成を目指してまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表作成にあたっては、当連結会計年度末日における資産・負債の報告金額並びに当連結会計年度における収益・費用の報告金額に関する見積り、判断及び仮定を使用する必要があります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、将来においてこれらの見積りとは異なる結果となる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等不確実性が大きく、将来の業績予想に反映させることが困難な要素もありますが、期末時点で入手している情報を基に見積りを行っています。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しています。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
当連結会計年度末における「資産の部」は147,408百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,314百万円(前連結会計年度比+6.0%)増加しました。これは主に、受取手形・完成工事未収入金等が3,108百万円、関係会社株式が2,891百万円それぞれ増加したことによるものであります。
また、「負債の部」は80,443百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,980百万円(前連結会計年度比+2.5%)増加しました。これは主に、短期借入金が9,349百万円、未成工事受入金が2,442百万円それぞれ増加した一方、支払手形・工事未払金等が9,432百万円減少したことによるものであります。
一方、「純資産の部」は66,964百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,334百万円(前連結会計年度比+10.4%)増加しました。これは主に、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによる利益剰余金の増加によるものであります。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の43.0%から44.8%となりました。
② 経営成績の状況
当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症が長期化していることもあり、これまで以上に不透明で厳しい状況が予想されます。
鉄構セグメントの鋼製橋梁事業や土木セグメントに大きく影響する公共投資は、新設橋梁の発注量の減少傾向が続く一方で、高速道路会社の大規模更新や補修・保全など老朽化や防災・減災対策などの発注が増加しており、概ね堅調に推移すると思われます。
鉄構セグメントの鉄骨事業や建築セグメントが関わる民間投資につきましては、新型コロナウイルス感染症の拡大が続き収束時期が見通せない環境下では設備投資への慎重姿勢が拡がることは避けられず、その結果として案件減少による受注競争激化が予想されるとともに、採算性の悪化が危惧されています。
こうした中、当社グループは昨年6月に「KAWADA VISION~10年後のあるべき姿~」を策定し、その実現に向けた「第2次中期経営計画(2020年度~2022年度)」を公表し、当該計画に定める各種施策に取り組んでいます。
その結果、当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高115,545百万円(前連結会計年度比9.1%減)、営業利益5,565百万円(同17.7%減)、経常利益8,048百万円(同5.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は6,340百万円(同1.7%減)となりました。受注高につきましては、鉄構セグメントにおける鋼製橋梁事業での受注が伸びたことで118,978百万円(同11.8%増)になりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高等を含めて記載しています。)
(鉄構セグメント)
当セグメントの中の鋼製橋梁事業につきましては、受注は大型特定更新工事や高速道路会社発注の大型工事を積み上げることができたことに加え、当第4四半期において高速道路会社や国土交通省発注の大型工事における設計変更協議が完了したことで、前連結会計年度を大幅に上回る結果となりました。売上高は、高速道路会社や北陸新幹線敦賀延伸関連の大型工事が概ね順調に進捗したことで前連結会計年度を上回ることができました。損益面は、一部工事で設計変更の獲得までには至っていない工事があるものの、当第4四半期において、高速道路会社や国土交通省発注の大型工事での設計変更交渉が想定以上に進捗したことなどにより大幅に改善いたしました。
鉄骨事業につきましては、受注は当第4四半期に首都圏及び関西地区において大型再開発工事の受注を積み上げることができましたが、当第3四半期までの伸び悩みを補うまでには至らず、前連結会計年度を下回る結果となりました。売上高につきましては、首都圏及び関西地区とも順調に進捗しましたが、前連結会計年度において大型工事の設計変更獲得があった反動で、前連結会計年度に対し減少いたしました。損益につきましても同様の理由に加え、案件の端境期における受注競争激化で採算性が悪化し、減少いたしました。
セグメント全体では売上高61,287百万円(前連結会計年度比0.7%減)、営業利益4,406百万円(同2.3%増)となりました。また受注高は、65,193百万円(同55.0%増)となりました。
(土木セグメント)
土木セグメントにつきましては、受注高は当第4四半期に高速道路会社発注の大型床版取替工事を受注できたものの、PC橋梁の新設事業や保全事業が伸び悩んだことで、31,315百万円(前連結会計年度比18.7%減)と前連結会計年度を下回りました。
売上高は、新設事業及び高速道路の床版取替を中心とした更新事業を中心に工事が順調に進捗したものの、前連結会計年度において複数の大型工事の設計変更獲得があった反動で、34,625百万円(同5.6%減)となり、また、営業利益につきましても2,524百万円(同15.0%減)といずれも前連結会計年度に対し減少する結果となりました。
(建築セグメント)
建築セグメントにつきましては、新型コロナウイルス感染症が長期化する中、当連結会計年度に受注を予定していた案件が計画の見直しや先送りとなったことにより、受注高は10,390百万円(前連結会計年度比22.9%減)に止まりました。また、前期からの繰越工事高の減少に加え、当期の受注の伸び悩みにより売上高は10,647百万円(同46.6%減)と大きく減少いたしました。損益面は、売上ボリュームが大幅に減少する中、一部システム建築及びS造建築の採算性が改善したものの、売上ボリューム減少による減益を補うまでには至らず、営業利益648百万円(同52.9%減)となりました。
(その他)
その他につきましては、航空機使用事業を中心に新型コロナウイルス感染症の影響が長期化しており、売上高は11,734百万円(前連結会計年度比7.2%減)、営業利益431百万円(同35.5%減)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,492百万円増加し10,767百万円(前連結会計年度比+16.1%)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、2,547百万円の資金減少(前連結会計年度は4,126百万円の資金減少)となりました。これは主に、仕入債務の減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、4,183百万円の資金減少(前連結会計年度は2,764百万円の資金減少)となりました。これは主に、設備投資による固定資産の取得等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、8,220百万円の資金増加(前連結会計年度は5,535百万円の資金増加)となりました。これは主に、借入金の増加によるものであります。
(注) 「第2 事業の状況」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額で表示しています。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前期比(%) | 受注残高(百万円) | 前期比(%) |
鉄構 | 65,193 | 55.0 | 72,416 | 5.7 |
土木 | 31,315 | △18.7 | 48,855 | △6.3 |
建築 | 10,390 | △22.9 | 11,857 | △2.1 |
その他 | 12,078 | △2.2 | 1,562 | 28.3 |
合計 | 118,978 | 11.8 | 134,693 | 0.5 |
(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前期比(%) |
鉄構 | 61,287 | △0.7 |
土木 | 34,625 | △5.6 |
建築 | 10,647 | △46.6 |
その他 | 11,734 | △7.2 |
合計 | 118,294 | △9.7 |
(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載していません。
なお、参考のため連結子会社である川田工業㈱個別の事業の状況は次のとおりであります。
a.生産実績
セグメントの名称 | 前事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
金額(百万円) | 金額(百万円) | |
鉄構 | 63,658 | 61,605( 3.2%減) |
建築 | 19,570 | 10,575(46.0%減) |
その他 | 272 | 105(61.4%減) |
合計 | 83,501 | 72,287(13.4%減) |
(注)1 生産高は、当事業年度工事総費用を契約高に換算したものであります。
2 生産高には、外注生産高が含まれています。
b.受注実績
期別 | セグメントの名称 | 前期繰越工事高(百万円) | 当期受注工事高(百万円) | 計 (百万円) | 当期完成工事高(百万円) | 次期繰越工事高(百万円) |
前事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 鉄構 | 88,205 | 41,984 | 130,190 | 61,500 | 68,689 |
建築 | 18,586 | 13,479 | 32,066 | 19,951 | 12,114 | |
その他 | - | 171 | 171 | 171 | - | |
合計 | 106,791 | 55,635 | 162,427 | 81,623 | 80,803 | |
当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 鉄構 | 68,689 | 65,107 | 133,797 | 61,380 | 72,416 |
建築 | 12,114 | 10,390 | 22,505 | 10,647 | 11,857 | |
その他 | - | 164 | 164 | 164 | - | |
合計 | 80,803 | 75,663 | 156,467 | 72,192 | 84,274 |
(注)1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含みます。従って、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれています。
2 当事業年度の次期繰越工事高のうち請負金額60億円以上の主なものは、次のとおりであります。
西日本高速道路㈱ | 中国自動車道(特定更新等)吹田JCT~中国池田IC間橋梁更新工事 | 2024年6月完成予定 |
首都高速道路㈱ | 高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事 | 2025年7月 〃 |
㈱竹中工務店 | 八重洲二丁目北地区第一種市街地再開発事業新築工事 A-1街区 | 2021年8月 〃 |
清水建設㈱ | 鉄骨関連その他工事 | 2022年7月 〃 |
中日本高速道路㈱ | 名古屋第二環状自動車道 服部高架橋他2橋(鋼上部工)工事 | 2021年5月 〃 |
c.販売実績
セグメントの名称 | 前事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
金額(百万円) | 金額(百万円) | |
鉄構 | 61,500 | 61,380( 0.2%減) |
建築 | 19,951 | 10,647(46.6%減) |
その他 | 171 | 164( 3.6%減) |
合計 | 81,623 | 72,192(11.6%減) |
(注)1 前事業年度の完成工事高のうち請負金額20億円以上の主なものは、次のとおりであります。
渋谷駅街区東棟新築工事共同企業体 | 渋谷駅街区東棟新築工事 |
鹿島建設㈱ | (仮称)OH-1計画新築工事 |
中日本高速道路㈱ | 名古屋第二環状自動車道 飛島ジャンクションCランプ橋他3橋(鋼上部工)工事 |
首都高速道路㈱ | (改)小松川JCT陸側上部工事 |
合同会社シャロンテック天戸町 | (仮称)天戸町特定流通業務施設計画 |
当事業年度の完成工事高のうち請負金額20億円以上の主なものは、次のとおりであります。
西日本高速道路㈱ | 新名神高速道路 八幡ジャンクションBランプ1号橋他4橋(鋼上部工)工事 |
中日本高速道路㈱ | 名古屋第二環状自動車道 西蟹田第一高架橋他6橋(鋼上部工)工事 |
国土交通省 | 国道45号 気仙沼湾横断橋小々汐地区上部工工事 |
国土交通省 | 福岡208号 筑後川橋上部工(P4-P8)工事 |
東急不動産㈱ | (仮称)浅草二丁目計画新築工事 |
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上となる相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
前事業年度
100分の10以上の相手先はありません。
当事業年度
100分の10以上の相手先はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(イ)財政状態
財政状態の状況につきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりでありますが、当連結会計年度におきましても前連結会計年度に引き続き鉄構セグメントの中の橋梁事業において複数の大型案件が進行したことで、運転資金が増加しました。その結果、売掛債権(受取手形・完成工事未収入金等)が3,108百万円、短期借入金が9,349百万円、いずれも前連結会計年度に比べ大きく増加いたしました。
また、関係会社株式が同じく2,891百万円増加していますが、これは持分法適用会社に係る持分法による投資利益を2,516百万円計上したことによるものであります。
(ロ)経営成績
当連結会計年度は第2次中期経営計画の初年度でしたが、前連結会計年度においてすべてのセグメントで受注高が減少したことに加え、当連結会計年度においても新型コロナウイルス感染症の影響で民間設備投資が抑制されたことで民間事業関連事業の受注が低迷し、厳しい事業環境となりました。
当連結会計年度の経営成績の具体的な内容としましては、売上高は、鉄構セグメントの中の橋梁事業は大型新設工事や大規模更新工事が順調に進捗したことで増加しましたが、建築セグメントが大幅な減収となったことで、前連結会計年度に比べ9.1%減の115,545百万円と前連結会計年度を大幅に下回りました。営業利益は、設計変更が前倒しで獲得できた鉄構セグメントは多少増加したものの、売上高が減少した土木や建築セグメントで減益となったことで、前連結会計年度に比べ1,193百万円減の5,565百万円となりました。経常利益は持分法による投資利益が前連結会計年度より269百万円増加したことや海外子会社の清算に伴う配当等もあり、前連結会計年度から495百万円減少の8,048百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失が前連結会計年度に比べ減少したことで、前連結会計年度とおおよそ同程度の6,340百万円となりました。
なお、セグメントごとの経営成績の状況につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(ハ)当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの事業は基本的に個別受注方式でありますので、それぞれの事業の市場環境や発注状況が事業ボリュームや採算性に大きな影響を与えますが、その具体的な内容は以下のとおりです。
鉄構セグメントにおける鋼橋事業並びに土木セグメントにおけるPC橋事業の市場は、その相当部分が公共事業となる国や地方自治体からの発注と、同様の色彩が強い高速道路会社からの発注であるため、政策や財政状況の悪化などにより発注状況が変化します。次に鉄構セグメントにおける鉄骨事業と建築セグメントの建築事業が対象とする市場は、民間設備投資に係るものであるため、景気動向に左右される傾向にあります。
また、当社グループの損益においては持分法適用関連会社である佐藤工業株式会社を筆頭とする佐藤工業グループの持分法投資損益が大きく影響する傾向にあります。すなわち当社グループは佐藤工業株式会社の49.9%の株式を保有しており、佐藤工業グループの資本及び対応する期間損益が持分割合に応じて当社グループの損益に反映されることになりますが、佐藤工業グループの事業規模が当社グループより大きいこともあり、その資本及び対応する期間損益の状況によって当社グループの経常損益以下に影響が生じる可能性があります。
その他、影響を与える要因やリスクにつきましては「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(ニ)セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容について
当社の基本戦略は、当社グループの企業が各々持つ専門的な技術を活かしてシナジー効果を高め売上と利益の拡大を継続的に図るとともに、関連する新市場への進出を図ることでありますが、セグメント別の認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
鉄構セグメントの鋼橋事業では、当面は関西方面での大型案件や「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」に係る道路の4車線化に向けた発注等が見込まれることから、一定程度の発注量が見込まれていますが、長期的には緩やかな減少が想定されています。そのような状況の下、ますます受注競争が激化することが見込まれますが、当社グループでは受注力の強化に向けて入札における技術提案力を向上させ、適切な入札価格の設定を行うことで適正な事業量と収益の確保・拡大を目指します。また、新設鋼橋市場の縮小により工場で製作する鋼構造製品の減少に備え、複合構造橋梁・合成床版の拡販と土木・海洋構造物市場等への展開に努力してまいります。
また同セグメントの鉄骨事業では、これまで東京都内の再開発案件を中心に事業展開を行ってきましたが、東京五輪前の案件が一段落した後、現在は五輪後の案件の商談本格化までの端境期が想定以上に長引き、受注競争が激化してきています。そういう状況の下、鉄骨製作とともに建方まで一貫して対応できる強みを生かしつつ、工場の操業度等も勘案の上全体としての事業収益の維持拡大を目指してまいります。
土木セグメントではPC橋梁市場において「新設」・「更新」・「保全」の3本柱を主体とする事業体制を確立し、プロジェクト・マネジメントを取り入れ、受注と利益拡大、固定費圧縮、原価低減の徹底を図ります。なかでも特に現在拡大しつつある道路会社の床版取替えを中心とした更新工事市場での受注確保と採算性の確立で一層の収益拡大を目指してまいります。
建築セグメントにおける建築分野では、当面は引き続き新型コロナウイルス感染症の影響による市場の低迷が見込まれますが、得意とするシステム建築市場を中心に事業ボリュームを確保しつつ、技術提案等によるコスト削減を進め、収益性の高いセグメントを目指します。
その他のソフトウエア事業並びに橋梁用品販売事業は新商品の拡販と引き続き固定費の圧縮を行うことにより採算性の向上を図ります。ロボティクス事業では、人間型ロボット等で蓄積されたデバイス技術の商用化と位置づける次世代産業型ロボットの受注拡大と収益力の向上を図ります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
・キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
その中で、当連結会計年度のキャッシュ・フローの特徴的な点として税金等調整前当期純利益を8,043百万円計上したにも関わらず、営業活動によるキャッシュ・フローが2,547百万円のマイナスとなっています。これは前連結会計年度に続き、鉄構セグメントの橋梁事業で長期の大型案件が複数進行していることで運転資金が膨れ上がり、売上債権が3,108百万円増加したことや仕入債務が9,432百万円減少したことが主な要因です。これに対し、短期借入金を9,349百万円増加させて対応いたしましたため、財務活動によるキャッシュ・フローは8,220百万円のプラスとなりました。
当該運転資金の膨れ上がりは翌連結会計年度以降解消に向かう見込みであります。
・資金需要
当社グループの事業活動における資金需要には大きく分けて運転資金と設備資金があります。
運転資金需要の主なものは橋梁やビル用鉄骨製作に係る原材料費、外注費、労務費、一般管理費等があります。当連結会計年度におきましては特に鉄構セグメントで増加いたしました。
また、設備資金需要としては橋梁及び同関連製品やビル用鉄骨を製作・加工する工場用の土地や建物、機械設備のほか、航空関連事業に必要なヘリコプターの機体や整備工場や格納庫等があります。当連結会計年度におきましては全体で3,323百万円の設備投資を行っていますが、その内訳は「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載のとおりであります。
・財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するために、内部資金の活用とともに金融機関からの借入を中心とした資金調達を行っています。
運転資金需要については当社グループのコア事業が個別受注型の事業形態であるため、受注した案件の金額や工期、回収条件によって必要となる運転資金の額や時期が異なります。そのことを踏まえ、その時々の受注内容を全体として管理しながら必要な運転資金を調達しています。また基本的には複数年に亘る案件がほとんどであるため、調達に際しては必要金額の全体を俯瞰した上で、短期借入と長期借入を組み合わせ、資金調達の弾力性を確保しています。短期資金については金融機関14行との間で総額311億円の当座貸越契約を個別に締結し、十分な借入枠を確保するとともに、長期資金については年間の調達計画を作成の上、その計画に沿って随時調達を行っています。
金融機関に対しては平素より業績や資金の状況について説明を行うことで信頼関係を維持し、財務の安定性と流動性を確保しています。
また、金利面につきましては過度の金利変動リスクを回避すべく、一部の借入については金利スワップなどの手段で金利の固定化を図り、変動金利部分と固定金利部分のバランスを取っています。
・経営資源の配分
当社グループでは事業活動から得られる営業キャッシュ・フローにつきましては将来に向けての「設備投資」と「財務体質強化」、「株主還元」に適切なバランスをもって配分する方針としています。そういう中で現在の当社グループの置かれた状況を踏まえ、2020年度を初年度とする第2次中期経営計画においてはその期間中の配分計画は以下のとおりとしています。
営業キャッシュ・フロー(3年間計) 150億円 | |||
設備投資 100億円 | 株主還元 15億円 | 財務体質強化 35億円 |
初年度であります当連結会計年度におきましては、設備投資3,323百万円、株主還元472百万円を実施しています。その一方で、財務体質強化につきましては運転資金の高止まりで遅れていますが、今後工事代金の回収により第2次中期経営計画の期限までの達成を目指してまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表作成にあたっては、当連結会計年度末日における資産・負債の報告金額並びに当連結会計年度における収益・費用の報告金額に関する見積り、判断及び仮定を使用する必要があります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、将来においてこれらの見積りとは異なる結果となる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等不確実性が大きく、将来の業績予想に反映させることが困難な要素もありますが、期末時点で入手している情報を基に見積りを行っています。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しています。