訂正有価証券報告書-第10期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/30 15:21
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(1)経営成績等の状況の概要
<当社グループを取り巻く環境>当連結会計年度における世界経済は、米国では堅調に推移したものの、中国が米中貿易摩擦の影響で減速し、欧州も力強さを欠いたことから、総じて成長が鈍化し、さらに、当連結会計年度末にかけて、新型コロナウイルスの感染拡大により急激に悪化しました。
アジアの指標原油価格であるドバイ原油の価格は、期初は1バーレル当たり68ドルでしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に需要減退が懸念されたことに加え、一部産油国の原油増産表明による供給過剰が意識されて大幅に下落し、当連結会計年度末時点では1バーレル当たり23ドルとなりました。
銅の国際指標価格であるLME(ロンドン金属取引所)銅価格は、期初は1トン当たり6,498ドルでしたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気悪化懸念により大きく下落し、当連結会計年度末時点では1トン当たり4,797ドルとなりました。
日本経済は、上半期は、緩やかな回復基調で推移したものの、下半期に入ると弱含みの様相を呈し、さらに、新型コロナウイルスの感染拡大に起因した経済活動の停滞により急激に落ち込みました。こうした経済情勢に加え、国内の石油製品需要については、低燃費車の普及によるガソリンの減少、記録的な暖冬の影響を受けた灯油の減少など、総じて前連結会計年度を下回りました。
<連結業績の概要>当社グループは、第1次中期経営計画(2017年度から2019年度まで)に掲げた目標を達成すべく、基幹事業の収益力強化及びキャッシュ・フローと資本効率を重視した経営に精力的に取り組みました。
しかしながら、期末にかけて原油価格が大幅に下落し、在庫評価による損失を計上したことや石油・天然ガス開発事業における減損損失の計上等から、第1次中期経営計画の最終年度である当連結会計年度の連結業績は、売上高は前年同期比10.0%減の10兆118億円、営業損失は1,131億円(前年同期は5,371億円の利益)、親会社の所有者に帰属する当期損失は1,879億円(前年同期は3,223億円の利益)となりました。なお、在庫影響(総平均法及び簿価切下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)を除いた場合の営業利益は967億円(前年同期は5,157億円)となりました。
0102010_012.png(注)上図内の原油代、銅価、為替レートは期平均値です
セグメント別の概況は、次のとおりです。
エネルギー事業
国内で燃料油需要の減少が続く一方、海外では潤滑油や石油化学製品などの需要が中長期的に着実に増加する見込みです。このような事業環境下、エネルギー事業においては、将来にわたり国内のエネルギー安定供給の使命を果たすとともに、持続的な成長を目指して、コア事業の競争力強化と次世代の柱となる事業の育成・拡大に努めました。
●コア事業の競争力強化
石油精製販売・化学品事業については、製造、供給、購買等の各部門において徹底的な合理化・効率化を継続し、第1次中期経営計画で定めた目標(1,000億円)を上回る1,225億円の統合シナジーを創出しました。
生産面では、2019年4月に、室蘭製造所の生産を停止して物流拠点化し、また、川崎製油所と川崎製造所の組織を一体化し、操業を効率化しました。中国石油国際事業日本株式会社との合弁会社(大阪国際石油精製株式会社)が運営する大阪製油所については、2020年10月を目途に精製機能を停止し、アスファルト発電の事業所として再構築することを決定しました。加えて、同社が運営する製油所を千葉製油所に変更し、中国石油国際事業日本株式会社との協業を継続することを検討しています。さらに、鹿島コンビナートにおいては、三菱ケミカル株式会社との共同出資による有限責任事業組合を設立し、鹿島製油所における製造プロセス効率化、生産最適化及び廃プラスチックのケミカルリサイクル推進を目指して、各種検討を開始しました。
販売面では、お客様の利便性を一層向上させるため、2019年6月にサービスステーション(SS)の「ENEOS」へのブランド統一を完了するとともに、新しいセルフSSブランドである「EneJet」の展開強化、キーホルダー型のスピード決済ツールである「EneKey」の導入など、諸施策を推し進めました。また、国内最大のSSネットワークを「生活プラットフォーム」へと進化させるべく検討を重ね、SSにおけるコインランドリー併設事業の実証試験を推進したほか、広島市でデリバリー型カーシェアリングサービスの実証試験を開始しました。
●次世代の柱となる事業の育成・拡大
電気事業については、上半期に関西・中部エリアで「ENEOSでんき」の販売を開始し、また、家庭向け電気小売事業のブランドを「ENEOSでんき」に統一しました。さらに、下半期には供給地域を東北・四国エリアにも拡大し、積極的な販売活動を展開した結果、当連結会計年度末時点での契約件数は合計約69万件となりました。2020年4月からは北陸・九州エリアで、6月からは北海道・中国エリアで「ENEOSでんき」の販売を開始し、着々と全国のエリアに展開しました。また、国内での事業展開に加え、米国オハイオ州において、当社グループとして初となる海外天然ガス火力発電事業に参画しました。ガス事業については、大需要地である関東圏で「ENEOS都市ガス」の拡販を図り、当連結会計年度末時点で約6万件の契約を獲得したほか、海外では、戦略的パートナーであるVietnam National Petroleum Group社との間で、ベトナムにおけるLNG事業の実現に向けた共同検討を開始しました。
他方、低炭素・循環型社会の到来を見据えた中長期的な取組みとして、水素事業については、全国41か所で「ENEOS水素ステーション」を運営し、さらに3か所の水素ステーションの建設に着工したほか、CO2フリー水素の商用化に向けた検討に着手し、国際的なサプライチェーンの構築に向けた実証事業を進めるため、技術研究組合に参画しました。さらに、再生可能エネルギー事業については、新たに設置した専門組織の下、競争力の高い再生可能エネルギー電源の開発・運営を目指すべく、台湾最大級の洋上風力発電事業に参画し、また、リニューアブル・ジャパン株式会社と業務・資本提携しました。加えて、室蘭市においてバイオマス発電所の建設を着実に進め、商業運転を2020年5月より開始しました。
技術立脚型の事業については、潤滑油事業の海外展開を進め、フィリピンに潤滑油販売会社を設立して営業を開始し、また、機能材事業では、健康食品原料の開発・製造・販売をグローバルに手掛けるインドのOmniActive Health Technologies社と健康食品向けカロテノイド事業分野で協業を開始しました。
(エネルギー事業の業績)
こうした状況のもと、エネルギー事業の売上高は前年同期比11.2%減の8兆4,194億円、営業損失は1,628億円(前年同期は3,754億円の利益)となりました。在庫影響を除いた営業利益相当額は、石油化学製品の価格が中国における大型新設設備の稼働開始を背景に供給過剰となったことで低迷し、また、新型コロナウイルスの感染拡大、記録的な暖冬等の影響を受けた各種製品の減販及び原油価格の大幅な下落に伴う石油製品のマージン悪化があったことにより、前年同期比3,104億円減益の437億円(前年同期は3,541億円)となりました。
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石油・天然ガス開発事業
●原油・天然ガスの生産量
当連結会計年度においては、英国北海のカリーンガス田、マリナー油田等で生産を開始したものの、マレーシアSK8鉱区の返還等の要因により、原油・天然ガスの生産量は、前期と同じく原油換算で日量10万5千バーレルとなりました。
●生産拡大に向けた取り組み
マレーシアにおいては、2017年5月から天然ガスを生産しているSK10鉱区内のラヤン油ガス田において、浮体式生産貯油出荷設備(FPSO)の設置工事が完了し、2019年12月に原油の生産を開始しました。
英国北海においては、2013年に開発移行を決定したマリナー油田及び2015年に開発移行を決定したカリーンガス田で、生産井の掘削、生産プラットフォームの設置、パイプラインの敷設等の長期にわたる開発工事が完了し、カリーンガス田では2019年6月に天然ガスの生産を開始し、マリナー油田では2019年8月に原油の生産を開始しました。カリーンガス田及びマリナー油田の開発・生産プロジェクトは、近年の英国北海における大規模プロジェクトとして、オペレーターをはじめとする事業パートナー各社とともに開発工事を進めてきたものであり、今後、長期にわたって当社グループの原油・天然ガス生産を支え、キャッシュ・フローの創出に貢献する重要なプロジェクトと位置付けています。
また、ベトナムにおいては、2008年から原油・天然ガスを生産しているフンドン油田について、長年の安定操業実績等が同国政府に評価され、2020年4月までとなっていた権益期間の5年間の延長が認められました。フンドン油田が位置するベトナム沖15-2鉱区内では、ランドン油田で原油・天然ガスを生産しており、両油田一体で追加開発を進めることにより、事業価値のさらなる向上が期待できます。
●EOR技術及びCCS技術に関する取組み
米国においては、火力発電所の燃焼排ガスから回収したCO2を老朽化した油田に圧入するプロジェクトに引き続き取り組みました。このプロジェクトでは、2017年4月からの累計で367万トンのCO2を油田に圧入しており、EOR(Enhanced Oil Recovery:石油増進回収)技術による原油増産効果に加え、温室効果ガスの排出削減に大きく貢献しています。また、EOR技術に関するさらなる知見・技術を獲得し、既存の油田における原油回収率を向上させることを目的として、2019年11月には、界面活性剤を利用したケミカルEORの最先端の研究開発を行っているテキサス大学オースティン校と、ケミカルEORに関する委託研究契約を締結しました。
一方、2020年3月には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構とともに、マレーシアの国営石油会社ペトロナスとの間で、ガス田から排出されるCO2を回収し、再度地下に圧入するCCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留)技術を用いたガス田開発に関する共同スタディ契約を締結しました。
(石油・天然ガス開発事業の業績)
こうした状況のもと、石油・天然ガス開発事業の売上高は、新型コロナウイルスの感染拡大による需要の急減、一部産油国の原油増産表明に起因する原油価格の下落により、前年同期比10.6%減の1,334億円となりました。また、この価格下落を受けて、保有資産を再評価した結果、多額の減損損失を計上し、営業損失は388億円(前年同期は378億円の利益)となりました。
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金属事業
国際競争が激化する環境下、技術立脚型の事業展開により高収益体質を構築し、先端素材で持続可能な社会に貢献することを目指して、2019年6月に、「2040年 JX金属グループ長期ビジョン」を策定しました。同ビジョンでは、技術による差別化をキーワードに、金属グループの各事業を、組織基盤を支える「ベース事業」と成長戦略のコアとする「フォーカス事業」に分け、それぞれの特性に応じた施策の展開と、技術立脚型新規事業の不断の創出を掲げました。
●「ベース事業」の取組み
資源事業については、カセロネス銅鉱山において、自動制御プログラムの導入を進めて処理量を向上させるとともに、コスト管理を徹底した結果、前期に引き続き営業黒字を達成し、また、チリのロス・ペランブレス鉱山の操業も順調に推移しました。
製錬事業については、三井金属鉱業株式会社との合弁事業運営体制を見直し、2020年4月に、佐賀関製錬所と日立精銅工場を合弁会社(パンパシフィック・カッパー株式会社)からJX金属株式会社の完全子会社に移管しました。この体制変更により独自に両拠点を運営できることとなったため、環境リサイクル事業との統合を深化させ、原料構成を最適化するなど、さらなる競争力向上を図ります。
●「フォーカス事業」の取組み
EV等の急速な普及に伴う使用済み車載用リチウムイオン電池の資源循環利用の需要増加を見据え、使用済み電池に含まれるレアメタルを再び車載用電池の原料として使用する「クローズドループ・リサイクル」の実現に向けた技術開発を加速すべく、車載用リチウムイオン電池からバッテリーグレード金属塩を回収する実証試験装置を日立事業所に設置し、稼働させました。また、2020年4月に設置した専門組織の下、使用済み車載用リチウムイオン電池からのレアメタル回収・再利用技術の開発や、社会的な体制づくりを推進します。
機能材料事業については、スマートフォンの需要調整を主因に、圧延銅箔の販売が低調に推移したものの、薄膜材料事業については、裾野の広い半導体需要に支えられ、厳しい局面下においても半導体用スパッタリングターゲットの販売は堅調さを維持しました。両事業については、中長期的にはIoT・AI社会の進展や第5世代通信(5G)の普及による需要の拡大が見込まれることから、これを取り込むべく、スパッタリングターゲット、圧延銅箔及び高機能銅合金条の製造設備増強を進めました。また、高機能金属素材の一層の生産能力増強と安定供給を目指し、2019年8月に、株式会社日本製鋼所と銅合金の溶解及び鋳造を行う合弁会社(室蘭銅合金株式会社)を設立しました。
タンタル・ニオブ事業については、2018年7月に買収したH. C. Starck Tantalum and Niobium社(ドイツ法人)と同社の管理会社であるJX Metals Deutschland社とを合併し、組織の簡素化、意思決定の迅速化を図るなど、経営管理体制の強化を図りました。
チタン事業については、東邦チタニウム株式会社が出資するサウジアラビアのスポンジチタン製造合弁事業会社が工場の操業を開始し、2020年1月にスポンジチタンを初出荷しました。また、チタン製造技術を応用した電子部品材料である「超微粉ニッケル」については、通信機器の高機能化、自動車の電装化、5Gの普及等による需要増が期待されることから、供給体制を強化すべく、東邦チタニウム株式会社は、2019年10月に若松工場内に新工場の建設を決定しました。
さらに、フォーカス事業の収益規模拡大のため、技術立脚型新規事業を不断に創出すべく、2019年6月から、フランスのAgorize社と共同でアクセラレータープログラム「Innovation Challenge for the Next Generation」を実施しました。先端素材、高機能・多機能材料及びリサイクル技術などの幅広い領域で、世界中のスタートアップ企業総勢71社からアイデアが提案され、今後、同プログラムで入賞した各社とは、共同開発・資本提携など様々なパートナーシップの可能性を検討します。このほか、2019年12月には、英国のスタートアップ企業であり、金属3Dプリンター向けの合金設計等に関する先端技術を有するOxMet Technologies社に出資しました。また、2020年1月には、非鉄・資源産業界が抱える共通課題の抽出と地球規模の課題解決への貢献を目指して、国立大学法人京都大学大学院総合生存学館(思修館)と「SDGs実現に向けた包括共同研究促進協定」を締結しました。
(金属事業の業績)
こうした状況のもと、金属事業の売上高は、前年同期比3.6%減の1兆44億円、営業利益は446億円(前年同期は682億円)となりました。在庫影響を除いた営業利益相当額は、新型コロナウイルスの感染拡大により世界的な景気後退が懸念されて銅価格が大きく下落した影響等により、前年同期比202億円減益の479億円(前年同期は681億円)となりました。
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その他の事業
その他の事業の売上高は前年同期比3.8%減の5,074億円、営業利益は411億円(前年同期は424億円)となりました。
●株式会社NIPPO
株式会社NIPPOは、舗装、土木及び建築の各工事並びにアスファルト合材の製造・販売を主要な事業内容としています。当連結会計年度は、公共投資が堅調に推移しましたが、労務費や原材料価格の上昇など、経営環境は予断を許さない状況が続きました。このような環境下、同社は、技術力を活かした受注活動を展開するとともに、一層のコスト削減・効率化に取り組み、収益確保に努めました。
なお、同社は、2019年7月30日付で、公正取引委員会から、アスファルト合材の販売価格にかかる独占禁止法違反行為があったことを認定されたものの、課徴金減免制度の適用が認められ、課徴金の納付を命じない旨の通知を受け取りました。同社は、遅くとも2011年3月頃から2015年1月27日までの間、他の事業者8社と共同して独占禁止法違反行為を行っていたとの公正取引委員会の認定を厳粛に受け止め、他の事業者とアスファルト合材の販売価格に関する情報交換を行わないことを監視する体制の構築、独占禁止法遵守にかかる社内規程類の整備及び周知徹底などの再発防止策について、取締役会で決議し、徹底しています。当社としても、引き続き同社を指導していきます。
上記各セグメント別の売上高には、セグメント間の内部売上高528億円(前年同期は704億円)が含まれています。
(2)生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
エネルギー5,589,22989.0
石油・天然ガス開発135,10390.7
金属875,586100.0
その他115,577102.9
合計6,715,49590.5

(注)1.上記の金額は、各セグメントに属する製造会社の製品生産金額の総計(セグメント間の内部振替前)を記載しています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
イ.受注実績
当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。
ウ.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
エネルギー8,414,25988.8
石油・天然ガス開発133,36489.4
金属1,002,10496.4
その他462,04799.3
合計10,011,77490.0

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(3)財政状態及びキャッシュ・フローの概況
①流動性と資金の源泉
当社は、効率的で安定的な資金の確保と、事業活動のための流動性の維持を、財務活動の取り組みとして重視しています。効率的な調達に向けて、コマーシャル・ペーパーや社債等の直接金融と、金融機関からの借入等の間接金融を、機動的に選択しています。
当社は安定的な資金の確保に向けて、直接金融市場への継続的なアクセスを図るとともに、間接金融についても原油備蓄資金のための制度融資なども活用しており、政府系金融機関及び市中金融機関と幅広く関係を維持し、調達ソースの多様化を図って十分な流動性を確保しています。
また、金融市場の環境変化にも対応できる流動性を維持するために、現金及び現金同等物を確保する他、取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結しています。当該契約の極度額は当連結会計年度末では4,500億円であり、また同契約に係る借入残高はありません。
連結における資金管理では、当社を中心に集中して資金調達を行い、国内外の金融子会社を通じてグループ各社に資金を配分するというグループファイナンス制度を設けています。その運営においてキャッシュマネジメントシステムを活用しており、流動性資金の一元管理及び効率化を実現しています。
当社は、資金調達とグローバルなビジネスを円滑に行うため、格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)、ムーディーズ・ジャパン(ムーディーズ)の3社から格付けを取得しています。3社の2020年5月時点の当社に対する格付け(長期/短期)は、R&IがA+(見通し安定的)/a-1、JCRがAA-(見通し安定的)/J-1+、ムーディーズがBaa2(見通し安定的)/(短期は取得無し)となっています。
②連結財政状態計算書
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)第1次中期経営計画(2017年度から2019年度まで)の成果」に記載のとおり、当社は、経営基盤の強化の一環として、財務体質の改善を目指し、統合シナジーを含めた利益最大化、設備投資の厳選、資産売却の積極的な推進や運転資本の圧縮等に取り組みました。
その結果、第1次中期経営計画の最終年度である当連結会計年度では、年度末にかけての急激な事業環境の悪化により多額の当期損失を計上し、ネットD/Eレシオは前連結会計年度末比0.11ポイント悪化したものの、目標値である0.70倍(資本合計ベース)を達成し、一定の財務基盤を確立しました。
なお、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末比3.3ポイント減少し28.8%、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度末比98.11円減少の718.28円となりました。
また、資産、負債及び資本の主な増減要因は以下のとおりです。
ア.資産 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末比4,665億円減少の8兆113億円となりました。増加要因として、IFRS第16号「リース」の適用に伴う使用権資産※の増加がありました。一方、減少要因として、油価下落による棚卸資産の減少があったこと、更に、前連結会計年度末日の増加要因であった休日の影響がなくなったことにより営業債権の減少等もあり、全体として減少しました。
※当該使用権資産は連結財政状態計算書上の有形固定資産に含めています。
イ.負債 当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末比546億円減少の5兆3,034億円となりました。増加要因としてIFRS第16号「リース」の適用に伴いリース負債の増加があったものの、一方で前連結会計年度末日の増加要因であった休日影響がなくなったことによる営業債務の減少等があり、全体として減少しました。また、手元資金を控除したネット有利子負債は、前連結会計年度末比687億円増加の1兆8,988億円となりました。
ウ.資本 当連結会計年度末における資本合計は、配当金の支払及び自己株式の取得といった株主還元に係る減少要因と当期損失を計上したことにより、前連結会計年度末比4,119億円減少の2兆7,079億円となりました。
③連結キャッシュ・フロー
当社は、第1次中期経営計画の基本方針として「キャッシュ・フローと資本効率の重視」を掲げ、3か年累計でフリーキャッシュ・フローを5,000億円創出することを経営目標として取り組みました。当連結会計年度のフリーキャッシュ・フロー(IFRS第16号「リース」適用除き)は、794億円に留まったものの、3か年累計では8,287億円を創出し、目標を大きく上回りました。第2次中期経営計画においても基本方針の柱の一つに「長期ビジョン実現に向けた事業戦略とキャッシュ・フローを重視した経営の両立」を掲げて、基盤事業からのキャッシュ・フローを最大化し、財務基盤の健全性維持とキャッシュ・フローの適正な配分を行っていきます。
なお、当連結会計年度の各キャッシュ・フロー(IFRS第16号「リース」適用)の状況と主な要因は以下のとおりです。
ア.営業活動によるキャッシュ・フロー
多額の当期損失を計上したものの、評価性(非金融資産の減損損失等)損失も多く、更に、在庫影響(*)を除いた営業利益は967億円であったことや、油価下落による棚卸資産の減少や減価償却費の増加(IFRS第16号「リース」適用の影響含む)もあり、5,107億円のプラスとなりました。
(*)総平均法及び簿価切下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響
イ.投資活動によるキャッシュ・フロー
主として再生可能エネルギーへの投資や、製油所における石油精製設備の維持・更新のための投資、石油・天然ガス開発事業への投資により、3,713億円のマイナスになりました。
ウ.財務活動によるキャッシュ・フロー
コマーシャル・ペーパーの増加等があったものの、配当金の支払及び自己株式の取得といった株主還元施策、長期借入金の返済やリース負債の返済により1,198億円のマイナスとなりました。
この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は3,933億円となり、期首に比べ144億円増加しました。
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(4)重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しています。当社は「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第1条の2に掲げる「指定国際会計基準特定会社」の要件を満たすことから、同規則第93条の規定を適用しています。
重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記3、4」をご参照ください。