有価証券報告書-第11期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/25 14:41
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(1)経営成績等の状況の概要
<当社グループを取り巻く環境>当連結会計年度における世界経済は、期初には新型コロナウイルス感染症の影響を受け、急速に悪化しましたが、期中において、各国の経済下支え策や経済活動の段階的な再開を受け、持ち直しの動きが見られました。しかし、下期には再び、新型コロナウイルス感染症の影響が拡大し、本格的な回復には至りませんでした。
ドバイ原油の価格は、新型コロナウイルス感染症に起因する需要低迷を反映し、期初には1バーレル当たり21ドルでしたが、OPECプラスの協調減産、経済活動の再開による需要回復への期待等を背景に、期末には1バーレル当たり63ドルまで回復しました。しかしながら、当連結会計年度平均では、前年同期比15ドル安の45ドルに留まりました。
LME(ロンドン金属取引所)銅価格は、新型コロナウイルス感染症の影響による需要後退の懸念から一時下落しましたが、その後、中国で銅地金需要が回復した一方、南米の銅鉱山からの供給量が減少したため、期初の1ポンド当たり216セントから、期末には1ポンド当たり401セントまで上昇しました。
<連結業績の概要>このような事業環境下、当社グループは、新型コロナウイルス感染防止策を徹底して事業を継続し、第2次中期経営計画(2020年度から2022年度まで)に沿って、諸施策を実行しました。当期における在庫影響を除いた営業利益相当額は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う石油製品の販売減や銅生産量の減少があったものの、堅調な石油製品マージンと機能材料・薄膜材料の増販等の影響により、2,155億円(前年同期は967億円)となりました。
また、当連結会計年度の連結業績は、売上高は前年同期比23.5%減の7兆6,580億円、営業利益は2,542億円(前年同期は1,131億円の損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,140億円(前年同期は1,879億円の損失)となりました。
0102010_012.png(注)上図内の原油価格、銅価、為替レートは期平均値です。
セグメント別の概況は、次のとおりです。
エネルギー事業
新型コロナウイルス感染症の影響により、石油製品及び石油化学製品の需要が大きく減少し、ジェット燃料、軽油及びガソリンを中心に、販売数量が前年同期比減となりました。一方、国内の石油製品マージンは、堅調に推移しました。
<基盤事業>石油精製販売事業については、人々の生活に欠かせないエネルギーの安定供給の使命を果たすため、製造・輸送・販売の各現場において新型コロナウイルス感染防止策を徹底しながら操業・運営を継続するとともに、さらなる競争力強化を図るべく、次の諸施策に取り組みました。
●SSネットワークの強化
国内最大のSSネットワークを一層強固な事業基盤とすべく、お客様の利便性や満足度を高めるための様々なサービスの展開に努めました。
具体的には、セルフSSブランド「EneJet」の拡大、キーホルダー型のスピード決済ツール「EneKey」の発行強化に加え、Webカーメンテナンス予約システム「エネアポ予約」をDr.Drive店舗を中心にスタートしました。
●サプライチェーン改革の断行
サプライチェーン全体の競争力強化を図るべく、中国石油国際事業日本株式会社との合弁会社(大阪国際石油精製株式会社)が運営していた大阪製油所の精製機能を停止し、運営する製油所を千葉製油所に変更しました。さらに、2021年10月を目途に知多製造所の製造機能を停止し、また、2022年10月を目途に根岸製油所の原油処理装置の一部及び潤滑油ベースオイル製造装置を廃止することを決定しました。
●デジタル技術の積極導入
安定・効率操業の確立に向け、川崎製油所において、株式会社Preferred NetworksとともにAIを活用したプラントの自動運転技術の開発に取り組み、また、株式会社センシンロボティクスと共同でドローンを用いた設備点検の実証実験を行いました。
<成長事業>脱炭素・循環型社会の到来、デジタル革命の進展及びライフスタイルの変化を見据え、長期ビジョンに掲げる成長事業を育成・強化するため、次のとおり長期的展望に立った施策に取り組みました。
(石油化学事業)
第2次中期経営計画において、付加価値の高い誘導品事業への進出を掲げています。その一環として、サウジアラビアでのENB(自動車部材向け合成ゴム添加剤用途)製造装置の新設について、フィージビリティスタディを実施しました。
(素材事業)
全国のSSで販売するガソリンエンジンオイルを最新の国際規格に適合するラインアップに切り替え、ENEOSオイルの商品ブランドを「ENEOS X」に一新しました。
また、2021年5月には、素材事業のコアとなる技術立脚型事業の獲得・拡大を目的に、JSR株式会社から、主に合成ゴムの製造・販売を行うエラストマー事業を買収することについて、同社と契約を締結しました。当該買収によって、素材分野における新たな技術及び研究開発機能を獲得し、自動車向け素材事業を育成します。
(次世代型エネルギー供給・地域サービス事業)
●エネルギーサービス
国内最大規模の室蘭バイオマス発電所の商業運転を開始しました。加えて、イーレックス株式会社と大型バイオマス発電所の共同事業化について検討することに合意しました。
メガソーラー発電所については、新たに全国3か所(山形県酒田市、山口県下関市及び富山県高岡市)において運転を開始し、合計21か所になりました。このほか、日本各地で太陽光、陸上風力及び洋上風力の発電事業に参画しました。
水素事業については、国内において、ENEOS水素ステーション4か所を新たに開設し、合計45か所になりました。このほか、CO2フリー水素の国際的なサプライチェーンの構築に向けて、豪州における有機ハイドライド(MCH)の活用、マレーシアにおける水力発電の余剰電力を活用した水素・MCHの製造、サウジアラビアにおける化石燃料由来の水素のCO2フリー化・輸出について、検討を進めました。
「ENEOSでんき」は、2020年6月に全国展開(沖縄電力エリア及び離島エリアを除きます。)を果たし、当期末時点での契約件数が約85万件となり、「ENEOS都市ガス」の当期末時点での契約件数は、約9万8千件となりました。「ENEOS都市ガス」については、株式会社JERA及び大阪ガス株式会社との合弁会社(扇島都市ガス供給株式会社)において、都市ガスの製造・供給設備の商業運転を開始しました。
次世代型エネルギー供給プラットフォームの構築については、地域パートナーとの連携を進めており、静岡県と次世代型エネルギーの推進及び地域づくりにかかる基本合意書を締結しました。
●モビリティサービス・ライフサポート
「ENEOSカーシェア」の実証を継続するとともに、SSネットワークを販売拠点としたカーリース事業「ENEOSカーリース」の実証を開始しました。(2021年4月に全国展開を開始)
また、ENEOSブランドのコインランドリー「ENEOS Laundry」を展開したほか、新たなライフサポート事業として、洗濯代行・買物代行の実証を開始しました。
(環境対応型事業)
EVバス向け蓄電池の「リース・リユース・リサイクル」循環モデルの構築に向けて、バス運行会社と共同でEVバス運行の実証実験を開始しました。
(エネルギー事業の業績)
エネルギー事業の売上高は前年同期比28.8%減の5兆9,985億円、営業利益は1,211億円(前年同期は1,628億円の損失)となりました。在庫影響を除いた営業利益相当額は、販売数量の減少、製油所・製造所の生産効率化に伴う一過性損失、電力卸価格の高騰等の影響を受けたものの、石油製品マージンの良化と経費削減等により、824億円(前年同期は437億円)となりました。
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石油・天然ガス開発事業
新型コロナウイルス感染防止策を徹底し、石油・天然ガスの安定生産を維持するとともに、EOR技術の向上やデジタル化の推進等によって、既存事業の価値最大化と成長事業と位置付ける環境対応型事業の推進に取り組みました。
<基盤事業>●原油・天然ガスの生産量
新型コロナウイルス感染症の流行下においても安定生産を維持し、マレーシア及びパプアニューギニアのプロジェクトでは、それぞれの事業年度において過去最大の年間生産量を達成しました。また、前連結会計年度に生産を開始した英国北海のカリーンガス田、マリナー油田の操業が順調に推移したことにより、原油・天然ガスの生産量は、前連結会計年度を大幅に上回り、原油換算で日量12万5千バーレルとなりました。
●生産拡大に向けた取り組み
既存事業の価値を最大化すべく、複数のプロジェクトにおいて生産拡大に向けた取組みを進めました。
マレーシアにおいては、従来天然ガスの生産を行っていたSK10鉱区において、新設した浮体式生産貯油出荷設備(FPSO)を使用し、ラヤン油ガス田から原油の出荷を開始しました。同鉱区内のヘランガス田においても、2020年10月からFPSOを使用し、原油の生産を開始しました。また、両油ガス田の周辺地域で探鉱活動を継続しています。
インドネシアにおいては、ベラウ鉱区において液化天然ガス(LNG)を生産するタングーLNGプロジェクトを推進しています。当連結会計年度においては、LNGの生産能力を大幅に拡大するため、第3系列目となる天然ガスの液化設備建設作業に引き続き取り組みました。
●既存事業におけるデジタル技術の活用
英国のマリナー油田においては、装置の自動運転技術や遠隔操業技術を導入し、インドネシアのタングーLNGプロジェクトにおいては、液化・冷却プロセスを自動制御化することにより、生産量の増加を実現しました。また、デジタル技術の活用について他社と共同研究を実施し、埋蔵量評価や開発計画の最適化にかかる技術評価の高精度化・高速化を実現したほか、データマネジメントや調達・物流の最適化に向けた検討を行っています。
<成長事業>●Petra Nova CCUSプロジェクト
火力発電所から排出される燃焼排ガスからCO2を回収し、老朽化油田に圧入することで、温室効果ガスの排出削減に大きく貢献する「Petra Nova CCUS* プロジェクト」(米国)は、他社に先駆けて事業化に成功したプロジェクトです。当連結会計年度においても当該プロジェクトに継続して取り組み、操業開始時(2016年12月)からのCO2回収・圧入量が累計で約377万トンとなりました。
当該プロジェクトに活用されているEOR*技術については、既存油田に応用し、可採埋蔵量を低コストかつ高確率で増加させるべく、技術力の向上に努めました。EOR技術にデジタル技術を活用するため、東京大学と協力して、デジタルオイル技術*に関する研究を開始しました。
* CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage):二酸化炭素回収・有効利用・貯留
* EOR(Enhanced Oil Recovery):石油増進回収
* デジタルオイル技術:デジタル空間で原油分子を再現し、化学反応を計算によってシミュレーションする技術
●環境対応型事業の推進
CCS*・CCUS技術に関する知見獲得を目的として、二酸化炭素地中貯留技術研究組合に加入しました。また、2021年4月、環境対応型事業を迅速かつ集中的に推進する組織として、JX石油開発株式会社に「サステナブル事業推進部」を新たに設置しました。これらの取組みを通じて、今後の新たな事業展開を図るとともに、CCS・CCUS技術を用いた環境対応型事業を推進します。
* CCS(Carbon dioxide Capture and Storage):二酸化炭素回収・貯留
(石油・天然ガス開発事業の業績)
こうした状況のもと、石油・天然ガス開発事業の売上高は、前年同期比15.7%減の1,124億円となりました。営業利益は、原油及び天然ガスの価格下落(年度平均・前年同期比)による悪化影響を受けたものの、減損損失の反転により、28億円(前年同期は388億円の損失)となりました。
0102010_014.png金属事業
カセロネス銅鉱山において新型コロナウイルス感染防止策を実施し操業を継続しましたが、採掘に遅れが生じたため、生産量が前年に比べて減少しました。
一方、機能材料事業及び薄膜材料事業の各製品の販売量は、テレワークの浸透等によるスマートフォン、サーバー、通信インフラをはじめとする高機能IT分野での需要増加を主因に、概ね前年同期を上回りました。
<ベース事業>●資源事業
金属のサプライチェーンの中核である銅製錬事業にとって、カセロネス銅鉱山の高品位かつ不純物の少ない銅精鉱の確保は極めて重要であるとの判断のもと、同鉱山の共同出資者である三井金属鉱業株式会社及び三井物産株式会社から、両社保有の全権益を譲り受けることで基本合意し、2021年2月に譲り受けが完了しました。
また、CO2総排出量の大幅な削減に寄与するため、2021年1月、カセロネス銅鉱山において使用する電力全量を再生可能エネルギー由来のものに切り替えました。
●金属・リサイクル事業
製錬事業とリサイクル事業の一体運営による両事業の強化の一環として、佐賀関製錬所向けのリサイクル原料の増集荷・増処理を目的に、大分県大分市の大分港大在西地区においてリサイクル原料等の物流拠点を建設することを決定しました。
<フォーカス事業>●機能材料事業
IoT・AI化の進展に伴う需要拡大に対応するため、圧延銅箔・高機能銅合金条の生産能力を2017年度比で約30%増強(面積ベース)しました。
また、データ社会の発展に伴う高性能な材料の需要の高まりに応えるべく、超高強度なチタン銅、強度と導電率を高い次元で両立させたコルソン合金及び高い耐熱性を持つ圧延銅箔(リチウムイオン電池向け)を開発し、サンプル出荷を開始しました。
●薄膜材料事業
半導体用スパッタリングターゲットの生産能力を2017年度比で約30%増強(枚数ベース)し、さらに、テレワーク等を背景とした通信インフラやモバイル端末の需要増大による半導体市場の成長加速を踏まえ、生産能力を現行から約30%引き上げることを決定しました。
●タンタル・ニオブ事業
2018年7月に買収した、主にコンデンサ・半導体用途向けの高機能タンタル粉末等を生産するH. C. Starck Tantalum and Niobium社(ドイツ法人)について、マーケットにおける自社ブランドの確立及び将来期待されるブランド力の発揮を企図し、2020年7月1日付で社名を「TANIOBIS GmbH」に変更しました。
●研究開発
「2040年JX金属グループ長期ビジョン」において掲げた「共創型の開発体制の推進」方針に基づき、酸化ガリウム結晶の実用化に向け、株式会社ノベルクリスタルテクノロジーに資本参画しました。また、放熱部材向け多孔質金属材料であるロータス金属の実用化を目指し、株式会社ロータス・サーマル・ソリューションと協業を開始しました。
●チタン事業(東邦チタニウム株式会社)
若松工場においては、チタン製造技術を応用した電子部品材料である超微粉ニッケルの新工場を建設し、2021年4月の生産開始に向けた立上げ作業を進め、同月に竣工しました。また、茅ヶ崎工場では、ポリプロピレン製造に用いるTHC触媒の新工場の建設に取り組みました。
(金属事業の業績)
こうした状況のもと、金属事業の売上高は、前年同期比8.7%増の1兆921億円、営業利益は、カセロネス銅鉱山における生産減の影響があったものの、銅価格の上昇と機能材料・薄膜材料の増販等により、781億円(前年同期は446億円(在庫影響を除いた営業利益相当額479億円))となりました。
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その他の事業
その他の事業の売上高は前年同期比0.6%減の5,042億円、営業利益は491億円(前年同期は411億円)となりました。
●株式会社NIPPO
株式会社NIPPOは、舗装、土木及び建築の各工事並びにアスファルト合材の製造・販売を主要な事業内容としています。当連結会計年度は、公共投資が堅調に推移したものの、民間設備投資は弱含み、また、新型コロナウイルスの影響や労働需給・原材料価格等の動向に引き続き注意を要する等、厳しい経営環境が続きました。
このような事業環境下、各工事現場・工場において新型コロナウイルス感染防止策を講じ、事業を継続しました。また、技術の優位性を活かした受注活動やアスファルト合材等の製品販売を強化するとともに、コスト削減・業務効率化に取り組み、収益の確保に努めました。同社は、分散発電・分散蓄電システムの実用化を目指し、MIRAI-LABO株式会社と共同で、太陽光発電舗装「e-Smart ROAD」の性能試験を推進しました。
上記各セグメント別の売上高には、セグメント間の内部売上高491億円(前年同期は528億円)が含まれています。
(2)生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
エネルギー3,167,67156.7
石油・天然ガス開発114,12784.5
金属821,63693.8
その他120,102103.9
合計4,223,53662.9

(注)1.上記の金額は、各セグメントに属する製造会社の製品生産金額の総計(セグメント間の内部振替前)を記載しています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
イ.受注実績
当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。
ウ.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
エネルギー5,994,67771.2
石油・天然ガス開発112,38084.3
金属1,089,664108.7
その他461,29099.8
合計7,658,01176.5

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(3)財政状態及びキャッシュ・フローの概況
①流動性と資金の源泉
当社は、効率的で安定的な資金の確保と、事業活動のための流動性の維持を、財務活動の取り組みとして重視しています。効率的な調達に向けて、コマーシャル・ペーパーや社債等の直接金融と、金融機関からの借入等の間接金融を、機動的に選択しています。
当社は安定的な資金の確保に向けて、直接金融市場への継続的なアクセスを図るとともに、間接金融についても原油備蓄資金のための制度融資なども活用しており、政府系金融機関及び市中金融機関と幅広く関係を維持し、調達ソースの多様化を図って十分な流動性を確保しています。
また、金融市場の環境変化にも対応できる流動性を維持するために、現金及び現金同等物を確保する他、取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結しています。当該契約の極度額は当連結会計年度末では4,500億円であり、また同契約に係る借入残高はありません。
連結における資金管理では、当社を中心に集中して資金調達を行い、国内外の金融子会社を通じてグループ各社に資金を配分するというグループファイナンス制度を設けています。その運営においてキャッシュマネジメントシステムを活用しており、流動性資金の一元管理及び効率化を実現しています。
当社は、資金調達とグローバルなビジネスを円滑に行うため、格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)、ムーディーズ・ジャパン(ムーディーズ)の3社から格付けを取得しています。3社の2021年6月時点の当社に対する格付け(長期/短期)は、R&IがA+(見通し安定的)/a-1、JCRがAA-(見通し安定的)/J-1+、ムーディーズがBaa2(見通し安定的)/(短期は取得無し)となっています。
なお、2021年6月に、財務基盤の健全性を維持しつつ長期的な戦略投資の実現を両立し得る資金調達として、公募形式によるハイブリッド社債を総額3,000億円発行しました。詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記38.後発事象」をご参照ください。
②連結財政状態計算書
ア.資産 当連結会計年度末における資産合計は、有形固定資産の減損等があったものの、資源価格上昇による営業債権及び棚卸資産の増加等により、前連結会計年度末比475億円増加の8兆588億円となりました。
イ.負債 当連結会計年度末における負債合計は、資源価格上昇等により営業債務が増加したものの、休日影響で揮発油税の支払の一部が翌期になったこと等により有利子負債が減少したことから、前連結会計年度末比29億円増加の5兆3,063億円となりました。また、手元資金を控除したネット有利子負債は、前連結会計年度末比2,809億円減少の1兆6,179億円となりました。
ウ.資本 当連結会計年度末における資本合計は、子会社株式取得に伴う資本剰余金の減少や配当金の支払等があったものの、当期利益の計上等により、前連結会計年度末比447億円増加の2兆7,526億円となりました。
なお、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末比0.1ポイント増加し28.9%、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度末比5.90円増加の724.18円、ネットD/Eレシオは前連結会計年度末比0.11ポイント改善し、0.59倍(資本合計ベース)となりました。
③連結キャッシュ・フロー
当社は、第2次中期経営計画においても基本方針の柱の一つに「長期ビジョン実現に向けた事業戦略とキャッシュ・フローを重視した経営の両立」を掲げて、基盤事業からのキャッシュ・フローを最大化し、財務基盤の健全性維持とキャッシュ・フローの適正な配分を行っていきます。
なお、当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況と主な要因は以下のとおりです。
ア.営業活動によるキャッシュ・フロー
資源価格上昇による運転資金の増加があったものの、税引前利益や休日影響による未払揮発油税の増加及び非資金損失である減損損失の戻しにより、6,791億円のプラスとなりました。
なお、カセロネス銅鉱山の権益追加取得に伴い、買取した貸付債権等の連結消去にあたり生じる、借入債務等の帳簿価額と貸付債権等の取得価額の差額の債務消滅益635億円は、非資金収益として営業活動によるキャッシュ・フローからは除いています。
イ.投資活動によるキャッシュ・フロー
主として再生可能エネルギーへの投資や、製油所における石油精製設備の維持・更新のための投資、石油・天然ガス開発事業への投資により、3,068億円のマイナスになりました。
ウ.財務活動によるキャッシュ・フロー
営業活動による資金の増加が、投資活動による資金の減少を上回ったことから、資金需要が減少し、当連結会計年度末のコマーシャル・ペーパー等の有利子負債の残高が減少したこと等により、3,551億円のマイナスとなりました。
この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は4,123億円となり、期首に比べ190億円増加しました。
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(4)重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しています。当社は「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第1条の2に掲げる「指定国際会計基準特定会社」の要件を満たすことから、同規則第93条の規定を適用しています。
重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記3、4」をご参照ください。