有価証券報告書-第15期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態の状況及び分析・検討
当連結会計年度末の資産、負債及び純資産の状況は以下のとおりであります。
資産の部合計は、前連結会計年度末比72,259百万円減の286,098,449百万円となりました。
主な要因は、銀行業等における現金預け金1,435,917百万円の増、銀行業における買現先勘定1,363,758百万円の増、銀行業及び生命保険業等における金銭の信託1,025,814百万円の増の一方、銀行業及び生命保険業等における有価証券4,520,056百万円の減によるものです。
負債の部合計は、前連結会計年度末比2,099,619百万円増の273,481,674百万円となりました。
主な要因は、銀行業における売現先勘定3,286,253百万円の増、貯金1,752,024百万円の増の一方、生命保険業における責任準備金2,767,383百万円の減によるものです。
純資産の部合計は、前連結会計年度末比2,171,879百万円減の12,616,774百万円となりました。
主な要因は、利益剰余金257,113百万円の増の一方、銀行業及び生命保険業等におけるその他有価証券評価差額金2,285,094百万円の減、銀行業及び生命保険業等における繰延ヘッジ損益236,408百万円の減によるものです。
各事業セグメント別の資産の状況は以下のとおりであります。
① 郵便・物流事業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比27,528百万円減の2,023,941百万円となりました。
主な要因は、ゆうパック等の荷物分野の収益拡大に伴う営業キャッシュ・フローの増加により現金預け金が36,323百万円増加した一方、減価償却等により建物等の有形固定資産が46,943百万円減少したことによるものです。
② 金融窓口事業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比69,402百万円減の2,596,515百万円となりました。
主な要因は、現金預け金が23,132百万円増加した一方、交付金制度の導入に伴い営業未収入金等が減少したことによりその他資産が64,907百万円減少したことや建物等の有形固定資産が32,060百万円減少したことによるものです。
③ 国際物流事業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比98,435百万円増の565,794百万円となりました。
主な要因は、「リース」(IFRS第16号 2016年1月13日)の適用による使用権資産の計上により有形固定資産が97,094百万円増加したことによるものです。
④ 銀行業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比1,936,804百万円増の210,910,908百万円となりました。
主な要因は、有価証券が1,934,022百万円減少した一方、現金預け金が966,564百万円増加、コールローンが640,000百万円増加、買現先勘定が1,363,758百万円増加したことによるものです。
⑤ 生命保険業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比2,240,236百万円減の71,664,781百万円となりました。
主な要因は、保有契約の減少に伴い保険契約準備金が減少したことに対応し、有価証券が2,581,023百万円減少したことによるものです。
(2) 経営成績の状況及び分析・検討
当連結会計年度、かんぽ生命保険商品に関して、お客さまのご意向に沿わず不利益を生じさせた可能性のある事案が判明しました。これを受け、当社グループにおいて、ご契約調査を実施し、お客さまの不利益の解消に努めてきました。また、特別調査委員会を設置し、事案の徹底解明及び原因究明を行うとともに、再発防止策の検討を進めてきました。
2019年12月、当社、日本郵便及びかんぽ生命保険は、総務大臣及び金融庁より保険業法等に基づく行政処分を受け、2020年1月に業務改善計画を提出し、お客さま本位の業務運営の徹底、適切な業務運営の確保と、保険契約者の保護を図るための施策等に取り組みました。
業務改善計画の主要施策の概要は以下の通りです。
① 健全な組織風土の醸成・適正な営業推進態勢の確立
組織全体にお客さま本位の意識を醸成するとともに、それに基づく保険募集を実践することが適切に評価される態勢を構築します。
具体的には、お客さま本位の理念に基づいた行動規範を策定し、これを具体化するものとして、かんぽ生命保険商品のスタンダードな販売モデルを策定して、これらを研修等により関係する全社員へ浸透させます。
また、これらに整合的な営業目標の設定、評価、手当に見直すとともに、条件付解約等制度や契約転換制度の整備を進めます。
② チェック・統制機能
第1線(郵便局・コールセンター・サービスセンター等)では、お申し込みから契約締結までの間で、郵便局及びかんぽ生命保険による重層的なチェックを実施します。
第2線(本社等)では、適正な募集管理のための体制等の強化として、募集管理・コンプライアンス・苦情対応部門の人員の拡充、事故判定においては自認に頼らない事実認定・事故判定を行うこと、処分の区分の追加、問題のあった募集人・管理者への処分を実施します。
また、第3線として、内部監査部門も強化します。
③ 情報共有、ガバナンス
(a) PDCAサイクルの徹底
お客さまから当社グループに寄せられる様々な声を把握・分析するとともに、新たに設置する金融営業専用の社外通報窓口に寄せられる社員の声なども把握・分析し、改善策の効果検証・さらなる見直しに努めてまいります。
(b) 各社及びグループのガバナンスの強化
社外取締役の知見を活用して取締役会等を強化するほか、内部統制に関する各種連絡会・委員会を強化し、深度ある議論を実施します。
(c) 改善策のモニタリングと定期的な進捗状況の公表
今回の問題を受け、2020年1月、当社執行役社長の下にグループ横断のタスクフォースを設置しました。このタスクフォースによる進捗管理のもと、弁護士や外部の専門家を含めた第三者のモニタリングを受けながら、着実に各施策を実行し、グループ全体に浸透させてまいります。
ご契約調査については、まず、2019年8月から実施している特定事案調査について、お客さま都合によるもの等を除き、2020年3月末にお客さま対応を完了しました。特定事案調査の募集人調査については、2020年4月末でほぼ募集人調査の判定が終了しており、法令違反・社内ルール違反に該当した募集人に対する研修を順次開始しました。また、同じく2019年8月から実施している全ご契約調査においては、契約内容の説明や各種手続きの希望のほか、苦情やお叱りなど多数のご意見をいただきました。そのうち法令違反や社内ルール違反の可能性のあるものについて、募集人調査や利益回復に向けた対応を実施します。
2020年2月から全ご契約調査の深掘調査を実施し、多数契約調査のご契約内容の確認を進めました(お客さま都合によるもの等を除き、2020年4月末に概ね完了。)。多数契約以外の調査についても、2020年6月末を目処にご契約内容の確認を進めています。
<特定事案調査、全ご契約調査及び全ご契約調査の深掘調査の概要>ア. 特定事案調査
乗換契約のうち、お客さまのご意向に沿わず不利益が発生した可能性がある事案(保険契約を解約して、新規に保険契約の申込みを受けたが、この新規保険契約がお客さまの病歴等で成立しなかったため、保険契約(保障)がない状態となった場合等)について、特定の類型に分類が可能な事案を「特定事案」としてA~F類型に分類し、過去のご契約データから、乗換後の契約状況が当該類型に合致するもの(過去5年分で約18.3万件)を全て抽出し、お客さまのご意向に沿わず不利益を生じさせたものがないか調査を実施。
イ. 全ご契約調査
全てのかんぽ生命保険のご契約(過去5年間分の消滅契約を含む約3,000万件、ご契約者数で約1,900万人)について、お客さまのご意向に沿わず不利益を生じさせたものがないか調査を実施。
ウ. 全ご契約調査の深掘調査
全ご契約調査でお客さまからいただいたご回答・ご意見等の中には、多数回にわたって契約の消滅・新規契約が繰り返されたものなど、お客さまのご意向に沿ったものではない可能性が想定されるケースが判明したことから、全ご契約調査のさらなる深掘調査として調査を実施。
なお、今回の問題を招いた責任を明確化するため、2020年1月5日付けで当社、日本郵便及びかんぽ生命保険の社長等が辞任するとともに、役員の月額報酬の減額等を実施しており、一定の責任を有している本社・支社等の管理社員については、同年夏期賞与を減額支給することとしました。
上記のかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題に対する対応以外としては、当社におきましては、持株会社として、当社グループの企業価値向上を目指し、グループ各社の収益拡大や経営効率化等の推進に努めるとともに、郵便、貯金及び保険のユニバーサルサービスの確保、郵便局ネットワークの維持・活用による安定的なサービスの提供等という目的が達成できるよう、グループ運営に取り組みました。
また、グループ各社のコンプライアンス・プログラムの策定・推進の状況、各社の内部監査態勢・監査状況の把握に努めたほか、集約により効率性が高まる間接業務をグループ各社から受託するとともに、病院及び宿泊事業の経営改善に取り組みました。加えて、2019年4月に、かんぽ生命保険普通株式の第2次売出しを実施したほか、2018年12月に合意した、当社とアフラック・インコーポレーテッド及びアフラック生命保険株式会社との戦略提携に基づく、アフラック・インコーポレーテッドの普通株式の取得について、2020年2月をもって予定していた株式数の取得を完了しました。
さらに、グループ各社が提供するサービスの公益性・公共性の確保や、持続可能な社会の実現・未来の創造に貢献するため、グループとして取り組むべきCSR重点課題を特定し、それに基づくCSR活動や災害復興支援に、グループ一丸となって取り組んでまいりました。
また、新型コロナウイルス感染症への対策として、当社グループは、当社社長を本部長とする本社合同対策本部を設置し、関係機関と連携を図り、感染の防止と業務・サービスの継続等のため、必要な取組みを継続しました。これらの取組みの中で、2020年3月には、日本郵便が、厚生労働省からの委託を受け、北海道の一部対象地域でのマスクの全戸配達等を実施しました。
これらの取組みの結果、当連結会計年度における連結経常収益は11,950,185百万円(前期比824,813百万円減)、連結経常利益は864,457百万円(前期比33,761百万円増)、連結経常利益に、特別損益や契約者配当準備金繰入額等を加減した親会社株主に帰属する当期純利益は、483,733百万円(前期比4,313百万円増)となりました。
経営成績の詳細な状況は、各事業セグメントごとに記載しております。各事業セグメントごとの経営成績の状況は、以下のとおりであります。
① 郵便・物流事業
郵便・物流事業につきましては、年賀状をはじめとしたスマートフォン等を使ったSNS連携サービスや手紙の楽しさを伝える活動等により、郵便の利用の維持を図るとともに、eコマース市場の拡大による荷物需要の増加に対応するため、オープン型宅配便ロッカー等を活用した「はこぽす」の利用拠点の拡大、ゆうパケットとゆうパックの中間サイズとなる「ゆうパケットプラス」の開始等、差出・受取利便性の高いサービスの提供による収益の拡大を図りました。
オペレーション面では、お客さまの利便性向上のほか、業務効率向上や不在再配達率の削減に向け、置き配の普及・拡大を進めるとともに、業務量に応じた担務別人件費・要員マネジメントの高度化等によるコストコントロールに取り組みました。
また、テレマティクスを活用した外務業務の適正化や効率化等に向けた試行や、音声認識AIによる再配達依頼自動受付の試行を実施したほか、ドローンや配送ロボットについても、将来的な実用化に向けての実証実験・試行を進める等、先端技術の活用に向けた取組みを進めました。
加えて、お客さまの利便性向上に向け、郵便窓口へのキャッシュレス決済の導入を開始しました。
あわせて、「コンプライアンスは経営上の最重要課題」との基本的考え方に基づき、郵便物等の放棄・隠匿を含む部内犯罪の根絶、料金不適正収納の根絶、顧客情報の保護等に取り組みました。
また、日本郵便(単体)における当事業年度の総取扱物数は、郵便物が163億5,005万通(前期比2.6%減)、ゆうメールが35億6,861万個(前期比2.2%減)、ゆうパックが9億7,446万個(前期比3.4%増)(うち、ゆうパケットが4億2,766万個(前期比19.7%増))となりました。
これらの取組みの結果、当連結会計年度、郵便・物流事業におきましては、荷物分野、特にゆうパケットの増収のほか、参議院選挙、プレミアム商品券等の消費税増税に関連した一時的な郵便物等の差出増の影響などもあり、経常収益は2,128,187百万円(前期比8,854百万円増)、経常利益は149,185百万円(前期比24,728百万円増)となりました。なお、日本郵便の当連結会計年度における郵便・物流事業の営業収益は2,125,313百万円(前期比10,362百万円増)、営業利益は147,505百万円(前期比26,116百万円増)となりました。
引受郵便物等の状況
(注) 1.第一種郵便物、第二種郵便物、第三種郵便物及び第四種郵便物の概要/特徴は、以下のとおりであります。
2.年賀は、年賀郵便物(年賀特別郵便(取扱期間12/15~12/28)及び12/29~1/7に差し出された年賀はがきで消印を省略したもの)の物数であります。
3.選挙は、公職選挙法に基づき、公職の候補者又は候補者届出政党から選挙運動のために差し出された通常はがきの物数であります。別掲で示しております。
4.特殊は、速達、書留、特定記録、本人限定受取等の特殊取扱(オプションサービス)を行った郵便物の物数の合計であります。交付記録郵便物用特定封筒(レターパックプラス)及び電子郵便(レタックス、Webゆうびん、e内容証明)を含んでおります。
5.国際通常郵便物は、2019年4月以降の集計方法を変更しております。なお、過去の通数との整合性を確保するため、過年度分については組替えを行っておりません。
6.ゆうパックは、一般貨物法制の規制を受けて行っている宅配便の愛称であります。配送中は、追跡システムにより管理をしております。
7.ゆうメールは、一般貨物法制の規制を受けて行っている3kgまでの荷物の愛称であります。主に冊子とした印刷物やCD・DVDなどをお届けするもので、ゆうパックより安値でポスト投函も可能な商品であります。
② 金融窓口事業
金融窓口事業につきましては、当連結会計年度、かんぽ生命保険から委託を受けた保険募集に関し、お客さまのご意向に沿わず、不利益を生じさせた事案が判明しました。お客さま対応を最優先としつつ、各種再発防止策の浸透を図ってきたところですが、前述のとおり、2019年12月に総務大臣及び金融庁より、業務停止命令及び業務改善命令を受け、2020年1月に業務改善計画を提出し、再発防止に向け取り組みました。
また、お客さまの将来のライフプランに寄り添い、その目的に合った商品及びサービスを幅広く提供できるよう、募集品質の向上、業務知識の強化、コミュニケーションスキルの向上等、お客さま本位の営業活動と総合的なコンサルティングサービスに寄与する各種研修を実施しました。
さらに、郵便局のショッピングセンター内等への新規出店や既存店舗の配置見直し等を通じ、郵便局ネットワークの最適化に取り組むとともに、ネットワークの価値を高めるため、地方公共団体事務の包括受託や郵便局窓口での地方銀行の手続事務受付等、地方公共団体や他企業と連携したサービス展開や地方創生の取組み拡大を行うなど、地域ニーズに応じた多様な郵便局の展開を進めました。
あわせて、「コンプライアンスは経営上の最重要課題」との基本的考え方に基づき、前述の保険募集の問題に取り組んだほか、顧客情報の保護、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策等に取り組みました。
また、不動産事業においては、JPタワー等による事務所、商業施設、住宅や保育施設等の賃貸事業等を行いました。不動産事業における主なプロジェクトの概要は以下のとおりです。
(注) 2020年3月31日時点
これらの取組みの結果、当連結会計年度、金融窓口事業におきましては、かんぽ生命保険の商品について、営業活動の提案を控えたこと及び行政処分に伴い業務を一部停止したことによる保険手数料の減収や、一部事業の絞込みに伴う物販事業の減収により、経常収益は1,299,930百万円(前期比63,827百万円減)、経常利益は45,086百万円(前期比14,753百万円減)となりました。なお、日本郵便の当連結会計年度における金融窓口事業の営業収益は1,298,774百万円(前期比63,805百万円減)、営業利益は44,598百万円(前期比15,020百万円減)となりました。
郵便局数
③ 国際物流事業
国際物流事業につきましては、日本郵便の子会社であるトール社の経営改善の取組みを継続しました。2020年1月には、トール社の社長が交替し、さらなる経営改善に着手しました。
また、引き続き、JPトールロジスティクス株式会社を活用し、コントラクトロジスティクスを中心とした BtoB 事業の拡大に取り組みました。
トール社は、当連結会計年度、従来からの豪州経済の低成長や米中の貿易摩擦、新型コロナウイルス感染症の拡大等、厳しい外部環境の影響下で、日本郵便の指導により、事業統合に係るガバナンス強化や経営改善策に取り組んでおります。しかしながら、2020年1月に発生した標的型サイバー攻撃を受け、一部サーバーがランサムウェアに感染したことから、拡大防止のため、一時的に全システムのシャットダウンを実施しました。これを受けシステムの回復と共に管理者権限の制限やログイン認証の強化などITシステムのセキュリティ強化に向けた施策を実施している間、業務の停滞等が生じました。これらの対応に要する費用増加に加え、財務・会計システムの更改による費用の増加、一部経理事務の外部委託時の態勢不備による売掛金の滞留により、現時点では期待するような経営改善に至っておらず、固定資産に係る減損損失を12,993百万円計上する等、業績不振が続く結果となりました。
このような状況の下、安定的な業務運営を確保し、経営改善を図るため、日本郵便からの債務保証も得て必要な資金を確保しております。
これらの取組みの結果、当連結会計年度、国際物流事業におきましては、営業収益低迷の一方で、人件費などの固定費負担が重く、為替影響もあり、経常収益は635,194百万円(前期比66,062百万円減)、経常損失は21,447百万円(前期は5,094百万円の経常利益)となりました。なお、日本郵便の当連結会計年度における国際物流事業については、営業収益は634,954百万円(前期比65,695百万円減)、営業損失は8,683百万円(前期は10,300百万円の営業利益)となりました。また、日本郵便は保有するトール社株式について65,295百万円の減損損失を計上しておりますが、当社連結決算においての影響はありません。
④ 銀行業
当連結会計年度、ゆうちょ銀行及び日本郵便において、ご高齢のお客さまへの投資信託の販売に関し、社内規則で定められた「勧誘前」と「申込受付前」の管理者承認のうち、「勧誘前」承認を怠っていたという事案が発生しました。そのため、日本郵便と連携し、今般の事案の対象となったお客さまにアフターフォローを実施し、保有していただいている投資商品に対するご認識等を確認いたしました。ご認識等に懸念ありと判断されたお客さまには、適合性の原則※の観点から求められる説明を行っていなかった事案がないか、外部弁護士のご意見をいただきながら、社内調査を実施し、この結果、該当する事案は認められませんでした。
※ 金融商品取引法等で定められた「お客さまの『知識』『経験』『財産の状況』『投資目的』に照らして、不適当と認められる勧誘を行って投資家の保護に欠け、又は欠けるおそれがあることのないように、業務を行わなければならない」とする原則です。
再発防止策として、研修等を通じた社内規則の趣旨の浸透強化、お客さま向け販売ツールの改善・充実、コンプライアンス・監査態勢の強化、営業目標の見直しに取り組みました。また、さらなるお客さま本位の金融サービスの品質向上を目的に、すべてのご高齢のお客さまに対しても、定期的なアフターフォローを実施しており、今後も継続してまいります。
加えて、ご高齢のお客さまに限らず、すべてのお客さまに対するサービス向上を継続的に実践していくため、ゆうちょ銀行の代表執行役社長を委員長とする「サービス向上委員会」を設置しました。同行においては、経営陣をはじめ、全社一体となって、お客さま本位の業務運営の浸透強化に取り組んでまいります。
銀行業につきましては、ゆうちょ銀行において、「お客さま本位の良質な金融サービスの提供」、「運用の高度化・多様化」、「地域への資金の循環等」、「経営管理態勢の強化」の諸施策に取り組みました。
「お客さま本位の良質な金融サービスの提供」については、資産運用コンサルタントの増員や指導・研修による人材育成に注力するとともに、2019年5月には、ゆうちょ銀行及び当社と、株式会社大和証券グループ本社及び大和証券株式会社の間で、お客さま一人ひとりのライフスタイル・ニーズに応じた、中長期的な資産形成のサポートに向け、資産形成分野における新たな協業の検討を進めることについて合意し、検討しました。
また、決済サービスの充実に向け、スマートフォン決済サービス「ゆうちょPay」、ゆうちょ銀行の総合口座をご利用のお客さま※がスマートフォンを使っていつでも現在高や入出金明細を確認できる「ゆうちょ通帳アプリ」、法人のお客さま向けのインターネットバンキングサービス「ゆうちょBizダイレクト」等の取扱いを開始しました。
「運用の高度化・多様化」については、国内の低金利環境が継続し、世界経済の先行き不透明感が高まる中、安定的な収益確保のため、適切なリスク管理のもと、国際分散投資を進めました。海外クレジット資産をクレジット・クオリティ(投資先の信用力)に配意しつつ積み上げたほか、戦略的な投資領域と位置づけているプライベートエクイティファンド(成長が見込まれる未上場企業等へ投資するファンド)、不動産ファンド等への投資を、市場環境の変化を踏まえて選別的に実行しました。
また、運用の高度化・多様化を推進していく中、財務健全性の観点から必要十分な自己資本比率を確保しており、安定的な収益と財務健全性の両立のため、リスクアペタイト・フレームワークを活用し、ゆうちょ銀行が取得する適切なリスクの種類や水準を明確化した上で、投資方針を決定しました。
「地域への資金の循環等」については、お客さまからお預かりした大切な資金を地域に循環させていくために、引き続き、地域金融機関との連携を通じて地域活性化ファンドへの参加を推し進めており、2019年度も事業承継や起業・創業の支援等を目的として、新たに10件(累計28件)の地域活性化ファンドに参加しました。
「経営管理態勢の強化」については、「お客さま本位の業務運営に関する基本方針」を制定し、当該方針の取組状況を定期的に確認するため、成果指標を設定し、その結果を公表するなど、「お客さま本位の良質な金融サービス」の提供に向けて取り組みました。
リスクガバナンスの強化としては、リスクアペタイト・フレームワークの対象をALM(資産・負債の総合管理)・運用業務からゆうちょ銀行業務全体に拡大し、経営管理態勢の高度化を図りました。複雑・巧妙化するサイバー攻撃への対応としては、不正なアクセスの監視や被害防止に向けた態勢整備を進め、対応の強化を図りました。また、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策への国際的・社会的要請の高まりを踏まえ、行内の対応態勢を整備するとともに、商品・サービスを見直すなど、対応の強化を図りました。
さらに、貯金事務センターにおいて業務のRPA化(ソフトウェアロボットによる業務プロセスの自動化)推進等のデジタル技術の活用による業務効率化や、トランザクション業務(窓口等における定型業務)のスリム化にあわせて、経営資源をコンサルティング業務等に再配分し、人的資源の有効活用等を進めることで、お客さまサービスの充実に努めました。
加えて、ゆうちょ銀行と外部事業者が連携し、お客さまに安全かつ利便性の高い高度な金融サービスをご提供するため、ゆうちょ銀行システムとゆうちょ銀行外のシステムとの連携強化に必要なシステム基盤(外部連携基盤:API)の整備・拡大や、セキュリティ強化の観点から「ゆうちょ認証アプリ」のサービス開始によるゆうちょダイレクトへの生体認証の導入等に取り組みました。
※ 振替口座、キャッシュカードを利用していない総合口座及び法人口座等ではご利用いただけません。
新型コロナウイルス感染症が拡大する状況の中、ゆうちょ銀行では、「危機管理委員会」を立ち上げ、当社グループ各社から構成される「本社合同対策本部」等と連携し、感染拡大防止策を導入するとともに、現金の入出金や決済業務など、社会機能維持のためお客さまが必要とするサービスを継続できるよう、社内の業務態勢を整えました。
具体的には、郵便局・ゆうちょ銀行店舗・ATMは、原則としてすべて営業を継続する一方、お客さまと社員の安全確保の観点から、社員に時差出勤、交替勤務、在宅勤務等を導入したほか、窓口の一部縮小や一部店舗の営業時間短縮、訪問や窓口での積極的な営業活動の停止、窓口カウンターへの飛沫感染防止のビニールシートの設置、インターネットバンキングサービス「ゆうちょダイレクト」ご利用検討のお願い、年金支給日等における混雑緩和のお願い等の感染拡大防止策を実施しました。また、お客さまの日々の生活に必要な現金の入出金や決済業務、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を受けた特別定額給付金の円滑な入金などの重要業務については、柔軟な人員配置や複数拠点によるバックアップを通じて、業務継続体制を確保しています。
なお、社員に感染が確認された場合は、所管保健所と連携のうえ、必要な措置を適切に講じてまいります。
今後も引き続き、感染拡大防止策や重要業務の継続態勢確保に努めてまいります。
これらの取組みの結果、当連結会計年度、銀行業におきましては、年度末時点のゆうちょ銀行の貯金残高は183,004,733百万円(前期末比2,005,599百万円増)となりました。低金利環境の継続や、新型コロナウイルス感染症の拡大による市場環境の悪化など、非常に厳しい経営環境下、経常収益は1,799,538百万円(前期比45,872百万円減)、経常利益は379,131百万円(前期比5,155百万円増)となりました。
なお、ゆうちょ銀行における損益の概要などの詳細な状況については、下記「(参考1) 銀行業を行う当社の子会社であるゆうちょ銀行(単体)の状況」「(参考2) 自己資本比率の状況」「(参考3) 資産の査定」に記載のとおりであります。
(参考1) 銀行業を行う当社の子会社であるゆうちょ銀行(単体)の状況
(a) 損益の概要
低金利環境の継続や、新型コロナウイルス感染症の拡大による市場環境の悪化など、非常に厳しい経営環境下、当事業年度の業務粗利益は、前事業年度比128億円減少の1兆3,142億円となりました。このうち、資金利益は、国債利息の減少を主因に、前事業年度比393億円の減少となりました。役務取引等利益は、前事業年度比221億円の増加となりました。その他業務利益は、前事業年度比43億円の増加となりました。
経費は、前事業年度比172億円減少の1兆202億円となりました。
業務純益は、前事業年度比44億円増加の2,939億円となりました。
経常利益は、前事業年度比47億円増加の3,790億円となりました。
この結果、当期純利益は2,730億円、前事業年度比68億円の増益となりました。
(注) 1.業務純益=業務粗利益-経費(除く臨時処理分)-一般貸倒引当金繰入額
2.臨時損益とは、損益計算書中「その他経常収益・費用」から一般貸倒引当金繰入額を除き、金銭の信託運用見合費用及び退職給付費用のうち臨時費用処理分等を加えたものであります。
3.「金銭の信託運用見合費用」とは、金銭の信託取得に係る資金調達費用であり、金銭の信託運用損益が臨時損益に計上されているため、業務費用から控除しているものであります。
4.国債等債券損益=国債等債券売却益+国債等債券償還益-国債等債券売却損-国債等債券償還損-国債等債券償却
5.株式等関係損益=株式等売却益-株式等売却損-株式等償却
6.金額が損失又は費用には△を付しております。
(参考) 与信関係費用
(注) 1.金融再生法開示債権に係る費用を計上しております。
2.金額が損失又は費用には△を付しております。
(b) 国内・国際別の資金利益等
ゆうちょ銀行は、海外店や海外に本店を有する子会社(以下「海外子会社」といいます。)を有しておりませんが、円建の取引を「国内業務部門」、外貨建取引を「国際業務部門」に帰属させ(ただし、円建の対非居住者取引は「国際業務部門」に含む。)、各々の収益・費用を計上した結果、国内業務部門・国際業務部門別の資金利益等は次のとおりとなりました。
当事業年度は、国内業務部門においては、資金利益は5,497億円、役務取引等利益は1,285億円、その他業務利益は31億円となりました。
国際業務部門においては、資金利益は4,270億円、役務取引等利益は3億円、その他業務利益は2,053億円となりました。
この結果、国内業務部門、国際業務部門の相殺消去後の合計は、資金利益は9,768億円、役務取引等利益は1,288億円、その他業務利益は2,084億円となりました。
イ.国内業務部門
ロ.国際業務部門
ハ.合計
(注) 1.資金調達費用は、金銭の信託運用見合費用(前事業年度5,298百万円、当事業年度5,441百万円)を控除しております。
2.「国内業務部門」「国際業務部門」間の内部取引による相殺消去額等は下表のとおりであります。
(c) 国内・国際別資金運用/調達の状況
当事業年度の資金運用勘定の平均残高は203兆5,900億円、利回りは0.64%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は196兆2,173億円、利回りは0.17%となりました。
国内・国際別に見ますと、国内業務部門の資金運用勘定の平均残高は198兆263億円、利回りは0.31%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は190兆6,957億円、利回りは0.04%となりました。
国際業務部門の資金運用勘定の平均残高は63兆3,669億円、利回りは1.24%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は63兆3,247億円、利回りは0.57%となりました。
イ.国内業務部門
(注) 1.「国内業務部門」は円建取引であります。
2.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度2,730,010百万円、当事業年度2,483,454百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度2,730,010百万円、当事業年度2,483,454百万円)及び利息(前事業年度3,933百万円、当事業年度1,744百万円)を控除しております。
3.預け金等は、譲渡性預け金、日銀預け金、コールローン、買入金銭債権であります。「ロ.国際業務部門」「ハ.合計」においても同様であります。
4.貯金は銀行法施行規則の負債科目「預金」に相当するものであります。「ロ.国際業務部門」「ハ.合計」においても同様であります。
ロ.国際業務部門
(注) 1.「国際業務部門」は外貨建取引であります。ただし、円建対非居住者取引については、「国際業務部門」に含めております。
2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。
3.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度247,597百万円、当事業年度646,071百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度247,597百万円、当事業年度646,071百万円)及び利息(前事業年度1,364百万円、当事業年度3,696百万円)を控除しております。
ハ.合計
(注) 1.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度2,977,608百万円、当事業年度3,129,526百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度2,977,608百万円、当事業年度3,129,526百万円)及び利息(前事業年度5,298百万円、当事業年度5,441百万円)を控除しております。
2.「国内業務部門」「国際業務部門」間の内部取引による相殺消去額は下表のとおりであります。
(d) 役務取引等利益の状況
当事業年度の役務取引等利益は、為替・決済関連手数料の増加を主因に、前事業年度比221億円増加の1,288億円となりました。
(参考) 投資信託の取扱状況(約定ベース)
(e) 預金残高の状況
当事業年度末の貯金残高は、安定的に推移し、前事業年度末比2兆55億円増加の183兆47億円となりました。
○ 預金の種類別残高(末残・構成比)
○ 預金の種類別残高(平残・構成比)
(注) 1.「通常貯金等」=通常貯金+特別貯金(通常郵便貯金相当)
2.貯金は銀行法施行規則の負債科目「預金」に相当するものであります。「振替貯金」は「当座預金」、「通常貯金」は「普通預金」、「貯蓄貯金」は「貯蓄預金」、「定期貯金」は「定期預金」に相当するものであります。「定額貯金」は「その他の預金」に相当するものでありますが、「定期性預金」に含めております。
3.特別貯金(通常郵便貯金相当)は郵政管理・支援機構からの預り金のうち、郵政管理・支援機構が公社から承継した定期郵便貯金、定額郵便貯金、積立郵便貯金、住宅積立郵便貯金、教育積立郵便貯金に相当する郵便貯金で満期となったものなどであります。
4.上記の通常貯金、定期性預金は、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3) 事業に係る主な法律関連事項 ③ 郵政民営化法 (f) ゆうちょ銀行における預入限度額」に記載の郵政民営化法における預入限度額規制上の区分とは異なります。
(f) 資産運用の状況(末残・構成比)
当事業年度末の運用資産のうち、国債は53.6兆円、その他の証券は65.6兆円となりました。
(注) 「預け金等」は譲渡性預け金、日銀預け金、買入金銭債権であります。
(g) 評価損益の状況(末残)
当事業年度末の評価損益(その他目的)は、ヘッジ考慮後で△1,020億円(税効果前)となりました。
(注) 「有価証券」には、有価証券のほか、現金預け金中の譲渡性預け金、買入金銭債権を含んでおります。
(h) 業種別貸出金残高の状況(末残・構成比)
(注) 1.「国内」とは本邦居住者に対する貸出、「国際」とは非居住者に対する貸出であります。
2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。
3.「金融・保険業」のうち郵政管理・支援機構向け貸出金は、前事業年度末640,676百万円、当事業年度末439,734百万円であります。
(参考) リスク管理債権(末残)
(参考2) 自己資本比率の状況
ゆうちょ銀行の自己資本比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しております。
なお、ゆうちょ銀行は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
連結自己資本比率(国内基準)
(注) 連結総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
単体自己資本比率(国内基準)
(注) 単体総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
(参考3) 資産の査定
資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号)第6条に基づき、ゆうちょ銀行の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。
(a) 破産更生債権及びこれらに準ずる債権
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
(b) 危険債権
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
(c) 要管理債権
要管理債権とは、3カ月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
(d) 正常債権
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記(a)から(c)までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
資産の査定の額
⑤ 生命保険業
生命保険業につきましては、かんぽ生命保険において、郵便局における募集実態の把握とその対策が十分ではなく、かんぽ生命保険の保険契約の募集品質に係る問題によって一部のお客さまに不利益が生じる事態となりました。かんぽ生命保険は、お客さまの不利益等を解消するためお客さま対応を最優先としつつ、各種再発防止策に取り組んでおりましたが、2019年12月に金融庁より、業務停止命令及び業務改善命令を受け、2020年1月に業務改善計画を金融庁に提出しました。かんぽ生命保険は、当該業務改善計画の実行を経営の最重要課題として位置づけ、お客さま本位の業務運営の徹底に向けて全社をあげて取り組んでおります。
上記のかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題に係る対応のほか、「営業におけるお客さまのニーズに対応したアフターサービスのご提供」、「新商品の販売開始」、「ICT活用によるお客さまサービス向上・事務の効率化」、「資産運用の多様化」を中心に取り組みました。
「営業におけるお客さまのニーズに対応したアフターサービスのご提供」については、ご加入いただいているお客さまにより良いサービスをご提供するため、「かんぽつながる安心活動」等を通じて、保険契約内容のご確認、ご家族登録・指定代理請求制度のご案内、保険金等の振込先口座のご指定による保険金等の確実なお支払いや各種サービスのお知らせなどに取り組みました。
「新商品の販売開始」については、2019年4月より、健康上の理由からご加入いただけなかったお客さまにも、広く保障をご提供できるよう、引受基準緩和型商品を、また経済負担の大きい先進医療にかかる費用に備えたいというお客さまニーズにお応えできるよう、無配当先進医療特約を販売開始しました。
2020年3月には、新型コロナウイルス感染症の影響拡大に伴う特別取扱いとして、普通貸付利率の減免措置等を実施し、同年4月には、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた場合についても、死亡保険金に加えて、「保険金の倍額支払」の対象として、保険金をお支払いすることとしました。
「ICT活用によるお客さまサービス向上・事務の効率化」については、2019年4月に、ご契約者さまの利便性向上のため、「いつでも、どこでも、分かりやすい」各種手続きを行っていただけるよう、ご契約者さま向けWebサービス(マイページ)のご提供を開始しました。
さらに、請求書類に必要な情報を予め印字することで、ご記入にかかるお客さまの負担を軽減する「保険手続きサポートシステム」に、新たに死亡保険金、入院保険金等の支払請求手続きを追加しました。さらに、同システムに契約情報や商品概要等を確認できる機能を追加することで、お客さまからの照会等に対し、郵便局員の迅速・正確なお答えを可能にするなど、お客さまサービスの向上を実現しました。
2019年10月には「自動査定システム」を導入し、一部の傷病の機械的な審査を可能とすることで、既存事務の効率化を進めました。
「資産運用の多様化」については、継続的な低金利環境における安定的な運用収益の確保を目指し、ALMを基本としつつ、リスクバッファーの範囲で収益追求資産へ市場環境を踏まえた選別的投資を継続しております。資産運用の多様化の推進状況としては、海外クレジットの運用拡大の一環として、米国社債の自家運用に引き続き取り組むとともに、株式の自家運用やオルタナティブ投資等についても継続しております。これら資産運用の取組みについては、ERMの枠組みのもとで財務の健全性の確保や、リスク対比リターンの向上を図っております。
これらの取組みの結果、当連結会計年度、生命保険業におきましては、保有契約の減少及び2019年7月中旬以降の積極的な営業活動の自粛及び2020年1月以降の業務停止による新契約の減少による保険料等収入の減少等により、経常収益は7,211,405百万円(前期比705,250百万円減)となりました。また、保有契約の減少及び新型コロナウイルス感染症の拡大による市場環境の悪化に伴うキャピタル損失の増加があった一方で、新契約の減少に伴う事業費等の減少や資産運用における順ざやが増加したこと等により、経常利益は286,601百万円(前期比21,731百万円増)となりました。なお、ご契約調査等によって判明したお客さまのご意向に沿わず不利益が発生した可能性のある契約について、これまでの実績に基づいて、その不利益を解消するための将来の契約措置により生じる保険金等の支払見込額等(保険金等支払引当金)を経常費用に29,722百万円計上しております。
かんぽ生命保険における保険引受及び資産運用の状況などの詳細な状況については、下記「(参考)生命保険業を行う当社の子会社であるかんぽ生命保険の状況」に記載のとおりであります。
(参考)生命保険業を行う当社の子会社であるかんぽ生命保険の状況
(下表(a)イ.~ニ.の個人保険及び個人年金保険には、かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約を含みません。)
(a) 保険引受及び資産運用の状況
イ.保有契約高明細表
(注) 個人年金保険の金額は、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金額を合計したものであります。
ロ.新契約高明細表
(注) 個人年金保険の金額は、年金支払開始時における年金原資であります。
ハ.保有契約年換算保険料明細表
(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額)。
2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
ニ.新契約年換算保険料明細表
(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額)。
2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
(参考)かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約の状況
(a) 保有契約高
(注) 計数は、郵政管理・支援機構における公表基準によるものであります。
(b) 保有契約年換算保険料
(注) かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約について、上記ハ.に記載しております個人保険及び個人年金保険の保有契約年換算保険料と同様の計算方法により、かんぽ生命保険が算出した金額であります。
ホ.一般勘定資産の構成
(注) 1.機構貸付とは、郵政管理・支援機構(簡易生命保険勘定)への貸付であります。
2.不動産については、土地・建物・建設仮勘定を合計した金額を計上しております。
ヘ.一般勘定資産の資産別運用利回り
(注) 1.利回り計算式の分母は帳簿価額ベースの日々平均残高、分子は経常損益中、資産運用収益-資産運用費用として算出した利回りであります。
2.一般勘定計には、有価証券信託に係る資産を含めております。
3.海外投融資とは、外貨建資産と円建資産の合計であります。
(b) 基礎利益
基礎利益は、保険料等収入、保険金等支払金、事業費等の保険関係の収支と、利息及び配当金等収入を中心とした運用関係の収支からなる、生命保険会社の基礎的な期間損益の状況を表す指標であります。
かんぽ生命保険の当事業年度における基礎利益は、4,006億円となりました。
(経常利益等の明細(基礎利益))
(注) 1.金銭の信託に係るインカム・ゲインに相当する額(前事業年度:64,865百万円、当事業年度:78,097百万円)を「その他キャピタル費用」に計上し、基礎利益に含めております。
2.「その他臨時費用」には、保険業法施行規則第69条第5項の規定により責任準備金を追加して積み立てた額(前事業年度:179,882百万円、当事業年度:176,734百万円)を記載しております。
(c) かんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率
生命保険会社は将来の保険金等の支払いに備えて責任準備金を積み立てており、通常予測できる範囲のリスクについては責任準備金の範囲内で対応できます。
ソルベンシー・マージン比率とは、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つであります。
この比率が200%を下回った場合は、当局によって早期是正措置がとられます。逆にこの比率が200%以上であれば、健全性の一つの基準を満たしていることになります。
当連結会計年度末におけるかんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率は1,070.9%と高い健全性を維持しております。
(注) 保険業法施行規則第86条の2、第88条及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
(d) かんぽ生命保険のEV
イ.EVの概要
ⅰ EVについて
エンベディッド・バリュー(以下「EV」といいます。)は対象事業に割り当てられた、資産及び負債から生じる株主への分配可能な利益の価値の見積りであります。ただし、将来の新契約から生じる価値は含みません。この価値は、修正純資産及び保有契約価値で構成されるものであります。
修正純資産は株主に帰属すると考えられる純資産(時価)であり、必要資本とフリー・サープラスで構成されるものであります。
保有契約価値は、保有契約及び保有契約に係る資産から将来発生すると見込まれる株主への分配可能な利益の評価日時点の現在価値であり、必要資本を維持するための費用等を控除したものであります。
生命保険契約は、一般に販売時に多くのコストが発生するため、一時的には損失が発生するものの、契約が継続することで、将来にわたり生み出される利益によりそのコストを回収することが期待される収支構造となっております。現行の法定会計では、このような収支構造をそのまま各年度の損益として把握しておりますが、EVは、全保険期間を通じた損益を現在価値で評価することとなるため、現行の法定会計による財務情報では不足する情報を補うことができる指標の一つと考えております。
ⅱ EEVについて
EVの開示に関する一貫性と透明性の改善を図る目的で、2004年5月にヨーロッパの主要保険会社のCFO(最高財務責任者)の集まりである、CFOフォーラムが、ヨーロピアン・エンベディッド・バリュー(以下「EEV」といいます。)原則及び指針(ガイダンス)を制定いたしました。
2016年5月には、CFOフォーラムによってEEV原則の改正が公表され、EVに2016年1月から施行された欧州ソルベンシーⅡ等の計算で用いた計算手法及び前提の使用が許容されるようになりました。
ⅲ EEVの計算手法
今回のEEVの計算には、市場整合的手法を用いております。この手法は、資産又は負債から発生するキャッシュ・フローを市場で取引されている金融商品と整合的に評価するものであります。
ロ.簡易生命保険契約について
かんぽ生命保険は、郵政民営化法に基づき、2007年10月1日に発足しました。また、2007年9月末までに契約された簡易生命保険契約は、郵政管理・支援機構に承継されるとともに、郵政管理・支援機構が負う保険責任のすべてについて、かんぽ生命保険が受再しております。
かんぽ生命保険は、郵政管理・支援機構との再保険契約において、簡易生命保険契約を他の保険契約と区分して管理すること(簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金も区分して管理すること)、簡易生命保険契約から生じた利益(危険準備金及び価格変動準備金の戻入による利益も含んでおります。)も区分して管理すること、及び郵政管理・支援機構が簡易生命保険契約に対して既に約款で約束している確定配当所要額と再保険損益(確定配当所要額及び法人税等を除いたこの区分における利益)の8割の合計額を、郵政管理・支援機構へ再保険配当として支払うことを定めております。EEVの計算においては、この郵政管理・支援機構への再保険配当を差し引いた後の利益を反映しております。
このように郵政管理・支援機構への再保険配当の原資に、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金の戻入による利益が含まれることから、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金は修正純資産には含めておらず、将来において戻入する前提で保有契約価値に含めて計算しております。
ハ.EEVの計算結果
かんぽ生命保険のEEVは以下のとおりであります。
ⅰ 修正純資産
修正純資産は、資産の市場価値のうち、契約者に対する負債及びその他の負債の価値を超過する部分であり、株主に帰属すると考えられる価値であります。当期純利益による増加があったものの、自己株式の取得や株主配当金の支払いを主な理由として、当事業年度末における修正純資産は前事業年度末から減少しております。修正純資産の内訳は以下のとおりであります。
(注) 1.計算対象に子会社を含めているため、かんぽ生命保険の連結貸借対照表の純資産の部合計を計上しております。ただし、その他の包括利益累計額合計を除いております。また、自己株式に計上している株式給付信託が保有するかんぽ生命保険の株式の帳簿価額を加えております。
2.簡易生命保険契約に係る部分を除いております。
3.保険契約に係らない有価証券、貸付金及び不動産の含み損益、一般貸倒引当金、退職給付の未積立債務(未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異)並びに劣後債の含み損益を計上しております。
当事業年度末の修正純資産を計算する際に除いた保険契約に係る部分は以下のとおりであります。
(注) 1.かんぽ生命保険の連結貸借対照表の純資産の部合計を計上しております。ただし、その他の包括利益累計額合計を除いております。また、自己株式に計上している株式給付信託が保有するかんぽ生命保険の株式の帳簿価額を加えております。
2.保険契約に係る部分(②)は、簡易生命保険契約に係る部分を計上しております。「ロ.簡易生命保険契約について」をご参照ください。
3.有価証券、貸付金及び不動産の含み損益、一般貸倒引当金、退職給付の未積立債務(未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異)並びに劣後債の含み損益を計上しております。
ⅱ 保有契約価値
保有契約価値は、保有契約の評価日時点における価値を表したもので、保有契約及び保有契約に係る資産から将来発生すると見込まれる株主への分配可能な利益を現在価値に割り引いております。「ニ.前事業年度末EEVからの変動要因」に記載のとおり、前提条件(経済前提)と実績の差異や前提条件(非経済前提)の変更を主な理由として、当事業年度末における保有契約価値は前事業年度末から減少しております。保有契約価値の内訳は以下のとおりであります。
将来利益の計算において保険契約に係る資産は簿価評価しております。また、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金が将来において戻入する前提で、その戻入による利益を含めて計算しております。「ロ.簡易生命保険契約について」をご参照ください。
ⅲ 新契約価値
新契約価値は、当期間に獲得した新契約(医療特約の切替加入契約については正味増加分のみ)の契約獲得時点における価値を表したものであります。2019年7月中旬からの積極的な営業活動の自粛及び2020年1月以降の業務停止等により新契約が減少したことや金利が低下したことを主な理由として、当事業年度における新契約価値は前事業年度から減少しております。新契約価値の内訳は以下のとおりであります。
なお、新契約マージン(新契約価値の保険料収入現価に対する比率)は以下のとおりであります。
(注) 将来の収入保険料を、新契約価値の計算に用いたリスク・フリー・レートで割り引いております。
ニ.前事業年度末EEVからの変動要因
ⅰ 前事業年度末EEVの調整
かんぽ生命保険は当事業年度において645億円の株主配当金を支払うとともに、999億円の自己株式の取得を行っており、修正純資産がその分減少しております。
ⅱ 当事業年度新契約価値
新契約価値は、当事業年度に新契約を獲得したことによる契約獲得時点における価値を表したものであり、契約獲得に係る費用を控除した後の金額が反映されております。
ⅲ 期待収益(リスク・フリー・レート分)
保有契約価値の計算にあたっては、将来の期待収益をリスク・フリー・レートで割り引いておりますので、時間の経過とともに割引の影響が解放されます。これには、オプションと保証の時間価値、必要資本を維持するための費用及びヘッジ不能リスクに係る費用のうち当事業年度分の解放を含んでおります。修正純資産からは、対応する資産からリスク・フリー・レート(△0.178%)分に相当する収益が発生しております。
ⅳ 期待収益(超過収益分)
EEVの計算にあたっては、将来の期待収益としてリスク・フリー・レートを用いておりますが、実際の会社はリスク・フリー・レートを超過する利回りを期待しております。この項目は、その期待される超過収益を表しております。
ⅴ 保有契約価値からの移管
当事業年度に実現が期待されていた利益が、保有契約価値から修正純資産に移管されます。これには、前事業年度末の保有契約から期待される当事業年度の利益と、当事業年度に獲得した新契約からの、契約獲得に係る費用を含めた当事業年度の損益が含まれております。
これらは保有契約価値から修正純資産への振替えであり、EEVの金額には影響しません。
ⅵ 前提条件(非経済前提)と実績の差異
前事業年度末の保有契約価値の計算に用いた前提条件(非経済前提)と、当事業年度の実績の差額であります。
ⅶ 前提条件(非経済前提)の変更
前提条件(非経済前提)を更新したことにより、翌事業年度以降の収支が変化することによる影響であります。このうち、将来の事業費前提の変更により3,517億円減少し、失効解約率の前提変更により511億円増加しております。
事業費前提については直近の実績を織り込むとともに、会社全体(簡易生命保険契約を含む)の保有契約量が減少基調にあることから、事業費率の上昇を見込んで設定しております。将来の保有契約量の前提を、前事業年度末のEEVでは過去の実績から設定しておりましたが、当事業年度末のEEVでは募集品質問題(注1)に係る評価日時点での状況を踏まえて設定したため、将来の保有契約量の見込みが減少することとなり、前提となる事業費率が上昇しております。
また、前事業年度末のEEVでは乗換による影響を含めて失効解約率を設定しておりましたが、当事業年度末のEEVでは、業務改善計画(注2)において、契約乗換への対策を行うこと、条件付解約等制度や契約転換制度を導入することが決定しているため、失効解約率設定時に乗換による影響を除外し、前提となる失効解約率が低下しております。なお、今後、条件付解約等制度や契約転換制度を活用した解約の影響も、乗換同様に失効解約率設定時に除外することを予定しておりますが、同時に新契約価値については正味増加分のみを評価することを予定しております。従って、失効解約率前提の設定において乗換による影響を除外することによる価値の変動は当事業年度限りとなります。
(注) 1.上記「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しているかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題とその取組み等。
2.上記「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 「業務改善計画の進捗状況」」に記載している適正な業務運営を確保し、保険契約者の保護を図るための改善計画。
ⅷ 前提条件(経済前提)と実績の差異
市場金利やインプライド・ボラティリティ等の経済前提が、前事業年度末EEV計算に用いたものと異なることによる影響であります。当該影響は、当事業年度の実績及び翌事業年度以降の見積りの変更を含んでおります。
主に為替変動リスクのヘッジに伴う金融派生商品費用の発生により、修正純資産は101億円減少しております。
主に国内金利の変動や株価の下落により、保有契約価値は3,206億円減少しております。
ホ.感応度(センシティビティ)
前提条件を変更した場合のEEVの感応度は以下のとおりであります。感応度は、一度に1つの前提のみを変化させることとしており、同時に2つの前提を変化させた場合の感応度は、それぞれの感応度の合計とはならないことにご注意ください。
感応度1から4について、修正純資産の増減額は以下のとおりであります。また、感応度5から11については、保有契約価値のみの増減額となります。
(注) 参考値として、保有契約に係る資産の含み損益も加えた増減額(税引後に換算)を示しております。なお、EEVの計算にあたって、保険契約に係る部分の資産の含み損益については、修正純資産ではなく、保有契約価値の計算に含めて評価しております。
新契約価値の感応度
ⅰ 感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp上昇した場合の影響を表しております。金利の変動により時価が変動する債券・貸付金等を再評価するとともに、将来の運用利回りや割引率を変動させて保有契約価値を再計算しております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅱ 感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp低下した場合の影響を表しております。なお、リスク・フリー・レートが0%を下回る場合は0%としております。ただし、50bp低下前のリスク・ フリー・レートが0%を下回る場合はその値をそのまま使用しております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅲ 感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし)
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp低下した場合の影響を表しております。なお、感応度2と異なり、リスク・フリー・レートの正負を判定せず、下限を設けずに50bp低下させております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅳ 感応度4:株式・不動産価値10%下落
株式及び不動産の評価日時点の価格が10%下落した場合の影響を表しております。
ⅴ 感応度5:事業費率(維持費)10%減少
事業費率(契約維持に係るもの)が10%減少した場合の影響を表しております。
ⅵ 感応度6:解約失効率10%減少
解約失効率が10%減少(基本となる解約失効率に90%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅶ 感応度7:保険事故発生率(死亡保険)5%低下
死亡保険について、保険事故発生率(死亡率・罹患率)が5%低下(基本となる保険事故発生率に95%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅷ 感応度8:保険事故発生率(年金保険)5%低下
年金保険について、保険事故発生率が5%低下(基本となる保険事故発生率に95%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅸ 感応度9:必要資本を法定最低水準に変更
必要資本を法定最低水準(ソルベンシー・マージン比率200%水準)に変更した場合の影響を表しております。
ⅹ 感応度10:株式・不動産のインプライド・ボラティリティ25%上昇
オプションと保証の時間価値の計算に使用する、株式オプションのインプライド・ボラティリティが25%上昇した場合の影響を表しております。
ⅺ 感応度11:金利スワップションのインプライド・ボラティリティ25%上昇
オプションと保証の時間価値の計算に使用する、金利スワップションのインプライド・ボラティリティが25%上昇した場合の影響を表しております。
ヘ.注意事項
EEVの計算においては、リスクと不確実性を伴う将来の見通しを含んだ多くの前提条件を使用し、それらの多くは個別会社の管理能力を超えた領域に属するものであります。また、将来の実績がEEVの計算に使用した前提条件と大きく異なる場合もあり得ます。
また、EEVの計算において新型コロナウイルス感染症の潜在的な影響を直接的には考慮しておりません。
これらの理由により、本EEV開示は、EEV計算に用いられた将来の税引後利益が達成されることを表明するものではなく、使用にあたっては、十分な注意を払っていただく必要があります。
ト.その他の特記事項
かんぽ生命保険では、保険数理に関する専門知識を有する第三者機関(アクチュアリー・ファーム)に、EEVについて検証を依頼し、意見書を受領しております。
⑥ その他
上記各報告セグメントにおける事業のほか、病院事業については、地域医療機関との連携や救急患者の受入の強化等による増収対策、業務の効率化等による経費削減、また、経営改善が見込めない逓信病院(3カ所※)を譲渡する等、個々の病院の状況を踏まえた経営改善を進めているところであり、営業収益14,047百万円(前期比2,709百万円減)、営業損失3,364百万円(前期は5,361百万円の営業損失)となりました。今後も引き続き上記増収対策や経費削減等、個々の病院の状況を踏まえた経営改善に取り組みます。
また、宿泊事業については、営業推進態勢の強化やサービス水準向上による魅力ある宿づくりを継続的に進めるとともに、費用管理による経費削減等の経営改善に取り組んでいるところですが、2018年10月に「ホテル メルパルク」の賃貸借、管理業務を当社の子会社である日本郵政不動産株式会社へ移管したことや台風等の自然災害、一部施設の営業終了、新型コロナウイルス感染症等の影響もあり、営業収益19,005百万円(前期比4,935百万円減)、営業損失6,379百万円(前期は3,757百万円の営業損失)となりました。今後、法人営業活動の充実、外部のWebサイトの活用強化等による増収施策、食材等原価管理の徹底、業務フローの効率化等の生産性向上施策を着実に実施することにより、経営改善に取り組みます。
不動産事業については、当社の子会社である日本郵政不動産株式会社において「ホテル メルパルク」の賃貸・管理事業を行うとともに、グループ外不動産である(仮称)赤坂二丁目計画等やグループ保有不動産である蔵前不動産開発(オフィス、高齢者施設、賃貸住宅、物流施設他)、五反田不動産開発(オフィス、ホテル、ホール他)等に当連結会計年度に9,785百万円の投資を行いました。今般の新型コロナウイルス感染症の拡大の影響によるテナント賃料の減額、開発中の案件における竣工時期の遅延等も想定されますので、今後のマーケットへの影響、動向を引き続き注視し、必要な対策を適時適切に実施しつつ、不動産事業を慎重に進めてまいります。
投資事業については、日本郵政グループの新規事業の種を探すため、ネットワーク、ブランド力等を活用して成長が期待できる企業への出資(当連結会計年度に21件、約8,797百万円)を行い、出資先企業と当社グループとの連携を進めました。今後も、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大の影響など、投資先の事業環境の変化による投資先の価値や将来の成長性を見極めながら、出資等に取り組みます。
※ 2019年4月 富山逓信病院、名古屋逓信病院、福岡逓信病院
(3) キャッシュ・フローの状況及び分析・検討
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は当期首から1,443,568百万円増加し、53,603,857百万円となりました。
① 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動においては、銀行業における資金の運用や調達、生命保険業における保険料の収入や保険金の支払等の結果、305,850百万円の収入(前期比3,915,650百万円の収入増)となりました。
主な要因として、コールマネー等の増加3,286,253百万円、責任準備金の減少2,767,383百万円があげられます。
② 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動においては、銀行業及び生命保険業における有価証券の売却、償還による収入等及び有価証券の取得による支出等の結果、1,040,484百万円の収入(前期比4,145,558百万円の収入減)となりました。
主な要因として、有価証券の償還による収入22,959,251百万円や有価証券の売却による収入3,605,937百万円、有価証券の取得による支出25,138,744百万円があげられます。
③ 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動においては、子会社株式の一部売却等の結果、99,003百万円の収入(前期比210,260百万円の収入増)となりました。
主な要因として、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の売却による収入322,539百万円、配当金の支払額202,271百万円があげられます。
④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
中期経営計画において、お客さま満足向上、営業力向上、業務効率化など経営基盤強化に資するインフラ整備を推進するため、郵便・物流事業や金融窓口事業における局舎等工事、金融窓口事業における不動産開発、国際物流事業における貨物船の建造、銀行業におけるATMの購入、生命保険業における次期オープン系システムの構築等への投資を計画しております。
また、上記の他に、「トータル生活サポート企業グループ」としてグループの成長につながるよう、当社グループ・グループ各社の企業価値向上に資する幅広い分野での資本提携やM&Aも、投資判断基準等に照らして慎重に検討し、適切と判断したものを実施することとしております。
その財源は、既存のキャッシュ・フローのほか、潤沢な借入余力を活かした借入金や金融2社株式を売却した場合の売却手取金を想定しています。
なお、現在予定している設備の新設計画としては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備等の新設等」の記載をご参照ください。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。
当社グループは、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
特に以下の重要な会計上の見積りが当社グループの連結財務諸表に大きな影響を及ぼす可能性があると考えております。
① 金融商品の時価評価
当社グループの有価証券の一部及びデリバティブ取引は、時価法に基づいて評価しております。時価は、市場価格に基づいて算定しておりますが、市場価格がない場合には合理的な見積りに基づいて算定された価額によっております。
一部の金融商品の時価算定には一定の前提条件を採用しているため、予測不能な前提条件の変化により、金融商品の評価に関する見積りが変動する可能性があります。
金融商品の時価の算定方法は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(金融商品関係)及び(デリバティブ取引関係)に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う金融市場の混乱が継続する場合、金融商品の時価算定における一定の前提条件に影響が及び、翌連結会計年度の経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
② 有価証券の減損
当社グループの金銭の信託で運用する有価証券を含め売買目的有価証券以外の有価証券のうち、時価又は実質価額が著しく下落したものについては合理的な基準に基づいて減損処理を行っております。株式市場の悪化等、将来の金融市場の状況によっては、多額の減損損失を計上する可能性があります。
③ 固定資産の減損
当社グループは、原則として内部管理上独立した業績報告が行われる単位を基礎として、資産のグルーピングを行っております。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としております。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき合理的に算定しております。
固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件が変更された場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
④ 繰延税金資産の回収可能性の評価
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の判断に際しては、将来の課税所得を合理的に見積っております。
繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、将来、当社グループを取り巻く経営環境に大きな変化があった場合等、その見積額が変動した場合は、繰延税金資産の回収可能性が変動する可能性があります。
⑤ 責任準備金の積立方法
当社グループは、保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金を積み立てております。
責任準備金の計算に使用される予定死亡率、予定利率及び予定事業費率などの基礎率は合理的であると考えておりますが、実際の結果が著しく乖離した場合や環境の変化により将来乖離が見込まれる場合には、責任準備金の金額に影響を及ぼす可能性があります。
なお、責任準備金の積立方法は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。
⑥ 退職給付債務及び退職給付費用
当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、割引率など将来の退職給付債務算出に用いる数理計算上の前提条件に基づいて算出しております。
このため、実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件の変更が行われた場合には、将来の退職給付債務及び退職給付費用が変動する可能性があります。
なお、退職給付債務等の計算の基礎に関する事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(退職給付関係)に記載のとおりであります。
⑦ 保険金等支払引当金の計上基準
当社グループの保険金等支払引当金は、お客さまのご意向確認等の実績を踏まえて、お客さまの利益を回復するための将来の契約措置により生じる保険金等の支払見込額等を合理的に見積り計上しております。保険金等支払引当金の計上等に係る詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(追加情報)の(保険契約に係るご契約調査及び改善に向けた取組)に記載しております。
将来、見積りに影響する新たな事実の発生等により、保険金等支払引当金の計上額が当初の見積額から変動する可能性があります。
なお、保険金等支払引当金の計上基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。
(5) 連結自己資本比率の状況
銀行持株会社としての当社の連結自己資本比率は、銀行法第52条の25の規定に基づき、銀行持株会社が銀行持株会社及びその子会社の保有する資産等に照らしそれらの自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第20号)に定められた算式に基づき、連結ベースについて算出しております。
なお、当社は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
連結自己資本比率(国内基準)
(注) 連結総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
(6) 連結ソルベンシー・マージン比率の状況
保険持株会社としての当社の連結ソルベンシー・マージン比率は、保険業法施行規則第210条の11の3、第210条の11の4及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
ソルベンシー・マージン比率とは、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つであります。
この比率が200%を下回った場合は、当局によって早期是正措置がとられます。逆にこの比率が200%以上であれば、健全性の一つの基準を満たしていることになります。
当連結会計年度末における連結ソルベンシー・マージン比率は、554.2%となりました。
(注) 保険業法施行規則第210条の11の3、第210条の11の4及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
(7) 目標とする経営指標の達成状況
当社グループにおいては、主要な経営目標として1株当たり当期純利益を採用しており、2020年3月期においては当初業績予想103.87円に対し1株当たり当期純利益119.64円となりました。2020年3月期の経営成績の状況及び分析・検討については、上記「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営成績の状況及び分析・検討」に示しております。
(8) 生産、受注及び販売の状況
当社グループは、郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業、銀行業及び生命保険業を中心とした広範囲な事業を営んでおり、生産、受注といった区分による表示が困難であることから、「生産、受注及び販売の状況」については、上記「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営成績の状況及び分析・検討」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態の状況及び分析・検討
当連結会計年度末の資産、負債及び純資産の状況は以下のとおりであります。
資産の部合計は、前連結会計年度末比72,259百万円減の286,098,449百万円となりました。
主な要因は、銀行業等における現金預け金1,435,917百万円の増、銀行業における買現先勘定1,363,758百万円の増、銀行業及び生命保険業等における金銭の信託1,025,814百万円の増の一方、銀行業及び生命保険業等における有価証券4,520,056百万円の減によるものです。
負債の部合計は、前連結会計年度末比2,099,619百万円増の273,481,674百万円となりました。
主な要因は、銀行業における売現先勘定3,286,253百万円の増、貯金1,752,024百万円の増の一方、生命保険業における責任準備金2,767,383百万円の減によるものです。
純資産の部合計は、前連結会計年度末比2,171,879百万円減の12,616,774百万円となりました。
主な要因は、利益剰余金257,113百万円の増の一方、銀行業及び生命保険業等におけるその他有価証券評価差額金2,285,094百万円の減、銀行業及び生命保険業等における繰延ヘッジ損益236,408百万円の減によるものです。
各事業セグメント別の資産の状況は以下のとおりであります。
① 郵便・物流事業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比27,528百万円減の2,023,941百万円となりました。
主な要因は、ゆうパック等の荷物分野の収益拡大に伴う営業キャッシュ・フローの増加により現金預け金が36,323百万円増加した一方、減価償却等により建物等の有形固定資産が46,943百万円減少したことによるものです。
② 金融窓口事業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比69,402百万円減の2,596,515百万円となりました。
主な要因は、現金預け金が23,132百万円増加した一方、交付金制度の導入に伴い営業未収入金等が減少したことによりその他資産が64,907百万円減少したことや建物等の有形固定資産が32,060百万円減少したことによるものです。
③ 国際物流事業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比98,435百万円増の565,794百万円となりました。
主な要因は、「リース」(IFRS第16号 2016年1月13日)の適用による使用権資産の計上により有形固定資産が97,094百万円増加したことによるものです。
④ 銀行業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比1,936,804百万円増の210,910,908百万円となりました。
主な要因は、有価証券が1,934,022百万円減少した一方、現金預け金が966,564百万円増加、コールローンが640,000百万円増加、買現先勘定が1,363,758百万円増加したことによるものです。
⑤ 生命保険業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比2,240,236百万円減の71,664,781百万円となりました。
主な要因は、保有契約の減少に伴い保険契約準備金が減少したことに対応し、有価証券が2,581,023百万円減少したことによるものです。
(2) 経営成績の状況及び分析・検討
当連結会計年度、かんぽ生命保険商品に関して、お客さまのご意向に沿わず不利益を生じさせた可能性のある事案が判明しました。これを受け、当社グループにおいて、ご契約調査を実施し、お客さまの不利益の解消に努めてきました。また、特別調査委員会を設置し、事案の徹底解明及び原因究明を行うとともに、再発防止策の検討を進めてきました。
2019年12月、当社、日本郵便及びかんぽ生命保険は、総務大臣及び金融庁より保険業法等に基づく行政処分を受け、2020年1月に業務改善計画を提出し、お客さま本位の業務運営の徹底、適切な業務運営の確保と、保険契約者の保護を図るための施策等に取り組みました。
業務改善計画の主要施策の概要は以下の通りです。
① 健全な組織風土の醸成・適正な営業推進態勢の確立
組織全体にお客さま本位の意識を醸成するとともに、それに基づく保険募集を実践することが適切に評価される態勢を構築します。
具体的には、お客さま本位の理念に基づいた行動規範を策定し、これを具体化するものとして、かんぽ生命保険商品のスタンダードな販売モデルを策定して、これらを研修等により関係する全社員へ浸透させます。
また、これらに整合的な営業目標の設定、評価、手当に見直すとともに、条件付解約等制度や契約転換制度の整備を進めます。
② チェック・統制機能
第1線(郵便局・コールセンター・サービスセンター等)では、お申し込みから契約締結までの間で、郵便局及びかんぽ生命保険による重層的なチェックを実施します。
第2線(本社等)では、適正な募集管理のための体制等の強化として、募集管理・コンプライアンス・苦情対応部門の人員の拡充、事故判定においては自認に頼らない事実認定・事故判定を行うこと、処分の区分の追加、問題のあった募集人・管理者への処分を実施します。
また、第3線として、内部監査部門も強化します。
③ 情報共有、ガバナンス
(a) PDCAサイクルの徹底
お客さまから当社グループに寄せられる様々な声を把握・分析するとともに、新たに設置する金融営業専用の社外通報窓口に寄せられる社員の声なども把握・分析し、改善策の効果検証・さらなる見直しに努めてまいります。
(b) 各社及びグループのガバナンスの強化
社外取締役の知見を活用して取締役会等を強化するほか、内部統制に関する各種連絡会・委員会を強化し、深度ある議論を実施します。
(c) 改善策のモニタリングと定期的な進捗状況の公表
今回の問題を受け、2020年1月、当社執行役社長の下にグループ横断のタスクフォースを設置しました。このタスクフォースによる進捗管理のもと、弁護士や外部の専門家を含めた第三者のモニタリングを受けながら、着実に各施策を実行し、グループ全体に浸透させてまいります。
ご契約調査については、まず、2019年8月から実施している特定事案調査について、お客さま都合によるもの等を除き、2020年3月末にお客さま対応を完了しました。特定事案調査の募集人調査については、2020年4月末でほぼ募集人調査の判定が終了しており、法令違反・社内ルール違反に該当した募集人に対する研修を順次開始しました。また、同じく2019年8月から実施している全ご契約調査においては、契約内容の説明や各種手続きの希望のほか、苦情やお叱りなど多数のご意見をいただきました。そのうち法令違反や社内ルール違反の可能性のあるものについて、募集人調査や利益回復に向けた対応を実施します。
2020年2月から全ご契約調査の深掘調査を実施し、多数契約調査のご契約内容の確認を進めました(お客さま都合によるもの等を除き、2020年4月末に概ね完了。)。多数契約以外の調査についても、2020年6月末を目処にご契約内容の確認を進めています。
<特定事案調査、全ご契約調査及び全ご契約調査の深掘調査の概要>ア. 特定事案調査
乗換契約のうち、お客さまのご意向に沿わず不利益が発生した可能性がある事案(保険契約を解約して、新規に保険契約の申込みを受けたが、この新規保険契約がお客さまの病歴等で成立しなかったため、保険契約(保障)がない状態となった場合等)について、特定の類型に分類が可能な事案を「特定事案」としてA~F類型に分類し、過去のご契約データから、乗換後の契約状況が当該類型に合致するもの(過去5年分で約18.3万件)を全て抽出し、お客さまのご意向に沿わず不利益を生じさせたものがないか調査を実施。
イ. 全ご契約調査
全てのかんぽ生命保険のご契約(過去5年間分の消滅契約を含む約3,000万件、ご契約者数で約1,900万人)について、お客さまのご意向に沿わず不利益を生じさせたものがないか調査を実施。
ウ. 全ご契約調査の深掘調査
全ご契約調査でお客さまからいただいたご回答・ご意見等の中には、多数回にわたって契約の消滅・新規契約が繰り返されたものなど、お客さまのご意向に沿ったものではない可能性が想定されるケースが判明したことから、全ご契約調査のさらなる深掘調査として調査を実施。
なお、今回の問題を招いた責任を明確化するため、2020年1月5日付けで当社、日本郵便及びかんぽ生命保険の社長等が辞任するとともに、役員の月額報酬の減額等を実施しており、一定の責任を有している本社・支社等の管理社員については、同年夏期賞与を減額支給することとしました。
上記のかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題に対する対応以外としては、当社におきましては、持株会社として、当社グループの企業価値向上を目指し、グループ各社の収益拡大や経営効率化等の推進に努めるとともに、郵便、貯金及び保険のユニバーサルサービスの確保、郵便局ネットワークの維持・活用による安定的なサービスの提供等という目的が達成できるよう、グループ運営に取り組みました。
また、グループ各社のコンプライアンス・プログラムの策定・推進の状況、各社の内部監査態勢・監査状況の把握に努めたほか、集約により効率性が高まる間接業務をグループ各社から受託するとともに、病院及び宿泊事業の経営改善に取り組みました。加えて、2019年4月に、かんぽ生命保険普通株式の第2次売出しを実施したほか、2018年12月に合意した、当社とアフラック・インコーポレーテッド及びアフラック生命保険株式会社との戦略提携に基づく、アフラック・インコーポレーテッドの普通株式の取得について、2020年2月をもって予定していた株式数の取得を完了しました。
さらに、グループ各社が提供するサービスの公益性・公共性の確保や、持続可能な社会の実現・未来の創造に貢献するため、グループとして取り組むべきCSR重点課題を特定し、それに基づくCSR活動や災害復興支援に、グループ一丸となって取り組んでまいりました。
また、新型コロナウイルス感染症への対策として、当社グループは、当社社長を本部長とする本社合同対策本部を設置し、関係機関と連携を図り、感染の防止と業務・サービスの継続等のため、必要な取組みを継続しました。これらの取組みの中で、2020年3月には、日本郵便が、厚生労働省からの委託を受け、北海道の一部対象地域でのマスクの全戸配達等を実施しました。
これらの取組みの結果、当連結会計年度における連結経常収益は11,950,185百万円(前期比824,813百万円減)、連結経常利益は864,457百万円(前期比33,761百万円増)、連結経常利益に、特別損益や契約者配当準備金繰入額等を加減した親会社株主に帰属する当期純利益は、483,733百万円(前期比4,313百万円増)となりました。
経営成績の詳細な状況は、各事業セグメントごとに記載しております。各事業セグメントごとの経営成績の状況は、以下のとおりであります。
① 郵便・物流事業
郵便・物流事業につきましては、年賀状をはじめとしたスマートフォン等を使ったSNS連携サービスや手紙の楽しさを伝える活動等により、郵便の利用の維持を図るとともに、eコマース市場の拡大による荷物需要の増加に対応するため、オープン型宅配便ロッカー等を活用した「はこぽす」の利用拠点の拡大、ゆうパケットとゆうパックの中間サイズとなる「ゆうパケットプラス」の開始等、差出・受取利便性の高いサービスの提供による収益の拡大を図りました。
オペレーション面では、お客さまの利便性向上のほか、業務効率向上や不在再配達率の削減に向け、置き配の普及・拡大を進めるとともに、業務量に応じた担務別人件費・要員マネジメントの高度化等によるコストコントロールに取り組みました。
また、テレマティクスを活用した外務業務の適正化や効率化等に向けた試行や、音声認識AIによる再配達依頼自動受付の試行を実施したほか、ドローンや配送ロボットについても、将来的な実用化に向けての実証実験・試行を進める等、先端技術の活用に向けた取組みを進めました。
加えて、お客さまの利便性向上に向け、郵便窓口へのキャッシュレス決済の導入を開始しました。
あわせて、「コンプライアンスは経営上の最重要課題」との基本的考え方に基づき、郵便物等の放棄・隠匿を含む部内犯罪の根絶、料金不適正収納の根絶、顧客情報の保護等に取り組みました。
また、日本郵便(単体)における当事業年度の総取扱物数は、郵便物が163億5,005万通(前期比2.6%減)、ゆうメールが35億6,861万個(前期比2.2%減)、ゆうパックが9億7,446万個(前期比3.4%増)(うち、ゆうパケットが4億2,766万個(前期比19.7%増))となりました。
これらの取組みの結果、当連結会計年度、郵便・物流事業におきましては、荷物分野、特にゆうパケットの増収のほか、参議院選挙、プレミアム商品券等の消費税増税に関連した一時的な郵便物等の差出増の影響などもあり、経常収益は2,128,187百万円(前期比8,854百万円増)、経常利益は149,185百万円(前期比24,728百万円増)となりました。なお、日本郵便の当連結会計年度における郵便・物流事業の営業収益は2,125,313百万円(前期比10,362百万円増)、営業利益は147,505百万円(前期比26,116百万円増)となりました。
引受郵便物等の状況
区分 | 前事業年度 | 当事業年度 | |||
物数(千通・千個) | 対前期比(%) | 物数(千通・千個) | 対前期比(%) | ||
総数 | 21,373,205 | △1.7 | 20,893,118 | △2.2 | |
郵便物 | 16,780,568 | △2.6 | 16,350,052 | △2.6 | |
内国 | 16,739,042 | △2.5 | 16,308,879 | △2.6 | |
普通 | 16,241,253 | △2.7 | 15,801,320 | △2.7 | |
第一種 | 8,037,906 | △0.7 | 7,971,018 | △0.8 | |
第二種 | 6,049,307 | △2.7 | 5,841,301 | △3.4 | |
第三種 | 197,178 | △3.2 | 189,844 | △3.7 | |
第四種 | 16,104 | △3.5 | 15,577 | △3.3 | |
年賀 | 1,911,293 | △8.9 | 1,725,673 | △9.7 | |
選挙 | 29,465 | △40.8 | 57,906 | 96.5 | |
特殊 | 497,789 | 1.5 | 507,559 | 2.0 | |
国際(差立) | 41,526 | △12.0 | 41,173 | △0.8 | |
通常 | 23,781 | △18.0 | 24,887 | 4.6 | |
小包 | 3,521 | △13.5 | 2,823 | △19.8 | |
国際スピード郵便 | 14,223 | 0.5 | 13,463 | △5.3 | |
荷物 | 4,592,637 | 1.8 | 4,543,066 | △1.1 | |
ゆうパック (含 ゆうパケット) | 942,214 | 7.6 | 974,457 | 3.4 | |
(再掲)ゆうパケット | 357,167 | 36.6 | 427,659 | 19.7 | |
ゆうメール | 3,650,423 | 0.4 | 3,568,609 | △2.2 |
(注) 1.第一種郵便物、第二種郵便物、第三種郵便物及び第四種郵便物の概要/特徴は、以下のとおりであります。
種類 | 概要/特徴 |
第一種郵便物 | お客さまがよく利用される「手紙」(封書)のことであります。一定の重量及び大きさの定形郵便物とそれ以外の定形外郵便物に分かれます。また、郵便書簡(ミニレター)、特定封筒(レターパックライト)及び小型特定封筒(スマートレター)も含んでおります。 |
第二種郵便物 | お客さまがよく利用される「はがき」のことであります。通常はがき及び往復はがきの2種類があります。年賀郵便物の取扱期間(12/15~1/7)以外に差し出された年賀はがきを含んでおります。 |
第三種郵便物 | 新聞、雑誌など年4回以上定期的に発行する刊行物で、日本郵便の承認を受けたものを内容とするものであります。 |
第四種郵便物 | 公共の福祉の増進を目的として、郵便料金を低料又は無料としているものであります。通信教育用郵便物、点字郵便物、特定録音物等郵便物、植物種子等郵便物、学術刊行物郵便物があります。 |
2.年賀は、年賀郵便物(年賀特別郵便(取扱期間12/15~12/28)及び12/29~1/7に差し出された年賀はがきで消印を省略したもの)の物数であります。
3.選挙は、公職選挙法に基づき、公職の候補者又は候補者届出政党から選挙運動のために差し出された通常はがきの物数であります。別掲で示しております。
4.特殊は、速達、書留、特定記録、本人限定受取等の特殊取扱(オプションサービス)を行った郵便物の物数の合計であります。交付記録郵便物用特定封筒(レターパックプラス)及び電子郵便(レタックス、Webゆうびん、e内容証明)を含んでおります。
5.国際通常郵便物は、2019年4月以降の集計方法を変更しております。なお、過去の通数との整合性を確保するため、過年度分については組替えを行っておりません。
6.ゆうパックは、一般貨物法制の規制を受けて行っている宅配便の愛称であります。配送中は、追跡システムにより管理をしております。
7.ゆうメールは、一般貨物法制の規制を受けて行っている3kgまでの荷物の愛称であります。主に冊子とした印刷物やCD・DVDなどをお届けするもので、ゆうパックより安値でポスト投函も可能な商品であります。
② 金融窓口事業
金融窓口事業につきましては、当連結会計年度、かんぽ生命保険から委託を受けた保険募集に関し、お客さまのご意向に沿わず、不利益を生じさせた事案が判明しました。お客さま対応を最優先としつつ、各種再発防止策の浸透を図ってきたところですが、前述のとおり、2019年12月に総務大臣及び金融庁より、業務停止命令及び業務改善命令を受け、2020年1月に業務改善計画を提出し、再発防止に向け取り組みました。
また、お客さまの将来のライフプランに寄り添い、その目的に合った商品及びサービスを幅広く提供できるよう、募集品質の向上、業務知識の強化、コミュニケーションスキルの向上等、お客さま本位の営業活動と総合的なコンサルティングサービスに寄与する各種研修を実施しました。
さらに、郵便局のショッピングセンター内等への新規出店や既存店舗の配置見直し等を通じ、郵便局ネットワークの最適化に取り組むとともに、ネットワークの価値を高めるため、地方公共団体事務の包括受託や郵便局窓口での地方銀行の手続事務受付等、地方公共団体や他企業と連携したサービス展開や地方創生の取組み拡大を行うなど、地域ニーズに応じた多様な郵便局の展開を進めました。
あわせて、「コンプライアンスは経営上の最重要課題」との基本的考え方に基づき、前述の保険募集の問題に取り組んだほか、顧客情報の保護、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策等に取り組みました。
また、不動産事業においては、JPタワー等による事務所、商業施設、住宅や保育施設等の賃貸事業等を行いました。不動産事業における主なプロジェクトの概要は以下のとおりです。
名称 | 土地面積 (千㎡) | 延床面積 (千㎡) | 簿価 (百万円) | 持分シェア | ||
土地等 | 建物他 | |||||
JPタワー | 約11 | 約212 | 297,240 | 227,783 | 69,457 | 共同事業 メジャーシェア |
大宮JPビルディング | 約6 | 約45 | 10,732 | 3,903 | 6,828 | 単独事業 |
JPタワー名古屋 | 約12 | 約180 | 44,803 | 10,945 | 33,858 | 共同事業 メジャーシェア |
KITTE博多 | 約5 | 約64 | 21,564 | 7,385 | 14,178 | 単独事業 |
(注) 2020年3月31日時点
これらの取組みの結果、当連結会計年度、金融窓口事業におきましては、かんぽ生命保険の商品について、営業活動の提案を控えたこと及び行政処分に伴い業務を一部停止したことによる保険手数料の減収や、一部事業の絞込みに伴う物販事業の減収により、経常収益は1,299,930百万円(前期比63,827百万円減)、経常利益は45,086百万円(前期比14,753百万円減)となりました。なお、日本郵便の当連結会計年度における金融窓口事業の営業収益は1,298,774百万円(前期比63,805百万円減)、営業利益は44,598百万円(前期比15,020百万円減)となりました。
郵便局数
支社名 | 営業中の郵便局(局) | |||||||
前事業年度末 | 当事業年度末 | |||||||
直営の郵便局 | 簡易 郵便局 | 計 | 直営の郵便局 | 簡易 郵便局 | 計 | |||
郵便局 | 分室 | 郵便局 | 分室 | |||||
北海道 | 1,207 | 1 | 270 | 1,478 | 1,208 | 1 | 268 | 1,477 |
東北 | 1,891 | 1 | 614 | 2,506 | 1,892 | 1 | 603 | 2,496 |
関東 | 2,395 | 0 | 175 | 2,570 | 2,394 | 0 | 171 | 2,565 |
東京 | 1,471 | 0 | 5 | 1,476 | 1,473 | 0 | 5 | 1,478 |
南関東 | 952 | 0 | 76 | 1,028 | 953 | 0 | 71 | 1,024 |
信越 | 977 | 0 | 322 | 1,299 | 974 | 0 | 318 | 1,292 |
北陸 | 668 | 0 | 173 | 841 | 668 | 0 | 167 | 835 |
東海 | 2,049 | 2 | 314 | 2,365 | 2,050 | 1 | 309 | 2,360 |
近畿 | 3,094 | 6 | 331 | 3,431 | 3,094 | 6 | 326 | 3,426 |
中国 | 1,751 | 2 | 458 | 2,211 | 1,751 | 2 | 450 | 2,203 |
四国 | 930 | 0 | 215 | 1,145 | 930 | 0 | 211 | 1,141 |
九州 | 2,502 | 0 | 905 | 3,407 | 2,501 | 0 | 895 | 3,396 |
沖縄 | 175 | 0 | 21 | 196 | 175 | 0 | 21 | 196 |
全国計 | 20,062 | 12 | 3,879 | 23,953 | 20,063 | 11 | 3,815 | 23,889 |
③ 国際物流事業
国際物流事業につきましては、日本郵便の子会社であるトール社の経営改善の取組みを継続しました。2020年1月には、トール社の社長が交替し、さらなる経営改善に着手しました。
また、引き続き、JPトールロジスティクス株式会社を活用し、コントラクトロジスティクスを中心とした BtoB 事業の拡大に取り組みました。
トール社は、当連結会計年度、従来からの豪州経済の低成長や米中の貿易摩擦、新型コロナウイルス感染症の拡大等、厳しい外部環境の影響下で、日本郵便の指導により、事業統合に係るガバナンス強化や経営改善策に取り組んでおります。しかしながら、2020年1月に発生した標的型サイバー攻撃を受け、一部サーバーがランサムウェアに感染したことから、拡大防止のため、一時的に全システムのシャットダウンを実施しました。これを受けシステムの回復と共に管理者権限の制限やログイン認証の強化などITシステムのセキュリティ強化に向けた施策を実施している間、業務の停滞等が生じました。これらの対応に要する費用増加に加え、財務・会計システムの更改による費用の増加、一部経理事務の外部委託時の態勢不備による売掛金の滞留により、現時点では期待するような経営改善に至っておらず、固定資産に係る減損損失を12,993百万円計上する等、業績不振が続く結果となりました。
このような状況の下、安定的な業務運営を確保し、経営改善を図るため、日本郵便からの債務保証も得て必要な資金を確保しております。
これらの取組みの結果、当連結会計年度、国際物流事業におきましては、営業収益低迷の一方で、人件費などの固定費負担が重く、為替影響もあり、経常収益は635,194百万円(前期比66,062百万円減)、経常損失は21,447百万円(前期は5,094百万円の経常利益)となりました。なお、日本郵便の当連結会計年度における国際物流事業については、営業収益は634,954百万円(前期比65,695百万円減)、営業損失は8,683百万円(前期は10,300百万円の営業利益)となりました。また、日本郵便は保有するトール社株式について65,295百万円の減損損失を計上しておりますが、当社連結決算においての影響はありません。
④ 銀行業
当連結会計年度、ゆうちょ銀行及び日本郵便において、ご高齢のお客さまへの投資信託の販売に関し、社内規則で定められた「勧誘前」と「申込受付前」の管理者承認のうち、「勧誘前」承認を怠っていたという事案が発生しました。そのため、日本郵便と連携し、今般の事案の対象となったお客さまにアフターフォローを実施し、保有していただいている投資商品に対するご認識等を確認いたしました。ご認識等に懸念ありと判断されたお客さまには、適合性の原則※の観点から求められる説明を行っていなかった事案がないか、外部弁護士のご意見をいただきながら、社内調査を実施し、この結果、該当する事案は認められませんでした。
※ 金融商品取引法等で定められた「お客さまの『知識』『経験』『財産の状況』『投資目的』に照らして、不適当と認められる勧誘を行って投資家の保護に欠け、又は欠けるおそれがあることのないように、業務を行わなければならない」とする原則です。
再発防止策として、研修等を通じた社内規則の趣旨の浸透強化、お客さま向け販売ツールの改善・充実、コンプライアンス・監査態勢の強化、営業目標の見直しに取り組みました。また、さらなるお客さま本位の金融サービスの品質向上を目的に、すべてのご高齢のお客さまに対しても、定期的なアフターフォローを実施しており、今後も継続してまいります。
加えて、ご高齢のお客さまに限らず、すべてのお客さまに対するサービス向上を継続的に実践していくため、ゆうちょ銀行の代表執行役社長を委員長とする「サービス向上委員会」を設置しました。同行においては、経営陣をはじめ、全社一体となって、お客さま本位の業務運営の浸透強化に取り組んでまいります。
銀行業につきましては、ゆうちょ銀行において、「お客さま本位の良質な金融サービスの提供」、「運用の高度化・多様化」、「地域への資金の循環等」、「経営管理態勢の強化」の諸施策に取り組みました。
「お客さま本位の良質な金融サービスの提供」については、資産運用コンサルタントの増員や指導・研修による人材育成に注力するとともに、2019年5月には、ゆうちょ銀行及び当社と、株式会社大和証券グループ本社及び大和証券株式会社の間で、お客さま一人ひとりのライフスタイル・ニーズに応じた、中長期的な資産形成のサポートに向け、資産形成分野における新たな協業の検討を進めることについて合意し、検討しました。
また、決済サービスの充実に向け、スマートフォン決済サービス「ゆうちょPay」、ゆうちょ銀行の総合口座をご利用のお客さま※がスマートフォンを使っていつでも現在高や入出金明細を確認できる「ゆうちょ通帳アプリ」、法人のお客さま向けのインターネットバンキングサービス「ゆうちょBizダイレクト」等の取扱いを開始しました。
「運用の高度化・多様化」については、国内の低金利環境が継続し、世界経済の先行き不透明感が高まる中、安定的な収益確保のため、適切なリスク管理のもと、国際分散投資を進めました。海外クレジット資産をクレジット・クオリティ(投資先の信用力)に配意しつつ積み上げたほか、戦略的な投資領域と位置づけているプライベートエクイティファンド(成長が見込まれる未上場企業等へ投資するファンド)、不動産ファンド等への投資を、市場環境の変化を踏まえて選別的に実行しました。
また、運用の高度化・多様化を推進していく中、財務健全性の観点から必要十分な自己資本比率を確保しており、安定的な収益と財務健全性の両立のため、リスクアペタイト・フレームワークを活用し、ゆうちょ銀行が取得する適切なリスクの種類や水準を明確化した上で、投資方針を決定しました。
「地域への資金の循環等」については、お客さまからお預かりした大切な資金を地域に循環させていくために、引き続き、地域金融機関との連携を通じて地域活性化ファンドへの参加を推し進めており、2019年度も事業承継や起業・創業の支援等を目的として、新たに10件(累計28件)の地域活性化ファンドに参加しました。
「経営管理態勢の強化」については、「お客さま本位の業務運営に関する基本方針」を制定し、当該方針の取組状況を定期的に確認するため、成果指標を設定し、その結果を公表するなど、「お客さま本位の良質な金融サービス」の提供に向けて取り組みました。
リスクガバナンスの強化としては、リスクアペタイト・フレームワークの対象をALM(資産・負債の総合管理)・運用業務からゆうちょ銀行業務全体に拡大し、経営管理態勢の高度化を図りました。複雑・巧妙化するサイバー攻撃への対応としては、不正なアクセスの監視や被害防止に向けた態勢整備を進め、対応の強化を図りました。また、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策への国際的・社会的要請の高まりを踏まえ、行内の対応態勢を整備するとともに、商品・サービスを見直すなど、対応の強化を図りました。
さらに、貯金事務センターにおいて業務のRPA化(ソフトウェアロボットによる業務プロセスの自動化)推進等のデジタル技術の活用による業務効率化や、トランザクション業務(窓口等における定型業務)のスリム化にあわせて、経営資源をコンサルティング業務等に再配分し、人的資源の有効活用等を進めることで、お客さまサービスの充実に努めました。
加えて、ゆうちょ銀行と外部事業者が連携し、お客さまに安全かつ利便性の高い高度な金融サービスをご提供するため、ゆうちょ銀行システムとゆうちょ銀行外のシステムとの連携強化に必要なシステム基盤(外部連携基盤:API)の整備・拡大や、セキュリティ強化の観点から「ゆうちょ認証アプリ」のサービス開始によるゆうちょダイレクトへの生体認証の導入等に取り組みました。
※ 振替口座、キャッシュカードを利用していない総合口座及び法人口座等ではご利用いただけません。
新型コロナウイルス感染症が拡大する状況の中、ゆうちょ銀行では、「危機管理委員会」を立ち上げ、当社グループ各社から構成される「本社合同対策本部」等と連携し、感染拡大防止策を導入するとともに、現金の入出金や決済業務など、社会機能維持のためお客さまが必要とするサービスを継続できるよう、社内の業務態勢を整えました。
具体的には、郵便局・ゆうちょ銀行店舗・ATMは、原則としてすべて営業を継続する一方、お客さまと社員の安全確保の観点から、社員に時差出勤、交替勤務、在宅勤務等を導入したほか、窓口の一部縮小や一部店舗の営業時間短縮、訪問や窓口での積極的な営業活動の停止、窓口カウンターへの飛沫感染防止のビニールシートの設置、インターネットバンキングサービス「ゆうちょダイレクト」ご利用検討のお願い、年金支給日等における混雑緩和のお願い等の感染拡大防止策を実施しました。また、お客さまの日々の生活に必要な現金の入出金や決済業務、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を受けた特別定額給付金の円滑な入金などの重要業務については、柔軟な人員配置や複数拠点によるバックアップを通じて、業務継続体制を確保しています。
なお、社員に感染が確認された場合は、所管保健所と連携のうえ、必要な措置を適切に講じてまいります。
今後も引き続き、感染拡大防止策や重要業務の継続態勢確保に努めてまいります。
これらの取組みの結果、当連結会計年度、銀行業におきましては、年度末時点のゆうちょ銀行の貯金残高は183,004,733百万円(前期末比2,005,599百万円増)となりました。低金利環境の継続や、新型コロナウイルス感染症の拡大による市場環境の悪化など、非常に厳しい経営環境下、経常収益は1,799,538百万円(前期比45,872百万円減)、経常利益は379,131百万円(前期比5,155百万円増)となりました。
なお、ゆうちょ銀行における損益の概要などの詳細な状況については、下記「(参考1) 銀行業を行う当社の子会社であるゆうちょ銀行(単体)の状況」「(参考2) 自己資本比率の状況」「(参考3) 資産の査定」に記載のとおりであります。
(参考1) 銀行業を行う当社の子会社であるゆうちょ銀行(単体)の状況
(a) 損益の概要
低金利環境の継続や、新型コロナウイルス感染症の拡大による市場環境の悪化など、非常に厳しい経営環境下、当事業年度の業務粗利益は、前事業年度比128億円減少の1兆3,142億円となりました。このうち、資金利益は、国債利息の減少を主因に、前事業年度比393億円の減少となりました。役務取引等利益は、前事業年度比221億円の増加となりました。その他業務利益は、前事業年度比43億円の増加となりました。
経費は、前事業年度比172億円減少の1兆202億円となりました。
業務純益は、前事業年度比44億円増加の2,939億円となりました。
経常利益は、前事業年度比47億円増加の3,790億円となりました。
この結果、当期純利益は2,730億円、前事業年度比68億円の増益となりました。
前事業年度 (百万円)(A) | 当事業年度 (百万円)(B) | 増減(百万円) (B)-(A) | |
業務粗利益 | 1,327,033 | 1,314,210 | △12,823 |
資金利益 | 1,016,126 | 976,821 | △39,304 |
役務取引等利益 | 106,761 | 128,891 | 22,129 |
その他業務利益 | 204,145 | 208,497 | 4,351 |
うち外国為替売買損益 | 219,448 | 202,139 | △17,308 |
うち国債等債券損益 | △12,241 | 8,097 | 20,339 |
経費(除く臨時処理分) | △1,037,537 | △1,020,253 | 17,283 |
人件費 | △126,360 | △122,586 | 3,774 |
物件費 | △841,648 | △844,334 | △2,685 |
税金 | △69,527 | △53,332 | 16,195 |
業務純益(一般貸倒引当金繰入前) | 289,496 | 293,956 | 4,460 |
一般貸倒引当金繰入額 | - | △15 | △15 |
業務純益 | 289,496 | 293,941 | 4,445 |
臨時損益 | 84,803 | 85,135 | 332 |
うち株式等関係損益 | △10,983 | 11,545 | 22,528 |
うち金銭の信託運用損益 | 77,717 | 72,838 | △4,878 |
経常利益 | 374,299 | 379,077 | 4,778 |
特別損益 | △4,107 | △450 | 3,656 |
固定資産処分損益 | △3,556 | △450 | 3,106 |
減損損失 | △550 | △0 | 550 |
税引前当期純利益 | 370,192 | 378,626 | 8,434 |
法人税、住民税及び事業税 | △99,417 | △101,266 | △1,848 |
法人税等調整額 | △4,596 | △4,315 | 280 |
法人税等合計 | △104,013 | △105,581 | △1,568 |
当期純利益 | 266,178 | 273,044 | 6,866 |
(注) 1.業務純益=業務粗利益-経費(除く臨時処理分)-一般貸倒引当金繰入額
2.臨時損益とは、損益計算書中「その他経常収益・費用」から一般貸倒引当金繰入額を除き、金銭の信託運用見合費用及び退職給付費用のうち臨時費用処理分等を加えたものであります。
3.「金銭の信託運用見合費用」とは、金銭の信託取得に係る資金調達費用であり、金銭の信託運用損益が臨時損益に計上されているため、業務費用から控除しているものであります。
4.国債等債券損益=国債等債券売却益+国債等債券償還益-国債等債券売却損-国債等債券償還損-国債等債券償却
5.株式等関係損益=株式等売却益-株式等売却損-株式等償却
6.金額が損失又は費用には△を付しております。
(参考) 与信関係費用
前事業年度 (百万円)(A) | 当事業年度 (百万円)(B) | 増減(百万円) (B)-(A) | |
与信関係費用 | 14 | △13 | △28 |
一般貸倒引当金繰入額 | 14 | △13 | △28 |
貸出金償却 | - | - | - |
個別貸倒引当金繰入額 | - | - | - |
償却債権取立益 | - | - | - |
(注) 1.金融再生法開示債権に係る費用を計上しております。
2.金額が損失又は費用には△を付しております。
(b) 国内・国際別の資金利益等
ゆうちょ銀行は、海外店や海外に本店を有する子会社(以下「海外子会社」といいます。)を有しておりませんが、円建の取引を「国内業務部門」、外貨建取引を「国際業務部門」に帰属させ(ただし、円建の対非居住者取引は「国際業務部門」に含む。)、各々の収益・費用を計上した結果、国内業務部門・国際業務部門別の資金利益等は次のとおりとなりました。
当事業年度は、国内業務部門においては、資金利益は5,497億円、役務取引等利益は1,285億円、その他業務利益は31億円となりました。
国際業務部門においては、資金利益は4,270億円、役務取引等利益は3億円、その他業務利益は2,053億円となりました。
この結果、国内業務部門、国際業務部門の相殺消去後の合計は、資金利益は9,768億円、役務取引等利益は1,288億円、その他業務利益は2,084億円となりました。
イ.国内業務部門
前事業年度 (百万円)(A) | 当事業年度 (百万円)(B) | 増減(百万円) (B)-(A) | |
資金利益 | 637,925 | 549,737 | △88,187 |
資金運用収益 | 752,825 | 629,096 | △123,729 |
うち国債利息 | 523,311 | 428,156 | △95,154 |
資金調達費用 | 114,900 | 79,358 | △35,541 |
役務取引等利益 | 106,007 | 128,540 | 22,533 |
役務取引等収益 | 137,906 | 159,951 | 22,045 |
役務取引等費用 | 31,898 | 31,410 | △487 |
その他業務利益 | 4,397 | 3,164 | △1,233 |
その他業務収益 | 7,627 | 6,217 | △1,409 |
その他業務費用 | 3,229 | 3,052 | △176 |
ロ.国際業務部門
前事業年度 (百万円)(A) | 当事業年度 (百万円)(B) | 増減(百万円) (B)-(A) | |
資金利益 | 378,200 | 427,083 | 48,882 |
資金運用収益 | 700,201 | 789,429 | 89,227 |
うち外国証券利息 | 698,775 | 787,476 | 88,701 |
資金調達費用 | 322,000 | 362,345 | 40,344 |
役務取引等利益 | 754 | 350 | △403 |
役務取引等収益 | 888 | 613 | △275 |
役務取引等費用 | 134 | 262 | 127 |
その他業務利益 | 199,748 | 205,333 | 5,585 |
その他業務収益 | 221,445 | 206,671 | △14,774 |
その他業務費用 | 21,697 | 1,337 | △20,359 |
ハ.合計
前事業年度 (百万円)(A) | 当事業年度 (百万円)(B) | 増減(百万円) (B)-(A) | |
資金利益 | 1,016,126 | 976,821 | △39,304 |
資金運用収益 | 1,357,985 | 1,318,014 | △39,971 |
資金調達費用 | 341,859 | 341,193 | △666 |
役務取引等利益 | 106,761 | 128,891 | 22,129 |
役務取引等収益 | 138,794 | 160,564 | 21,770 |
役務取引等費用 | 32,032 | 31,673 | △359 |
その他業務利益 | 204,145 | 208,497 | 4,351 |
その他業務収益 | 228,925 | 212,888 | △16,037 |
その他業務費用 | 24,779 | 4,390 | △20,388 |
(注) 1.資金調達費用は、金銭の信託運用見合費用(前事業年度5,298百万円、当事業年度5,441百万円)を控除しております。
2.「国内業務部門」「国際業務部門」間の内部取引による相殺消去額等は下表のとおりであります。
前事業年度 (百万円) | 当事業年度 (百万円) | |
国内業務部門・資金運用収益 | 95,041 | 100,511 |
国際業務部門・資金調達費用 | 95,041 | 100,511 |
国内業務部門・その他業務費用 | 147 | - |
国際業務部門・その他業務収益 | 147 | - |
(c) 国内・国際別資金運用/調達の状況
当事業年度の資金運用勘定の平均残高は203兆5,900億円、利回りは0.64%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は196兆2,173億円、利回りは0.17%となりました。
国内・国際別に見ますと、国内業務部門の資金運用勘定の平均残高は198兆263億円、利回りは0.31%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は190兆6,957億円、利回りは0.04%となりました。
国際業務部門の資金運用勘定の平均残高は63兆3,669億円、利回りは1.24%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は63兆3,247億円、利回りは0.57%となりました。
イ.国内業務部門
種類 | 前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||||
平均残高 | 利息 | 利回り | 平均残高 | 利息 | 利回り | 利回り | |
(百万円) | (百万円) | (%) (A) | (百万円) | (百万円) | (%) (B) | (%) (B)-(A) | |
資金運用勘定 | 194,710,207 | 752,825 | 0.38 | 198,026,308 | 629,096 | 0.31 | △0.06 |
うち貸出金 | 6,090,997 | 12,072 | 0.19 | 4,947,212 | 11,056 | 0.22 | 0.02 |
うち有価証券 | 77,703,674 | 615,038 | 0.79 | 71,842,673 | 492,509 | 0.68 | △0.10 |
うち預け金等 | 49,543,054 | 30,905 | 0.06 | 52,928,370 | 28,874 | 0.05 | △0.00 |
資金調達勘定 | 187,129,472 | 114,900 | 0.06 | 190,695,746 | 79,358 | 0.04 | △0.01 |
うち貯金 | 181,227,650 | 80,834 | 0.04 | 183,018,232 | 55,096 | 0.03 | △0.01 |
うち債券貸借取引受入担保金 | 6,057,199 | 1,013 | 0.01 | 229,198 | 229 | 0.10 | 0.08 |
(注) 1.「国内業務部門」は円建取引であります。
2.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度2,730,010百万円、当事業年度2,483,454百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度2,730,010百万円、当事業年度2,483,454百万円)及び利息(前事業年度3,933百万円、当事業年度1,744百万円)を控除しております。
3.預け金等は、譲渡性預け金、日銀預け金、コールローン、買入金銭債権であります。「ロ.国際業務部門」「ハ.合計」においても同様であります。
4.貯金は銀行法施行規則の負債科目「預金」に相当するものであります。「ロ.国際業務部門」「ハ.合計」においても同様であります。
ロ.国際業務部門
種類 | 前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||||
平均残高 | 利息 | 利回り | 平均残高 | 利息 | 利回り | 利回り | |
(百万円) | (百万円) | (%) (A) | (百万円) | (百万円) | (%) (B) | (%) (B)-(A) | |
資金運用勘定 | 59,119,568 | 700,201 | 1.18 | 63,366,957 | 789,429 | 1.24 | 0.06 |
うち貸出金 | 5,000 | 20 | 0.41 | 10,868 | 57 | 0.52 | 0.10 |
うち有価証券 | 59,005,163 | 698,775 | 1.18 | 63,239,883 | 787,476 | 1.24 | 0.06 |
うち預け金等 | 8,801 | 164 | 1.86 | 1,263 | 29 | 2.35 | 0.49 |
資金調達勘定 | 58,418,073 | 322,000 | 0.55 | 63,324,744 | 362,345 | 0.57 | 0.02 |
うち債券貸借取引受入担保金 | 2,619,354 | 59,283 | 2.26 | 2,240,788 | 49,376 | 2.20 | △0.05 |
(注) 1.「国際業務部門」は外貨建取引であります。ただし、円建対非居住者取引については、「国際業務部門」に含めております。
2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。
3.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度247,597百万円、当事業年度646,071百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度247,597百万円、当事業年度646,071百万円)及び利息(前事業年度1,364百万円、当事業年度3,696百万円)を控除しております。
ハ.合計
種類 | 前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||||
平均残高 | 利息 | 利回り | 平均残高 | 利息 | 利回り | 利回り | |
(百万円) | (百万円) | (%) (A) | (百万円) | (百万円) | (%) (B) | (%) (B)-(A) | |
資金運用勘定 | 200,414,539 | 1,357,985 | 0.67 | 203,590,095 | 1,318,014 | 0.64 | △0.03 |
うち貸出金 | 6,095,997 | 12,093 | 0.19 | 4,958,081 | 11,113 | 0.22 | 0.02 |
うち有価証券 | 136,708,838 | 1,313,813 | 0.96 | 135,082,556 | 1,279,986 | 0.94 | △0.01 |
うち預け金等 | 49,551,855 | 31,069 | 0.06 | 52,929,633 | 28,904 | 0.05 | △0.00 |
資金調達勘定 | 192,132,309 | 341,859 | 0.17 | 196,217,319 | 341,193 | 0.17 | △0.00 |
うち貯金 | 181,227,650 | 80,834 | 0.04 | 183,018,232 | 55,096 | 0.03 | △0.01 |
うち債券貸借取引受入担保金 | 8,676,554 | 60,297 | 0.69 | 2,469,986 | 49,605 | 2.00 | 1.31 |
(注) 1.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度2,977,608百万円、当事業年度3,129,526百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度2,977,608百万円、当事業年度3,129,526百万円)及び利息(前事業年度5,298百万円、当事業年度5,441百万円)を控除しております。
2.「国内業務部門」「国際業務部門」間の内部取引による相殺消去額は下表のとおりであります。
前事業年度 | 当事業年度 | |||
平均残高 (百万円) | 利息 (百万円) | 平均残高 (百万円) | 利息 (百万円) | |
国内業務部門・資金運用勘定 | 53,415,236 | 95,041 | 57,803,170 | 100,511 |
国際業務部門・資金調達勘定 | 53,415,236 | 95,041 | 57,803,170 | 100,511 |
(d) 役務取引等利益の状況
当事業年度の役務取引等利益は、為替・決済関連手数料の増加を主因に、前事業年度比221億円増加の1,288億円となりました。
前事業年度 (百万円)(A) | 当事業年度 (百万円)(B) | 増減(百万円) (B)-(A) | |
役務取引等利益 | 106,761 | 128,891 | 22,129 |
為替・決済関連手数料 | 61,265 | 79,487 | 18,222 |
ATM関連手数料 | 14,539 | 19,095 | 4,555 |
投資信託関連手数料 | 22,219 | 21,764 | △454 |
その他 | 8,736 | 8,543 | △193 |
(参考) 投資信託の取扱状況(約定ベース)
前事業年度 (百万円)(A) | 当事業年度 (百万円)(B) | 増減(百万円) (B)-(A) | |
販売金額 | 891,075 | 691,496 | △199,578 |
純資産残高 | 2,285,947 | 2,301,781 | 15,834 |
(e) 預金残高の状況
当事業年度末の貯金残高は、安定的に推移し、前事業年度末比2兆55億円増加の183兆47億円となりました。
○ 預金の種類別残高(末残・構成比)
種類 | 前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||
金額(百万円) (A) | 構成比(%) | 金額(百万円) (B) | 構成比(%) | 金額(百万円) (B)-(A) | |
預金合計 | 180,999,134 | 100.00 | 183,004,733 | 100.00 | 2,005,599 |
流動性預金 | 79,959,377 | 44.17 | 87,567,568 | 47.84 | 7,608,191 |
振替貯金 | 16,143,580 | 8.91 | 7,712,325 | 4.21 | △8,431,254 |
通常貯金等 | 63,410,139 | 35.03 | 79,346,271 | 43.35 | 15,936,131 |
貯蓄貯金 | 405,656 | 0.22 | 508,971 | 0.27 | 103,315 |
定期性預金 | 100,927,190 | 55.76 | 95,298,907 | 52.07 | △5,628,282 |
定期貯金 | 7,096,334 | 3.92 | 5,225,651 | 2.85 | △1,870,683 |
定額貯金 | 93,830,855 | 51.84 | 90,073,256 | 49.21 | △3,757,598 |
その他の預金 | 112,566 | 0.06 | 138,256 | 0.07 | 25,689 |
譲渡性預金 | - | - | - | - | - |
総合計 | 180,999,134 | 100.00 | 183,004,733 | 100.00 | 2,005,599 |
○ 預金の種類別残高(平残・構成比)
種類 | 前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||
金額(百万円) (A) | 構成比(%) | 金額(百万円) (B) | 構成比(%) | 金額(百万円) (B)-(A) | |
預金合計 | 181,227,650 | 100.00 | 183,018,232 | 100.00 | 1,790,581 |
流動性預金 | 77,640,495 | 42.84 | 84,703,007 | 46.28 | 7,062,512 |
振替貯金 | 15,616,526 | 8.61 | 7,706,034 | 4.21 | △7,910,492 |
通常貯金等 | 61,624,216 | 34.00 | 76,527,985 | 41.81 | 14,903,769 |
貯蓄貯金 | 399,752 | 0.22 | 468,987 | 0.25 | 69,234 |
定期性預金 | 103,344,557 | 57.02 | 98,087,845 | 53.59 | △5,256,712 |
定期貯金 | 7,891,098 | 4.35 | 6,208,331 | 3.39 | △1,682,766 |
定額貯金 | 95,453,459 | 52.67 | 91,879,514 | 50.20 | △3,573,945 |
その他の預金 | 242,596 | 0.13 | 227,378 | 0.12 | △15,218 |
譲渡性預金 | - | - | - | - | - |
総合計 | 181,227,650 | 100.00 | 183,018,232 | 100.00 | 1,790,581 |
(注) 1.「通常貯金等」=通常貯金+特別貯金(通常郵便貯金相当)
2.貯金は銀行法施行規則の負債科目「預金」に相当するものであります。「振替貯金」は「当座預金」、「通常貯金」は「普通預金」、「貯蓄貯金」は「貯蓄預金」、「定期貯金」は「定期預金」に相当するものであります。「定額貯金」は「その他の預金」に相当するものでありますが、「定期性預金」に含めております。
3.特別貯金(通常郵便貯金相当)は郵政管理・支援機構からの預り金のうち、郵政管理・支援機構が公社から承継した定期郵便貯金、定額郵便貯金、積立郵便貯金、住宅積立郵便貯金、教育積立郵便貯金に相当する郵便貯金で満期となったものなどであります。
4.上記の通常貯金、定期性預金は、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3) 事業に係る主な法律関連事項 ③ 郵政民営化法 (f) ゆうちょ銀行における預入限度額」に記載の郵政民営化法における預入限度額規制上の区分とは異なります。
(f) 資産運用の状況(末残・構成比)
当事業年度末の運用資産のうち、国債は53.6兆円、その他の証券は65.6兆円となりました。
種類 | 前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||
金額(百万円) (A) | 構成比(%) | 金額(百万円) (B) | 構成比(%) | 金額(百万円) (B)-(A) | |
預け金等 | 50,674,248 | 24.60 | 51,485,414 | 24.80 | 811,165 |
コールローン | 400,000 | 0.19 | 1,040,000 | 0.50 | 640,000 |
買現先勘定 | 8,368,139 | 4.06 | 9,731,897 | 4.68 | 1,363,758 |
債券貸借取引支払保証金 | - | - | 112,491 | 0.05 | 112,491 |
金銭の信託 | 3,990,780 | 1.93 | 4,549,736 | 2.19 | 558,956 |
うち国内株式 | 2,141,784 | 1.03 | 1,859,682 | 0.89 | △282,101 |
うち国内債券 | 1,195,685 | 0.58 | 1,419,008 | 0.68 | 223,323 |
有価証券 | 137,135,264 | 66.57 | 135,198,460 | 65.14 | △1,936,804 |
国債 | 58,356,567 | 28.33 | 53,636,113 | 25.84 | △4,720,454 |
地方債 | 6,383,964 | 3.09 | 5,986,349 | 2.88 | △397,615 |
短期社債 | 220,998 | 0.10 | 806,975 | 0.38 | 585,976 |
社債 | 9,574,857 | 4.64 | 9,108,252 | 4.38 | △466,605 |
株式 | 99,286 | 0.04 | 3,255 | 0.00 | △96,030 |
その他の証券 | 62,499,590 | 30.34 | 65,657,514 | 31.63 | 3,157,924 |
うち外国債券 | 22,035,528 | 10.69 | 23,706,870 | 11.42 | 1,671,341 |
うち投資信託 | 40,433,941 | 19.63 | 41,901,017 | 20.19 | 1,467,075 |
貸出金 | 5,297,424 | 2.57 | 4,961,733 | 2.39 | △335,691 |
その他 | 109,366 | 0.05 | 439,879 | 0.21 | 330,512 |
合計 | 205,975,224 | 100.00 | 207,519,613 | 100.00 | 1,544,388 |
(注) 「預け金等」は譲渡性預け金、日銀預け金、買入金銭債権であります。
(g) 評価損益の状況(末残)
当事業年度末の評価損益(その他目的)は、ヘッジ考慮後で△1,020億円(税効果前)となりました。
前事業年度(A) | 当事業年度(B) | 増減(B)-(A) | ||||
貸借対照表 計上額 | 評価損益 | 貸借対照表 計上額 | 評価損益 | 貸借対照表 計上額 | 評価損益 | |
(百万円) | (百万円) | (百万円) | (百万円) | (百万円) | (百万円) | |
満期保有目的の債券 | 27,242,577 | 793,192 | 24,170,708 | 490,838 | △3,071,869 | △302,354 |
前事業年度(A) | 当事業年度(B) | 増減(B)-(A) | |||||
貸借対照表 計上額 /想定元本 | 評価損益 /ネット繰延 損益 | 貸借対照表 計上額 /想定元本 | 評価損益 /ネット繰延 損益 | 貸借対照表 計上額 /想定元本 | 評価損益 /ネット繰延 損益 | ||
(百万円) | (百万円) | (百万円) | (百万円) | (百万円) | (百万円) | ||
その他目的 | 114,193,457 | 3,517,294 | 115,936,195 | 370,622 | 1,742,738 | △3,146,671 | |
有価証券 | ① | 110,241,967 | 2,128,583 | 111,386,459 | △751,571 | 1,144,491 | △2,880,154 |
国債 | 33,340,646 | 1,167,684 | 32,597,964 | 794,222 | △742,682 | △373,461 | |
外国債券 | 22,003,095 | 637,751 | 23,706,870 | 429,425 | 1,703,774 | △208,326 | |
投資信託 | 40,433,941 | 184,918 | 41,901,017 | △2,040,416 | 1,467,075 | △2,225,334 | |
その他 | 14,464,284 | 138,229 | 13,180,607 | 65,196 | △1,283,676 | △73,032 | |
時価ヘッジ効果額 | ② | ― | 266,443 | ― | 308,341 | ― | 41,897 |
金銭の信託 | ③ | 3,951,489 | 1,122,266 | 4,549,736 | 813,852 | 598,246 | △308,413 |
国内株式 | 2,141,784 | 1,106,458 | 1,859,682 | 816,565 | △282,101 | △289,892 | |
その他 | 1,809,705 | 15,808 | 2,690,053 | △2,713 | 880,348 | △18,521 | |
デリバティブ取引 (繰延ヘッジ適用分) | ④ | 14,366,189 | △89,879 | 16,340,330 | △472,705 | 1,974,140 | △382,826 |
評価損益合計 ①+②+③+④ | ― | 3,427,414 | ― | △102,083 | ― | △3,529,498 |
(注) 「有価証券」には、有価証券のほか、現金預け金中の譲渡性預け金、買入金銭債権を含んでおります。
(h) 業種別貸出金残高の状況(末残・構成比)
業種別 | 前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||
金額(百万円) (A) | 構成比(%) | 金額(百万円) (B) | 構成比(%) | 金額(百万円) (B)-(A) | |
国内(除く特別国際金融取引勘定分) | 5,292,424 | 100.00 | 4,942,412 | 100.00 | △350,012 |
農業、林業、漁業、鉱業 | - | - | - | - | - |
製造業 | 15,519 | 0.29 | 43,524 | 0.88 | 28,005 |
電気・ガス等、情報通信業、運輸業 | 115,517 | 2.18 | 108,064 | 2.18 | △7,453 |
卸売業、小売業 | 37,289 | 0.70 | 31,155 | 0.63 | △6,133 |
金融・保険業 | 930,873 | 17.58 | 773,676 | 15.65 | △157,196 |
建設業、不動産業 | 2,000 | 0.03 | 12,983 | 0.26 | 10,983 |
各種サービス業、物品賃貸業 | 37,695 | 0.71 | 48,437 | 0.98 | 10,741 |
国、地方公共団体 | 3,997,677 | 75.53 | 3,782,410 | 76.52 | △215,267 |
その他 | 155,851 | 2.94 | 142,159 | 2.87 | △13,691 |
国際及び特別国際金融取引勘定分 | 5,000 | 100.00 | 19,321 | 100.00 | 14,321 |
政府等 | - | - | - | - | - |
金融機関 | - | - | - | - | - |
その他 | 5,000 | 100.00 | 19,321 | 100.00 | 14,321 |
合計 | 5,297,424 | ― | 4,961,733 | ― | △335,691 |
(注) 1.「国内」とは本邦居住者に対する貸出、「国際」とは非居住者に対する貸出であります。
2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。
3.「金融・保険業」のうち郵政管理・支援機構向け貸出金は、前事業年度末640,676百万円、当事業年度末439,734百万円であります。
(参考) リスク管理債権(末残)
前事業年度 (億円)(A) | 当事業年度 (億円)(B) | 増減(億円) (B)-(A) | |
破綻先債権 | - | - | - |
延滞債権 | - | 0 | 0 |
3カ月以上延滞債権 | - | - | - |
貸出条件緩和債権 | - | - | - |
合計 | - | 0 | 0 |
(参考2) 自己資本比率の状況
ゆうちょ銀行の自己資本比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しております。
なお、ゆうちょ銀行は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
連結自己資本比率(国内基準)
(単位:億円、%) | |
2020年3月31日 | |
1.連結自己資本比率(2/3) | 15.58 |
2.連結における自己資本の額 | 89,420 |
3.リスク・アセット等の額 | 573,908 |
4.連結総所要自己資本額 | 22,956 |
(注) 連結総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
単体自己資本比率(国内基準)
(単位:億円、%) | |
2020年3月31日 | |
1.単体自己資本比率(2/3) | 15.55 |
2.単体における自己資本の額 | 89,325 |
3.リスク・アセット等の額 | 574,072 |
4.単体総所要自己資本額 | 22,962 |
(注) 単体総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
(参考3) 資産の査定
資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号)第6条に基づき、ゆうちょ銀行の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。
(a) 破産更生債権及びこれらに準ずる債権
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
(b) 危険債権
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
(c) 要管理債権
要管理債権とは、3カ月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
(d) 正常債権
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記(a)から(c)までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
資産の査定の額
債権の区分 | 2019年3月31日 | 2020年3月31日 |
金額(億円) | 金額(億円) | |
破産更生債権及びこれらに準ずる債権 | - | - |
危険債権 | - | 0 |
要管理債権 | - | - |
正常債権 | 53,816 | 51,116 |
⑤ 生命保険業
生命保険業につきましては、かんぽ生命保険において、郵便局における募集実態の把握とその対策が十分ではなく、かんぽ生命保険の保険契約の募集品質に係る問題によって一部のお客さまに不利益が生じる事態となりました。かんぽ生命保険は、お客さまの不利益等を解消するためお客さま対応を最優先としつつ、各種再発防止策に取り組んでおりましたが、2019年12月に金融庁より、業務停止命令及び業務改善命令を受け、2020年1月に業務改善計画を金融庁に提出しました。かんぽ生命保険は、当該業務改善計画の実行を経営の最重要課題として位置づけ、お客さま本位の業務運営の徹底に向けて全社をあげて取り組んでおります。
上記のかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題に係る対応のほか、「営業におけるお客さまのニーズに対応したアフターサービスのご提供」、「新商品の販売開始」、「ICT活用によるお客さまサービス向上・事務の効率化」、「資産運用の多様化」を中心に取り組みました。
「営業におけるお客さまのニーズに対応したアフターサービスのご提供」については、ご加入いただいているお客さまにより良いサービスをご提供するため、「かんぽつながる安心活動」等を通じて、保険契約内容のご確認、ご家族登録・指定代理請求制度のご案内、保険金等の振込先口座のご指定による保険金等の確実なお支払いや各種サービスのお知らせなどに取り組みました。
「新商品の販売開始」については、2019年4月より、健康上の理由からご加入いただけなかったお客さまにも、広く保障をご提供できるよう、引受基準緩和型商品を、また経済負担の大きい先進医療にかかる費用に備えたいというお客さまニーズにお応えできるよう、無配当先進医療特約を販売開始しました。
2020年3月には、新型コロナウイルス感染症の影響拡大に伴う特別取扱いとして、普通貸付利率の減免措置等を実施し、同年4月には、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた場合についても、死亡保険金に加えて、「保険金の倍額支払」の対象として、保険金をお支払いすることとしました。
「ICT活用によるお客さまサービス向上・事務の効率化」については、2019年4月に、ご契約者さまの利便性向上のため、「いつでも、どこでも、分かりやすい」各種手続きを行っていただけるよう、ご契約者さま向けWebサービス(マイページ)のご提供を開始しました。
さらに、請求書類に必要な情報を予め印字することで、ご記入にかかるお客さまの負担を軽減する「保険手続きサポートシステム」に、新たに死亡保険金、入院保険金等の支払請求手続きを追加しました。さらに、同システムに契約情報や商品概要等を確認できる機能を追加することで、お客さまからの照会等に対し、郵便局員の迅速・正確なお答えを可能にするなど、お客さまサービスの向上を実現しました。
2019年10月には「自動査定システム」を導入し、一部の傷病の機械的な審査を可能とすることで、既存事務の効率化を進めました。
「資産運用の多様化」については、継続的な低金利環境における安定的な運用収益の確保を目指し、ALMを基本としつつ、リスクバッファーの範囲で収益追求資産へ市場環境を踏まえた選別的投資を継続しております。資産運用の多様化の推進状況としては、海外クレジットの運用拡大の一環として、米国社債の自家運用に引き続き取り組むとともに、株式の自家運用やオルタナティブ投資等についても継続しております。これら資産運用の取組みについては、ERMの枠組みのもとで財務の健全性の確保や、リスク対比リターンの向上を図っております。
これらの取組みの結果、当連結会計年度、生命保険業におきましては、保有契約の減少及び2019年7月中旬以降の積極的な営業活動の自粛及び2020年1月以降の業務停止による新契約の減少による保険料等収入の減少等により、経常収益は7,211,405百万円(前期比705,250百万円減)となりました。また、保有契約の減少及び新型コロナウイルス感染症の拡大による市場環境の悪化に伴うキャピタル損失の増加があった一方で、新契約の減少に伴う事業費等の減少や資産運用における順ざやが増加したこと等により、経常利益は286,601百万円(前期比21,731百万円増)となりました。なお、ご契約調査等によって判明したお客さまのご意向に沿わず不利益が発生した可能性のある契約について、これまでの実績に基づいて、その不利益を解消するための将来の契約措置により生じる保険金等の支払見込額等(保険金等支払引当金)を経常費用に29,722百万円計上しております。
かんぽ生命保険における保険引受及び資産運用の状況などの詳細な状況については、下記「(参考)生命保険業を行う当社の子会社であるかんぽ生命保険の状況」に記載のとおりであります。
(参考)生命保険業を行う当社の子会社であるかんぽ生命保険の状況
(下表(a)イ.~ニ.の個人保険及び個人年金保険には、かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約を含みません。)
(a) 保険引受及び資産運用の状況
イ.保有契約高明細表
区分 | 前事業年度末 | 当事業年度末 | ||
件数(千件) | 金額(百万円) | 件数(千件) | 金額(百万円) | |
個人保険 | 18,095 | 53,001,882 | 17,163 | 49,915,586 |
個人年金保険 | 1,268 | 2,329,471 | 1,164 | 1,930,642 |
(注) 個人年金保険の金額は、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金額を合計したものであります。
ロ.新契約高明細表
区分 | 前事業年度 | 当事業年度 | ||
件数(千件) | 金額(百万円) | 件数(千件) | 金額(百万円) | |
個人保険 | 1,711 | 5,563,886 | 644 | 1,893,727 |
個人年金保険 | 0 | 1,974 | 0 | 3,527 |
(注) 個人年金保険の金額は、年金支払開始時における年金原資であります。
ハ.保有契約年換算保険料明細表
(単位:百万円) | |||
区分 | 前事業年度末 | 当事業年度末 | |
個人保険 | 3,363,941 | 3,144,610 | |
個人年金保険 | 452,478 | 412,062 | |
合計 | 3,816,419 | 3,556,673 | |
うち医療保障・ 生前給付保障等 | 410,929 | 393,881 |
(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額)。
2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
ニ.新契約年換算保険料明細表
(単位:百万円) | |||
区分 | 前事業年度 | 当事業年度 | |
個人保険 | 351,398 | 146,966 | |
個人年金保険 | 171 | 314 | |
合計 | 351,570 | 147,280 | |
うち医療保障・ 生前給付保障等 | 61,618 | 22,132 |
(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額)。
2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
(参考)かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約の状況
(a) 保有契約高
区分 | 前事業年度末 | 当事業年度末 | ||
件数 (千件) | 保険金額・年金額 (百万円) | 件数 (千件) | 保険金額・年金額 (百万円) | |
保険 | 11,048 | 29,143,116 | 9,908 | 26,143,225 |
年金保険 | 1,708 | 590,874 | 1,540 | 524,117 |
(注) 計数は、郵政管理・支援機構における公表基準によるものであります。
(b) 保有契約年換算保険料
(単位:百万円) | |||
区分 | 前事業年度末 | 当事業年度末 | |
保険 | 1,313,229 | 1,174,082 | |
年金保険 | 572,367 | 511,933 | |
合計 | 1,885,597 | 1,686,015 | |
うち医療保障・ 生前給付保障等 | 342,190 | 321,656 |
(注) かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約について、上記ハ.に記載しております個人保険及び個人年金保険の保有契約年換算保険料と同様の計算方法により、かんぽ生命保険が算出した金額であります。
ホ.一般勘定資産の構成
区分 | 前事業年度末 | 当事業年度末 | ||||
金額(百万円) | 構成比(%) | 金額(百万円) | 構成比(%) | |||
現預金・コールローン | 1,061,343 | 1.4 | 1,786,640 | 2.5 | ||
買現先勘定 | - | - | - | - | ||
債券貸借取引支払保証金 | 2,792,202 | 3.8 | 3,191,710 | 4.5 | ||
買入金銭債権 | 354,958 | 0.5 | 318,581 | 0.4 | ||
商品有価証券 | - | - | - | - | ||
金銭の信託 | 2,787,555 | 3.8 | 3,056,072 | 4.3 | ||
有価証券 | 58,452,565 | 79.1 | 55,871,541 | 78.0 | ||
公社債 | 51,128,759 | 69.2 | 48,954,516 | 68.3 | ||
株式 | 206,568 | 0.3 | 286,975 | 0.4 | ||
外国証券 | 5,284,936 | 7.2 | 4,687,342 | 6.5 | ||
公社債 | 5,108,788 | 6.9 | 4,522,175 | 6.3 | ||
株式等 | 176,147 | 0.2 | 165,167 | 0.2 | ||
その他の証券 | 1,832,301 | 2.5 | 1,942,706 | 2.7 | ||
貸付金 | 6,786,074 | 9.2 | 5,662,748 | 7.9 | ||
保険約款貸付 | 144,566 | 0.2 | 152,681 | 0.2 | ||
一般貸付 | 991,309 | 1.3 | 994,446 | 1.4 | ||
機構貸付 | 5,650,198 | 7.6 | 4,515,620 | 6.3 | ||
不動産 | 91,087 | 0.1 | 89,561 | 0.1 | ||
うち投資用不動産 | - | - | - | - | ||
繰延税金資産 | 1,021,999 | 1.4 | 1,173,751 | 1.6 | ||
その他 | 557,248 | 0.8 | 517,239 | 0.7 | ||
貸倒引当金 | △459 | △0.0 | △448 | △0.0 | ||
合計 | 73,904,576 | 100.0 | 71,667,398 | 100.0 | ||
うち外貨建資産 | 5,513,137 | 7.5 | 4,980,015 | 6.9 |
(注) 1.機構貸付とは、郵政管理・支援機構(簡易生命保険勘定)への貸付であります。
2.不動産については、土地・建物・建設仮勘定を合計した金額を計上しております。
ヘ.一般勘定資産の資産別運用利回り
(単位:%) | |||
区分 | 前事業年度 | 当事業年度 | |
現預金・コールローン | 0.00 | 0.00 | |
買現先勘定 | - | - | |
債券貸借取引支払保証金 | - | - | |
買入金銭債権 | 0.23 | 0.17 | |
商品有価証券 | - | - | |
金銭の信託 | 3.31 | 1.99 | |
有価証券 | 1.42 | 1.47 | |
うち公社債 | 1.51 | 1.53 | |
うち株式 | 1.42 | 1.24 | |
うち外国証券 | 0.83 | 0.97 | |
貸付金 | 2.00 | 1.94 | |
うち一般貸付 | 1.28 | 1.12 | |
不動産 | - | - | |
一般勘定計 | 1.42 | 1.41 | |
うち海外投融資 | 0.94 | 1.21 |
(注) 1.利回り計算式の分母は帳簿価額ベースの日々平均残高、分子は経常損益中、資産運用収益-資産運用費用として算出した利回りであります。
2.一般勘定計には、有価証券信託に係る資産を含めております。
3.海外投融資とは、外貨建資産と円建資産の合計であります。
(b) 基礎利益
基礎利益は、保険料等収入、保険金等支払金、事業費等の保険関係の収支と、利息及び配当金等収入を中心とした運用関係の収支からなる、生命保険会社の基礎的な期間損益の状況を表す指標であります。
かんぽ生命保険の当事業年度における基礎利益は、4,006億円となりました。
(経常利益等の明細(基礎利益))
(単位:百万円) | |||
項目 | 前事業年度 | 当事業年度 | |
基礎利益 | (A) | 377,176 | 400,609 |
キャピタル収益 | 117,883 | 87,260 | |
金銭の信託運用益 | 78,902 | 51,560 | |
売買目的有価証券運用益 | - | - | |
有価証券売却益 | 38,981 | 35,699 | |
金融派生商品収益 | - | - | |
為替差益 | - | - | |
その他キャピタル収益 | - | - | |
キャピタル費用 | 201,626 | 189,693 | |
金銭の信託運用損 | - | - | |
売買目的有価証券運用損 | - | - | |
有価証券売却損 | 62,255 | 32,020 | |
有価証券評価損 | - | 2,689 | |
金融派生商品費用 | 73,381 | 74,799 | |
為替差損 | 1,124 | 2,085 | |
その他キャピタル費用 | 64,865 | 78,097 | |
キャピタル損益 | (B) | △83,743 | △102,433 |
キャピタル損益含み基礎利益 | (A)+(B) | 293,433 | 298,175 |
臨時収益 | 151,592 | 165,388 | |
再保険収入 | - | - | |
危険準備金戻入額 | 151,592 | 165,388 | |
個別貸倒引当金戻入額 | - | - | |
その他臨時収益 | - | - | |
臨時費用 | 179,882 | 176,734 | |
再保険料 | - | - | |
危険準備金繰入額 | - | - | |
個別貸倒引当金繰入額 | - | - | |
特定海外債権引当勘定繰入額 | - | - | |
貸付金償却 | - | - | |
その他臨時費用 | 179,882 | 176,734 | |
臨時損益 | (C) | △28,289 | △11,345 |
経常利益 | (A)+(B)+(C) | 265,143 | 286,829 |
(注) 1.金銭の信託に係るインカム・ゲインに相当する額(前事業年度:64,865百万円、当事業年度:78,097百万円)を「その他キャピタル費用」に計上し、基礎利益に含めております。
2.「その他臨時費用」には、保険業法施行規則第69条第5項の規定により責任準備金を追加して積み立てた額(前事業年度:179,882百万円、当事業年度:176,734百万円)を記載しております。
(c) かんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率
生命保険会社は将来の保険金等の支払いに備えて責任準備金を積み立てており、通常予測できる範囲のリスクについては責任準備金の範囲内で対応できます。
ソルベンシー・マージン比率とは、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つであります。
この比率が200%を下回った場合は、当局によって早期是正措置がとられます。逆にこの比率が200%以上であれば、健全性の一つの基準を満たしていることになります。
当連結会計年度末におけるかんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率は1,070.9%と高い健全性を維持しております。
(単位:百万円) | ||||
項目 | 前連結会計年度末 | 当連結会計年度末 | ||
ソルベンシー・マージン総額 | (A) | 5,647,874 | 5,161,600 | |
資本金等 | 1,631,920 | 1,639,908 | ||
価格変動準備金 | 897,492 | 858,339 | ||
危険準備金 | 1,962,755 | 1,797,366 | ||
異常危険準備金 | - | - | ||
一般貸倒引当金 | 45 | 37 | ||
(その他有価証券評価差額金(税効果控除前)・繰延ヘッジ 損益(税効果控除前))×90%(マイナスの場合100%) | 568,785 | 328,782 | ||
土地の含み損益×85%(マイナスの場合100%) | △2,336 | 19 | ||
未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の合計額 | 4,569 | 4,261 | ||
全期チルメル式責任準備金相当額超過額 | 489,649 | 442,807 | ||
負債性資本調達手段等 | 100,000 | 100,000 | ||
全期チルメル式責任準備金相当額超過額及び負債性 資本調達手段等のうち、マージンに算入されない額 | - | - | ||
控除項目 | △5,006 | △9,923 | ||
その他 | - | - | ||
リスクの合計額 [{(R12+R52)1/2+R8+R9}2+(R2+R3+R7)2]1/2+R4+R6 | (B) | 949,323 | 963,888 | |
保険リスク相当額 | R1 | 142,209 | 137,197 | |
一般保険リスク相当額 | R5 | - | - | |
巨大災害リスク相当額 | R6 | - | - | |
第三分野保険の保険リスク相当額 | R8 | 59,172 | 54,172 | |
少額短期保険業者の保険リスク相当額 | R9 | - | - | |
予定利率リスク相当額 | R2 | 141,866 | 136,652 | |
最低保証リスク相当額 | R7 | - | - | |
資産運用リスク相当額 | R3 | 763,194 | 785,317 | |
経営管理リスク相当額 | R4 | 22,128 | 22,266 | |
ソルベンシー・マージン比率 (A)/{(1/2)×(B)}×100 | 1,189.8% | 1,070.9% |
(注) 保険業法施行規則第86条の2、第88条及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
(d) かんぽ生命保険のEV
イ.EVの概要
ⅰ EVについて
エンベディッド・バリュー(以下「EV」といいます。)は対象事業に割り当てられた、資産及び負債から生じる株主への分配可能な利益の価値の見積りであります。ただし、将来の新契約から生じる価値は含みません。この価値は、修正純資産及び保有契約価値で構成されるものであります。
修正純資産は株主に帰属すると考えられる純資産(時価)であり、必要資本とフリー・サープラスで構成されるものであります。
保有契約価値は、保有契約及び保有契約に係る資産から将来発生すると見込まれる株主への分配可能な利益の評価日時点の現在価値であり、必要資本を維持するための費用等を控除したものであります。
生命保険契約は、一般に販売時に多くのコストが発生するため、一時的には損失が発生するものの、契約が継続することで、将来にわたり生み出される利益によりそのコストを回収することが期待される収支構造となっております。現行の法定会計では、このような収支構造をそのまま各年度の損益として把握しておりますが、EVは、全保険期間を通じた損益を現在価値で評価することとなるため、現行の法定会計による財務情報では不足する情報を補うことができる指標の一つと考えております。
ⅱ EEVについて
EVの開示に関する一貫性と透明性の改善を図る目的で、2004年5月にヨーロッパの主要保険会社のCFO(最高財務責任者)の集まりである、CFOフォーラムが、ヨーロピアン・エンベディッド・バリュー(以下「EEV」といいます。)原則及び指針(ガイダンス)を制定いたしました。
2016年5月には、CFOフォーラムによってEEV原則の改正が公表され、EVに2016年1月から施行された欧州ソルベンシーⅡ等の計算で用いた計算手法及び前提の使用が許容されるようになりました。
ⅲ EEVの計算手法
今回のEEVの計算には、市場整合的手法を用いております。この手法は、資産又は負債から発生するキャッシュ・フローを市場で取引されている金融商品と整合的に評価するものであります。
ロ.簡易生命保険契約について
かんぽ生命保険は、郵政民営化法に基づき、2007年10月1日に発足しました。また、2007年9月末までに契約された簡易生命保険契約は、郵政管理・支援機構に承継されるとともに、郵政管理・支援機構が負う保険責任のすべてについて、かんぽ生命保険が受再しております。
かんぽ生命保険は、郵政管理・支援機構との再保険契約において、簡易生命保険契約を他の保険契約と区分して管理すること(簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金も区分して管理すること)、簡易生命保険契約から生じた利益(危険準備金及び価格変動準備金の戻入による利益も含んでおります。)も区分して管理すること、及び郵政管理・支援機構が簡易生命保険契約に対して既に約款で約束している確定配当所要額と再保険損益(確定配当所要額及び法人税等を除いたこの区分における利益)の8割の合計額を、郵政管理・支援機構へ再保険配当として支払うことを定めております。EEVの計算においては、この郵政管理・支援機構への再保険配当を差し引いた後の利益を反映しております。
このように郵政管理・支援機構への再保険配当の原資に、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金の戻入による利益が含まれることから、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金は修正純資産には含めておらず、将来において戻入する前提で保有契約価値に含めて計算しております。
ハ.EEVの計算結果
かんぽ生命保険のEEVは以下のとおりであります。
(単位:億円) | ||||
前事業年度末 | 当事業年度末 | 増減 | ||
EEV | 39,257 | 33,242 | △6,015 | |
修正純資産 | 22,371 | 22,124 | △247 | |
保有契約価値 | 16,886 | 11,118 | △5,767 | |
前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||
新契約価値 | 2,238 | 606 | △1,631 |
ⅰ 修正純資産
修正純資産は、資産の市場価値のうち、契約者に対する負債及びその他の負債の価値を超過する部分であり、株主に帰属すると考えられる価値であります。当期純利益による増加があったものの、自己株式の取得や株主配当金の支払いを主な理由として、当事業年度末における修正純資産は前事業年度末から減少しております。修正純資産の内訳は以下のとおりであります。
(単位:億円) | ||||
前事業年度末 | 当事業年度末 | 増減 | ||
修正純資産 | 22,371 | 22,124 | △247 | |
純資産の部計(注1) | 16,755 | 16,616 | △138 | |
価格変動準備金(注2) | 2,356 | 2,263 | △93 | |
危険準備金(注2) | 4,712 | 4,766 | 54 | |
その他(注3) | 730 | 618 | △111 | |
上記項目に係る税効果 | △2,184 | △2,141 | 42 |
(注) 1.計算対象に子会社を含めているため、かんぽ生命保険の連結貸借対照表の純資産の部合計を計上しております。ただし、その他の包括利益累計額合計を除いております。また、自己株式に計上している株式給付信託が保有するかんぽ生命保険の株式の帳簿価額を加えております。
2.簡易生命保険契約に係る部分を除いております。
3.保険契約に係らない有価証券、貸付金及び不動産の含み損益、一般貸倒引当金、退職給付の未積立債務(未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異)並びに劣後債の含み損益を計上しております。
当事業年度末の修正純資産を計算する際に除いた保険契約に係る部分は以下のとおりであります。
(単位:億円) | ||||
会社合計 ① | 保険契約に 係る部分 ② | 修正純資産 ①-② | ||
修正純資産 | 94,033 | 71,909 | 22,124 | |
純資産の部計(注1) | 16,616 | ― | 16,616 | |
価格変動準備金(注2) | 8,583 | 6,319 | 2,263 | |
危険準備金(注2) | 17,973 | 13,206 | 4,766 | |
その他(注3) | 80,825 | 80,206 | 618 | |
上記項目に係る税効果 | △29,966 | △27,824 | △2,141 |
(注) 1.かんぽ生命保険の連結貸借対照表の純資産の部合計を計上しております。ただし、その他の包括利益累計額合計を除いております。また、自己株式に計上している株式給付信託が保有するかんぽ生命保険の株式の帳簿価額を加えております。
2.保険契約に係る部分(②)は、簡易生命保険契約に係る部分を計上しております。「ロ.簡易生命保険契約について」をご参照ください。
3.有価証券、貸付金及び不動産の含み損益、一般貸倒引当金、退職給付の未積立債務(未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異)並びに劣後債の含み損益を計上しております。
ⅱ 保有契約価値
保有契約価値は、保有契約の評価日時点における価値を表したもので、保有契約及び保有契約に係る資産から将来発生すると見込まれる株主への分配可能な利益を現在価値に割り引いております。「ニ.前事業年度末EEVからの変動要因」に記載のとおり、前提条件(経済前提)と実績の差異や前提条件(非経済前提)の変更を主な理由として、当事業年度末における保有契約価値は前事業年度末から減少しております。保有契約価値の内訳は以下のとおりであります。
将来利益の計算において保険契約に係る資産は簿価評価しております。また、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金が将来において戻入する前提で、その戻入による利益を含めて計算しております。「ロ.簡易生命保険契約について」をご参照ください。
(単位:億円) | ||||
前事業年度末 | 当事業年度末 | 増減 | ||
保有契約価値 | 16,886 | 11,118 | △5,767 | |
確実性等価将来利益現価 | 21,315 | 18,067 | △3,247 | |
オプションと保証の時間価値 | △2,979 | △4,560 | △1,581 | |
必要資本を維持するための費用 | △0 | △0 | △0 | |
ヘッジ不能リスクに係る費用 | △1,449 | △2,388 | △939 |
ⅲ 新契約価値
新契約価値は、当期間に獲得した新契約(医療特約の切替加入契約については正味増加分のみ)の契約獲得時点における価値を表したものであります。2019年7月中旬からの積極的な営業活動の自粛及び2020年1月以降の業務停止等により新契約が減少したことや金利が低下したことを主な理由として、当事業年度における新契約価値は前事業年度から減少しております。新契約価値の内訳は以下のとおりであります。
(単位:億円) | ||||
前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||
新契約価値 | 2,238 | 606 | △1,631 | |
確実性等価将来利益現価 | 2,399 | 701 | △1,698 | |
オプションと保証の時間価値 | △75 | △57 | 18 | |
必要資本を維持するための費用 | △0 | △0 | 0 | |
ヘッジ不能リスクに係る費用 | △85 | △37 | 48 |
なお、新契約マージン(新契約価値の保険料収入現価に対する比率)は以下のとおりであります。
(単位:億円) | |||
前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | |
新契約価値 | 2,238 | 606 | △1,631 |
保険料収入現価(注) | 37,762 | 14,868 | △22,894 |
新契約マージン | 5.93% | 4.08% | △1.85ポイント |
(注) 将来の収入保険料を、新契約価値の計算に用いたリスク・フリー・レートで割り引いております。
ニ.前事業年度末EEVからの変動要因
(単位:億円) | ||||
修正純資産 | 保有契約価値 | EEV | ||
前事業年度末EEV | 22,371 | 16,886 | 39,257 | |
① 前事業年度末EEVの調整 | △1,645 | ― | △1,645 | |
前事業年度末EEV(調整後) | 20,725 | 16,886 | 37,612 | |
② 当事業年度新契約価値 | ― | 606 | 606 | |
③ 期待収益(リスク・フリー・レート分) | △29 | 683 | 653 | |
④ 期待収益(超過収益分) | 40 | 519 | 560 | |
⑤ 保有契約価値からの移管 | 1,199 | △1,199 | ― | |
うち前事業年度末保有契約 | 1,335 | △1,335 | ― | |
うち当事業年度新契約 | △136 | 136 | ― | |
⑥ 前提条件(非経済前提)と実績の差異 | 289 | △402 | △112 | |
⑦ 前提条件(非経済前提)の変更 | ― | △2,768 | △2,768 | |
⑧ 前提条件(経済前提)と実績の差異 | △101 | △3,206 | △3,308 | |
当事業年度末EEV | 22,124 | 11,118 | 33,242 |
ⅰ 前事業年度末EEVの調整
かんぽ生命保険は当事業年度において645億円の株主配当金を支払うとともに、999億円の自己株式の取得を行っており、修正純資産がその分減少しております。
ⅱ 当事業年度新契約価値
新契約価値は、当事業年度に新契約を獲得したことによる契約獲得時点における価値を表したものであり、契約獲得に係る費用を控除した後の金額が反映されております。
ⅲ 期待収益(リスク・フリー・レート分)
保有契約価値の計算にあたっては、将来の期待収益をリスク・フリー・レートで割り引いておりますので、時間の経過とともに割引の影響が解放されます。これには、オプションと保証の時間価値、必要資本を維持するための費用及びヘッジ不能リスクに係る費用のうち当事業年度分の解放を含んでおります。修正純資産からは、対応する資産からリスク・フリー・レート(△0.178%)分に相当する収益が発生しております。
ⅳ 期待収益(超過収益分)
EEVの計算にあたっては、将来の期待収益としてリスク・フリー・レートを用いておりますが、実際の会社はリスク・フリー・レートを超過する利回りを期待しております。この項目は、その期待される超過収益を表しております。
ⅴ 保有契約価値からの移管
当事業年度に実現が期待されていた利益が、保有契約価値から修正純資産に移管されます。これには、前事業年度末の保有契約から期待される当事業年度の利益と、当事業年度に獲得した新契約からの、契約獲得に係る費用を含めた当事業年度の損益が含まれております。
これらは保有契約価値から修正純資産への振替えであり、EEVの金額には影響しません。
ⅵ 前提条件(非経済前提)と実績の差異
前事業年度末の保有契約価値の計算に用いた前提条件(非経済前提)と、当事業年度の実績の差額であります。
ⅶ 前提条件(非経済前提)の変更
前提条件(非経済前提)を更新したことにより、翌事業年度以降の収支が変化することによる影響であります。このうち、将来の事業費前提の変更により3,517億円減少し、失効解約率の前提変更により511億円増加しております。
事業費前提については直近の実績を織り込むとともに、会社全体(簡易生命保険契約を含む)の保有契約量が減少基調にあることから、事業費率の上昇を見込んで設定しております。将来の保有契約量の前提を、前事業年度末のEEVでは過去の実績から設定しておりましたが、当事業年度末のEEVでは募集品質問題(注1)に係る評価日時点での状況を踏まえて設定したため、将来の保有契約量の見込みが減少することとなり、前提となる事業費率が上昇しております。
また、前事業年度末のEEVでは乗換による影響を含めて失効解約率を設定しておりましたが、当事業年度末のEEVでは、業務改善計画(注2)において、契約乗換への対策を行うこと、条件付解約等制度や契約転換制度を導入することが決定しているため、失効解約率設定時に乗換による影響を除外し、前提となる失効解約率が低下しております。なお、今後、条件付解約等制度や契約転換制度を活用した解約の影響も、乗換同様に失効解約率設定時に除外することを予定しておりますが、同時に新契約価値については正味増加分のみを評価することを予定しております。従って、失効解約率前提の設定において乗換による影響を除外することによる価値の変動は当事業年度限りとなります。
(注) 1.上記「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しているかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題とその取組み等。
2.上記「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 「業務改善計画の進捗状況」」に記載している適正な業務運営を確保し、保険契約者の保護を図るための改善計画。
ⅷ 前提条件(経済前提)と実績の差異
市場金利やインプライド・ボラティリティ等の経済前提が、前事業年度末EEV計算に用いたものと異なることによる影響であります。当該影響は、当事業年度の実績及び翌事業年度以降の見積りの変更を含んでおります。
主に為替変動リスクのヘッジに伴う金融派生商品費用の発生により、修正純資産は101億円減少しております。
主に国内金利の変動や株価の下落により、保有契約価値は3,206億円減少しております。
ホ.感応度(センシティビティ)
前提条件を変更した場合のEEVの感応度は以下のとおりであります。感応度は、一度に1つの前提のみを変化させることとしており、同時に2つの前提を変化させた場合の感応度は、それぞれの感応度の合計とはならないことにご注意ください。
(単位:億円) | ||
前提条件 | EEV | 増減額 |
当事業年度末EEV | 33,242 | ― |
感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇 | 36,777 | 3,534 |
感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下 | 29,308 | △3,934 |
感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし) | 27,696 | △5,545 |
感応度4:株式・不動産価値10%下落 | 32,050 | △1,192 |
感応度5:事業費率(維持費)10%減少 | 35,871 | 2,629 |
感応度6:解約失効率10%減少 | 33,218 | △24 |
感応度7:保険事故発生率(死亡保険)5%低下 | 34,658 | 1,416 |
感応度8:保険事故発生率(年金保険)5%低下 | 31,651 | △1,591 |
感応度9:必要資本を法定最低水準に変更 | 33,242 | 0 |
感応度10:株式・不動産のインプライド・ボラティリティ25%上昇 | 32,087 | △1,154 |
感応度11:金利スワップションのインプライド・ボラティリティ25%上昇 | 32,521 | △721 |
感応度1から4について、修正純資産の増減額は以下のとおりであります。また、感応度5から11については、保有契約価値のみの増減額となります。
(単位:億円) | ||
前提条件 | 増減額 | (参考) 会社合計の 増減額(注) |
感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇 | △733 | △24,054 |
感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下 | 192 | 11,367 |
感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし) | 773 | 26,186 |
感応度4:株式・不動産価値10%下落 | △64 | △1,830 |
(注) 参考値として、保有契約に係る資産の含み損益も加えた増減額(税引後に換算)を示しております。なお、EEVの計算にあたって、保険契約に係る部分の資産の含み損益については、修正純資産ではなく、保有契約価値の計算に含めて評価しております。
新契約価値の感応度
(単位:億円) | ||
前提条件 | 新契約価値 | 増減額 |
当事業年度新契約価値 | 606 | ― |
感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇 | 787 | 181 |
感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下 | 410 | △195 |
感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし) | 340 | △265 |
感応度4:株式・不動産価値10%下落 | 606 | ― |
感応度5:事業費率(維持費)10%減少 | 658 | 52 |
感応度6:解約失効率10%減少 | 633 | 26 |
感応度7:保険事故発生率(死亡保険)5%低下 | 660 | 54 |
感応度8:保険事故発生率(年金保険)5%低下 | 606 | △0 |
感応度9:必要資本を法定最低水準に変更 | 606 | 0 |
感応度10:株式・不動産のインプライド・ボラティリティ25%上昇 | 600 | △5 |
感応度11:金利スワップションのインプライド・ボラティリティ25%上昇 | 615 | 8 |
ⅰ 感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp上昇した場合の影響を表しております。金利の変動により時価が変動する債券・貸付金等を再評価するとともに、将来の運用利回りや割引率を変動させて保有契約価値を再計算しております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅱ 感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp低下した場合の影響を表しております。なお、リスク・フリー・レートが0%を下回る場合は0%としております。ただし、50bp低下前のリスク・ フリー・レートが0%を下回る場合はその値をそのまま使用しております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅲ 感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし)
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp低下した場合の影響を表しております。なお、感応度2と異なり、リスク・フリー・レートの正負を判定せず、下限を設けずに50bp低下させております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅳ 感応度4:株式・不動産価値10%下落
株式及び不動産の評価日時点の価格が10%下落した場合の影響を表しております。
ⅴ 感応度5:事業費率(維持費)10%減少
事業費率(契約維持に係るもの)が10%減少した場合の影響を表しております。
ⅵ 感応度6:解約失効率10%減少
解約失効率が10%減少(基本となる解約失効率に90%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅶ 感応度7:保険事故発生率(死亡保険)5%低下
死亡保険について、保険事故発生率(死亡率・罹患率)が5%低下(基本となる保険事故発生率に95%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅷ 感応度8:保険事故発生率(年金保険)5%低下
年金保険について、保険事故発生率が5%低下(基本となる保険事故発生率に95%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅸ 感応度9:必要資本を法定最低水準に変更
必要資本を法定最低水準(ソルベンシー・マージン比率200%水準)に変更した場合の影響を表しております。
ⅹ 感応度10:株式・不動産のインプライド・ボラティリティ25%上昇
オプションと保証の時間価値の計算に使用する、株式オプションのインプライド・ボラティリティが25%上昇した場合の影響を表しております。
ⅺ 感応度11:金利スワップションのインプライド・ボラティリティ25%上昇
オプションと保証の時間価値の計算に使用する、金利スワップションのインプライド・ボラティリティが25%上昇した場合の影響を表しております。
ヘ.注意事項
EEVの計算においては、リスクと不確実性を伴う将来の見通しを含んだ多くの前提条件を使用し、それらの多くは個別会社の管理能力を超えた領域に属するものであります。また、将来の実績がEEVの計算に使用した前提条件と大きく異なる場合もあり得ます。
また、EEVの計算において新型コロナウイルス感染症の潜在的な影響を直接的には考慮しておりません。
これらの理由により、本EEV開示は、EEV計算に用いられた将来の税引後利益が達成されることを表明するものではなく、使用にあたっては、十分な注意を払っていただく必要があります。
ト.その他の特記事項
かんぽ生命保険では、保険数理に関する専門知識を有する第三者機関(アクチュアリー・ファーム)に、EEVについて検証を依頼し、意見書を受領しております。
⑥ その他
上記各報告セグメントにおける事業のほか、病院事業については、地域医療機関との連携や救急患者の受入の強化等による増収対策、業務の効率化等による経費削減、また、経営改善が見込めない逓信病院(3カ所※)を譲渡する等、個々の病院の状況を踏まえた経営改善を進めているところであり、営業収益14,047百万円(前期比2,709百万円減)、営業損失3,364百万円(前期は5,361百万円の営業損失)となりました。今後も引き続き上記増収対策や経費削減等、個々の病院の状況を踏まえた経営改善に取り組みます。
また、宿泊事業については、営業推進態勢の強化やサービス水準向上による魅力ある宿づくりを継続的に進めるとともに、費用管理による経費削減等の経営改善に取り組んでいるところですが、2018年10月に「ホテル メルパルク」の賃貸借、管理業務を当社の子会社である日本郵政不動産株式会社へ移管したことや台風等の自然災害、一部施設の営業終了、新型コロナウイルス感染症等の影響もあり、営業収益19,005百万円(前期比4,935百万円減)、営業損失6,379百万円(前期は3,757百万円の営業損失)となりました。今後、法人営業活動の充実、外部のWebサイトの活用強化等による増収施策、食材等原価管理の徹底、業務フローの効率化等の生産性向上施策を着実に実施することにより、経営改善に取り組みます。
不動産事業については、当社の子会社である日本郵政不動産株式会社において「ホテル メルパルク」の賃貸・管理事業を行うとともに、グループ外不動産である(仮称)赤坂二丁目計画等やグループ保有不動産である蔵前不動産開発(オフィス、高齢者施設、賃貸住宅、物流施設他)、五反田不動産開発(オフィス、ホテル、ホール他)等に当連結会計年度に9,785百万円の投資を行いました。今般の新型コロナウイルス感染症の拡大の影響によるテナント賃料の減額、開発中の案件における竣工時期の遅延等も想定されますので、今後のマーケットへの影響、動向を引き続き注視し、必要な対策を適時適切に実施しつつ、不動産事業を慎重に進めてまいります。
投資事業については、日本郵政グループの新規事業の種を探すため、ネットワーク、ブランド力等を活用して成長が期待できる企業への出資(当連結会計年度に21件、約8,797百万円)を行い、出資先企業と当社グループとの連携を進めました。今後も、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大の影響など、投資先の事業環境の変化による投資先の価値や将来の成長性を見極めながら、出資等に取り組みます。
※ 2019年4月 富山逓信病院、名古屋逓信病院、福岡逓信病院
(3) キャッシュ・フローの状況及び分析・検討
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は当期首から1,443,568百万円増加し、53,603,857百万円となりました。
① 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動においては、銀行業における資金の運用や調達、生命保険業における保険料の収入や保険金の支払等の結果、305,850百万円の収入(前期比3,915,650百万円の収入増)となりました。
主な要因として、コールマネー等の増加3,286,253百万円、責任準備金の減少2,767,383百万円があげられます。
② 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動においては、銀行業及び生命保険業における有価証券の売却、償還による収入等及び有価証券の取得による支出等の結果、1,040,484百万円の収入(前期比4,145,558百万円の収入減)となりました。
主な要因として、有価証券の償還による収入22,959,251百万円や有価証券の売却による収入3,605,937百万円、有価証券の取得による支出25,138,744百万円があげられます。
③ 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動においては、子会社株式の一部売却等の結果、99,003百万円の収入(前期比210,260百万円の収入増)となりました。
主な要因として、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の売却による収入322,539百万円、配当金の支払額202,271百万円があげられます。
④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
中期経営計画において、お客さま満足向上、営業力向上、業務効率化など経営基盤強化に資するインフラ整備を推進するため、郵便・物流事業や金融窓口事業における局舎等工事、金融窓口事業における不動産開発、国際物流事業における貨物船の建造、銀行業におけるATMの購入、生命保険業における次期オープン系システムの構築等への投資を計画しております。
また、上記の他に、「トータル生活サポート企業グループ」としてグループの成長につながるよう、当社グループ・グループ各社の企業価値向上に資する幅広い分野での資本提携やM&Aも、投資判断基準等に照らして慎重に検討し、適切と判断したものを実施することとしております。
その財源は、既存のキャッシュ・フローのほか、潤沢な借入余力を活かした借入金や金融2社株式を売却した場合の売却手取金を想定しています。
なお、現在予定している設備の新設計画としては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備等の新設等」の記載をご参照ください。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。
当社グループは、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
特に以下の重要な会計上の見積りが当社グループの連結財務諸表に大きな影響を及ぼす可能性があると考えております。
① 金融商品の時価評価
当社グループの有価証券の一部及びデリバティブ取引は、時価法に基づいて評価しております。時価は、市場価格に基づいて算定しておりますが、市場価格がない場合には合理的な見積りに基づいて算定された価額によっております。
一部の金融商品の時価算定には一定の前提条件を採用しているため、予測不能な前提条件の変化により、金融商品の評価に関する見積りが変動する可能性があります。
金融商品の時価の算定方法は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(金融商品関係)及び(デリバティブ取引関係)に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う金融市場の混乱が継続する場合、金融商品の時価算定における一定の前提条件に影響が及び、翌連結会計年度の経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
② 有価証券の減損
当社グループの金銭の信託で運用する有価証券を含め売買目的有価証券以外の有価証券のうち、時価又は実質価額が著しく下落したものについては合理的な基準に基づいて減損処理を行っております。株式市場の悪化等、将来の金融市場の状況によっては、多額の減損損失を計上する可能性があります。
③ 固定資産の減損
当社グループは、原則として内部管理上独立した業績報告が行われる単位を基礎として、資産のグルーピングを行っております。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としております。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき合理的に算定しております。
固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件が変更された場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
④ 繰延税金資産の回収可能性の評価
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の判断に際しては、将来の課税所得を合理的に見積っております。
繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、将来、当社グループを取り巻く経営環境に大きな変化があった場合等、その見積額が変動した場合は、繰延税金資産の回収可能性が変動する可能性があります。
⑤ 責任準備金の積立方法
当社グループは、保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金を積み立てております。
責任準備金の計算に使用される予定死亡率、予定利率及び予定事業費率などの基礎率は合理的であると考えておりますが、実際の結果が著しく乖離した場合や環境の変化により将来乖離が見込まれる場合には、責任準備金の金額に影響を及ぼす可能性があります。
なお、責任準備金の積立方法は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。
⑥ 退職給付債務及び退職給付費用
当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、割引率など将来の退職給付債務算出に用いる数理計算上の前提条件に基づいて算出しております。
このため、実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件の変更が行われた場合には、将来の退職給付債務及び退職給付費用が変動する可能性があります。
なお、退職給付債務等の計算の基礎に関する事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(退職給付関係)に記載のとおりであります。
⑦ 保険金等支払引当金の計上基準
当社グループの保険金等支払引当金は、お客さまのご意向確認等の実績を踏まえて、お客さまの利益を回復するための将来の契約措置により生じる保険金等の支払見込額等を合理的に見積り計上しております。保険金等支払引当金の計上等に係る詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(追加情報)の(保険契約に係るご契約調査及び改善に向けた取組)に記載しております。
将来、見積りに影響する新たな事実の発生等により、保険金等支払引当金の計上額が当初の見積額から変動する可能性があります。
なお、保険金等支払引当金の計上基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。
(5) 連結自己資本比率の状況
銀行持株会社としての当社の連結自己資本比率は、銀行法第52条の25の規定に基づき、銀行持株会社が銀行持株会社及びその子会社の保有する資産等に照らしそれらの自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第20号)に定められた算式に基づき、連結ベースについて算出しております。
なお、当社は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
連結自己資本比率(国内基準)
(単位:億円、%) | |
当連結会計年度末 | |
1.連結自己資本比率(2/3) | 17.66 |
2.連結における自己資本の額 | 110,000 |
3.リスク・アセット等の額 | 622,703 |
4.連結総所要自己資本額 | 24,908 |
(注) 連結総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
(6) 連結ソルベンシー・マージン比率の状況
保険持株会社としての当社の連結ソルベンシー・マージン比率は、保険業法施行規則第210条の11の3、第210条の11の4及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
ソルベンシー・マージン比率とは、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つであります。
この比率が200%を下回った場合は、当局によって早期是正措置がとられます。逆にこの比率が200%以上であれば、健全性の一つの基準を満たしていることになります。
当連結会計年度末における連結ソルベンシー・マージン比率は、554.2%となりました。
項目 | 前連結会計年度末 (百万円) | 当連結会計年度末 (百万円) | |||
ソルベンシー・マージン総額 | (A) | 19,013,897 | 16,096,056 | ||
資本金等 | 11,979,784 | 12,371,213 | |||
価格変動準備金 | 897,492 | 858,339 | |||
危険準備金 | 1,962,755 | 1,797,366 | |||
異常危険準備金 | ― | ― | |||
一般貸倒引当金 | 360 | 372 | |||
(その他有価証券評価差額金(税効果控除前)・繰延ヘッジ損益 (税効果控除前))×90%(マイナスの場合100%) | 3,164,450 | △54,289 | |||
土地の含み損益×85%(マイナスの場合100%) | 162,606 | 368,660 | |||
未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の合計額(税効果控除前) | 257,681 | 212,645 | |||
負債性資本調達手段、保険料積立金等余剰部分 | 589,649 | 542,807 | |||
保険料積立金等余剰部分 | 489,649 | 442,807 | |||
負債性資本調達手段等 | 100,000 | 100,000 | |||
不算入額 | ― | ― | |||
少額短期保険業者に係るマージン総額 | ― | ― | |||
控除項目 | △882 | △1,059 | |||
その他 | ― | ― | |||
リスクの合計額 [{(R12+R52)1/2+R8+R9}2+(R2+R3+R7)2]1/2+R4+R6 | (B) | 5,669,162 | 5,808,221 | ||
保険リスク相当額 | R1 | 142,209 | 137,197 | ||
一般保険リスク相当額 | R5 | ― | ― | ||
巨大災害リスク相当額 | R6 | ― | ― | ||
第三分野保険の保険リスク相当額 | R8 | 59,172 | 54,172 | ||
少額短期保険業者の保険リスク相当額 | R9 | ― | ― | ||
予定利率リスク相当額 | R2 | 141,866 | 136,652 | ||
最低保証リスク相当額 | R7 | ― | ― | ||
資産運用リスク相当額 | R3 | 5,233,052 | 5,398,528 | ||
経営管理リスク相当額 | R4 | 290,473 | 269,733 | ||
ソルベンシー・マージン比率 (A)/{(1/2)×(B)}×100 | 670.7% | 554.2% |
(注) 保険業法施行規則第210条の11の3、第210条の11の4及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
(7) 目標とする経営指標の達成状況
当社グループにおいては、主要な経営目標として1株当たり当期純利益を採用しており、2020年3月期においては当初業績予想103.87円に対し1株当たり当期純利益119.64円となりました。2020年3月期の経営成績の状況及び分析・検討については、上記「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営成績の状況及び分析・検討」に示しております。
(8) 生産、受注及び販売の状況
当社グループは、郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業、銀行業及び生命保険業を中心とした広範囲な事業を営んでおり、生産、受注といった区分による表示が困難であることから、「生産、受注及び販売の状況」については、上記「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営成績の状況及び分析・検討」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。