訂正有価証券報告書-第16期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態の状況及び分析・検討
当連結会計年度末の資産、負債及び純資産の状況は以下のとおりであります。
資産の部合計は、前連結会計年度末比11,639,681百万円増の297,738,131百万円となりました。
主な要因は、銀行業等における現金預け金9,038,728百万円の増、銀行業及び生命保険業等における金銭の信託2,225,782百万円の増、有価証券2,576,439百万円の増の一方、銀行業及び生命保険業における債券貸借取引支払保証金719,115百万円の減、貸出金968,670百万円の減によるものです。
負債の部合計は、前連結会計年度末比8,185,389百万円増の281,667,063百万円となりました。
主な要因は、銀行業における貯金6,606,901百万円の増、銀行業等における借用金3,925,980百万円の増の一方、生命保険業における責任準備金2,895,445百万円の減、銀行業及び生命保険業における債券貸借取引受入担保金417,512百万円の減によるものです。
純資産の部合計は、前連結会計年度末比3,454,292百万円増の16,071,067百万円となりました。
主な要因は、銀行業及び生命保険業等におけるその他有価証券評価差額金2,598,250百万円の増、非支配株主持分594,083百万円の増の一方、銀行業及び生命保険業等における繰延ヘッジ損益37,452百万円の減、国際物流事業における為替換算調整勘定14,734百万円の減によるものです。
各事業セグメント別の資産の状況は以下のとおりであります。
① 郵便・物流事業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比5,352百万円増の2,029,293百万円となりました。
主な要因は、荷物分野の収益拡大に伴う営業キャッシュ・フローの増加等により現金預け金が56,617百万円増加した一方、減価償却等により建物等の有形固定資産が44,491百万円減少したことによるものです。
② 金融窓口事業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比26,267百万円増の2,622,782百万円となりました。
主な要因は、現金預け金が9,800百万円増加したことや、不動産開発物件に係る建設仮勘定の計上等により建物等の有形固定資産が20,883百万円増加したことによるものです。
③ 国際物流事業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比36,258百万円減の529,536百万円となりました。
主な要因は、トール社のエクスプレス事業の売却決定に伴う減損処理等により有形固定資産が31,238百万円減少したことによるものです。
④ 銀行業
当連結会計年度末のセグメント資産は、有価証券で保有する投資信託及び預け金等の増加を主因として、前連結会計年度末比12,959,721百万円増の223,870,630百万円となりました。
主な要因は、貸出金が270,009百万円減少した一方、現金預け金が9,104,235百万円増加、金銭の信託が997,837百万円増加、有価証券が2,999,675百万円増加したことによるものです。
⑤ 生命保険業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比1,491,799百万円減の70,172,982百万円となりました。
主な要因は、保有契約の減少に伴い保険契約準備金が減少したことに対応し、有価証券が596,946百万円減少、貸付金が698,661百万円減少したことによるものです。
(2) 経営成績の状況及び分析・検討
当連結会計年度、当社グループは、かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題につきまして、2020年1月に策定した業務改善計画をもとに、各種施策に取り組みました。同計画のうち主要施策については、外部専門家の方々で構成された、各種取組みを公正・中立な立場から検証するJP改革実行委員会(同年4月設置)のモニタリングを受けながら、お客さまからの信頼回復に向けて改善策を実行してまいりました。同年9月には、「お客さまの信頼回復に向けた約束」を策定し、同年10月からは、信頼回復に向けた業務運営を開始し、お客さまにご迷惑・ご心配をおかけしたことのお詫びと「お客さまの信頼回復に向けた約束」のご説明を行うとともに、金融商品のアフターフォローに最優先で取り組み、お客さまのご不安や疑問点の解消を図りました。
そして、信頼回復に向けた業務運営を継続する中で、お客さまの想定されるニーズの確認を行いながら、お客さまニーズに応じた金融商品の情報提供やご提案を実施することで、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタンスへ移行することとしました。
また、ゆうちょ銀行の即時振替サービスの不正利用事案等に関し、2021年1月にJP改革実行委員会から受領した「株式会社ゆうちょ銀行のガバナンス等に係る検証報告書」において、ガバナンス強化に向けた改善策に係る提言を受けており、提言事項への対応に取り組んでおります。
当社におきましては、持株会社として、当社グループの企業価値向上を目指し、グループ各社の収益拡大や経営効率化等を着実に推進するとともに、郵便、貯金及び保険のユニバーサルサービスの確保、郵便局ネットワークの維持・活用による安定的なサービスの提供等という目的が達成できるよう、グループ運営に取り組みました。
また、グループ各社のコンプライアンス・プログラムの策定・推進の状況、各社の内部監査態勢・監査状況の把握に努めたほか、集約により効率性が高まる間接業務をグループ各社から受託するとともに、病院及び宿泊事業の経営改善に取り組みました。
さらに、日本郵便と楽天株式会社(現・楽天グループ株式会社)は、物流領域における戦略的提携に向けて2020年12月に基本合意書を締結しました。2021年3月には、お客さまの利便性の向上、地域社会への貢献、そして事業の拡大のため、物流・モバイル・DX(デジタルトランスフォーメーション)※など様々な領域での連携を強化することを目的に、当社、日本郵便、楽天株式会社による業務提携合意書を締結しました。また、当社は、両社グループ間の関係を強化するため、楽天株式会社への出資を行いました。
加えて、グループ各社が提供するサービスの公益性・公共性の確保や、持続可能な社会の実現・未来の創造に貢献するため、国連で採択された国際目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」を踏まえたESG(環境、社会、ガバナンス)に関する取組みやCSR活動・災害復興支援に、グループ一丸となって取り組んでまいりました。また、新型コロナウイルス感染症対策については、お客さまと社員の安全を確保するため、郵便物等の非対面配達、窓口へのビニールカーテンの取り付けのほか、一部の郵便局・ゆうちょ銀行直営店の営業時間の短縮等を実施しました。
※ DXとは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することです。
これらの取組みの結果、当連結会計年度における連結経常収益は11,720,403百万円(前期比229,782百万円減)、連結経常利益は914,164百万円(前期比49,706百万円増)、連結経常利益に、特別損益や契約者配当準備金繰入額等を加減した親会社株主に帰属する当期純利益は、418,238百万円(前期比65,494百万円減)となりました。
なお、国際物流事業セグメントのエクスプレス事業について、2021年4月21日にAllegro Funds Pty Ltdの傘下企業に譲渡する契約を締結いたしました。本件譲渡に伴い、当連結会計年度において、特別損失として674億円(減損損失619億円、その他の特別損失54億円)を計上しております。
また、当社が保有するゆうちょ銀行の株式について減損処理による関係会社株式評価損2,229,538百万円を計上したこと等により、当社単体では2,129,989百万円の当期純損失となっております。なお、当該関係会社株式評価損は、連結決算においては消去されるため、連結業績への影響はありません。
経営成績の詳細な状況は、各事業セグメントごとに記載しております。各事業セグメントごとの経営成績の状況は、以下のとおりであります。
① 郵便・物流事業
郵便・物流事業につきましては、年賀状を始めとしたスマートフォン等を使ったSNS連携サービスや手紙の楽しさを伝える活動の展開等により、郵便の利用の維持を図るとともに、eコマース市場の拡大による荷物需要の増加に対応するため、専用箱を使用して郵便ポストから差し出すことができる「ゆうパケットポスト」の取扱いを開始したほか、個人間ECサイトで取引した荷物を店頭に並ぶことなく発送できる「スマリボックス」の取扱い拡大や、キャッシュレス決済導入局の拡大など、差出・受取利便性の高いサービスを提供するとともに、お客さまの課題解決に向けた提案を行うことにより収益の拡大を図りました。
オペレーション面では、お客さまの利便性向上のほか、業務効率向上や不在再配達率の削減に向け、置き配の普及・拡大等を進めるとともに、業務量に応じた担務別人件費・要員マネジメントの高度化や集配委託費も含めた、トータルコストコントロールに取り組みました。
また、テレマティクス端末(移動体通信システムを利用したサービス)を活用し、安全推進や業務の適正化を進めました。そのほか、配達業務支援システムの導入による荷物配達業務の高度化(一部の郵便局に限る)や、音声認識AIによる再配達依頼の自動受付(全郵便局)を開始するなど、先端技術の活用に向けた取組みを進めました。
さらに、2020年12月に郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律が公布され、日本郵便として各種サービスの見直しに向けた準備を進めました。
あわせて、「コンプライアンスは経営上の最重要課題」との基本的考え方に基づき、郵便物等の放棄・隠匿を含む部内犯罪の根絶、料金不適正収納の根絶、顧客情報の保護等に取り組みました。
また、日本郵便(単体)における当事業年度の総取扱物数は、郵便物が152億4,403万通(前期比6.8%減)、ゆうメールが32億9,931万個(前期比7.5%減)、ゆうパックが10億9,079万個(前期比11.9%増)(うち、ゆうパケットが4億9,666万個(前期比16.1%増))となりました。
当連結会計年度、郵便・物流事業におきましては、巣ごもり消費増加等に伴うEC利用拡大によりゆうパックが増加し、荷物が増収となったものの、国際郵便、普通郵便等の減少による減収を補うには至らず経常収益は2,071,877百万円(前期比56,310百万円減)、経常利益は126,587百万円(前期比22,598百万円減)となりました。なお、日本郵便の当連結会計年度における郵便・物流事業の営業収益は2,068,426百万円(前期比56,887百万円減)、営業利益は123,716百万円(前期比23,788百万円減)となりました。
引受郵便物等の状況
(注) 1.第一種郵便物、第二種郵便物、第三種郵便物及び第四種郵便物の概要/特徴は、以下のとおりであります。
2.年賀は、年賀郵便物(年賀特別郵便(取扱期間12/15~12/28)及び12/29~1/7に差し出された年賀はがきで消印を省略したもの)の物数であります。
3.選挙は、公職選挙法に基づき、公職の候補者又は候補者届出政党から選挙運動のために差し出された通常はがきの物数であります。別掲で示しております。
4.特殊は、速達、書留、特定記録、本人限定受取等の特殊取扱(オプションサービス)を行った郵便物の物数の合計であります。交付記録郵便物用特定封筒(レターパックプラス)及び電子郵便(レタックス、Webゆうびん、e内容証明)を含んでおります。
5.国際通常郵便物の前事業年度の対前期比は、2019年4月に集計方法の変更を行う前の年度の通数との比較を表しているものです。
6.ゆうパックは、一般貨物法制の規制を受けて行っている宅配便の愛称であります。配送中は、追跡システムにより管理をしております。
7.ゆうパケットは、一般貨物法制の規制を受けて行っている宅配便の愛称であります。小型の荷物をお届けするもので、ゆうパックより安値でポスト投函も可能な商品であります。配送中は、追跡システムにより管理をしております。
8.ゆうメールは、一般貨物法制の規制を受けて行っている1kgまでの荷物の愛称であります。主に冊子とした印刷物やCD・DVDなどをお届けするもので、ゆうパックより安値でポスト投函も可能な商品であります。
② 金融窓口事業
金融窓口事業につきましては、2019年度、かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題が判明し、郵便局等での営業を自粛していたかんぽ生命保険商品、投資信託、提携金融商品(変額年金保険・引受条件緩和型医療保険・傷害保険)について、信頼回復に向けた業務運営を行うことから始めることとし、2020年10月以降、その取組みを進めました。
具体的には、郵便局等へのポスター掲出の他、お客さまに約束チラシをお渡しし、会社としてのお詫びと「お客さまの信頼回復に向けた約束」を遵守していくことをご説明しました。あわせて、かんぽご契約内容確認活動、投資信託・変額年金保険のアフターフォローに最優先で取り組み、既契約のお客さまのご不安や疑問点の解消に取り組みました。
また、不適正募集の根絶に向け、お申込みから契約締結までの重層的なチェックの実施、適正な募集管理のための体制等の強化、事故判定と処分基準の厳格化等によるけん制、内部監査部門の強化等に取り組みました。あわせて、お客さま本位の営業活動や総合的なコンサルティングサービスに寄与する各種研修を実施してきたほか、管理者に対し、新たなマネジメントの在り方、コーチングを取り入れた管理・指導手法を習得する研修も行いました。
そのほか、郵便局のショッピングセンター内等への新規出店や既存店舗の配置の見直し等を通じ、郵便局ネットワークの最適化にも取り組んできたほか、その価値を高めるため、地方公共団体事務の包括受託や郵便局窓口における地域金融機関の手続事務の受付、駅と郵便局の一体的な運営等、地方公共団体や他企業と連携しながら、地域やお客さまニーズに応じた個性・多様性ある郵便局の展開を進めました。
あわせて、「コンプライアンスは経営上の最重要課題」との基本的考え方に基づき、前述の保険募集の問題に取り組んだほか、顧客情報の保護、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策等に取り組みました。また、部内犯罪の根絶にも取り組んでいるところですが、長崎県で発覚した現金詐取事案を始めとする、管理社員による高額犯罪が発生したことが発覚したため、引き続き適切な再発防止策を講じ、全力で取り組んでまいります。
また、不動産事業においては、JPタワー等による事務所、商業施設、住宅や保育施設等の賃貸事業等を行いました。不動産事業における主なプロジェクトの概要は以下のとおりです。
(注) 2021年3月31日時点
これらの取組みの結果、当連結会計年度、金融窓口事業におきましては、かんぽ生命保険の商品の積極的な提案を控えたことによる保険手数料の大幅な減収等により、経常収益は1,245,179百万円(前期比54,751百万円減)、経常利益は38,796百万円(前期比6,290百万円減)となりました。なお、日本郵便の当連結会計年度における金融窓口事業の営業収益は1,243,466百万円(前期比55,307百万円減)、営業利益は37,727百万円(前期比6,871百万円減)となりました。
郵便局数
③ 国際物流事業
国際物流事業につきましては、日本郵便の子会社であるトール社の経営改善の取組みを継続しました。
また、引き続き、JPトールロジスティクス株式会社を活用し、コントラクトロジスティクス※1を中心とした BtoB 事業※2の拡大に取り組みました。
豪州経済の減速等によって赤字が継続していたエクスプレス事業※3は、2021年3月期においても新型コロナウイルス感染症やサイバー攻撃等の影響もあり、厳しい経営環境が続く中、トール社において売却の検討を行ってまいりましたが、2021年4月21日、Allegro Funds Pty Ltdの傘下企業との間で譲渡契約を締結いたしました。本件譲渡に必要な手続きの完了は2021年7月末となる見込みであります。なお、本件譲渡に伴い、当社グループは、当連結会計年度において、特別損失として674億円(減損損失619億円、その他の特別損失54億円)を計上しております。
※1 コントラクトロジスティクスとは、売買に関与しない第三者が特定の荷主顧客と契約を結び、輸送や在 庫・配送業務の効率運営を図るサービスのことです。
※2 BtoB 事業とは、Business-to-Businessの略で、企業間の商取引、企業が企業向けに行う事業のことです。
※3 エクスプレス事業とは、豪州及びニュージーランド国内におけるネットワークを活用して道路、鉄道、 海上及び航空貨物輸送サービスを提供する事業のことです。
これらの取組みの結果、当連結会計年度、国際物流事業におきましては、エクスプレス事業は減収になったものの、ロジスティクス事業アジア部門における新型コロナウイルス感染予防対策物資の大口取扱いにより増収となり、また経常費用は、コスト削減等により経常収益の増加を下回ったため、経常収益は750,069百万円(前期比114,874百万円増)、経常損失は7,003百万円(前期は21,447百万円の経常損失)となりました。なお、日本郵便の当連結会計年度における国際物流事業については、営業収益は749,878百万円(前期比114,923百万円増)、営業利益は3,505百万円(前期は8,683百万円の営業損失)となりました。
また、トール社を親会社とする連結グループは2021年3月末時点で880億円の債務超過となっております。
トール社の経営環境が非常に厳しい中、資金繰り安定化を企図し、トール社の借入等に対して、日本郵便による債務保証を付しております。
④ 銀行業
当連結会計年度、引き続き「お客さま本位の良質な金融サービスの提供」、「運用の高度化・多様化」、「地域への資金の循環等」、「経営管理態勢の強化」に取り組みました。
「お客さま本位の良質な金融サービスの提供」については、ゆうちょ銀行の即時振替サービスやmijica(Visaデビット・プリペイドカード)において、悪意の第三者による不正利用等が発生しました。この対応として、一部サービスを停止したほか、被害に遭われたお客さまに対する補償を行い、また、キャッシュレス決済サービスのセキュリティの堅牢性やお客さまの利用状況のモニタリング態勢等の再確認を行いました。その後、即時振替サービスについては、セキュリティ態勢等の確認ができた事業者から、2021年1月以降順次サービスの提供を再開したほか、mijicaについては、2022年春の新たなブランドデビットカードへの移行に向けて準備を進めております。
そのほか、新たなテクノロジーの活用や、お客さまの利便性を一層高めるような金融チャネルの高度化・充実を通じて、いつでもどこでも使える「新しいべんり」の提供に努めました。具体的には、「ゆうちょ通帳アプリ」の機能追加や、スマートフォン決済サービス「ゆうちょPay」を利用できる店舗の拡大を進めたほか、コールセンターへのAIシステムの導入など、デジタル技術を活用したお客さま対応の品質や運営効率の向上に取り組みました。さらに、幅広い世代のお客さまニーズに応えるために、「フラット35」の直接取扱いや「口座貸越サービス」等の新たなサービスの開始に向けて、2020年12月に金融庁及び総務省に認可を申請し、2021年4月に認可を取得しました。
また、お客さま本位の業務運営の一層の浸透を図る視点から、お客さまの資産形成への貢献のため、お客さまニーズに応じたコンサルティングの充実に努めました。
「運用の高度化・多様化」については、厳しい運用環境の中、リスク・リターンやクレジットクオリティ(投資先の信用力等)を意識しつつ、リスク性資産残高を2021年3月末時点で91.1兆円まで拡大し、リスク性資産のうち、戦略投資領域への投資については、優良な案件への選別的な投資に努め、残高を4.2兆円まで積み上げました。また、運用の高度化・多様化を推進していく中にあっても、財務健全性の観点から必要十分な自己資本比率を確保したほか、リスクアペタイト・フレームワーク(RAF)を活用し、ゆうちょ銀行が取得する適切なリスクの種類や水準を明確にしたうえで、安定的な収益と財務健全性のバランスに配慮した投資方針を決定しました
「地域への資金の循環等」については、お客さまの大切な資金を地域に循環し、地域経済の活性化に貢献するために、引き続き、地域金融機関との連携を通じて、事業承継や起業・創業支援、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けている企業への支援等を目的として、新たに4件(累計32件)の地域活性化ファンドに参加しました。また、2021年1月には、長期的視点に立って地方創生に向けた取組みを行う投資・事業経営会社「株式会社日本共創プラットフォーム(JPiX)」に出資しました。
「経営管理態勢の強化」については、お客さま本位の業務運営のため、ゆうちょ銀行の監査委員会及びJP改革実行委員会により、キャッシュレス決済サービスにおける不正利用事案に係るガバナンスの構築・運用状況の検証が行われ、改善に向けた提言が報告されました。こうした提言を踏まえ、お客さまからの苦情や相談対応について受付から解決まで一元的に管理する態勢を整備しました。また、グループ一体となって信頼回復に向けた業務運営を進めている最中、長崎県の郵便局で発覚した現金詐取事案を始め、部内犯罪が増加している事態を深刻に受けとめ、被害に遭われたお客さまに対する補償を行うとともに、日本郵便と連携し、発生原因の分析、再発防止策の検討等を行い、不祥事件の撲滅に向けてコンプライアンスの徹底・強化に取り組んでいます。
これらの取組みの結果、当連結会計年度、銀行業におきましては、年度末時点のゆうちょ銀行の貯金残高は189,593,469百万円(前期末比6,588,736百万円増)となりました。低金利環境の継続など厳しい経営環境下、有価証券利息の減少に伴い資金利益は減少しましたが、外貨調達コストの低下によるその他業務利益の増加もあり、経常収益は1,946,712百万円(前期比147,174百万円増)、経常利益は394,206百万円(前期比15,074百万円増)となりました。
なお、ゆうちょ銀行における損益の概要などの詳細な状況については、下記「(参考1) 銀行業を行う当社の子会社であるゆうちょ銀行(単体)の状況」「(参考2) 自己資本比率の状況」「(参考3) 資産の査定」に記載のとおりであります。
(参考1) 銀行業を行う当社の子会社であるゆうちょ銀行(単体)の状況
(a) 損益の概要
当事業年度の業務粗利益は、前事業年度比48億円増加の1兆3,190億円となりました。このうち、資金利益は、低金利環境の継続など厳しい経営環境下、有価証券利息が減少し、前事業年度比149億円の減少となりました。役務取引等利益は、投資信託関連手数料の減少を主因に、前事業年度比9億円の減少となりました。その他業務利益は、外貨調達コストの低下もあり、前事業年度比207億円の増加となりました。
経費は、物件費の削減を主因に、前事業年度比100億円減少の1兆101億円となりました。
業務純益は、前事業年度比149億円増加の3,088億円となりました。
経常利益は、前事業年度比152億円増加の3,943億円となりました。
この結果、当期純利益は2,798億円、前事業年度比67億円の増益となりました。
(注) 1.業務純益=業務粗利益-経費(除く臨時処理分)-一般貸倒引当金繰入額
2.臨時損益とは、損益計算書中「その他経常収益・費用」から一般貸倒引当金繰入額を除き、金銭の信託運用見合費用及び退職給付費用のうち臨時費用処理分等を加えたものであります。
3.「金銭の信託運用見合費用」とは、金銭の信託取得に係る資金調達費用であり、金銭の信託運用損益が臨時損益に計上されているため、業務費用から控除しているものであります。
4.国債等債券損益=国債等債券売却益+国債等債券償還益-国債等債券売却損-国債等債券償還損-国債等債券償却
5.株式等関係損益=株式等売却益-株式等売却損-株式等償却
6.金額が損失又は費用には△を付しております。
(参考) 与信関係費用
(注) 1.金融再生法開示債権に係る費用を計上しております。
2.金額が損失又は費用には△を付しております。
(b) 国内・国際別の資金利益等
ゆうちょ銀行は、海外店や海外に本店を有する子会社(以下「海外子会社」といいます。)を有しておりませんが、円建の取引を「国内業務部門」、外貨建取引を「国際業務部門」に帰属させ(ただし、円建の対非居住者取引は「国際業務部門」に含む。)、各々の収益・費用を計上した結果、国内業務部門・国際業務部門別の資金利益等は次のとおりとなりました。
当事業年度は、国内業務部門においては、国債利息の減少を主因に資金利益は4,556億円に減少、役務取引等利益は1,278億円、その他業務利益は△413億円となりました。
国際業務部門においては、外貨調達コストの低下等により、資金調達費用が減少し、資金利益は5,061億円、役務取引等利益は0億円、その他業務利益は2,705億円となりました。
この結果、国内業務部門、国際業務部門の相殺消去後の合計は、資金利益は9,618億円、役務取引等利益は1,279億円、その他業務利益は2,292億円となりました。
イ.国内業務部門
ロ.国際業務部門
ハ.合計
(注) 1.資金調達費用は、金銭の信託運用見合費用(前事業年度5,441百万円、当事業年度4,760百万円)を控除しております。
2.「国内業務部門」「国際業務部門」間の内部取引による相殺消去額は下表のとおりであります。
(c) 国内・国際別資金運用/調達の状況
当事業年度の資金運用勘定の平均残高は210兆4,304億円、利回りは0.56%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は203兆6,928億円、利回りは0.11%となりました。
国内・国際別に見ますと、国内業務部門の資金運用勘定の平均残高は204兆9,282億円、利回りは0.25%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は197兆7,831億円、利回りは0.03%となりました。
国際業務部門の資金運用勘定の平均残高は67兆1,005億円、利回りは1.11%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は67兆5,080億円、利回りは0.36%となりました。
イ.国内業務部門
(注) 1.「国内業務部門」は円建取引であります。
2.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度2,483,454百万円、当事業年度3,107,611百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度2,483,454百万円、当事業年度3,107,611百万円)及び利息(前事業年度1,744百万円、当事業年度1,147百万円)を控除しております。
3.預け金等は、譲渡性預け金、日銀預け金、コールローン、買入金銭債権であります。「ロ.国際業務部門」「ハ.合計」においても同様であります。
4.貯金は銀行法施行規則の負債科目「預金」に相当するものであります。「ロ.国際業務部門」「ハ.合計」においても同様であります。
ロ.国際業務部門
(注) 1.「国際業務部門」は外貨建取引であります。ただし、円建対非居住者取引については、「国際業務部門」に含めております。
2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。
3.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度646,071百万円、当事業年度994,585百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度646,071百万円、当事業年度994,585百万円)及び利息(前事業年度3,696百万円、当事業年度3,613百万円)を控除しております。
ハ.合計
(注) 1.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度3,129,526百万円、当事業年度4,102,197百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度3,129,526百万円、当事業年度4,102,197百万円)及び利息(前事業年度5,441百万円、当事業年度4,760百万円)を控除しております。
2.「国内業務部門」「国際業務部門」間の内部取引による相殺消去額は下表のとおりであります。
(d) 役務取引等利益の状況
当事業年度の役務取引等利益は、電信振替の料金改定等により、為替・決済関連手数料が増加したものの、投資信託関連手数料が減少し、前事業年度比9億円減少の1,279億円となりました。
(参考) 投資信託の取扱状況(約定ベース)
(e) 預金残高の状況
当事業年度末の貯金残高は、通常貯金等の残高増加を主因に、前事業年度末比6兆5,887億円増加の189兆5,934億円となりました。
○ 預金の種類別残高(末残・構成比)
○ 預金の種類別残高(平残・構成比)
(注) 1.「通常貯金等」=通常貯金+特別貯金(通常郵便貯金相当)
2.貯金は銀行法施行規則の負債科目「預金」に相当するものであります。「振替貯金」は「当座預金」、「通常貯金」は「普通預金」、「貯蓄貯金」は「貯蓄預金」、「定期貯金」は「定期預金」に相当するものであります。「定額貯金」は「その他の預金」に相当するものでありますが、「定期性預金」に含めております。
3.特別貯金(通常郵便貯金相当)は郵政管理・支援機構からの預り金のうち、郵政管理・支援機構が公社から承継した定期郵便貯金、定額郵便貯金、積立郵便貯金、住宅積立郵便貯金、教育積立郵便貯金に相当する郵便貯金で満期となったものなどであります。
4.上記の通常貯金、定期性預金は、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3) 事業に係る主な法律関連事項 ③ 郵政民営化法 (f) ゆうちょ銀行における預入限度額」に記載の郵政民営化法における預入限度額規制上の区分とは異なります。
(f) 資産運用の状況(末残・構成比)
当事業年度末の運用資産のうち、国債は50.4兆円、その他の証券は71.1兆円となりました。
(注) 「預け金等」は譲渡性預け金、日銀預け金、買入金銭債権であります。
(g) 評価損益の状況(末残)
当事業年度末の評価損益(その他目的)は、ヘッジ考慮後で3兆488億円(税効果前)となりました。
(注) 「有価証券」には、有価証券のほか、現金預け金中の譲渡性預け金、買入金銭債権を含んでおります。
(h) 業種別貸出金残高の状況(末残・構成比)
(注) 1.「国内」とは本邦居住者に対する貸出、「国際」とは非居住者に対する貸出であります。
2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。
3.「金融・保険業」のうち郵政管理・支援機構向け貸出金は、前事業年度末439,734百万円、当事業年度末 340,563百万円であります。
(参考) リスク管理債権(末残)
(参考2) 自己資本比率の状況
ゆうちょ銀行の自己資本比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しております。
なお、ゆうちょ銀行は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
連結自己資本比率(国内基準)
(注) 連結総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
単体自己資本比率(国内基準)
(注) 単体総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
(参考3) 資産の査定
資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号)第6条に基づき、ゆうちょ銀行の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。
(a) 破産更生債権及びこれらに準ずる債権
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
(b) 危険債権
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
(c) 要管理債権
要管理債権とは、3カ月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
(d) 正常債権
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記(a)から(c)までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
資産の査定の額
⑤ 生命保険業
かんぽ生命保険では、2019年度におけるかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題により、積極的な募集活動を停止し、お客さまからの信頼回復に向けた取組みを最優先に取り組んでまいりました。金融庁に提出した業務改善計画において掲げたご契約調査及び募集人調査並びに再発防止策としての「健全な組織風土の醸成・適正な営業推進態勢の確立」、「適正な募集管理態勢の強化」、「取締役会等によるガバナンスの強化」等の取り組みは、その大部分を既に実施しております。
「健全な組織風土の醸成・適正な営業推進態勢の確立」については、お客さま本位の理念を反映した勧誘方針に基づいてかんぽ営業の行動原則(かんぽ営業スタンダード)を策定し、募集人等に対してその理解・定着に向けた研修を継続してまいりました。また、契約乗換への対策として、契約乗換については手当(通常の契約の二分の一支給)を不支給とし、人事評価についても募集品質の確保を前提とした評価内容に見直しました。さらに、既契約の解約を伴わずに保障の見直しが可能な契約転換制度について、2020年11月に認可を取得し、2021年4月から取扱いを開始しました。また、これまで、貯蓄性の高い商品を主力としてまいりましたが、低金利環境下においてもお客さまニーズにより一層お応えするために、商品内容の改善に取り組んでおります。具体的には、青壮年層を中心とした低廉な保険料で長期の保障を希望するお客さまに提案できる商品の充実を図り、2021年4月から、保険期間を延長した普通定期保険及び特別養老保険の取扱いを開始しました。そのほか、社員から社長への直接提案制度やかんぽ生命保険経営陣が各支店等を訪問し、現場の社員の声を直接聞く「役員ダイアログ(対話)」の継続的な実施のほか 、ES※調査を通して把握した社員の声及び課題を踏まえ、業務の改善やES向上策の検討を行い、風通しのよい組織づくりに向けて取り組んでおります。
※ ESとは、従業員満足度のことです。
「適正な募集管理態勢の強化」については、お客さまのご意向に沿わない契約の発生を未然に防止するため、システムの整備等フロントライン及び本社におけるチェック・統制によるけん制機能の強化に取り組んでまいりました。2020年4月に、契約乗換の判定期間を拡大するとともに、判定期間に近接する契約についてはアラート表示を行い、確認を促す仕組みを整備したほか、お客さまの過去の契約の加入・消滅履歴等を簡易にシステム上で把握できる態勢も構築しました。また、郵便局管理者、かんぽ生命保険専用コールセンター及びサービスセンターによるお客さまへの重層的なご意向確認等を実施する態勢を構築したほか、募集状況の可視化を図るため、2020年8月から募集状況の録音等を郵便局の全コンサルタントへ実施対象を拡大しました。
「取締役会等によるガバナンスの強化」については、経営層がリスクを適切に把握できる体制の構築や、内部統制の強化等、ガバナンスの強化に努めてまいりました。
また、2019年7月以降、郵便局及びかんぽ生命保険直営店におけるかんぽ生命保険商品の積極的な営業活動を控えてまいりましたが、JP改革実行委員会より、営業再開についての最低限必要な条件を満たしているという評価を受けるとともに、信頼回復に向けた業務運営の趣旨が全社に浸透したこと等が確認できたことから、2020年10月より、信頼回復に向けた業務運営を開始し、お客さまにご迷惑・ご心配をおかけしたことのお詫びと「お客さまの信頼回復に向けた約束」のご説明を行うとともに、金融商品のアフターフォローに最優先で取り組み、お客さまのご不安や疑問点の解消を図りました。そして、信頼回復に向けた業務運営を継続する中で、お客さまの想定されるニーズの確認を行いながら、お客さまニーズに応じた金融商品の情報提供やご提案を実施することで、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタンスへ移行することとしました。
上記のかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題への対応のほか、「新型コロナウイルス感染症への対策」、「資産運用の多様化」を中心に取り組みました。
「新型コロナウイルス感染症への対策」については、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、2020年3月から、各種非常取扱いを実施したほか、同年4月から、死亡保険金に加えて、約款に定めた保険金額をお支払いする「保険金の倍額支払」の対象に新型コロナウイルス感染症により亡くなられた場合を含めることとしました。また、非対面でのサービス利用等の需要拡大に応えるべく、契約者さま向けWebサービス(マイページ)において、同年11月に入院・手術保険金支払に必要な書類請求機能を、2021年3月に年金支払に必要な現況届の手続機能を拡充しました。
「資産運用の多様化」については、継続的な低金利環境における安定的な運用収益の確保を目指し、ALMを基本としつつ、リスクバッファーの範囲で収益追求資産への投資を継続しております。資産運用の多様化を図るため、海外クレジットの運用拡大の一環として、米国社債の自家運用に引き続き取り組むとともに、株式の自家運用やオルタナティブ投資等についても継続して推進しております。これら資産運用の取組みについては、ERM※の枠組みのもとで財務の健全性の確保や、リスク・リターンの向上を図っております。
※ ERMとは、Enterprise Risk Managementの略語で、会社が直面するリスクに関して、潜在的に重要なリスクを含めて総体的に捉え、会社全体の自己資本などと比較・対照することによって、事業全体として行うリスク管理のことです。
これらの取組みをしてまいりましたが、当連結会計年度、生命保険業におきましては、主に保有契約の減少による保険料等収入の減少により、経常収益は6,786,226百万円(前期比425,178百万円減)となりました。また、保有契約の減少が続く厳しい状況の中、新契約の減少に伴う事業費の減少や保険金等支払金の減少等により基礎利益(生命保険会社の基礎的な期間損益の状況を表す指標)が増加したことに加え、金融派生商品費用の減少等によりキャピタル損益が改善したこと等から、経常利益は345,736百万円(前期比59,134百万円増)となりました。
かんぽ生命保険における保険引受及び資産運用の状況などの詳細な状況については、下記「(参考)生命保険業を行う当社の子会社であるかんぽ生命保険の状況」に記載のとおりであります。
(参考)生命保険業を行う当社の子会社であるかんぽ生命保険の状況
(下表(a)イ.~ニ.の個人保険及び個人年金保険には、かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約を含みません。)
(a) 保険引受及び資産運用の状況
イ.保有契約高明細表
(注) 個人年金保険の金額は、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金額を合計したものであります。
ロ.新契約高明細表
(注) 個人年金保険の金額は、年金支払開始時における年金原資であります。
ハ.保有契約年換算保険料明細表
(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額)。
2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
ニ.新契約年換算保険料明細表
(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額)。
2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
(参考)かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約の状況
(a) 保有契約高
(注) 計数は、郵政管理・支援機構における公表基準によるものであります。
(b) 保有契約年換算保険料
(注) かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約について、上記ハ.に記載しております個人保険及び個人年金保険の保有契約年換算保険料と同様の計算方法により、かんぽ生命保険が算出した金額であります。
ホ.一般勘定資産の構成
(注) 1.機構貸付とは、郵政管理・支援機構(簡易生命保険勘定)への貸付であります。
2.不動産については、土地・建物・建設仮勘定を合計した金額を計上しております。
ヘ.一般勘定資産の資産別運用利回り
(注) 1.利回り計算式の分母は帳簿価額ベースの日々平均残高、分子は経常損益中、資産運用収益-資産運用費用として算出した利回りであります。
2.一般勘定計には、有価証券信託に係る資産を含めております。
3.海外投融資とは、外貨建資産と円建資産の合計であります。
(b) 基礎利益
基礎利益は、保険料等収入、保険金等支払金、事業費等の保険関係の収支と、利息及び配当金等収入を中心とした運用関係の収支からなる、生命保険会社の基礎的な期間損益の状況を表す指標であります。
かんぽ生命保険の当事業年度における基礎利益は、4,219億円となりました。
(経常利益等の明細(基礎利益))
(注) 1.金銭の信託に係るインカム・ゲインに相当する額(前事業年度:78,097百万円、当事業年度:78,484百万円)を「その他キャピタル費用」に計上し、基礎利益に含めております。
2.「その他臨時費用」には、保険業法施行規則第69条第5項の規定により責任準備金を追加して積み立てた額(前事業年度:176,734百万円、当事業年度:245,841百万円)を記載しております。
(c) かんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率
生命保険会社は将来の保険金等の支払いに備えて責任準備金を積み立てており、通常予測できる範囲のリスクについては責任準備金の範囲内で対応できます。
ソルベンシー・マージン比率とは、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つであります。
この比率が200%を下回った場合は、当局によって早期是正措置がとられます。逆にこの比率が200%以上であれば、健全性の一つの基準を満たしていることになります。
当連結会計年度末におけるかんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率は1,121.2%と高い健全性を維持しております。
(注) 保険業法施行規則第86条の2、第88条及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
(d) かんぽ生命保険のEV
イ.EVの概要
ⅰ EVについて
エンベディッド・バリュー(以下「EV」といいます。)は対象事業に割り当てられた、資産及び負債から生じる株主への分配可能な利益の価値の見積りであります。ただし、将来の新契約から生じる価値は含みません。この価値は、修正純資産及び保有契約価値で構成されるものであります。
修正純資産は株主に帰属すると考えられる純資産(時価)であり、必要資本とフリー・サープラスで構成されるものであります。
保有契約価値は、保有契約及び保有契約に係る資産から将来発生すると見込まれる株主への分配可能な利益の評価日時点の現在価値であり、必要資本を維持するための費用等を控除したものであります。
生命保険契約は、一般に販売時に多くのコストが発生するため、一時的には損失が発生するものの、契約が継続することで、将来にわたり生み出される利益によりそのコストを回収することが期待される収支構造となっております。現行の法定会計では、このような収支構造をそのまま各年度の損益として把握しておりますが、EVは、全保険期間を通じた損益を現在価値で評価することとなるため、現行の法定会計による財務情報では不足する情報を補うことができる指標の一つと考えております。
ⅱ EEVについて
EVの開示に関する一貫性と透明性の改善を図る目的で、2004年5月にヨーロッパの主要保険会社のCFO(最高財務責任者)の集まりである、CFOフォーラムが、ヨーロピアン・エンベディッド・バリュー(以下「EEV」といいます。)原則及び指針(ガイダンス)を制定いたしました。
2016年5月には、CFOフォーラムによってEEV原則の改正が公表され、EVに2016年1月から施行された欧州ソルベンシーⅡ等の計算で用いた計算手法及び前提の使用が許容されるようになりました。
ⅲ EEVの計算手法
今回のEEVの計算には、市場整合的手法を用いております。この手法は、資産又は負債から発生するキャッシュ・フローを市場で取引されている金融商品と整合的に評価するものであります。
ロ.簡易生命保険契約について
かんぽ生命保険は、郵政民営化法に基づき、2007年10月1日に発足しました。また、2007年9月末までに契約された簡易生命保険契約は、郵政管理・支援機構に承継されるとともに、郵政管理・支援機構が負う保険責任のすべてについて、かんぽ生命保険が受再しております。
かんぽ生命保険は、郵政管理・支援機構との再保険契約において、簡易生命保険契約を他の保険契約と区分して管理すること(簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金も区分して管理すること)、簡易生命保険契約から生じた利益(危険準備金及び価格変動準備金の戻入による利益も含んでおります。)も区分して管理すること、及び郵政管理・支援機構が簡易生命保険契約に対して既に約款で約束している確定配当所要額と再保険損益(確定配当所要額及び法人税等を除いたこの区分における利益)の8割の合計額を、郵政管理・支援機構へ再保険配当として支払うことを定めております。EEVの計算においては、この郵政管理・支援機構への再保険配当を差し引いた後の利益を反映しております。
このように郵政管理・支援機構への再保険配当の原資に、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金の戻入による利益が含まれることから、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金は修正純資産には含めておらず、将来において戻入する前提で保有契約価値に含めて計算しております。
ハ.EEVの計算結果
かんぽ生命保険のEEVは以下のとおりであります。
ⅰ 修正純資産
修正純資産は、資産の市場価値のうち、契約者に対する負債及びその他の負債の価値を超過する部分であり、株主に帰属すると考えられる価値であります。当期純利益による増加を主な理由として、当事業年度末における修正純資産は前事業年度末から増加しております。修正純資産の内訳は以下のとおりであります。
(注) 1.計算対象に子会社を含めているため、かんぽ生命保険の連結貸借対照表の純資産の部合計を計上しております。ただし、その他の包括利益累計額合計を除いております。また、自己株式に計上している株式給付信託(BBT)が保有するかんぽ生命保険の株式の帳簿価額を加えております。
2.簡易生命保険契約に係る部分を除いております。
3.保険契約に係らない有価証券、貸付金及び不動産の含み損益、一般貸倒引当金、退職給付の未積立債務(未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異)並びに劣後債の含み損益を計上しております。
当事業年度末の修正純資産を計算する際に除いた保険契約に係る部分は以下のとおりであります。
(注) 1.かんぽ生命保険の連結貸借対照表の純資産の部合計を計上しております。ただし、その他の包括利益累計額合計を除いております。また、自己株式に計上している株式給付信託(BBT)が保有するかんぽ生命保険の株式の帳簿価額を加えております。
2.保険契約に係る部分(②)は、簡易生命保険契約に係る部分を計上しております。「ロ.簡易生命保険契約について」をご参照ください。
3.有価証券、貸付金及び不動産の含み損益、一般貸倒引当金、退職給付の未積立債務(未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異)並びに劣後債の含み損益を計上しております。
ⅱ 保有契約価値
保有契約価値は、保有契約の評価日時点における価値を表したもので、保有契約及び保有契約に係る資産から将来発生すると見込まれる株主への分配可能な利益を現在価値に割り引いております。「ニ.前事業年度末EEVからの変動要因」に記載のとおり、前提条件(経済前提)と実績の差異を主な理由として、当事業年度末における保有契約価値は前事業年度末から増加しております。保有契約価値の内訳は以下のとおりであります。
将来利益の計算において保険契約に係る資産は簿価評価しております。また、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金が将来において戻入する前提で、その戻入による利益を含めて計算しております。「ロ.簡易生命保険契約について」をご参照ください。
ⅲ 新契約価値
新契約価値は、当期間に獲得した新契約(医療特約の切替加入契約及び条件付解約による加入契約については正味増加分のみ)の契約獲得時点における価値を表したものであります。
当事業年度において積極的な営業活動を自粛している一方、新契約獲得にはその多寡によらない一定の事業費等が必要となるため、当事業年度の新契約価値は前事業年度から減少しております。新契約価値の内訳は以下のとおりであります。
なお、新契約マージン(新契約価値の保険料収入現価に対する比率)は以下のとおりであります。
(注) 将来の収入保険料を、新契約価値の計算に用いたリスク・フリー・レートで割り引いております。
ニ.前事業年度末EEVからの変動要因
ⅰ 前事業年度末EEVの調整
かんぽ生命保険は当事業年度において213億円の株主配当金を支払っており、修正純資産がその分減少しております。
ⅱ 当事業年度新契約価値
新契約価値は、当事業年度に新契約を獲得したことによる契約獲得時点における価値を表したものであり、契約獲得に係る費用を控除した後の金額が反映されております。当事業年度において積極的な営業活動を自粛している一方、新契約獲得にはその多寡によらない一定の事業費等が必要となるため、新契約価値はマイナスになっております。
ⅲ 期待収益(リスク・フリー・レート分)
保有契約価値の計算にあたっては、将来の期待収益をリスク・フリー・レートで割り引いておりますので、時間の経過とともに割引の影響が解放されます。これには、オプションと保証の時間価値、必要資本を維持するための費用及びヘッジ不能リスクに係る費用のうち当事業年度分の解放を含んでおります。修正純資産からは、対応する資産からリスク・フリー・レート(△0.150%)分に相当する収益が発生しております。
ⅳ 期待収益(超過収益分)
EEVの計算にあたっては、将来の期待収益としてリスク・フリー・レートを用いておりますが、実際の会社はリスク・フリー・レートを超過する利回りを期待しております。この項目は、その期待される超過収益を表しております。
ⅴ 保有契約価値からの移管
当事業年度に実現が期待されていた利益が、保有契約価値から修正純資産に移管されます。これには、前事業年度末の保有契約から期待される当事業年度の利益と、当事業年度に獲得した新契約からの、契約獲得に係る費用を含めた当事業年度の損益が含まれております。
これらは保有契約価値から修正純資産への振替えであり、EEVの金額には影響しません。
ⅵ 前提条件(非経済前提)と実績の差異
前事業年度末の保有契約価値の計算に用いた前提条件(非経済前提)と、当事業年度の実績の差額であります。
ⅶ 前提条件(非経済前提)の変更
前提条件(非経済前提)を更新したことにより、翌事業年度以降の収支が変化することによる影響であります。
ⅷ 前提条件(経済前提)と実績の差異
市場金利やインプライド・ボラティリティ等の経済前提が、前事業年度末EEV計算に用いたものと異なることによる影響であります。当該影響は、当事業年度の実績及び翌事業年度以降の見積りの変更を含んでおります。
主に為替変動リスクのヘッジに伴う金融派生商品収益の発生により、修正純資産は29億円増加しております。
主に国内金利の変動や株価の上昇により、保有契約価値は5,568億円増加しております。
ホ.感応度(センシティビティ)
前提条件を変更した場合のEEVの感応度は以下のとおりであります。感応度は、一度に1つの前提のみを変化させることとしており、同時に2つの前提を変化させた場合の感応度は、それぞれの感応度の合計とはならないことにご注意ください。
感応度1から4について、修正純資産の増減額は以下のとおりであります。また、感応度5から11については、保有契約価値のみの増減額となります。
(注) 参考値として、保有契約に係る資産の含み損益も加えた増減額(税引後に換算)を示しております。なお、EEVの計算にあたって、保険契約に係る部分の資産の含み損益については、修正純資産ではなく、保有契約価値の計算に含めて評価しております。
当事業年度において積極的な営業活動を自粛しているため新契約量は小さく、新契約価値の感応度に重要性がないため、算定しておりません。
ⅰ 感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp上昇した場合の影響を表しております。金利の変動により時価が変動する債券・貸付金等を再評価するとともに、将来の運用利回りや割引率を変動させて保有契約価値を再計算しております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅱ 感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp低下した場合の影響を表しております。なお、50bpにより低下後のリスク・フリー・レートが0%を下回る場合は0%としております。ただし、50bp低下前のリスク・ フリー・レートが0%を下回る場合はその値をそのまま使用しております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅲ 感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし)
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp低下した場合の影響を表しております。なお、感応度2と異なり、リスク・フリー・レートの正負を判定せず、下限を設けずに50bp低下させております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅳ 感応度4:株式・不動産価値10%下落
株式及び不動産の評価日時点の価格が10%下落した場合の影響を表しております。
ⅴ 感応度5:事業費率(維持費)10%減少
事業費率(契約維持に係るもの)が10%減少した場合の影響を表しております。
ⅵ 感応度6:解約失効率10%減少
解約失効率が10%減少(基本となる解約失効率に90%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅶ 感応度7:保険事故発生率(死亡保険)5%低下
死亡保険について、保険事故発生率(死亡率・罹患率)が5%低下(基本となる保険事故発生率に95%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅷ 感応度8:保険事故発生率(年金保険)5%低下
年金保険について、保険事故発生率が5%低下(基本となる保険事故発生率に95%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅸ 感応度9:必要資本を法定最低水準に変更
必要資本を法定最低水準(ソルベンシー・マージン比率200%水準)に変更した場合の影響を表しております。
ⅹ 感応度10:株式・不動産のインプライド・ボラティリティ25%上昇
オプションと保証の時間価値の計算に使用する、株式オプションのインプライド・ボラティリティが25%上昇した場合の影響を表しております。
ⅺ 感応度11:金利スワップションのインプライド・ボラティリティ25%上昇
オプションと保証の時間価値の計算に使用する、金利スワップションのインプライド・ボラティリティが25%上昇した場合の影響を表しております。
ヘ.注意事項
EEVの計算においては、リスクと不確実性を伴う将来の見通しを含んだ多くの前提条件を使用し、それらの多くは個別会社の管理能力を超えた領域に属するものであります。また、将来の実績がEEVの計算に使用した前提条件と大きく異なる場合もあり得ます。
また、EEVの計算において新型コロナウイルス感染症の潜在的な影響を直接的には考慮しておりません。
これらの理由により、本EEV開示は、EEV計算に用いられた将来の税引後利益が達成されることを表明するものではなく、使用にあたっては、十分な注意を払っていただく必要があります。
ト.その他の特記事項
かんぽ生命保険では、保険数理に関する専門知識を有する第三者機関(アクチュアリー・ファーム)に、EEVについて検証を依頼し、意見書を受領しております。
⑥ その他
上記各報告セグメントにおける事業のほか、病院事業については、地域医療機関との連携や救急患者の受入の強化等による増収対策、業務の効率化等による経費削減等、個々の病院の状況を踏まえた経営改善を進めているところですが、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた患者数の減少等により、営業収益13,042百万円(前期比1,005百万円減)、営業損失3,893百万円(前期は3,364百万円の営業損失)となりました。今後も引き続き上記増収対策や経費削減等、個々の病院の状況を踏まえた経営改善に取り組みます。
また、宿泊事業については、営業推進態勢の強化や宿のリニューアル等、サービス水準向上による魅力ある宿づくりを継続的に進めるとともに、費用管理による経費削減等の経営改善に取り組んでいるところですが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う、緊急事態宣言を受けた一部施設の一時休館、3密回避を図った宿泊者数の上限設定による利用者数の減少等の理由により、営業収益6,908百万円(前期比12,097百万円減)、営業損失11,573百万円(前期は6,379百万円の営業損失)となりました。今後もウィズコロナの新生活様式に適した安心・安全の施設であることをアピールしつつ、政府・各自治体等の観光業支援事業に合わせた施策を実施していくとともに、Webセールスの充実等による増収施策、原価管理の徹底等の生産性向上施策を着実に実施することにより、経営改善に取り組みます。
不動産事業については、当社の子会社である日本郵政不動産株式会社において「ホテル メルパルク」の賃貸・管理事業を行うとともに、グループ外不動産の取得や蔵前不動産開発(オフィス、高齢者施設、賃貸住宅、物流施設他)等に当連結会計年度に13,832百万円の投資を行いました。今般の新型コロナウイルス感染症の拡大の影響によるテナント賃料の減免及び支払猶予が一部発生しており、開発中の案件における竣工時期の遅延等も想定されますので、今後のマーケットへの影響、動向を引き続き注視し、必要な対策を適時適切に実施しつつ、不動産事業を慎重に進めてまいります。
投資事業については、日本郵政グループの新規事業の種を探すため、ネットワーク、ブランド力等を活用して成長が期待できる企業への出資(当連結会計年度に13件、約2,500百万円)を行い、出資先企業と当社グループとの連携を進めました。今後も、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大の影響など、投資先の事業環境の変化による投資先の価値や将来の成長性を見極めながら、出資等に取り組みます。
(3) キャッシュ・フローの状況及び分析・検討
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は当期首から9,034,097百万円増加し、62,637,954百万円となりました。
① 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動においては、銀行業における資金の運用や調達、生命保険業における保険料の収入や保険金の支払等の結果、6,965,155百万円の収入(前期比6,659,305百万円の収入増)となりました。
主な要因として、貯金の増加6,606,901百万円や借用金の増加3,907,400百万円、責任準備金の減少2,895,445百万円があげられます。
② 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動においては、銀行業及び生命保険業における有価証券の売却、償還による収入等及び有価証券の取得による支出等の結果、2,015,201百万円の収入(前期比974,716百万円の収入増)となりました。
主な要因として、有価証券の償還による収入28,137,974百万円や有価証券の売却による収入5,705,239百万円、有価証券の取得による支出33,050,485百万円があげられます。
③ 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動においては、子会社における社債の発行等の結果、50,578百万円の収入(前期比48,424百万円の収入減)となりました。
主な要因として、社債の発行による収入198,798百万円、配当の支払による減少101,257百万円があげられます。
④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
中期経営計画において、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進やユニバーサルサービスを含むコアビジネスの充実強化等、グループの成長に資する投資として、デジタルサービスの拡充やデジタル郵便局実現等に向けた戦略的なIT投資や、グループ保有不動産等の不動産投資を計画しております。
また、上記の他に、当社グループ・グループ各社の企業価値向上に資する幅広い分野での資本提携やM&Aも実施いたします。なお、それらの実行にあたっては、投資判断基準等に照らして慎重に検討し、適切と判断したものを実施することとしております
その財源は、既存のキャッシュ・フローのほか、潤沢な借入余力を活かした借入金や金融2社株式を売却した場合の売却手取金を想定しています。
なお、現在予定している設備の新設計画としては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備等の新設等」の記載をご参照ください。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。
当社グループは、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
特に以下の重要な会計上の見積りが当社グループの連結財務諸表に大きな影響を及ぼす可能性があると考えております。
① 金融商品の時価評価
当社グループの有価証券の一部及びデリバティブ取引は、時価法に基づいて評価しております。時価は、市場価格に基づいて算定しておりますが、市場価格がない場合には合理的な見積りに基づいて算定された価額によっております。
一部の金融商品の時価算定には一定の前提条件を採用しているため、予測不能な前提条件の変化により、金融商品の評価に関する見積りが変動する可能性があります。
金融商品の時価の算定方法は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(金融商品関係)及び(デリバティブ取引関係)に、金融商品のうち有価証券の時価評価に用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い金融市場が混乱する場合、金融商品の時価評価における主要な仮定に影響が及び、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
② 有価証券の減損
当社グループの金銭の信託で運用する有価証券を含め売買目的有価証券以外の有価証券のうち、時価又は実質価額が著しく下落したものについては合理的な基準に基づいて減損処理を行っております。株式市場の悪化等、将来の金融市場の状況によっては、多額の減損損失を計上する可能性があります。
③ 固定資産の減損
当社グループは、原則として内部管理上独立した業績報告が行われる単位を基礎として、資産のグルーピングを行っております。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としております。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき合理的に算定しております。
固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件が変更された場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
④ 繰延税金資産の回収可能性の評価
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の判断に際しては、将来の課税所得を合理的に見積っております。
繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、将来、当社グループを取り巻く経営環境に大きな変化があった場合等、その見積額が変動した場合は、繰延税金資産の回収可能性が変動する可能性があります。
⑤ 責任準備金の積立方法
当社グループは、保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金を積み立てております。
責任準備金の計算に使用される予定死亡率、予定利率及び予定事業費率などの基礎率は合理的であると考えておりますが、実際の結果が著しく乖離した場合や環境の変化により将来乖離が見込まれる場合には、責任準備金の金額に影響を及ぼす可能性があります。
なお、責任準備金の積立方法は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。
⑥ 退職給付債務及び退職給付費用
当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、割引率など将来の退職給付債務算出に用いる数理計算上の前提条件に基づいて算出しております。
このため、実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件の変更が行われた場合には、将来の退職給付債務及び退職給付費用が変動する可能性があります。
なお、退職給付債務等の計算の基礎に関する事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(退職給付関係)に、退職給付債務の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
⑦ 保険金等支払引当金の計上基準
当社グループの保険金等支払引当金は、お客さまの不利益の解消に向けたご契約調査等による将来の保険金等の支払見込額等を、お客さまのご意向確認等の実績を踏まえ、合理的に見積り計上しております。保険金等支払引当金の計上等に係る詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(追加情報)の(保険契約に係る改善に向けた取組)に記載しております。
将来、見積りに影響する新たな事実の発生等により、保険金等支払引当金の計上額が当初の見積額から変動する可能性があります。
なお、保険金等支払引当金の計上基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。
(5) 連結自己資本比率の状況
銀行持株会社としての当社の連結自己資本比率は、銀行法第52条の25の規定に基づき、銀行持株会社が銀行持株会社及びその子会社の保有する資産等に照らしそれらの自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第20号)に定められた算式に基づき、連結ベースについて算出しております。
なお、当社は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
連結自己資本比率(国内基準)
(注) 連結総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
(6) 連結ソルベンシー・マージン比率の状況
保険持株会社としての当社の連結ソルベンシー・マージン比率は、保険業法施行規則第210条の11の3、第210条の11の4及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
ソルベンシー・マージン比率とは、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つであります。
この比率が200%を下回った場合は、当局によって早期是正措置がとられます。逆にこの比率が200%以上であれば、健全性の一つの基準を満たしていることになります。
当連結会計年度末における連結ソルベンシー・マージン比率は、674.9%となりました。
(注) 保険業法施行規則第210条の11の3、第210条の11の4及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
(7) 目標とする経営指標の達成状況
当社グループにおいては、主要な経営目標として1株当たり当期純利益を採用しており、2021年3月期においては当初業績予想69.25円に対し1株当たり当期純利益103.44円となりました。2021年3月期の経営成績の状況及び分析・検討については、上記「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営成績の状況及び分析・検討」に示しております。
(8) 生産、受注及び販売の状況
当社グループは、郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業、銀行業及び生命保険業を中心とした広範囲な事業を営んでおり、生産、受注といった区分による表示が困難であることから、「生産、受注及び販売の状況」については、上記「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営成績の状況及び分析・検討」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態の状況及び分析・検討
当連結会計年度末の資産、負債及び純資産の状況は以下のとおりであります。
資産の部合計は、前連結会計年度末比11,639,681百万円増の297,738,131百万円となりました。
主な要因は、銀行業等における現金預け金9,038,728百万円の増、銀行業及び生命保険業等における金銭の信託2,225,782百万円の増、有価証券2,576,439百万円の増の一方、銀行業及び生命保険業における債券貸借取引支払保証金719,115百万円の減、貸出金968,670百万円の減によるものです。
負債の部合計は、前連結会計年度末比8,185,389百万円増の281,667,063百万円となりました。
主な要因は、銀行業における貯金6,606,901百万円の増、銀行業等における借用金3,925,980百万円の増の一方、生命保険業における責任準備金2,895,445百万円の減、銀行業及び生命保険業における債券貸借取引受入担保金417,512百万円の減によるものです。
純資産の部合計は、前連結会計年度末比3,454,292百万円増の16,071,067百万円となりました。
主な要因は、銀行業及び生命保険業等におけるその他有価証券評価差額金2,598,250百万円の増、非支配株主持分594,083百万円の増の一方、銀行業及び生命保険業等における繰延ヘッジ損益37,452百万円の減、国際物流事業における為替換算調整勘定14,734百万円の減によるものです。
各事業セグメント別の資産の状況は以下のとおりであります。
① 郵便・物流事業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比5,352百万円増の2,029,293百万円となりました。
主な要因は、荷物分野の収益拡大に伴う営業キャッシュ・フローの増加等により現金預け金が56,617百万円増加した一方、減価償却等により建物等の有形固定資産が44,491百万円減少したことによるものです。
② 金融窓口事業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比26,267百万円増の2,622,782百万円となりました。
主な要因は、現金預け金が9,800百万円増加したことや、不動産開発物件に係る建設仮勘定の計上等により建物等の有形固定資産が20,883百万円増加したことによるものです。
③ 国際物流事業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比36,258百万円減の529,536百万円となりました。
主な要因は、トール社のエクスプレス事業の売却決定に伴う減損処理等により有形固定資産が31,238百万円減少したことによるものです。
④ 銀行業
当連結会計年度末のセグメント資産は、有価証券で保有する投資信託及び預け金等の増加を主因として、前連結会計年度末比12,959,721百万円増の223,870,630百万円となりました。
主な要因は、貸出金が270,009百万円減少した一方、現金預け金が9,104,235百万円増加、金銭の信託が997,837百万円増加、有価証券が2,999,675百万円増加したことによるものです。
⑤ 生命保険業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比1,491,799百万円減の70,172,982百万円となりました。
主な要因は、保有契約の減少に伴い保険契約準備金が減少したことに対応し、有価証券が596,946百万円減少、貸付金が698,661百万円減少したことによるものです。
(2) 経営成績の状況及び分析・検討
当連結会計年度、当社グループは、かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題につきまして、2020年1月に策定した業務改善計画をもとに、各種施策に取り組みました。同計画のうち主要施策については、外部専門家の方々で構成された、各種取組みを公正・中立な立場から検証するJP改革実行委員会(同年4月設置)のモニタリングを受けながら、お客さまからの信頼回復に向けて改善策を実行してまいりました。同年9月には、「お客さまの信頼回復に向けた約束」を策定し、同年10月からは、信頼回復に向けた業務運営を開始し、お客さまにご迷惑・ご心配をおかけしたことのお詫びと「お客さまの信頼回復に向けた約束」のご説明を行うとともに、金融商品のアフターフォローに最優先で取り組み、お客さまのご不安や疑問点の解消を図りました。
そして、信頼回復に向けた業務運営を継続する中で、お客さまの想定されるニーズの確認を行いながら、お客さまニーズに応じた金融商品の情報提供やご提案を実施することで、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタンスへ移行することとしました。
また、ゆうちょ銀行の即時振替サービスの不正利用事案等に関し、2021年1月にJP改革実行委員会から受領した「株式会社ゆうちょ銀行のガバナンス等に係る検証報告書」において、ガバナンス強化に向けた改善策に係る提言を受けており、提言事項への対応に取り組んでおります。
当社におきましては、持株会社として、当社グループの企業価値向上を目指し、グループ各社の収益拡大や経営効率化等を着実に推進するとともに、郵便、貯金及び保険のユニバーサルサービスの確保、郵便局ネットワークの維持・活用による安定的なサービスの提供等という目的が達成できるよう、グループ運営に取り組みました。
また、グループ各社のコンプライアンス・プログラムの策定・推進の状況、各社の内部監査態勢・監査状況の把握に努めたほか、集約により効率性が高まる間接業務をグループ各社から受託するとともに、病院及び宿泊事業の経営改善に取り組みました。
さらに、日本郵便と楽天株式会社(現・楽天グループ株式会社)は、物流領域における戦略的提携に向けて2020年12月に基本合意書を締結しました。2021年3月には、お客さまの利便性の向上、地域社会への貢献、そして事業の拡大のため、物流・モバイル・DX(デジタルトランスフォーメーション)※など様々な領域での連携を強化することを目的に、当社、日本郵便、楽天株式会社による業務提携合意書を締結しました。また、当社は、両社グループ間の関係を強化するため、楽天株式会社への出資を行いました。
加えて、グループ各社が提供するサービスの公益性・公共性の確保や、持続可能な社会の実現・未来の創造に貢献するため、国連で採択された国際目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」を踏まえたESG(環境、社会、ガバナンス)に関する取組みやCSR活動・災害復興支援に、グループ一丸となって取り組んでまいりました。また、新型コロナウイルス感染症対策については、お客さまと社員の安全を確保するため、郵便物等の非対面配達、窓口へのビニールカーテンの取り付けのほか、一部の郵便局・ゆうちょ銀行直営店の営業時間の短縮等を実施しました。
※ DXとは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することです。
これらの取組みの結果、当連結会計年度における連結経常収益は11,720,403百万円(前期比229,782百万円減)、連結経常利益は914,164百万円(前期比49,706百万円増)、連結経常利益に、特別損益や契約者配当準備金繰入額等を加減した親会社株主に帰属する当期純利益は、418,238百万円(前期比65,494百万円減)となりました。
なお、国際物流事業セグメントのエクスプレス事業について、2021年4月21日にAllegro Funds Pty Ltdの傘下企業に譲渡する契約を締結いたしました。本件譲渡に伴い、当連結会計年度において、特別損失として674億円(減損損失619億円、その他の特別損失54億円)を計上しております。
また、当社が保有するゆうちょ銀行の株式について減損処理による関係会社株式評価損2,229,538百万円を計上したこと等により、当社単体では2,129,989百万円の当期純損失となっております。なお、当該関係会社株式評価損は、連結決算においては消去されるため、連結業績への影響はありません。
経営成績の詳細な状況は、各事業セグメントごとに記載しております。各事業セグメントごとの経営成績の状況は、以下のとおりであります。
① 郵便・物流事業
郵便・物流事業につきましては、年賀状を始めとしたスマートフォン等を使ったSNS連携サービスや手紙の楽しさを伝える活動の展開等により、郵便の利用の維持を図るとともに、eコマース市場の拡大による荷物需要の増加に対応するため、専用箱を使用して郵便ポストから差し出すことができる「ゆうパケットポスト」の取扱いを開始したほか、個人間ECサイトで取引した荷物を店頭に並ぶことなく発送できる「スマリボックス」の取扱い拡大や、キャッシュレス決済導入局の拡大など、差出・受取利便性の高いサービスを提供するとともに、お客さまの課題解決に向けた提案を行うことにより収益の拡大を図りました。
オペレーション面では、お客さまの利便性向上のほか、業務効率向上や不在再配達率の削減に向け、置き配の普及・拡大等を進めるとともに、業務量に応じた担務別人件費・要員マネジメントの高度化や集配委託費も含めた、トータルコストコントロールに取り組みました。
また、テレマティクス端末(移動体通信システムを利用したサービス)を活用し、安全推進や業務の適正化を進めました。そのほか、配達業務支援システムの導入による荷物配達業務の高度化(一部の郵便局に限る)や、音声認識AIによる再配達依頼の自動受付(全郵便局)を開始するなど、先端技術の活用に向けた取組みを進めました。
さらに、2020年12月に郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律が公布され、日本郵便として各種サービスの見直しに向けた準備を進めました。
あわせて、「コンプライアンスは経営上の最重要課題」との基本的考え方に基づき、郵便物等の放棄・隠匿を含む部内犯罪の根絶、料金不適正収納の根絶、顧客情報の保護等に取り組みました。
また、日本郵便(単体)における当事業年度の総取扱物数は、郵便物が152億4,403万通(前期比6.8%減)、ゆうメールが32億9,931万個(前期比7.5%減)、ゆうパックが10億9,079万個(前期比11.9%増)(うち、ゆうパケットが4億9,666万個(前期比16.1%増))となりました。
当連結会計年度、郵便・物流事業におきましては、巣ごもり消費増加等に伴うEC利用拡大によりゆうパックが増加し、荷物が増収となったものの、国際郵便、普通郵便等の減少による減収を補うには至らず経常収益は2,071,877百万円(前期比56,310百万円減)、経常利益は126,587百万円(前期比22,598百万円減)となりました。なお、日本郵便の当連結会計年度における郵便・物流事業の営業収益は2,068,426百万円(前期比56,887百万円減)、営業利益は123,716百万円(前期比23,788百万円減)となりました。
引受郵便物等の状況
区分 | 前事業年度 | 当事業年度 | |||
物数(千通・千個) | 対前期比(%) | 物数(千通・千個) | 対前期比(%) | ||
総数 | 20,893,118 | △2.2 | 19,634,137 | △6.0 | |
郵便物 | 16,350,052 | △2.6 | 15,244,033 | △6.8 | |
内国 | 16,308,879 | △2.6 | 15,221,007 | △6.7 | |
普通 | 15,801,320 | △2.7 | 14,713,066 | △6.9 | |
第一種 | 7,971,018 | △0.8 | 7,765,391 | △2.6 | |
第二種 | 5,841,301 | △3.4 | 5,185,488 | △11.2 | |
第三種 | 189,844 | △3.7 | 178,738 | △5.8 | |
第四種 | 15,577 | △3.3 | 16,641 | 6.8 | |
年賀 | 1,725,673 | △9.7 | 1,556,543 | △9.8 | |
選挙 | 57,906 | 96.5 | 10,265 | △82.3 | |
特殊 | 507,559 | 2.0 | 507,941 | 0.1 | |
国際(差立) | 41,173 | △0.8 | 23,026 | △44.1 | |
通常 | 24,887 | 4.6 | 13,363 | △46.3 | |
小包 | 2,823 | △19.8 | 2,459 | △12.9 | |
国際スピード郵便 | 13,463 | △5.3 | 7,204 | △46.5 | |
荷物 | 4,543,066 | △1.1 | 4,390,104 | △3.4 | |
ゆうパック (含 ゆうパケット) | 974,457 | 3.4 | 1,090,792 | 11.9 | |
(再掲)ゆうパケット | 427,659 | 19.7 | 496,660 | 16.1 | |
ゆうメール | 3,568,609 | △2.2 | 3,299,312 | △7.5 |
(注) 1.第一種郵便物、第二種郵便物、第三種郵便物及び第四種郵便物の概要/特徴は、以下のとおりであります。
種類 | 概要/特徴 |
第一種郵便物 | お客さまがよく利用される「手紙」(封書)のことであります。一定の重量及び大きさの定形郵便物とそれ以外の定形外郵便物に分かれます。また、郵便書簡(ミニレター)、特定封筒(レターパックライト)及び小型特定封筒(スマートレター)も含んでおります。 |
第二種郵便物 | お客さまがよく利用される「はがき」のことであります。通常はがき及び往復はがきの2種類があります。年賀郵便物の取扱期間(12/15~1/7)以外に差し出された年賀はがきを含んでおります。 |
第三種郵便物 | 新聞、雑誌など年4回以上定期的に発行する刊行物で、日本郵便の承認を受けたものを内容とするものであります。 |
第四種郵便物 | 公共の福祉の増進を目的として、郵便料金を低料又は無料としているものであります。通信教育用郵便物、点字郵便物、特定録音物等郵便物、植物種子等郵便物、学術刊行物郵便物があります。 |
2.年賀は、年賀郵便物(年賀特別郵便(取扱期間12/15~12/28)及び12/29~1/7に差し出された年賀はがきで消印を省略したもの)の物数であります。
3.選挙は、公職選挙法に基づき、公職の候補者又は候補者届出政党から選挙運動のために差し出された通常はがきの物数であります。別掲で示しております。
4.特殊は、速達、書留、特定記録、本人限定受取等の特殊取扱(オプションサービス)を行った郵便物の物数の合計であります。交付記録郵便物用特定封筒(レターパックプラス)及び電子郵便(レタックス、Webゆうびん、e内容証明)を含んでおります。
5.国際通常郵便物の前事業年度の対前期比は、2019年4月に集計方法の変更を行う前の年度の通数との比較を表しているものです。
6.ゆうパックは、一般貨物法制の規制を受けて行っている宅配便の愛称であります。配送中は、追跡システムにより管理をしております。
7.ゆうパケットは、一般貨物法制の規制を受けて行っている宅配便の愛称であります。小型の荷物をお届けするもので、ゆうパックより安値でポスト投函も可能な商品であります。配送中は、追跡システムにより管理をしております。
8.ゆうメールは、一般貨物法制の規制を受けて行っている1kgまでの荷物の愛称であります。主に冊子とした印刷物やCD・DVDなどをお届けするもので、ゆうパックより安値でポスト投函も可能な商品であります。
② 金融窓口事業
金融窓口事業につきましては、2019年度、かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題が判明し、郵便局等での営業を自粛していたかんぽ生命保険商品、投資信託、提携金融商品(変額年金保険・引受条件緩和型医療保険・傷害保険)について、信頼回復に向けた業務運営を行うことから始めることとし、2020年10月以降、その取組みを進めました。
具体的には、郵便局等へのポスター掲出の他、お客さまに約束チラシをお渡しし、会社としてのお詫びと「お客さまの信頼回復に向けた約束」を遵守していくことをご説明しました。あわせて、かんぽご契約内容確認活動、投資信託・変額年金保険のアフターフォローに最優先で取り組み、既契約のお客さまのご不安や疑問点の解消に取り組みました。
また、不適正募集の根絶に向け、お申込みから契約締結までの重層的なチェックの実施、適正な募集管理のための体制等の強化、事故判定と処分基準の厳格化等によるけん制、内部監査部門の強化等に取り組みました。あわせて、お客さま本位の営業活動や総合的なコンサルティングサービスに寄与する各種研修を実施してきたほか、管理者に対し、新たなマネジメントの在り方、コーチングを取り入れた管理・指導手法を習得する研修も行いました。
そのほか、郵便局のショッピングセンター内等への新規出店や既存店舗の配置の見直し等を通じ、郵便局ネットワークの最適化にも取り組んできたほか、その価値を高めるため、地方公共団体事務の包括受託や郵便局窓口における地域金融機関の手続事務の受付、駅と郵便局の一体的な運営等、地方公共団体や他企業と連携しながら、地域やお客さまニーズに応じた個性・多様性ある郵便局の展開を進めました。
あわせて、「コンプライアンスは経営上の最重要課題」との基本的考え方に基づき、前述の保険募集の問題に取り組んだほか、顧客情報の保護、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策等に取り組みました。また、部内犯罪の根絶にも取り組んでいるところですが、長崎県で発覚した現金詐取事案を始めとする、管理社員による高額犯罪が発生したことが発覚したため、引き続き適切な再発防止策を講じ、全力で取り組んでまいります。
また、不動産事業においては、JPタワー等による事務所、商業施設、住宅や保育施設等の賃貸事業等を行いました。不動産事業における主なプロジェクトの概要は以下のとおりです。
名称 | 土地面積 (千㎡) | 延床面積 (千㎡) | 簿価 (百万円) | 持分シェア | ||
土地等 | 建物他 | |||||
JPタワー | 約11 | 約212 | 293,076 | 227,783 | 65,293 | 共同事業 メジャーシェア |
大宮JPビルディング | 約6 | 約45 | 10,340 | 3,903 | 6,437 | 単独事業 |
JPタワー名古屋 | 約12 | 約180 | 42,849 | 10,945 | 31,904 | 共同事業 メジャーシェア |
KITTE博多 | 約5 | 約64 | 20,848 | 7,385 | 13,463 | 単独事業 |
(注) 2021年3月31日時点
これらの取組みの結果、当連結会計年度、金融窓口事業におきましては、かんぽ生命保険の商品の積極的な提案を控えたことによる保険手数料の大幅な減収等により、経常収益は1,245,179百万円(前期比54,751百万円減)、経常利益は38,796百万円(前期比6,290百万円減)となりました。なお、日本郵便の当連結会計年度における金融窓口事業の営業収益は1,243,466百万円(前期比55,307百万円減)、営業利益は37,727百万円(前期比6,871百万円減)となりました。
郵便局数
支社名 | 営業中の郵便局(局) | |||||||
前事業年度末 | 当事業年度末 | |||||||
直営の郵便局 | 簡易 郵便局 | 計 | 直営の郵便局 | 簡易 郵便局 | 計 | |||
郵便局 | 分室 | 郵便局 | 分室 | |||||
北海道 | 1,208 | 1 | 268 | 1,477 | 1,207 | 1 | 264 | 1,472 |
東北 | 1,892 | 1 | 603 | 2,496 | 1,895 | 1 | 592 | 2,488 |
関東 | 2,394 | 0 | 171 | 2,565 | 2,391 | 0 | 160 | 2,551 |
東京 | 1,473 | 0 | 5 | 1,478 | 1,474 | 0 | 6 | 1,480 |
南関東 | 953 | 0 | 71 | 1,024 | 953 | 0 | 68 | 1,021 |
信越 | 974 | 0 | 318 | 1,292 | 976 | 0 | 314 | 1,290 |
北陸 | 668 | 0 | 167 | 835 | 668 | 0 | 162 | 830 |
東海 | 2,050 | 1 | 309 | 2,360 | 2,050 | 1 | 302 | 2,353 |
近畿 | 3,094 | 6 | 326 | 3,426 | 3,092 | 4 | 317 | 3,413 |
中国 | 1,751 | 2 | 450 | 2,203 | 1,752 | 2 | 446 | 2,200 |
四国 | 930 | 0 | 211 | 1,141 | 930 | 0 | 204 | 1,134 |
九州 | 2,501 | 0 | 895 | 3,396 | 2,498 | 0 | 886 | 3,384 |
沖縄 | 175 | 0 | 21 | 196 | 175 | 0 | 21 | 196 |
全国計 | 20,063 | 11 | 3,815 | 23,889 | 20,061 | 9 | 3,742 | 23,812 |
③ 国際物流事業
国際物流事業につきましては、日本郵便の子会社であるトール社の経営改善の取組みを継続しました。
また、引き続き、JPトールロジスティクス株式会社を活用し、コントラクトロジスティクス※1を中心とした BtoB 事業※2の拡大に取り組みました。
豪州経済の減速等によって赤字が継続していたエクスプレス事業※3は、2021年3月期においても新型コロナウイルス感染症やサイバー攻撃等の影響もあり、厳しい経営環境が続く中、トール社において売却の検討を行ってまいりましたが、2021年4月21日、Allegro Funds Pty Ltdの傘下企業との間で譲渡契約を締結いたしました。本件譲渡に必要な手続きの完了は2021年7月末となる見込みであります。なお、本件譲渡に伴い、当社グループは、当連結会計年度において、特別損失として674億円(減損損失619億円、その他の特別損失54億円)を計上しております。
※1 コントラクトロジスティクスとは、売買に関与しない第三者が特定の荷主顧客と契約を結び、輸送や在 庫・配送業務の効率運営を図るサービスのことです。
※2 BtoB 事業とは、Business-to-Businessの略で、企業間の商取引、企業が企業向けに行う事業のことです。
※3 エクスプレス事業とは、豪州及びニュージーランド国内におけるネットワークを活用して道路、鉄道、 海上及び航空貨物輸送サービスを提供する事業のことです。
これらの取組みの結果、当連結会計年度、国際物流事業におきましては、エクスプレス事業は減収になったものの、ロジスティクス事業アジア部門における新型コロナウイルス感染予防対策物資の大口取扱いにより増収となり、また経常費用は、コスト削減等により経常収益の増加を下回ったため、経常収益は750,069百万円(前期比114,874百万円増)、経常損失は7,003百万円(前期は21,447百万円の経常損失)となりました。なお、日本郵便の当連結会計年度における国際物流事業については、営業収益は749,878百万円(前期比114,923百万円増)、営業利益は3,505百万円(前期は8,683百万円の営業損失)となりました。
また、トール社を親会社とする連結グループは2021年3月末時点で880億円の債務超過となっております。
トール社の経営環境が非常に厳しい中、資金繰り安定化を企図し、トール社の借入等に対して、日本郵便による債務保証を付しております。
④ 銀行業
当連結会計年度、引き続き「お客さま本位の良質な金融サービスの提供」、「運用の高度化・多様化」、「地域への資金の循環等」、「経営管理態勢の強化」に取り組みました。
「お客さま本位の良質な金融サービスの提供」については、ゆうちょ銀行の即時振替サービスやmijica(Visaデビット・プリペイドカード)において、悪意の第三者による不正利用等が発生しました。この対応として、一部サービスを停止したほか、被害に遭われたお客さまに対する補償を行い、また、キャッシュレス決済サービスのセキュリティの堅牢性やお客さまの利用状況のモニタリング態勢等の再確認を行いました。その後、即時振替サービスについては、セキュリティ態勢等の確認ができた事業者から、2021年1月以降順次サービスの提供を再開したほか、mijicaについては、2022年春の新たなブランドデビットカードへの移行に向けて準備を進めております。
そのほか、新たなテクノロジーの活用や、お客さまの利便性を一層高めるような金融チャネルの高度化・充実を通じて、いつでもどこでも使える「新しいべんり」の提供に努めました。具体的には、「ゆうちょ通帳アプリ」の機能追加や、スマートフォン決済サービス「ゆうちょPay」を利用できる店舗の拡大を進めたほか、コールセンターへのAIシステムの導入など、デジタル技術を活用したお客さま対応の品質や運営効率の向上に取り組みました。さらに、幅広い世代のお客さまニーズに応えるために、「フラット35」の直接取扱いや「口座貸越サービス」等の新たなサービスの開始に向けて、2020年12月に金融庁及び総務省に認可を申請し、2021年4月に認可を取得しました。
また、お客さま本位の業務運営の一層の浸透を図る視点から、お客さまの資産形成への貢献のため、お客さまニーズに応じたコンサルティングの充実に努めました。
「運用の高度化・多様化」については、厳しい運用環境の中、リスク・リターンやクレジットクオリティ(投資先の信用力等)を意識しつつ、リスク性資産残高を2021年3月末時点で91.1兆円まで拡大し、リスク性資産のうち、戦略投資領域への投資については、優良な案件への選別的な投資に努め、残高を4.2兆円まで積み上げました。また、運用の高度化・多様化を推進していく中にあっても、財務健全性の観点から必要十分な自己資本比率を確保したほか、リスクアペタイト・フレームワーク(RAF)を活用し、ゆうちょ銀行が取得する適切なリスクの種類や水準を明確にしたうえで、安定的な収益と財務健全性のバランスに配慮した投資方針を決定しました
「地域への資金の循環等」については、お客さまの大切な資金を地域に循環し、地域経済の活性化に貢献するために、引き続き、地域金融機関との連携を通じて、事業承継や起業・創業支援、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けている企業への支援等を目的として、新たに4件(累計32件)の地域活性化ファンドに参加しました。また、2021年1月には、長期的視点に立って地方創生に向けた取組みを行う投資・事業経営会社「株式会社日本共創プラットフォーム(JPiX)」に出資しました。
「経営管理態勢の強化」については、お客さま本位の業務運営のため、ゆうちょ銀行の監査委員会及びJP改革実行委員会により、キャッシュレス決済サービスにおける不正利用事案に係るガバナンスの構築・運用状況の検証が行われ、改善に向けた提言が報告されました。こうした提言を踏まえ、お客さまからの苦情や相談対応について受付から解決まで一元的に管理する態勢を整備しました。また、グループ一体となって信頼回復に向けた業務運営を進めている最中、長崎県の郵便局で発覚した現金詐取事案を始め、部内犯罪が増加している事態を深刻に受けとめ、被害に遭われたお客さまに対する補償を行うとともに、日本郵便と連携し、発生原因の分析、再発防止策の検討等を行い、不祥事件の撲滅に向けてコンプライアンスの徹底・強化に取り組んでいます。
これらの取組みの結果、当連結会計年度、銀行業におきましては、年度末時点のゆうちょ銀行の貯金残高は189,593,469百万円(前期末比6,588,736百万円増)となりました。低金利環境の継続など厳しい経営環境下、有価証券利息の減少に伴い資金利益は減少しましたが、外貨調達コストの低下によるその他業務利益の増加もあり、経常収益は1,946,712百万円(前期比147,174百万円増)、経常利益は394,206百万円(前期比15,074百万円増)となりました。
なお、ゆうちょ銀行における損益の概要などの詳細な状況については、下記「(参考1) 銀行業を行う当社の子会社であるゆうちょ銀行(単体)の状況」「(参考2) 自己資本比率の状況」「(参考3) 資産の査定」に記載のとおりであります。
(参考1) 銀行業を行う当社の子会社であるゆうちょ銀行(単体)の状況
(a) 損益の概要
当事業年度の業務粗利益は、前事業年度比48億円増加の1兆3,190億円となりました。このうち、資金利益は、低金利環境の継続など厳しい経営環境下、有価証券利息が減少し、前事業年度比149億円の減少となりました。役務取引等利益は、投資信託関連手数料の減少を主因に、前事業年度比9億円の減少となりました。その他業務利益は、外貨調達コストの低下もあり、前事業年度比207億円の増加となりました。
経費は、物件費の削減を主因に、前事業年度比100億円減少の1兆101億円となりました。
業務純益は、前事業年度比149億円増加の3,088億円となりました。
経常利益は、前事業年度比152億円増加の3,943億円となりました。
この結果、当期純利益は2,798億円、前事業年度比67億円の増益となりました。
前事業年度 (百万円)(A) | 当事業年度 (百万円)(B) | 増減(百万円) (B)-(A) | |
業務粗利益 | 1,314,210 | 1,319,027 | 4,817 |
資金利益 | 976,821 | 961,884 | △14,937 |
役務取引等利益 | 128,891 | 127,943 | △948 |
その他業務利益 | 208,497 | 229,200 | 20,702 |
うち外国為替売買損益 | 202,139 | 254,666 | 52,527 |
うち国債等債券損益 | 8,097 | △25,980 | △34,077 |
経費(除く臨時処理分) | △1,020,253 | △1,010,175 | 10,078 |
人件費 | △122,586 | △119,374 | 3,211 |
物件費 | △844,334 | △834,256 | 10,078 |
税金 | △53,332 | △56,544 | △3,212 |
業務純益(一般貸倒引当金繰入前) | 293,956 | 308,852 | 14,895 |
一般貸倒引当金繰入額 | △15 | - | 15 |
業務純益 | 293,941 | 308,852 | 14,910 |
臨時損益 | 85,135 | 85,473 | 337 |
うち株式等関係損益 | 11,545 | △188,480 | △200,025 |
うち金銭の信託運用損益 | 72,838 | 272,749 | 199,910 |
経常利益 | 379,077 | 394,325 | 15,247 |
特別損益 | △450 | △1,564 | △1,113 |
固定資産処分損益 | △450 | △557 | △107 |
減損損失 | △0 | △1,006 | △1,006 |
税引前当期純利益 | 378,626 | 392,760 | 14,134 |
法人税、住民税及び事業税 | △101,266 | △124,123 | △22,857 |
法人税等調整額 | △4,315 | 11,200 | 15,516 |
法人税等合計 | △105,581 | △112,923 | △7,341 |
当期純利益 | 273,044 | 279,837 | 6,792 |
(注) 1.業務純益=業務粗利益-経費(除く臨時処理分)-一般貸倒引当金繰入額
2.臨時損益とは、損益計算書中「その他経常収益・費用」から一般貸倒引当金繰入額を除き、金銭の信託運用見合費用及び退職給付費用のうち臨時費用処理分等を加えたものであります。
3.「金銭の信託運用見合費用」とは、金銭の信託取得に係る資金調達費用であり、金銭の信託運用損益が臨時損益に計上されているため、業務費用から控除しているものであります。
4.国債等債券損益=国債等債券売却益+国債等債券償還益-国債等債券売却損-国債等債券償還損-国債等債券償却
5.株式等関係損益=株式等売却益-株式等売却損-株式等償却
6.金額が損失又は費用には△を付しております。
(参考) 与信関係費用
前事業年度 (百万円)(A) | 当事業年度 (百万円)(B) | 増減(百万円) (B)-(A) | |
与信関係費用 | △13 | △23 | △9 |
一般貸倒引当金繰入額 | △13 | △23 | △9 |
貸出金償却 | - | - | - |
個別貸倒引当金繰入額 | - | - | - |
償却債権取立益 | - | - | - |
(注) 1.金融再生法開示債権に係る費用を計上しております。
2.金額が損失又は費用には△を付しております。
(b) 国内・国際別の資金利益等
ゆうちょ銀行は、海外店や海外に本店を有する子会社(以下「海外子会社」といいます。)を有しておりませんが、円建の取引を「国内業務部門」、外貨建取引を「国際業務部門」に帰属させ(ただし、円建の対非居住者取引は「国際業務部門」に含む。)、各々の収益・費用を計上した結果、国内業務部門・国際業務部門別の資金利益等は次のとおりとなりました。
当事業年度は、国内業務部門においては、国債利息の減少を主因に資金利益は4,556億円に減少、役務取引等利益は1,278億円、その他業務利益は△413億円となりました。
国際業務部門においては、外貨調達コストの低下等により、資金調達費用が減少し、資金利益は5,061億円、役務取引等利益は0億円、その他業務利益は2,705億円となりました。
この結果、国内業務部門、国際業務部門の相殺消去後の合計は、資金利益は9,618億円、役務取引等利益は1,279億円、その他業務利益は2,292億円となりました。
イ.国内業務部門
前事業年度 (百万円)(A) | 当事業年度 (百万円)(B) | 増減(百万円) (B)-(A) | |
資金利益 | 549,737 | 455,698 | △94,039 |
資金運用収益 | 629,096 | 518,305 | △110,791 |
うち国債利息 | 428,156 | 364,671 | △63,485 |
資金調達費用 | 79,358 | 62,606 | △16,751 |
役務取引等利益 | 128,540 | 127,875 | △664 |
役務取引等収益 | 159,951 | 156,939 | △3,012 |
役務取引等費用 | 31,410 | 29,063 | △2,347 |
その他業務利益 | 3,164 | △41,327 | △44,491 |
その他業務収益 | 6,217 | 3,187 | △3,029 |
その他業務費用 | 3,052 | 44,514 | 41,461 |
ロ.国際業務部門
前事業年度 (百万円)(A) | 当事業年度 (百万円)(B) | 増減(百万円) (B)-(A) | |
資金利益 | 427,083 | 506,185 | 79,102 |
資金運用収益 | 789,429 | 751,460 | △37,969 |
うち外国証券利息 | 787,476 | 750,955 | △36,521 |
資金調達費用 | 362,345 | 245,274 | △117,071 |
役務取引等利益 | 350 | 67 | △283 |
役務取引等収益 | 613 | 436 | △176 |
役務取引等費用 | 262 | 369 | 106 |
その他業務利益 | 205,333 | 270,527 | 65,194 |
その他業務収益 | 206,671 | 290,497 | 83,826 |
その他業務費用 | 1,337 | 19,969 | 18,631 |
ハ.合計
前事業年度 (百万円)(A) | 当事業年度 (百万円)(B) | 増減(百万円) (B)-(A) | |
資金利益 | 976,821 | 961,884 | △14,937 |
資金運用収益 | 1,318,014 | 1,198,278 | △119,736 |
資金調達費用 | 341,193 | 236,393 | △104,799 |
役務取引等利益 | 128,891 | 127,943 | △948 |
役務取引等収益 | 160,564 | 157,376 | △3,188 |
役務取引等費用 | 31,673 | 29,433 | △2,240 |
その他業務利益 | 208,497 | 229,200 | 20,702 |
その他業務収益 | 212,888 | 293,684 | 80,796 |
その他業務費用 | 4,390 | 64,484 | 60,093 |
(注) 1.資金調達費用は、金銭の信託運用見合費用(前事業年度5,441百万円、当事業年度4,760百万円)を控除しております。
2.「国内業務部門」「国際業務部門」間の内部取引による相殺消去額は下表のとおりであります。
前事業年度 (百万円) | 当事業年度 (百万円) | |
国内業務部門・資金運用収益 | 100,511 | 71,487 |
国際業務部門・資金調達費用 | 100,511 | 71,487 |
(c) 国内・国際別資金運用/調達の状況
当事業年度の資金運用勘定の平均残高は210兆4,304億円、利回りは0.56%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は203兆6,928億円、利回りは0.11%となりました。
国内・国際別に見ますと、国内業務部門の資金運用勘定の平均残高は204兆9,282億円、利回りは0.25%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は197兆7,831億円、利回りは0.03%となりました。
国際業務部門の資金運用勘定の平均残高は67兆1,005億円、利回りは1.11%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は67兆5,080億円、利回りは0.36%となりました。
イ.国内業務部門
種類 | 前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||||
平均残高 | 利息 | 利回り | 平均残高 | 利息 | 利回り | 利回り | |
(百万円) | (百万円) | (%) (A) | (百万円) | (百万円) | (%) (B) | (%) (B)-(A) | |
資金運用勘定 | 198,026,308 | 629,096 | 0.31 | 204,928,217 | 518,305 | 0.25 | △0.06 |
うち貸出金 | 4,947,212 | 11,056 | 0.22 | 5,888,523 | 10,060 | 0.17 | △0.05 |
うち有価証券 | 71,842,673 | 492,509 | 0.68 | 70,330,066 | 410,942 | 0.58 | △0.10 |
うち預け金等 | 52,928,370 | 28,874 | 0.05 | 56,799,558 | 29,230 | 0.05 | △0.00 |
資金調達勘定 | 190,695,746 | 79,358 | 0.04 | 197,783,193 | 62,606 | 0.03 | △0.00 |
うち貯金 | 183,018,232 | 55,096 | 0.03 | 188,043,501 | 38,323 | 0.02 | △0.00 |
うち債券貸借取引受入担保金 | 229,198 | 229 | 0.10 | 155,875 | 155 | 0.09 | △0.00 |
(注) 1.「国内業務部門」は円建取引であります。
2.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度2,483,454百万円、当事業年度3,107,611百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度2,483,454百万円、当事業年度3,107,611百万円)及び利息(前事業年度1,744百万円、当事業年度1,147百万円)を控除しております。
3.預け金等は、譲渡性預け金、日銀預け金、コールローン、買入金銭債権であります。「ロ.国際業務部門」「ハ.合計」においても同様であります。
4.貯金は銀行法施行規則の負債科目「預金」に相当するものであります。「ロ.国際業務部門」「ハ.合計」においても同様であります。
ロ.国際業務部門
種類 | 前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||||
平均残高 | 利息 | 利回り | 平均残高 | 利息 | 利回り | 利回り | |
(百万円) | (百万円) | (%) (A) | (百万円) | (百万円) | (%) (B) | (%) (B)-(A) | |
資金運用勘定 | 63,366,957 | 789,429 | 1.24 | 67,100,563 | 751,460 | 1.11 | △0.12 |
うち貸出金 | 10,868 | 57 | 0.52 | 23,763 | 125 | 0.52 | 0.00 |
うち有価証券 | 63,239,883 | 787,476 | 1.24 | 66,938,098 | 750,955 | 1.12 | △0.12 |
うち預け金等 | 1,263 | 29 | 2.35 | - | - | - | △2.35 |
資金調達勘定 | 63,324,744 | 362,345 | 0.57 | 67,508,045 | 245,274 | 0.36 | △0.20 |
うち債券貸借取引受入担保金 | 2,240,788 | 49,376 | 2.20 | 1,482,339 | 6,752 | 0.45 | △1.74 |
(注) 1.「国際業務部門」は外貨建取引であります。ただし、円建対非居住者取引については、「国際業務部門」に含めております。
2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。
3.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度646,071百万円、当事業年度994,585百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度646,071百万円、当事業年度994,585百万円)及び利息(前事業年度3,696百万円、当事業年度3,613百万円)を控除しております。
ハ.合計
種類 | 前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||||
平均残高 | 利息 | 利回り | 平均残高 | 利息 | 利回り | 利回り | |
(百万円) | (百万円) | (%) (A) | (百万円) | (百万円) | (%) (B) | (%) (B)-(A) | |
資金運用勘定 | 203,590,095 | 1,318,014 | 0.64 | 210,430,410 | 1,198,278 | 0.56 | △0.07 |
うち貸出金 | 4,958,081 | 11,113 | 0.22 | 5,912,287 | 10,186 | 0.17 | △0.05 |
うち有価証券 | 135,082,556 | 1,279,986 | 0.94 | 137,268,164 | 1,161,897 | 0.84 | △0.10 |
うち預け金等 | 52,929,633 | 28,904 | 0.05 | 56,799,558 | 29,230 | 0.05 | △0.00 |
資金調達勘定 | 196,217,319 | 341,193 | 0.17 | 203,692,867 | 236,393 | 0.11 | △0.05 |
うち貯金 | 183,018,232 | 55,096 | 0.03 | 188,043,501 | 38,323 | 0.02 | △0.00 |
うち債券貸借取引受入担保金 | 2,469,986 | 49,605 | 2.00 | 1,638,214 | 6,908 | 0.42 | △1.58 |
(注) 1.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度3,129,526百万円、当事業年度4,102,197百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度3,129,526百万円、当事業年度4,102,197百万円)及び利息(前事業年度5,441百万円、当事業年度4,760百万円)を控除しております。
2.「国内業務部門」「国際業務部門」間の内部取引による相殺消去額は下表のとおりであります。
前事業年度 | 当事業年度 | |||
平均残高 (百万円) | 利息 (百万円) | 平均残高 (百万円) | 利息 (百万円) | |
国内業務部門・資金運用勘定 | 57,803,170 | 100,511 | 61,598,371 | 71,487 |
国際業務部門・資金調達勘定 | 57,803,170 | 100,511 | 61,598,371 | 71,487 |
(d) 役務取引等利益の状況
当事業年度の役務取引等利益は、電信振替の料金改定等により、為替・決済関連手数料が増加したものの、投資信託関連手数料が減少し、前事業年度比9億円減少の1,279億円となりました。
前事業年度 (百万円)(A) | 当事業年度 (百万円)(B) | 増減(百万円) (B)-(A) | |
役務取引等利益 | 128,891 | 127,943 | △948 |
為替・決済関連手数料 | 79,487 | 83,425 | 3,937 |
ATM関連手数料 | 19,095 | 20,152 | 1,056 |
投資信託関連手数料 | 21,764 | 14,654 | △7,110 |
その他 | 8,543 | 9,710 | 1,167 |
(参考) 投資信託の取扱状況(約定ベース)
前事業年度 (百万円)(A) | 当事業年度 (百万円)(B) | 増減(百万円) (B)-(A) | |
販売金額 | 691,496 | 262,912 | △428,583 |
純資産残高 | 2,301,781 | 2,565,801 | 264,020 |
(e) 預金残高の状況
当事業年度末の貯金残高は、通常貯金等の残高増加を主因に、前事業年度末比6兆5,887億円増加の189兆5,934億円となりました。
○ 預金の種類別残高(末残・構成比)
種類 | 前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||
金額(百万円) (A) | 構成比(%) | 金額(百万円) (B) | 構成比(%) | 金額(百万円) (B)-(A) | |
預金合計 | 183,004,733 | 100.00 | 189,593,469 | 100.00 | 6,588,736 |
流動性預金 | 87,567,568 | 47.84 | 101,309,018 | 53.43 | 13,741,449 |
振替貯金 | 7,712,325 | 4.21 | 9,150,117 | 4.82 | 1,437,791 |
通常貯金等 | 79,346,271 | 43.35 | 91,546,309 | 48.28 | 12,200,038 |
貯蓄貯金 | 508,971 | 0.27 | 612,591 | 0.32 | 103,619 |
定期性預金 | 95,298,907 | 52.07 | 88,145,649 | 46.49 | △7,153,258 |
定期貯金 | 5,225,651 | 2.85 | 4,709,291 | 2.48 | △516,359 |
定額貯金 | 90,073,256 | 49.21 | 83,436,358 | 44.00 | △6,636,898 |
その他の預金 | 138,256 | 0.07 | 138,801 | 0.07 | 544 |
譲渡性預金 | - | - | - | - | - |
総合計 | 183,004,733 | 100.00 | 189,593,469 | 100.00 | 6,588,736 |
○ 預金の種類別残高(平残・構成比)
種類 | 前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||
金額(百万円) (A) | 構成比(%) | 金額(百万円) (B) | 構成比(%) | 金額(百万円) (B)-(A) | |
預金合計 | 183,018,232 | 100.00 | 188,043,501 | 100.00 | 5,025,269 |
流動性預金 | 84,703,007 | 46.28 | 96,053,067 | 51.08 | 11,350,060 |
振替貯金 | 7,706,034 | 4.21 | 8,686,730 | 4.61 | 980,696 |
通常貯金等 | 76,527,985 | 41.81 | 86,803,482 | 46.16 | 10,275,497 |
貯蓄貯金 | 468,987 | 0.25 | 562,854 | 0.29 | 93,866 |
定期性預金 | 98,087,845 | 53.59 | 91,763,655 | 48.79 | △6,324,190 |
定期貯金 | 6,208,331 | 3.39 | 4,940,369 | 2.62 | △1,267,961 |
定額貯金 | 91,879,514 | 50.20 | 86,823,285 | 46.17 | △5,056,228 |
その他の預金 | 227,378 | 0.12 | 226,778 | 0.12 | △600 |
譲渡性預金 | - | - | - | - | - |
総合計 | 183,018,232 | 100.00 | 188,043,501 | 100.00 | 5,025,269 |
(注) 1.「通常貯金等」=通常貯金+特別貯金(通常郵便貯金相当)
2.貯金は銀行法施行規則の負債科目「預金」に相当するものであります。「振替貯金」は「当座預金」、「通常貯金」は「普通預金」、「貯蓄貯金」は「貯蓄預金」、「定期貯金」は「定期預金」に相当するものであります。「定額貯金」は「その他の預金」に相当するものでありますが、「定期性預金」に含めております。
3.特別貯金(通常郵便貯金相当)は郵政管理・支援機構からの預り金のうち、郵政管理・支援機構が公社から承継した定期郵便貯金、定額郵便貯金、積立郵便貯金、住宅積立郵便貯金、教育積立郵便貯金に相当する郵便貯金で満期となったものなどであります。
4.上記の通常貯金、定期性預金は、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3) 事業に係る主な法律関連事項 ③ 郵政民営化法 (f) ゆうちょ銀行における預入限度額」に記載の郵政民営化法における預入限度額規制上の区分とは異なります。
(f) 資産運用の状況(末残・構成比)
当事業年度末の運用資産のうち、国債は50.4兆円、その他の証券は71.1兆円となりました。
種類 | 前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||
金額(百万円) (A) | 構成比(%) | 金額(百万円) (B) | 構成比(%) | 金額(百万円) (B)-(A) | |
預け金等 | 51,485,414 | 24.80 | 60,667,097 | 27.50 | 9,181,682 |
コールローン | 1,040,000 | 0.50 | 1,390,000 | 0.63 | 350,000 |
買現先勘定 | 9,731,897 | 4.68 | 9,721,360 | 4.40 | △10,536 |
債券貸借取引支払保証金 | 112,491 | 0.05 | - | - | △112,491 |
金銭の信託 | 4,549,736 | 2.19 | 5,547,574 | 2.51 | 997,837 |
うち国内株式 | 1,859,682 | 0.89 | 2,261,772 | 1.02 | 402,089 |
うち国内債券 | 1,419,008 | 0.68 | 1,545,190 | 0.70 | 126,181 |
有価証券 | 135,198,460 | 65.14 | 138,183,264 | 62.64 | 2,984,804 |
国債 | 53,636,113 | 25.84 | 50,493,477 | 22.88 | △3,142,635 |
地方債 | 5,986,349 | 2.88 | 5,493,814 | 2.49 | △492,534 |
短期社債 | 806,975 | 0.38 | 1,869,535 | 0.84 | 1,062,560 |
社債 | 9,108,252 | 4.38 | 9,145,414 | 4.14 | 37,162 |
株式 | 3,255 | 0.00 | 13,755 | 0.00 | 10,500 |
その他の証券 | 65,657,514 | 31.63 | 71,167,266 | 32.26 | 5,509,752 |
うち外国債券 | 23,706,870 | 11.42 | 23,505,116 | 10.65 | △201,754 |
うち投資信託 | 41,901,017 | 20.19 | 47,591,186 | 21.57 | 5,690,169 |
貸出金 | 4,961,733 | 2.39 | 4,691,723 | 2.12 | △270,009 |
その他 | 439,879 | 0.21 | 394,410 | 0.17 | △45,468 |
合計 | 207,519,613 | 100.00 | 220,595,431 | 100.00 | 13,075,817 |
(注) 「預け金等」は譲渡性預け金、日銀預け金、買入金銭債権であります。
(g) 評価損益の状況(末残)
当事業年度末の評価損益(その他目的)は、ヘッジ考慮後で3兆488億円(税効果前)となりました。
前事業年度(A) | 当事業年度(B) | 増減(B)-(A) | ||||
貸借対照表 計上額 | 評価損益 | 貸借対照表 計上額 | 評価損益 | 貸借対照表 計上額 | 評価損益 | |
(百万円) | (百万円) | (百万円) | (百万円) | (百万円) | (百万円) | |
満期保有目的の債券 | 24,170,708 | 490,838 | 25,178,079 | 238,178 | 1,007,371 | △252,660 |
前事業年度(A) | 当事業年度(B) | 増減(B)-(A) | |||||
貸借対照表 計上額 /想定元本 | 評価損益 /ネット繰延 損益 | 貸借対照表 計上額 /想定元本 | 評価損益 /ネット繰延 損益 | 貸借対照表 計上額 /想定元本 | 評価損益 /ネット繰延 損益 | ||
(百万円) | (百万円) | (百万円) | (百万円) | (百万円) | (百万円) | ||
その他目的 | 115,936,195 | 370,622 | 118,940,510 | 3,586,863 | 3,004,314 | 3,216,241 | |
有価証券 | ① | 111,386,459 | △751,571 | 113,392,936 | 2,407,252 | 2,006,477 | 3,158,823 |
国債 | 32,597,964 | 794,222 | 29,917,094 | 542,798 | △2,680,869 | △251,424 | |
外国債券 | 23,706,870 | 429,425 | 23,505,116 | 1,031,399 | △201,754 | 601,973 | |
投資信託 | 41,901,017 | △2,040,416 | 47,591,186 | 776,215 | 5,690,169 | 2,816,632 | |
その他 | 13,180,607 | 65,196 | 12,379,538 | 56,838 | △801,068 | △8,358 | |
時価ヘッジ効果額 | ② | ― | 308,341 | ― | △173,512 | ― | △481,853 |
金銭の信託 | ③ | 4,549,736 | 813,852 | 5,547,574 | 1,353,124 | 997,837 | 539,271 |
国内株式 | 1,859,682 | 816,565 | 2,261,772 | 1,363,424 | 402,089 | 546,858 | |
その他 | 2,690,053 | △2,713 | 3,285,801 | △10,299 | 595,747 | △7,586 | |
デリバティブ取引 (繰延ヘッジ適用分) | ④ | 16,340,330 | △472,705 | 16,210,065 | △538,052 | △130,264 | △65,346 |
評価損益合計 ①+②+③+④ | ― | △102,083 | ― | 3,048,811 | ― | 3,150,894 |
(注) 「有価証券」には、有価証券のほか、現金預け金中の譲渡性預け金、買入金銭債権を含んでおります。
(h) 業種別貸出金残高の状況(末残・構成比)
業種別 | 前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||
金額(百万円) (A) | 構成比(%) | 金額(百万円) (B) | 構成比(%) | 金額(百万円) (B)-(A) | |
国内(除く特別国際金融取引勘定分) | 4,942,412 | 100.00 | 4,666,152 | 100.00 | △276,259 |
農業、林業、漁業、鉱業 | - | - | - | - | - |
製造業 | 43,524 | 0.88 | 81,669 | 1.75 | 38,145 |
電気・ガス等、情報通信業、運輸業 | 108,064 | 2.18 | 137,714 | 2.95 | 29,650 |
卸売業、小売業 | 31,155 | 0.63 | 34,255 | 0.73 | 3,099 |
金融・保険業 | 773,676 | 15.65 | 739,510 | 15.84 | △34,165 |
建設業、不動産業 | 12,983 | 0.26 | 63,184 | 1.35 | 50,200 |
各種サービス業、物品賃貸業 | 48,437 | 0.98 | 84,214 | 1.80 | 35,776 |
国、地方公共団体 | 3,782,410 | 76.52 | 3,428,219 | 73.46 | △354,190 |
その他 | 142,159 | 2.87 | 97,383 | 2.08 | △44,776 |
国際及び特別国際金融取引勘定分 | 19,321 | 100.00 | 25,571 | 100.00 | 6,250 |
政府等 | - | - | - | - | - |
その他 | 19,321 | 100.00 | 25,571 | 100.00 | 6,250 |
合計 | 4,961,733 | ― | 4,691,723 | ― | △270,009 |
(注) 1.「国内」とは本邦居住者に対する貸出、「国際」とは非居住者に対する貸出であります。
2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。
3.「金融・保険業」のうち郵政管理・支援機構向け貸出金は、前事業年度末439,734百万円、当事業年度末 340,563百万円であります。
(参考) リスク管理債権(末残)
前事業年度 (億円)(A) | 当事業年度 (億円)(B) | 増減(億円) (B)-(A) | |
破綻先債権 | - | - | - |
延滞債権 | 0 | - | △0 |
3カ月以上延滞債権 | - | - | - |
貸出条件緩和債権 | - | - | - |
合計 | 0 | - | △0 |
(参考2) 自己資本比率の状況
ゆうちょ銀行の自己資本比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しております。
なお、ゆうちょ銀行は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
連結自己資本比率(国内基準)
(単位:億円、%) | |
2021年3月31日 | |
1.連結自己資本比率(2/3) | 15.53 |
2.連結における自己資本の額 | 90,383 |
3.リスク・アセット等の額 | 581,668 |
4.連結総所要自己資本額 | 23,266 |
(注) 連結総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
単体自己資本比率(国内基準)
(単位:億円、%) | |
2021年3月31日 | |
1.単体自己資本比率(2/3) | 15.51 |
2.単体における自己資本の額 | 90,243 |
3.リスク・アセット等の額 | 581,571 |
4.単体総所要自己資本額 | 23,262 |
(注) 単体総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
(参考3) 資産の査定
資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号)第6条に基づき、ゆうちょ銀行の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。
(a) 破産更生債権及びこれらに準ずる債権
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
(b) 危険債権
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
(c) 要管理債権
要管理債権とは、3カ月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
(d) 正常債権
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記(a)から(c)までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
資産の査定の額
債権の区分 | 2020年3月31日 | 2021年3月31日 |
金額(億円) | 金額(億円) | |
破産更生債権及びこれらに準ずる債権 | - | - |
危険債権 | 0 | - |
要管理債権 | - | - |
正常債権 | 51,116 | 47,749 |
⑤ 生命保険業
かんぽ生命保険では、2019年度におけるかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題により、積極的な募集活動を停止し、お客さまからの信頼回復に向けた取組みを最優先に取り組んでまいりました。金融庁に提出した業務改善計画において掲げたご契約調査及び募集人調査並びに再発防止策としての「健全な組織風土の醸成・適正な営業推進態勢の確立」、「適正な募集管理態勢の強化」、「取締役会等によるガバナンスの強化」等の取り組みは、その大部分を既に実施しております。
「健全な組織風土の醸成・適正な営業推進態勢の確立」については、お客さま本位の理念を反映した勧誘方針に基づいてかんぽ営業の行動原則(かんぽ営業スタンダード)を策定し、募集人等に対してその理解・定着に向けた研修を継続してまいりました。また、契約乗換への対策として、契約乗換については手当(通常の契約の二分の一支給)を不支給とし、人事評価についても募集品質の確保を前提とした評価内容に見直しました。さらに、既契約の解約を伴わずに保障の見直しが可能な契約転換制度について、2020年11月に認可を取得し、2021年4月から取扱いを開始しました。また、これまで、貯蓄性の高い商品を主力としてまいりましたが、低金利環境下においてもお客さまニーズにより一層お応えするために、商品内容の改善に取り組んでおります。具体的には、青壮年層を中心とした低廉な保険料で長期の保障を希望するお客さまに提案できる商品の充実を図り、2021年4月から、保険期間を延長した普通定期保険及び特別養老保険の取扱いを開始しました。そのほか、社員から社長への直接提案制度やかんぽ生命保険経営陣が各支店等を訪問し、現場の社員の声を直接聞く「役員ダイアログ(対話)」の継続的な実施のほか 、ES※調査を通して把握した社員の声及び課題を踏まえ、業務の改善やES向上策の検討を行い、風通しのよい組織づくりに向けて取り組んでおります。
※ ESとは、従業員満足度のことです。
「適正な募集管理態勢の強化」については、お客さまのご意向に沿わない契約の発生を未然に防止するため、システムの整備等フロントライン及び本社におけるチェック・統制によるけん制機能の強化に取り組んでまいりました。2020年4月に、契約乗換の判定期間を拡大するとともに、判定期間に近接する契約についてはアラート表示を行い、確認を促す仕組みを整備したほか、お客さまの過去の契約の加入・消滅履歴等を簡易にシステム上で把握できる態勢も構築しました。また、郵便局管理者、かんぽ生命保険専用コールセンター及びサービスセンターによるお客さまへの重層的なご意向確認等を実施する態勢を構築したほか、募集状況の可視化を図るため、2020年8月から募集状況の録音等を郵便局の全コンサルタントへ実施対象を拡大しました。
「取締役会等によるガバナンスの強化」については、経営層がリスクを適切に把握できる体制の構築や、内部統制の強化等、ガバナンスの強化に努めてまいりました。
また、2019年7月以降、郵便局及びかんぽ生命保険直営店におけるかんぽ生命保険商品の積極的な営業活動を控えてまいりましたが、JP改革実行委員会より、営業再開についての最低限必要な条件を満たしているという評価を受けるとともに、信頼回復に向けた業務運営の趣旨が全社に浸透したこと等が確認できたことから、2020年10月より、信頼回復に向けた業務運営を開始し、お客さまにご迷惑・ご心配をおかけしたことのお詫びと「お客さまの信頼回復に向けた約束」のご説明を行うとともに、金融商品のアフターフォローに最優先で取り組み、お客さまのご不安や疑問点の解消を図りました。そして、信頼回復に向けた業務運営を継続する中で、お客さまの想定されるニーズの確認を行いながら、お客さまニーズに応じた金融商品の情報提供やご提案を実施することで、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタンスへ移行することとしました。
上記のかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題への対応のほか、「新型コロナウイルス感染症への対策」、「資産運用の多様化」を中心に取り組みました。
「新型コロナウイルス感染症への対策」については、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、2020年3月から、各種非常取扱いを実施したほか、同年4月から、死亡保険金に加えて、約款に定めた保険金額をお支払いする「保険金の倍額支払」の対象に新型コロナウイルス感染症により亡くなられた場合を含めることとしました。また、非対面でのサービス利用等の需要拡大に応えるべく、契約者さま向けWebサービス(マイページ)において、同年11月に入院・手術保険金支払に必要な書類請求機能を、2021年3月に年金支払に必要な現況届の手続機能を拡充しました。
「資産運用の多様化」については、継続的な低金利環境における安定的な運用収益の確保を目指し、ALMを基本としつつ、リスクバッファーの範囲で収益追求資産への投資を継続しております。資産運用の多様化を図るため、海外クレジットの運用拡大の一環として、米国社債の自家運用に引き続き取り組むとともに、株式の自家運用やオルタナティブ投資等についても継続して推進しております。これら資産運用の取組みについては、ERM※の枠組みのもとで財務の健全性の確保や、リスク・リターンの向上を図っております。
※ ERMとは、Enterprise Risk Managementの略語で、会社が直面するリスクに関して、潜在的に重要なリスクを含めて総体的に捉え、会社全体の自己資本などと比較・対照することによって、事業全体として行うリスク管理のことです。
これらの取組みをしてまいりましたが、当連結会計年度、生命保険業におきましては、主に保有契約の減少による保険料等収入の減少により、経常収益は6,786,226百万円(前期比425,178百万円減)となりました。また、保有契約の減少が続く厳しい状況の中、新契約の減少に伴う事業費の減少や保険金等支払金の減少等により基礎利益(生命保険会社の基礎的な期間損益の状況を表す指標)が増加したことに加え、金融派生商品費用の減少等によりキャピタル損益が改善したこと等から、経常利益は345,736百万円(前期比59,134百万円増)となりました。
かんぽ生命保険における保険引受及び資産運用の状況などの詳細な状況については、下記「(参考)生命保険業を行う当社の子会社であるかんぽ生命保険の状況」に記載のとおりであります。
(参考)生命保険業を行う当社の子会社であるかんぽ生命保険の状況
(下表(a)イ.~ニ.の個人保険及び個人年金保険には、かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約を含みません。)
(a) 保険引受及び資産運用の状況
イ.保有契約高明細表
区分 | 前事業年度末 | 当事業年度末 | ||
件数(千件) | 金額(百万円) | 件数(千件) | 金額(百万円) | |
個人保険 | 17,163 | 49,915,586 | 15,893 | 45,912,230 |
個人年金保険 | 1,164 | 1,930,642 | 1,009 | 1,563,865 |
(注) 個人年金保険の金額は、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金額を合計したものであります。
ロ.新契約高明細表
区分 | 前事業年度 | 当事業年度 | ||
件数(千件) | 金額(百万円) | 件数(千件) | 金額(百万円) | |
個人保険 | 644 | 1,893,727 | 124 | 390,355 |
個人年金保険 | 0 | 3,527 | 0 | 176 |
(注) 個人年金保険の金額は、年金支払開始時における年金原資であります。
ハ.保有契約年換算保険料明細表
(単位:百万円) | |||
区分 | 前事業年度末 | 当事業年度末 | |
個人保険 | 3,144,610 | 2,840,092 | |
個人年金保険 | 412,062 | 357,160 | |
合計 | 3,556,673 | 3,197,252 | |
うち医療保障・ 生前給付保障等 | 393,881 | 364,682 |
(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額)。
2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
ニ.新契約年換算保険料明細表
(単位:百万円) | |||
区分 | 前事業年度 | 当事業年度 | |
個人保険 | 146,966 | 30,643 | |
個人年金保険 | 314 | 16 | |
合計 | 147,280 | 30,659 | |
うち医療保障・ 生前給付保障等 | 22,132 | 1,459 |
(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額)。
2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
(参考)かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約の状況
(a) 保有契約高
区分 | 前事業年度末 | 当事業年度末 | ||
件数 (千件) | 保険金額・年金額 (百万円) | 件数 (千件) | 保険金額・年金額 (百万円) | |
保険 | 9,908 | 26,143,225 | 8,945 | 23,634,803 |
年金保険 | 1,540 | 524,117 | 1,426 | 478,926 |
(注) 計数は、郵政管理・支援機構における公表基準によるものであります。
(b) 保有契約年換算保険料
(単位:百万円) | |||
区分 | 前事業年度末 | 当事業年度末 | |
保険 | 1,174,082 | 1,058,047 | |
年金保険 | 511,933 | 471,602 | |
合計 | 1,686,015 | 1,529,649 | |
うち医療保障・ 生前給付保障等 | 321,656 | 304,432 |
(注) かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約について、上記ハ.に記載しております個人保険及び個人年金保険の保有契約年換算保険料と同様の計算方法により、かんぽ生命保険が算出した金額であります。
ホ.一般勘定資産の構成
区分 | 前事業年度末 | 当事業年度末 | ||||
金額(百万円) | 構成比(%) | 金額(百万円) | 構成比(%) | |||
現預金・コールローン | 1,786,640 | 2.5 | 1,459,749 | 2.1 | ||
買現先勘定 | - | - | - | - | ||
債券貸借取引支払保証金 | 3,191,710 | 4.5 | 2,585,087 | 3.7 | ||
買入金銭債権 | 318,581 | 0.4 | 276,772 | 0.4 | ||
商品有価証券 | - | - | - | - | ||
金銭の信託 | 3,056,072 | 4.3 | 4,189,294 | 6.0 | ||
有価証券 | 55,871,541 | 78.0 | 55,274,594 | 78.8 | ||
公社債 | 48,954,516 | 68.3 | 48,264,456 | 68.8 | ||
株式 | 286,975 | 0.4 | 404,577 | 0.6 | ||
外国証券 | 4,687,342 | 6.5 | 4,632,376 | 6.6 | ||
公社債 | 4,522,175 | 6.3 | 4,479,823 | 6.4 | ||
株式等 | 165,167 | 0.2 | 152,552 | 0.2 | ||
その他の証券 | 1,942,706 | 2.7 | 1,973,184 | 2.8 | ||
貸付金 | 5,662,748 | 7.9 | 4,964,087 | 7.1 | ||
保険約款貸付 | 152,681 | 0.2 | 161,419 | 0.2 | ||
一般貸付 | 994,446 | 1.4 | 996,127 | 1.4 | ||
機構貸付 | 4,515,620 | 6.3 | 3,806,540 | 5.4 | ||
不動産 | 89,561 | 0.1 | 88,707 | 0.1 | ||
うち投資用不動産 | - | - | - | - | ||
繰延税金資産 | 1,173,751 | 1.6 | 904,333 | 1.3 | ||
その他 | 517,239 | 0.7 | 431,615 | 0.6 | ||
貸倒引当金 | △448 | △0.0 | △384 | △0.0 | ||
合計 | 71,667,398 | 100.0 | 70,173,857 | 100.0 | ||
うち外貨建資産 | 4,980,015 | 6.9 | 5,397,078 | 7.7 |
(注) 1.機構貸付とは、郵政管理・支援機構(簡易生命保険勘定)への貸付であります。
2.不動産については、土地・建物・建設仮勘定を合計した金額を計上しております。
ヘ.一般勘定資産の資産別運用利回り
(単位:%) | |||
区分 | 前事業年度 | 当事業年度 | |
現預金・コールローン | 0.00 | 0.00 | |
買現先勘定 | - | - | |
債券貸借取引支払保証金 | - | - | |
買入金銭債権 | 0.17 | 0.14 | |
商品有価証券 | - | - | |
金銭の信託 | 1.99 | 2.86 | |
有価証券 | 1.47 | 1.57 | |
うち公社債 | 1.53 | 1.51 | |
うち株式 | 1.24 | 2.72 | |
うち外国証券 | 0.97 | 2.16 | |
貸付金 | 1.94 | 1.82 | |
うち一般貸付 | 1.12 | 1.09 | |
不動産 | - | - | |
一般勘定計 | 1.41 | 1.51 | |
うち海外投融資 | 1.21 | 2.15 |
(注) 1.利回り計算式の分母は帳簿価額ベースの日々平均残高、分子は経常損益中、資産運用収益-資産運用費用として算出した利回りであります。
2.一般勘定計には、有価証券信託に係る資産を含めております。
3.海外投融資とは、外貨建資産と円建資産の合計であります。
(b) 基礎利益
基礎利益は、保険料等収入、保険金等支払金、事業費等の保険関係の収支と、利息及び配当金等収入を中心とした運用関係の収支からなる、生命保険会社の基礎的な期間損益の状況を表す指標であります。
かんぽ生命保険の当事業年度における基礎利益は、4,219億円となりました。
(経常利益等の明細(基礎利益))
(単位:百万円) | |||
項目 | 前事業年度 | 当事業年度 | |
基礎利益 | (A) | 400,609 | 421,943 |
キャピタル収益 | 87,260 | 115,775 | |
金銭の信託運用益 | 51,560 | 87,593 | |
売買目的有価証券運用益 | - | - | |
有価証券売却益 | 35,699 | 20,422 | |
金融派生商品収益 | - | - | |
為替差益 | - | 7,759 | |
その他キャピタル収益 | - | - | |
キャピタル費用 | 189,693 | 132,878 | |
金銭の信託運用損 | - | - | |
売買目的有価証券運用損 | - | - | |
有価証券売却損 | 32,020 | 32,789 | |
有価証券評価損 | 2,689 | - | |
金融派生商品費用 | 74,799 | 21,604 | |
為替差損 | 2,085 | - | |
その他キャピタル費用 | 78,097 | 78,484 | |
キャピタル損益 | (B) | △102,433 | △17,102 |
キャピタル損益含み基礎利益 | (A)+(B) | 298,175 | 404,840 |
臨時収益 | 165,388 | 186,023 | |
再保険収入 | - | - | |
危険準備金戻入額 | 165,388 | 186,023 | |
個別貸倒引当金戻入額 | - | - | |
その他臨時収益 | - | - | |
臨時費用 | 176,734 | 245,841 | |
再保険料 | - | - | |
危険準備金繰入額 | - | - | |
個別貸倒引当金繰入額 | - | - | |
特定海外債権引当勘定繰入額 | - | - | |
貸付金償却 | - | - | |
その他臨時費用 | 176,734 | 245,841 | |
臨時損益 | (C) | △11,345 | △59,818 |
経常利益 | (A)+(B)+(C) | 286,829 | 345,022 |
(注) 1.金銭の信託に係るインカム・ゲインに相当する額(前事業年度:78,097百万円、当事業年度:78,484百万円)を「その他キャピタル費用」に計上し、基礎利益に含めております。
2.「その他臨時費用」には、保険業法施行規則第69条第5項の規定により責任準備金を追加して積み立てた額(前事業年度:176,734百万円、当事業年度:245,841百万円)を記載しております。
(c) かんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率
生命保険会社は将来の保険金等の支払いに備えて責任準備金を積み立てており、通常予測できる範囲のリスクについては責任準備金の範囲内で対応できます。
ソルベンシー・マージン比率とは、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つであります。
この比率が200%を下回った場合は、当局によって早期是正措置がとられます。逆にこの比率が200%以上であれば、健全性の一つの基準を満たしていることになります。
当連結会計年度末におけるかんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率は1,121.2%と高い健全性を維持しております。
(単位:百万円) | ||||
項目 | 前連結会計年度末 | 当連結会計年度末 | ||
ソルベンシー・マージン総額 | (A) | 5,161,600 | 6,216,257 | |
資本金等 | 1,639,908 | 1,763,280 | ||
価格変動準備金 | 858,339 | 904,816 | ||
危険準備金 | 1,797,366 | 1,611,343 | ||
異常危険準備金 | - | - | ||
一般貸倒引当金 | 37 | 36 | ||
(その他有価証券評価差額金(税効果控除前)・繰延ヘッジ 損益(税効果控除前))×90%(マイナスの場合100%) | 328,782 | 1,283,545 | ||
土地の含み損益×85%(マイナスの場合100%) | 19 | 2,203 | ||
未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の合計額 | 4,261 | 4,835 | ||
全期チルメル式責任準備金相当額超過額 | 442,807 | 364,059 | ||
負債性資本調達手段等 | 100,000 | 300,000 | ||
全期チルメル式責任準備金相当額超過額及び負債性 資本調達手段等のうち、マージンに算入されない額 | - | - | ||
控除項目 | △9,923 | △17,862 | ||
その他 | - | - | ||
リスクの合計額 [{(R12+R52)1/2+R8+R9}2+(R2+R3+R7)2]1/2+R4+R6 | (B) | 963,888 | 1,108,789 | |
保険リスク相当額 | R1 | 137,197 | 130,961 | |
一般保険リスク相当額 | R5 | - | - | |
巨大災害リスク相当額 | R6 | - | - | |
第三分野保険の保険リスク相当額 | R8 | 54,172 | 49,371 | |
少額短期保険業者の保険リスク相当額 | R9 | - | - | |
予定利率リスク相当額 | R2 | 136,652 | 131,404 | |
最低保証リスク相当額 | R7 | - | - | |
資産運用リスク相当額 | R3 | 785,317 | 937,296 | |
経営管理リスク相当額 | R4 | 22,266 | 24,980 | |
ソルベンシー・マージン比率 (A)/{(1/2)×(B)}×100 | 1,070.9% | 1,121.2% |
(注) 保険業法施行規則第86条の2、第88条及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
(d) かんぽ生命保険のEV
イ.EVの概要
ⅰ EVについて
エンベディッド・バリュー(以下「EV」といいます。)は対象事業に割り当てられた、資産及び負債から生じる株主への分配可能な利益の価値の見積りであります。ただし、将来の新契約から生じる価値は含みません。この価値は、修正純資産及び保有契約価値で構成されるものであります。
修正純資産は株主に帰属すると考えられる純資産(時価)であり、必要資本とフリー・サープラスで構成されるものであります。
保有契約価値は、保有契約及び保有契約に係る資産から将来発生すると見込まれる株主への分配可能な利益の評価日時点の現在価値であり、必要資本を維持するための費用等を控除したものであります。
生命保険契約は、一般に販売時に多くのコストが発生するため、一時的には損失が発生するものの、契約が継続することで、将来にわたり生み出される利益によりそのコストを回収することが期待される収支構造となっております。現行の法定会計では、このような収支構造をそのまま各年度の損益として把握しておりますが、EVは、全保険期間を通じた損益を現在価値で評価することとなるため、現行の法定会計による財務情報では不足する情報を補うことができる指標の一つと考えております。
ⅱ EEVについて
EVの開示に関する一貫性と透明性の改善を図る目的で、2004年5月にヨーロッパの主要保険会社のCFO(最高財務責任者)の集まりである、CFOフォーラムが、ヨーロピアン・エンベディッド・バリュー(以下「EEV」といいます。)原則及び指針(ガイダンス)を制定いたしました。
2016年5月には、CFOフォーラムによってEEV原則の改正が公表され、EVに2016年1月から施行された欧州ソルベンシーⅡ等の計算で用いた計算手法及び前提の使用が許容されるようになりました。
ⅲ EEVの計算手法
今回のEEVの計算には、市場整合的手法を用いております。この手法は、資産又は負債から発生するキャッシュ・フローを市場で取引されている金融商品と整合的に評価するものであります。
ロ.簡易生命保険契約について
かんぽ生命保険は、郵政民営化法に基づき、2007年10月1日に発足しました。また、2007年9月末までに契約された簡易生命保険契約は、郵政管理・支援機構に承継されるとともに、郵政管理・支援機構が負う保険責任のすべてについて、かんぽ生命保険が受再しております。
かんぽ生命保険は、郵政管理・支援機構との再保険契約において、簡易生命保険契約を他の保険契約と区分して管理すること(簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金も区分して管理すること)、簡易生命保険契約から生じた利益(危険準備金及び価格変動準備金の戻入による利益も含んでおります。)も区分して管理すること、及び郵政管理・支援機構が簡易生命保険契約に対して既に約款で約束している確定配当所要額と再保険損益(確定配当所要額及び法人税等を除いたこの区分における利益)の8割の合計額を、郵政管理・支援機構へ再保険配当として支払うことを定めております。EEVの計算においては、この郵政管理・支援機構への再保険配当を差し引いた後の利益を反映しております。
このように郵政管理・支援機構への再保険配当の原資に、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金の戻入による利益が含まれることから、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金は修正純資産には含めておらず、将来において戻入する前提で保有契約価値に含めて計算しております。
ハ.EEVの計算結果
かんぽ生命保険のEEVは以下のとおりであります。
(単位:億円) | ||||
前事業年度末 | 当事業年度末 | 増減 | ||
EEV | 33,242 | 40,262 | 7,019 | |
修正純資産 | 22,124 | 23,768 | 1,644 | |
保有契約価値 | 11,118 | 16,493 | 5,374 | |
前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||
新契約価値 | 606 | △127 | △733 |
ⅰ 修正純資産
修正純資産は、資産の市場価値のうち、契約者に対する負債及びその他の負債の価値を超過する部分であり、株主に帰属すると考えられる価値であります。当期純利益による増加を主な理由として、当事業年度末における修正純資産は前事業年度末から増加しております。修正純資産の内訳は以下のとおりであります。
(単位:億円) | ||||
前事業年度末 | 当事業年度末 | 増減 | ||
修正純資産 | 22,124 | 23,768 | 1,644 | |
純資産の部計(注1) | 16,616 | 18,064 | 1,447 | |
価格変動準備金(注2) | 2,263 | 2,497 | 233 | |
危険準備金(注2) | 4,766 | 4,816 | 49 | |
その他(注3) | 618 | 609 | △9 | |
上記項目に係る税効果 | △2,141 | △2,218 | △76 |
(注) 1.計算対象に子会社を含めているため、かんぽ生命保険の連結貸借対照表の純資産の部合計を計上しております。ただし、その他の包括利益累計額合計を除いております。また、自己株式に計上している株式給付信託(BBT)が保有するかんぽ生命保険の株式の帳簿価額を加えております。
2.簡易生命保険契約に係る部分を除いております。
3.保険契約に係らない有価証券、貸付金及び不動産の含み損益、一般貸倒引当金、退職給付の未積立債務(未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異)並びに劣後債の含み損益を計上しております。
当事業年度末の修正純資産を計算する際に除いた保険契約に係る部分は以下のとおりであります。
(単位:億円) | ||||
会社合計 ① | 保険契約に 係る部分 ② | 修正純資産 ①-② | ||
修正純資産 | 91,908 | 68,139 | 23,768 | |
純資産の部計(注1) | 18,064 | - | 18,064 | |
価格変動準備金(注2) | 9,048 | 6,551 | 2,497 | |
危険準備金(注2) | 16,113 | 11,296 | 4,816 | |
その他(注3) | 77,219 | 76,609 | 609 | |
上記項目に係る税効果 | △28,536 | △26,317 | △2,218 |
(注) 1.かんぽ生命保険の連結貸借対照表の純資産の部合計を計上しております。ただし、その他の包括利益累計額合計を除いております。また、自己株式に計上している株式給付信託(BBT)が保有するかんぽ生命保険の株式の帳簿価額を加えております。
2.保険契約に係る部分(②)は、簡易生命保険契約に係る部分を計上しております。「ロ.簡易生命保険契約について」をご参照ください。
3.有価証券、貸付金及び不動産の含み損益、一般貸倒引当金、退職給付の未積立債務(未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異)並びに劣後債の含み損益を計上しております。
ⅱ 保有契約価値
保有契約価値は、保有契約の評価日時点における価値を表したもので、保有契約及び保有契約に係る資産から将来発生すると見込まれる株主への分配可能な利益を現在価値に割り引いております。「ニ.前事業年度末EEVからの変動要因」に記載のとおり、前提条件(経済前提)と実績の差異を主な理由として、当事業年度末における保有契約価値は前事業年度末から増加しております。保有契約価値の内訳は以下のとおりであります。
将来利益の計算において保険契約に係る資産は簿価評価しております。また、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金が将来において戻入する前提で、その戻入による利益を含めて計算しております。「ロ.簡易生命保険契約について」をご参照ください。
(単位:億円) | ||||
前事業年度末 | 当事業年度末 | 増減 | ||
保有契約価値 | 11,118 | 16,493 | 5,374 | |
確実性等価将来利益現価 | 18,067 | 20,541 | 2,473 | |
オプションと保証の時間価値 | △4,560 | △2,323 | 2,236 | |
必要資本を維持するための費用 | △0 | △0 | 0 | |
ヘッジ不能リスクに係る費用 | △2,388 | △1,724 | 664 |
ⅲ 新契約価値
新契約価値は、当期間に獲得した新契約(医療特約の切替加入契約及び条件付解約による加入契約については正味増加分のみ)の契約獲得時点における価値を表したものであります。
当事業年度において積極的な営業活動を自粛している一方、新契約獲得にはその多寡によらない一定の事業費等が必要となるため、当事業年度の新契約価値は前事業年度から減少しております。新契約価値の内訳は以下のとおりであります。
(単位:億円) | ||||
前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | ||
新契約価値 | 606 | △127 | △733 | |
確実性等価将来利益現価 | 701 | △110 | △811 | |
オプションと保証の時間価値 | △57 | △11 | 45 | |
必要資本を維持するための費用 | △0 | △0 | △0 | |
ヘッジ不能リスクに係る費用 | △37 | △5 | 32 |
なお、新契約マージン(新契約価値の保険料収入現価に対する比率)は以下のとおりであります。
(単位:億円) | |||
前事業年度 | 当事業年度 | 増減 | |
新契約価値 | 606 | △127 | △733 |
保険料収入現価(注) | 14,868 | 2,523 | △12,344 |
新契約マージン | 4.08% | △5.05% | △9.13ポイント |
(注) 将来の収入保険料を、新契約価値の計算に用いたリスク・フリー・レートで割り引いております。
ニ.前事業年度末EEVからの変動要因
(単位:億円) | ||||
修正純資産 | 保有契約価値 | EEV | ||
前事業年度末EEV | 22,124 | 11,118 | 33,242 | |
ⅰ 前事業年度末EEVの調整 | △213 | - | △213 | |
前事業年度末EEV(調整後) | 21,910 | 11,118 | 33,028 | |
ⅱ 当事業年度新契約価値 | - | △127 | △127 | |
ⅲ 期待収益(リスク・フリー・レート分) | △25 | 748 | 722 | |
ⅳ 期待収益(超過収益分) | 46 | 599 | 646 | |
ⅴ 保有契約価値からの移管 | 1,425 | △1,425 | - | |
うち前事業年度末保有契約 | 1,495 | △1,495 | - | |
うち当事業年度新契約 | △69 | 69 | - | |
ⅵ 前提条件(非経済前提)と実績の差異 | 383 | △30 | 352 | |
ⅶ 前提条件(非経済前提)の変更 | - | 40 | 40 | |
ⅷ 前提条件(経済前提)と実績の差異 | 29 | 5,568 | 5,597 | |
当事業年度末EEV | 23,768 | 16,493 | 40,262 |
ⅰ 前事業年度末EEVの調整
かんぽ生命保険は当事業年度において213億円の株主配当金を支払っており、修正純資産がその分減少しております。
ⅱ 当事業年度新契約価値
新契約価値は、当事業年度に新契約を獲得したことによる契約獲得時点における価値を表したものであり、契約獲得に係る費用を控除した後の金額が反映されております。当事業年度において積極的な営業活動を自粛している一方、新契約獲得にはその多寡によらない一定の事業費等が必要となるため、新契約価値はマイナスになっております。
ⅲ 期待収益(リスク・フリー・レート分)
保有契約価値の計算にあたっては、将来の期待収益をリスク・フリー・レートで割り引いておりますので、時間の経過とともに割引の影響が解放されます。これには、オプションと保証の時間価値、必要資本を維持するための費用及びヘッジ不能リスクに係る費用のうち当事業年度分の解放を含んでおります。修正純資産からは、対応する資産からリスク・フリー・レート(△0.150%)分に相当する収益が発生しております。
ⅳ 期待収益(超過収益分)
EEVの計算にあたっては、将来の期待収益としてリスク・フリー・レートを用いておりますが、実際の会社はリスク・フリー・レートを超過する利回りを期待しております。この項目は、その期待される超過収益を表しております。
ⅴ 保有契約価値からの移管
当事業年度に実現が期待されていた利益が、保有契約価値から修正純資産に移管されます。これには、前事業年度末の保有契約から期待される当事業年度の利益と、当事業年度に獲得した新契約からの、契約獲得に係る費用を含めた当事業年度の損益が含まれております。
これらは保有契約価値から修正純資産への振替えであり、EEVの金額には影響しません。
ⅵ 前提条件(非経済前提)と実績の差異
前事業年度末の保有契約価値の計算に用いた前提条件(非経済前提)と、当事業年度の実績の差額であります。
ⅶ 前提条件(非経済前提)の変更
前提条件(非経済前提)を更新したことにより、翌事業年度以降の収支が変化することによる影響であります。
ⅷ 前提条件(経済前提)と実績の差異
市場金利やインプライド・ボラティリティ等の経済前提が、前事業年度末EEV計算に用いたものと異なることによる影響であります。当該影響は、当事業年度の実績及び翌事業年度以降の見積りの変更を含んでおります。
主に為替変動リスクのヘッジに伴う金融派生商品収益の発生により、修正純資産は29億円増加しております。
主に国内金利の変動や株価の上昇により、保有契約価値は5,568億円増加しております。
ホ.感応度(センシティビティ)
前提条件を変更した場合のEEVの感応度は以下のとおりであります。感応度は、一度に1つの前提のみを変化させることとしており、同時に2つの前提を変化させた場合の感応度は、それぞれの感応度の合計とはならないことにご注意ください。
(単位:億円) | ||
前提条件 | EEV | 増減額 |
当事業年度末EEV | 40,262 | - |
感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇 | 41,117 | 855 |
感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下 | 38,529 | △1,732 |
感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし) | 38,223 | △2,038 |
感応度4:株式・不動産価値10%下落 | 38,973 | △1,288 |
感応度5:事業費率(維持費)10%減少 | 42,253 | 1,991 |
感応度6:解約失効率10%減少 | 40,382 | 120 |
感応度7:保険事故発生率(死亡保険)5%低下 | 41,369 | 1,107 |
感応度8:保険事故発生率(年金保険)5%低下 | 39,254 | △1,007 |
感応度9:必要資本を法定最低水準に変更 | 40,262 | 0 |
感応度10:株式・不動産のインプライド・ボラティリティ25%上昇 | 39,312 | △949 |
感応度11:金利スワップションのインプライド・ボラティリティ25%上昇 | 39,687 | △574 |
感応度1から4について、修正純資産の増減額は以下のとおりであります。また、感応度5から11については、保有契約価値のみの増減額となります。
(単位:億円) | ||
前提条件 | 増減額 | (参考) 会社合計の 増減額(注) |
感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇 | △792 | △23,052 |
感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下 | 338 | 12,492 |
感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし) | 847 | 25,106 |
感応度4:株式・不動産価値10%下落 | △65 | △2,551 |
(注) 参考値として、保有契約に係る資産の含み損益も加えた増減額(税引後に換算)を示しております。なお、EEVの計算にあたって、保険契約に係る部分の資産の含み損益については、修正純資産ではなく、保有契約価値の計算に含めて評価しております。
当事業年度において積極的な営業活動を自粛しているため新契約量は小さく、新契約価値の感応度に重要性がないため、算定しておりません。
ⅰ 感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp上昇した場合の影響を表しております。金利の変動により時価が変動する債券・貸付金等を再評価するとともに、将来の運用利回りや割引率を変動させて保有契約価値を再計算しております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅱ 感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp低下した場合の影響を表しております。なお、50bpにより低下後のリスク・フリー・レートが0%を下回る場合は0%としております。ただし、50bp低下前のリスク・ フリー・レートが0%を下回る場合はその値をそのまま使用しております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅲ 感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし)
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp低下した場合の影響を表しております。なお、感応度2と異なり、リスク・フリー・レートの正負を判定せず、下限を設けずに50bp低下させております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅳ 感応度4:株式・不動産価値10%下落
株式及び不動産の評価日時点の価格が10%下落した場合の影響を表しております。
ⅴ 感応度5:事業費率(維持費)10%減少
事業費率(契約維持に係るもの)が10%減少した場合の影響を表しております。
ⅵ 感応度6:解約失効率10%減少
解約失効率が10%減少(基本となる解約失効率に90%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅶ 感応度7:保険事故発生率(死亡保険)5%低下
死亡保険について、保険事故発生率(死亡率・罹患率)が5%低下(基本となる保険事故発生率に95%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅷ 感応度8:保険事故発生率(年金保険)5%低下
年金保険について、保険事故発生率が5%低下(基本となる保険事故発生率に95%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅸ 感応度9:必要資本を法定最低水準に変更
必要資本を法定最低水準(ソルベンシー・マージン比率200%水準)に変更した場合の影響を表しております。
ⅹ 感応度10:株式・不動産のインプライド・ボラティリティ25%上昇
オプションと保証の時間価値の計算に使用する、株式オプションのインプライド・ボラティリティが25%上昇した場合の影響を表しております。
ⅺ 感応度11:金利スワップションのインプライド・ボラティリティ25%上昇
オプションと保証の時間価値の計算に使用する、金利スワップションのインプライド・ボラティリティが25%上昇した場合の影響を表しております。
ヘ.注意事項
EEVの計算においては、リスクと不確実性を伴う将来の見通しを含んだ多くの前提条件を使用し、それらの多くは個別会社の管理能力を超えた領域に属するものであります。また、将来の実績がEEVの計算に使用した前提条件と大きく異なる場合もあり得ます。
また、EEVの計算において新型コロナウイルス感染症の潜在的な影響を直接的には考慮しておりません。
これらの理由により、本EEV開示は、EEV計算に用いられた将来の税引後利益が達成されることを表明するものではなく、使用にあたっては、十分な注意を払っていただく必要があります。
ト.その他の特記事項
かんぽ生命保険では、保険数理に関する専門知識を有する第三者機関(アクチュアリー・ファーム)に、EEVについて検証を依頼し、意見書を受領しております。
⑥ その他
上記各報告セグメントにおける事業のほか、病院事業については、地域医療機関との連携や救急患者の受入の強化等による増収対策、業務の効率化等による経費削減等、個々の病院の状況を踏まえた経営改善を進めているところですが、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた患者数の減少等により、営業収益13,042百万円(前期比1,005百万円減)、営業損失3,893百万円(前期は3,364百万円の営業損失)となりました。今後も引き続き上記増収対策や経費削減等、個々の病院の状況を踏まえた経営改善に取り組みます。
また、宿泊事業については、営業推進態勢の強化や宿のリニューアル等、サービス水準向上による魅力ある宿づくりを継続的に進めるとともに、費用管理による経費削減等の経営改善に取り組んでいるところですが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う、緊急事態宣言を受けた一部施設の一時休館、3密回避を図った宿泊者数の上限設定による利用者数の減少等の理由により、営業収益6,908百万円(前期比12,097百万円減)、営業損失11,573百万円(前期は6,379百万円の営業損失)となりました。今後もウィズコロナの新生活様式に適した安心・安全の施設であることをアピールしつつ、政府・各自治体等の観光業支援事業に合わせた施策を実施していくとともに、Webセールスの充実等による増収施策、原価管理の徹底等の生産性向上施策を着実に実施することにより、経営改善に取り組みます。
不動産事業については、当社の子会社である日本郵政不動産株式会社において「ホテル メルパルク」の賃貸・管理事業を行うとともに、グループ外不動産の取得や蔵前不動産開発(オフィス、高齢者施設、賃貸住宅、物流施設他)等に当連結会計年度に13,832百万円の投資を行いました。今般の新型コロナウイルス感染症の拡大の影響によるテナント賃料の減免及び支払猶予が一部発生しており、開発中の案件における竣工時期の遅延等も想定されますので、今後のマーケットへの影響、動向を引き続き注視し、必要な対策を適時適切に実施しつつ、不動産事業を慎重に進めてまいります。
投資事業については、日本郵政グループの新規事業の種を探すため、ネットワーク、ブランド力等を活用して成長が期待できる企業への出資(当連結会計年度に13件、約2,500百万円)を行い、出資先企業と当社グループとの連携を進めました。今後も、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大の影響など、投資先の事業環境の変化による投資先の価値や将来の成長性を見極めながら、出資等に取り組みます。
(3) キャッシュ・フローの状況及び分析・検討
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は当期首から9,034,097百万円増加し、62,637,954百万円となりました。
① 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動においては、銀行業における資金の運用や調達、生命保険業における保険料の収入や保険金の支払等の結果、6,965,155百万円の収入(前期比6,659,305百万円の収入増)となりました。
主な要因として、貯金の増加6,606,901百万円や借用金の増加3,907,400百万円、責任準備金の減少2,895,445百万円があげられます。
② 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動においては、銀行業及び生命保険業における有価証券の売却、償還による収入等及び有価証券の取得による支出等の結果、2,015,201百万円の収入(前期比974,716百万円の収入増)となりました。
主な要因として、有価証券の償還による収入28,137,974百万円や有価証券の売却による収入5,705,239百万円、有価証券の取得による支出33,050,485百万円があげられます。
③ 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動においては、子会社における社債の発行等の結果、50,578百万円の収入(前期比48,424百万円の収入減)となりました。
主な要因として、社債の発行による収入198,798百万円、配当の支払による減少101,257百万円があげられます。
④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
中期経営計画において、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進やユニバーサルサービスを含むコアビジネスの充実強化等、グループの成長に資する投資として、デジタルサービスの拡充やデジタル郵便局実現等に向けた戦略的なIT投資や、グループ保有不動産等の不動産投資を計画しております。
また、上記の他に、当社グループ・グループ各社の企業価値向上に資する幅広い分野での資本提携やM&Aも実施いたします。なお、それらの実行にあたっては、投資判断基準等に照らして慎重に検討し、適切と判断したものを実施することとしております
その財源は、既存のキャッシュ・フローのほか、潤沢な借入余力を活かした借入金や金融2社株式を売却した場合の売却手取金を想定しています。
なお、現在予定している設備の新設計画としては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備等の新設等」の記載をご参照ください。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。
当社グループは、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
特に以下の重要な会計上の見積りが当社グループの連結財務諸表に大きな影響を及ぼす可能性があると考えております。
① 金融商品の時価評価
当社グループの有価証券の一部及びデリバティブ取引は、時価法に基づいて評価しております。時価は、市場価格に基づいて算定しておりますが、市場価格がない場合には合理的な見積りに基づいて算定された価額によっております。
一部の金融商品の時価算定には一定の前提条件を採用しているため、予測不能な前提条件の変化により、金融商品の評価に関する見積りが変動する可能性があります。
金融商品の時価の算定方法は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(金融商品関係)及び(デリバティブ取引関係)に、金融商品のうち有価証券の時価評価に用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い金融市場が混乱する場合、金融商品の時価評価における主要な仮定に影響が及び、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
② 有価証券の減損
当社グループの金銭の信託で運用する有価証券を含め売買目的有価証券以外の有価証券のうち、時価又は実質価額が著しく下落したものについては合理的な基準に基づいて減損処理を行っております。株式市場の悪化等、将来の金融市場の状況によっては、多額の減損損失を計上する可能性があります。
③ 固定資産の減損
当社グループは、原則として内部管理上独立した業績報告が行われる単位を基礎として、資産のグルーピングを行っております。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としております。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき合理的に算定しております。
固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件が変更された場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
④ 繰延税金資産の回収可能性の評価
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の判断に際しては、将来の課税所得を合理的に見積っております。
繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、将来、当社グループを取り巻く経営環境に大きな変化があった場合等、その見積額が変動した場合は、繰延税金資産の回収可能性が変動する可能性があります。
⑤ 責任準備金の積立方法
当社グループは、保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金を積み立てております。
責任準備金の計算に使用される予定死亡率、予定利率及び予定事業費率などの基礎率は合理的であると考えておりますが、実際の結果が著しく乖離した場合や環境の変化により将来乖離が見込まれる場合には、責任準備金の金額に影響を及ぼす可能性があります。
なお、責任準備金の積立方法は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。
⑥ 退職給付債務及び退職給付費用
当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、割引率など将来の退職給付債務算出に用いる数理計算上の前提条件に基づいて算出しております。
このため、実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件の変更が行われた場合には、将来の退職給付債務及び退職給付費用が変動する可能性があります。
なお、退職給付債務等の計算の基礎に関する事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(退職給付関係)に、退職給付債務の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
⑦ 保険金等支払引当金の計上基準
当社グループの保険金等支払引当金は、お客さまの不利益の解消に向けたご契約調査等による将来の保険金等の支払見込額等を、お客さまのご意向確認等の実績を踏まえ、合理的に見積り計上しております。保険金等支払引当金の計上等に係る詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(追加情報)の(保険契約に係る改善に向けた取組)に記載しております。
将来、見積りに影響する新たな事実の発生等により、保険金等支払引当金の計上額が当初の見積額から変動する可能性があります。
なお、保険金等支払引当金の計上基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。
(5) 連結自己資本比率の状況
銀行持株会社としての当社の連結自己資本比率は、銀行法第52条の25の規定に基づき、銀行持株会社が銀行持株会社及びその子会社の保有する資産等に照らしそれらの自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第20号)に定められた算式に基づき、連結ベースについて算出しております。
なお、当社は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
連結自己資本比率(国内基準)
(単位:億円、%) | |
当連結会計年度末 | |
1.連結自己資本比率(2/3) | 17.55 |
2.連結における自己資本の額 | 110,426 |
3.リスク・アセット等の額 | 629,189 |
4.連結総所要自己資本額 | 25,167 |
(注) 連結総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
(6) 連結ソルベンシー・マージン比率の状況
保険持株会社としての当社の連結ソルベンシー・マージン比率は、保険業法施行規則第210条の11の3、第210条の11の4及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
ソルベンシー・マージン比率とは、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つであります。
この比率が200%を下回った場合は、当局によって早期是正措置がとられます。逆にこの比率が200%以上であれば、健全性の一つの基準を満たしていることになります。
当連結会計年度末における連結ソルベンシー・マージン比率は、674.9%となりました。
項目 | 前連結会計年度末 (百万円) | 当連結会計年度末 (百万円) | |||
ソルベンシー・マージン総額 | (A) | 16,096,056 | 20,278,927 | ||
資本金等 | 12,371,213 | 13,164,078 | |||
価格変動準備金 | 858,339 | 904,816 | |||
危険準備金 | 1,797,366 | 1,611,343 | |||
異常危険準備金 | ― | ― | |||
一般貸倒引当金 | 372 | 284 | |||
(その他有価証券評価差額金(税効果控除前)・繰延ヘッジ損益 (税効果控除前))×90%(マイナスの場合100%) | △54,289 | 3,242,088 | |||
土地の含み損益×85%(マイナスの場合100%) | 368,660 | 484,047 | |||
未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の合計額(税効果控除前) | 212,645 | 209,497 | |||
負債性資本調達手段、保険料積立金等余剰部分 | 542,807 | 664,059 | |||
保険料積立金等余剰部分 | 442,807 | 364,059 | |||
負債性資本調達手段等 | 100,000 | 300,000 | |||
不算入額 | ― | ― | |||
少額短期保険業者に係るマージン総額 | ― | ― | |||
控除項目 | △1,059 | △1,287 | |||
その他 | ― | ― | |||
リスクの合計額 [{(R12+R52)1/2+R8+R9}2+(R2+R3+R7)2]1/2+R4+R6 | (B) | 5,808,221 | 6,009,050 | ||
保険リスク相当額 | R1 | 137,197 | 130,961 | ||
一般保険リスク相当額 | R5 | ― | ― | ||
巨大災害リスク相当額 | R6 | ― | ― | ||
第三分野保険の保険リスク相当額 | R8 | 54,172 | 49,371 | ||
少額短期保険業者の保険リスク相当額 | R9 | ― | ― | ||
予定利率リスク相当額 | R2 | 136,652 | 131,404 | ||
最低保証リスク相当額 | R7 | ― | ― | ||
資産運用リスク相当額 | R3 | 5,398,528 | 5,625,716 | ||
経営管理リスク相当額 | R4 | 269,733 | 249,105 | ||
ソルベンシー・マージン比率 (A)/{(1/2)×(B)}×100 | 554.2% | 674.9% |
(注) 保険業法施行規則第210条の11の3、第210条の11の4及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
(7) 目標とする経営指標の達成状況
当社グループにおいては、主要な経営目標として1株当たり当期純利益を採用しており、2021年3月期においては当初業績予想69.25円に対し1株当たり当期純利益103.44円となりました。2021年3月期の経営成績の状況及び分析・検討については、上記「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営成績の状況及び分析・検討」に示しております。
(8) 生産、受注及び販売の状況
当社グループは、郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業、銀行業及び生命保険業を中心とした広範囲な事業を営んでおり、生産、受注といった区分による表示が困難であることから、「生産、受注及び販売の状況」については、上記「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営成績の状況及び分析・検討」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。