有価証券報告書-第80期(2023/04/01-2024/03/31)

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2024/06/25 15:10
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文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概況
① 経営成績の状況
当期におけるわが国経済は、コロナ禍からの経済活動の正常化が進む中、インバウンド需要の回復等により景気は緩やかな回復傾向となりました。
一方、中東情勢の悪化やウクライナ情勢の長期化、為替相場の急激な変動や物価の高騰、資源価格の変動など、引き続き予断を許さない状況が続いております。
このような状況のもと、当社グループにおいては、長期経営ビジョンの実現に向けて、引き続き「経営戦略とサステナビリティの統合」「価値創造経営の実践」「持続的成長のための経営基盤強化」に取り組んでまいりました。
(長期経営ビジョン)
①事業活動を通じた経済価値、社会価値、環境価値の創造により、持続可能な地球・社会づくりに貢献する
②総合食品企業として、グローバルに「マルハニチロブランド」の提供価値を高め、お客様の健康価値創造に貢
献する
③水産資源調達力と食品加工技術力に基づく持続可能なバリューチェーンを強化し、企業価値の最大化を実現す

その結果、売上高は1,030,674百万円(前期比1.0%増)、営業利益は26,534百万円(前期比10.3%減)、経常利益は31,106百万円(前期比7.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は20,853百万円(前期比12.1%増)となりました。
各セグメントの経営成績は次のとおりであります。
水産資源事業
水産資源事業は、国内外で漁業を行う漁業ユニット、国内において主にブリ、カンパチ、マグロの養殖を行う養殖ユニット、国内外にわたり水産物の調達・市場流通も含む販売ネットワークを持つ水産商事ユニット、中国・東南アジア・北米・欧州において水産物・加工食品の生産・販売を行う海外ユニットから構成され、国内外の市場動向を注視しながら、収益の確保に努めました。
漁業ユニットは、漁船の稼働低下による漁獲量の減少及び燃油代の高騰により減収減益となりました。
養殖ユニットは、マグロ・カンパチの販売価格が堅調に推移し売上は前年並み、餌料費等の高騰による原価上昇に加え、ブリ販売相場下落の影響により減益となりました。
水産商事ユニットは、主に冷凍マグロ、鮭鱒など海外輸入水産物の販売価格が引き続き低迷した結果、減収減益となりました。
海外ユニットは、北米ではアラスカのスケソウダラ漁獲枠の増枠による供給増により増収も、コロナ後の中国加工含めたロシア製品の大幅供給増により、すりみ、フィレの相場は軟調な展開が続き、販売単価の低下により減益、欧州は前期に子会社化したイギリス水産加工販売会社及びオランダの食品卸会社が堅調で増収増益、アジアにおいてはタイのペットフードが主要販売先である北米での在庫調整により販売低調、減収減益となり、全体においては増収減益となりました。
以上の結果、水産資源事業の売上高は591,119百万円(前期比1.2%減)、営業利益は10,997百万円(前期比48.6%減)となりました。
加工食品事業
加工食品事業は、家庭用冷凍食品・缶詰・フィッシュソーセージ・ちくわ・デザート・調味料・フリーズドライ製品等の製造・販売を行う加工食品ユニット及び化成品の製造・販売を行うファインケミカルユニットから構成され、お客様のニーズにお応えする商品の開発・製造・販売を通じて収益の確保に努めました。
加工食品ユニットは、価格改定が浸透し、主力製品の販売伸長なるも、前期の広島工場における火災損失分の売上をカバーしきれず減収、生産性向上及び価格改定効果により増益となりました。
ファインケミカルユニットは、医薬用コンドロイチンやヘパリンの販売が好調に推移し増収も、機能性表示食品制度の運用方法の見直しによる取引先の買い控え及びペルーのアンチョビー禁漁による原料の値上がり等が影響し、減益となりました。
以上の結果、加工食品事業の売上高は104,954百万円(前期比1.6%減)、営業利益は5,249百万円(前期比68.5%増)となりました。
食材流通事業
食材流通事業は、多様な業態に対して水産商材や業務用商材の製造・販売を行う食材流通ユニット、国内外の畜産物を取り扱う畜産ユニットから構成され、グループにおける原料調達力、商品開発力、加工技術力を結集して業態ニーズにお応えする商品を提案し、収益の確保に努めました。
食材流通ユニットは、グループ内の連携を強化し、市場の変化に合わせた業態ニーズを把握し販路拡大に努めたこと、価格改定に努めたこと等により増収、業務効率及び工場の生産性向上等により増益となりました。
畜産ユニットは、全般的な畜肉相場の上昇に伴う売価の上昇及び輸入食肉の販売が堅調に推移したことから、増収増益となりました。
以上の結果、食材流通事業の売上高は315,262百万円(前期比6.0%増)、営業利益は7,276百万円(前期比135.7%増)となりました。
物流事業
物流事業は、水産品をはじめ畜産品や冷凍食品の集荷活動による着実な保管需要の取り込みに加えて、電気料金等のコスト上昇を価格に反映したことなどにより、売上高は17,607百万円(前期比0.1%減)、営業利益は2,306百万円(前期比45.6%増)となりました。
② 財政状態の状況
総資産は671,801百万円となり、前期に比べ34,574百万円増加いたしました。これは、主として投資有価証券及び売上債権の増加によるものであります。
負債は426,321百万円となり、前期に比べ1,617百万円増加いたしました。これは、主として未払金等の増加によるものであります。
非支配株主持分を含めた純資産は245,480百万円となり、前期に比べ32,957百万円増加いたしました。
各セグメントの資産は次のとおりであります。
水産資源事業の総資産は369,364百万円となり、前期に比べ14,949百万円増加いたしました。これは、主として投資有価証券及び有形固定資産の増加によるものであります。
加工食品事業の総資産は81,537百万円となり、前期に比べ4,512百万円増加いたしました。これは、主として棚卸資産の増加によるものであります。
食材流通事業の総資産は118,377百万円となり、前期に比べ1,589百万円増加いたしました。これは、主として売上債権の増加によるものであります。
物流事業の総資産は49,916百万円となり、前期に比べ2,612百万円増加いたしました。これは、主として長期貸付金の増加によるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動の結果得られた資金を、主として設備投資及び借入金の返済に使用した結果、当連結会計年度末には36,905百万円と前連結会計年度末に比べ3,545百万円増加いたしました。
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果得られた資金は53,604百万円(前連結会計年度は24百万円の支出)となりました。これは、主として税金等調整前当期純利益及び減価償却費によるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果使用した資金は18,927百万円(前連結会計年度は23,860百万円の支出)となりました。これは、主として設備投資によるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果使用した資金は32,943百万円(前連結会計年度は30,288百万円の収入)となりました。これは、主として借入金の返済によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
(ⅰ) 生産・仕入実績
当連結会計年度における生産・仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
前年同期比(%)
水産資源事業(百万円)569,369102.8
加工食品事業(百万円)80,799102.9
食材流通事業(百万円)220,04698.7
物流事業(百万円)14,73296.7
報告セグメント計(百万円)884,946101.6
その他(百万円)2,87773.9
合計(百万円)887,824101.5

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(ⅱ) 受注実績
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
(ⅲ) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
前年同期比(%)
水産資源事業(百万円)591,11998.8
加工食品事業(百万円)104,95498.4
食材流通事業(百万円)315,262106.0
物流事業(百万円)17,60799.9
報告セグメント計(百万円)1,028,944100.9
その他(百万円)1,730432.3
合計(百万円)1,030,674101.0

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合については、販売実績額が総販売実績額の100分の10
以上となる販売先がないため省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
売上高は前連結会計年度を10,218百万円上回る1,030,674百万円となりました。
セグメント別の主な増減の内訳は、食材流通事業の増収17,945百万円、水産資源事業の減収7,361百万円となります。
食材流通事業の主な増収要因は、食材流通ユニットにおけるグループ内連携を強化し、市場の変化に合わせ、業態ニーズを把握した販路拡大及び価格改定、畜産ユニットにおける輸入食肉の堅調な販売等によるものであります。
一方で、水産資源事業の主な減収要因は、水産商事ユニットにおける冷凍マグロ、鮭鱒等の海外輸入水産物の販売価格低迷、漁業ユニットにおける漁船の稼働低下による漁獲量の減少等によるものであります。
連結会計年度のセグメント別売上高
(単位:百万円)
セグメントの名称前連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
当連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
前期比増減率
(%)
水産資源事業598,481591,119△7,361△1.2
加工食品事業106,637104,954△1,683△1.6
食材流通事業297,316315,26217,9456.0
物流事業17,62017,607△12△0.1
その他4001,7301,330332.3
合計1,020,4561,030,67410,2181.0

(売上原価、販売費及び一般管理費)
売上原価は、売上高の増加に伴い、前連結会計年度から11,654百万円増加し、896,856百万円(前期比1.3%増)となりました。売上原価の売上高に対する比率は、0.3ポイント悪化し、87.0%となりました。販売費及び一般管理費は、労務費等の増加により、前連結会計年度から1,605百万円増加し、107,284百万円(前期比1.5%増)となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は、0.1ポイント悪化し、10.4%となりました。研究開発費は、前連結会計年度から157百万円増加し、1,810百万円(前期比9.5%増)となりました。
(営業利益)
営業利益は前連結会計年度を3,041百万円下回る26,534百万円(前期比10.3%減)となりました。
セグメント別の主な増減の内訳は、水産資源事業の減益10,379百万円、食材流通事業の増益4,189百万円となります。
水産資源事業の主な減益要因は、海外ユニットにおけるタイでのペットフードの北米における在庫調整、北米でのすりみ、フィレの販売単価の低下、漁業ユニットにおける漁船稼働低下による漁獲量減少及び燃油代の高騰によるものであります。
一方で、食材流通事業の主な増益要因は、食材流通ユニットにおける業務効率化・工場の生産性向上等、畜産ユニットにおける全般的な畜肉相場の上昇に伴う販売価格の上昇等によるものであります。
なお、営業利益の売上高に対する比率は、2.6%(前連結会計年度は2.9%)となりました。
連結会計年度のセグメント別営業利益
(単位:百万円)
セグメントの名称前連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
当連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
前期比増減率
(%)
水産資源事業21,37610,997△10,379△48.6
加工食品事業3,1155,2492,13368.5
食材流通事業3,0877,2764,189135.7
物流事業1,5832,30672245.6
その他2781,184906325.7
調整額134△480△614-
合計29,57526,534△3,041△10.3

(経常利益)
経常利益は前連結会計年度を2,394百万円下回る31,106百万円(前期比7.1%減)となりました。主な増減の内訳は、営業利益の減少3,041百万円、持分法による投資利益の減少756百万円、支払利息の増加1,172百万円、為替差益の増加945百万円となります。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度を2,257百万円上回る20,853百万円(前期比12.1%増)となり、1株当たり当期純利益は413円61銭(前連結会計年度は363円68銭)となりました。増減の内訳は、経常利益の減少2,394百万円、特別利益の増加5,182百万円、特別損失の減少1,558百万円、法人税等の増加4,110百万円、非支配株主に帰属する当期純利益の減少2,021百万円となります。
なお、特別損益は、前連結会計年度に比べ6,740百万円の増益となりました。これは主に、受取保険金を計上したことによる特別利益の増加5,182百万円並びに当連結会計年度において損害賠償金等を計上したものの、前連結会計年度に比べ固定資産処分損及び火災損失の減少により、特別損失が1,558百万円減少したことによるものであります。
法人税等合計は前連結会計年度に比べ4,110百万円増加しており、法人税等合計の税金等調整前当期純利益に対する比率が8.7ポイント増の31.1%となっております。
② 財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
(総資産)
総資産は前連結会計年度末に比べ34,574百万円増加し、671,801百万円(前期比5.4%増)となりました。総資産のうち、流動資産は前連結会計年度末に比べ12,345百万円増加し、404,985百万円(前期比3.1%増)となり、固定資産は前連結会計年度末に比べ22,228百万円増加し、266,816百万円(前期比9.1%増)となりました。
主な増減の内訳は、投資有価証券の増加13,743百万円並びに売上債権の増加6,649百万円となります。
売上債権は前連結会計年度末に比べ増加しておりますが、販売好調に伴う増加や外貨換算による円安の影響等によるものであり、正常な範囲内と考えております。
また、売上債権回転日数については49.0日(前期比1.9日増)、棚卸資産回転日数については87.6日(前期比1.7日減)となっており、いずれも正常な水準の範囲内と判断しております。
売上債権回転日数及び棚卸資産回転日数
(単位:百万円)
前連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
当連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
前期比増減率
(%)
売上高(a)1,020,4561,030,67410,2181.0
売上原価(b)885,201896,85611,6541.3
受取手形、売掛金
及び契約資産(c)
131,769138,4186,6495.0
棚卸資産(d)216,698215,333△1,364△0.6
売上債権回転日数(日)47.149.01.94.0
(c)÷(a)×365
棚卸資産回転日数(日)89.487.6△1.7△1.9
(d)÷(b)×365

なお、セグメント別資産の内訳は、次のとおりであります。
連結会計年度のセグメント別資産
(単位:百万円)
セグメントの名称前連結会計年度
(2023年3月31日)
当連結会計年度
(2024年3月31日)
前期比増減率
(%)
水産資源事業354,414369,36414,9494.2
加工食品事業77,02581,5374,5125.9
食材流通事業116,787118,3771,5891.4
物流事業47,30449,9162,6125.5
その他9,99812,0722,07320.7
調整額31,69640,5328,83627.9
合計637,227671,80134,5745.4

(負債)
負債は前連結会計年度末に比べ1,617百万円増加し、426,321百万円(前期比0.4%増)となりました。負債のうち、流動負債は前連結会計年度末に比べ7,520百万円増加し、272,969百万円(前期比2.8%増)となり、固定負債は前連結会計年度末に比べ5,903百万円減少し、153,352百万円(前期比3.7%減)となりました。
主な増減の内訳は、借入金の減少29,788百万円、社債の増加13,000百万円、未払金の増加6,034百万円、未払法人税等の増加3,609百万円となります。
また、有利子負債残高は、前連結会計年度末に比べ16,788百万円減少し、284,351百万円となりました。
(純資産)
非支配株主持分を含めた純資産は前連結会計年度末に比べ32,957百万円増加し、245,480百万円(前期比15.5%増)となりました。
主な増減の内訳は、親会社株主に帰属する当期純利益等による利益剰余金の増加15,799百万円、その他有価証券評価差額金の増加6,751百万円、為替換算調整勘定の増加5,704百万円及び非支配株主持分の増加4,141百万円となります。
なお、自己資本比率はその他有価証券評価差額金等の増加に伴う純資産の増加により、30.8%となり、前連結会計年度末(28.0%)に比べ、2.8ポイント好転いたしました。
また、1株当たり純資産は利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末の3,534円39銭から4,112円65銭となりました。
自己資本比率及び1株当たり純資産
(単位:百万円)
前連結会計年度
(2023年3月31日)
当連結会計年度
(2024年3月31日)
前期比
自己資本(a)178,312207,12828,816
総資産(b)637,227671,80134,574
自己資本比率(%)(a)÷(b)28.030.82.8
1株当たり純資産3,534円39銭4,112円65銭578円27銭

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
連結キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
前連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
当連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
前期比
営業活動によるキャッシュ・フロー△2453,60453,629
投資活動によるキャッシュ・フロー△23,860△18,9274,932
財務活動によるキャッシュ・フロー30,288△32,943△63,231
現金及び現金同等物に係る換算差額2,1311,811△320
現金及び現金同等物の増減額8,5353,545△4,990
新規連結に伴う現金及び現金同等物
の増加額
394-△394
現金及び現金同等物の期末残高33,36036,9053,545

(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、53,604百万円の収入(前連結会計年度は24百万円の支出)となりました。税金等調整前当期純利益35,891百万円及び減価償却費16,216百万円があったこと等によるものであります。
前連結会計年度に比べて営業活動の結果得られた資金が53,629百万円増加いたしましたが、主な増減の内訳は、棚卸資産の増減額による増加41,701百万円、保険金の受取額の増加8,468百万円、売上債権の増減額による増加5,795百万円となります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、18,927百万円の支出(前連結会計年度は23,860百万円の支出)となりました。水産資源事業及び加工食品事業における生産拠点を中心に、有形固定資産の取得による支出16,666百万円、投資有価証券の取得による支出3,090百万円、利息及び配当金の受取額1,935百万円等によるものであります。
前連結会計年度に比べて投資活動の結果使用した資金が4,932百万円減少いたしましたが、主な増減の内訳は、無形固定資産の取得による支出の減少7,627百万円、有形固定資産の取得による支出の減少3,693百万円となります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、32,943百万円の支出(前連結会計年度は30,288百万円の収入)となりました。借入金の返済による支出33,459百万円、配当金の支払額5,038百万円、社債の発行による収入12,929百万円等によるものであります。
前連結会計年度に比べて財務活動の結果使用した資金が63,231百万円増加いたしましたが、主な増減の内訳は、借入金の返済による支出の増加71,902百万円、配当金の支払額の増加2,155百万円、社債の発行による収入の増加7,963百万円となります。
(資金の流動性)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ3,545百万円増加し、36,905百万円となりました。
手元流動性確保のため、主要な金融機関との関係維持・強化を図るほか、当座貸越枠等の調達手段を備えております。
また、当社グループは各社が月次に資金繰り計画を作成するなどの方法により流動性リスクを管理しております。
(財務政策)
当社グループは、中期経営計画「海といのちの未来をつくる MNV 2024」において、再定義した長期経営ビジョンの実現に向けて、基本的な考え方である「経営戦略とサステナビリティの統合」「価値創造経営の実践」「持続的成長のための経営基盤強化」に取り組んでまいりました。
引き続き、成長への投資を最優先としながらも、財務基盤の強化を図ってまいります。運転資本の効率的な運用にも取り組み、より強固な財務体質を目指してまいります。
また、当社グループは国内連結子会社を含めたキャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入しており、運転資金及び設備投資資金の調達は、主に当社の借入及びグループ各社の事業活動から生じるキャッシュ・フローを資金集中することによる自己資金によっております。
(資金調達の方法及び状況)
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。また、長期資金においては、社債による直接調達も組み入れております。
社債の発行実績については、2022年11月2日、環境持続型の漁業・養殖事業等に資金使途を限定した本邦初となる債券「ブルーボンド」(第1回無担保社債)の発行により5,000百万円を調達、2023年8月31日には第2回無担保社債の発行を通じて13,000百万円を調達しております。
今後も資金調達の多様化・安定化に努めるとともに、調達した資金を通じた環境課題解決への貢献にも取り組んでまいります。
(資金需要の動向)
当社グループでは、設備投資、運転資金、借入金の返済及び利息の支払い並びに配当及び法人税の支払い等に資金を充当しております。
また、中期経営計画「海といのちの未来をつくる MNV 2024」における成長及びインフラへの投資として、既存領域での海外資源アクセスへの増強、海外生産拠点の生産設備の更新、家庭用冷凍食品に係る生産設備の更新、冷蔵庫のスクラップ&ビルド等への投資のため、並びに成長ドライバー領域への戦略投資として、海外市場への展開拡大、冷凍食品事業、介護事業、ファインケミカル事業、ペットフード事業領域の強化に向けた投資のため資金を充当してまいります。
設備投資を目的とした資金需要のうち主なものは、食品生産拠点、漁船等の購入費用、物流センターの増設費用等であり、運転資金需要のうち主なものは、商品及び原材料の仕入、製造費用、生産拠点及び物流センターの運営費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。
各セグメントの資金需要の動向は次のとおりであります。
水産資源事業
漁船、漁業許可権利金、食品生産拠点、養殖設備等の購入・建設費用並びに商品及び原材料の仕入、養殖魚や養殖のために必要なエサ代、製造費用、生産拠点の運営費等の運転資金が必要となります。
加工食品事業
食品生産拠点の購入・建設費用並びに商品及び原材料の仕入、製造費用、生産拠点の運営費等の運転資金が必要となります。
食材流通事業
食品生産拠点の購入・建設費用並びに商品及び原材料の仕入、製造費用、生産拠点の運営費等の運転資金が必要となります。
物流事業
物流センターの増設費用及び物流センターの運営費等の運転資金が必要となります。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、当社の経営者は、重要な判断と見積りや計画の策定に対し、過去の実績や現状を勘案し合理的に判断しておりますが、これらは不確実性を伴うため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、下記については、重要なものとして、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(ⅰ)固定資産の減損
(ⅱ)棚卸資産の評価
(ⅲ)繰延税金資産の回収可能性
その他の重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は以下のとおりであります。
(ⅳ)貸倒引当金
当社グループは、売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。
個別の回収可能性の検討にあたっては、取引先の財政状態、担保物の見積回収可能価額などの見積り・前提を使用しております。
当連結会計年度においては、流動資産で△400百万円、固定資産で△1,494百万円の貸倒引当金を計上しております。
取引先の財政状態、担保物の見積回収可能価額には不確実性を伴い、これらに対する経営者による判断が売上債権、貸付金等の貸借対照表価額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(ⅴ)投資有価証券の減損
当社グループは、その他有価証券のうち、市場価格のない株式等以外のものについては、期末日における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合に原則として減損処理を行い、30~50%程度下落した場合に、回復可能性を判断して減損処理を行うこととしております。市場価格のない株式等については、当該有価証券の発行会社の1株当たり純資産額が、取得価額を50%程度以上下回った場合には回復可能性がないものとして判断し、30%~50%程度下落した場合には当該有価証券の発行会社の財政状態及び将来の展望などを総合的に勘案して回復可能性を判断しております。
個別の回収可能性の検討にあたっては、当該有価証券の発行会社の財政状態、将来の展望などの見積り・前提を使用しております。
当連結会計年度においては、投資有価証券として52,773百万円計上しております。
有価証券の発行会社の財政状態、将来の展望などには不確実性を伴い、これらに対する経営者による判断が連結貸借対照表価額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(ⅵ)退職給付会計
当社グループは、確定給付型の制度として、確定給付企業年金制度及び退職一時金制度を採用しております。また、一部連結子会社では、確定拠出制度を採用しております。
当社においては、退職給付信託を設定しております。
退職給付型の制度において、退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、退職率及び死亡率など年金数理計算上の見積り・前提を用いております。
割引率については、デュレーション法(加重平均期間アプローチ)により算出した期間に対応する国債のイールド・カーブから抜粋した利回りを加重平均割引率とする方法を採用しております。
当連結会計年度においては、退職給付に係る負債として21,761百万円を計上しております。
これらの見積り・前提に用いる割引率、退職率及び死亡率などについては、現時点で妥当と判断したデータその他の要因に基づき設定しておりますが、実際の結果がこれらの見積り・前提と異なる場合には、将来の退職給付費用及び退職給付債務に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、退職給付関係に関する事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)」に記載のとおりであります。
⑤経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
中期経営計画「海といのちの未来をつくる MNV 2024」において掲げております「価値創造経営の実践」における「財務KGI」の進捗状況は次のとおりであります。
当社グループでは、中期経営計画の最終年度となる2024年度計画において、MNEV12,000百万円以上、売上高1,050,000百万円、営業利益30,000百万円、EBITDA50,000百万円、ROIC4.3%、ROE9.0%及びネットD/Eレシオ1.1倍以下を目標にしております。
売上高は前連結会計年度を10,218百万円上回る1,030,674百万円となり、営業利益は前連結会計年度を3,041百万円下回る26,534百万円となり、EBITDAは営業利益の減少等により前連結会計年度を1,485百万円下回る45,963百万円となりました。また、ROICは運転資本等の増加及び経常利益の減少等により前連結会計年度の4.8%から0.6ポイント悪化し、4.2%となりました。ROEは前連結会計年度の11.0%から0.2ポイント悪化し、10.8%となり、ネットD/Eレシオは有利子負債が減少したことにより前連結会計年度の1.5倍から0.3ポイント減少し、1.2倍となりました。
この結果、MNEVは前連結会計年度を2,049百万円下回る11,931百万円となりました。投下資本利益率を意識した効率的な事業運営により、当社グループ全体の企業価値の向上に繋げてまいります。
2022年度2023年度2024年度計画
(最終年度)
前期比計画比
MNEV(百万円)13,98111,93112,000△2,049△68
売上高(百万円)1,020,4561,030,6741,050,00010,218△19,326
営業利益(百万円)29,57526,53430,000△3,041△3,466
EBITDA(百万円)47,44945,96350,000△1,485△4,037
ROIC(%)4.84.24.3△0.6△0.1
ROE(%)11.010.89.0△0.21.8
ネットD/Eレシオ(倍)1.51.21.1△0.30.1

(注)1.MNEV(Maruha Nichiro Economic Value):事業活動の成果に伴う経済付加価値額として、投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の差(MNEVスプレッド)に、投下資本を乗じ算出しております。
2.2024年度計画(最終年度)は2024年5月に更新しております。