有価証券報告書-第148期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/23 14:00
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171項目
1.経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュフロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における日本経済は、海外経済の減速に伴い輸出が低迷し、個人消費についても実質所得の伸び悩みや消費税率引き上げによる消費マインドの落ち込みなどから依然として力強さを欠いております。さらに2019年12月に発生した新型コロナウイルス感染症の世界規模での拡大に伴い、各国で外出制限や貿易の減少が続いており、景気の悪化は避けられない状況となっております。
当社グループでは、2017年度にスタートさせた中期経営計画「OilliO Value Up 2020」において、事業構造改革を継承しつつ、より成長路線に軸足を移すことを基本方針とし、具体的な経営目標の実現に取り組んでおります。
当連結会計年度の業績は、売上高は前期比97.2%の3,334億16百万円となり、利益面では営業利益が前期比101.4%の131億33百万円、経常利益が同92.1%の126億34百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同91.7%の82億93百万円となりました。
セグメント別の利益では、前年同期と比較し油脂・油糧および加工食品事業において11億94百万円増加、加工油脂事業において11億26百万円減少、ファインケミカル事業において1億77百万円増加、その他の事業において19百万円減少しました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ104億12百万円増加し、235億52百万円となりました。
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
営業活動によるキャッシュ・フローは、224億21百万円の収入となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益127億24百万円、減価償却費74億85百万円、売上債権の減少49億94百万によるキャッシュの増加およびたな卸資産の増加37億10百万円、法人税等の支払額42億39百万円によるキャッシュの減少であります。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
投資活動によるキャッシュ・フローは、142億42百万円の支出となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出119億42百万円、投資有価証券の取得による支出9億52百万円によるキャッシュの減少であります。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
財務活動によるキャッシュ・フローは、22億44百万円の収入となりました。主な内訳は、長期借入金の借入による収入157億91百万円によるキャッシュの増加および短期借入金の純減20億82百万円、社債の償還による支出50億円、配当金の支払29億7百万円、自己株式の取得による支出30億3百万円によるキャッシュの減少であります。
前連結会計年度
(百万円)
当連結会計年度
(百万円)
営業活動によるキャッシュ・フロー20,71822,421
投資活動によるキャッシュ・フロー△11,270△14,242
財務活動によるキャッシュ・フロー△16,9492,244
現金及び現金同等物の増減額(△減少)△7,76310,412
現金及び現金同等物の期末残高13,14023,552


(3)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
油脂・油糧および加工食品事業147,97396.3
加工油脂事業75,32496.3
ファインケミカル事業14,19694.4
その他252101.4
合計237,74796.2

(注) 1 金額は、原価計算に利用した価格等により算定しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
② 受注実績
当社グループでは、主として計画に基づく生産を行っているため、記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
油脂・油糧および加工食品事業233,59497.9
加工油脂事業76,97293.5
ファインケミカル事業18,905101.1
その他3,944111.0
合計333,41697.2

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 経営成績の分析
当社グループの連結売上高は、前期比97.2%の3,334億16百万円となりました。
セグメント別では、油脂・油糧および加工食品事業が前期比97.9%の2,335億94百万円、加工油脂事業につきましては前期比93.5%の769億72百万円、ファインケミカル事業につきましては前期比101.1%の189億5百万円、その他の事業につきましては前期比111.0%の39億44百万円となりました。
利益面については、原材料価格等のコストが低下したことに加え、適正な販売価格の維持・形成、付加価値品の拡販などにより、営業利益は前期比101.4%の131億33百万円、持分法投資損失の計上などにより、経常利益は前期比92.1%の126億34百万円となりました。特別損失として固定資産除却損を計上したこともあり、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比91.7%の82億93百万円となりました。
なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、為替相場の変動、原材料国際価格の変動等があります。
② 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ121億39百万円増加し、2,774億25百万円となりました。主な要因は、売上債権が50億53百万円、投資有価証券が27億64百万円減少した一方で、現金及び預金が84億27百万円、有価証券が20億円、たな卸資産が36億27百万円、有形固定資産が58億8百万円増加したことであります。
負債は、前連結会計年度末に比べ119億14百万円増加し、1,281億円となりました。主な要因は、1年内償還予定の社債が50億円減少した一方で、長期借入金が155億44百万円増加したことであります。
純資産は、前連結会計年度末に比べ2億25百万円増加し、1,493億24百万円となりました。主な要因は、自己株式の取得による29億91百万円減少、その他有価証券評価差額金が19億30百万円減少した一方で、利益剰余金が53億47百万円増加したことであります。
③ セグメントごとの財政状態及び経営成績の分析
セグメント別の資産では、前連結会計年度末に比べ油脂・油糧および加工食品事業において20億28百万円減少、加工油脂事業において20億38百万円増加、ファインケミカル事業において17億51百万円増加、その他の事業において8億20百万円増加しました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
≪油脂・油糧および加工食品事業≫
油脂・油糧および加工食品事業につきましては、売上高は前期比97.9%の2,335億94百万円となり、営業利益は前期比115.8%の87億40百万円となりました。
原料・油糧の状況および油脂・加工食品の販売状況は以下のとおりです。
[原料の調達環境]
原料の調達面では、主要原料相場が前期に対して低い水準で推移し、ドル円相場も前期に対して円高水準で推移したことから、大豆価格、菜種価格ともに前期に対して低下しました。
<主要原料相場>大豆相場は、2019年1月以降、1ブッシェルあたり9米ドル前後で推移していましたが、4月以降、南米産大豆の豊作が確定的になったことや米中貿易摩擦の激化等により8米ドル前後まで大きく下落しました。6月には米国産新穀大豆の作付減少・生育遅れや米中貿易摩擦の解消期待等により9米ドル台まで上昇し、7月以降は天候改善による生産量の増加見通し等から8米ドル中盤まで下落しました。その後は中国の米国産大豆買付等により9米ドル前半まで値を戻しましたが、世界的な大豆需給の緩さや米中貿易摩擦問題を背景に上値の重い展開となりました。
菜種相場については、カナダ産菜種の潤沢な供給が意識されたことや、中国が一部のサプライヤーからのカナダ産菜種の輸入を禁止したことによって中国向けカナダ産菜種の輸出量が大幅に減少していることを背景に、前期に対して低い水準で推移しました。
<為替相場>ドル円相場は、2019年1月以降は堅調な米国経済等を背景に円安ドル高基調で推移しました。5月以降は米国の利下げ期待の高まりや米中貿易摩擦の影響などから円高ドル安基調となり、8月下旬には一時104円台まで円高ドル安が進行しました。その後は、再び米中貿易交渉の進展期待が高まったこと等からリスク回避姿勢が後退して12月中旬にかけて円安ドル高基調となりました。総じて、当期においては前期に対して円高水準での推移となりました。
[ミールの販売]
大豆ミールは、国内の配合飼料生産量が前年並みで推移する中、拡販に努めたことから販売数量は前期を上回りました。一方、販売価格面においては、南米産大豆の豊作やASF(アフリカ豚熱)による中国国内の飼料用需要低迷等を背景として、シカゴ大豆ミール相場が下落したことや安価な中国産輸入ミールが国内に流入する局面があったこと等から販売価格が低下し、売上高は前期を下回りました。
菜種ミールについては、配合飼料における菜種ミールの配合率が前年並みで推移する中、拡販に努めたことから販売数量は前期を上回ったものの、大豆ミール価格の影響などから販売価格が低下し、売上高は前期を下回りました。
[油脂・加工食品の販売]
油脂・加工食品の販売は、コストに見合った適正価格での販売や、付加価値品の拡販などにより売上高、利益ともに前期を上回りました。
<油脂等>ホームユースにつきましては、オリーブオイル、ごま油、アマニ油などの付加価値品の継続的な拡販に取り組むとともに、「日清ヘルシーオフ」などの機能性の高い油脂についても引き続き販売の拡大に努め、順調に推移しました。贈答用詰合セットにつきましては、ギフト市場全体が縮小する厳しい環境の中、オリーブオイル系のギフト商品などの販売が堅調に推移しました。
業務用につきましては、中食・外食向けに、「ニーズ協働発掘型」営業を推進し、新規取引の開拓に取り組んだ結果、機能性油脂を中心に販売は順調に推移しました。
加工用につきましては、食用油における既存取引先との取引領域拡大や、新規取引の拡大に取り組むとともに、適正価格での販売に努めました。また、大豆たん白についても、既存取引先への販売が堅調に推移するとともに、新規取引の開拓についても好調に推移しました。
<加工食品>ドレッシングにおいて「日清ドレッシングダイエット」などの主力商品の販売が増加し、ウェルネス食品についても、MCT(中鎖脂肪酸)関連商品の販売が引き続き堅調に推移しました。また、子会社のもぎ豆腐店㈱においても、豆腐類の販売が堅調に推移しました。
≪加工油脂事業≫
加工油脂事業につきましては、売上高は前期比93.5%の769億72百万円となり、営業利益は前期比71.8%の28億61百万円となりました。
マーガリンやショートニングについては機能特化型の製品の販売が好調に推移し、子会社の大東カカオ㈱におけるチョコレート製品についても、原材料コストに見合った適正価格での販売に努め、売上高、利益ともに伸長しました。
シンガポールのT.&C. Manufacturing Co., Pte. Ltd.における製菓原料等(調製品)も売上高、利益ともに前期を上回りました。
マレーシアのIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd. におけるパーム加工品では、売上高は前期を下回ったものの、欧州向け付加価値品の販売が好調に推移しました。一方で、年末にかけてパーム油相場が急騰する中、決算日にパーム油取引を時価評価するにあたり、会計ルール上、たな卸資産の含み益が認識できないことにより時価評価損を計上したことなどから、営業利益は前期を下回りました。
これらの結果、加工油脂事業につきましては、売上高、営業利益ともに前期を下回りました
≪ファインケミカル事業≫
ファインケミカル事業につきましては、売上高は前期比101.1%の189億5百円となり、営業利益は前期比111.4%の17億31百万円となりました。
化粧品原料および食品・化学品その他の販売状況は以下のとおりです。
[化粧品原料]
化粧品原料は、中国の景気減速や2019年12月に発生した新型コロナウィルスの影響によりアジアでの販売がやや低調となりましたが、欧州向けについてはスペインのIndustrial Quimica Lasem, S.A.U.との連携により付加価値品の販売が伸長しました。これらの結果、化粧品原料全体では、売上高、営業利益ともに前期を上回りました。
[食品・化学品その他]
食品・化学品その他は、販売数量の減少から売上高は前期を下回りましたが、MCTなど付加価値品が伸長し、営業利益は前期を上回りました。
≪その他≫
情報システムをはじめその他の事業の売上高は、前期比111.0%の39億44百万円となりましたが、営業利益は前期比95.1%の3億82百万円となりました。
≪地域別売上高≫
地域別売上高につきましては、Intercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.の売上高が前期と比べて減少したことなどに伴い、マレーシア、中国などのアジア向け売上高は前期比80.0%の292億51百万円となり、欧州、米国などのその他地域への売上高についても前期比94.1%の238億59百万円となりました。なお、連結売上高に占める海外売上高の割合につきましては、前期に比べ2.1ポイント減少し15.9%となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度末の資金は、前連結会計年度に比べ104億12百万円増加して235億52百万円となりました。当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益などによるキャッシュの増加により224億21百万円の収入(前連結会計年度は207億18百万円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出などによるキャッシュの減少により142億42百万円の支出(前連結会計年度は112億70百万円の支出)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の借入による収入などによるキャッシュの増加により22億44百万円の収入(前連結会計年度は169億49百万円の支出)となりました。
当社グループの資金運営は、事業活動にかかる運転資金については営業キャッシュ・フローで獲得した資金を主な財源としております。また、資金調達方法として、当社取引銀行5行との間でシンジケーション方式により総額100億円のコミットメントライン契約を締結しております。
当社と国内子会社10社の間で「キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)」を構築しており、当該システムを利用し効率的な資金配分を行っております。
設備資金、投融資資金等の長期的な資金需要について、金融市場動向、既存の社債の償還時期および借入金の返済時期等も総合的に勘案し、社債および借入金等による資金調達を行っております。
今後の重要な資本的支出として、ファインケミカル事業における化成品工場および製造設備、水島工場における搾油製造設備等を予定しております。
なお、当連結会計年度末の有利子負債の内訳は次のとおりであります。
当連結会計年度(2020年3月31日)
1年以内
(百万円)
1年超
(百万円)
短期借入金2,794-
社債-20,000
長期借入金25330,937
リース債務3072,012
合計3,35552,950

上記の表において、連結貸借対照表の短期借入金に含まれている1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。
なお、経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等およびその達成状況については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 目標とする経営指標および(4) 経営環境」に記載しております。
(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表等の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりです。
① 繰延税金資産
当社グループは、将来の課税所得見込額等に基づいて回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。
なお、繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得等の見積りによるものであるため、その見積りの前提に変更が生じた場合は、繰延税金資産の計上に影響を及ぼす可能性があります。
② 退職給付債務及び退職給付費用
当社グループは、退職給付債務および費用について、昇給率、退職率等の基礎率及び割引率を用いて計算しております。
なお、これらの前提に変動があった場合には、退職給付債務および費用に影響を及ぼす可能性があります。
③ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価について、事業部等を基礎としてグルーピングされた資産グループごとの収益性の評価及び回収可能価額の算定を行い、収益性が著しく低下している資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額することとしております。
なお、市場環境等の変化により収益性が著しく低下した場合には、減損損失を計上する可能性があります。
なお、当連結会計年度末における上記見積りを行うにあたっては、新型コロナウイルス感染症の影響が年間にわたり続くとの仮定をおいております。