有価証券報告書-第143期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
業績等の概要
当社グループは、IFRSの適用に当たり、投資家、取締役会及び経営会議が各事業の恒常的な業績や将来の見通しを把握すること、取締役会及び経営会議が継続的に事業ポートフォリオを評価することを目的として、「事業利益」という段階利益を導入しております。当該「事業利益」は、「売上高」から「売上原価」、「販売費」、「研究開発費」及び「一般管理費」を控除し、「持分法による損益」を加えたものであり、「その他の営業収益」及び「その他の営業費用」を含まない段階利益です。
当社グループは、タイ国の包装材料製造・販売会社フジエース社の発行済株式総数の51%に相当する当社グループが保有する全株式を、株式会社フジシールインターナショナル等へ譲渡する契約を2020年2月5日に締結し、2020年3月6日に譲渡いたしました。そのため、前連結会計年度における包材事業に関連する損益を、従来より非継続事業に分類している物流事業とあわせ、非継続事業に分類して再表示し、当該非継続事業を継続事業とは区分して表示しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
2030年の目指す姿に向け中期経営計画の実行を加速
顧客価値(社会価値)創出に対する従業員エンゲージメント向上が経済価値を生む企業価値向上サイクルにより2030年の目指す姿を実現していきます。2020年度は、外食向けビジネスが新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、オーガニック成長率はプラスにはいたりませんでしたが、構造改革を着実に進めた結果、ROICは6.9%と2019年度より改善しました。新型コロナウイルス感染症の事業への影響は2021年度も続きますが、コロナ禍においても中期経営計画を上回るスピードで実施してきた経営資源のシフトを確かな成長につなげていくために、ROIC重視とオーガニック成長への回帰に向けた変革を、引き続き財務資本戦略の重点テーマと位置づけ、実行を加速していきます。

・2022年3月期 :重点KPI(セグメント別予想)

・「ROICを重視する経営」に向けた取り組み
味の素グループでは、資本コスト(WACC)を上回るROICの維持・改善に向けて、経営と現場が一体となって継続的に取り組んでいます。経営は、「成長性」と「効率性」に二つの軸で経営資源の最適配分を行うことによって継続的な投下資本効率の向上を目指し、現場は自律的なマネジメントに基づき、中長期視点でのROIC向上に努めています。

・事業ポートフォリオマネジメント
各事業を、市場の魅力度と自社の競争優位性から評価された「成長性」と、ハードルレートとROICの対比などで評価された「効率性」の二軸で分析し、資源配分の優先順位付けを行うことにより、オーガニック成長と投下資本効率の改善を果たします。事業ポートフォリオの選別にあたっては、事業ごとのWACCの違いを考慮し、それぞれの事業のROICがWACCを上回るかどうかを基準とします。
2021年度には、経営会議の下部機構として「重点事業グランドデザイン会議」を設けました。重点事業グランドデザイン会議において定期的に事業ポートフォリオ分析を行い、事業区分の判定を実施の上、資源配分の優先順位付けを行います。
・ROICツリー展開
ROICツリー(下図参照)をグループ全体に展開することで、現場主体の自律的なマネジメントに基づく中長期でのROIC改善を目指すとともに、重要なKPIが経営者・現場の双方から可視化されている状態を実現します。ROICツリーでは、「全事業共通ROICツリー」でKPIを管理し、同業他社分析や時系列分析等、事業ポートフォリオの判断につなげていきます。また、「事業・個社ROICツリー」として、各事業のアクションプランに応じた価値向上につながるKPIを事業特性に応じて独自に設定します。これにより、現場主体の自律的なマネジメントに基づくROICの改善活動が、味の素グループ全体の企業価値向上とつながっている状態を実現させます。

(2) 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また製品のグループ内使用(製品を他のセグメントの原材料として使用)や、受注生産形態をとる製品が少ないため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の実績は、「(4) 当連結会計年度の経営成績の分析」における各セグメント業績に関連付けて示しております。
(3) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」に記載しております。この連結財務諸表の作成に当たって必要な見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び同「5.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。
(4) 当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度の売上高は、新型コロナウイルス感染症のグローバルでの拡大に伴い、主に、調味料・食品及び冷凍食品において、内食需要の伸張により家庭用製品の販売が増加した一方、外食向け製品は需要の回復傾向がみられるものの、ロックダウン等の影響により引き続き外食用・業務用の販売が減少した結果、前期を285億円下回る1兆714億円(前期比97.4%)となりました。
事業利益は、化成品の大幅な増収による大幅な増益、調味料・食品や冷凍食品における家庭用製品の増収効果や製品ミックス改善効果等による増益に加え、前期にはプロマシドール・ホールディングス社(以下、PH社)の商標権に係る減損損失の計上があったこと等から、前期を138億円上回る1,131億円(前期比114.0%)となりました。
営業利益は、その他の営業収益で固定資産(遊休資産)の譲渡により前期を大幅に上回る固定資産売却益を計上したことに加え、その他の営業費用においても、当期は欧州及び北米の動物栄養事業の事業構造改革に伴う減損損失等を計上したものの、前期は当期を大幅に上回る減損損失の計上があったこと等により、前期を523億円上回る1,011億円(前期比207.3%)となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期を405億円上回る594億円(前期比315.4%)となりました。
当連結会計年度のセグメント別の概況
セグメントごとの業績は、次のとおりです。
(注)各セグメントの主要製品につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 7.セグメント情報 (1) 報告セグメントの概要」をご参照ください。
① 調味料・食品セグメント
調味料・食品セグメントの売上高は、主に、内食需要の増加により家庭用製品の販売が増加したものの、換算為替影響や外食需要の減少により外食向け製品の販売が減少した結果、前期を212億円下回る6,205億円(前期比96.7%)となりました。事業利益は、外食向け製品の減収影響があったものの、家庭用製品の増収効果や製品ミックス改善効果に加え、前期にPH社の商標権に係る減損損失計上があったこと等により、前期を51億円上回る867億円(前期比106.3%)となりました。
② 冷凍食品セグメント
冷凍食品セグメントの売上高は、主に、内食需要の増加により家庭用製品の販売が増加したものの、外食需要の減少により業務用製品の販売が減少した結果、前期を129億円下回る1,982億円(前期比93.9%)となりました。事業利益は、家庭用製品の増収効果や製品ミックスの改善効果等により大幅な増益となった結果、前期を22億円上回る23億円(前期比-%)となりました。
③ ヘルスケア等セグメント
ヘルスケア等セグメントの売上高は、化成品の大幅な増収等により前期を78億円上回る2,395億円(前期比103.4%)となりました。事業利益は、バイオファーマサービスが大幅な減益となったものの、化成品及び動物栄養の大幅な増益にともない、前期を67億円上回る262億円(前期比134.6%)となりました。
④ その他
その他の事業の売上高は前期を22億円下回る131億円(前期比85.6%)となり、事業利益は△22億円となりました。
当連結会計年度の連結損益計算書の段階ごとの概況
① 売上高
売上高は前期を285億円下回る1兆714億円(前期比97.4%)となりました。地域別に見ますと、日本では、前期を138億円下回る4,708億円(前期比97.2%)となりました。海外では、前期を147億円下回る6,005億円(前期比97.6%)となりました。海外の地域別では、アジア、米州及び欧州でそれぞれ2,637億円(前期比99.2%)、2,190億円(前期比93.1%)及び1,177億円(前期比103.1%)となりました。なお、売上高海外比率は56.1%(前期は55.9%)となりました。
② 売上原価、販売費、研究開発費及び一般管理費、持分法による損益
売上原価は、売上高の減少に伴い、前期から309億円減少し、6,652億円(前期比95.6%)となりました。売上原価の売上高に対する比率は、1.2ポイント改善し、62.1%となりました。販売費は、主として新型コロナウイルス感染症の影響による販売促進費や物流費の減少や為替影響により、前期から114億円減少し、1,606億円(前期比93.4%)となりました。研究開発費は、前期から16億円減少し、259億円(前期比93.9%)となりました。一般管理費は、連結子会社の増加等により、前期から53億円増加し、1,078億円(前期比105.2%)となりました。持分法による損益は、13億円の利益(前期は24億円の損失)となりました。
③ 事業利益
事業利益は、前期を138億円上回る1,131億円(前期比114.0%)となりました。地域別に見ますと、日本では484億円(前期比105.3%)、海外では646億円(前期比121.5%)となりました。海外の地域別では、アジア、米州及び欧州でそれぞれ453億円(前期比107.5%)、139億円(前期比110.1%)及び53億円(前期比-%)となりました。なお、事業利益海外比率は57.1%(前期は53.6%)となりました。
セグメント別の事業利益の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 7.セグメント情報」をご参照ください。
④ その他の営業収益(費用)
その他の営業収益は、遊休資産の譲渡による固定資産売却益を計上したこと等により、前期から168億円増加し、244億円(前期比322.7%)となりました。その他の営業費用は、前期において減損損失及び特別転進支援施策関連費用を計上したこと等により、前期から215億円減少し、364億円(前期比62.8%)となりました。
⑤ 営業利益
営業利益は、前期を523億円上回る1,011億円(前期比207.3%)となりました。
⑥ 金融収益(費用)
金融収益は、前期から41億円減少し、39億円(前期比48.6%)となりました。金融費用は、前期から13億円減少し、67億円(前期比83.7%)となりました。
⑦ 親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は前期を405億円上回る594億円(前期比315.4%)となり、1株当たり当期利益は108円36銭(前期は34円37銭)となりました。
(5) 当連結会計年度の連結財政状態の分析
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の1兆3,536億円に対して776億円増加し、1兆4,312億円となりました。これは主として、売上債権及びその他の債権等が減少した一方で、現金及び現金同等物や有形固定資産等が増加したことによるものです。
負債合計は、前連結会計年度末の7,615億円に対して18億円増加し、7,634億円となりました。これは主として、有利子負債等が減少した一方で、繰延税金負債や仕入債務及びその他の債務等が増加したことによるものです。なお有利子負債残高は、長期借入金等が増加した一方、1年内償還予定の社債やコマーシャル・ペーパーの減少等により、前連結会計年度末に対して69億円減少し、4,068億円となりました。
資本合計は、その他の資本の構成要素の増加等により、前連結会計年度末に対して757億円増加しました。資本合計から非支配持分を引いた親会社の所有者に帰属する持分は、6,202億円となり、親会社所有者帰属持分比率は43.3%となりました。
セグメントごとの概況は、次のとおりです。
① 調味料・食品セグメント
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の5,193億円に対して436億円増加し、5,629億円となりました。これは主として設備投資等に伴う有形固定資産の増加によるものです。
② 冷凍食品セグメント
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の1,857億円に対して32億円減少し、1,825億円となりました。
③ ヘルスケア等セグメント
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の2,774億円に対して132億円増加し、2,906億円となりました。これは主として、子会社の新規連結に伴う資産の増加によるものです。
(6) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,656億円の収入(前期は1,148億円の収入)となりました。税引前当期利益が983億円であり、減価償却費及び償却費630億円と、法人所得税の支払額261億円があったこと等によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、662億円の支出(前期は666億円の支出)となりました。有形固定資産の取得による支出768億円と、無形資産の取得による支出91億円があったこと等によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、603億円の支出(前期は523億円の支出)となりました。連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出220億円と、配当金の支払額175億円があったこと等によるものです。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、1,816億円となりました。
(7) 当連結会計年度の資金の流動性及び資金の調達、使途
① 資金の流動性について
当連結会計年度は短期流動性に関し、手元流動性確保のために、コミットメント・ライン、当座貸越枠、コマーシャル・ペーパー発行枠等の調達手段を備えております。
新型コロナウイルス感染症に関するリスクの認識にもとづく資金面での取り組みとして、十分な手元流動性比率の維持と既に設定している主要取引銀行との間のコミットメントラインにより資金の安全性を確保し、加えて、資金流動性リスク等が発生する可能性のある海外連結子会社に対して、当社が緊急貸付枠を設定し、一時的な資金繰りの支援体制を整備しております。
② 資金の調達
当連結会計年度の資金調達は、調達コストとリスク分散の観点による直接金融と間接金融のバランス及び長期と短期の資金調達のバランスを勘案し、金融機関からの借入等による資金調達活動を行いました。
③ 資金の使途
当連結会計年度の資金の使途は、主として事業資金です。
(8) 経営上の目標の達成状況について
経営上の目標の達成状況につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
当社グループは、IFRSの適用に当たり、投資家、取締役会及び経営会議が各事業の恒常的な業績や将来の見通しを把握すること、取締役会及び経営会議が継続的に事業ポートフォリオを評価することを目的として、「事業利益」という段階利益を導入しております。当該「事業利益」は、「売上高」から「売上原価」、「販売費」、「研究開発費」及び「一般管理費」を控除し、「持分法による損益」を加えたものであり、「その他の営業収益」及び「その他の営業費用」を含まない段階利益です。
当社グループは、タイ国の包装材料製造・販売会社フジエース社の発行済株式総数の51%に相当する当社グループが保有する全株式を、株式会社フジシールインターナショナル等へ譲渡する契約を2020年2月5日に締結し、2020年3月6日に譲渡いたしました。そのため、前連結会計年度における包材事業に関連する損益を、従来より非継続事業に分類している物流事業とあわせ、非継続事業に分類して再表示し、当該非継続事業を継続事業とは区分して表示しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
2030年の目指す姿に向け中期経営計画の実行を加速
顧客価値(社会価値)創出に対する従業員エンゲージメント向上が経済価値を生む企業価値向上サイクルにより2030年の目指す姿を実現していきます。2020年度は、外食向けビジネスが新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、オーガニック成長率はプラスにはいたりませんでしたが、構造改革を着実に進めた結果、ROICは6.9%と2019年度より改善しました。新型コロナウイルス感染症の事業への影響は2021年度も続きますが、コロナ禍においても中期経営計画を上回るスピードで実施してきた経営資源のシフトを確かな成長につなげていくために、ROIC重視とオーガニック成長への回帰に向けた変革を、引き続き財務資本戦略の重点テーマと位置づけ、実行を加速していきます。

<2020年度業績サマリー>■売上高:10,714億円(対前年△3%) 新型コロナウイルス感染症のグローバルでの拡大に伴い、主に、調味料・食品および冷凍食品において、内食需要の伸張により家庭用製品の販売が増加した一方、ロックダウン等の影響により引き続き外食用・業務用の販売が減少。 ■事業利益:1,131億円(対前年+14%) 化成品の大幅増収、調味料・食品や冷凍食品における家庭用製品の増収効果や製品ミックス改善効果等により増益。 ■親会社の所有者に帰属する当期利益:594億円(対前年+215%) 固定資産(遊休資産)の譲渡による固定資産売却益と動物栄養事業の事業構造改革に伴う減損損失等を計上したものの、事業構造改革関連費用は2019年度より縮小。 <2021年度業績予想>■売上高:11,130億円 ヘルスケア等で減収も、調味料・食品、冷凍食品で増収となり、全体で増収。 ■事業利益:1,150億円 ヘルスケア等の重点事業や冷凍食品の増収効果等で、全体で増益。 ■親会社の所有者に帰属する当期利益:600億円 FY21の構造改革費用は、約100億円を見込むが、親会社の所有者に帰属する当期利益は増益。 |
・2022年3月期 :重点KPI(セグメント別予想)

・「ROICを重視する経営」に向けた取り組み
味の素グループでは、資本コスト(WACC)を上回るROICの維持・改善に向けて、経営と現場が一体となって継続的に取り組んでいます。経営は、「成長性」と「効率性」に二つの軸で経営資源の最適配分を行うことによって継続的な投下資本効率の向上を目指し、現場は自律的なマネジメントに基づき、中長期視点でのROIC向上に努めています。

・事業ポートフォリオマネジメント
各事業を、市場の魅力度と自社の競争優位性から評価された「成長性」と、ハードルレートとROICの対比などで評価された「効率性」の二軸で分析し、資源配分の優先順位付けを行うことにより、オーガニック成長と投下資本効率の改善を果たします。事業ポートフォリオの選別にあたっては、事業ごとのWACCの違いを考慮し、それぞれの事業のROICがWACCを上回るかどうかを基準とします。
2021年度には、経営会議の下部機構として「重点事業グランドデザイン会議」を設けました。重点事業グランドデザイン会議において定期的に事業ポートフォリオ分析を行い、事業区分の判定を実施の上、資源配分の優先順位付けを行います。
・ROICツリー展開
ROICツリー(下図参照)をグループ全体に展開することで、現場主体の自律的なマネジメントに基づく中長期でのROIC改善を目指すとともに、重要なKPIが経営者・現場の双方から可視化されている状態を実現します。ROICツリーでは、「全事業共通ROICツリー」でKPIを管理し、同業他社分析や時系列分析等、事業ポートフォリオの判断につなげていきます。また、「事業・個社ROICツリー」として、各事業のアクションプランに応じた価値向上につながるKPIを事業特性に応じて独自に設定します。これにより、現場主体の自律的なマネジメントに基づくROICの改善活動が、味の素グループ全体の企業価値向上とつながっている状態を実現させます。

・バランスシートの目指す姿 | |
「ROICを重視した経営」を進めるべく、高い投資効率を維持できる健全なバランスシートを維持してまいります。2020年度においては、事業資産圧縮により約370億円、またリソースアロケーションおよび政策保有株式の売却により約170億円、合計で約540億円のアセットライト化施策を実施しました。収益性の向上による営業CFが改善し、コロ | |
ナ禍におけるリスクへの対応のために現預金残高を増やしたため総資産が増加しましたが、2020-2022年度においては、約1,000億円のアセットライト化施策を進め、総資産の増加を抑えていきます。負債・資本サイドは、2020年度末のネットD/Eレシオは0.44倍となり、中期的にネットD/Eレシオ0.5倍以下にコントロールしていきます。 ※ネットD/Eレシオの算式におけるネット有利子負債の金額は、有利子負債の金額から現金及び現金同等物に0.75を乗じた金額を控除した金額です。 | ![]() |
・キャッシュ・フロー計画 | |
2020年度の営業キャッシュ・フローは1,656億円となりました。営業キャッシュ・フローと事業構造改革による資産圧縮を進め、リソースアロケーションによりキャッシュ創出力をさらに高めていきます。2020-2022年度の期間で合計4,000億円以上のキャッシュインを計画しており、重点事業への成長投資と株主還元の充実のために使用していきます。2020-2022年度の株主還元は1,000億円以上を計画しています。 | ![]() |
・資金調達リスク、為替リスクへの対応 | |
金融市場の急激な変化に対応し、コロナ禍におけるグループ各社の事業継続をサポートできるよう、連結ベースで十分な手元流動性を確保するとともに各地域内・地域間のキャッシュマネジメントシステムを整備し、グループ内で資金を有効に活用しています。資金調達手段については、社債、コマーシャル・ペーパー、金融機関借入、売上債権流動化等、多様化を図り期日を分散させています。加えて、これらをバックアップする円貨、外貨のコミットメントラインを備えています。 また、為替の急激な変動リスクを回避するため、各国・地域における外貨建ての営業債権・債務、有利子負債等の確定した取引については、原則として為替予約をしています。 | ![]() |
・株主還元方針 | |
2020-2025中期経営計画のうち、構造改革にあたるフェーズ1の2020-2022年度における収益拡大と資産圧縮を通じて創出するキャッシュ・フローを成長への投資に充当するとともに、1,000億円超の株主還元を行います。今中期経営計画から、配当性向を従来の30%から40%を目途に引き上げ、総還元性向が50%以上となるよう安定的・継続的に株主還元を拡充していきます。 1株当たり当期利益(EPS)の向上と、中長期的に株主資本コストを上回るROICの実現によって企業価値を向上させ、配当込みTOPIXを上回るトータル株主リターン(TSR)を目指します。 | ![]() |
(2) 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また製品のグループ内使用(製品を他のセグメントの原材料として使用)や、受注生産形態をとる製品が少ないため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の実績は、「(4) 当連結会計年度の経営成績の分析」における各セグメント業績に関連付けて示しております。
(3) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」に記載しております。この連結財務諸表の作成に当たって必要な見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び同「5.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。
(4) 当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度の売上高は、新型コロナウイルス感染症のグローバルでの拡大に伴い、主に、調味料・食品及び冷凍食品において、内食需要の伸張により家庭用製品の販売が増加した一方、外食向け製品は需要の回復傾向がみられるものの、ロックダウン等の影響により引き続き外食用・業務用の販売が減少した結果、前期を285億円下回る1兆714億円(前期比97.4%)となりました。
事業利益は、化成品の大幅な増収による大幅な増益、調味料・食品や冷凍食品における家庭用製品の増収効果や製品ミックス改善効果等による増益に加え、前期にはプロマシドール・ホールディングス社(以下、PH社)の商標権に係る減損損失の計上があったこと等から、前期を138億円上回る1,131億円(前期比114.0%)となりました。
営業利益は、その他の営業収益で固定資産(遊休資産)の譲渡により前期を大幅に上回る固定資産売却益を計上したことに加え、その他の営業費用においても、当期は欧州及び北米の動物栄養事業の事業構造改革に伴う減損損失等を計上したものの、前期は当期を大幅に上回る減損損失の計上があったこと等により、前期を523億円上回る1,011億円(前期比207.3%)となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期を405億円上回る594億円(前期比315.4%)となりました。
当連結会計年度のセグメント別の概況
セグメントごとの業績は、次のとおりです。
売上高 (億円) | 前期増減 (億円) | 前期比 | 事業利益 (億円) | 前期増減 (億円) | 前期比 | |||
調味料・食品 | 6,205 | △212 | 96.7 | % | 867 | 51 | 106.3 | % |
冷凍食品 | 1,982 | △129 | 93.9 | % | 23 | 22 | - | % |
ヘルスケア等 | 2,395 | 78 | 103.4 | % | 262 | 67 | 134.6 | % |
その他 | 131 | △22 | 85.6 | % | △22 | △2 | - | % |
合計 | 10,714 | △285 | 97.4 | % | 1,131 | 138 | 114.0 | % |
(注)各セグメントの主要製品につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 7.セグメント情報 (1) 報告セグメントの概要」をご参照ください。
① 調味料・食品セグメント
調味料・食品セグメントの売上高は、主に、内食需要の増加により家庭用製品の販売が増加したものの、換算為替影響や外食需要の減少により外食向け製品の販売が減少した結果、前期を212億円下回る6,205億円(前期比96.7%)となりました。事業利益は、外食向け製品の減収影響があったものの、家庭用製品の増収効果や製品ミックス改善効果に加え、前期にPH社の商標権に係る減損損失計上があったこと等により、前期を51億円上回る867億円(前期比106.3%)となりました。
![]() | <主要な変動要因> | |
・調味料は、内食需要増により家庭用製品の販売増も、換算為替影響や外食需要減による海外外食向け製品の販売減により減収。 国内は、家庭用製品の販売好調により増収。 海外は、メニュー用調味料等が大幅増収も、換算為替影響や外食向け製品の販売減により減収。 ・栄養・加工食品は、内食需要増により国内家庭用製品が前期を上回るも、業務用コーヒーの販売減や換算為替影響等により減収。 国内は、家庭用コーヒーやスープが前期を上回るも、業務用コーヒーの販売減等により減収。 海外は、換算為替影響等により減収。 ・ソリューション&イングリディエンツは、外食需要減による国内外食向け製品の販売減や、換算為替影響等により減収。 | ||
![]() | <主要な変動要因> | |
・調味料は、家庭用製品の増収効果や製品ミックス改善効果等により増益。 国内は、増収効果等により増益。 海外は、換算為替影響あるも、製品ミックス改善効果等により増益。 ・栄養・加工食品は、前期にPH社の商標権に係る減損損失計上があったことや、国内の家庭用主力製品の増収効果等により大幅増益。 国内は、家庭用コーヒー主力製品やスープの増収効果等により増益。 海外は、前期にPH社の商標権に係る減損損失計上があり大幅増益。 ・ソリューション&イングリディエンツは、主に国内外食向け製品の減収影響により減益。 |
② 冷凍食品セグメント
冷凍食品セグメントの売上高は、主に、内食需要の増加により家庭用製品の販売が増加したものの、外食需要の減少により業務用製品の販売が減少した結果、前期を129億円下回る1,982億円(前期比93.9%)となりました。事業利益は、家庭用製品の増収効果や製品ミックスの改善効果等により大幅な増益となった結果、前期を22億円上回る23億円(前期比-%)となりました。
![]() | <主要な変動要因> | |
・内食需要増により家庭用製品の販売増も、外食需要減による業務用製品の販売減等により減収。 国内は、「ギョーザ」を中心とした家庭用主力製品の販売増も、業務用製品の販売減により減収。 海外は、北米の家庭用製品の販売増も、業務用製品の販売減や換算為替影響等により減収。 | ||
![]() | <主要な変動要因> | |
・家庭用製品の増収効果や製品ミックス改善効果等により大幅増益。 国内は、家庭用主力製品の増収効果等により増益。 海外は、換算為替影響あるも、家庭用製品の増収効果や製品ミックス改善効果等により大幅増益。 |
③ ヘルスケア等セグメント
ヘルスケア等セグメントの売上高は、化成品の大幅な増収等により前期を78億円上回る2,395億円(前期比103.4%)となりました。事業利益は、バイオファーマサービスが大幅な減益となったものの、化成品及び動物栄養の大幅な増益にともない、前期を67億円上回る262億円(前期比134.6%)となりました。
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・アミノ酸は、医薬用・食品用アミノ酸の販売増やバイオファーマサービスの換算為替影響等により、全体で増収。 ・化成品は、主に電子材料の販売好調により大幅増収。 ・その他は、スポーツニュートリションの需要減や、動物栄養における販売数量減等により減収。 | ||
![]() | <主要な変動要因> | |
・アミノ酸は、医薬用・食品用アミノ酸は大幅増益も、バイオファーマサービスが大幅減益となり、全体で減益。 ・化成品は、大幅増収により大幅増益。 ・その他は、主に動物栄養における販売単価上昇により大幅増益。 |
④ その他
その他の事業の売上高は前期を22億円下回る131億円(前期比85.6%)となり、事業利益は△22億円となりました。
当連結会計年度の連結損益計算書の段階ごとの概況
① 売上高
売上高は前期を285億円下回る1兆714億円(前期比97.4%)となりました。地域別に見ますと、日本では、前期を138億円下回る4,708億円(前期比97.2%)となりました。海外では、前期を147億円下回る6,005億円(前期比97.6%)となりました。海外の地域別では、アジア、米州及び欧州でそれぞれ2,637億円(前期比99.2%)、2,190億円(前期比93.1%)及び1,177億円(前期比103.1%)となりました。なお、売上高海外比率は56.1%(前期は55.9%)となりました。
② 売上原価、販売費、研究開発費及び一般管理費、持分法による損益
売上原価は、売上高の減少に伴い、前期から309億円減少し、6,652億円(前期比95.6%)となりました。売上原価の売上高に対する比率は、1.2ポイント改善し、62.1%となりました。販売費は、主として新型コロナウイルス感染症の影響による販売促進費や物流費の減少や為替影響により、前期から114億円減少し、1,606億円(前期比93.4%)となりました。研究開発費は、前期から16億円減少し、259億円(前期比93.9%)となりました。一般管理費は、連結子会社の増加等により、前期から53億円増加し、1,078億円(前期比105.2%)となりました。持分法による損益は、13億円の利益(前期は24億円の損失)となりました。
③ 事業利益
事業利益は、前期を138億円上回る1,131億円(前期比114.0%)となりました。地域別に見ますと、日本では484億円(前期比105.3%)、海外では646億円(前期比121.5%)となりました。海外の地域別では、アジア、米州及び欧州でそれぞれ453億円(前期比107.5%)、139億円(前期比110.1%)及び53億円(前期比-%)となりました。なお、事業利益海外比率は57.1%(前期は53.6%)となりました。
セグメント別の事業利益の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 7.セグメント情報」をご参照ください。
④ その他の営業収益(費用)
その他の営業収益は、遊休資産の譲渡による固定資産売却益を計上したこと等により、前期から168億円増加し、244億円(前期比322.7%)となりました。その他の営業費用は、前期において減損損失及び特別転進支援施策関連費用を計上したこと等により、前期から215億円減少し、364億円(前期比62.8%)となりました。
⑤ 営業利益
営業利益は、前期を523億円上回る1,011億円(前期比207.3%)となりました。
⑥ 金融収益(費用)
金融収益は、前期から41億円減少し、39億円(前期比48.6%)となりました。金融費用は、前期から13億円減少し、67億円(前期比83.7%)となりました。
⑦ 親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は前期を405億円上回る594億円(前期比315.4%)となり、1株当たり当期利益は108円36銭(前期は34円37銭)となりました。
(5) 当連結会計年度の連結財政状態の分析
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の1兆3,536億円に対して776億円増加し、1兆4,312億円となりました。これは主として、売上債権及びその他の債権等が減少した一方で、現金及び現金同等物や有形固定資産等が増加したことによるものです。
負債合計は、前連結会計年度末の7,615億円に対して18億円増加し、7,634億円となりました。これは主として、有利子負債等が減少した一方で、繰延税金負債や仕入債務及びその他の債務等が増加したことによるものです。なお有利子負債残高は、長期借入金等が増加した一方、1年内償還予定の社債やコマーシャル・ペーパーの減少等により、前連結会計年度末に対して69億円減少し、4,068億円となりました。
資本合計は、その他の資本の構成要素の増加等により、前連結会計年度末に対して757億円増加しました。資本合計から非支配持分を引いた親会社の所有者に帰属する持分は、6,202億円となり、親会社所有者帰属持分比率は43.3%となりました。
セグメントごとの概況は、次のとおりです。
① 調味料・食品セグメント
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の5,193億円に対して436億円増加し、5,629億円となりました。これは主として設備投資等に伴う有形固定資産の増加によるものです。
② 冷凍食品セグメント
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の1,857億円に対して32億円減少し、1,825億円となりました。
③ ヘルスケア等セグメント
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の2,774億円に対して132億円増加し、2,906億円となりました。これは主として、子会社の新規連結に伴う資産の増加によるものです。
(6) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況
(億円) | |||
2020年3月期 | 2021年3月期 | 差額 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 1,148 | 1,656 | 507 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △666 | △662 | 4 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △523 | △603 | △80 |
現金及び現金同等物に係る換算差額 | △79 | 38 | 118 |
現金及び現金同等物の増減額 | △120 | 429 | 549 |
売却目的保有に分類される処分グループに係る 資産に含まれる現金及び現金同等物 | - | △29 | △29 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 1,417 | 1,816 | 399 |
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,656億円の収入(前期は1,148億円の収入)となりました。税引前当期利益が983億円であり、減価償却費及び償却費630億円と、法人所得税の支払額261億円があったこと等によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、662億円の支出(前期は666億円の支出)となりました。有形固定資産の取得による支出768億円と、無形資産の取得による支出91億円があったこと等によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、603億円の支出(前期は523億円の支出)となりました。連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出220億円と、配当金の支払額175億円があったこと等によるものです。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、1,816億円となりました。
(7) 当連結会計年度の資金の流動性及び資金の調達、使途
① 資金の流動性について
当連結会計年度は短期流動性に関し、手元流動性確保のために、コミットメント・ライン、当座貸越枠、コマーシャル・ペーパー発行枠等の調達手段を備えております。
新型コロナウイルス感染症に関するリスクの認識にもとづく資金面での取り組みとして、十分な手元流動性比率の維持と既に設定している主要取引銀行との間のコミットメントラインにより資金の安全性を確保し、加えて、資金流動性リスク等が発生する可能性のある海外連結子会社に対して、当社が緊急貸付枠を設定し、一時的な資金繰りの支援体制を整備しております。
② 資金の調達
当連結会計年度の資金調達は、調達コストとリスク分散の観点による直接金融と間接金融のバランス及び長期と短期の資金調達のバランスを勘案し、金融機関からの借入等による資金調達活動を行いました。
③ 資金の使途
当連結会計年度の資金の使途は、主として事業資金です。
(8) 経営上の目標の達成状況について
経営上の目標の達成状況につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。