有価証券報告書-第124期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/26 11:31
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
我が国の経済状況は、「平成」から「令和」へと時代が変わる大きな歴史の転換点の中で、前半は企業業績や雇用環境の改善等を背景に全体としては緩やかな回復基調にあったものの、10月の消費増税、米中貿易摩擦の長期化、令和元年東日本台風(台風19号)など大規模自然災害の発生や暖冬などのマイナス要因に加えて、年明けからの新型コロナウイルス感染拡大による影響を受けて、当社を取り巻く環境は大きく変化しております。
このような状況において、当社グループでは、中期経営計画「CAN20第2フェーズ」の3年目を迎え、『集中と結集』をキーコンセプトに、「セグメント別事業戦略」「新規事業創出」「経営基盤強化」の3つの基本戦略への取り組みを進めました。
機能ソリューション事業は、半導体市場の低迷による影響を受けましたが、M&Aによる効果もあり増収となりました。アパレル事業は、消費増税後の消費マインドの低下や、大型台風等の自然災害、暖冬、及び新型コロナウイルス感染拡大による影響を受けましたが、事業体質改善により営業増益となりました。
その結果、当連結会計年度の売上高は140,311百万円(前年同期比0.3%減)、営業利益は6,746百万円(前年同期比0.8%増)、経常利益は6,868百万円(前年同期比4.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,387百万円(前年同期比7.3%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
機能ソリューション事業
プラスチックフィルム分野は、ナイロンフィルムが堅調に推移したものの、OPPフィルムや多層シートは市況の影響を受け苦戦しました。エンジニアリングプラスチックス分野は、半導体市場向け及び産業機器向けは苦戦しましたが、OA向け製品が引き続き堅調に推移しました。電子部品分野は、中国内販は堅調に推移しましたが、フィルム販売は減少しました。メディカル分野は、株式会社メディカルユーアンドエイの子会社化により増収となりましたが、米国向け縫合補強材の減少と治験費用等の増加影響を受けました。
以上の結果、機能ソリューション事業の売上高は56,361百万円(前年同期比5.9%増)、営業利益は6,120百万円(前年同期比0.6%減)となりました。
アパレル事業
アパレル事業全体では、消費増税後の消費マインドの低下や、大型台風等の自然災害、暖冬、及び新型コロナウイルス感染拡大による影響を受け苦戦しましたが、インナーウエア分野では、メンズインナーのBODYWILD「AIRZ」とYG「カットオフ」や、レディスインナーのKIREILABOを中心に順調に推移し、レッグウエア分野を含めた商品開発力強化により、収益性が向上しました。
以上の結果、アパレル事業の売上高は69,491百万円(前年同期比4.3%減)、営業利益は2,743百万円(前年同期比9.4%増)となりました。
ライフクリエイト事業
不動産関連分野では、ショッピングセンター事業は消費増税や新型コロナウイルス感染拡大による影響を受けましたが、地域に密着した取り組みや、賃貸事業における新規物件が貢献しました。スポーツクラブ分野では、会員数の減少に歯止めがかかったものの、新型コロナウイルス感染拡大による影響を大きく受けました。
以上の結果、ライフクリエイト事業の売上高は14,945百万円(前年同期比2.2%減)、営業利益は1,187百万円(前年同期比4.4%減)となりました。
② 財政状態の概況
総資産は166,633百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,998百万円減少しました。主な増加要因は、プラスチックフィルム分野でのベトナム新工場建設等による建設仮勘定の増加4,354百万円であり、主な減少要因は、保有株式の時価下落や政策保有株式の売却等による投資有価証券の減少3,579百万円、投資その他の資産その他の減少2,275百万円(出資金等)であります。
負債は57,494百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,069百万円減少しました。主な減少要因は、コマーシャル・ペーパーを含む長短借入金の減少1,042百万円であります。
純資産は109,139百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,929百万円減少しました。主な増加要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加4,387百万円であり、主な減少要因は、その他有価証券評価差額金の減少2,842百万円、配当による減少1,995百万円、自己株式の取得による減少1,964百万円であります。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
機能ソリューション事業のセグメント資産は54,073百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,310百万円増加しました。主な増加要因は、株式会社メディカルユーアンドエイの子会社化による売上債権や棚卸資産の増加およびプラスチックフィルム分野でのベトナム新工場建設等による建設仮勘定の増加等であります。
アパレル事業のセグメント資産は53,995百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,091百万円減少しました。主な減少要因は昨年度末が休日であったこと等による売上債権の減少等であります。
ライフクリエイト事業のセグメント資産は33,908百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,087百万円減少しました。主な減少要因はスポーツクラブ分野の競合激化により、減損損失を計上したことに伴う固定資産の減少等であります。
また、各報告セグメントに配分していない全社資産の調整額は24,656百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,130百万円減少しました。主な減少要因は保有株式の時価下落や政策保有株式の売却等による投資有価証券の減少等であります。
③ キャッシュ・フローの概況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,165百万円増加し、9,267百万円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況と主な要因は次のとおりであります。
営業活動によって得られたキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して2,196百万円増加し、13,688百万円となりました。主なキャッシュ・インの要因は税金等調整前当期純利益5,899百万円、減価償却費6,390百万円、売上債権の減少3,385百万円であり、主なキャッシュ・アウトの要因は法人税等の支払額2,174百万円であります。
投資活動に使用されたキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して888百万円増加し、8,262百万円となりました。主なキャッシュ・アウトの要因は機能ソリューション事業の設備投資など固定資産の取得による支出9,599百万円、主なキャッシュ・インの要因は固定資産の売却による収入2,195百万円であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して597百万円増加し、4,886百万円の支出となりました。主なキャッシュ・インの要因は長期借入れによる収入1,643百万円であり、主なキャッシュ・アウトの要因は長期借入金の返済による支出2,454百万円、配当金の支払い1,989百万円、自己株式の取得による支出1,487百万円であります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前期比(%)
機能ソリューション事業36,617△2.3
アパレル事業40,877△6.2
合計77,495△4.4

(注) 1.上記金額は、製造原価ベースで表示しており、外注生産高を含んでおります。
2.上記生産実績以外に、下記の商品仕入高があります。
セグメントの名称仕入高(百万円)前期比(%)
機能ソリューション事業3,1041,103.4
アパレル事業6,911△11.2
ライフクリエイト事業2,588△2.6
合計12,60517.8

(注)当連結会計年度、機能ソリューション事業における商品仕入高に著しい変動がありました。これは、㈱メディカルユーアンドエイの株式を取得し、子会社化したことによるものです。
3.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当社及び連結子会社は、機能ソリューション事業に含まれる機械類を除き、原則として見込生産であります。
機能ソリューション事業に含まれる機械類の受注高、受注残高は下記のとおりであります。
区分受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)
機能ソリューション事業に含まれる機械類2,827△5.1733△29.6

(注) 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)
機能ソリューション事業56,3615.9
アパレル事業69,491△4.3
ライフクリエイト事業14,945△2.2
小計140,798△0.2
内部売上控除△487
合計140,311△0.3

(注) 1.販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10を超える販売先はありません。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、中期経営計画「CAN20」を策定し、「集中と結集」をキーコンセプトとして、計画期間を第1フェーズ(2014年度~2016年度)と第2フェーズ(2017年度~2021年度)に分け、グループ経営ビジョンの実現に向け取り組みを進めています。CAN20第2フェーズ最終年度の2021年度経営目標はグループ売上高1,500億円、営業利益80億円、親会社株主に帰属する当期純利益56億円、ROE(自己資本利益率)5%以上としております。
中でもROEをグループ重点指標として掲げ、その向上に取組んでおり、昨年度から、資本コスト経営として、①投下資本、②投下資本収益率(ROIC)、③加重平均資本コスト(WACC)の視点を経営管理に加え、業績についても投下資本に対する資本コストを踏まえた経済的付加価値指標「GVA(GVA=Gunze Value Added)」による評価を導入し、全社的なマインドチェンジに取り組んでおります。
当連結会計年度は、アパレル事業において、消費増税後の消費マインドの低下や、大型台風等の自然災害、暖冬、及び新型コロナウイルス感染拡大による影響を受けたものの、事業体質改善により営業増益を達成したことに加えて、政策保有株式については配当や当社利益への貢献度と保有コストの観点から一部の株式売却を進める等、投下資本の削減に取り組みました。その結果、ROEは4.0%(前年同期3.7%)、ROA(総資産営業利益率)は4.0%(前年同期3.9%)と改善しました。
(CAN20第2フェーズの経営成績推移)
(単位:億円)
2017年度
(2018年3月期)
2018年度
(2019年3月期)
2019年度
(2020年3月期)
2020年度
(2021年3月期) 業績予想※2
2021年度
(2022年3月期)
目標
売上高1,4051,4071,4031,500
営業利益62666780
営業利益率4.4%4.8%4.8%5.3%
当期純利益※134404356
ROA3.7%3.9%4.0%4.7%
ROE3.2%3.7%4.0%5.0%

※1.当期純利益=親会社株主に帰属する当期純利益
※2.2020年度(2021年3月期)の業績予想は現時点では未定
(新型コロナウイルス感染症に関する現在の状況について)
2020年4月7日、政府の「緊急事態宣言」により、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づく外出自粛要請・ステイホームが呼びかけられるなか、新型コロナウイルス感染拡大による影響は当社グループにも大きな影響を与えています。中でも、アパレル事業のインナーウエア、レッグウエア分野においては店頭販売が減少し、ライフクリエイト事業において運営しておりますスポーツクラブおよび温浴施設は、6月以降順次再開しているものの、5月までの全館臨時休館の影響もあり、売上高が大きく減少しております。
海外を含む生産活動については、今のところサプライチェ-ンに大きな支障はなく、複数ラインでの生産体制により製品供給に問題はないと認識しております。
財政状態については運転資金は自己資金の充当およびコマーシャル・ペーパーの発行により調達しておりますが、コマーシャル・ペーパーについては発行枠300億円(当連結会計年度末発行残高66億円)を有しており、これ以外にもコミットメントライン50億円(借入実行残高なし)および取引銀行における当座貸越(借入実行残高なし)においても十分な枠を保有しているなど、当面の資金調達については十分な余力を有していると判断しております。事態が長期化又は更なる感染拡大が進行すれば当社グループの財政状態にも少なからず影響を及ぼす可能性があることから、状況の変化に応じて新規の資金調達枠についても適宜、検討してまいる予定です。
今後も新型コロナウイルス感染拡大に関する情報収集および対応を継続的に実施し、その影響の極小化に努めるとともに、「新しい生活様式」等、「アフターコロナ」での社会構造変化に対応した事業運営に取り組んでまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの概況」に記載のとおりであります。
当社グループは、企業価値向上に向けて安定的財務基盤を維持しながら資本効率を向上させることを財務戦略の基本方針としております。
安定的財務基盤を維持するために自己資本比率および有利子負債/EBITDA倍率について適正値を定め、事業資金の財源確保を図っております。有利子負債については、長期資金による調達比率50%程度を目安とし、長期資金については銀行借入、短期資金についてはコマーシャルペーパー(CP)を中心に安定有利調達に努めております。
また、地域別の調達体制としては、国内グループは親会社を中心としたCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)、海外グループはプーリング取引により資金の集約化を図るとともに、取引銀行との間で協調融資型特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結することにより、過剰に手元流動性を確保することなく安定的な資金調達を実現しております。
資本効率向上については、運転資本の圧縮、資本コストを加味した投資採算性の検証等により、総資産営業利益率の向上に努めるとともに、現在の中期計画「CAN20第2フェーズ(2017年度~2021年度)」期間中は連結総還元性向((配当+自己株式取得)÷連結当期純利益)100%(多額の投資がある場合は除く)を目標値とし株主還元を進めてまいります。
このような方針のもと、当連結会計年度は、順調な業績向上による営業キャッシュ・フロ-を獲得(136億円)し、設備投資や株主還元資金について自己資金で調達したことに加えて、有利子負債の削減(11億円)を実施することができました。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、「①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容(新型コロナウイルス感染症に関する現在の状況について)」に記載のとおりであります。
③ 重要な会計方針及び見積り及び見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。
a. 有形固定資産、無形固定資産
当社グループでは、有形固定資産及び無形固定資産の簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合には、減損の有無を判定しています。この判定は、事業用資産についてはグルーピングした各事業単位の将来キャッシュ・フローの見積りに基づいて行っています。経営者は将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額の見積りは合理的であると考えていますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フローや回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。
新型コロナウイルス感染拡大による影響は、当社グループの事業活動にも大きな影響を及ぼしています。当社グループは新型コロナウイルス感染症の影響を将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額の見積りに反映するにあたり、主として次のような仮定を置いております。現在の状況及び入手可能な情報に基づき、合理的と考えられる見積り及び判断を行っておりますが、不確実性の極めて高い環境下にあり、新型コロナウイルス感染症の広がりや収束時期等の見積りには不確実性を伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
・新型コロナウイルス感染症の収束時期は不確実であり予測が困難ですが、当社グループは、最善の見積りを行う上で、2021年3月末までに収束するシナリオを想定しています。
b. 繰延税金資産
当社グループでは、回収可能性がないと判断される繰延税金資産に対して評価性引当額を設定し、適切な繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の回収可能性は各社、各納税主体で十分な課税所得を計上するか否かによって判断されるため、その評価には、実績情報とともに将来に関する情報が考慮されています。経営者は、当該計上額が適切なものであると判断していますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化に伴う各社、各納税主体の経営悪化により、繰延税金資産に対する評価性引当額を追加で設定する可能性があります。
新型コロナウイルス感染拡大による影響は、当社グループの事業活動にも大きな影響を及ぼしています。当社グループは新型コロナウイルス感染症の影響を将来の課税所得の見積りに反映するにあたり、主として次のような仮定を置いております。現在の状況及び入手可能な情報に基づき、合理的と考えられる見積り及び判断を行っておりますが、不確実性の極めて高い環境下にあり、新型コロナウイルス感染症の広がりや収束時期等の見積りには不確実性を伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
・新型コロナウイルス感染症の収束時期は不確実であり予測が困難ですが、当社グループは、最善の見積りを行う上で、2021年3月末までに収束するシナリオを想定しています。