有価証券報告書-第125期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/28 11:40
【資料】
PDFをみる
【項目】
160項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度(2020年4月1日~2021年3月31日)における日本経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大による外出自粛、休業要請等の影響を受けて個人消費や企業活動が著しく制限され、新型コロナウイルス感染症の再拡大による緊急事態宣言の再発令など、今後も予断を許さない状態が継続しています。また株式市場では、積極的な金融緩和政策もあり日経平均株価もバブル崩壊後高値を更新するなど大幅に上昇しており、実体経済との乖離が懸念されています。
当社グループでは、中期経営計画「CAN20計画第2フェーズ」において、『集中と結集』をコンセプトに、「セグメント別事業戦略」「新規事業創出」「経営基盤強化」の3つの基本戦略への取り組みを進めておりますが、新型コロナウイルスの世界的感染拡大が、当社グループに大きな影響を及ぼしていることから、中期経営計画「CAN20計画第2フェーズ」の最終年度を2022年3月期まで1年間延長し、2020年度はその影響を最小限とする取り組みを最優先と致しました。
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、機能ソリューション事業は、各分野で影響を受けました。アパレル事業は、成長販路であるECチャネルでの大幅な販売拡大を進めましたが、店舗販売の低迷をカバーできませんでした。またライフクリエイト事業は、ショッピングセンターやスポーツクラブの臨時休業の影響を受けました。
その結果、当連結会計年度の売上高は123,649百万円(前年同期比11.9%減)、営業利益は4,673百万円(前年同期比30.7%減)、経常利益は5,094百万円(前年同期比25.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,147百万円(前年同期比51.1%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
機能ソリューション事業
プラスチックフィルム分野は、収縮ラベル用フィルムが外出・イベント自粛により飲料向けで低迷しましたが、包装用フィルムが内食需要で好調に推移しました。エンジニアリングプラスチックス分野は、半導体市場向け製品が堅調に推移しましたが、オフィス関連向けOA製品が低迷しました。電子部品分野は、既存商品のリピート停滞と新商品の延期によりタッチパネルの販売が減少しました。メディカル分野は、外科手術の減少や医療機関への立ち入り制限の影響はあるものの回復基調となりました。
以上の結果、機能ソリューション事業の売上高は49,673百万円(前年同期比11.9%減)、営業利益は4,852百万円(前年同期比20.7%減)となりました。
アパレル事業
アパレル事業全体では回復基調となってきたものの、緊急事態宣言再発令などにより、店頭販売の不振が影響しました。インナーウエア分野は、EC、ドラッグストアのチャネルが好調に推移し、ベーシック商品や、レディス商品が伸長しました。また、レッグウエア分野は、一部レギンス等は好調に推移しましたが、外出・イベントの自粛によりストッキングの着用機会が大幅に減少しました。
以上の結果、アパレル事業の売上高は62,640百万円(前年同期比9.9%減)、営業利益は2,306百万円(前年同期比15.9%減)となりました。
ライフクリエイト事業
不動産関連分野は、新型コロナウイルス感染症の再拡大の影響により、集客が伸び悩み苦戦しましたが、新規物件が賃貸事業に寄与しました。スポーツクラブ分野は、新型コロナウイルス感染症拡大により会員数が大きく減少し、再開後の会員の戻りも遅く影響を受けました。
以上の結果、ライフクリエイト事業の売上高は11,976百万円(前年同期比19.9%減)、営業利益は482百万円(前年同期比59.4%減)となりました。
② 財政状態の概況
総資産は159,629百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,003百万円減少しました。主な増加要因は、プラスチックフィルム分野でのベトナム新工場稼働等による機械装置及び運搬具の増加1,272百万円であり、主な減少要因は、新工場稼働等による建設仮勘定の減少3,940百万円、繰延税金資産の減少1,877百万円、仕掛品の減少958百万円、商品及び製品の減少763百万円であります。
負債は44,451百万円となり、前連結会計年度末に比べ13,043百万円減少しました。主な減少要因は、コマーシャル・ペーパーを含む長短借入金の減少7,350百万円、支払手形及び買掛金の減少2,440百万円、退職給付に係る負債の減少1,801百万円であります。
純資産は115,178百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,039百万円増加しました。主な増加要因は、その他有価証券評価差額金の増加4,939百万円、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加2,147百万円、退職給付に係る調整累計額の増加1,306百万円であり、主な減少要因は、配当による減少2,042百万円であります。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
機能ソリューション事業のセグメント資産は51,342百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,730百万円減少しました。主な減少要因は、電子部品分野でのタッチパネル販売減少等による売掛金の減少や、2021年2月に発生した福島県沖地震により、プラスチックフィルム分野で一時的に生産活動を停止したこと等による仕掛品の減少等であります。
アパレル事業のセグメント資産は53,657百万円となり、前連結会計年度末に比べ338百万円減少しました。主な減少要因は繊維資材分野やレッグウエア事業分野等で減価償却がすすんだこと等による固定資産の減少等であります。
ライフクリエイト事業のセグメント資産は31,792百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,115百万円減少しました。主な減少要因は不動産関連分野等で減価償却がすすんだことや、スポーツクラブ分野の競合激化により減損損失を計上したこと等による固定資産の減少等であります。
また、各報告セグメントに配分していない全社資産の調整額は22,836百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,819百万円減少しました。主な減少要因は保有株式の時価上昇や退職給付数理差異の影響による繰延税金資産の減少等であります。
③ キャッシュ・フローの概況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ449百万円増加し、9,717百万円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況と主な要因は次のとおりであります。
営業活動によって得られたキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して5,092百万円減少し、8,595百万円となりました。主なキャッシュ・インの要因は税金等調整前当期純利益3,356百万円、減価償却費6,155百万円、たな卸資産の減少1,723百万円、主なキャッシュ・アウトの要因は仕入債務の減少2,250百万円、法人税等の支払額1,306百万円であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して9,431百万円増加し、1,169百万円の収入となりました。主なキャッシュ・インの要因は投資有価証券の売却による収入6,832百万円、主なキャッシュ・アウトの要因は固定資産の取得による支出4,796百万円であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して4,449百万円減少し、9,335百万円の支出となりました。主なキャッシュ・アウトの要因は短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの減少6,420百万円、配当金の支払い2,036百万円であります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前期比(%)
機能ソリューション事業32,564△11.1
アパレル事業35,357△13.5
合計67,921△12.4

(注) 1.上記金額は、製造原価ベースで表示しており、外注生産高を含んでおります。
2.上記生産実績以外に、下記の商品仕入高があります。
セグメントの名称仕入高(百万円)前期比(%)
機能ソリューション事業2,743△11.6
アパレル事業5,498△20.4
ライフクリエイト事業2,142△17.2
合計10,385△17.6

3.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当社及び連結子会社は、機能ソリューション事業に含まれる機械類を除き、原則として見込生産であります。
機能ソリューション事業に含まれる機械類の受注高、受注残高は下記のとおりであります。
区分受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)
機能ソリューション事業に含まれる機械類1,939△31.4546△25.5

(注) 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)
機能ソリューション事業49,673△11.9
アパレル事業62,640△9.9
ライフクリエイト事業11,976△19.9
小計124,290△11.7
内部売上控除△641
合計123,649△11.9

(注) 1.販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10を超える販売先はありません。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、中期経営計画「CAN20」を策定し、「集中と結集」をキーコンセプトとして、計画期間を第1フェーズ(2014年度~2016年度)と第2フェーズ(2017年度~2021年度)に分け、グループ経営ビジョンの実現に向け取り組みを進めています。CAN20第2フェーズ最終年度の2021年度経営目標はグループ売上高1,500億円、営業利益80億円、親会社株主に帰属する当期純利益56億円、ROE(自己資本利益率)5%以上としております。
中でもROEをグループ重点指標として掲げ、その向上に取組んでおり、2019年度から、資本コスト経営として、①投下資本、②投下資本収益率(ROIC)、③加重平均資本コスト(WACC)の視点を経営管理に加え、業績についても投下資本に対する資本コストを踏まえた経済的付加価値指標「GVA(GVA=Gunze Value Added)」による評価を導入し、全社的なマインドチェンジに取り組んでおります。
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染拡大による影響を大きく受け、各セグメントで減収減益となりました。機能ソリューション事業は、各分野で影響を受け減収減益となりました。アパレル事業は、成長販路であるECチャネルでの大幅な販売拡大を進めましたが、店舗の低迷をカバーできず減収減益となりました。ライフクリエイト事業は、ショッピングセンタ-やスポ-ツクラブの臨時休業の影響を受け減収減益となりました。
一方、保有する有価証券の時価上昇等により、前連結会計年度に比べ純資産は増加しましたが、計画しておりました政策保有株式の売却実施により、有利子負債を削減することができました。
その結果、ROEは1.9%(前年同期4.0%)、ROA(総資産営業利益率)は2.9%(前年同期4.0%)となりました。
(CAN20第2フェーズの経営成績推移)
(単位:億円)
2017年度
(2018年3月期)
2018年度
(2019年3月期)
2019年度
(2020年3月期)
2020年度
(2021年3月期)
2021年度
(2022年3月期)
目標※2
売上高1,4051,4071,4031,2361,500
営業利益6266674680
営業利益率4.4%4.8%4.8%3.8%5.3%
当期純利益※13440432156
ROA3.7%3.9%4.0%2.9%4.7%
ROE3.2%3.7%4.0%1.9%5.0%

※1.当期純利益=親会社株主に帰属する当期純利益
※2.2021年5月14日に公表いたしました2021年度の業績予想は売上高1,350億円、営業利益80億円、当期純利益
56億円としております。売上高では中期経営計画「CAN20」の目標数値を下回るものの、コロナ禍で取り組んでまいりました企業体質強化により、営業利益、当期純利益では「CAN20」の目標数値を現時点の業績予想として公表しております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの概況」に記載のとおりであります。
当社グループは、企業価値向上に向けて安定的財務基盤を維持しながら資本効率を向上させることを財務戦略の基本方針としております。
安定的財務基盤を維持するために自己資本比率および有利子負債/EBITDA倍率について適正値を定め、事業資金の財源確保を図っております。有利子負債については、長期資金による調達比率50%程度を目安とし、長期資金については銀行借入、短期資金についてはコマーシャルペーパー(CP)を中心に安定有利調達に努めております。
また、地域別の調達体制としては、国内グループは親会社を中心としたCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)、海外グループはプーリング取引により資金の集約化を図るとともに、取引銀行との間で協調融資型特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結することにより、過剰に手元流動性を確保することなく安定的な資金調達を実現しております。
資本効率向上については、運転資本の圧縮、資本コストを加味した投資採算性の検証等により、総資産営業利益率の向上に努めるとともに、現在の中期計画「CAN20第2フェーズ(2017年度~2021年度)」期間中は連結総還元性向((配当+自己株式取得)÷連結当期純利益)100%(多額の投資がある場合は除く)を目標値とし株主還元を進めてまいります。
このような方針のもと、当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、営業活動によって得られたキャッシュ・フローは85億円と前連結会計年度と比較して50億円減少しましたが、政策保有株式の計画的売却等により営業キャッシュ・フローの減少分を補いつつ、有利子負債を74億円削減することができました。
③ 重要な会計方針及び見積り及び見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。