有価証券報告書-第98期(2022/04/01-2023/03/31)

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2023/06/21 10:06
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133項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」とい
う。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
■事業を取り巻く環境
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症に伴う経済活動制限が多くの国で緩和される一方で、ウクライナ情勢に端を発したエネルギーコストの上昇、インフレの加速や各国での金利上昇などに伴い景気減速の懸念が強まりました。自動車業界においては、半導体不足の長期化や、高止まりしている原材料費や物流費による大きな影響があり、今後も厳しい状況が続くことが予想されます。
また、気候変動に対する温暖化抑制のみでなく、資源循環や自然共生に向けた対応、人権遵守や人材の多様性の尊重・受容の実現など、社会課題解決に向けた企業の積極的な行動への期待がますます高まっています。
■当期の事業概況
①足許の競争力強化
当該年度において、当社は、自動車生産台数の大きな変動や、原材料費や物流費の高騰が続く厳しい環境下で、柔軟な生産対応を行ってまいりました。生産現場では、東北や九州を含めた工場間での人の行き来や助け合いを行える仕組みを構築しました。また、TPS※1とDX※2を融合させ、段ボールで再現した生産工程の現物シミュレーション等を行い、モノづくりのさらなる高効率化を進めました。さらに、減産下でも価格競争力を強化し稼ぐ力を向上させるため、新製品の原価企画の推進、固定費の効率化などを進めてまいりました。
②中長期目線での取り組み
2025年目指す姿である「内装システムサプライヤーとしてホーム※3となる」ために、2015年より進めてきましたシート骨格機構部品事業の再編は、完結に向けてめどがつきました。また、売上の拡大に向けて、インドネシア・インドで新規のお客様から受注を獲得できました。今後は、電動化の進展に合わせ、モーターコアなど電動化部品の受注も伸ばしてまいります。
さらに、2030年ありたい姿である「インテリアスペースクリエイターとして新価値を創造」することを目指すべく、今年1月に米国ネバダ州ラスベガス市で開催された電子機器などの見本市のCES2023において、車室空間ソリューションの一つとして、ライドシェア※4の快適性を実現するアイテムを発表しました。これは今まで投資を行ってきたスタートアップ企業との成果でもあります。また、車いすユーザーが介助者なしでも安全で自立的な移動を実現する空間コンセプトを提案し、高評価をいただきました。今後は、このような技術を早期に世の中に提供できるよう、企画・実証フェーズから実装フェーズへ段階を上げていきたいと考えております。
※1 TPS(Toyota Production Systemの略):トヨタ生産方式
※2 DX(Digital Transformationの略):高速インターネットやクラウドサービス、人工知能(AI)などのIT(情報技術)によってビジネスや生活の質を高めていくこと
※3 ホーム:「現地現物」で、自分たちで付加価値をつけることができ、競合と比較しても競争力で勝っている事業や地域のこと
※4 ライドシェア:交通渋滞の緩和や環境負荷の低減などを目的とした、乗用車の相乗り需要をマッチングさせるソーシャルサービスの総称
当連結会計年度の業績につきましては、連結売上収益は、部品供給問題などに起因する生産制約の影響はあり
ましたが、グローバルでの需要回復による増産効果や為替影響により、前連結会計年度に比べ1,825億円(12.8%)増加の1兆6,040億円となりました。利益につきましては、グローバルでの需要回復による増産効果は
ありましたが、主に日本での部品供給問題などによる車種構成の変化やロシア事業終了に伴う費用計上などにより、連結営業利益は、前連結会計年度に比べ126億円(△20.9%)減少の476億円、税引前利益は、前連結会計年度
に比べ122億円(△19.0%)減少の522億円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度
に比べ245億円(△62.6%)減少の146億円となりました。
当連結会計年度末の財政状態につきましては、資産は、現金及び現金同等物や営業債権の増加などにより、前連
結会計年度末に比べ426億円増加の1兆73億円となりました。一方、負債は、前連結会計年度末に比べ295億円増加し、5,704億円となりました。主な要因は、営業債務の増加によるものです。資本は、前連結会計年度末に比べ
130億円増加し、4,368億円となりました。主な要因は、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上によるもの
です。
セグメントごとの業績は、次のとおりであります。
<日本>当地域におきましては、増産効果などにより、売上収益は、前連結会計年度に比べ322億円(4.6%)増加の7,329
億円となりました。営業利益につきましては、部品供給問題などによる車種構成の変化や諸経費の増加はありました
が、移転価格税制調整金の影響などにより、前連結会計年度に比べ20億円(21.3%)増加の116億円となりました。
<北中南米>当地域におきましては、生産台数の増加や為替の影響などにより、売上収益は、前連結会計年度に比べ709億円
(22.3%)増加の3,887億円となりました。営業損失につきましては、増産効果はありましたがモデルチェンジや
新車種立上げに伴う諸経費の増加により、11億円(前連結会計年度は営業利益29億円)となりました。
<中国>当地域におきましては、昨年度下期の新車投入などによる生産台数の増加や為替の影響などにより、売上収益は、
前連結会計年度に比べ324億円(15.3%)増加の2,446億円となりました。営業利益につきましては、増産効果や新製
品効果に加え、為替の影響などにより、前連結会計年度に比べ54億円(34.7%)増加の212億円となりました。
<アジア・オセアニア>当地域におきましては、生産台数の増加や為替の影響などにより、売上収益は、前連結会計年度に比べ591億円
(31.1%)増加の2,496億円となりました。営業利益につきましては、増産効果や為替の影響はありましたが、移転価格税制調整金の影響などにより、前連結会計年度に比べ126億円(△47.5%)減少の140億円となりました。
<欧州・アフリカ>当地域におきましては、生産台数の増加や為替の影響などにより、売上収益は、前連結会計年度に比べ120億円
(12.5%)増加の1,082億円となりました。営業利益につきましては、増産効果や為替の影響はありましたが、
ロシア事業終了に伴う費用計上などにより、前連結会計年度に比べ33億円(△63.8%)減少の19億円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物の期末残高は、2,481億円と前連結会計年度末に
比べ102億円(4.3%)の増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>営業活動の結果増加した現金及び現金同等物は894億円となりました。これは主に、税引前利益522億円、減価償却
費及び償却費470億円などにより資金が増加したことによるものです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>投資活動の結果減少した現金及び現金同等物は364億円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による
支出456億円などにより資金が減少したことによるものです。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>財務活動の結果減少した現金及び現金同等物は408億円となりました。これは主に、リース負債の返済による支出
310億円、配当金の支払125億円などにより資金が減少したことによるものです。

③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
日本(百万円)695,1774.6
北中南米(百万円)360,40522.4
中国(百万円)216,55217.3
アジア・オセアニア(百万円)222,53330.5
欧州・アフリカ(百万円)90,50912.6
合計1,585,17813.7

(注) 1 金額は、販売価格によっております。
2 アジア・オセアニアセグメントにおいて、生産台数の増加や為替の影響などにより、生産実績が増加しております。
b.受注実績
当社グループは、主にトヨタ自動車株式会社をはじめとする各納入先より、四半期毎及び翌月の生産計画の提示を受け、生産能力を勘案して生産計画を立て生産しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
日本(百万円)643,5701.6
北中南米(百万円)384,12922.3
中国(百万円)235,86616.8
アジア・オセアニア(百万円)233,91132.3
欧州・アフリカ(百万円)106,55912.3
合計1,604,03612.8

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 アジア・オセアニアセグメントにおいて、生産台数の増加や為替の影響などにより、販売実績が増加して
おります。
3 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
トヨタ自動車㈱359,86125.3345,66021.5
トヨタ モーター ノース アメリカ㈱163,28311.5162,05110.1
トヨタ車体㈱147,32610.4150,9389.4

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)
連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針及び4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しておりま
す。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、連結売上収益が、前連結会計年度に比べ1,825億円(12.8%)増加の1兆6,040億円となりました。連結営業利益は、前連結会計年度に比べ126億円(△20.9%)減少の476億円となりました。連結税引前利益は、前連結会計年度に比べ122億円(△19.0%)減少の522億円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ245億円(△62.6%)減少の146億円となりました。
なお、当社グループは、経営成績に重要な影響を与える要因として、取引先である自動車メーカーの自動車生産
台数、販売台数及び販売車種等の変動の影響を受けております。
a.売上収益
売上収益は、部品供給問題などに起因する生産制約の影響はありましたが、グローバルでの需要回復による増産効果や為替影響により、前連結会計年度に比べ1,825億円(12.8%)増加の1兆6,040億円となりました。
b.営業利益
営業利益は、グローバルでの需要回復による増産効果はありましたが、主に日本での部品供給問題などによる車種構成の変化やロシア事業終了に伴う費用計上などにより、前連結会計年度に比べ126億円(△20.9%)減少の476億円となりました。
c.税引前利益
税引前利益は、営業利益の減少などにより、前連結会計年度に比べ122億円(△19.0%)減少の522億円となりました。
d.法人所得税費用
法人所得税費用は、前連結会計年度に比べ129億円(69.5%)増加の314億円となりました。また、税引前利益
に対する比率は、前連結会計年度の28.8%から60.2%となりました。
e.親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ245億円(△62.6%)減少の146億円となり、基本的1株当たり当期利益は78円57銭となりました。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッ
シュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b.経営及び財務に関する考え方
当社グループは、経済的価値向上の成果をステークホルダーに安定的・継続的に還元するとともに、将来の成長に向け再投資することで、中長期的に企業価値の向上をはかることを「経営の目指す姿」とし、経営基盤と競争力を強化しつつ、お客さまや社会に対する提供価値の多面化や事業領域の拡大を進めております。
c.資金調達の方針及び方法
当社グループは、事業活動の継続、適切な流動性の維持及び財務構造の安定化、成長への投資を目的として、資金調達を実施しております。資金調達の方法については、直接金融、間接金融双方の市場環境を踏まえ、資金
調達方法の多様化や経済合理性の観点から総合的に判断し、決定しております。
設備投資や研究開発費などの長期資金需要については、金融機関からの長期借入金及び社債の発行にて対応し
ております。その際、返済負担の軽減を図るために、年度別の返済・償還額の平準化をしております。運転資金需要については短期借入金にて対応しております。
また、多様化する資金調達環境下において、安定的に資金調達可能な環境を確保すべく、当社グループは国
内の格付機関から格付を取得しております。本報告書提出日現在において、株式会社日本格付研究所より格付
AA(安定的)を付与されております。こうした外部機関からの当社グループへの財務状況に対する評価は一定
のキャッシュポジションを維持していることなどによるものであります。
また、緊急的な資金需要に対して、コミットメントラインを設定し、資金を確保できる体制を整えておりま
す。
④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成の状況を判断するための客観的な指標等
2020年11月に発表した中期経営計画において、2025年の経営目標として既存コア製品の拡販・新規OEM獲得により、売上収益1兆6,000億円+α、固定費の更なる効率化と原価低減により、将来の成長予算を確保しつつ営業利益1,000億円+α、営業利益率6~7%を目標に掲げました。
2022年度の財務実績は、売上収益は、前期比1,825億円増加の1兆6,040億円、営業利益は、前期比126億円減少の476億円となり、税引前利益は、前期比122億円減少の522億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期比245億円減少の146億円となりました。
中期経営計画の2年目として実行計画に取り組んでまいりましたが、外部環境変化の影響などにより前年比で減益となりました。厳しい外部環境の中でも、将来に向けた取り組みは着実に実施し、25年度経営目標達成に繋げてまいります。