有価証券報告書-第136期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症が世界的に蔓延し、社会・経済活動が大きく制限され停滞するなど、極めて厳しい状況となりました。期後半は経済活動の再開や経済対策の効果により持ち直しの動きも見られましたが、地域によっては都市封鎖の再開や変異株の出現による感染再拡大の兆候が見られるなど、依然として予断を許さない状況が続いております。わが国経済におきましても、緊急事態宣言後の経済活動の再開に伴い、個人消費や企業収益に回復の兆しが見られましたが、緊急事態宣言の再発令や外出自粛による経済活動の制限に加えて、原材料価格の高騰や半導体の供給不足などのリスク要因もあり、引き続き先行きは不透明な状況です。
当社グループを取り巻く事業環境は、主要な供給先であります自動車業界では、足元は回復基調にあるものの、世界の主要国で自動車生産台数が落ち込み、前年割れとなる月が続くなど厳しい状況で推移いたしました。もう一つの柱であります鉄鋼業界でも、新型コロナウイルス感染症の影響に加えて、長引く米中貿易摩擦や鉄鉱石価格の高止まりによる生産コストの上昇などにより事業環境は厳しさを増しております。このような状況のなか、当連結会計年度の連結業績は次のとおりとなりました。
売上高は999億18百万円(前年同期比16.1%減)となりました。第1四半期は207億93百万円と厳しいスタートとなりましたが、以降は第2四半期235億24百万円、第3四半期253億76百万円、当第4四半期302億23百万円と緩やかな回復基調で推移いたしました。事業の種類別セグメント毎の売上高は、前年同期に比べ薬品事業が11.9%減、装置事業が26.8%減、加工事業が13.9%減、その他が25.2%減といずれも減収となりました。また、地域別セグメントは、国内が14.5%減、アジアが19.5%減、欧米が13.2%減といずれも減収となりました。
営業利益は106億81百万円(前年同期比15.2%減)と、売上高の減少に伴い減益となりました。経常利益は141億97百万円(前年同期比9.7%減)、特別利益として退職給付信託設定益30億10百万円を計上したこともあり、親会社株主に帰属する当期純利益は99億99百万円(前年同期比5.8%増)となりました。
この結果、当連結会計年度の総資産経常利益率(ROA)は6.5%と前年同期と比べ0.7ポイント減少いたしました。また、自己資本利益率(ROE)は6.8%と前年同期と比べ0.1ポイント増加いたしました。
海外業績の換算による損益計算書に与える影響額は、売上高11億57百万円程度の減収、営業利益で71百万円程度の減益となっております。
当連結会計年度の期首から、報告セグメントとして記載する事業区分を一部変更しており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいております。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
薬品事業
外部顧客に対する売上高は406億5百万円(前年同期比11.9%減)となり、営業利益は63億80百万円(前年同期比17.1%減)となりました。当事業部門は、金属などの表面に耐食性、耐摩耗性、潤滑性など機能性向上を目的とする化成皮膜を施し、素材の付加価値を高める薬剤などを中心に製造・販売しております。期前半は新型コロナウイルス感染症の影響により、国内では鉄鋼・自動車業界などの取引先で減産調整が行われ、海外においても政府要請による工場シャットダウンを余儀なくされるなど厳しい状況で推移しました。期後半は鉄鋼・自動車業界などの取引先において生産好転がみられましたが、前半の落ち込みを挽回するまでには至らず、全体としては減収減益となりました。
装置事業
外部顧客に対する売上高は175億11百万円(前年同期比26.8%減)となり、営業利益は4億30百万円(前年同期比30.3%減)となりました。当事業部門は、輸送機器業界を中心に前処理設備、塗装設備及び粉体塗装設備などを製造・販売しております。大型案件の減少に加え、新型コロナウイルス感染症の影響による現場行程の遅れや顧客の設備投資見直しによる売上計上時期の遅れが発生したほか、為替変動による収益性の悪化もあり減収減益となりました。
加工事業
外部顧客に対する売上高は390億96百万円(前年同期比13.9%減)となり、営業利益52億6百万円(前年同期比29.1%減)となりました。当事業部門は、熱処理加工、防錆加工、めっき処理などの表面処理の加工サービスを提供しております。期前半は国内の一部工場での一時休業の実施や、海外では政府要請による工場シャットダウンなどにより、生産活動が制限されたことにより厳しい状況で推移しました。期後半は国内主要取引先である自動車部品メーカーの生産好転により回復傾向が見られたものの、タイや米国など海外では収益面での回復が遅れたため、全体として減収減益となりました。
その他
外部顧客に対する売上高は27億5百万円(前年同期比25.2%減)となり、営業利益は39百万円(前年同期比103.2%増)となりました。当事業部門は、為替の影響を受けない国内を中心に、ビルメンテナンス事業、太陽光発電事業などを営んでおります。また、ライフサイエンス事業として、一般消費者向けに抗菌剤「Pal-feel」の販売を開始しました。併せて、医療機器への参入を進めており、自社開発のコーティング技術により、血液や生体組織の付着を低減した電気メス部品「CHIDORI」を上市し、2020年“超”モノづくり部品大賞「健康福祉・バイオ・医療機器部品賞」を受賞しました。
当社グループでは、第三次グループ中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)の最終年度である2022年3月期の目標として、売上高1,335億円、営業利益190億円、経常利益220億円、総資産経常利益率8%以上、自己資本利益率(ROE)8%以上を設定しておりますが、新型コロナウイルス感染症の影響等による景気後退の長期化が懸念されるなか、売上目標等の達成は難しい状況にあります。
このような状況の中、当社グループは、新たに策定した長期ビジョン「Vision2030」の実現に向けて、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております課題に、グループ一丸となって取り組んでまいります。
生産、受注及び販売の状況は次のとおりであります。
当社グループは主として販売計画に基づいた見込生産及び短納期での受注生産によっております。そのため、生産実績及び受注実績は販売実績と重要な相違がないため記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) |
| 薬品事業 | 40,605 | △11.9 |
| 装置事業 | 17,511 | △26.8 |
| 加工事業 | 39,096 | △13.9 |
| 報告セグメント 計 | 97,212 | △15.8 |
| その他 | 2,705 | △25.2 |
| 合計 | 99,918 | △16.1 |
(注)1 金額には消費税等は含まれておりません。
2 セグメント間の取引については相殺消去しております。
3 当連結会計年度の期首から、事業区分を見直したことに伴い、一部の装置事業およびその他に含まれていた運送事業・金属板試験片製造・販売事業について薬品事業へ変更し、一部の薬品事業について加工事業へ変更いたしました。
なお、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後の区分方法により作成したものを記載しております。
(2) 財政状態
(資産の部)
資産合計は、前連結会計年度末と比較し34億36百万円増加し2,202億10百万円となりました。流動資産は37億54百万円増加いたしました。主な要因は、現金及び預金が65億96百万円増加した一方で、有価証券が21億9百万円減少いたしました。固定資産は3億17百万円減少いたしました。主な要因は、有形固定資産が35億81百万円減少した一方で、投資その他の資産が投資有価証券の時価上昇などにより33億42百万円増加いたしました。
(負債の部)
負債合計は、前連結会計年度末と比較し22億83百万円減少し435億42百万円となりました。流動負債は5億94百万円増加いたしました。主な要因は、支払手形及び買掛金が14億45百万円減少した一方で、前受金が19億52百万円増加いたしました。固定負債は28億77百万円減少いたしました。主な要因は、投資有価証券の時価上昇に伴い繰延税金負債が18億88百万円増加した一方で、退職給付信託の追加設定などにより退職給付に係る負債が41億10百万円減少いたしました。
(純資産の部)
純資産合計は、前連結会計年度末と比較し57億19百万円増加し1,766億67百万円となりました。主な要因は利益剰余金が70億39百万円、自己株式が13億56百万円、その他有価証券評価差額金が33億13百万円それぞれ増加した一方で、為替換算調整勘定が11億10百万円、非支配株主持分が25億45百万円それぞれ減少いたしました。
以上の結果、自己資本比率は68.8%と前連結会計年度末と比較し2.7ポイント増加するとともに、1株当たり純資産は1,288円1銭と84円67銭増加いたしました。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
薬品事業
総資産合計は前連結会計年度末と比較し4億9百万円増加し556億66百万円となりました。流動資産は10億13百万円増加し407億81百万円となりました。有形固定資産は5億円減少し140億45百万円となりました。無形固定資産は27百万円減少し5億8百万円となりました。投資その他の資産は76百万円減少し3億31百万円となりました。
装置事業
総資産合計は前連結会計年度末と比較し11億6百万円増加し206億25百万円となりました。流動資産は10億56百万円増加し186億27百万円となりました。有形固定資産は72百万円減少し8億84百万円となりました。無形固定資産は50百万円増加し76百万円となりました。投資その他の資産は72百万円増加し10億35百万円となりました。
加工事業
総資産合計は前連結会計年度末と比較し10億14百万円減少し764億65百万円となりました。流動資産は21億38百万円増加し392億68百万円となりました。有形固定資産は25億82百万円減少し310億31百万円となりました。無形固定資産は1億46百万円減少し15億89百万円となりました。投資その他の資産は4億24百万円減少し45億75百万円となりました。
その他
総資産合計は前連結会計年度末と比較し9億76百万円減少し17億20百万円となりました。流動資産は7億37百万円減少し9億62百万円となりました。有形固定資産は1億98百万円減少し6億70百万円となりました。無形固定資産は2百万円減少し1百万円となりました。投資その他の資産は39百万円減少し85百万円となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物は、当連結会計年度の期首と比較し6億円増加し、571億8百万円となりました。なお、当連結会計年度は、現金及び現金同等物に係る換算差額により2億41百万円減少しております。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と増減の要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度に比べ13億2百万円収入が減少し162億12百万円の収入となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益164億62百万円、減価償却費56億22百万円、受取利息及び受取配当金9億26百万円、売上債権の増加額8億73百万円、仕入債務の減少額11億68百万円、前受金の増加額19億52百万円、法人税等の支払額34億53百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度に比べ14億69百万円支出が減少し72億63百万円の支出となりました。主な支出は、定期預金の預入による支出50億60百万円、有形固定資産の取得による支出49億8百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度に比べ19億96百万円支出が増加し81億6百万円の支出となりました。主な支出は、配当金の支払額30億23百万円、自己株式の取得による支出14億87百万円、子会社の自己株式による支出27億88百万円であります。
(キャッシュ・フロー関連指標)
| 前連結会計年度 (2020年3月31日) | 当連結会計年度 (2021年3月31日) | |
| 自己資本比率 | 66.1% | 68.8% |
| 時価ベースの自己資本比率 | 61.5% | 63.8% |
| キャッシュ・フロー対有利子負債比率 | 10.6% | 9.5% |
| インタレスト・カバレッジ・レシオ | 452.0倍 | 536.9倍 |
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりであります。
主な資金需要は、製品製造のための材料・部品等の購入費、製造費用、加工処理費用、商品の仕入、販売費及び一般管理費、法人税等の支払、配当金の支払、運転資金及び設備投資資金等であります。
当連結会計年度は、有形固定資産の取得49億8百万円、法人税等の支払額34億53百万円、配当金の支払30億23百万円、子会社の自己株式の取得による支出27億88百万円等の資金需要がありました。また、現金及び預金同等物の期末残高は、期首に比べ6億円増加いたしました。有利子負債は当連結会計年度は3億15百万円減少しております。
基本的に運転資金については、期限が一年以内の短期借入金で、通常各々の会社で運転資金として使用する現地の通貨で調達しております。設備投資資金については、原則として自己資金を利用しておりますが、一部では借入金によるものがあります。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その適用においては、過去の実績等を勘案して将来の見積りを計上することが必要とされる場合があります。特に連結財務諸表に重要な影響を与える見積りを必要とする項目は以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の仮定に関する情報は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (追加情報)」に記載しております。
①完成工事高
完成工事高の計上は工事完了まで一定期間を要し、かつ成果の確実性が認められる工事については工事進行基準を、その他の工事については工事完成基準を適用しております。工事進行基準対象工事につきましては将来の発生原価を合理的に見積っておりますが、現場の状況の変化、市場環境の変化、原材料価格の変動等の要因によりその見積り額が変動した場合は工事損益に影響を及ぼす可能性があります。
②貸倒引当金
売掛金、貸付金その他これらに準ずる債権を適正に評価するため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。将来、債権の相手先の財政状態が悪化して支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
③有形固定資産
償却資産に関しては、一般に公正妥当と認められる減価償却方法に基づき実施しております。また、固定資産の減損に係る会計基準に従い、減損損失の認識と測定を実施しておりますが、資産の市場価格の見積りや将来キャッシュ・フローの見積りは、合理的な仮定や予測に基づいて算出するため、当社グループによる見積りより悪化した場合、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
④投資有価証券
当社グループは金融機関及び販売、仕入に係る取引先等の株式を保有しております。これらの株式には価格変動性が高い公開会社の株式と、株価の決定が困難である非公開会社の株式が含まれます。当社グループは、投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、合理的な基準に基づいて投資有価証券の減損損失を計上しております。なお、将来の市況悪化や投資先の業績不振等、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収が不能となる状況が発生した場合、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
⑤退職給付に係る負債
従業員の退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、期待収益率、将来の給与水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率等が含まれます。当社及び一部の連結子会社が加入する年金制度においては、割引率は安全性の高い長期債券をもとに算出しています。期待収益率は、保有している年金資産のポートフォリオ、過去の運用実績、運用方針及び市場の動向等を勘案し計算されます。実際の結果が前提条件と異なる場合には、将来の費用及び計上される債務に影響を及ぼします。