有価証券報告書-第160期(2024/04/01-2025/03/31)

【提出】
2025/06/19 16:10
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【項目】
142項目
経営者の視点による当社グループ(当社及び連結子会社)の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
また、当社グループの事業は、医療用医薬品の研究開発、仕入、製造、販売並びにこれらの付随業務を事業内容とする単一セグメントであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 経営成績等
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は1兆5,353億49百万円で、前連結会計年度末に比べて1,184億31百万円増加しました。
非流動資産は、6,768億44百万円で、仕掛研究開発資産等の無形資産や使用権資産、その他の金融資産の増加等により前連結会計年度末に比べて441億32百万円増加となりました。流動資産は8,585億4百万円で、3ヶ月超の定期預金および債券(流動資産のその他の金融資産に含みます)の増減、現金及び現金同等物やその他の流動資産の増加等の結果、前連結会計年度末に比べて742億98百万円増加しました。
資本については1兆3,624億97百万円となりました。配当金の支払があった一方で、当期利益の計上により、前連結会計年度末に比べて1,099億34百万円増加しました。
負債については1,728億52百万円で、前連結会計年度末に比べて84億96百万円増加しました。
非流動負債は434億59百万円で、リース負債の増加等により前連結会計年度末に比べて130億10百万円増加しました。流動負債は1,293億92百万円で、その他の金融負債の減少等により、前連結会計年度末に比べて45億14百万円減少しました。
b.経営成績
当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)の経営成績は、以下のとおりであります。
(単位:百万円)
当連結会計年度前連結会計年度増減増減率(%)
売上収益438,268410,07328,1956.9
売上収益(ライセンス移管に伴う利益含む)438,268435,0813,1860.7
営業利益156,603153,3103,2922.1
コア営業利益※1158,362170,421△12,059△7.1
税引前利益200,750198,2832,4661.2
親会社の所有者に帰属する
当期利益
170,435162,0308,4055.2
EBITDA※2179,296188,745△9,449△5.0

※1 コア営業利益:営業利益から非経常的な項目(減損損失、有形固定資産売却益など)を調整した利益
※2 Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization:コア営業利益に減価償却費を加えた利益
売上収益(ライセンス移管に伴う利益を含む)につきましては4,383億円(前期比0.7%増)となりました。前連結会計年度はADHD治療薬のライセンス移管に伴う一時金250億円が計上されていましたが、海外事業およびロイヤリティー収入の増加を中心に、各事業が伸展した結果、当連結会計年度の売上収益は前連結会計年度を上回り、3年連続で過去最高の売上収益を更新する結果となりました。
利益面につきまして、売上収益に占める製品構成の変化に伴う売上原価の増加に加え、主要な開発プロジェクトへの積極的な投資や為替の影響による研究開発費の増加、さらにはグローバル展開に伴う販売費及び一般管理費の増加等により、費用は前連結会計年度に比べて増加しました。一方で、前連結会計年度は特別早期退職プログラムの実施による一過的な費用が発生したこともあり、費用全体の増加幅は限定的となりました。結果として費用は増加したものの、各事業の伸展により売上収益が増加したことで、営業利益は1,566億円(同2.1%増)となりました。また、税引前利益につきましては2,008億円(同1.2%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益につきましては1,704億円(同5.2%増)、EBITDAにつきましては1,793億円(同5.0%減)となりました。
当連結会計年度は、グローバル展開や中長期の成長に向けた新規事業ならびに成長ドライバーに対する積極投資を行ったことで、売上収益と営業利益について3年連続で過去最高業績を更新する結果となりました。
・国内医療用医薬品
国内の医療用医薬品の売上収益は988億円(前期比34.6%減)となりました。これは、前連結会計年度に計上されたADHD治療薬のライセンス移管に伴う一時金250億円の影響に加え、感染症薬の売上が減少したことが主な要因です。前連結会計年度と比較して、 COVID-19の流行が極めて低調に推移したことで、ゾコーバの売上は減少しました。一方で、COVID-19治療薬市場におけるゾコーバのシェアは、前連結会計年度と比較して大きく拡大しました。また、インフルエンザ治療薬のゾフルーザについても高い市場シェアを獲得し、今冬のインフルエンザの流行拡大時には着実に売上を計上しました。
各製品はそれぞれの治療薬市場において、計画通りのシェアを獲得しており、今後も流行が拡大した際には安定して業績に貢献することが期待されます。当連結会計年度のCOVID-19関連製品およびインフルエンザ関連製品(ゾフルーザ、ラピアクタ)の売上収益の合計は518億円となりました。また、当連結会計年度においては2024年12月より不眠症治療薬クービビックの販売を新たに開始しました。
・海外子会社および輸出
海外事業における売上収益は591億円(前期比18.4%増)となりました。欧米市場ではセフィデロコル(米国の製品名:Fetroja、欧州の製品名:Fetcroja)の販売が好調に推移し、米国事業は234億円(同30.6%増)、欧州事業は168億円(同24.0%増)の売上収益となりました。セフィデロコルの成長の要因としては、既上市国における臨床エビデンスの蓄積による市場浸透が挙げられます。引き続き、セフィデロコルの販売国の拡大や既上市国でのさらなる浸透、サブスクリプション型償還モデル※の採用国の拡大を通じ、欧米事業の成長を促進してまいります。中国における売上収益は、87億円(同18.3%減)と対前年で減収となりましたが、一方でセフィデロコルの承認申請の実施や、ナルデメジンの第3相臨床試験での主要評価項目の達成など、新薬ビジネスへの転換に向けて着実に事業を進展させることができました。
※ 抗菌薬の処方量と切り離し、国が開発企業に対して固定報酬を支払う代わりに、必要なときに抗菌薬を受け取ることができるモデル
・ロイヤリティー収入およびヴィーブ社からの配当金収入
ヴィーブ社からのロイヤリティー収入は、 経口2剤合剤や長時間作用型製剤(Long Acting製剤:LA製剤)の力強い成長に加え、為替の影響もあり、2,404億円(前期比22.8%増)となりました。その他のロイヤリティー収入は、43億円(同6.8%減)となりました。
ヴィーブ社からの配当金は、ヴィーブ社のビジネスが順調に進捗したことで、403億円(同18.8%増)となりました。
以上の結果から、当連結会計年度のロイヤリティー収入およびヴィーブ社からの配当金収入の合計は、2,850億円(同21.6%増)となり、過去最高の金額を更新しました。
・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しましたとおり、当社グループは、2023年6月にSTS2030を改定し、STS2030 Revisionとして再策定しました。
STS2030 Revisionでは、達成すべき財務経営指標として3つの成長性指標と3つの株主還元指標を設定しました。成長性指標については、トップラインの成長を優先して進めていくことから売上収益、またその成長をグローバルに成し遂げていくことから海外売上高 CAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)、そして成長に向けた積極的な投資を行っていくことと稼ぐ力を測るためにEBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization:利払い・税引き・償却前利益、コア営業利益に減価償却費を加えた利益)の3つを設定しております。また、株主還元指標として、事業成長と財務施策の観点からEPS、DOE、ROEの3つを継続して設定しております。
主要事業の状況については、HIV事業が引き続き堅調な成長を遂げ、セフィデロコルを中心とした海外事業も順調に推移しております。エンシトレルビルに関しては当初計画からやや後ろ倒しとなりましたが、米国での承認申請を完了し、今後のグローバル展開が本格化する見込みです。また、2025年5月7日付で発表しました日本たばこ産業(JT)株式会社グループの医薬事業の買収に伴い、国内売上比率が一時的に上昇する見通しです。
こうした事業環境の変化を踏まえ、STS Phase 2における主要成長性指標を見直し、2025年度の売上収益目標を5,500億円から5,300億円へ、EBITDA目標を2,000億円から1,960億円へと修正いたしました。また、海外売上高CAGRについては、エンシトレルビルのグローバル展開が本格化する2026年度以降を見据え、改めて設定する予定です。
今後も感染症領域を中心にグローバルでのトップライン成長を図るとともに、強固な財務基盤を活用して、価値に見合ったM&Aや導入、アライアンス等を積極的に実行することで、新たな収益源の創出にも取り組んでまいります。これにより、設定した経営指標の達成を目指してまいります。
業績評価指標(KPI)2024年度
実績
2025年度
目標
2030年度
目標
成長性売上収益4,383億円5,300億円8,000億円
海外売上高 CAGR
(ロイヤリティー収入を除く)
17.9%成長計画を見直し
(次年度以降の成長を見据え、 KPIを再設定する予定)
成長計画を見直し
(次年度以降の成長を見据え、 KPIを再設定する予定)
EBITDA1,793億円1,960億円-
株主還元EPS※200.36円200円以上-
DOE4.0%4%-
ROE13.1%14%以上-

※ 当社は、2024年10月1日を効力発生日として、普通株式1株につき3株の割合をもって株式分割を行っております。2024年度実績及び2025年度目標のEPSには株式分割後の数値を記載しております。
c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益の増加、営業債権の減少、法人所得税の支払額の減少等により、前連結会計年度に比べて411億76百万円多い1,954億60百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、無形資産の取得による支出の増加や定期預金の増減等により、前連結会計年度に比べて1,220億2百万円多い1,160億80百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いが増加した一方で、自己株式の取得による支出が前連結会計年度に比べて減少したことにより、前連結会計年度に比べて619億44百万円少ない649億8百万円の支出となりました。
これらを合わせた当連結会計年度の現金及び現金同等物の増減額は167億4百万円の増加となり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、3,747億95百万円となりました。
[キャッシュ・フロー指標のトレンド]
2023年3月期2024年3月期2025年3月期
親会社所有者帰属持分比率83.9%87.2%88.7%
時価ベースの親会社所有者
帰属持分比率
134.1%155.1%124.4%
キャッシュ・フロー
対有利子負債比率
0.10.10.1
インタレスト・
カバレッジ・レシオ
1,885.3937.5639.7

(注) 親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/資産合計
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/資産合計
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
1.指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3.キャッシュ・フローは営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
4.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を払っている全ての負債を対象としております。
② 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
医薬品事業119,870△30.6

(注) 金額は、正味販売見込価格により算出したものであります。
b.商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績は次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
医薬品事業11,601△12.8

(注) 金額は、実際仕入額によっております。
c.受注状況
当社グループは、主として販売計画に基づいて生産計画をたてて生産しております。
当社及び一部の連結子会社で受注生産を行っておりますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はありません。
d.販売実績
当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
医薬品事業438,2686.9

(注) 1.販売金額は、外部顧客に対する売上収益を表示しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
ViiV Healthcare Ltd.195,78247.7240,40454.9
株式会社スズケン※50,44412.3--

※当連結会計年度の株式会社スズケンに対する販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満であるため、記載を省略しております。
(2) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRS会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。重要性がある会計方針及び見積りの詳細等につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4) 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」をご参照ください。