有価証券報告書-第90期(2023/04/01-2024/03/31)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、2023年5月に新型コロナの感染症法上の位置付けが5類感染症に移行したことにより、経済社会活動の正常化が進み、景気は緩やかに持ち直し、その他要因も相まって、長年続いたデフレからの脱却が期待される状況となりました。しかしながら足元では、企業の業況や収益の改善が続く中においても、個人消費については、所得の伸びが物価の上昇を下回ったことにより、力強さを欠く結果となりました。
世界経済は、堅調なアメリカ経済、底打ち感があるも低迷が続いた欧州経済、中長期的に停滞感が漂う中国経済と、地域により温度差があり、また地政学的リスクも高まったことにより不透明な状況が続きました。
当社グループの属するエレクトロニクス業界におきましては、半導体・デバイス市場は数年来続いてきた半導体の供給制約が緩和されたことにより、需要は弱含む状況にありながらも、出荷は回復局面を迎えました。当社グループが主に取扱いをしている自動車、民生品、産業機器向け半導体・デバイスについては、業種・品種・お取引先ごとに状況は異なり、市況感はまだら模様となりました。
設備投資は、ほぼ横ばい、もしくはやや減少で推移するなど、持ち直しに足踏みが見られる状況となり、企業の業況や収益の改善が投資につながっていない実情が見られました。
IT産業におきましては、DXをはじめとする企業のIT投資は引き続き活況を呈しておりますが、供給サイドにおきましてはシステムエンジニアの不足感が継続しております。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は616億7千9百万円(前期比1.9%増)、営業利益は16億5千2百万円(前期比12.3%増)、経常利益は17億3千7百万円(前期比11.4%増)、繰延税金資産の回収可能性について検討した結果、繰延税金資産を追加計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は13億3千7百万円(前期比209.1%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(半導体デバイス事業)
当事業におきましては、白物家電向けは減速傾向となる一方で、生産台数が増加している自動車向けに関しては堅調な結果となりました。また、期末に向け円安が加速したことも収益を押し上げる要因となりました。
これらの結果、当連結会計年度における売上高は390億8千7百万円(前期比0.0%減)、営業利益は20億8千2百万円(前期比0.9%増)となりました。
(プリント配線板事業)
当事業におきましては、中国メーカーと連携して行っている海外基板ビジネスが堅調に推移した一方で、撤退を発表した自社国内製造品は新規顧客向け受注活動を停止したため、同製品の売上は減少しました。利益につきましても工場生産量減少に伴う稼働率低下により、損失が拡大しました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は68億1千7百万円(前期比0.9%減)、営業損失は1億9千4百万円(前期は2千2百万円の損失)となりました。
(産業機器システム事業)
当事業におきましては、市況の減速感はあるものの、特定顧客向け加工機出荷が堅調に推移したこと、及びその他FA機器の半導体製造装置系主要顧客への受注残の出荷が進んだことにより、事業全体としては好調な結果となりました。3Dプリンタにつきましては、医療用途向けについては苦戦を強いられましたが、製造業用途向けが順調に推移し、前期比で売上・利益が拡大しました。空調冷熱機器は省エネ機器更新需要に支えられ堅調に推移いたしました。物流倉庫向け制御装置はお客様での設備投資が抑制されており、一部では大型受注もありましたが、全体としては低調に推移いたしました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は102億8千9百万円(前期比7.0%増)、営業利益は9億5千1百万円(前期比16.0%増)となりました。
(システム開発事業)
当事業におきましては、建設系ITソリューション、受注ソリューション及び電力会社向け受託ビジネスが堅調に推移いたしました。また、タクシー会社向けソリューション及び組み込み系ソリューションの搬送ロボットの大型案件が売上・利益を押し上げました。一方で、ビジネス系ITソリューションは複数の大型リプレース案件が一巡したことにより前期比で売上が減少しました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は48億2千3百万円(前期比13.0%増)、営業利益は5億2千8百万円(前期比50.1%増)となりました。
(その他)
協栄マリンテクノロジ株式会社が行う、救命設備の販売・整備事業は、船舶・航空機用救命具の整備受注が好調に推移するとともに、救命設備の販売も堅調に推移いたしました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は6億6千2百万円(前期比3.6%減)、営業利益は1億9百万円(前期比16.3%増)となりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて48億6千1百万円増加し、422億7千1百万円となりました。
・流動資産は、受取手形及び売掛金13億9千1百万円の増加、現金及び預金12億2千2百万円の増加、商品及び製品6億1千9百万円の増加等により、32億8千9百万円増加し、340億1千4百万円となりました。
・固定資産は、投資有価証券13億4千7百万円の増加、退職給付に係る資産3億4千7百万円の増加等により、15億7千2百万円増加し、82億5千6百万円となりました。
・流動負債は、短期借入金12億9千1百万円の増加、支払手形及び買掛金12億3千6百万円の増加、事業撤退損失引当金8億7千万円の増加、未払法人税等5億3千6百万円の増加、電子記録債務3億3千7百万円の増加等により、45億6千8百万円増加し、206億6千6百万円となりました。
・固定負債は、長期借入金12億6千7百万円の減少、事業撤退損失引当金8億7千4百万円の減少、社債2億円の減少、繰延税金負債1億7千9百万円の増加等により、22億2千5百万円減少し、38億9百万円となりました。
この結果、純資産は、25億1千9百万円増加し、177億9千4百万円となり、自己資本比率は前連結会計年度末の40.8%から1.3ポイント増加し、42.1%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ12億2千2百万円増加し、35億7千9百万円(前期は23億5千6百万円)となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、増加した資金は19億9千5百万円(前期は10億7千3百万円の減少)となりました。これは主として次の要因によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、減少した資金は1千3百万円(前期は2億4千6百万円の増加)となりました。これは主として有形固定資産の取得による支出等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、減少した資金は8億9千万円(前期は13億8千7百万円の増加)となりました。これは主として借入金の返済による支出等によるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、生産実績中、半導体デバイス事業の生産実績は、技術商社として、半導体デバイス事業内にマイコンソフト開発及びIC設計に係る製造部門を有しており、これの生産実績であります。
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.上記金額には、セグメント間の内部取引高にかかる生産高が含まれております。
b.受注実績
半導体デバイス事業の一部及びプリント配線板事業、システム開発事業については受注生産を行っており、これらの当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、受注実績中、半導体デバイス事業の受注実績は、技術商社として、半導体デバイス事業内にマイコンソフト開発及びIC設計に係る製造部門を有しており、これの受注実績であります。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.概況
当期におけるわが国経済は、2023年5月に新型コロナの感染症法上の位置付けが5類感染症に移行したことにより、経済社会活動の正常化が進み、景気は緩やかに持ち直し、その他要因も相まって、長年続いたデフレからの脱却が期待される状況となりました。しかしながら足元では、企業の業況や収益の改善が続く中においても、個人消費については、所得の伸びが物価の上昇を下回ったことにより、力強さを欠く結果となりました。
世界経済は、堅調なアメリカ経済、底打ち感があるも低迷が続いた欧州経済、中長期的に停滞感が漂う中国経済と、地域により温度差があり、また地政学的リスクも高まったことにより不透明な状況が続きました。
当社グループの属するエレクトロニクス業界におきましては、半導体・デバイス市場は数年来続いてきた半導体の供給制約が緩和されたことにより、需要は弱含む状況にありながらも、出荷は回復局面を迎えました。当社グループが主に取扱いをしている自動車、民生品、産業機器向け半導体・デバイスについては、業種・品種・お取引先ごとに状況は異なり、市況感はまだら模様となりました。
設備投資は、ほぼ横ばい、もしくはやや減少で推移するなど、持ち直しに足踏みが見られる状況となり、企業の業況や収益の改善が投資につながっていない実情が見られました。
IT産業におきましては、DXをはじめとする企業のIT投資は引き続き活況を呈しておりますが、供給サイドにおきましてはシステムエンジニアの不足感が継続しております。
<売上高>売上高は、前期に比べて1.9%増収の616億7千9百万円となりました。半導体デバイス事業では、前期に比べて0.0%減収の390億8千7百万円、プリント配線板事業では、前期に比べて0.9%減収の68億1千7百万円、産業機器システム事業では、前期に比べて7.0%増収の102億8千9百万円、システム開発事業では、前期に比べて13.0%増収の48億2千3百万円、その他(救命筏等整備事業)では、前期に比べて3.6%減収の6億6千2百万円となりました。
また、国内の売上高は、前期に比べて0.4%増収の465億3百万円となりました。海外売上高は6.6%増収の151億7千5百万円となり、海外売上高の連結売上高に占める比率は24.6%(前期23.5%)となりました。
<売上総利益>売上総利益は、前期の84億9千9百万円に対し、2.9%増益の87億4千8百万円となりました。半導体デバイス事業と産業機器システム事業において売上総利益率の改善等が見られたことから、売上総利益率は14.2%(前期14.0%)となりました。
<販売費及び一般管理費>販売費及び一般管理費は、前期に比べて1.0%、6千8百万円増加し、70億9千5百万円となりました。これは、旅費交通費が増加したこと等によるものです。
<営業利益>営業利益は、前期の14億7千1百万円に対し、12.3%増益の16億5千2百万円となりました。これは、産業機器システム事業において、FA機器の半導体製造装置系主要顧客への受注残の出荷が進んだこと、システム開発事業において、搬送ロボットの大型案件で販売が行われたこと等によるものです。
<特別利益>特別利益は、前期の6億2百万円に対し5億3千2百万円減少し、6千9百万円となりました。これは、前期に駐車場(東京都目黒区)の売却等による固定資産売却益4億9百万円を計上したこと等に対し、当期は投資有価証券の売却益による投資有価証券売却益6千9百万円を計上したことによるものです。
<特別損失>特別損失は、前期の14億2百万円に対し13億5千2百万円減少し、4千9百万円となりました。これは、前期にプリント配線板製造事業からの撤退による、特別加算金等の人件費見込み、及び解体撤去費用等に伴う事業撤退損失引当金繰入額8億7千4百万円並びに減損損失2億8千7百万円を計上したこと等に対し、当期は事業撤退損失引当金繰入額4千8百万円を計上したこと等によるものです。
<税金等調整前当期純利益>以上を受けて、前期の7億6千万円に対し、9億9千7百万円増加し、17億5千7百万円となりました。
<親会社株主に帰属する当期純利益>親会社株主に帰属する当期純利益は、前期の4億3千2百万円に対し、9億4百万円増加し、13億3千7百万円となりました。1株当たり当期純利益は、前期の143.95円に対し、445.05円となりました。
b.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、営業利益率を重要な経営指標として位置付け、営業利益率3%の早期達成に努めております。
当連結会計年度における売上高は616億7千9百万円、営業利益は16億5千2百万円となり、営業利益率は2.7%となりました。引き続き、高収益ビジネスの創出と販管費の削減に努め、当該指標の改善に邁進していく所存です。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
<キャッシュ・フロー>営業活動によるキャッシュ・フローでは、19億9千5百万円の資金の増加となりました。これは税金等調整前当期純利益17億5千7百万円、仕入債務の増加13億5千1百万円等が、資金の減少要因である売上債権の増加9億1百万円等を上回ったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローでは、1千3百万円の資金の減少となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出等によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローでは、8億9千万円の資金の減少となりました。これは主に借入金の返済による支出等によるものです。
これらの活動の結果、現金及び現金同等物の残高は、前期の23億5千6百万円から12億2千2百万円増加し、35億7千9百万円となりました。
<資金需要>当社グループの運転資金需要のうち主なものは、半導体デバイス事業における仕入から回収までの資金立替、プリント配線板事業における材料等の購入及び製造費、全社の販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは人件費及び広告宣伝費、販売促進費等のマーケティング費用です。
<財務政策>当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金や借入金を中心に資金調達することとし、海外現地法人を除いては、当社にて一括調達しております。このうち、運転資金については原則として短期借入金で調達し、金融情勢によっては一部を長期資金へシフトしております。2024年3月31日現在、短期借入金39億1千万円、長期借入金(一年内返済予定の長期借入金含む)38億3千4百万円、社債(一年内償還予定の社債含む)8億円から構成されております。
当社グループは、健全な財政状態の維持改善、営業活動によるキャッシュ・フローの捻出、未使用のコミットメント・ライン枠12億5千万円及び未使用の借入枠75億8千8百万円を有することにより、当社グループが将来の成長に必要な資金を調達することが充分可能と考えております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成にあたり、当社グループは連結財務諸表に記載されている資産・負債の額及び偶発債務の開示額、並びに収益・費用の額などに影響を与える可能性のある見積り及び前提条件を使用しております。
当社グループは、その見積りと判断を、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要素に基づいて行っており、これらは、資産及び負債の帳簿価額あるいは収益・費用の額についての判断の基礎を形成しております。
実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の重要な会計方針が、連結財務諸表の作成において使用される重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a.投資有価証券の減損
当社グループは、長期的な取引関係の維持のために、特定の顧客及び金融機関が発行する株式を所有しております。これらの大半は市場価格のある株式で、一部に市場価格のない株式が含まれます。当社グループは市場価格のある株式への投資の場合、期末における株価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には全て減損処理を行い、30%~50%下落した場合には、当社取扱い要領に基づき、個別銘柄毎の株価推移等から株価の回復可能性を判断して減損処理を行っております。株式市況悪化又は投資先の業績不振により、評価損の計上が必要となる可能性があります。
b.貸倒引当金について
当社グループは売上債権等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。債権管理につきましては最善の注意をはらっておりますが、顧客の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加の引当が必要となる可能性があります。
c.退職給付債務について
当社グループの退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。また、割引率の低下や運用利回りの悪化がある場合は当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
d.繰延税金資産について
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
e.事業撤退損失引当金について
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、2023年5月に新型コロナの感染症法上の位置付けが5類感染症に移行したことにより、経済社会活動の正常化が進み、景気は緩やかに持ち直し、その他要因も相まって、長年続いたデフレからの脱却が期待される状況となりました。しかしながら足元では、企業の業況や収益の改善が続く中においても、個人消費については、所得の伸びが物価の上昇を下回ったことにより、力強さを欠く結果となりました。
世界経済は、堅調なアメリカ経済、底打ち感があるも低迷が続いた欧州経済、中長期的に停滞感が漂う中国経済と、地域により温度差があり、また地政学的リスクも高まったことにより不透明な状況が続きました。
当社グループの属するエレクトロニクス業界におきましては、半導体・デバイス市場は数年来続いてきた半導体の供給制約が緩和されたことにより、需要は弱含む状況にありながらも、出荷は回復局面を迎えました。当社グループが主に取扱いをしている自動車、民生品、産業機器向け半導体・デバイスについては、業種・品種・お取引先ごとに状況は異なり、市況感はまだら模様となりました。
設備投資は、ほぼ横ばい、もしくはやや減少で推移するなど、持ち直しに足踏みが見られる状況となり、企業の業況や収益の改善が投資につながっていない実情が見られました。
IT産業におきましては、DXをはじめとする企業のIT投資は引き続き活況を呈しておりますが、供給サイドにおきましてはシステムエンジニアの不足感が継続しております。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は616億7千9百万円(前期比1.9%増)、営業利益は16億5千2百万円(前期比12.3%増)、経常利益は17億3千7百万円(前期比11.4%増)、繰延税金資産の回収可能性について検討した結果、繰延税金資産を追加計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は13億3千7百万円(前期比209.1%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(半導体デバイス事業)
当事業におきましては、白物家電向けは減速傾向となる一方で、生産台数が増加している自動車向けに関しては堅調な結果となりました。また、期末に向け円安が加速したことも収益を押し上げる要因となりました。
これらの結果、当連結会計年度における売上高は390億8千7百万円(前期比0.0%減)、営業利益は20億8千2百万円(前期比0.9%増)となりました。
(プリント配線板事業)
当事業におきましては、中国メーカーと連携して行っている海外基板ビジネスが堅調に推移した一方で、撤退を発表した自社国内製造品は新規顧客向け受注活動を停止したため、同製品の売上は減少しました。利益につきましても工場生産量減少に伴う稼働率低下により、損失が拡大しました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は68億1千7百万円(前期比0.9%減)、営業損失は1億9千4百万円(前期は2千2百万円の損失)となりました。
(産業機器システム事業)
当事業におきましては、市況の減速感はあるものの、特定顧客向け加工機出荷が堅調に推移したこと、及びその他FA機器の半導体製造装置系主要顧客への受注残の出荷が進んだことにより、事業全体としては好調な結果となりました。3Dプリンタにつきましては、医療用途向けについては苦戦を強いられましたが、製造業用途向けが順調に推移し、前期比で売上・利益が拡大しました。空調冷熱機器は省エネ機器更新需要に支えられ堅調に推移いたしました。物流倉庫向け制御装置はお客様での設備投資が抑制されており、一部では大型受注もありましたが、全体としては低調に推移いたしました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は102億8千9百万円(前期比7.0%増)、営業利益は9億5千1百万円(前期比16.0%増)となりました。
(システム開発事業)
当事業におきましては、建設系ITソリューション、受注ソリューション及び電力会社向け受託ビジネスが堅調に推移いたしました。また、タクシー会社向けソリューション及び組み込み系ソリューションの搬送ロボットの大型案件が売上・利益を押し上げました。一方で、ビジネス系ITソリューションは複数の大型リプレース案件が一巡したことにより前期比で売上が減少しました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は48億2千3百万円(前期比13.0%増)、営業利益は5億2千8百万円(前期比50.1%増)となりました。
(その他)
協栄マリンテクノロジ株式会社が行う、救命設備の販売・整備事業は、船舶・航空機用救命具の整備受注が好調に推移するとともに、救命設備の販売も堅調に推移いたしました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は6億6千2百万円(前期比3.6%減)、営業利益は1億9百万円(前期比16.3%増)となりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて48億6千1百万円増加し、422億7千1百万円となりました。
・流動資産は、受取手形及び売掛金13億9千1百万円の増加、現金及び預金12億2千2百万円の増加、商品及び製品6億1千9百万円の増加等により、32億8千9百万円増加し、340億1千4百万円となりました。
・固定資産は、投資有価証券13億4千7百万円の増加、退職給付に係る資産3億4千7百万円の増加等により、15億7千2百万円増加し、82億5千6百万円となりました。
・流動負債は、短期借入金12億9千1百万円の増加、支払手形及び買掛金12億3千6百万円の増加、事業撤退損失引当金8億7千万円の増加、未払法人税等5億3千6百万円の増加、電子記録債務3億3千7百万円の増加等により、45億6千8百万円増加し、206億6千6百万円となりました。
・固定負債は、長期借入金12億6千7百万円の減少、事業撤退損失引当金8億7千4百万円の減少、社債2億円の減少、繰延税金負債1億7千9百万円の増加等により、22億2千5百万円減少し、38億9百万円となりました。
この結果、純資産は、25億1千9百万円増加し、177億9千4百万円となり、自己資本比率は前連結会計年度末の40.8%から1.3ポイント増加し、42.1%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ12億2千2百万円増加し、35億7千9百万円(前期は23億5千6百万円)となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、増加した資金は19億9千5百万円(前期は10億7千3百万円の減少)となりました。これは主として次の要因によるものです。
資金増加要因: | 税金等調整前当期純利益 仕入債務の増加 | 17億5千7百万円 13億5千1百万円 |
資金減少要因: | 売上債権の増加 | 9億1百万円 |
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、減少した資金は1千3百万円(前期は2億4千6百万円の増加)となりました。これは主として有形固定資産の取得による支出等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、減少した資金は8億9千万円(前期は13億8千7百万円の増加)となりました。これは主として借入金の返済による支出等によるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、生産実績中、半導体デバイス事業の生産実績は、技術商社として、半導体デバイス事業内にマイコンソフト開発及びIC設計に係る製造部門を有しており、これの生産実績であります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 前年同期比(%) |
半導体デバイス事業(千円) | 1,684,616 | 100.6 |
プリント配線板事業(千円) | 5,984,552 | 96.4 |
産業機器システム事業(千円) | - | - |
システム開発事業(千円) | 5,697,430 | 119.4 |
その他(千円) | - | - |
合計(千円) | 13,366,599 | 105.6 |
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.上記金額には、セグメント間の内部取引高にかかる生産高が含まれております。
b.受注実績
半導体デバイス事業の一部及びプリント配線板事業、システム開発事業については受注生産を行っており、これらの当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、受注実績中、半導体デバイス事業の受注実績は、技術商社として、半導体デバイス事業内にマイコンソフト開発及びIC設計に係る製造部門を有しており、これの受注実績であります。
セグメントの名称 | 受注高(千円) | 前年同期比(%) | 受注残高(千円) | 前年同期比(%) |
半導体デバイス事業 | 1,631,088 | 85.8 | 502,816 | 96.0 |
プリント配線板事業 | 2,243,099 | 81.6 | 611,527 | 63.0 |
産業機器システム事業 | - | - | - | - |
システム開発事業 | 5,930,564 | 119.8 | 1,071,036 | 99.7 |
その他 | - | - | - | - |
合計 | 9,804,752 | 102.1 | 2,185,380 | 85.1 |
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 前年同期比(%) |
半導体デバイス事業(千円) | 39,087,441 | 100.0 |
プリント配線板事業(千円) | 6,817,762 | 99.1 |
産業機器システム事業(千円) | 10,289,071 | 107.0 |
システム開発事業(千円) | 4,823,151 | 113.0 |
その他(千円) | 662,098 | 96.4 |
合計(千円) | 61,679,524 | 101.9 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.概況
当期におけるわが国経済は、2023年5月に新型コロナの感染症法上の位置付けが5類感染症に移行したことにより、経済社会活動の正常化が進み、景気は緩やかに持ち直し、その他要因も相まって、長年続いたデフレからの脱却が期待される状況となりました。しかしながら足元では、企業の業況や収益の改善が続く中においても、個人消費については、所得の伸びが物価の上昇を下回ったことにより、力強さを欠く結果となりました。
世界経済は、堅調なアメリカ経済、底打ち感があるも低迷が続いた欧州経済、中長期的に停滞感が漂う中国経済と、地域により温度差があり、また地政学的リスクも高まったことにより不透明な状況が続きました。
当社グループの属するエレクトロニクス業界におきましては、半導体・デバイス市場は数年来続いてきた半導体の供給制約が緩和されたことにより、需要は弱含む状況にありながらも、出荷は回復局面を迎えました。当社グループが主に取扱いをしている自動車、民生品、産業機器向け半導体・デバイスについては、業種・品種・お取引先ごとに状況は異なり、市況感はまだら模様となりました。
設備投資は、ほぼ横ばい、もしくはやや減少で推移するなど、持ち直しに足踏みが見られる状況となり、企業の業況や収益の改善が投資につながっていない実情が見られました。
IT産業におきましては、DXをはじめとする企業のIT投資は引き続き活況を呈しておりますが、供給サイドにおきましてはシステムエンジニアの不足感が継続しております。
<売上高>売上高は、前期に比べて1.9%増収の616億7千9百万円となりました。半導体デバイス事業では、前期に比べて0.0%減収の390億8千7百万円、プリント配線板事業では、前期に比べて0.9%減収の68億1千7百万円、産業機器システム事業では、前期に比べて7.0%増収の102億8千9百万円、システム開発事業では、前期に比べて13.0%増収の48億2千3百万円、その他(救命筏等整備事業)では、前期に比べて3.6%減収の6億6千2百万円となりました。
また、国内の売上高は、前期に比べて0.4%増収の465億3百万円となりました。海外売上高は6.6%増収の151億7千5百万円となり、海外売上高の連結売上高に占める比率は24.6%(前期23.5%)となりました。
<売上総利益>売上総利益は、前期の84億9千9百万円に対し、2.9%増益の87億4千8百万円となりました。半導体デバイス事業と産業機器システム事業において売上総利益率の改善等が見られたことから、売上総利益率は14.2%(前期14.0%)となりました。
<販売費及び一般管理費>販売費及び一般管理費は、前期に比べて1.0%、6千8百万円増加し、70億9千5百万円となりました。これは、旅費交通費が増加したこと等によるものです。
<営業利益>営業利益は、前期の14億7千1百万円に対し、12.3%増益の16億5千2百万円となりました。これは、産業機器システム事業において、FA機器の半導体製造装置系主要顧客への受注残の出荷が進んだこと、システム開発事業において、搬送ロボットの大型案件で販売が行われたこと等によるものです。
<特別利益>特別利益は、前期の6億2百万円に対し5億3千2百万円減少し、6千9百万円となりました。これは、前期に駐車場(東京都目黒区)の売却等による固定資産売却益4億9百万円を計上したこと等に対し、当期は投資有価証券の売却益による投資有価証券売却益6千9百万円を計上したことによるものです。
<特別損失>特別損失は、前期の14億2百万円に対し13億5千2百万円減少し、4千9百万円となりました。これは、前期にプリント配線板製造事業からの撤退による、特別加算金等の人件費見込み、及び解体撤去費用等に伴う事業撤退損失引当金繰入額8億7千4百万円並びに減損損失2億8千7百万円を計上したこと等に対し、当期は事業撤退損失引当金繰入額4千8百万円を計上したこと等によるものです。
<税金等調整前当期純利益>以上を受けて、前期の7億6千万円に対し、9億9千7百万円増加し、17億5千7百万円となりました。
<親会社株主に帰属する当期純利益>親会社株主に帰属する当期純利益は、前期の4億3千2百万円に対し、9億4百万円増加し、13億3千7百万円となりました。1株当たり当期純利益は、前期の143.95円に対し、445.05円となりました。
b.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、営業利益率を重要な経営指標として位置付け、営業利益率3%の早期達成に努めております。
当連結会計年度における売上高は616億7千9百万円、営業利益は16億5千2百万円となり、営業利益率は2.7%となりました。引き続き、高収益ビジネスの創出と販管費の削減に努め、当該指標の改善に邁進していく所存です。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
<キャッシュ・フロー>営業活動によるキャッシュ・フローでは、19億9千5百万円の資金の増加となりました。これは税金等調整前当期純利益17億5千7百万円、仕入債務の増加13億5千1百万円等が、資金の減少要因である売上債権の増加9億1百万円等を上回ったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローでは、1千3百万円の資金の減少となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出等によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローでは、8億9千万円の資金の減少となりました。これは主に借入金の返済による支出等によるものです。
これらの活動の結果、現金及び現金同等物の残高は、前期の23億5千6百万円から12億2千2百万円増加し、35億7千9百万円となりました。
<資金需要>当社グループの運転資金需要のうち主なものは、半導体デバイス事業における仕入から回収までの資金立替、プリント配線板事業における材料等の購入及び製造費、全社の販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは人件費及び広告宣伝費、販売促進費等のマーケティング費用です。
<財務政策>当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金や借入金を中心に資金調達することとし、海外現地法人を除いては、当社にて一括調達しております。このうち、運転資金については原則として短期借入金で調達し、金融情勢によっては一部を長期資金へシフトしております。2024年3月31日現在、短期借入金39億1千万円、長期借入金(一年内返済予定の長期借入金含む)38億3千4百万円、社債(一年内償還予定の社債含む)8億円から構成されております。
当社グループは、健全な財政状態の維持改善、営業活動によるキャッシュ・フローの捻出、未使用のコミットメント・ライン枠12億5千万円及び未使用の借入枠75億8千8百万円を有することにより、当社グループが将来の成長に必要な資金を調達することが充分可能と考えております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成にあたり、当社グループは連結財務諸表に記載されている資産・負債の額及び偶発債務の開示額、並びに収益・費用の額などに影響を与える可能性のある見積り及び前提条件を使用しております。
当社グループは、その見積りと判断を、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要素に基づいて行っており、これらは、資産及び負債の帳簿価額あるいは収益・費用の額についての判断の基礎を形成しております。
実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の重要な会計方針が、連結財務諸表の作成において使用される重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a.投資有価証券の減損
当社グループは、長期的な取引関係の維持のために、特定の顧客及び金融機関が発行する株式を所有しております。これらの大半は市場価格のある株式で、一部に市場価格のない株式が含まれます。当社グループは市場価格のある株式への投資の場合、期末における株価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には全て減損処理を行い、30%~50%下落した場合には、当社取扱い要領に基づき、個別銘柄毎の株価推移等から株価の回復可能性を判断して減損処理を行っております。株式市況悪化又は投資先の業績不振により、評価損の計上が必要となる可能性があります。
b.貸倒引当金について
当社グループは売上債権等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。債権管理につきましては最善の注意をはらっておりますが、顧客の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加の引当が必要となる可能性があります。
c.退職給付債務について
当社グループの退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。また、割引率の低下や運用利回りの悪化がある場合は当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
d.繰延税金資産について
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
e.事業撤退損失引当金について
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。