有価証券報告書-第122期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

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2022/06/27 15:00
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162項目
(1)経営成績等の状況の概要、経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当連結会計年度における当社及び連結子会社並びに持分法適用会社(以下、当社グループ)の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要、経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りです。文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2022年3月31日)現在において判断したものです。
文中において、当連結会計年度は当年度、前連結会計年度は前年度と、省略して記載しています。
① 当社グループの経営目標及び企業価値の持続的な向上に向けての取り組み
[経営目標]
0102010_002.png当社グループは、パーパス(存在意義)を「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」と定め、すべての事業活動をこのパーパス実現のための活動として取り組んでおります。パーパスの実現に向けて長期で安定した貢献を行うためには、全てのステークホルダーと信頼関係を築き、当社自身がサステナブルに成長していくことが必要です。そのため、非財務面での指標を事業活動の中核に組み込み、財務目標と合わせて達成に向けて取り組んでおります。
(ⅰ)財務指標
7つのKey Focus Areas(重点注力分野 *1)に焦点を定めて成長投資をより一層加速してまいります。2023年3月期にテクノロジーソリューションで売上収益3兆2,000億円、営業利益3,200億円、営業利益率10%という財務目標を設定しています。売上収益目標は、現在進めている変革の達成が1年遅れとなる見込みとなり、当初計画から3,000億円修正いたしましたが、営業利益率10%については、これまで進めてきた施策を着実に結果につなげることで達成できると考えております。
*1 7つのKey Focus Areas(重点注力分野)は、多様なサービス提供を支える基盤であるHorizontal Areasと、社会課題を解決するサービス群であるVertical Areas の2つに区分されます。Horizontal Areasは、データドリブンな意思決定やオペレーションと働き方改革を支えるDigital Shifts、クラウドインテグレーションとアプリケーションを提供するBusiness Applications、お客様の基幹システムのクラウド化とセキュリティサービスを提供するHybrid ITの3つの分野からなります。Vertical Areasは、環境と人に配慮した循環型でトレーサブルなものづくりを実現するSustainable Manufacturing、生活者に多様な体験を届ける決済・小売・流通を可能にするConsumer Experience、あらゆる人々のウェルビーイングな暮らしをサポートするHealthy Living、そして、安心・安全でレジリエントな社会づくりに貢献するTrusted Society の4つの分野からなります。
(ⅱ)非財務指標
非財務指標は、2022年度に向け3つの指標を設定しています。お客様からの信頼を表す「お客様NPS」(*2)は2021年度比で3.7ポイント上昇、会社と社員との結びつきを表す「従業員エンゲージメント」(*3)は75ポイント、「DX推進指標」(*4)は3.5ポイントの達成を目指しています。
*2 顧客体験=カスタマー・エクスペリエンス(CX)の改善度や深化の把握のために、企業、商品やサービスへのお客様の信頼度や愛着度を示す「顧客ロイヤリティ」を測る指標。従来行われていた顧客満足度調査が現在の満足度を聞くのに対し、NPS®は「このサービスや商品を知人や同僚に薦めたいか」という推奨度を他者へ尋ねることで、今後の行動変化を先読みするデータを得ることができる。
*3 当社グループでは、会社の向かっている方向性・パーパスに共感し、自発的、主体的に働き貢献したいと思う意欲や愛着を表す指標を「従業員エンゲージメント」と定めています。
*4 経済産業省が、企業のデジタル経営改革を推進するために、経営幹部や事業部門、DX部門、IT部門などの関係者の間で現状や課題に対する認識を共有し、次のアクションにつなげる気付きの機会を提供することを目的として設定したもの。35の定性指標などからなる項目をもとに自己診断を行い、その結果を中立組織である独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に提出すると、診断結果への総合評価と参加企業とのベンチマーキングがされる。
当社グループは、グローバル・レスポンシブル・ビジネス(GRB)の枠組みで、人権・多様性、ウェルビーイング、環境、コンプライアンス、サプライチェーン、安全衛生、コミュニティというサステナビリティの7つの重要課題に取り組むとともに、組織変革を推進しています。すべてのステークホルダーに責任あるビジネスを行うことは、お客様と社会からの信頼の獲得、従業員エンゲージメントの向上に現れるものと捉え、これらを測る指標として「お客様NPS」と「従業員エンゲージメント」を、また組織カルチャーの進展を図る指標として「DX推進指標」を非財務指標として設定しています。エンゲージメントの高い社員は質の高いサービスをお客様に提供することができ、お客様からの良い評価は社員の仕事に対する手応えを高めます。「お客様NPS」、「従業員エンゲージメント」と「DX推進指標」を非財務指標に設定することで、当社グループは、パーパスを起点としたビジネスの変革とお客様への価値創出をモニタリングしています。
中長期的には、財務指標と非財務指標のデータ、また、GRB の各取り組みと非財務指標のデータを分析することでそれぞれの関係性を明らかにし、データドリブンな組織のダイナミズム発揮と革新的な価値創出の連動を目指します。財務・非財務目標のもと、事業を成長させる事でキャッシュ・フロー創出力を拡大し、事業成長により生み出されたキャッシュ・フローを成長投資と株主還元に最適にアロケートする事で、更なる事業の成長、そして企業価値の拡大に繋げてまいります。
[2021年度決算ハイライト]
売上収益は3兆5,868億円、営業利益は2,192億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,826億円となりました。
コロナ禍の状況は継続し、半導体不足に伴うマイナス影響という厳しい事業環境ではありましたが、事業構造改革や事業譲渡に関わる一過性の損失564億円を除く本業ベースの営業利益は2,756億円、営業利益率7.7%、と前年比10%超の増益となりました。
本業についてポイントは3点です。第1に、ソリューション・サービス関連の受注が国内外ともに増加しました。特に海外サービスは大幅に増加しました。第2に、売上総利益率は、31.2%と前年から1.1ポイント上昇しました。ソリューション・サービスの採算性改善が進んだことに加え、電子部品も強いデマンドを背景に採算性が向上しました。第3に、成長投資を積極的に実施したことです。新たな価値創造に向けた投資及び、自らの変革に向けた投資を強化し、前年から倍増させました。
このほか、DX企業への変革を加速するための施策も実施しました。従業員の新たなキャリア形成と適所適材を進めるため、グループ外など新たなキャリアにチャレンジする場合の支援制度を、期間を限定して拡充しました。
(ⅰ)コストや費用の効率化の進捗状況
売上総利益は384億円増加しました。売上総利益率は前年から1.1ポイントの上昇となりました。
アジャイル開発の更なる拡大などシステム開発の変革や、標準作業に整理して落とし込む「ジャパン・グローバル・ゲートウェイ(JGG)」などサービスデリバリーの変革、リモート保守拡大などのサポート業務の変革などにより生産性が改善しました。英国で採算性が高いサービス商談を獲得した事に加え、北米での構造改革が進展した影響もありました。また、デバイスも、所要の増加による操業改善が進み採算性が大きく好転しました。
営業費用は313億円減少しました。既存開発の集中化やオフショア開発、働き方改革による生産性向上などを実施したことによります。
(ⅱ)成長投資
成長投資は、前年から450億円増加させ850億円投資しました。価値創造に向けた投資が350億円、自らの成長に向けた投資が500億円です。
価値創造に向けた投資としては、サービスビジネス拡大の牽引役となるグローバルオファリングの開発、サービスデリバリーモデルの確立に向けたJGGの強化を推進しています。開発・保守業務の標準化と内製化を進め、グローバル・デリバリー・センター(GDC)での開発を拡大することで、品質と収益性の両方を向上させていきます。
自らの変革に向けた投資としては、従業員のウェルビーイングを実現するWork Life Shiftと人材育成を進めたほか、データドリブン経営の基盤として「One Fujitsu」に継続的な投資を実施しています。データドリブン経営の高度化が進めば、より早く・詳細に財務情報を把握でき、さらに効率的・効果的な経営判断が可能になります。こうした成長投資に対する効果も出始めています。JGGやGDCの活用で90億円、グローバルオファリングで90億円、ボーダレスオフィスで20億円など、2021年度で約200億円のコスト効率化効果がありました。
(ⅲ)DXを加速するための人材施策
2021年度は主に3点の施策を実施しました。
第1にビジネスプロデューサーへの変革を実施しました。従来の営業職を、業種の枠を超えたクロスインダストリーでのビジネス創出を担うビジネスプロデューサーに変革すべく、国内グループの全営業職、約8,000人を対象にスキルアップ・スキルチェンジを行い、保有スキルの見える化も実施しました。
第2に適所適材の実現に向けた施策を実施しました。スピーディーに必要な人材を配置していくために、管理職に対しジョブ型人事制度を導入しました。また、従業員が自らの意思で別のジョブにチャレンジできるグループ横断的なポスティング制度も導入しました。なお、ジョブ型人事制度については、2022年4月から一般従業員にも適用をしました。
第3に人材の適所適材を加速させるため、グループ外で新たなキャリアにチャレンジし活躍を希望する従業員に対して、期間を限定してセルフ・プロデュース支援制度を拡充しました。
(ⅳ)部材供給の遅延
売上収益で780億円の減収、営業利益で310億円の減益影響が生じました。
部材集約遅延に伴う売上延伸とともに、部材価格が上昇した影響を受けました。調達ルート変更、別部品への切替え、製品価格への転嫁などの対策を講じましたが、不足部材は、上半期末から第3四半期にかけて部品ベンダの遅延が頻発し、影響範囲が拡大しました。第4四半期も売上のマイナス影響を受けましたが、不足部材の種類は限定的となりました。
[2022年度経営目標達成に向けて]
2022年度の目標達成に向けては、引き続き、お客様の事業の変革と成長に貢献する「For Growth」(*1)における売上収益の拡大と、お客様のIT基盤の安定稼働と安定的な事業運営に貢献する「For Stability」(*2)における採算性の改善を中心に、施策を着実に実行してまいります。
2021年度に実施した国内を中心としたソリューションビジネスの強化やお客様接点の強化等の施策により、売上伸長106%の達成を図ります。これに加え、社会課題を起点に選定した7つのKey Focus Areas(重点注力分野)を新たな事業ブランド「Fujitsu Uvance」で展開することによる収益拡大で1%、部材供給遅延のマイナス影響が減少することで1%、合わせて108%伸張を目指しています。
また、国内ビジネスにおけるGDC/JGGの更なる活用や、デリバリーの変革、ボーダレスオフィス等の先行投資の効果により600億円のコスト・費用効率化を図ります。
*1 デジタル(DX, モダナイゼーション)
*2 従来型 IT( システムの保守や運用、プロダクトの提供)
2022度は2021年度から更なる成長投資を加速させ、1,200億円規模を計画しています。
「Fujitsu Uvance」立ち上げに向けたグローバルオファリング開発、サービスデリバリーモデルの確立に向けたJGGや新規事業創出など価値創造に向けた投資を600億円、データドリブン経営の基盤としての「One Fujitsu」、セキュリティ強化、事業所の最適配置、従業員の働き方改革など自らの変革に向けた投資を600億円実施する計画です。
[キャピタルアロケーションポリシー]
当社グループは、パーパスを実現し、将来にわたり持続的に企業価値を向上させることを目指して、事業活動で創出したフリー・キャッシュ・フローを事業の成長につながる戦略的な投資と、安定的な株主還元にバランスよく配分するキャピタルアロケーションポリシーを定めています。
2020年度から2024年度までの5年間で1兆円超のベース・キャッシュ・フロー(成長投資を実施する前のフリー・キャッシュ・フローにリース料支払を加えたもの)を創出し、健全な財務基盤をベースとしながら獲得した資金を、戦略的な成長投資に5,000億円から6,000億円、株主還元に4,000億円から5,000億円と、おおよそ6対4の割合でアロケートしていくことで、事業の拡大と収益力の強化を図ると同時に、資本効率の向上にも取り組むというものです。
戦略的な成長投資については、AIやDXなどのデジタル領域を中心とする重点注力分野での成長を実現するために、新たな価値創造のためのサービスオファリング投資、イノベーションを加速するための研究開発の強化、お客様のDX実現に向けたコンサルティングサービスの拡充、有力パートナーとのアライアンスなどを行います。また、高度専門人材の獲得や人材育成、データドリブン経営に向けた社内システムの強化、働き方改革など、自らの変革を促す投資を行います。さらに、事業のサステナビリティを高めるために、地球温暖化などの環境課題や少子化・高齢化などの社会課題の解決に向けたソリューションの開発やスポーツを通じた地域貢献などのESG関連投資も実施していきます。
株主還元については、事業と利益の成長ステージに見合った、中長期に安定した株主還元を実施します。持続的な事業の成長に基づいて安定的な配当を実施していくとともに、機動的な自社株買いを実施していきます。
2022年度までの3年間の進捗としては、アロケートの原資となるベース・キャッシュ・フローが3年間で約7,400億円となる見込みで、計画を上回るペースです。2023年度以降も順調な推移が見込まれる上、保有資産のリサイクルも加えると、5年間で創出されるベース・キャッシュ・フローは計画した1兆円を上回る見込みです。こうした背景のもと、事業成長を加速させる戦略的投資の拡大や、資本効率を意識した株主還元水準の見直しなど、アロケーション全体の見直しについても検討しており、次期中期計画とあわせて見直す予定です。
② 経営成績
<要約連結損益計算書>
(億円)
前年度
(自 2020年4月 1日
至 2021年3月31日)
当年度
(自 2021年4月 1日
至 2022年3月31日)
前年度比増減率
(%)
売上収益35,89735,868△28△0.1
売上原価△25,094△24,681412△1.6
売上総利益10,80211,1863843.6
販売費及び一般管理費△8,345△8,527△1822.2
その他の損益205△466△672-
営業利益2,6632,192△471△17.7
⦅本業ベース営業利益⦆(注1)⦅2,473⦆⦅2,756⦆⦅282⦆⦅11.4⦆
金融損益10269△32△32.1
持分法による投資利益153138△14△9.6
税引前利益2,9182,399△518△17.8
法人所得税費用△783△268514△65.7
非支配持分に帰属する当期利益108304196181.3
親会社の所有者に帰属する当期利益2,0271,826△200△9.9

(注1)事業構造改善費用や事業譲渡に関する損益等一過性の利益または損失、M&Aに関するPPAを除いた営業利益
(ご参考)財務指標
前年度当年度前年度比
売上総利益率30.1%31.2%1.1%
営業利益率7.4%6.1%△1.3%
ROE(注2)15.1%12.0%△3.1%
EPS(注3)1,013.78円924.21円△8.8%

(注2)親会社の所有者に帰属する当期利益÷{(期首の親会社の所有者に帰属する持分合計(自己資本)
+期末の親会社の所有者に帰属する持分合計(自己資本))÷2}
(注3)基本的1株当たり当期利益
財務指標(本業ベース)
前年度当年度前年度比
営業利益率6.9%7.7%0.8%
ROE14.2%14.4%0.2%
EPS952.8円1,108.9円16.4%

0102010_003.png当社グループの当年度の業績は、売上収益3兆5,868億円、営業利益2,192億円、親会社の所有者に帰属する当期利益1,826億円となりました。事業構造改革や事業譲渡に関わる一過性の損失564億円を除く本業ベースの営業利益は2,756億円、営業利益率7.7%、と前年比10%超の増益となりました。
(ⅰ)売上収益
当年度の売上収益は3兆5,868億円と、前年度比で28億円の減収となりましたが、欧州低採算国や北米プロダクトビジネス、携帯販売代理店事業を再編した影響を除くと323億円増、0.9%の増収となりました。部材調達遅延による780億円の減収影響があったものの、円安による為替影響やネットワークビジネスの増収影響、世界的な半導体需要の高まりを受けた電子部品の増収影響がありました。
当年度の米国ドル、ユーロ及び英国ポンドの平均為替レートはそれぞれ112円、131円、154円と、前年度に比べてドルが6円、ユーロが7円、英国ポンドが15円と全ての通貨において円安となりました。為替レートの変動により前年度比で793億円の売上収益の増収影響がありました。内訳は、米国ドルで274億円の増収影響、ユーロで194億円、英国ポンドで258億円の増収影響です。
海外売上比率は36.7%と、前年度比4.0ポイントの上昇です。
(ⅱ)売上原価、販売費及び一般管理費、その他の損益並びに営業利益
当年度の売上原価は2兆4,681億円で、売上総利益は1兆1,186億円、売上総利益率は前年度比で1.1ポイント上昇し、31.2%になりました。販売費及び一般管理費は8,527億円と、前年度比で182億円増加しました。また、その他の損益は466億円の損失と、前年度比で672億円悪化しました。
営業利益は、前年度が2,663億円、当年度が2,192億円となりました。事業構造改革や事業譲渡に関わる一過性の損益は、前年度が携帯ショップ関連の事業譲渡益などで189億円の利益計上、当年度がDX企業への変革を加速するための人材施策費用650億円を計上したことなどにより564億円の損失となりました。一過性の損益を除く本業ベースの営業利益は、前年度が2,473億円、当年度が2,756億円と前年度からは282億円の増益となりました。
前年度からの主な変動要因は次の4つです。第1に、増収効果で291億円の増益となりました。ネットワークビジネスが北米向けの5G基地局を中心に増収となったほか、デバイスソリューションでも半導体の需要の高まりにより電子部品が増収になりました。第2に、コストと費用の効率化により681億円の増益となりました。コスト効率化で367億円増益です。テクノロジーソリューションの採算性改善を進めたほか、デバイスソリューションでも電子部品の増収効果により採算性が改善しました。費用効率化で313億円増益です。既存開発の効率化や働き方改革による生産性向上などにより効率化が進みました。第3に、データドリブン経営の基盤としての「One Fujitsu」やセキュリティ強化、事業所の最適配置、従業員の働き方改革等を進めるなど成長投資を積極的に増加させた影響で380億円減益となりました。第4に、部材供給遅延の影響により310億円の減益となりました。売上収益が減少したことに加え、コストアップの影響がありました。価格転嫁を進めたものの、マイナス影響が上回りました。以上を合わせ本業ベースの営業利益は、282億円の増益となりました。
為替レートの変動による営業利益への影響は前年度比で約70億円のプラスとなりました。円安により海外子会社の利益の取込み及び電子部品の輸出が好調なためプラスとなった一方で、プロダクト製品における米国ドル建の部材調達コストが上昇したことによるマイナスがあり、総額でプラスの影響を受けました。当年度の為替レートが1円円高に変動した場合の営業利益への影響額は、米国ドルが約11億円のマイナス、ユーロが約1億円のマイナス、英国ポンドが影響無しとなりました。
(ⅲ)金融損益、持分法による投資利益及び税引前利益
金融収益と金融費用をあわせた金融損益は69億円の利益と、前年度比で32億円の減益となりました。持分法による投資利益は138億円と、前年度比で14億円の減益となりました。
税引前利益は2,399億円と、DX企業への変革を加速するための人材施策費用650億円を計上したことにより前年度比で518億円の減益となりました。
(ⅳ)法人所得税費用、当期利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益
当期利益は2,131億円と、前年度比で3億円の減益となりました。当期利益のうち、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,826億円の利益で前年度から200億円の減益、非支配持分に帰属する金額は304億円の利益で前年度から196億円の増益となりました。法人所得税費用は268億円と前年度比で514億円減少しました。税引前利益に対する税負担率は、前年度の26.8%から当年度は11.2%となりました。北米子会社の再編に伴い一部子会社を清算したことによる税効果影響280億円などがありました。
親会社の所有者に帰属する当期利益を親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)で除して算定したROEは12.0%となりましたが、事業構造改革や事業譲渡に関わる一過性の損益を除いた本業ベースROEは14.4%と前年度から0.2ポイント増加しました。本業ベースEPSは1,108.9円と利益ベースの拡大に伴い前年度952.8円から16.4%増加しました。2019年度と比較するとCAGRは13.2%と、財務目標であるCAGR12%を上回る推移となっています。
株主還元を安定的に拡大させる方針のもと、当年度の1株あたり年間配当は220円と、前年度から年間で20円増額、6期連続の増配と致しました。また、当年度は自己株式500億円を取得し、2021年4月に設定した500億円の自己株式取得枠の全額の取得を完了しました。この結果、配当に自己株式取得を加えた総還元性向は51.2%となりました。
(ⅴ)税引後その他の包括利益及び当期包括利益
税引後その他の包括利益は499億円となりました。確定給付制度の再測定の影響が330億円、為替が円安に推移したことにより在外子会社等の換算差額が好転した影響が147億円ありました。当期利益と税引後その他の包括利益をあわせた当期包括利益は2,630億円となりました。当期包括利益のうち、親会社の所有者に帰属する当期包括利益は2,313億円、非支配持分に帰属する当期包括利益は317億円となりました。
(ⅵ)セグメント情報
当社グループは、経営組織の形態、製品・サービスの特性に基づき、複数の事業セグメントを集約した上で、「テクノロジーソリューション」、「ユビキタスソリューション」及び「デバイスソリューション」の3つを報告セグメントとしています。「テクノロジーソリューション」については、情報通信システムの構築などを行うソリューション/SI、クラウドサービスやアウトソーシング、保守サービスを中心とする「ソリューション・サービス」、ICTの基盤となる、サーバやストレージシステムなどのシステムプロダクトと携帯電話基地局や光伝送システムなどの通信インフラを提供するネットワークプロダクトにより構成される「システムプラットフォーム」、海外においてソリューション・サービスを提供する「海外リージョン」、テクノロジーソリューション全体に関する投資等を含む「共通」により構成されています。「ユビキタスソリューション」は、パソコンなどの「クライアントコンピューティングデバイス」により構成されています。「デバイスソリューション」は、半導体パッケージ、電池をはじめとする「電子部品」により構成されています。
当年度のセグメント別の売上収益(セグメント間の内部売上収益を含む)及び営業利益は以下のとおりです。
(億円)
前年度
(自 2020年4月 1日
至 2021年3月31日)
当年度
(自 2021年4月 1日
至 2022年3月31日)
前年度比増減率
(%)
テクノロジーソリューション
売上収益30,87730,563△313△1.0
営業利益1,9321,350△582△30.2
(営業利益率)(6.3%)(4.4%)(△1.9%)
ソリューション・サービス
売上収益18,83618,405△431△2.3
営業利益1,9071,887△19△1.0
(営業利益率)(10.1%)(10.3%)(0.2%)
システムプラットフォーム
売上収益6,3376,175△162△2.6
営業利益38856617846.0
(営業利益率)(6.1%)(9.2%)(3.1%)
海外リージョン
売上収益7,2377,293560.8
営業利益116239123106.2
(営業利益率)(1.6%)(3.3%)(1.7%)
共通
売上収益△1,533△1,310222-
営業利益△478△1,344△865-
ユビキタスソリューション
売上収益3,1902,371△819△25.7
営業利益43258△373△86.4
(営業利益率)(13.6%)(2.5%)(△11.1%)
デバイスソリューション
売上収益2,9383,75982127.9
営業利益298783485162.8
(営業利益率)(10.1%)(20.8%)(10.7%)
全社消去
売上収益△1,109△826283-
連結
売上収益35,89735,868△28△0.1
営業利益2,6632,192△471△17.7
(営業利益率)(7.4%)(6.1%)(△1.3%)

a テクノロジーソリューション
テクノロジーソリューションの売上収益は3兆563億円と、前年度比で313億円減、1.0%の減収ですが、部材供給問題による減収影響681億円が含まれており、これを除くと増収となりました。営業利益は1,350億円と、人材施策に関する費用が含まれており前年度比で582億円の減益です。
ソリューション・サービスの売上収益は1兆8,405億円と、前年度比で431億円減、2.3%の減収となりました。システム開発などサービスの領域は堅調に推移しましたが、半導体不足に加え前年度にあった大口商談の反動影響があったほか、ハード一体型ビジネスが自治体、文教、中堅向けを中心に低調に推移しました。営業利益は1,887億円と、前年度比で19億円の減益です。費用の効率化や採算性の改善を進めましたが、成長投資の拡大に加え、部材供給遅延影響により減益となりました。
システムプラットフォームの売上収益は6,175億円と、前年度比で162億円減、2.6%の減収となりました。部材調達遅延による減収影響が、258億円含まれています。前年度にあったスーパーコンピュータの反動影響はあったものの、ネットワークビジネスが5G基地局を中心に増加し、全体をカバーしました。営業利益は566億円と、前年度比で178億円の増益です。ネットワークビジネスの増収効果に加え、前年度にあった国内工場再編に関するビジネスモデル変革費用の負担減を含めた費用効率化により増益となりました。
海外リージョンの売上収益は7,293億円と、前年度比で56億円増、0.8%の増収となりました。NWE(Northern & Western Europe)や北米のサービスビジネスの増収に加え、為替が円安に動いた影響を受けました。営業利益は239億円と、前年度比で123億円の増益です。為替が円安に動いた影響、子会社の譲渡益など一過性の利益もありましたが、全ての地域で黒字を確保しました。
テクノロジーソリューション共通の営業利益は1,344億円のマイナスと、前年度比で865億円の悪化です。社内DXや働き方改革などの自らの変革に向けた投資を含む成長投資を増やしております。データドリブンに向けたOne ERPや働き方改革を進め、ウェルビーイングと生産性UPを狙ったWork Life Shiftを着実に進めています。
テクノロジーソリューションを価値創造のための2つの事業領域、「For Growth」と「For Stability」に分けて見た売上収益の状況です。
「For Growth」は1兆508億円と前年並みとなりました。ソリューション・サービスは2%増収、海外リージョンは30%増収と、グローバルオファリングの効果も含めサービスは拡大しました。一方、システムプラットフォームは15%減収となりました。海外での5G基地局が前年から伸長しましたが、スーパーコンピュータ富岳の反動影響をカバーできませんでした。
「For Stability」は2兆55億円と2%減収となりました。部材調達影響を大きく受けました。
b ユビキタスソリューション
ユビキタスソリューションの売上収益は2,371億円と、前年度比で25.7%の減収となりました。前年度にあったテレワーク需要やGIGAスクール商談の反動影響を受けております。営業利益は58億円と、前年度比で373億円の減益となりました。前年度にあった携帯販売代理店事業の譲渡益254億円がなくなったほか、減収影響を受けました。
c デバイスソリューション
デバイスソリューションの売上収益は3,759億円と、前年度比で27.9%の増収となりました。半導体需要の高まりにより、電子部品が大変好調に推移しました。営業利益は783億円と、前年度比で485億円の増益となりました。増収効果に加え、操業の改善により採算性が大きく改善しました。
(ⅶ)事業別セグメント情報(国内海外売上高)
(億円)
前年度
(自 2020年4月 1日
至 2021年3月31日)
当年度
(自 2021年4月 1日
至 2022年3月31日)
前年度比増減率
(%)
テクノロジー
ソリューション
売上収益30,87730,563△313△1.0
国内22,37621,312△1,064△4.8
海外8,5019,2517508.8
ソリューション
サービス
売上収益18,83618,405△431△2.3
国内18,42817,951△477△2.6
海外4074534611.4
システム
プラットフォーム
売上収益6,3376,175△162△2.6
国内5,0534,165△887△17.6
海外1,2842,00972556.5
海外リージョン売上収益7,2377,293560.8
国内46137.9
海外7,2327,287540.8
共通売上収益△1,533△1,310222-
ユビキタス
ソリューション
売上収益3,1902,371△819△25.7
国内2,0901,296△793△38.0
海外1,0991,074△25△2.3
デバイス
ソリューション
売上収益2,9383,75982127.9
国内75887011114.7
海外2,1792,88970932.6
全社消去売上収益△1,109△826283-
連結計売上収益35,89735,868△28△0.1
国内24,17622,698△1,477△6.1
海外11,72013,1691,44812.4
海外売上比率32.7%36.7%4.0%

(ⅷ)海外リージョンの損益情報
当社グループは、グローバルでの売上収益の拡大と収益力向上を経営上の重要な課題の1つであると考えており、テクノロジーソリューションに含まれる海外リージョンの損益情報は当社グループの事業管理において重要な項目であるとともに、株主、投資家の皆様に当社グループの損益概況をご理解頂くための有益な情報であると考えています。
(億円)
前年度
(自 2020年4月 1日
至 2021年3月31日)
当年度
(自 2021年4月 1日
至 2022年3月31日)
前年度比増減率
(%)
NWE
売上収益3,4783,6271484.3
営業利益53792547.2
(営業利益率)(1.6%)(2.2%)(0.6%)
CEE
売上収益1,7041,690△14△0.8
営業利益54752037.6
(営業利益率)(3.2%)(4.5%)(1.3%)
Americas
売上収益507391△115△22.8
営業利益△54661-
(営業利益率)(△10.8%)(1.7%)(12.5%)
Asia
売上収益798834354.5
営業利益262716.6
(営業利益率)(3.3%)(3.3%)(-%)
Oceania
売上収益743797547.4
営業利益173922123.7
(営業利益率)(2.4%)(5.0%)(2.6%)
その他・消去
売上収益4△47△52-
営業利益1810△8△44.1
海外リージョン
売上収益7,2377,293560.8
営業利益116239123106.2
(営業利益率)(1.6%)(3.3%)(1.7%)

a NWE(Northern & Western Europe)
NWEは欧州域内のイギリス、アイルランド、北欧、西欧等を含むリージョンです。売上収益は3,627億円と、為替影響などにより前年度比で4.3%の増収となりました。営業利益は79億円と、増収効果や費用の効率化を進めたことなどにより、前年度比で25億円の増益です。
b CEE(Central & Eastern Europe)
CEEは欧州域内のドイツ、スイス、オーストリア等を含むリージョンです。売上収益は1,690億円と、前年度比で0.8%の減収となりました。営業利益は75億円と、前年度比で20億円の増益です。部材供給遅延による減収影響はありましたが、子会社の譲渡益などにより増益となりました。
c Americas
Americasはアメリカ、カナダ、ブラジル等を含むリージョンです。売上収益は391億円と、前年から22.8%の減収となりました。プロダクト事業からの撤退など再編の影響を大きく受けましたが、サービスビジネスについては、増収となりました。営業利益は6億円と、前年度比で61億円の改善です。構造改革効果やサービスビジネスの増収効果などにより増益となりました。
d Asia
Asiaはシンガポール等の東南アジア諸国や中国、韓国、香港、台湾を含むリージョンです。売上収益は834億円と、前年度比で4.5%の増収となりました。営業利益は27億円と、前年度比で1億円の増益です。
e Oceania
Oceaniaは、オーストラリア、ニュージーランドを含むリージョンです。売上収益は797億円と、前年度比で7.4%の増収となりました。 営業利益は39億円と、前年度比で22億円の増益です。
③ 財政状態
<要約連結財政状態計算書>
(億円)
前年度末
(2021年3月31日)
当年度末
(2022年3月31日)
前年度末比
資産
流動資産18,73019,418687
非流動資産13,17113,899728
資産合計31,90233,3181,416
負債
流動負債12,89413,207312
非流動負債3,5382,953△584
負債合計16,43316,160△272
資本
自己資本14,50115,9071,405
非支配持分9671,250282
資本合計15,46917,1571,688
負債及び資本合計31,90233,3181,416
現金及び現金同等物4,8184,84021
有利子負債3,1632,853△310
ネットキャッシュ1,6551,987331

(注)自己資本 :親会社の所有者に帰属する持分合計
有利子負債 :社債、借入金及びリース負債
ネットキャッシュ :現金及び現金同等物-有利子負債
(ご参考)財務指標
前年度末
(2021年3月31日)
当年度末
(2022年3月31日)
前年度末比
自己資本比率45.5%47.7%2.2%
D/Eレシオ0.22倍0.18倍△0.04倍

(注)自己資本比率 :親会社の所有者に帰属する持分合計(自己資本)÷資産合計
D/Eレシオ :有利子負債÷親会社の所有者に帰属する持分合計(自己資本)
当年度末の資産合計は3兆3,318億円と、前年度末から1,416億円増加しました。流動資産は1兆9,418億円と、前年度末比で687億円増加しました。一部部材の供給遅延などに伴い、棚卸資産が増加しました。現金及び現金同等物は4,840億円と、前年度末比で21億円増加しました。非流動資産は1兆3,899億円と、前年度末比で728億円増加しました。年金資産の運用が好調であったことから、退職給付に係る資産などが増加しました。
負債合計は1兆6,160億円と、前年度末比で272億円減少しました。流動負債及び非流動負債の社債、借入金及びリース負債をあわせた有利子負債は2,853億円と、前年度末比で310億円減少しました。この結果、D/Eレシオは0.18倍と、前年度末比で0.04ポイント低下しました。現金及び現金同等物から有利子負債を控除したネットキャッシュ残高は1,987億円と、前年度末比で331億円増加しました。
資本合計は1兆7,157億円と、前年度末比で1,688億円増加しました。利益剰余金は1兆884億円と、親会社の所有者に帰属する当期利益を計上したことなどにより前年度末比で1,792億円増加しました。その他の資本の構成要素は635億円と、前年度末比で88億円増加しました。為替が円安に推移したことにより在外子会社の換算差額が増加した影響がありました。また、自己株式は1,288億円のマイナスです。株主還元施策として当年度は自己株式500億円を取得しました。これらの結果、自己資本は1兆5,907億円となり、自己資本比率は47.7%と、前年度末比で2.2ポイント上昇しました。
なお、連結財政状態計算書に計上されないオフバランスの負債は、IAS第16号(有形固定資産)及びIAS第38号(無形資産)に規定される資産の取得に関する契約上のコミットメントが588億円です。
確定給付型退職給付制度の状況
(億円)
前年度末
(2021年3月31日)
当年度末
(2022年3月31日)
前年度末比
a.確定給付制度債務16,04715,776△270
b.年金資産15,65516,012356
c.積立状況 (b)-(a)△391235628

国内外の従業員向け確定給付型退職給付制度の退職給付債務は1兆5,776億円と、前年度末比で270億円減少し、年金資産は1兆6,012億円と、前年度末比で356億円増加しました。この結果、積立状況(退職給付債務から年金資産を控除した金額)は235億円の超過と、前年度末比で628億円改善しました。割引率の上昇により年金債務が減少したこと及び、株価上昇により年金資産が増加したことなどによります。
④ キャッシュ・フロー
<要約連結キャッシュ・フロー計算書>
(億円)
前年度
(自 2020年4月 1日
至 2021年3月31日)
当年度
(自 2021年4月 1日
至 2022年3月31日)
前年度比
Ⅰ営業活動によるキャッシュ・フロー3,0792,483△596
Ⅱ投資活動によるキャッシュ・フロー△715△592122
Ⅰ+Ⅱフリー・キャッシュ・フロー2,3631,890△473
Ⅲ財務活動によるキャッシュ・フロー△2,196△1,936259
Ⅳ現金及び現金同等物の期末残高4,8184,84021

(ご参考)
ベース・キャッシュ・フロー(注)1,9102,118208

注: 成長投資を実施する前のフリー・キャッシュ・フローにリース料支払を加えたもの
当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは2,483億円と、前年度比で596億円の収入減となりました。価値創造と自らの変革に向けた成長投資へ530億円の支出をしております。
投資活動によるキャッシュ・フローは592億円のマイナスと、前年度比で122億円の支出減となりました。成長に向けた資産化投資320億円を行いました。
営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは1,890億円のプラスと、前年度から473億円の収入減となりました。
成長投資実行前のフリー・キャッシュ・フローにリース料支払額を加えたベース・キャッシュ・フローは2,118億円プラスと前年度から208億円の収入増となりました。ベース・キャッシュ・フローは、事業ならびに保有資産最適化から生み出されたキャッシュ・フローで成長投資と株主還元への配分原資となるものです。ベース・キャッシュ・フロー拡大を背景に、成長投資と株主還元ともに前年度に比べ大きく増加させました。
財務活動によるキャッシュ・フローは1,936億円のマイナスと、前年度比で259億円の支出減となりました。配当金の支払いで416億円、自己株式の取得で501億円支出しました。自己株式の取得は前年度から300億円増加しましたが、長期借入金の返済及び社債の償還による支出などが減少したことにより、前年度からは支出減となりました。
当年度末の現金及び現金同等物は4,840億円です。当社グループは、緊急の資金需要に対応するため、月商の数カ月分を目安に十分な手元流動性を確保しています。また、当社は、グローバルに資本市場から資金調達するため、ムーディーズ・インベスターズ・サービス(以下、ムーディーズ)、スタンダード&プアーズ(以下、S&P)及び株式会社格付投資情報センター(以下、R&I)から債券格付けを取得しています。本有価証券報告書提出日現在における格付けは、ムーディーズ:A3(長期)、S&P:A-(長期)、R&I :A+(長期)/a-1(短期)です。
当社グループは、事業や国・地域毎の特性やリスクを加味し、株主資本コストと借入コストの加重平均として資金調達コストを算定し、これに基づいて各事業における投資意思決定や回収可能性の判断を行っています。当社グループは、今後ますます需要が高まるDXビジネスに経営資源を集中し、中長期的に安定して高い収益性を獲得していくことによって、資金調達コストより高いリターンをあげることができると考えています。
⑤ 生産、受注及び販売の実績
ソリューション・サービス関連の受注は国内外ともに増加しました。グローバルに標準化したサービス提供を拡大させるグローバルオファリングの効果も出ています。
国内(富士通単独及び富士通Japan)の受注については、前年から3%減少しましたが、回復傾向は出てきました。
事業別では、パソコンが23%減少し、サーバ、ネットワーク他が17%減少しましたが、主力事業であるソリューション・サービスは、3%増加しました。
業種別は次の通りです。エンタープライズ(産業・流通)は第1四半期の減少影響が大きく年間でも1%減少しました。第2四半期以降は、モビリティ分野で大規模基幹システムの更新商談を獲得するなど前年より増加しました。お客様においても半導体供給不足や、原材料高の影響があるものの、DXに向けた需要は底堅く推移しました。ファイナンス&リテール(金融・小売)は、3%伸長しました。金融分野を中心に大型商談を獲得したほか、小売りも含めDX関連の投資案件が増加しました。JAPANリージョン(官公庁・社会基盤他)は4%減少しました。官公庁や、通信キャリア分野で前年に大型商談があった影響がありました。富士通Japan(自治体・ヘルスケア・文教・民需(中堅他))は10%減少となりました。自治体やヘルスケアは、デジタル化へのニーズは高いものの、引き続きコロナ影響を強く受け商談が延伸しました。文教は、前年にあったGIGAスクールの大口商談の反動減があり、中堅民需は、部材調達不足や原材料高騰の影響がありました。
海外の受注については、次の通りです。NWE(Northern & Western Europe)は、サービスが大幅に増加したものの、プロダクトが大幅に減少し、全体としては3%減少しました。英国におけるサービス事業では、昨年に引き続き、官公庁から基幹システム更新商談を受注しました。CEE(Central & Eastern Europe)はサービスが増加したものの、プロダクトは部材供給問題が大きく、前年から減少し、年間では1%減少しました。Americasは19%増加しました。プロダクトビジネスから撤退し、サービスビジネスに集中する構造改革は一旦の区切りを迎え、サービスビジネスは、着実に成長し始めています。Asiaは、21%増加しました。シンガポール、台湾、タイ、ヴェトナムを中心に着実に成長しています。オセアニアは17%減少しました。前年度にあった大型商談の反動影響がありましたが、データ活用を目的としたサービスに対するデマンドは強く、次年度以降のパイプラインは拡大傾向です。
⑥ 重要な会計方針及び見積り
IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営陣は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用に影響を与える判断、見積り及び仮定を必要としておりますが、実際の結果と異なる場合があります。また、見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直されます。会計上の見積りの見直しによる影響は、その見積りを見直した連結会計期間及び影響を受ける将来の連結会計期間において認識されます。連結財務諸表の金額に重要な影響を与える見積り及び判断については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」をご参照ください。
⑦ 新型コロナウイルス感染症の影響
新型コロナウイルス感染症の収束時期は不透明な状況にありますが、グローバルな経済活動は降徐々に回復するものと想定しています。一方、当社グループの経営成績等に対しては、一部の国・地域や事業では新型コロナウイルス感染症の影響が継続する可能性がありますが、業績への重要な影響はないと考えています。 当社グループは、約5,000億円水準の手元流動性を有し、追加の資金調達余力も含めると、緊急の資金需要に対応するのに十分な支払能力を有しています。また、自己資本比率は約48%と、十分な自己資本を有しています。これら健全な財務基盤により、新型コロナウイルス感染症に対し短期的にも中長期的にも資金繰り等の大きな問題はないと考えています。