有価証券報告書-第118期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/25 16:10
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61項目
(1)経営成績等の状況の概要、経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)並びに持分法適用会社の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要、経営者の視点によるグループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2018年3月31日)現在において判断したものであります。
文中において、当連結会計年度は当年度、前連結会計年度は前年度と、省略して記載しております。
①当社グループの課題及び取り組み
現在、世界中のあらゆる場面においてICT( Information and Communication Technology)のサービス化が急速に進んでおります。当社はICTのサービス化を「つながるサービス」と名付け、その拡大を今後の成長ドライバーとして位置付けております。当社は「つながるサービス」というデジタル・テクノロジーをベースとしたICTのサービス化により、お客様や社会の知見と当社のICTの力を融合したDigital Co-creationによって新たな価値を生み出してまいります。バリューチェーン全体にセキュアなICT基盤を提供し、あらゆるものがつながることで蓄積される膨大なデータの整理・可視化を行い、AIによるお客様の意思決定の高度化を実現することで、お客様の事業強化や新たなイノベーション創出を支援いたします。お客様や社会の成長を起点にデジタルイノベーションに再投資する循環を繰り返すことで、より大きな規模の価値を生み出し、あらゆるステークホルダーの方々と持続的に成長していくことを目指してまいります。
当社は「つながるサービス」の拡大をより確かなものにし、蓄積した技術と知見をつなぎサービスとして価値を提供するService–Oriented Companyとしてグローバルに競争力を発揮すべく、2015年10月に経営方針を策定しております。中期的な経営目標として(ⅰ)営業利益率10%以上、(ⅱ)フリー・キャッシュ・フロー1,500億円以上、(ⅲ)自己資本比率40%以上、(ⅳ)海外売上比率50%以上の達成を目指しております。
当社は当社グループの「形」と「質」を転換するため、「ビジネスモデル変革」を進めております。「テクノロジーソリューション」、「ユビキタスソリューション」及び「デバイスソリューション」の3つの事業セグメント(注1)にわたる従来の垂直統合型の事業展開を転換し、コア事業である「テクノロジーソリューション」に経営資源を集中いたします。あわせて、IoT(注2)が進化する市場で、デジタル・テクノロジーをベースとした「つながるサービス」へ投資を集中いたします。「ユビキタスソリューション」や「デバイスソリューション」については、強い独立事業体として市場競争力を向上させ、コア事業とのさらなるシナジーを追求いたします。さらに必要に応じて、有力企業との協業の推進等、あらゆる選択肢を視野に入れて強化を進めてまいります。
(注1)「テクノロジーソリューション」は、プロダクト・ソフトウェア・サービスが一体となった総合的なサービスを主として法人のお客様に最適な形で提供しております。情報通信システム構築などを行うソリューション/SI、アウトソーシングや保守サービスを中心とするインフラサービス、ICTの基盤となるサーバやストレージなどのシステムプロダクトと携帯電話基地局や光伝送システムなどの通信インフラを提供するネットワークプロダクトにより構成されております。
「ユビキタスソリューション」は、スマートフォン連携や省電力、高速起動などの機能強化を図ったパソコンや、「arrows」、「STYLISTIC」ブランドで展開するスマートフォン・タブレット端末に加え従来のフィーチャーフォンを含む携帯電話のほか、自動車分野などを対象としたIoTからクラウドまでのICT統合プラットフォーム及びAIセンサー技術活用したフロントシステムであるモビリティIoTなどにより構成されております。
「デバイスソリューション」は、最先端テクノロジーとして、携帯電話やデジタル家電、自動車、サーバなどに搭載されるLSIのほか、半導体パッケージ、電池をはじめとする電子部品により構成されております。
(注2)Internet of Thingsの略。パソコンやサーバなどに留まらず、様々な物がインターネットに接続され、情報交換する仕組み。
これまで取り組んできた、事業ポートフォリオに関する「形を変える」取り組みについては一定の成果を上げることができましたが、一方で「質を変える」取り組みについては十分な成果を享受するに至らず、2017年度を通じて改めて3つの課題が明確となりました。第1に海外事業を含め、これまで積極的に行ってきた先行投資に対する十分なリターンを得ること、第2にネットワーク事業における事業環境の変化に迅速かつ十分に対応すること、第3に不採算損失を抑制することであります。これらの課題に対しては、将来的な成長を見据えたより厳格な投資の集中と、変革を必要とする事業領域の体質強化に、躊躇なく策を講じてまいります。不採算については、すでにアシュアランス機能の拡充を開始しております。
経営方針を策定した2015年時点では2016年度までに「ビジネスモデル変革」を完遂し、「つながるサービス」に経営資源を集中した成果を2017年度以降、利益率向上という明確な形で示す計画としていましたが、この3年間の結果を踏まえ、掲げた中期的な経営目標の達成までの時間軸を見直すことといたしました。あらためて経営目標の達成に向けたマイルストーンを策定し、2018年10月開催予定の経営方針進捗レビュー報告会にて株主、投資家などステークホルダーの皆様方にご説明いたします。当社は、引き続きグループの改革に取り組み、目指すべき姿の実現が確実に視野に入るレベルに到達するべく努めてまいります。
[形を変える取り組みの進捗(テクノロジーソリューションへの経営資源集中)]
2017年11月1日に、カーエレクトロニクス製造子会社である富士通テン株式会社(本社:兵庫県神戸市、以下、富士通テン)株式を株式会社デンソー(本社:愛知県刈谷市、以下、デンソー)に譲渡いたしました。総合自動車部品メーカーであるデンソーが富士通テンをグループ会社とすることにより、両社の持つ車載ECUやミリ波レーダー、高度運転支援・自動運転技術及び電子基盤技術の開発などにおいて、協力関係を一層強化し一体となって企業価値を向上することを目的としております。当社は、ICTの重要性がますます高まる「つながるクルマ」や自動運転など次世代の自動車分野において、デンソー及び富士通テンとの連携をより一層強め、自動車ビジネスやモビリティIoTビジネスをさらに強化いたします。
2017年11月に、当社はLenovo Group Limited(本社:中国・香港、以下、レノボ)及び株式会社日本政策投資銀行(本社:東京都千代田区、以下、DBJ)と、グローバル市場に向けたパソコン及び関連製品の研究開発・設計・製造・販売を行う合弁会社を設立する戦略的な提携について合意しました。2018年5月には、当社の100%子会社である富士通クライアントコンピューティング株式会社(本社:神奈川県川崎市、以下、FCCL)の株式の51%をレノボに対して、また、5%をDBJに対して、それぞれ譲渡することにより、FCCLをレノボ、当社及びDBJの合弁会社としました。この戦略的提携によりレノボの持つ世界規模の調達力とプレゼンスを活用し、日本を含めたグローバルPC事業の更なる成長と規模や競争力の拡大を目指します。当社は引き続き、高品質かつ革新的で信頼性の高い富士通ブランドのPC製品とサポートサービスをグローバルな法人のお客様に提供し、テクノロジーソリューションと合わせて、お客様のデジタル革新に貢献していきます。
2018年1月に、当社はポラリス・キャピタル・グループ株式会社(本社:東京都千代田区、以下、ポラリス)と携帯端末事業の再編に関する株式譲渡契約を締結いたしました。3月には、当社の100%子会社である富士通コネクテッドテクノロジーズ株式会社(本社:神奈川県川崎市)の株式及び富士通周辺機株式会社(本社:兵庫県加東市)の携帯端末事業を承継する新会社の株式をポラリスが新たに設立した会社へ譲渡いたしました。
2017年10月に、半導体の開発・製造・販売子会社である富士通セミコンダクター株式会社(本社:神奈川県横浜市、以下、FSL)は、オン・セミコンダクター(本社:米国アリゾナ州フェニックス)と、FSLが福島県会津若松市に有する200mm製造会社(以下、会津200mm製造会社)の30%の株式をオン・セミコンダクターが追加取得することについて合意しました。2018年4月に、オン・セミコンダクターが株式を追加取得した結果、オン・セミコンダクターの会津200mm製造会社への出資比率は40%となりました。オン・セミコンダクターは、2018年後半を目途に60%、2020年前半を目途に100%まで出資比率を引き上げる計画であります。
[質を変える取り組みの進捗(デジタル・テクノロジーをベースとした「つながるサービス」の拡大)]
2016年7月に、クラウド事業及びISP(Internet Services Provider)事業を行う上場子会社であったニフティ株式会社(本社:東京都新宿区、以下、ニフティ)を完全子会社とし、2017年4月にはクラウドを中心とするエンタープライズ向け事業会社と、ISPを中心とするコンシューマ向け事業会社に再編しました。エンタープライズ向け事業は、当社との連携を強化することにより顧客基盤やノウハウを共有し、当社グループ一丸となって「つながるサービス」の中核となるクラウド事業を強化いたします。一方、コンシューマ事業は、ニフティが培ってきたノウハウや資産を有効活用しつつ企業価値をさらに高めるため、2017年4月に株式会社ノジマ(本社:神奈川県横浜市)に譲渡しております。
当社は、今後成長が見込まれるデジタルビジネス及びグローバルビジネスの拡大に向けた体制を強化しております。これまでに、(ⅰ)グループ内に分散していたIoTやAI、クラウド関連の開発リソースを集約したデジタルサービス部門を新設、(ⅱ)当社グループが持つIP/サービス資産をグローバルに活用する体制を構築するため、インテグレーションサービス部門とグローバルデリバリー部門を統合再編したグローバルサービスインテグレーション部門を設立、(ⅲ)お客様の変革をリードする役割のSEリソースを集結するため、SE子会社3社を富士通に統合、(ⅳ)サービスデリバリーを担うグローバルサービスインテグレーション部門内にお客様のデジタル化を支援する専門組織であるデジタルフロントビジネスグループを新設、するなど体制を強化してまいりましたが、2017年4月にも、グローバルに統合されたサービスの戦略立案、セキュリティビジネスのさらなる拡大を目的としてグローバルサイバーセキュリティ部門を新設いたしました。また、2018年4月には、営業部門内にお客様やパートナーの皆様との共創ビジネスをスピーディに立上げ先進テクノロジーをグローバル展開するため、従来独自性強く活動してきた新ビジネス、イノベーション系ビジネスを一つの組織に統合した共創ビジネスグループを新設したほか、AIビジネスにおいてはコンサル部門やAIインフラ基盤を統合し、IoTビジネスにおいてはデータ利活用によるお客様の事業革新を支える基盤提供機能を一層強化するなど事業体制を強化しております。
人材配置に関してもデジタルサービスへのシフトを進めており、人材・ツール・サービスをグローバルに向けてオフショアで提供するためのITサービスデリバリー拠点であるグローバルデリバリーセンターを引き続き拡大するとともに、お客様のデジタル化対応ニーズに応えるため、セキュリティ要件などを満たしながら短期間で製品・サービスを開発・リリースするアジャイル人材の育成を強化しております。これにより、デジタルビジネスと言われるIoTやAIを活用したSoE(Systems of Engagement)領域のプロジェクトだけでなく、SoR(Systems of Record)とSoEのシステムインテグレーションや既存システムのモダナイゼーションをお客様に対し推進してまいります。
②経営成績
<要約連結損益計算書>(億円)
前年度
(自 2016年4月 1日
至 2017年3月31日)
当年度
(自 2017年4月 1日
至 2018年3月31日)
前年度比増減率
(%)
売上収益41,32940,983△345△0.8
売上原価△29,681△29,66515△0.1
売上総利益11,64811,317△330△2.8
販売費及び一般管理費△10,136△10,09540△0.4
その他の損益△337602940-
営業利益1,1741,82465055.4
金融損益△2478480-
持分法による投資利益691215275.2
継続事業からの税引前利益1,2412,4241,18395.3
法人所得税費用△311△744△432138.7
非継続事業からの当期利益239268292.6
非支配持分に帰属する当期利益68791015.9
親会社の所有者に帰属する当期利益8841,69380891.4

(注)カーエレクトロニクス製造子会社である富士通テン株式会社を株式会社デンソーに譲渡したことから、当年度より当該事業を非継続事業に分類し、非継続事業からの利益は継続事業と区分して表示しています。売上収益、営業利益等は継続事業の金額を表示しており、前年度についても組み替えて表示しています。
(ご参考)財務指標 (億円)
前年度当年度前年度比
海外売上比率35.4%36.8%1.4%
EMEIA(注1)7,4797,996517
アメリカ2,8822,768△113
アジア3,3533,321△31
オセアニア89898183
顧客所在地別海外売上収益14,61215,068455
売上総利益率28.2%27.6%△0.6%
営業利益率2.8%4.5%1.7%
ROE(注2)10.6%17.2%6.6%

(注1)EMEIA:欧州・中近東・インド・アフリカ
(注2)ROE :親会社の所有者に帰属する当期利益÷{(期首の親会社の所有者に帰属する持分合計(自己資本)
+期末の親会社の所有者に帰属する持分合計(自己資本))÷2}
(ご参考)期中平均レート
前年度当年度前年度比
米国ドル/円108円111円3円
ユーロ/円119円130円11円
英国ポンド/円142円147円5円
ユーロ/米国ドル1.10ドル1.17ドル0.07ドル

(ⅰ)売上収益
当年度の売上収益は4兆983億円と、前年度から345億円、0.8%の減収となりました。2017年4月に実施したニフティのコンシューマ事業売却による減収影響が約520億円ありました。国内は3.0%の減収となりました。システムインテグレーションが堅調に推移したほか、パソコンやLSIが増収となりましたが、ネットワークプロダクトが大きく減収となりました。通信キャリアが携帯電話基地局の投資を大幅に抑制した影響があったほか、競争環境の厳しさが加速しました。海外は3.1%の増収となりました。為替の円安効果も受け欧州を中心にインフラサービスやパソコンが増収となりました。
当年度の米国ドル、ユーロ及び英国ポンドの平均為替レートはそれぞれ111円、130円、147円と、前年度に比べて米国ドルが3円、ユーロが11円、英国ポンドが5円の円安となりました。米国ドルとの為替レートの変動により約110億円、ユーロとの変動により約400億円、また英国ポンドとの変動で約120億円売上収益が前年度比で増加しております。この結果、当年度は為替レートの変動により前年度比で約630億円の売上収益の増加影響があり、海外売上比率は36.8%と、前年度比1.4ポイント増加しました。
(ⅱ)売上原価、販売費及び一般管理費、その他の損益並びに営業利益
当年度の売上原価は2兆9,665億円で、売上総利益は1兆1,317億円、売上総利益率は前年度から0.6ポイント低下し、27.6%になりました。
販売費及び一般管理費は1兆95億円と、前年度比で40億円減少しました。販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費については1,586億円と、ネットワークプロダクトを中心に前年度比で113億円減少しました。研究開発費の売上収益に対する比率は3.9%となりました。
その他の損益は602億円の利益と、前年度比で940億円改善しました。海外子会社の法的紛争手続きの結果に伴う損失が103億円ありましたが、携帯電話事業の譲渡益544億円及びニフティのコンシューマ事業の譲渡益169億円を計上しました。また、当年度もビジネスモデル変革費用を83億円計上しました。前年度に欧州事業における人員削減費用など420億円を計上しましたが、欧州での効率化及びデジタル化対応に向けた活動は継続しており、オフショア人員の拡張や自動化対応等の効率化推進、新規領域拡大に向けた投資を実施しました。
この結果、営業利益は1,824億円と、前年度比で650億円の増益となりましたが、その他の損益に含まれる特殊事項を除いた通常ベースでは290億円の減益となりました。国内通信キャリアの大幅な投資抑制によりネットワークプロダクトが大幅減益となったほか、不採算プロジェクトの増加や先行投資領域の費用が拡大している影響がありました。営業利益率は4.5%と、前年度から1.7ポイント上昇しました。
為替レートの変動による営業利益への影響は次の通りです。国内拠点での円貨に対する米国ドル、ユーロ及び英国ポンドの影響は前年度比で約30億円と軽微でした。円安によりパソコンや携帯電話などのプロダクト製品は米国ドル建部材の調達コストが上昇しましたが、LSIや電子部品は米国ドル建の輸出売上が増加し、ほぼ相殺されました。当年度の為替レートが1円変動した場合の営業利益への影響額は、米国ドルが約3.1億円、ユーロが約0.6億円、英国ポンドが約0.4億円となりました。また、一部の欧州拠点では、米国ドルに対しユーロが変動した場合、米国ドル建の部材調達コストが変動する影響があります。当年度のユーロ/米国ドルの為替レートは1.17と、前年度に比べて0.07ユーロ高が進行しました。ユーロ高により部材調達コストが低減する効果がありましたが、他社との競争激化により製品販売価格の引き下げ等を行ったことにより、営業利益の改善効果は限定的でした。当社グループは引き続き、コストダウンの推進のほか、欧州の製造・物流拠点の効率化など、為替変動による損益影響を極力低減すべく努めてまいります。
(ⅲ)金融損益、持分法による投資利益及び税引前利益
金融収益と金融費用をあわせた金融損益は478億円の利益と、前年度比で480億円の改善となりました。また、持分法による投資利益は121億円と、前年度比で52億円の増益となりました。富士電機株式会社との株式持ち合い見直しに伴い株式売却益を273億円計上したほか、中国関連会社の株式保有区分変更に伴う評価益等(第三社割当増資に伴う持分比率低下により関連会社株式から一般株式へ区分変更し時価ベースで評価)263億円を計上しました。
税引前利益は2,424億円と、営業利益ならびに金融損益の増加などにより前年度比で1,183億円の増益となりました。
(ⅳ)法人所得税費用、当期利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益
当期利益は1,772億円と、前年度比で819億円の増益となりました。当期利益のうち、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,693億円、非支配持分に帰属する金額は79億円と、前年度比でそれぞれ808億円の増益、10億円の増加となりました。法人所得税費用は744億円と、前年度比で432億円増加しました。税引前利益の利益額に対する税負担率は、前年度の25.1%から当年度は30.7%となりました。米国での法人税率引き下げ、英国での繰越欠損金の活用制限など税制改正影響があったほか、欧州事業の業績悪化に伴い繰延税金資産を一部取り崩した影響がありました。
親会社の所有者に帰属する当期利益を親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)で除して算定したROEは17.2%となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益の増加により、前年度比6.6ポイント上昇しました。
当社グループが進める事業ポートフォリオに関する「形を変える」取り組みは着実に進捗しており、2017年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は1,693億円と過去最高益となりました。これを受け、当社は、財務体質の改善が進み今後も継続して安定的なフリー・キャッシュ・フローの創出が見込めることから、株主還元を拡充することにいたしました。2017年度の1株あたり年間配当は11円とし、2016年度から年間で2円増額しました。また、事業譲渡益や株式売却益などの一時的要因により当期利益が大幅な増益となったことを踏まえ、利益に応じた株主還元として、2018年5月に自己株式を100億円取得いたしました。
(ⅴ)税引後その他の包括利益及び当期包括利益
税引後その他の包括利益は523億円となりました。富士電機株式会社株式の売却に伴う振替により売却可能金融資産が90億円のマイナスとなりましたが、株価上昇により年金資産運用が好転したことなどにより確定給付制度の再測定額が667億円のプラスとなりました。
当期利益と税引後その他の包括利益をあわせた当期包括利益は2,295億円となりました。当期包括利益のうち、親会社の所有者に帰属する当期包括利益は2,198億円、非支配持分に帰属する当期包括利益は97億円となりました。
(ⅵ)セグメント情報
当社グループは、経営組織の形態、製品・サービスの特性及び販売市場の類似性に基づき、複数の事業セグメントを集約した上で、「テクノロジーソリューション」、「ユビキタスソリューション」及び「デバイスソリューション」の3つを報告セグメントとしております。また、報告セグメントに含まれない事業セグメントとして、次世代スーパーコンピュータ事業、次世代クラウド事業、当社グループ会社向け情報システム開発・ファシリティサービス事業及び当社グループ従業員向け福利厚生事業等を「その他」の区分に含めて表示しております。
当年度のセグメント別の売上収益(セグメント間の内部売上収益を含む)及び営業利益は以下のとおりであります。
(億円)
前年度
(自 2016年4月 1日
至 2017年3月31日)
当年度
(自 2017年4月 1日
至 2018年3月31日)
前年度比増減率
(%)
テクノロジーソリューション
売上収益31,26630,527△739△2.4
営業利益1,9071,893△13△0.7
(営業利益率)( 6.1%)( 6.2%)( 0.1%)
ユビキタスソリューション
売上収益6,4556,6391832.8
営業利益173113△60△34.7
(営業利益率)(2.7%)( 1.7%)(△1.0%)
デバイスソリューション
売上収益5,4435,6001562.9
営業利益4213693220.8
(営業利益率)( 0.8%)( 2.4%)( 1.6%)
その他及び消去又は全社
売上収益△1,835△1,78252-
営業利益△949△318630-
連結
売上収益41,32940,983△345△0.8
営業利益1,1741,82465055.4
(営業利益率)( 2.8%)( 4.5%)( 1.7%)

a テクノロジーソリューション
「テクノロジーソリューション」は、プロダクト・ソフトウェア・サービスが一体となった総合的なサービスをお客様に最適な形で提供しております。ITシステムのコンサルティング、構築などを行うソリューション/SI、アウトソーシング(情報システムの一括運用管理)などを中心とするインフラサービス、ICTの基盤となるサーバやストレージシステムなどのシステムプロダクトと携帯電話基地局や光伝送システムなどの通信インフラを提供するネットワークプロダクトにより構成されております。
売上収益は3兆527億円と、前年度比2.4%の減収となりました。国内は5.4%の減収となりました。ニフティのコンシューマ事業譲渡の影響があったほか、ネットワークプロダクトが大幅に減収となりました。通信キャリアが携帯電話基地局投資を大幅に抑制した影響があったほか、競争環境の厳しさが加速したことによります。システムインテグレーションは、前年好調であったハード一体型のソリューションビジネスの反動減があったほか、大規模プロジェクトの端境期にあたり金融や公共分野などで減収となりましたが、産業や流通分野が引き続き好調に推移するなど全体としては堅調に推移しました。
一方、海外は4.0%の増収となりました。インフラサービスを中心に為替の円安影響がありました。為替影響を除くと前年度並みとなりました。
営業利益は1,893億円と、前年度比で13億円の減益となりました。ネットワークプロダクトの大幅な減収影響や海外子会社における法的紛争案件の影響があるものの、ビジネスモデル変革費用の負担が減少しました。サービス事業の収益力は着実に向上していますが、一部の不採算プロジェクトの影響により、全体としては前年度並みの利益水準に留まりました。
当年度はシステムインテグレーションだけでなく、インフラ構築に関するサービスでも不採算プロジェクトが発生しました。近年、単純なインフラ構築からネットワークやセキュリティなどのソリューションを組み合わせることにより付加価値を高めたインフラ構築案件が増加しており、プロジェクトの難易度が高まっています。過去、インフラサービスの領域では国内で大きな不採算プロジェクトの発生はなく、アシュアランス部門の関与が少ない領域でしたが、再発防止に向けてこの領域においてもアシュアランス機能の拡充を進めてまいります。
当年度もビジネスモデル変革費用を83億円計上しました。前年度に欧州事業における人員削減費用などを計上しましたが、欧州での効率化及びデジタル化対応に向けた活動は継続しており、オフショア人員の拡張や自動化対応等の効率化推進、新規領域拡大に向けた投資を実施しました。
b ユビキタスソリューション
「ユビキタスソリューション」は、当社グループが実現を目指す「ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティ」(テクノロジーの力で実現される、より安全で、豊かな、持続可能な社会)において、人や組織の行動パターンから生み出される様々な情報や知識を収集・活用するユビキタス端末あるいはセンサーとして、パソコンや携帯電話のほか、モビリティIoT/ヒューマンセントリックIoTなどにより構成されております。
売上収益は6,639億円と、前年度比2.8%の増収となりました。国内は1.2%の増収となりました。携帯電話はらくらくシリーズにおいてフィーチャーフォンの出荷台数が大きく減少し減収となりましたが、法人向けパソコンが伸長しました。海外は8.3%の増収となりました。為替の円安影響もあり増収となりました。
営業利益は113億円と、前年度比で60億円の減益となりました。携帯電話の減収影響のほか、パソコン/携帯電話でのメモリ等の部材調達価格が上昇した影響、モバイルウェア関連を中心としたIoT分野での先行投資や戦略商談を進めた影響がありました。
c デバイスソリューション
「デバイスソリューション」は、最先端テクノロジーとして携帯電話やデジタル家電、自動車、サーバなどに搭載されるLSIのほか、半導体パッケージ、電池をはじめとする電子部品により構成されております。
売上収益は5,600億円と、前年度比2.9%の増収となりました。国内は9.6%の増収となりました。スマートフォン向けLSIが伸長しました。海外は2.7%の減収となりました。電子部品、LSIともに円安進行により米国ドル建の輸出売上の増収効果はありましたが、ともに所要が低迷しました。
営業利益は136億円と、前年度比で93億円の増益となりました。前年度に計上したビジネスモデル変革費用がなくなったことに加え、円安進行により米国ドル建の輸出売上が増加した効果がありました。
d その他及び消去又は全社
「その他」の区分は報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、次世代スーパーコンピュータ事業、次世代クラウド事業、当社グループ会社向け情報システム開発・ファシリティサービス事業及び当社グループ従業員向け福利厚生事業等が含まれております。
また、事業セグメントとして識別されないものは、基礎的試験研究やIT戦略投資などの戦略費用及び親会社におけるグループ経営に係る共通費用であります。
営業利益は318億円の損失と、前年度比で630億円の改善となりました。次世代クラウドや次世代スーパーコンピュータ、基礎的試験研究費用などの先行戦略投資やIT戦略投資に、引き続き高水準の投資を継続していますが、当年度は、携帯電話事業の譲渡益544億円、ニフティのコンシューマ事業の譲渡益169億円を計上しております。
(ⅶ)所在地別の損益情報
当社グループは、成長市場である海外における売上収益の拡大と収益力向上を経営上の重要な課題の1つであると考えております。所在地別の損益情報は当社グループの事業管理において重要な項目であるとともに、株主、投資家の皆様に当社グループの損益概況をご理解頂くための有益な情報であると考えております。
(億円)
前年度
(自 2016年4月 1日
至 2017年3月31日)
当年度
(自 2017年4月 1日
至 2018年3月31日)
前年度比増減率
(%)
日本
売上収益31,08130,057△1,023△3.3
営業利益2,2141,825△388△17.6
(営業利益率)( 7.1%)( 6.1%)(△1.0%)
EMEIA(欧州・中近東・インド・アフリカ)
売上収益7,5678,1015347.1
営業利益△12690216-
(営業利益率)(△1.7%)( 1.1%)( 2.8%)
アメリカ
売上収益2,8472,807△40△1.4
営業利益216543198.7
(営業利益率)( 0.8%)( 2.3%)( 1.5%)
アジア
売上収益2,8562,771△84△3.0
営業利益△24850-
(営業利益率)(△0.1%)( 1.7%)( 1.8%)
オセアニア
売上収益9251,005798.6
営業利益3440617.6
(営業利益率)( 3.8%)( 4.1%)( 0.3%)
消去又は全社
売上収益△3,948△3,759188-
営業利益△967△245722-
連結
売上収益41,32940,983△345△0.8
営業利益1,1741,82465055.4
(営業利益率)( 2.8%)( 4.5%)( 1.7%)

a 日本
売上収益は3兆57億円と、前年度比で3.3%の減収となりました。ニフティのコンシューマ事業売却による減収影響があったほか、通信キャリアの携帯電話基地局の投資抑制によりネットワークプロダクトが大幅減収となりました。システムインテグレーションは、前年好調であったハード一体型のソリューションビジネスの反動減があったほか、大規模プロジェクトの端境期にあたり金融や公共分野などで減収となりましたが、産業や流通分野が引き続き好調に推移するなど全体としては堅調に推移しました。営業利益は1,825億円と、前年度比で388億円の悪化となりました。ネットワークプロダクトの減収影響があったほか、パソコン/携帯電話事業でのメモリ等の部材調達価格が上昇した影響や一部不採算プロジェクトの影響、モバイルウェア関連を中心としたIoT分野での先行投資費用や戦略商談を進めた影響がありました。
b EMEIA(欧州・中近東・インド・アフリカ)
売上収益は8,101億円と、前年度比7.1%の増収となりました。インフラサービスを中心にユーロ及び英国ポンドに対して円安が進行した影響がありましたが、為替影響を除くと前年度並みとなりました。営業利益は90億円と、前年度比で216億円の改善となりました。子会社における法的紛争案件の影響はあったものの、過年度に実施した人員削減などの固定費削減効果があったほか、ビジネスモデル変革費用の負担が減少しました。当年度は71億円のビジネスモデル変革費用を計上しました。欧州での効率化及びデジタル化対応に向けた活動は継続しており、オフショア人員の拡張や自動化対応等の効率化推進、新規領域拡大に向けた投資を実施しました。
c アメリカ
売上収益は2,807億円と、前年度比1.4%の減収となりました。米国ドルに対して円安が進行した影響がありましたが、インフラサービスや電子部品などが減収となりました。営業利益は65億円と、前年度比で43億円の増益となりました。インフラサービスにおける利益率改善などによります。
d アジア
売上収益は2,771億円と、前年度比3.0%の減収となりました。LSIや電子部品が減収となりました。営業利益は48億円と、前年度比で50億円の改善となりました。前年度に電子部品事業において生産拠点再編に伴うビジネスモデル変革費用を計上していたほか、採算性が改善したことによります。
e オセアニア
売上収益は 1,005億円と、前年度比8.6%の増収となりました。豪ドルに対して円安が進行した影響がありました。営業利益は40億円と、前年度比で6億円の増益となりました。インフラサービスが増益となりました。

③ 財政状態
<要約連結財政状態計算書>(億円)
前年度末
(2017年3月31日)
当年度末
(2018年3月31日)
前年度末比
資産
流動資産18,42418,672248
非流動資産13,49012,542△948
資産合計31,91431,215△699
負債
流動負債14,31913,226△1,093
非流動負債7,4035,939△1,463
負債合計21,72219,166△2,556
資本
自己資本8,81210,8772,065
非支配持分1,3791,171△208
資本合計10,19212,0491,857
負債及び資本合計31,91431,215△699

現金及び現金同等物3,8064,525718
有利子負債4,8674,022△844
ネット有利子負債1,060△502△1,562

(注)自己資本 :親会社の所有者に帰属する持分合計
有利子負債 :社債、借入金及びリース債務等
ネット有利子負債 :有利子負債-現金及び現金同等物
(ご参考)財務指標
前年度末
(2017年3月31日)
当年度末
(2018年3月31日)
前年度末比
自己資本比率27.6%34.8%7.2%
D/Eレシオ0.55倍0.37倍△0.18倍
ネットD/Eレシオ0.12倍△0.05倍△0.17倍

(注)自己資本比率 :親会社の所有者に帰属する持分合計(自己資本)÷資産合計
D/Eレシオ :有利子負債÷親会社の所有者に帰属する持分合計(自己資本)
ネットD/Eレシオ :(有利子負債-現金及び現金同等物)÷親会社の所有者に帰属する持分合計(自己資本)
(ご参考)確定給付型退職給付制度の状況 (億円)
前年度末
(2017年3月31日)
当年度末
(2018年3月31日)
前年度末比
a.確定給付制度債務△24,389△24,137252
b.年金資産21,50921,984475
c.積立状況 (a)+(b)△2,880△2,152727

当年度末の資産合計は3兆1,215億円と、前年度末から699億円減少しました。流動資産は1兆8,672億円と、前年度末から248億円増加しました。現金及び現金同等物は4,525億円と、前年度末から718億円増加しました。3月末に携帯電話事業の譲渡収入があったことなどによります。棚卸資産は2,416億円と、前年度末から515億円減少し、資産効率を示す月当たり回転数は1.21回と、前年度末から0.06ポイント改善しました。非流動資産は1兆2,542億円と、前年度末から948億円減少しました。有形固定資産及び無形資産がカーエレクトロニクス製造子会社である富士通テン株式会社を株式会社デンソーに譲渡した影響や減価償却が進んだ影響などにより、それぞれ710億円、232億円減少しました。
負債合計は1兆9,166億円と、前年度末から2,556億円減少しました。流動負債は1兆3,226億円と、前年度末から1,093億円減少しました。仕入債務が富士通テンを譲渡した影響などにより前年度末から767億円減少しました。非流動負債は5,939億円と、前年度末から1,463億円減少しました。社債、借入金及びリース債務が前年度末から878億円減少したほか、株価上昇により年金資産の運用が好調であったことなどにより確定給付型の退職給付制度に係る積立状況(未積立債務)が改善した結果、退職給付に係る負債が510億円減少しました。流動負債及び非流動負債の社債、借入金及びリース債務をあわせた有利子負債は4,022億円と、借入金の返済を進めたほか普通社債を一部償還したことにより前年度末から844億円減少しました。D/Eレシオは0.37倍と、前年度末より0.18ポイント下降しました。有利子負債から現金及び現金同等物を控除したネット有利子負債残高は502億円のマイナスと、前年度末から1,562億円改善しネットキャッシュのポジションに転ずるなど、財務体質の改善を大きく進めることが出来ました。
資本合計は1兆2,049億円と、前年度末から1,857億円増加しました。利益剰余金は4,797億円と、前年度末から2,138億円増加しました。親会社の所有者に帰属する当期利益1,693億円の計上に加え、確定給付型の退職給付制度の積立状況改善による増加影響が654億円ありました。その他の資本の構成要素は566億円と前年度末から149億円減少しました。富士電機株式会社株式の売却に伴う利益剰余金への振替などによります。また、自己株式は72億円のマイナスと、株式会社富士通ビー・エス・シーを完全子会社とする株式交換に伴い前年度末から52億円保有額が減少しました。これらの結果、親会社の所有者に帰属する持分合計(自己資本)は1兆877億円となりました。親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)は34.8%と、前年度末から7.2ポイント上昇しました。
富士通は、経営目標として自己資本比率40%以上を掲げております。従業員の退職給付に係る積立不足額について税効果を調整した上で自己資本から2,464億円控除していることにより、自己資本はまだ十分な水準に達しておりませんが、今後、ビジネスモデルの変革をさらに進め収益性を高めることにより、自己資本を充実させ財務の健全性を高めてまいります。
連結財政状態計算書に計上されないオフバランスの負債は、IAS第17号(リース)に規定される解約不能オペレーティング・リース取引に係る将来の最低リース料総額が1,045億円、IAS第16号(有形固定資産)及びIAS第38号(無形資産)に規定される資産の取得に関する契約上のコミットメントが140億円であります。
従業員の確定給付型退職給付制度の退職給付債務は2兆4,137億円と、前年度末から252億円減少し、年金資産は2兆1,984億円と、前年度末から475億円増加しました。この結果、確定給付型退職給付制度の積立状況(退職給付債務から年金資産を控除した金額)は2,152億円の不足と、前年度末から727億円改善しました。国内制度の積立状況は、株価上昇により年金資産運用が好調であったことなどにより、前年度末から563億円改善しました。海外制度の積立状況は、退職給付債務の減少もあり前年度末から164億円改善しました。海外の主要な確定給付型制度である英国制度においては、退職給付債務とマッチングした年金資産運用を行うため債券を中心としたポートフォリオとし、退職給付債務に対し積立比率が低下するリスクをヘッジしております。なお、確定給付型の退職給付制度の積立状況は、再測定した時点で税効果を調整した上でその他の包括利益で認識し、その他の資本の構成要素から直ちに利益剰余金に振り替えておりますが、当年度末の利益剰余金からの控除額は前年度末から654億円減少しました。
当社グループは2018年6月に、国内の富士通企業年金基金に加入する現役従業員の制度の一部について、より健全で持続可能な退職給付制度とするため、第3の企業年金と呼ばれる会社と従業員が資産運用などのリスクを折半する制度であるリスク分担型企業年金に移行するとともに、年金資産の運用リスクをより一層抑制するためポートフォリオを見直し株式の運用割合を引き下げました。
④ キャッシュ・フロー
<要約連結キャッシュ・フロー計算書>(億円)
前年度
(自 2016年4月 1日
至 2017年3月31日)
当年度
(自 2017年4月 1日
至 2018年3月31日)
前年度比
Ⅰ営業活動によるキャッシュ・フロー2,5032,004△499
Ⅱ投資活動によるキャッシュ・フロー△1,454△2251,229
Ⅰ+Ⅱフリー・キャッシュ・フロー1,0481,778729
Ⅲ財務活動によるキャッシュ・フロー△988△1,124△136
Ⅳ現金及び現金同等物の期末残高3,8394,526687

当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは2,004億円のプラスと、前年度からは499億円の収入減となりました。前年度に引当計上したビジネスモデル変革に伴う人員対策費用の支払などがありました。
投資活動によるキャッシュ・フローは225億円のマイナスとなりました。サービスや電子部品関連設備など有形固定資産の取得やソフトウェアを中心とした無形資産の取得で1,350億円を支出しております。携帯電話事業や、カーエレクトニクス製造子会社である富士通テン株式会社の譲渡収入、富士電機株式会社株式の売却収入があったことなどにより、前年度からは1,229億円の支出減となりました。
営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは1,778億円のプラスと、前年度からは729億円の収入増となりました。ビジネスモデル変革の「形を変える」取り組みに取り組んだ結果がキャッシュ・フローにも表れております。
財務活動によるキャッシュ・フローは1,124億円のマイナスとなりました。借入金の返済を進めたほか社債の償還がありました。前年度からは136億円の支出増となりました。
この結果、現金及び現金同等物の期末残高は前年度末から687億円増加し、4,526億円となりました。
当社グループは、資金需要に応じた効率的な資金調達を確保するため、手許流動性を適切な水準に維持することを財務活動上の重要な指針としております。手許流動性は、現金及び現金同等物と、複数の金融機関との間で締結したコミットメントライン契約に基づく融資枠のうち未使用枠残高の合計額であります。当年度末の手許流動性は6,048億円で、現金及び現金同等物を4,526億円、コミットメントライン未使用枠を1,522億円保有しております。
当社は、グローバルに資本市場から資金調達するため、ムーディーズ・インベスターズ・サービス(以下、ムーディーズ)、スタンダード&プアーズ(以下、S&P)及び株式会社格付投資情報センター(以下、R&I)から債券格付けを取得しております。当年度末現在における格付け(長期/短期)は前年度末から変更なく、ムーディーズ:A3(長期)、S&P:BBB+(長期)、R&I :A(長期)/a-1(短期)であります。
当年度の有形固定資産の設備投資額は940億円(前年度比22.1%減)になりました。テクノロジーソリューションでは、国内外のデータセンターやクラウドサービス設備などを中心に461億円(前年度比26.3%減)を投資しております。国内データセンターの設備投資が一巡したことなどにより、前年度からは164億円減少しました。ユビキタスソリューションでは、74億円(前年度比57.0%増)を投資しております。パソコンおよび携帯電話事業の製造及び設計開発設備に投資しております。デバイスソリューションでは、LSIの製造設備のほか、電子部品のうち半導体パッケージの製造設備などに329億円(前年度比24.9%減)を投資しております。また、上記セグメント以外では74億円の設備投資を行っております。
なお、当年度後1年間の設備投資計画は、第3「設備の状況」3「設備の新設、除却等の計画」にて記載しております。
⑤ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。なお、当年度におけるセグメントごとの販売実績は、(1)②(ⅵ)セグメント情報にて記載しております。
⑥ 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、国際会計基準(以下、IFRS)に準拠して作成しております。当社の連結財務諸表に適用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 3. 重要な会計方針」をご参照ください。
IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営陣は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用に影響を与える判断、見積り及び仮定を必要としておりますが、実際の結果と異なる場合があります。また、見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直されます。会計上の見積りの見直しによる影響は、その見積りを見直した連結会計期間及び影響を受ける将来の連結会計期間において認識されます。現在の状況と将来の展望に関する仮定は、当社グループにとって制御不能な市場の変化又は状況により変化する可能性があります。こうした仮定の変更は、それが起きた時点で反映しております。経営陣は、以下の会計方針の適用における仮定及び見積りが、連結財務諸表に重要な影響を与えると考えております。
(ⅰ)有形固定資産
有形固定資産の減価償却費は、事業ごとの実態に応じた回収期間を反映した見積耐用年数に基づき、主として定額法で算定しております。将来、技術革新等による設備の陳腐化や用途変更が発生した場合には、現在の見積耐用年数を短縮させる必要性が生じ、連結会計期間あたりの償却負担が増加する可能性があります。また、事業環境の急激な変化に伴う生産設備の遊休化や稼働率低下のほか、事業再編などにより、保有資産から得られる将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合には、減損損失が発生する可能性があります。
(ⅱ)のれん
のれんは、年次で、また、減損の兆候がある場合はその都度、減損テストを行っております。のれんが配分された資金生成単位(Cash Generating Unit。以下、CGU)の回収可能価額が帳簿価額を下回った場合に、減損損失を認識しております。回収可能価額は主に使用価値により算定しております。使用価値は、割引キャッシュ・フロー・モデルにより算定しており、事業計画を基礎とした将来キャッシュ・フローのほか、成長率、各CGUが属するグループ企業の加重平均資本コストを基礎とした割引率等の仮定を使用しております。これらの仮定は、経営者の最善の見積りと判断により決定しておりますが、事業環境の変化等により見直しが必要となった場合、減損損失が発生する可能性があります。
(ⅲ)無形資産
ソフトウェアの減価償却について、市場販売目的のソフトウェアについては、見込有効期間における見込販売数量に基づいて償却しております。自社利用ソフトウェアやその他の無形資産のうち耐用年数を確定できるものは、利用可能期間に基づく定額法により償却しております。事業環境の変化等により、販売数量が当初販売計画を下回る場合や利用可能期間の見直しの結果、耐用年数を短縮させる場合には、連結会計期間あたりの償却負担が増加する可能性があります。
(ⅳ)繰延税金資産
法人所得税の算定に際しては、当社グループが事業活動を行う各国の税法規定の解釈や税法の改正、将来課税所得の金額及び時期など、様々な要因について合理的な見積り及び判断が必要になります。繰延税金資産は、未使用の税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異のうち、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産は連結会計期間末に見直し、一部又は全部の繰延税金資産の便益を実現させるだけの十分な課税所得を稼得する可能性が高くない場合は、繰延税金資産の計上額を減額しております。課税所得が生じる時期及び金額は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があります。また、税制改正により実効税率が変更された場合には、繰延税金資産の残高が増減する可能性があります。
(ⅴ)確定給付型退職給付制度
当社グループは、確定給付型及び確定拠出型の退職給付制度を設けております。確定給付型の退職給付制度の積立状況(確定給付制度債務から制度資産の公正価値を控除した金額)の変動額については、再測定した時点で、税効果を調整した上でその他の包括利益で認識し、その他の資本の構成要素から直ちに利益剰余金に振り替えております。運用収益の悪化により制度資産の公正価値が減少した場合や、制度債務算出にあたっての種々の前提条件(割引率、退職率、死亡率等)が変更され制度債務が増加した場合には、積立状況が悪化し、資本が減少する可能性があります。
(2)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と、当社グループが従前採用していた日本基準により作成した場合の連結財務諸表の主要な差異は以下のとおりであります。なお、当該差異の金額については、当社グループは日本基準に基づく連結財務諸表を作成していないため概算額で記載しております。
[連結貸借対照表]
(退職給付に係る調整累計額)
退職給付に係る負債(資産)の純額(数理計算上の差異)1,466億円は、日本基準ではその他の包括利益累計額に含めて表示されますが、IFRSでは利益剰余金に含めて表示しております。
[連結損益計算書及び連結包括利益計算書]
(退職給付に係る費用)
退職給付に係る負債(資産)の純額(数理計算上の差異)について、日本基準では原則として一定期間で償却しますが、数理計算上の差異として一時の費用としない理由が失われている場合は即時償却いたします。一方、IFRSでは数理計算上の差異は償却しません。過去勤務費用については、日本基準では一定期間で償却されますが、IFRSでは発生時に即時認識されます。利息の計算において、日本基準では退職給付債務に割引率を乗じて算定した利息費用と、年金資産に長期期待運用収益率を乗じて算定した期待運用収益を使用しておりますが、IFRSでは確定給付制度債務の現在価値から制度資産の公正価値を控除した金額に割引率を乗じて算定した利息純額を使用しております。
これらの影響により、IFRSでは日本基準に比べて、売上原価並びに販売費及び一般管理費、税引前利益、税引後その他の包括利益がそれぞれ413億円、288億円、112億円減少しております。
(のれんの償却)
のれんは、日本基準では一定期間で償却されますが、IFRSでは償却されません。IFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費が53億円減少しております。
(非継続事業)
IFRSでは、独立した事業が既に処分されたか又は売却目的保有に分類される要件を満たした時点で、非継続事業に分類します。非継続事業に分類した場合は、当該事業が比較対象期間の開始日から非継続事業に分類されていたものとして、連結損益計算書を再表示します。非継続事業からの売上収益及び営業利益は表示されず、非継続事業からの当期利益のみ表示されます。
カーエレクトロニクス製造子会社である富士通テン株式会社を非継続事業に分類したことに伴い、IFRSでは日本基準に比べて、売上収益、営業利益がそれぞれ2,153億円、115億円減少しております。