有価証券報告書-第159期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度における第3四半期までの世界経済は、米国では雇用環境が堅調に推移しましたが、個人消費の鈍化など経済に減速感が感じられ、欧州では、英国の景気がEU離脱に伴う先行き不透明感などから力強さを欠いたものの、大規模なデモの影響を受けたフランス以外のユーロ圏の国では景況感の改善が見られました。アジアにおいては香港のデモや米中貿易摩擦の影響などにより中国をはじめ多くの国で経済成長が鈍化しました。一方、第4四半期以降は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴い世界経済は大きな影響を受けました。米国では2月中旬頃から企業の景況感悪化が観測され始めていましたが、3月に入って上旬に欧州、中旬に米国で感染が急速に拡大し、経済が急変しました。中国では、2020年1月~3月の実質GDP成長率は前年同期比マイナス6.8%と落ち込みましたが、3月以降経済は正常化に向けて動き始めました。
わが国の経済も、第2四半期までは消費増税前の駆け込み需要などもあり個人消費が堅調に推移しましたが、外需の弱さが継続したことに加え、消費増税や天候不順などにより10月以降景況感が悪化しました。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響が2月初めから次第に現れ、3月に入ると経済活動への影響が顕著になりました。
当社は2025年のあるべき姿に向けて「攻め」の位置付けとなる第7次中期経営計画を策定し、当連結会計年度より推進しております。初年度より海外事業の拡大を加速するためのブランディング投資の強化や、M&A投資による事業領域の拡大、さらにブランド価値向上に結び付く高付加価値製品・サービスの開発などにも取り組みました。
しかしながら、米中貿易摩擦等による電子デバイス市況の低迷と新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、当連結会計年度の連結売上高は、前年度から81億円減少し2,391億円(前年度比3.3%減)となりました。事業別ではウオッチ事業と電子デバイス事業で前年度を下回りましたが、システムソリューション事業は順調に推移いたしました。連結全体の国内売上高は1,375億円(同1.8%減)、海外売上高は1,016億円(同5.3%減)となり、海外売上高割合は42.5%でした。
利益面では、売上高減少による影響のほか、投資の強化に伴い広告宣伝販促費が前年度から約11%増加したことなどにより、営業利益は61億円(同34.7%減)と前年度と比べ32億円減少いたしました。持分法による投資利益の減少などにより営業外収支が前年度から悪化したため、経常利益は前年度を44億円下回る70億円(同38.6%減)となりました。固定資産売却益3億円を特別利益に、海外の退職給付に係る法制度改正に伴う退職給付費用1億円、一部事業の終息に伴う事業構造改善費用2億円、減損損失2億円、さらに感染症拡大に伴う損失3億円など合わせて11億円を特別損失に計上し、法人税等および非支配株主に帰属する当期純利益を控除した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は33億円(同63.3%減)となりました。
また、グループ全体の技術開発力のさらなる強化や、ESG活動の促進、SDGsのサポートの活性化を目指し、子会社であるセイコーインスツル株式会社から研究開発・生産技術開発機能と品質や環境に関する本社機能を2020年4月1日より当社へ移管することといたしました。
なお、当連結会計年度の平均為替レートは1 米ドル108.7 円、1 ユーロ120.8 円でした。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
ウオッチ事業
ウオッチ事業の売上高は、前年度比63億円減の1,354億円(前年度比4.5%減)となりました。
高価格帯ウオッチの大きな市場である香港では、デモの影響などにより環境が悪化しましたが、米国、中国、日本などを中心に高価格帯ウオッチ市場は順調に推移しました。一方、普及価格帯ウオッチ市場については厳しい市況が継続しました。また、2020年2月以降、新型コロナウイルス感染症の拡大により各国のウオッチ市場は大きな影響を受けました。
このような中、当社では、国内外で新たなグランドセイコーブティックをオープンしたほか、2019年8月には東京の銀座に世界初となるセイコー プロスペックスブティックをオープンするなど、第7次中期経営計画の基本方針に掲げたグローバルブランド戦略を推進し、日本・米国・アジアでの売上拡大の加速に取り組みました。
国内の完成品ウオッチビジネスは、第2四半期まで順調に推移し売上高は伸長しました。しかしながら消費増税後の個人消費の低迷や自然災害などの影響に加え、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う幅広い業態での休業や営業時間の短縮、週末の外出自粛などを受けて個人消費が落ち込んだこと、入国規制の強化、他国における海外渡航の禁止・自粛などによりインバウンド需要が減少したことなどにより、売上高は前年度を下回りました。ブランド別には、発売から20周年となるスプリングドライブモデルや50周年となるクオーツモデルを中心に「グランドセイコー」が売上を伸ばしました。グローバルブランドの一つである「セイコー プロスペックス」も第4四半期は伸び悩んだものの、通期では前年水準の売上高を維持することができました。流通別では訪日観光客減少の影響を受けた量販店が伸び悩みましたが、消費増税前の駆け込み需要などで第2四半期まで順調に売上を伸ばしたデパート流通は通期で前年度を上回る売上高となりました。
海外では「グランドセイコー」、「セイコー プロスペックス」を中心にグローバルブランドの伸長が継続し、一部商品の流通変更と為替の影響を除くと完成品ウオッチビジネスの売上高は前年度を上回りました。米国では「グランドセイコー」が堅調に推移し、欧州でもドイツなどで高級流通を中心に売上を拡大しました。アジアでは中国が前年度から大きく売上を伸ばしたほか、台湾やオーストラリアも現地通貨ベースで前年度から増収となりました。
外販ムーブメントビジネスではアナログクオーツムーブメントの需要低迷は継続しましたが、メカニカルムーブメントは順調に推移いたしました。
利益につきましては、売上高の減少などから営業利益は前年度から2億円減少し101億円(同2.2%減)となりました。なお、一部の連結子会社の本社部門に係る費用の配分方法を変更したことにより営業利益が9億円改善しております。
電子デバイス事業
電子デバイス事業の売上高は前年度比37億円減少の517億円(前年度比6.8%減)、営業利益は前年度比8億円減少の6億円(同56.6%減)となりました。中国景気の減速などにより、サーマルプリンタメカニズム製品、インクジェットプリントヘッドなどのプリンタ関連や水晶発振器用ICの売上高が伸び悩みました。一方、第7次中期経営計画の基本方針に沿って得意分野、成長市場分野の重点製品へのポートフォリオの転換に取り組み、小型電池や水晶は売上を伸ばしました。なお、一部の連結子会社の本社部門に係る費用の配分方法を変更したことにより営業利益が10億円改善しております。
システムソリューション事業
システムソリューション事業の売上高は前年度比20億円増加の328億円(前年度比6.6%増)、営業利益は前年度比6億円増加の30億円(同25.4%増)となりました。人手不足の深刻化や消費増税に伴うキャッシュレス化への対応などを背景にIT関連や通信関連市場は好調に推移しました。このような中、電子契約ソリューション、アプリケーション性能管理ソフト、モバイル決済機器・サービスなどが順調に推移したことに加え、個人向け製品などの売上高も伸長しました。利益面でも商品別利益の改善が継続し前年度から増益となりました。
その他
その他の売上高は前年度比12億円増加の295億円(前年度比4.3%増)、営業利益は前年度比3億円減の3億円(同53.2%減)となりました。クロック事業や和光事業での消費増税後の反動に加え、第4四半期の新型コロナウイルス感染症拡大の影響はありましたが、通期の売上高は前年度を上回りました。しかしながら事業構成の変化などにより営業利益は前年度から減少いたしました。
(2) 財政状態
(資産)
当連結会計年度末の総資産は2,999億円となり、前連結会計年度末に比べて30億円の減少となりました。流動資産では、現金及び預金が77億円、受取手形及び売掛金が30億円減少した一方、商品及び製品が48億円、原材料及び貯蔵品が18億円、未収入金が22億円増加したことなどにより、合計で前連結会計年度末より8億円減少の1,381億円となりました。固定資産では、米国を除く在外連結子会社で当連結会計年度の期首よりIFRS第16号「リース」を適用したことなどに伴い有形固定資産が54億円増加しましたが、無形固定資産が12億円、投資その他の資産の投資有価証券が71億円減少し、固定資産合計では前連結会計年度末と比べ21億円減少の1,618億円となりました。
(負債)
負債につきましては、短期借入金が95億円増加し、1年内返済予定の長期借入金が28億円、長期借入金が14億円減少した結果、借入金合計で1,096億円となりました。そのほか、支払手形及び買掛金が45億円、未払金が6億円減少した一方で、IFSR第16号「リース」の適用に伴い流動負債が10億円、固定負債が33億円増加したことなどにより、負債合計では前連結会計年度末と比べ30億円増加し1,957億円となりました。
(純資産)
純資産につきましては、その他有価証券評価差額金が46億円、為替換算調整勘定が16億円減少したことなどにより、合計で前連結会計年度末と比べ61億円減少し1,042億円となりました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は261億円となり、前連結会計年度末と比べて77億円の減少となりました。これは主に以下の要因によるものです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が62億円となり、減価償却費103億円を加え、売上債権の増減額23億円、たな卸資産の増減額△74億円、仕入債務の増減額△43億円、さらに法人税等の支払△17億円などの調整を行った結果、前年度から148億円減少となる27億円のプラス(前年度は175億円のプラス)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出△88億円などにより106億円のマイナス(前年度は70億円のマイナス)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長短借入金の返済および借入がネットで52億円となったことに加えて、リース債務の返済による支出△14億円、配当金の支払△31億円などにより6億円のプラス(前年度は106億円のマイナス)となりました。
なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりであります。
(注)1. 各指標の計算式
-自己資本比率:自己資本 / 総資産
-時価ベースの自己資本比率:株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数) / 総資産
-キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債(短期・長期借入金) / 営業キャッシュ・フロー
-インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー / 利払い
(注)2. 計算に利用した数値のベース
各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
-利払い:連結キャッシュ・フロー計算書の「利息の支払額」を使用しております。
(4) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの主な資金需要は、製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金需要、設備投資や研究開発費、ブランディング費用などの成長及び企業価値向上を目的とした投資需要であり、資金の主な源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー、有利子負債による資金調達であります。
資金の流動性につきましては、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は261億円であり、将来の資金需要に対し適正な水準を確保していると認識しております。また、当社および国内の事業会社においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、グループ全体の資金効率化を図っております。なお、新型コロナウイルス感染症拡大等の環境下においても安定的な経常運転資金枠を確保するため、複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結しております。
当社グループは、2020年3月期より推進している第7次中期経営計画において、その位置づけを「攻め」とし、成長に向けた投資を強化して、「勝ち」という結果に結びつけることを重要な骨子とし、下記を推進しております。
・「攻め」の期間を支える営業キャッシュ・フローの創出、バランスのよい投資キャッシュ・フロー、コストを抑えた財務キャッシュ・フロー、「勝ち」を実現させる投資管理の徹底
・利益の積み上げによる自己資本比率の継続的改善、安定配当の維持
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。
重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりです。また、連結財務諸表の作成にあたっては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性が存在することから、これら見積りの変動により翌年度以降の当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なもの及びその補足事項については以下のとおりです。
固定資産の減損
固定資産の減損処理にあたっては、原則として管理会計上の事業単位で資産をグルーピングし、賃貸用不動産、遊休不動産及び売却予定不動産については、個別物件ごとにグルーピングしております。固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについて、当該資産または資産グループから得られる将来キャッシュ・フローを過去の実績や事業計画等を勘案のうえ合理的に見積り、その総額が帳簿価額を下回る場合には帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては、将来キャッシュ・フロー等の見積りやその前提となる仮定を用いており、今後、経営環境等の変化により前提条件や仮定に変動が生じた場合には、固定資産の減損処理に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当連結会計年度において減損損失を240百万円計上しており、その内容は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係)」に記載のとおりです。
繰延税金資産の回収可能性
各納税主体の将来課税所得を過去の実績や事業計画等を勘案のうえ合理的に見積り、将来の税金負担を軽減する効果を有すると考えられる部分につき回収可能と判断し繰延税金資産を計上しております。今後、経営環境等の変化や関係法令の改正により将来課税所得の見積りに変動が生じた場合には、繰延税金資産の計上額に影響を及ぼす可能性があります。
なお、繰延税金資産の発生の主な原因別の内訳は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(税効果会計関係)」に記載のとおりです。
また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積りにつきましては「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりです。なお、当該見積りは連結財務諸表作成時点の最善の見積りであり、見積りに用いた仮定の不確実性は高く、新型コロナウイルス感染症の収束時期及び経営環境への影響が変化した場合には、翌年度の当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.金額は、製造原価によって算出しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.連結消去後の金額で記載しております。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.連結消去後の金額で記載しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.連結消去後の金額で記載しております。
3.総販売実績に対する割合が100分の10以上の販売先はないため、「主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合」の記載は行っておりません。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度における第3四半期までの世界経済は、米国では雇用環境が堅調に推移しましたが、個人消費の鈍化など経済に減速感が感じられ、欧州では、英国の景気がEU離脱に伴う先行き不透明感などから力強さを欠いたものの、大規模なデモの影響を受けたフランス以外のユーロ圏の国では景況感の改善が見られました。アジアにおいては香港のデモや米中貿易摩擦の影響などにより中国をはじめ多くの国で経済成長が鈍化しました。一方、第4四半期以降は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴い世界経済は大きな影響を受けました。米国では2月中旬頃から企業の景況感悪化が観測され始めていましたが、3月に入って上旬に欧州、中旬に米国で感染が急速に拡大し、経済が急変しました。中国では、2020年1月~3月の実質GDP成長率は前年同期比マイナス6.8%と落ち込みましたが、3月以降経済は正常化に向けて動き始めました。
わが国の経済も、第2四半期までは消費増税前の駆け込み需要などもあり個人消費が堅調に推移しましたが、外需の弱さが継続したことに加え、消費増税や天候不順などにより10月以降景況感が悪化しました。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響が2月初めから次第に現れ、3月に入ると経済活動への影響が顕著になりました。
当社は2025年のあるべき姿に向けて「攻め」の位置付けとなる第7次中期経営計画を策定し、当連結会計年度より推進しております。初年度より海外事業の拡大を加速するためのブランディング投資の強化や、M&A投資による事業領域の拡大、さらにブランド価値向上に結び付く高付加価値製品・サービスの開発などにも取り組みました。
しかしながら、米中貿易摩擦等による電子デバイス市況の低迷と新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、当連結会計年度の連結売上高は、前年度から81億円減少し2,391億円(前年度比3.3%減)となりました。事業別ではウオッチ事業と電子デバイス事業で前年度を下回りましたが、システムソリューション事業は順調に推移いたしました。連結全体の国内売上高は1,375億円(同1.8%減)、海外売上高は1,016億円(同5.3%減)となり、海外売上高割合は42.5%でした。
利益面では、売上高減少による影響のほか、投資の強化に伴い広告宣伝販促費が前年度から約11%増加したことなどにより、営業利益は61億円(同34.7%減)と前年度と比べ32億円減少いたしました。持分法による投資利益の減少などにより営業外収支が前年度から悪化したため、経常利益は前年度を44億円下回る70億円(同38.6%減)となりました。固定資産売却益3億円を特別利益に、海外の退職給付に係る法制度改正に伴う退職給付費用1億円、一部事業の終息に伴う事業構造改善費用2億円、減損損失2億円、さらに感染症拡大に伴う損失3億円など合わせて11億円を特別損失に計上し、法人税等および非支配株主に帰属する当期純利益を控除した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は33億円(同63.3%減)となりました。
また、グループ全体の技術開発力のさらなる強化や、ESG活動の促進、SDGsのサポートの活性化を目指し、子会社であるセイコーインスツル株式会社から研究開発・生産技術開発機能と品質や環境に関する本社機能を2020年4月1日より当社へ移管することといたしました。
なお、当連結会計年度の平均為替レートは1 米ドル108.7 円、1 ユーロ120.8 円でした。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
ウオッチ事業
ウオッチ事業の売上高は、前年度比63億円減の1,354億円(前年度比4.5%減)となりました。
高価格帯ウオッチの大きな市場である香港では、デモの影響などにより環境が悪化しましたが、米国、中国、日本などを中心に高価格帯ウオッチ市場は順調に推移しました。一方、普及価格帯ウオッチ市場については厳しい市況が継続しました。また、2020年2月以降、新型コロナウイルス感染症の拡大により各国のウオッチ市場は大きな影響を受けました。
このような中、当社では、国内外で新たなグランドセイコーブティックをオープンしたほか、2019年8月には東京の銀座に世界初となるセイコー プロスペックスブティックをオープンするなど、第7次中期経営計画の基本方針に掲げたグローバルブランド戦略を推進し、日本・米国・アジアでの売上拡大の加速に取り組みました。
国内の完成品ウオッチビジネスは、第2四半期まで順調に推移し売上高は伸長しました。しかしながら消費増税後の個人消費の低迷や自然災害などの影響に加え、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う幅広い業態での休業や営業時間の短縮、週末の外出自粛などを受けて個人消費が落ち込んだこと、入国規制の強化、他国における海外渡航の禁止・自粛などによりインバウンド需要が減少したことなどにより、売上高は前年度を下回りました。ブランド別には、発売から20周年となるスプリングドライブモデルや50周年となるクオーツモデルを中心に「グランドセイコー」が売上を伸ばしました。グローバルブランドの一つである「セイコー プロスペックス」も第4四半期は伸び悩んだものの、通期では前年水準の売上高を維持することができました。流通別では訪日観光客減少の影響を受けた量販店が伸び悩みましたが、消費増税前の駆け込み需要などで第2四半期まで順調に売上を伸ばしたデパート流通は通期で前年度を上回る売上高となりました。
海外では「グランドセイコー」、「セイコー プロスペックス」を中心にグローバルブランドの伸長が継続し、一部商品の流通変更と為替の影響を除くと完成品ウオッチビジネスの売上高は前年度を上回りました。米国では「グランドセイコー」が堅調に推移し、欧州でもドイツなどで高級流通を中心に売上を拡大しました。アジアでは中国が前年度から大きく売上を伸ばしたほか、台湾やオーストラリアも現地通貨ベースで前年度から増収となりました。
外販ムーブメントビジネスではアナログクオーツムーブメントの需要低迷は継続しましたが、メカニカルムーブメントは順調に推移いたしました。
利益につきましては、売上高の減少などから営業利益は前年度から2億円減少し101億円(同2.2%減)となりました。なお、一部の連結子会社の本社部門に係る費用の配分方法を変更したことにより営業利益が9億円改善しております。
電子デバイス事業
電子デバイス事業の売上高は前年度比37億円減少の517億円(前年度比6.8%減)、営業利益は前年度比8億円減少の6億円(同56.6%減)となりました。中国景気の減速などにより、サーマルプリンタメカニズム製品、インクジェットプリントヘッドなどのプリンタ関連や水晶発振器用ICの売上高が伸び悩みました。一方、第7次中期経営計画の基本方針に沿って得意分野、成長市場分野の重点製品へのポートフォリオの転換に取り組み、小型電池や水晶は売上を伸ばしました。なお、一部の連結子会社の本社部門に係る費用の配分方法を変更したことにより営業利益が10億円改善しております。
システムソリューション事業
システムソリューション事業の売上高は前年度比20億円増加の328億円(前年度比6.6%増)、営業利益は前年度比6億円増加の30億円(同25.4%増)となりました。人手不足の深刻化や消費増税に伴うキャッシュレス化への対応などを背景にIT関連や通信関連市場は好調に推移しました。このような中、電子契約ソリューション、アプリケーション性能管理ソフト、モバイル決済機器・サービスなどが順調に推移したことに加え、個人向け製品などの売上高も伸長しました。利益面でも商品別利益の改善が継続し前年度から増益となりました。
その他
その他の売上高は前年度比12億円増加の295億円(前年度比4.3%増)、営業利益は前年度比3億円減の3億円(同53.2%減)となりました。クロック事業や和光事業での消費増税後の反動に加え、第4四半期の新型コロナウイルス感染症拡大の影響はありましたが、通期の売上高は前年度を上回りました。しかしながら事業構成の変化などにより営業利益は前年度から減少いたしました。
(2) 財政状態
(資産)
当連結会計年度末の総資産は2,999億円となり、前連結会計年度末に比べて30億円の減少となりました。流動資産では、現金及び預金が77億円、受取手形及び売掛金が30億円減少した一方、商品及び製品が48億円、原材料及び貯蔵品が18億円、未収入金が22億円増加したことなどにより、合計で前連結会計年度末より8億円減少の1,381億円となりました。固定資産では、米国を除く在外連結子会社で当連結会計年度の期首よりIFRS第16号「リース」を適用したことなどに伴い有形固定資産が54億円増加しましたが、無形固定資産が12億円、投資その他の資産の投資有価証券が71億円減少し、固定資産合計では前連結会計年度末と比べ21億円減少の1,618億円となりました。
(負債)
負債につきましては、短期借入金が95億円増加し、1年内返済予定の長期借入金が28億円、長期借入金が14億円減少した結果、借入金合計で1,096億円となりました。そのほか、支払手形及び買掛金が45億円、未払金が6億円減少した一方で、IFSR第16号「リース」の適用に伴い流動負債が10億円、固定負債が33億円増加したことなどにより、負債合計では前連結会計年度末と比べ30億円増加し1,957億円となりました。
(純資産)
純資産につきましては、その他有価証券評価差額金が46億円、為替換算調整勘定が16億円減少したことなどにより、合計で前連結会計年度末と比べ61億円減少し1,042億円となりました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は261億円となり、前連結会計年度末と比べて77億円の減少となりました。これは主に以下の要因によるものです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が62億円となり、減価償却費103億円を加え、売上債権の増減額23億円、たな卸資産の増減額△74億円、仕入債務の増減額△43億円、さらに法人税等の支払△17億円などの調整を行った結果、前年度から148億円減少となる27億円のプラス(前年度は175億円のプラス)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出△88億円などにより106億円のマイナス(前年度は70億円のマイナス)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長短借入金の返済および借入がネットで52億円となったことに加えて、リース債務の返済による支出△14億円、配当金の支払△31億円などにより6億円のプラス(前年度は106億円のマイナス)となりました。
なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりであります。
指標 \ 決算年月 | 2016年3月 | 2017年3月 | 2018年3月 | 2019年3月 | 2020年3月 |
自己資本比率(%) | 28.7 | 29.8 | 34.1 | 36.0 | 34.4 |
時価ベースの自己資本比率(%) | 28.0 | 28.5 | 34.7 | 35.8 | 24.0 |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) | 8.3 | 31.7 | 4.0 | 6.0 | 40.5 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ | 6.9 | 2.4 | 21.6 | 17.7 | 2.7 |
(注)1. 各指標の計算式
-自己資本比率:自己資本 / 総資産
-時価ベースの自己資本比率:株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数) / 総資産
-キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債(短期・長期借入金) / 営業キャッシュ・フロー
-インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー / 利払い
(注)2. 計算に利用した数値のベース
各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
-利払い:連結キャッシュ・フロー計算書の「利息の支払額」を使用しております。
(4) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの主な資金需要は、製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金需要、設備投資や研究開発費、ブランディング費用などの成長及び企業価値向上を目的とした投資需要であり、資金の主な源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー、有利子負債による資金調達であります。
資金の流動性につきましては、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は261億円であり、将来の資金需要に対し適正な水準を確保していると認識しております。また、当社および国内の事業会社においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、グループ全体の資金効率化を図っております。なお、新型コロナウイルス感染症拡大等の環境下においても安定的な経常運転資金枠を確保するため、複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結しております。
当社グループは、2020年3月期より推進している第7次中期経営計画において、その位置づけを「攻め」とし、成長に向けた投資を強化して、「勝ち」という結果に結びつけることを重要な骨子とし、下記を推進しております。
・「攻め」の期間を支える営業キャッシュ・フローの創出、バランスのよい投資キャッシュ・フロー、コストを抑えた財務キャッシュ・フロー、「勝ち」を実現させる投資管理の徹底
・利益の積み上げによる自己資本比率の継続的改善、安定配当の維持
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。
重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりです。また、連結財務諸表の作成にあたっては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性が存在することから、これら見積りの変動により翌年度以降の当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なもの及びその補足事項については以下のとおりです。
固定資産の減損
固定資産の減損処理にあたっては、原則として管理会計上の事業単位で資産をグルーピングし、賃貸用不動産、遊休不動産及び売却予定不動産については、個別物件ごとにグルーピングしております。固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについて、当該資産または資産グループから得られる将来キャッシュ・フローを過去の実績や事業計画等を勘案のうえ合理的に見積り、その総額が帳簿価額を下回る場合には帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては、将来キャッシュ・フロー等の見積りやその前提となる仮定を用いており、今後、経営環境等の変化により前提条件や仮定に変動が生じた場合には、固定資産の減損処理に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当連結会計年度において減損損失を240百万円計上しており、その内容は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係)」に記載のとおりです。
繰延税金資産の回収可能性
各納税主体の将来課税所得を過去の実績や事業計画等を勘案のうえ合理的に見積り、将来の税金負担を軽減する効果を有すると考えられる部分につき回収可能と判断し繰延税金資産を計上しております。今後、経営環境等の変化や関係法令の改正により将来課税所得の見積りに変動が生じた場合には、繰延税金資産の計上額に影響を及ぼす可能性があります。
なお、繰延税金資産の発生の主な原因別の内訳は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(税効果会計関係)」に記載のとおりです。
また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積りにつきましては「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりです。なお、当該見積りは連結財務諸表作成時点の最善の見積りであり、見積りに用いた仮定の不確実性は高く、新型コロナウイルス感染症の収束時期及び経営環境への影響が変化した場合には、翌年度の当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
ウオッチ事業 | 28,674 | 13.0 |
電子デバイス事業 | 35,980 | △5.6 |
システムソリューション事業 | 15,840 | 9.0 |
その他 | 5,082 | △2.5 |
合計 | 85,578 | 2.8 |
(注)1.金額は、製造原価によって算出しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.連結消去後の金額で記載しております。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前期比(%) | 受注残高(百万円) | 前期比(%) |
ウオッチ事業 | 1,224 | △5.8 | 20 | △73.5 |
電子デバイス事業 | 13,264 | △6.8 | 1,276 | △28.3 |
システムソリューション事業 | 12,827 | 7.1 | 2,945 | △2.2 |
その他 | 5,979 | △4.3 | 1,458 | △18.5 |
合計 | 33,296 | △1.4 | 5,701 | △14.4 |
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.連結消去後の金額で記載しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
ウオッチ事業 | 133,759 | △4.7 |
電子デバイス事業 | 47,986 | △8.2 |
システムソリューション事業 | 31,230 | 6.1 |
その他 | 26,173 | 3.6 |
合計 | 239,150 | △3.3 |
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.連結消去後の金額で記載しております。
3.総販売実績に対する割合が100分の10以上の販売先はないため、「主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合」の記載は行っておりません。