有価証券報告書-第160期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/29 14:22
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当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う経済活動の制限で大きく悪化しましたが、6月以降徐々に回復に向かいました。その後、米国では第3四半期の感染症再拡大により景気の回復が一時減速しましたが、第4四半期はワクチン接種の開始により持ち直しました。欧州では感染症再拡大や変異ウイルス拡大の影響等により第3四半期以降、景気の回復に停滞感が見られました。中国では、第4四半期に一部で移動の自粛などが行われたものの、期初から続く景気の回復基調は年度を通して維持されました。その他、半導体輸出が好調な台湾や住宅市場が好調なオーストラリア等でも景気の回復が続いています。
わが国の経済も4月に発令された緊急事態宣言に伴い、デパートや小売店舗など多くの商業施設が閉鎖されたことから急速に縮小いたしましたが、緊急事態宣言解除後、景気は緩やかに回復してきました。今年1月の緊急事態宣言の再発令、延長を受け、個人消費を中心に景気は一時的に停滞したものの、緊急事態宣言の解除によって持ち直しに向けた動きが見られました。
このような状況の中、当社はコロナ禍への対応に注力しつつ、2025年のあるべき姿に向けて第7次中期経営計画の方針を推進いたしました。ウオッチ事業においては新高級ムーブメントならびに新素材を使用した新製品の発売、海外事業の拡大を加速するための組織再編、ブランディング投資の推進を実施したほか、システムソリューション事業ではさらなる多角化に向けて、2020年4月1日付で株式会社コスモを子会社化いたしました。また、外部環境の変化に伴い、グループ全体でビジネスのデジタル化や多様な働き方の実現等にも取り組みました。
これらの結果、第1四半期の終わりから当社の業績も回復に向かいましたが、度重なる経済活動の制限等によって、当連結会計年度の連結売上高は、前年度から364億円減少し2,026億円(前年度比15.3%減)となりました。事業別ではウオッチ事業と電子デバイス事業の売上高が前年度を下回りましたが、システムソリューション事業は事業の多角化やストックビジネス拡大の取組みを進めてきたことが功を奏し前年度を上回る結果となりました。連結全体の国内売上高は1,131億円(同17.7%減)、海外売上高は895億円(同11.9%減)となり、海外売上高割合は44.2%でした。
外部環境の変化に合わせ広告宣伝販促費を前年度に比べ約20%抑えたほか、その他の営業費用も売上高減少に伴う削減や、主に第1四半期に発生した休業時固定費の特別損失への振替え等により減少いたしました。営業利益は第1四半期の営業損失21億円から毎四半期着実に改善し、当連結会計年度の営業利益は21億円(同64.2%減)となりました。営業外収支は、持分法適用関連会社であった半導体事業会社の株式譲渡や持分法適用関連会社の業績悪化で持分法による投資損益が悪化したこと等により、経常利益は前年度を63億円下回る6億円(同91.0%減)となりました。半導体事業会社の株式譲渡益76億円、固定資産売却益10億円および補助金収入6億円等を特別利益に、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う損失36億円を特別損失に計上し、法人税等および非支配株主に帰属する当期純利益を控除した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は34億円(同2.4%増)となりました。
なお、当連結会計年度の平均為替レートは1米ドル106.1円、1ユーロ123.8円でした。

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
ウオッチ事業
ウオッチ事業の売上高は、前年度比304億円減の1,050億円(前年度比22.5%減)となりました。
国内の完成品ウオッチでは4月から5月までの2か月間、緊急事態宣言に伴い小売店舗、商業施設が閉鎖されたこと等により売上高は大きく減少いたしました。緊急事態宣言が解除された6月以降はブランド誕生60周年の「グランドセイコー」や、セイコーダイバーズ55周年となる「セイコー プロスペックス」の記念モデルや新キャリバーを搭載したモデルが好調に推移し、売上高は徐々に回復いたしました。11月以降、新型コロナウイルス感染症の第3波の影響で回復は一時足踏み状態となりましたが、2度目の緊急事態宣言解除後は再び回復に向かい、3月の「グランドセイコー」や「セイコー プロスペックス」などの売上高は、感染症の影響があった前年同月のみならず、前々年同月も上回りました。流通別には量販店の店舗での売上が年度を通して厳しい結果となりましたが、Eコマースは堅調に推移しました。
海外の完成品ウオッチでも、各地のロックダウンが解除された7月以降、多くの国や地域の売上高に回復が見られ、第3四半期の3か月間にはすべての地域で売上高が前年同期を上回りました。ブランド別には「グランドセイコー」や「セイコー プロスペックス」が世界各地で着実に伸長いたしました。米国では、中・高級店の拡大やオンラインを使用した販促活動強化の成果もあり、「グランドセイコー」が牽引し売上高は堅調に回復しました。欧州では、新型コロナウイルス感染症の第2波や変異ウイルスの発生で、11月頃から再びロックダウンが行われた結果、第4四半期の売上は停滞しましたが、英国、ドイツ、オランダ、フランス、イタリア等多くの国でグローバルブランドの当連結会計年度の売上高が前年度から拡大しました。中国では、Eコマースが好調に推移したことに加え、グランドセイコーブティックを含めた実店舗での「グランドセイコー」の売上も拡大し、当連結会計年度の売上高は前年度を大きく上回りました。タイやオーストラリアでもデジタル施策の強化などにより「グランドセイコー」や「セイコー プロスペックス」が伸長し、当連結会計年度の売上高は前年度を超える売上高となりました。9月に台北にグランドセイコーブティックをオープンした台湾では、9月以降ブティックが「グランドセイコー」の売上を牽引し、台湾の下期売上高は前年同期を上回りました。
ウオッチムーブメントの外販ビジネスにつきましては、感染症拡大防止のため第1四半期に政府の要請により海外における製造活動の一部が制限を受け、売上高は大きく落ち込みました。第2四半期以降、回復に向かいましたが、第1四半期の落込みをカバーするには至りませんでした。
外部環境に合わせた投資の見直しや売上高減少に伴う削減等により費用は前年度を下回りましたが、営業利益については前年度から45億円減少し56億円(同44.9%減)となりました。
電子デバイス事業
電子デバイス事業は売上高502億円(前年度比3.0%減)、営業利益13億円(同112.2%増)となりました。大容量サーバー向けや自動車向けの精密切削部品に加え、半導体製造装置向けの高機能金属、医療機器用電池、水晶などが順調に推移しました。上期のプリンタ関連事業は新型コロナウイルス感染症の影響で小売市場向けビジネスが低調でしたが、昨年発売した水性インク対応品の拡販が奏功し、10月以降は産業用のインクジェットプリントヘッドが回復しました。第4四半期3か月間の売上高は、直近3年間の四半期売上高の中では最も高い売上高となりました。
システムソリューション事業
システムソリューション事業の売上高は前年度比12億円増加の341億円(前年度比3.9%増)、営業利益は前年度比5億円増加の35億円(同17.5%増)となりました。コロナ禍によりモバイル製品や外食産業向け支援システム・サービスの需要が減少いたしましたが、デジタル化需要が高まる中で、AIやIoTを活用した新規事業の拡大やデジタル化を支えるネットワーク製品、性能管理サービス等のビジネスが伸長し、さらに、2020年4月に子会社化した株式会社コスモのIoT機器開発等が寄与し、増収増益を達成いたしました。

その他
その他の売上高は前年度比46億円減少の248億円(前年度比15.9%減)、営業損失は40百万円(前年度は営業利益3億円)となりました。新型コロナウイルス感染症拡大による国内での緊急事態宣言を受け約2か月間店舗を閉鎖した和光事業や、デパートや量販店等販売流通の多くが閉鎖されたクロック事業では第1四半期の売上高が大きく落ち込みました。6月以降ビジネスは回復に向かいましたが、第4四半期に再び緊急事態宣言が発令された影響もあり、前年度の売上高を下回りました。
(2) 財政状態
(資産)
当連結会計年度末の総資産は3,196億円となり、前連結会計年度末に比べて196億円の増加となりました。流動資産では、現金及び預金が64億円、受取手形及び売掛金が27億円、仕掛品が17億円、原材料及び貯蔵品が15億円増加し、合計で前連結会計年度末より119億円増加の1,500億円となりました。固定資産では、有形固定資産が91億円増加し、投資その他の資産が11億円減少したこと等により、固定資産合計では前連結会計年度末と比べ77億円増加の1,696億円となりました。
(負債)
負債につきましては、短期借入金が134億円、1年内返済予定の長期借入金が4億円、長期借入金が16億円増加した結果、借入金合計で1,251億円となりました。その他、支払手形及び買掛金が25億円、未払金が24億円減少したこと等により、負債合計では前連結会計年度末と比べ108億円増加し2,065億円となりました。
(純資産)
純資産につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益34億円を計上した他、その他有価証券評価差額金が49億円、為替換算調整勘定が18億円増加したこと等により、合計で前連結会計年度末と比べ88億円増加し1,130億円となりました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は323億円となり、前連結会計年度末と比べて62億円の増加となりました。また、営業活動および投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは△49億円となりました。
これは主に以下の要因によるものです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が64億円となり、減価償却費106億円を加え、仕入債務の増減額△38億円、たな卸資産の増減額△15億円、さらに投資有価証券売却損益△76億円等の調整を行った結果、前年度から1億円増加となる28億円のプラス(前年度は27億円のプラス)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出△177億円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出△13億円、投資有価証券の売却による収入106億円等を計上した結果、78億円のマイナス(前年度は106億円のマイナス)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長短借入金の返済および借入がネットで145億円となった一方、リース債務の返済による支出△17億円、配当金の支払△20億円などがあり104億円のプラス(前年度は6億円のプラス)となりました。
なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりであります。
指標 \ 決算年月2017年3月2018年3月2019年3月2020年3月2021年3月
自己資本比率(%)29.834.136.034.434.9
時価ベースの自己資本比率(%)28.534.735.824.024.2
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)31.74.06.040.543.6
インタレスト・カバレッジ・レシオ2.421.617.72.73.2

(注) 1.各指標の計算式
-自己資本比率:自己資本 / 総資産
-時価ベースの自己資本比率:株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数) / 総資産
-キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債(短期・長期借入金) / 営業キャッシュ・フロー
-インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー / 利払い
(注) 2.計算に利用した数値のベース
各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
-利払い:連結キャッシュ・フロー計算書の「利息の支払額」を使用しております。
(4) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの主な資金需要は、製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金需要、設備投資や研究開発費、ブランディング費用などの成長及び企業価値向上を目的とした投資需要であり、資金の主な源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー、有利子負債による資金調達であります。
資金の流動性につきましては、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は323億円であり、将来の資金需要に対し適正な水準を確保していると認識しております。また、当社および国内の事業会社においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、グループ全体の資金効率化を図っております。さらに、新型コロナウイルス感染症拡大等の不測の事態においても機動的かつ安定的に経常運転資金を確保するため、複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結しております。
なお、当社グループは、2020年3月期より推進している第7次中期経営計画において、その位置づけを「攻め」とし、成長に向けた投資を強化して、「勝ち」という結果に結びつけることを重要な骨子とし、下記を推進しております。
・「攻め」の期間を支える営業キャッシュ・フローの創出、バランスのよい投資キャッシュ・フロー、コストを抑えた財務キャッシュ・フロー、「勝ち」を実現させる投資管理の徹底
・利益の積み上げによる自己資本比率の継続的改善、安定配当の維持
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

(6) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
ウオッチ事業22,284△22.3
電子デバイス事業32,676△9.2
システムソリューション事業14,296△9.8
その他5,2773.8
合計74,535△12.9

(注) 1.金額は、製造原価によって算出しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.連結消去後の金額で記載しております。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)
ウオッチ事業253△79.36△67.1
電子デバイス事業14,1626.83,726191.9
システムソリューション事業16,21126.43,33213.2
その他6,0911.91,406△3.6
合計36,71810.38,47248.6

(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.連結消去後の金額で記載しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
ウオッチ事業103,136△22.9
電子デバイス事業45,075△6.1
システムソリューション事業32,4864.0
その他21,972△16.1
合計202,671△15.3

(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.連結消去後の金額で記載しております。
3.総販売実績に対する割合が100分の10以上の販売先はないため、「主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合」の記載は行っておりません。