有価証券報告書-第77期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/27 11:19
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、英国のEU離脱問題に伴う不透明感の高まりや米国の金融政策の影響が懸念されたものの、緩やかな景気の回復が続きました。米国では雇用や個人消費の改善が続き、設備投資も緩やかに増加するなど、景気は底堅く推移しました。欧州では個人消費が増加し、設備投資も徐々に増加するなど緩やかな景気回復が続きました。また、中国では安定成長を目指す政策効果もあり、景気は持ち直しの動きが続きました。わが国経済におきましては、企業収益や雇用の改善に加え、設備投資や個人消費が持ち直すなど、景気は緩やかな回復基調で推移しました。
当社グループを取り巻く事業環境は、半導体業界では、データセンターの処理量増加やストレージのSSD化に伴うメモリー需要の増加により、メモリーメーカーにおける設備投資が拡大しました。また、高機能スマートフォン向けに、ファウンドリーにおいて微細化投資が継続するとともに、IoT関連のビッグデータ処理用データセンター向けの旺盛な需要を背景に、ロジックメーカーにおいても設備投資が活発化しました。FPD業界では、テレビ用ディスプレーの大型化・高精細化が進み、中国で大型液晶パネル向け投資が高水準で行われたことに加え、韓国や中国において、スマートフォン用の有機EL(OLED)ディスプレー向け投資が活発に行われました。
このような状況の中、当連結会計年度の財政状態および経営成績は以下のとおりとなりました。
a. 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、売上債権やたな卸資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ655億3千3百万円(21.8%)増加し、3,661億9千3百万円となりました。
負債合計は、仕入債務が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ375億6千8百万円(23.8%)増加し、1,953億1千2百万円となりました。
純資産合計は、配当金の支払いや自己株式を取得した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益の計上や保有株式の時価上昇に伴うその他有価証券評価差額金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ279億6千4百万円(19.6%)増加し、1,708億8千万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、46.7%となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度における当社グループの業績につきましては、売上高は3,393億6千8百万円と前連結会計年度に比べ391億3千4百万円(13.0%)増加しました。利益面につきましては、人件費などの固定費が増加したものの、売上の増加などにより、前連結会計年度に比べ、営業利益は89億9千3百万円(26.7%)増加の427億2千5百万円(営業利益率12.6%)、経常利益は413億2千9百万円となりました。また、特別利益において投資有価証券売却益を計上したことなどにより、税金等調整前当期純利益は419億5千2百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ43億3千8百万円(18.0%)増加の285億7百万円となりました。
セグメント別の経営成績は、以下のとおりであります。
(半導体機器事業:SE)
半導体機器事業では、前連結会計年度に比べ、ファウンドリー向けの売上は減少したものの、メモリーメーカーやロジックメーカー向けの売上が増加しました。製品別では枚葉式洗浄装置の売上は減少しましたが、バッチ式洗浄装置やコーターデベロッパーの売上が増加しました。地域別では台湾向けの売上は減少しましたが、韓国や中国、北米向けを中心に売上が増加しました。その結果、当セグメントの売上高は2,271億8千4百万円(前期比10.2%増)となりました。営業利益は、人件費などの固定費が増加したものの、売上の増加や変動費率の改善などにより、前連結会計年度に比べ、69億8千6百万円増加の363億1百万円(前期比23.8%増)となりました。
(グラフィックアーツ機器事業:GA)
グラフィックアーツ機器事業では、CTP装置の売上は減少したものの、POD装置の売上が増加しました。また、インクなどの消耗品の売上増加も寄与したことから、当セグメントの売上高は534億1千4百万円(前期比16.5%増)となりました。営業利益は、売上の増加により、30億6千万円(前期比108.0%増)となりました。
(ディスプレー製造装置および成膜装置事業:FT)
ディスプレー製造装置および成膜装置事業では、国内向けの売上は減少したものの、中国向けの大型パネル用製造装置の売上や韓国、中国向けに有機ELディスプレー用製造装置の売上が増加したことから、当セグメントの売上高は452億5千2百万円(前期比18.8%増)となりました。営業利益は、変動費率の悪化に加え固定費が増加しましたが、売上が増加したことから、45億8千9百万円(前期比4.5%増)となりました。
(プリント基板関連機器事業:PE)
プリント基板関連機器事業では、高機能スマートフォンの需要増加を受け、韓国や台湾を中心に主力の直接描画装置の売上が増加したことから、当セグメントの売上高は121億9千3百万円(前期比36.7%増)となりました。営業利益は、会社分割に伴う一時的な費用負担の増加があったものの、売上が増加したことから、10億1千3百万円(前期比34.8%増)となりました。
(その他事業)
その他事業の外部顧客への売上高は16億2千3百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ58億9千4百万円増加し、508億1千7百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や仕入債務の増加などの収入項目が、売上債権の増加やたな卸資産の増加などの支出項目を上回ったことから、288億7千8百万円の収入(前期は490億2千4百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、研究開発設備等の有形固定資産を取得したことなどにより112億3千万円の支出(前期は58億6千万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払い、自己株式の取得などにより、115億1千2百万円の支出(前期は274億7千9百万円の支出)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
半導体機器事業189,428+15.7
グラフィックアーツ機器事業28,127+17.7
ディスプレー製造装置および成膜装置事業30,349△7.1
プリント基板関連機器事業3,860△27.0
その他事業214+3.1
合計251,980+11.6

(注)1 金額は販売予定価格によっております。
2 上記金額には消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
半導体機器事業267,147+18.5110,374+56.8
グラフィックアーツ機器事業53,653+16.55,090+4.9
ディスプレー製造装置および成膜装置事業63,327+59.159,790+43.3
プリント基板関連機器事業14,001+40.63,388+114.3
合計398,129+23.9178,643+50.7

(注)上記金額には消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
半導体機器事業227,184+10.2
グラフィックアーツ機器事業53,414+16.5
ディスプレー製造装置および成膜装置事業45,252+18.8
プリント基板関連機器事業12,193+36.7
その他事業・調整額1,323+3.1
合計339,368+13.0

(注)1 各セグメントの金額には、セグメント間取引を含んでおります。
2 最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の
とおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 平成28年4月1日
至 平成29年3月31日)
当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.,Ltd.71,85923.948,13114.2

3 上記金額には消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成において採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
また、連結財務諸表の作成にあたって、会計上の見積りを必要とする繰延税金資産、貸倒引当金、製品保証引当金、たな卸資産の評価、固定資産の減損、退職給付に係る会計処理などについては、過去の実績や当該事象の状況を勘案して、合理的と考えられる方法に基づき見積りおよび判断をしております。ただし、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
a. 経営成績等
(売上高)
当連結会計年度における当社グループの売上高は3,393億6千8百万円と前連結会計年度に比べ391億3千4百万円(13.0%)増加しました。
セグメント別の売上高の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(営業利益)
人件費などの固定費が増加したものの、売上の増加などにより、前連結会計年度に比べ、89億9千3百万円(26.7%)増加の427億2千5百万円となりました。
(経常利益)
営業外費用において、為替差損が増加したものの、固定資産除却損が減少したことなどにより、営業外損益は前連結会計年度に比べ3億1千6百万円改善しました。
以上の結果、経常利益は93億9百万円増加の413億2千9百万円となりました。
(税金等調整前当期純利益)
特別利益に計上した保有株式の売却に伴う投資有価証券売却益は前連結会計年度より減少したものの、特別損失に計上した固定資産に係る減損損失が前連結会計年度より減少したことから、特別損益は前連結会計年度に比べ15億8千7百万円改善しました。
以上の結果、税金等調整前当期純利益は108億9千7百万円増加の419億5千2百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税等合計は、税金等調整前当期純利益の増加や一部の連結子会社における繰越欠損金解消に伴う税負担率の上昇などにより、66億2百万円増加し、134億7千1百万円となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、43億3千8百万円増加の285億7百万円となりました。
財政状態の分析は「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
b. 経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因については「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c. 資本の財源及び資金の流動性
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当連結会計年度の所要資金は、自己資金で賄いました。なお、将来の資金安定確保を目的として、総額300億円のコミットメントライン契約を複数の金融機関との間で締結しております。
また、平成30年5月24日開催の取締役会決議により、彦根地区における新棟建設などの生産増強・効率化に向けた設備投資や半導体製造装置事業での先端技術の開発による製品競争力の維持・拡大に向けた研究開発設備投資等を目的として、2022年満期ユーロ円建取得条項付転換社債型新株予約権付社債および2025年満期ユーロ円建取得条項付転換社債型新株予約権付社債を発行し、平成30年6月11日に払込が完了しております。本社債の概要につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 重要な後発事象」に記載のとおりであります。
d. 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、平成30年3月期~平成32年3月期におきまして、中期3カ年経営計画「Challenge 2019」に取り組んでおります。なお、中期3カ年経営計画の進捗状況および指標の達成状況につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
e. セグメント別の経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容
(半導体機器事業:SE)
半導体機器事業では、当連結会計年度は好調な半導体市況を背景に、売上高、営業利益ともに過去最高を更新いたしました。営業利益率についても通期で16.0%、第4四半期には19.6%まで引き上げることができました。
平成31年3月期は、コストに大きく影響する生産工程上流で設計の標準化を進めるとともに、リードタイムの短縮やサプライチェーンマネジメントの強化に取り組むことで、さらなる利益率の改善を目指してまいります。また、半導体市況が右肩上がりに成長する中、お客様へ製品を安定的に供給していくために、彦根事業所内に平成30年12月竣工予定で新工場を建設いたします。新工場では生産キャパシティを確保しつつ、自動化設備を導入し生産効率の向上を追求することで、競争力を高めてまいります。さらに、一部の設備については同じコンセプトのものを既存の工場において先行導入し、生産能力の増強を進めております。
平成31年3月期の事業環境につきましても、メモリー投資が市況を牽引し、ロジックやファウンドリーにおいても当期以上の伸びが期待できます。加えて、パワーデバイスも力強い需要があり、洗浄装置を中心に各アプリケーション向けの拡販に注力してまいります。地域別では、韓国・中国で販売が伸び、台湾も堅調を維持する見通しです。新製品・新事業領域の分野としては、熱処理装置の大きな伸びが期待できます。新製品を投入したフラッシュランプアニール装置に加え、レーザーアニール装置も平成31年3月期から本格的な事業展開に入ります。微細化が進む中、アニール(熱処理工程)の重要性が増すことにより、売上拡大が見込めると考えております。ポストセールスについても、性能向上、安定稼動、生産性向上などお客様にとってメリットのある提案を積極的に行うことにより、売上と利益を伸ばしてまいります。今後につきましても、必要な経営判断が遅れることなく、スピード重視で、製品力の強化、製品ポートフォリオの拡充に継続的に取り組んでまいります。
(グラフィックアーツ機器事業:GA)
グラフィックアーツ機器事業では、CTPの売上は減少したものの、海外でのPODの売上増加や、インク、保守契約など循環型ビジネス(ポストセールス)の強化により、前期比で増収増益となりました。
今後、成長分野のPODでは、特に伸長が見込めるパッケージ印刷で開発・販売強化を進めてまいります。また、循環型ビジネスの安定成長を目指すとともに、中でも、欧州、米国、日本で受賞するなどご好評いただいているSCインク(コート紙対応インク)について、より一層ビジネスに生かしてまいります。
平成31年3月期から、製品群ごとに開発と営業を統轄する事業統轄部制を導入いたしました。この体制でマーケットニーズにすばやく対応して売上を伸ばすとともに、循環型ビジネスでも収益を確保し、中期経営計画の最終年度には営業利益率10%を目指してまいります。
(ディスプレー製造装置および成膜装置事業:FT)
ディスプレー製造装置および成膜装置事業では、当連結会計年度は中国向けの大型パネル用製造装置や韓国・中国向けの有機ELディスプレー用製造装置の売上が増加したことから、前期比で増収増益となり、営業利益率も10%台を確保いたしました。また、リチウムイオン電池製造装置などの新規事業についても、売上が大幅に増加いたしました。
彦根事業所内に平成30年10月竣工予定で新工場を建設いたします。また、中国・常熟市においても新工場を建設いたします。新工場建設の一番の目的は、製造の構造改革を行うことであります。彦根工場では開発・設計やキーユニットの製造など付加価値の高い業務に特化して生産技術を高め、サイズが大きく比較的付加価値が低い部分については中国で生産し輸送費の削減を進めてまいります。
ディスプレー事業では、フレキシブルディスプレーの実現のために、液晶技術から有機EL技術へ変化していくという大きな潮流があります。平成31年3月期にはフレキシブルディスプレーに対応した有機EL製造装置や液晶ではG10以上の大型パネル向けの装置など、製品ラインアップをさらに拡充し、需要に対応してまいります。また、ディスプレー事業に加え新規事業も伸ばすことで、持続可能な事業ポートフォリオへの変革、ビジネス規模拡大を進めてまいります。
(プリント基板関連機器事業:PE)
プリント基板関連機器事業では、当連結会計年度は売上高が初めて100億円を超える121億円となり、営業利益においても10億円を達成いたしました。また、主力の直接描画装置の販売が好調で、特に韓国や台湾などのスマートフォンのメジャーサプライヤーへの納入が実現したことにより、市場でのプレゼンス向上も果たせたと考えております。
今後につきましては、IoTや車載向け、次世代移動通信システム(5G)のサービス開始を意識した基地局サーバー向けの大型基板需要などにより、市場拡大が続くと見込まれます。平成30年6月に次世代回路パターン形成対応の直接描画装置の新機種を投入いたしました。検査装置群においてもAI機能を付加した新機種や子会社化したTrivis社との共同開発による検査装置などを投入して製品ラインアップの拡充を図り、売上高比率を高めてまいります。また、ポストセールスも強化し、中期経営計画の最終年度には営業利益率10%台を目指してまいります。
(その他事業)
検査計測やライフサイエンスの分野につきましては、顧客基盤を固めながら、機能向上モデルやインクジェット式錠剤印刷機、検査計測機などの製品ラインアップの拡充などにより、売上拡大を目指してまいります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。