有価証券報告書-第120期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/24 12:02
【資料】
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【項目】
134項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、経営者は資産・負債、偶発債務ならびに収益・費用の計上において、さまざまな前提条件に基づく見積りを使用しております。これらの項目に関する見積りと判断は、過去の経験やその時の状況において最も合理的と思われる仮定、推測などの要素を勘案し、当社グループの財政状態および経営成績を適正に表示するよう、常にその妥当性の検証を実施しております。
当社グループにおける重要な会計方針および見積りは以下のとおりであります。以下の項目は、多くの不確実な要素が存在する状況において、もっとも適切と考えられる前提条件、情報を通じて実施しておりますが、前提となる客観的な事実や事業環境の変化などにより、見積りと将来の実績が異なる場合があります。
① 債権の評価、貸倒引当金
売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については、主として貸倒実績率により貸倒引当金を計上しております。貸倒懸念債権などの特定の債権については、個別に将来キャッシュ・フローの割引現在価値、担保、保証および取引信用保険による回収見込額の回収可能性を検討し、回収不能見込額について貸倒引当金を計上しております。
② 有価証券および出資金等の評価
長期的な取引関係の維持、国内外における事業戦略の一環として保有する有価証券は保有目的に基づき適切に分類し、評価を実施しております。時価のあるその他有価証券は、主として決算日前1ヵ月間の市場価格等の平均に基づく時価法によっており、評価差額は全部純資産直入法により処理しております。決算期末日において簿価に対して時価が50%以上下落している場合には減損処理を行っております。
時価のないその他有価証券については、移動平均法による原価法により評価しておりますが、投資先の財務内容が著しく悪化し、回復の見込みがないと判断した場合には減損処理を行っております。なお、減損の判断にあたっては、投資先の財政状態に加えて、投資先の属する業界や所在地国・地域などの要因も考慮しております。
③ たな卸資産の評価
たな卸資産の評価は主として移動平均法による原価法(貸借対照表価額については収益性の低下に基づく簿価切下げの方法)によっております。
販売用不動産の評価方法については個別法による原価法(貸借対照表価額については収益性の低下に基づく簿価切下げの方法)によっており、個別物件ごとに評価額を見積もり、簿価の切下げを行っております。
④ 固定資産の減価償却の方法と固定資産の減損
減価償却の方法は、建物および賃貸用固定資産を除く有形固定資産については主として定率法、建物、賃貸用固定資産および無形固定資産に関しては定額法を採用しており、耐用年数は原則として法人税法の規定によっております。リース資産についてはリース期間を耐用年数とし、残存価額を零とする定額法を採用しております。
なお、収益性の低下した固定資産等について、その計上価額を適切に評価するために、保有目的に基づき、あるいは事業用資産であれば独立したキャッシュ・フローまたは管理会計上の区分により、資産のグルーピングを行い、減損の判定を行っております。評価にあたっては、遊休資産および処分予定の資産については正味売却価額、賃貸用不動産を含む事業用資産については正味売却価額あるいは将来キャッシュ・フローを当社グループの資本コストで割引くことにより算定される使用価値のいずれか高い方で行っており、減損処理を行った場合は、減損後の簿価に対して当初の耐用年数に応じた減価償却を行っております。
⑤ 繰延税金資産
当社グループは、一時差異および税務上の繰越欠損金について、税効果会計に係る会計基準に基づき繰延税金資産・負債を計上しております。
繰延税金資産は、合理的に見積もった将来の課税所得やタックスプランニングに基づき、スケジュールされた将来減算一時差異等の金額から算定されており、その実現性・回収性には問題がないと判断しております。ただし、算定した金額は将来の課税所得の見込額が変動した場合やタックスプランニングの進捗状況によって変化し、当社グループの連結財務諸表に影響を与える可能性があります。
⑥ 退職給付に係る負債
当社グループは、確定給付型の制度として、主に確定給付企業年金制度および退職一時金制度を設けております。また、一部の子会社では確定拠出年金制度を設けております。退職給付に係る負債は従業員の退職給付に備えるため、当連結会計年度末における見込額に基づき、退職給付債務から年金資産を控除した額を計上しております。
制度変更等に伴う過去勤務費用は、主としてその発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数による定額法により費用処理しております。
退職給付債務や退職給付費用の見積りにあたっては、割引率、退職率、死亡率、昇給率および制度資産の期待収益率などの年金数理計算の前提条件が含まれており、これらの前提条件が変化した場合には、数理計算上の差異が発生いたします。数理計算上の差異については、各連結会計年度の発生時における従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数による定額法により按分した額をそれぞれ発生の翌連結会計年度から費用処理しております。
未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費用については、税効果を調整のうえ、純資産の部におけるその他の包括利益累計額の退職給付に係る調整累計額に計上しております。
なお、一部の子会社においては、退職給付債務の算定にあたり簡便法を採用しております。
(2) 当連結会計年度における経営成績の分析
売上高
ICTソリューション事業や、油井管加工事業の買収効果、消費税増税前の駆込み需要等により、電子・デバイス、鉄鋼・素材・プラントセグメントを中心に全セグメントで増収となり、前連結会計年度比953億7百万円増収の1兆1,145億39百万円となりました。
売上総利益
前連結会計年度比63億81百万円増益の864億2百万円となりました。
販売費及び一般管理費
事業拡大に伴い、前連結会計年度比48億68百万円増加の666億26百万円となりました。
営業利益
電子・デバイス、食料セグメントが減益であった一方で、鉄鋼・素材・プラントセグメントが増益であったため、前連結会計年度比15億14百万円増益の197億76百万円となりました。
セグメント別にみると、電子・デバイスセグメントでは、携帯電話事業者間の競争激化の影響を受けモバイルソリューション事業が苦戦し減益、また、食料セグメントでは、為替相場の変動を主因とし、減益となりました。一方、鉄鋼・素材・プラントセグメントは、北米での油井管加工事業や石油製品の販売が好調に推移し、増益となりました。
営業外収支
為替差益や持分法による投資利益の増加等により、前連結会計年度比19億41百万円良化し、3億84百万円の利益となりました。
経常利益
営業利益の増加と営業外収支の良化に伴い、前連結会計年度比34億55百万円増益の201億60百万円となりました。
特別損益
有形固定資産売却益などが発生した一方、減損損失などを計上したことから、前連結会計年度比11億61百万円悪化し、10億85百万円の損失となりました。
当期純利益
税金等調整前当期純利益から税金費用と少数株主利益を差し引いた当期純利益は、前連結会計年度比22億35百万円増益の117億99百万円となりました。
(3) 次連結会計年度における見通し
次連結会計年度の世界経済は、引き続き米国の景気拡大、欧州の景気回復が見込まれるものの、中国およびアジア新興国における経済成長率鈍化など、不透明な状況が継続すると予想されます。
わが国経済は、消費税増税前の駆込み需要の反動や円安の一服感がありますが、欧米の景気回復を背景とした輸出増や設備投資の回復が見込まれ、引き続き成長を維持すると思われます。
このような環境のもと、平成27年3月期の業績見通しに関しましては、連結売上高1兆1,500億円、営業利益220億円、経常利益205億円、当期純利益110億円を見込んでおります。
業績見通しの主な前提としては、米ドル円レートを105円、金利水準は平成26年3月末の金利水準と横這い、ないしは緩やかな上昇を見込んでおります。
なお、ここに記載いたしました業績見通しは、有価証券報告書提出日現在における入手可能な情報および将来の業績に影響を与える不確実な要因に係る仮定を前提として算定しております。したがいまして、実際の業績につきましては、今後の内外経済状況や為替相場の変動など様々な状況変化により、記載の見通しとは大きく異なる可能性があることにご留意ください。
報告セグメント別の見通しは以下のとおりです。
① 電子・デバイス
ICTソリューション事業では、インフラ構築ビジネスや仮想化ビジネスなど強みをもつ分野に注力するとともに、独自性のある事業領域への注力により他社との差別化を目指して参ります。また、成長性の高い事業分野への参入に加え、中国や東南アジアなどグローバル市場での事業強化を積極的に推進して参ります。
モバイル事業では、スマートフォンやタブレット端末などのスマートデバイス市場での収益確保を目指していくとともに、法人ビジネス展開や、アジアを中心とした海外展開に注力いたします。
半導体部品・製造装置事業では、アジアを中心とする新興国需要が期待されることから、先端技術への開発段階からの取組みを強化し、販売拡大に注力いたします。
② 食料
食品事業では、これまで注力してきた量販店向け取引や中食・外食産業向け取引における供給販売体制を強化し、取引拡大に引き続き注力いたします。特にアジアでの販売体制を強化し、商量の拡大を図って参ります。
食糧事業では、飼料原料や非遺伝子組換え大豆等の当社が得意とする分野に注力して参ります。サプライチェーンにおける川上分野の体制強化を図り、飼料・穀物の安定供給および国内、アジアを中心とした海外への販路拡大やアジアの食文化発展にあわせたプラットフォーム作りに注力いたします。
③ 鉄鋼・素材・プラント
鉄鋼事業では、北米、アジア等の得意市場において、エネルギーおよび環境関連ビジネス向けに、高強度、耐腐食性を有する、高付加価値商品を中心とした商品を拡販して参ります。
エネルギー事業においては、国内の石油製品取引を中心とした上流から下流までのトータルソリューションの提供を進めて参ります。
化学品事業においては、リチウムイオン電池の原料取引のほか、新素材の開発や環境関連分野の強化を図って参ります。
工作機械・産業機械事業は、国内だけでなくアジアへの拡販にも引き続き注力いたします。プラント事業においては、ODA関連プロジェクトの積極的な受注活動や、風力発電ビジネスなどの再生可能エネルギービジネスにも注力して参ります。
④ 車両・航空
車両・航空事業では、グローバルベースでの拡大が見込まれる二輪車・四輪車市場でのサプライチェーンの構築を推進して参ります。航空宇宙分野では、当連結会計年度において国内での取扱い代理権を取得したカナダのボンバルディア社の旅客機Cシリーズの営業活動にも注力して参ります。また、航空宇宙分野から自動車分野へ波及する最先端技術情報の共有による新規ビジネスの創出にも注力いたします。
(4) 資本の財源および資金の流動性についての分析
① 当連結会計年度における財政状態の分析
財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末比292億73百万円増加の4,284億59百万円となりました。
有利子負債については、前連結会計年度末比49億56百万円減少の1,419億5百万円となりました。また、現金及び預金の残高は、前連結会計年度末に比べ134億46百万円増加し738億67百万円となりました。
純資産については、当期純利益による利益剰余金の積上げや為替相場変動による為替換算調整勘定の良化等により、前連結会計年度末比202億92百万円増加の962億4百万円となり、純資産から少数株主持分を除いた自己資本は、前連結会計年度末比171億38百万円増加の716億57百万円となりました。
その結果、自己資本比率は前連結会計年度末比3.0ポイント改善の16.7%、ネット有利子負債資本倍率(ネットDER)も1.6倍から0.9倍に改善いたしました。
キャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、営業利益の積上げ等により、223億84百万円の収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却による収入の一方で、携帯電話販売会社の買収や有形固定資産の取得等により、11億11百万円の支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済等により、93億51百万円の支出となりました。これらに、現金及び現金同等物に係る換算差額を調整した結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は735億48百万円となり、前連結会計年度末比135億16百万円の増加となりました。
資金調達
当社グループでは、当連結会計年度を初年度とする3ヵ年の中期経営計画(平成25年4月~平成28年3月)の中で重点施策として掲げている「経済環境に左右されない盤石な財務基盤の構築を図る」べく、低コストで安定的な資金調達を基本方針として取り組んでおります。
当社グループの資金調達については、メインバンク、地銀、生損保等の金融機関との良好な関係を背景とした間接金融を中心としております。また、事業展開に伴う必要資金に機動的に対応するため、ならびに不測の金融情勢悪化が再来した場合に対応するために、十分な規模の現金及び預金を保有するとともに、資金需要や金融情勢に応じて、機動的に安全性の高い短期金融商品で運用をしております。
連結ベースでの資金管理については、原則として国内関係会社の資金調達を当社に集中したうえで、資金需要に応じて配分を行うキャッシュマネジメントシステムを導入しております。なお、当連結会計年度末では、連結ベースの有利子負債に占める当社の有利子負債の割合は77%となっております。
このような資金調達活動の結果、当連結会計年度末における有利子負債残高は1,419億5百万円と、前連結会計年度末と比べて49億56百万円減少いたしました。また、上記のとおり、現金及び預金の残高が前連結会計年度末に比べ増加したことにより、当連結会計年度末におけるネット有利子負債残高は680億38百万円と、前連結会計年度末に比べ184億1百万円減少いたしました。
また、当連結会計年度末の有利子負債残高に占める長期借入金(1年以内に返済予定の長期借入金を含む)の比率は74%(当社では94%)と、資金調達の安定性は高いと考えております。
② 次連結会計年度以降における財政状態の見通し
次連結会計年度末の自己資本に関しましては、次連結会計年度に110億円の当期純利益を達成すること等により、800億円程度となる見通しであります。有利子負債残高については、当連結会計年度末と同水準程度を維持し、営業キャッシュ・フローから得られた資金をもとに、更なる成長のための事業投資などを積極的に進めて参る所存であります。
事業投資については、トレーディングを基盤としたお取引先との共生・発展を基本とし、強みとする事業領域において、事業創造のための新規投資を行って参ります。具体的には「ICTソリューション」、「モバイル」、「アジアの食市場」、「北米シェール市場」、「グローバル・モータリゼーション」、「日系メーカー等の海外進出」の6分野を中心として展開して参ります。