有価証券報告書-第73期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/29 14:46
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当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度における医療用医薬品市場は、2020年4月の薬価改定やジェネリック医薬品使用促進をはじめとする医療費抑制策の影響に加えて、国内外の経済活動の停滞を余儀なくされた新型コロナウイルスの感染拡大に伴う患者様の受診抑制の影響や緊急事態宣言下での営業活動自粛の影響を受け、厳しい環境下で推移しました。このような状況において、当社グループは、医療・健康・介護に携わる企業集団として、「非常時においても医薬品等を安定供給する」という当社グループの社会的使命の下、医療提供体制を維持すべく医薬品等の安定供給を最優先とした活動に努めました。また、当社グループの従業員とその家族・お得意先を始めとする関係者の皆様の安全と感染拡大防止のため、時差出勤やテレワークの励行などワークスタイルの変革を図るとともに、パート・派遣社員を含む全従業員に対して当事業年度に必要な枚数のサージカルマスクを配布し、医療関係者・お取引先等に対しても2,500万枚のサージカルマスクを提供するなどの取り組みを行いました。
感染リスクを警戒した受診抑制の拡大が医療機関の経営に影響を与える中、オンライン診療・服薬指導システム「KAITOS(カイトス)」のサービスを開始いたしました。オンラインという安心、安全な環境を提供し、診療を希望する患者様と医療機関をつなぐことで、患者様の健康維持とQOL向上に貢献すべくグループ一体となって取り組んでおります。
物流機能につきましては、東京都が指定する災害時広域輸送基地「京浜トラックターミナル」内に東京都内唯一の医療用医薬品物流センターとして、2020年9月に総合物流センター「TBCダイナベース」(東京都大田区)が稼働いたしました。世界最高水準の自動化技術を導入し、災害時の医薬品配送拠点としての役割も果たすと同時に、コスト効率の改善に寄与する共同物流を国内で初めて実現したセンターとなっております。さらに、医療用医薬品物流センターであった「TBC東京」(東京都品川区)を改築した上で、検査薬を取り扱う「WILL平和島」(東京都大田区)を移管し、2021年3月より「TBC WILL品川」として再稼働させるなど、物流体制の再構築にも取り組みました。
また、このような当社グループの高機能な物流体制、緊急時への対応とこれまでの受託実績を評価いただき、2020年12月10日よりシンバイオ製薬株式会社の抗悪性腫瘍剤トレアキシン®の流通業務を受託しております。更に、金沢大学発の医療系ベンチャー企業である株式会社キュービクスと独占的販売に関する資本業務提携を行い、2020年12月21日より同社の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)検出キットを独占的に販売しております。
当連結会計年度の業績は、売上高1,210,274百万円(前期比4.2%減)、営業利益4,303百万円(前期比75.5%減)、経常利益10,289百万円(前期比56.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益4,989百万円(前期比69.3%減)となりました。
なお、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)を発注者とする医療用医薬品の入札に関し、2020年12月9日に当社連結子会社の東邦薬品株式会社及び当社社員1名が独占禁止法違反容疑で公正取引委員会から刑事告発され、東京地方検察庁により起訴されました。当社グループはこのたびの事態を厳粛に受けとめ、コンプライアンスの再徹底を図り再発防止に全力で努めております。信頼回復に向けて健全かつ透明性の高い事業活動をグループ一体となって推進してまいります。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。なお、当連結会計年度より共創未来ファーマ株式会社を新たに連結子会社としたことに伴い、セグメント区分に医薬品製造販売事業を追加しております。
医薬品卸売事業においては、「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」に基づき、個々の製品価値に見合った単品単価交渉に努めました。また、エンタッチ株式会社との協業によるリモートディテーリングサービスをはじめ、オンライン診療・服薬指導システム「KAITOS」、初診受付サービス、診療予約システムといった接触機会の低減に貢献する顧客支援システム・サービスの提案活動に努めたほか、薬局本部システム「ミザル」を活用した配送回数の最適化や、納品時に検品を行わない「ノー検品」の推進など、お得意先・当社グループ双方の業務効率化に貢献する配送ビジネスモデルの推進に取り組みました。一方で、卸間の価格競争や、新型コロナウイルスへの感染を警戒した患者様の受診抑制の影響を大きく受け、当連結会計年度の業績は、売上高1,162,256百万円(前期比4.3%減)、セグメント利益(営業利益)3,970百万円(前期比78.0%減)となりました。
調剤薬局事業においては、店舗における感染症対策に徹底して取り組み、安全で質の高い医療サービスの提供を行うべく、かかりつけ薬剤師の育成や物販の充実に積極的に取り組みました。また、調剤報酬改定への対応を進めるとともに、薬局本部システム「ミザル」などの顧客支援システムの活用による在庫の適正化や店舗業務の標準化・効率化と経費の全面的な見直しによる収益性の改善に取り組みました。一方で、患者様の受診抑制に伴う処方箋応需枚数の減少もあり、売上高91,098百万円(前期比5.2%減)、セグメント利益(営業利益)2,688百万円(前期比0.4%減)となりました。
医薬品製造販売事業においては、自社で構築した独自の検証システムに基づき製品の品質を厳しく監視することで、高品質・高付加価値な医薬品の安定供給に取り組みました。また、当連結会計年度にジェネリック医薬品12成分36品目を新たに発売し、2021年2月に2成分5品目の製造販売承認を取得するなど引き続き製品ラインナップの拡充を図り、2021年3月末時点での販売製品は83成分202品目となりました。この結果、売上高8,090百万円、セグメント利益(営業利益)729百万円となりました。
治験施設支援事業においては、売上高235百万円(前期比8.2%減)、セグメント損失(営業損失)140百万円、情報機器販売事業においては、売上高790百万円(前期比45.3%減)、セグメント損失(営業損失)540百万円となりました。
(注)1.TBCはToho Butsuryu Center(東邦物流センター)の略称であります。
2.セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高を含んでおります。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績及び受注実績
当社グループの生産実績及び受注実績は、金額的重要性が乏しいため、記載を省略しております。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
前年同期比(%)
医薬品卸売事業(百万円)1,089,35596.4
調剤薬局事業(百万円)12,93488.2
医薬品製造販売事業(百万円)5,521
情報機器販売事業(百万円)891120.4
合計(百万円)1,108,70496.8

(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
前年同期比(%)
医薬品卸売事業(百万円)1,116,22995.7
調剤薬局事業(百万円)91,08995.0
医薬品製造販売事業(百万円)2,250
治験施設支援事業(百万円)23591.8
情報機器販売事業(百万円)46941.4
合計(百万円)1,210,27495.8

(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.前連結会計年度及び当連結会計年度における「主な相手先別販売実績」については、販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先はありませんので記載を省略しております。
(2) 財政状態
① 総資産
当連結会計年度末における当社グループの総資産は、前連結会計年度末に比べて12,354百万円増加し、683,181百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べて8,953百万円増加し、486,911百万円となりました。これは、現金及び預金が8,866百万円増加したこと等によります。 固定資産は、前連結会計年度末に比べて3,400百万円増加し、196,269百万円となりました。これは、有形固定資産が新規連結等もあり1,438百万円、投資有価証券が政策保有株式の売却があったものの時価上昇等により2,198百万円それぞれ増加したこと等によります。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
医薬品卸売事業のセグメント資産は、前連結会計年度末に比べて3,013百万円減少し、511,291百万円となりました。これは、受取手形及び売掛金が増加し、現金及び預金、CMS預け金、商品及び製品がそれぞれ減少したこと等によります。
調剤薬局事業のセグメント資産は、前連結会計年度末に比べて2,150百万円増加し、53,169百万円となりました。これは、CMS預け金が増加したこと等によります。
医薬品製造販売事業のセグメント資産は、新規連結により5,357百万円となりました。
治験施設支援事業のセグメント資産は、前連結会計年度末に比べて153百万円減少し、521百万円となりました。情報機器販売事業のセグメント資産は、前連結会計年度末に比べて683百万円減少し、1,615百万円となりました。
② 負債
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べて5,957百万円増加し、445,775百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べて1,283百万円減少し、376,717百万円となりました。これは、支払手形及び買掛金が1,828百万円増加し、未払法人税等が3,231百万円減少したこと等によります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて7,240百万円増加し、69,058百万円となりました。これは、資産除去債務が1,568百万円、繰延税金負債が1,812百万円、独占禁止法関連損失引当金が4,213百万円それぞれ増加したこと等によります。
③ 純資産
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べて6,396百万円増加し、237,405百万円となりました。これは、利益剰余金が3,126百万円、その他有価証券評価差額金が3,037百万円それぞれ増加したこと等によります。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較し8,869百万円増加しました。その結果、当連結会計年度末の資金残高は88,882百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
① 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果獲得した資金は、8,768百万円(営業活動によるキャッシュ・フローが前期比2,047百万円減少)となりました。これは資金増加要因として、税金等調整前当期純利益10,273百万円を計上、減価償却費6,424百万円、売上債権の減少額1,023百万円、たな卸資産の減少額1,143百万円がありましたが、資金減少要因として、未払消費税等の減少額2,479百万円、法人税等の支払額6,731百万円があったこと等によるものであります。
② 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果獲得した資金は、680百万円(投資活動によるキャッシュ・フローが前期比16,345百万円増加)となりました。これは資金増加要因として、投資有価証券の売却及び償還による収入7,424百万円がありましたが、資金減少要因として、有形固定資産の取得による支出4,141百万円、無形固定資産の取得による支出1,583百万円があったこと等によるものであります。
③ 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果支出した資金は、680百万円(財務活動によるキャッシュ・フローが前期比10,160百万円減少)となりました。これは資金増加要因として、長期借入れによる収入2,800百万円がありましたが、資金減少要因として、長期借入金の返済による支出1,724百万円、配当金の支払額2,468百万円があったこと等によるものであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性について
当社グループの主要な資金需要は、商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに当社グループの設備新設、改修等に係る投資であります。これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、必要に応じて金融機関からの借入及び社債発行等による資金調達にて対応していくこととしております。
手許の運転資金につきましては、当社及び一部の連結子会社等においてCMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)を導入することにより、各社における余剰資金を当社に集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。また、突発的な資金需要に対しては、迅速かつ確実に資金を調達できるようコミットメントライン契約を締結しております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
① 時価のないその他有価証券の評価
当社グループは、時価のないその他有価証券は移動平均法による原価法を採用し、その評価は1株当たり純資産額と取得価額とを比較して1株当たり純資産額が50%を下回っている場合に減損処理の要否を検討しております。減損処理の要否を検討するに当たっては、投資先から事業計画等を入手し、これまでの実績等を勘案してその実質価額が合理的な期間内に回復可能であるか判断しております。
なお、将来の超過収益力等を反映した価額を実質価額とすることが合理的と判断される場合には、当該金額を純資産額に代えて減損処理の要否を検討しております。減損処理の要否を検討するに当たっては、投資先から事業計画等を入手し、これまでの実績等を勘案して、超過収益力等の毀損が生じていないか、または当社グループの投資価値回復計画を作成し、実質価額が取得価額に比して50%超下回るものの、実行可能で合理的な投資価値回復計画があり回復可能性が十分な証拠によって裏付けられるかにより判断しております。
従って、事業計画等が達成されない場合、投資有価証券の減損処理を実施し当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
時価のないその他有価証券の評価のうち、時価のない非連結子会社株式及び関連会社株式の評価は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 独占禁止法関連損失引当金
「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
③ 繰延税金資産の回収可能性の判断
当社グループは、繰延税金資産について四半期毎に回収可能性を検討し、回収可能性がないと考えられる金額に対しては評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断は、業績を踏まえた将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」の企業分類が分類2、分類3に該当する会社は、繰延税金資産の回収可能性を判断する際に、課税所得見込額やタックス・プランニングは予測不能な前提条件の変化など見積り特有な不確実性があるため、見積可能期間は3年でスケジューリングを行っております。
将来の課税所得見込額は業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、繰延税金資産の見直しを行うため法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。
④ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の評価にあたり、各社ごとに資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損処理を実施することとしております。回収可能価額の算定において用いられる資産グループごとの割引前将来キャッシュ・フローは事業計画に基づいて見積りを実施しており、当該事業計画は予測不能な前提条件の変化など見積り特有な不確実性があるため長期的な売上成長率を見込まずに作成しております。固定資産の回収可能価額の評価にあたっては、見積った将来キャッシュ・フローに貨幣の時間価値等を考慮した割引率を用いて算出した割引後将来キャッシュフローもしくは正味売却価額を用いております。
これらの主要な仮定について、市場環境の変化等により見直しが必要となる場合、固定資産の減損が発生し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
⑤ 貸倒引当金の見積り
当社グループは、債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については過去3年間の貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。
相手先の財政状態が悪化しその支払能力が低下した場合、追加引当処理が必要となり、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。