有価証券報告書-第58期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/17 15:36
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【項目】
154項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績及び財政状態の状況
当連結会計年度の世界経済につきましては、新型コロナウイルスの感染蔓延による影響はみられたものの、各国の経済政策の実行等により、プラス成長に転じる兆しが見えてきました。
当社グループの参画しておりますエレクトロニクス産業におきましては、IoT、AI、5G等の情報通信技術の用途の拡がりによるデータ社会への移行を背景とした半導体需要の高まりに伴い、半導体製造装置市場は拡大しております。今後も新型コロナウイルスの影響を注視する必要はありますが、半導体製造装置市場は、さらなる成長が見込まれております。
このような状況のもと、当連結会計年度の経営成績の状況は以下のとおりとなりました。
当連結会計年度の売上高は1兆3,991億2百万円(前連結会計年度比24.1%増)となりました。国内売上高が1,975億6千6百万円(前連結会計年度比22.1%増)、海外売上高が1兆2,015億3千5百万円(前連結会計年度比24.5%増)となり、連結売上高に占める海外売上高の比率につきましては85.9%となりました。
売上原価は8,341億5千7百万円(前連結会計年度比23.5%増)、売上総利益は5,649億4千5百万円(前連結会計年度比25.0%増)となり、売上総利益率は40.4%(前連結会計年度比0.3ポイント増)となりました。
販売費及び一般管理費は2,442億5千9百万円(前連結会計年度比13.8%増)となり、連結売上高に対する比率は17.5%(前連結会計年度比1.6ポイント減)となりました。
これらの結果、営業利益は3,206億8千5百万円(前連結会計年度比35.1%増)となり、営業利益率は22.9%(前連結会計年度比1.9ポイント増)となりました。経常利益は、営業外収益54億9千2百万円、営業外費用40億7千4百万円を加減し3,221億3百万円(前連結会計年度比31.5%増)となりました。
税金等調整前当期純利益は3,170億3千8百万円(前連結会計年度比29.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,429億4千1百万円(前連結会計年度比31.2%増)となりました。
この結果、1株当たり当期純利益は1,562円20銭(前連結会計年度の1株当たり当期純利益は1,170円57銭)となりました。
当連結会計年度のセグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、セグメント利益は、連結損益計算書の税金等調整前当期純利益に対応しております。
・半導体製造装置
前述の情報通信技術の用途の拡がりによって、ロジック/ファウンドリ向け半導体に対する設備投資は、最先端から成熟世代まで、広い範囲での投資が堅調に推移しました。加えて、データ社会への移行を背景に、NANDフラッシュメモリ向け設備投資は、当年度において大きく増加しました。また、調整されていたDRAM向け設備投資においても、当年度後半にかけて需給バランスの改善により回復に転じました。このような状況のもと、当セグメントの当連結会計年度の売上高は1兆3,152億円(前連結会計年度比24.0%増)、セグメント利益は3,625億2千6百万円(前連結会計年度比34.0%増)となりました。
・FPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置
テレビ用大型液晶パネル向けの設備投資は堅調に推移し、モバイル用中小型有機ELパネル向けの設備投資も増加したことで、FPD製造装置市場は前年度比でプラス成長となりました。このような状況のもと、当セグメントの当連結会計年度の売上高は837億7千2百万円(前連結会計年度比26.8%増)、セグメント利益は88億2千3百万円(前連結会計年度比16.7%減)となりました。
・その他
当セグメントの当連結会計年度における売上高は220億8千2百万円(前連結会計年度比13.3%増)、セグメント利益は5億3千4百万円(前連結会計年度比37.2%減)となりました。
また、当連結会計年度末の財政状態の状況は以下のとおりとなりました。
当連結会計年度末の流動資産は、前連結会計年度末に比べ532億1千2百万円増加し、1兆156億9千6百万円となりました。主な内容は、受取手形及び売掛金の増加415億6千6百万円、現金及び預金の増加366億3千2百万円、たな卸資産の増加232億7千9百万円、有価証券に含まれる短期投資の減少634億8千5百万円によるものであります。
有形固定資産は、前連結会計年度末から213億8千7百万円増加し、1,969億6千7百万円となりました。
無形固定資産は、前連結会計年度末から62億4千1百万円増加し、171億6千3百万円となりました。
投資その他の資産は、前連結会計年度末から660億2千6百万円増加し、1,955億3千6百万円となりました。
これらの結果、総資産は、前連結会計年度末から1,468億6千8百万円増加し、1兆4,253億6千4百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ549億1千7百万円減少し、3,276億6千1百万円となりました。主として、前受金の減少536億3百万円によるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ69億1千5百万円増加し、731億4千万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べ1,948億7千万円増加し、1兆245億6千2百万円となりました。主として、親会社株主に帰属する当期純利益2,429億4千1百万円を計上したことによる増加、前期の期末配当及び当期の中間配当1,095億4千2百万円の実施による減少、その他有価証券評価差額金の増加459億9千8百万円によるものであります。この結果、自己資本比率は71.1%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ180億3千3百万円増加し、2,659億9千3百万円となりました。なお、現金及び現金同等物に含まれていない満期日又は償還日までの期間が3ヶ月を超える定期預金及び短期投資455億5千9百万円を加えた残高は、前連結会計年度末に比べ268億5千3百万円減少し、3,115億5千3百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、前連結会計年度に比べ1,072億2千9百万円減少の1,458億8千8百万円の収入となりました。主な要因につきましては、税金等調整前当期純利益3,170億3千8百万円、減価償却費338億4千3百万円がそれぞれキャッシュ・フローの収入となり、法人税等の支払額877億7千2百万円、前受金の減少548億5千1百万円、売上債権の増加377億3千6百万円、たな卸資産の増加172億2千6百万円がそれぞれキャッシュ・フローの支出となったことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローにつきましては、主として有形固定資産の取得による支出538億6百万円、短期投資の減少による収入350億円により、前連結会計年度の159億5千1百万円の収入に対し182億7千4百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローにつきましては、主に配当金の支払1,095億4千2百万円により、前連結会計年度の2,503億7千4百万円の支出に対し1,145億2千5百万円の支出となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは、市場の変化に柔軟に対応して生産活動を行っており、生産の実績は販売の実績と傾向が類似しているため、記載を省略しております。受注の実績については、短期の受注動向が顧客の投資動向により大きく変動する傾向にあり、中長期の会社業績を予測するための指標として必ずしも適切ではないため、記載しておりません。また、販売の実績については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績及び財政状態の状況」における各セグメントの業績に関連付けて説明しております。
なお、主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
相手先販売高
(百万円)
割合
(%)
Intel Corporation230,34020.4
Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Ltd.187,89016.7
Samsung Electronics Co., Ltd.120,12710.7

当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
相手先販売高
(百万円)
割合
(%)
Samsung Electronics Co., Ltd.256,65618.3
Intel Corporation193,70613.8
Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Ltd.164,34011.7

(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2 販売高には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売高を含めております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書の提出日現在において判断したものであります。
① 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績については、半導体製造装置市場及びFPD製造装置市場のいずれも、顧客による積極的な設備投資を背景に、過去最高となる1兆3,991億2百万円(前連結会計年度比24.1%増)となりました。
営業利益も、売上高の大幅な増加に伴い、3,206億8千5百万円(前連結会計年度比35.1%増)となり、営業利益率は前連結会計年度比1.9ポイント増の22.9%となりました。これは主に、注力分野における売上増加に伴う売上総利益率の上昇と、売上増加に伴う販売費及び一般管理費比率の減少によるものです。なお、研究開発費の総額は、中期経営計画で目標としている財務モデルの達成に向けて、また将来の更なる成長を目指して、前連結会計年度から163億8千万円増加(前連結会計年度比13.6%増)し、過去最高の1,366億4千8百万円となりました。
営業利益に、営業外損益及び特別損益を反映し、税金費用を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は2,429億4千1百万円となり、売上高に対する比率は、前連結会計年度から1.0ポイント上昇し、17.4%となりました。1株当たり当期純利益は、利益増に加えて前連結会計年度において実施した自己株式の取得の影響を受け、1,562円20銭となりました。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、当社グループでは売上高、営業利益率、ROE(自己資本利益率)を中期経営計画上の財務モデルにおける指標として使用しております。
具体的には、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 ⑥ 目標とする経営指標」に記載のとおりであります。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、セグメント利益は、連結損益計算書の税金等調整前当期純利益に対応しております。
・半導体製造装置
当セグメントの当連結会計年度における事業環境は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績及び財政状態の状況」に記載のとおりであります。当セグメントの当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度比24.0%増の1兆3,152億円となりました。顧客による新規装置への設備投資が積極的に展開される中、注力分野における販売戦略が順調に進捗した結果、ロジック/ファウンドリ、NANDフラッシュメモリ向けを中心に、当連結会計年度の売上高は大きく増加しました。加えて、中古装置や改造、パーツ・サービスの売上高も、累積出荷台数の増加と顧客の高い装置稼動に伴い、着実に成長しました。
セグメント利益率については、当連結会計年度は27.6%と、前連結会計年度の25.5%から2.1ポイント上昇しました。売上高の急激な増加により固定費比率が低下したことが、主な要因であります。
・FPD製造装置
当セグメントの当連結会計年度における事業環境は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績及び財政状態の状況」に記載のとおりであります。当セグメントの当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度比26.8%増の837億7千2百万円となりました。モバイル用中小型有機ELパネル向け設備投資の増加に加えて、テレビ用大型液晶パネル向けの設備投資も堅調に推移した結果、当セグメントの売上高も大きく伸長しました。
セグメント利益率については、当連結会計年度は10.5%と、前連結会計年度の16.0%から5.5ポイント低下しました。これは主に、一時的に工場稼動率が低下した前連結会計年度において製作された在庫が、当連結会計年度において売上原価として実現したことが要因であります。
② 財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容、並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
財政状態については、当連結会計年度末における総資産が1兆4,253億6千4百万円となり、前連結会計年度末から1,468億6千8百万円増加しました。これは主に、売上債権、たな卸資産、有形固定資産と、投資その他の資産に含まれる投資有価証券の増加によるものです。売上債権は、半導体製造装置市場の急激な成長を背景に、第4四半期において売上が大きく増加したことにより、前連結会計年度末から415億6千6百万円増加し1,917億円となりました。たな卸資産は、翌連結会計年度以降も引き続き装置・パーツの需要が旺盛な状況を反映して、また生産の平準化等の施策も織り込んだ結果、前連結会計年度末から232億7千9百万円増加し4,153億4千4百万円となりました。有形固定資産は、生産能力の増強を目的とした山梨及び東北工場の新棟竣工に加えて、宮城工場において技術革新センターを建設中であること等を反映し、前連結会計年度末から213億8千7百万円増加し1,969億6千7百万円となりました。投資有価証券は、政策的に保有している上場株式の時価評価額が上昇したことにより、前連結会計年度末から666億9千万円増加し1,050億6千5百万円となりました。これらの要因により、総資産は前連結会計年度末から増加しましたが、売上高がそれを上回って増加したことにより、総資産回転日数(注)は前連結会計年度末の414日から372日へ減少し、資産効率は改善しております。
キャッシュ・フローについては、現金及び現金同等物に、満期日又は償還日までの期間が3ヶ月を超える定期預金及び短期投資を加えた残高は、前連結会計年度末から268億5千3百万円減少し、3,115億5千3百万円となりました。これは主に、前連結会計年度の第4四半期において装置出荷が集中し、当連結会計年度の売上に対応する顧客からの入金の一部が、前連結会計年度末に前受金として計上されていたことによります。
事業の拡大に伴い、たな卸資産の水準が高止まりするなど、必要な運転資本が増加するなか、需要増に備えた生産体制の増強、研究開発等への成長投資を継続しました。一方で、当社グループの株主還元政策である配当性向50%に基づき、1,095億4千2百万円を株主に還元しました。これらは、事業運営を通じて獲得した手元資金によって賄っております。引き続き、高利益率によって作り上げた強固な財務基盤を維持しながら、将来への成長投資と積極的な株主還元に取り組んでまいります。
なお、経営指標の一つであるROE(自己資本利益率)については、親会社株主に帰属する当期純利益の対売上高比率の上昇、及び総資産回転日数の減少により、前連結会計年度の21.8%から26.5%へ上昇し、資本効率は改善する結果となりました。
(注) 総資産回転日数=当連結会計年度末の総資産÷当連結会計年度の売上高×365
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りの仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症が会計上の見積りに与える影響は、半導体製造装置市場が引き続き拡大基調にあること、生産体制及び部品調達・供給体制等における当社グループの機動的な対応により、現時点においては限定的と認識しています。