有価証券報告書-第57期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/23 15:14
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166項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績及び財政状態の状況
当連結会計年度の世界経済につきましては、米国をはじめとして総じて堅調に推移してきたものの、新型コロナウイルスの感染が広がり、その先行きには不透明感が出てきております。
当社グループの参画しておりますエレクトロニクス産業におきましては、次世代通信規格(5G)対応のスマートフォンの本格的な普及を見据えた高性能プロセッサの需要増に加え、データセンター向けのメモリ投資も回復傾向にあり、半導体製造装置市場は拡大基調に転じております。今後とも新型コロナウイルスの影響を注視する必要はありますが、半導体製造装置市場は引き続き成長が見込まれております。
このような状況のもと、当連結会計年度の経営成績の状況は以下のとおりとなりました。
当連結会計年度の売上高は1兆1,272億8千6百万円(前連結会計年度比11.8%減)となりました。国内売上高が1,618億1千2百万円(前連結会計年度比22.5%減)、海外売上高が9,654億7千4百万円(前連結会計年度比9.7%減)となり、連結売上高に占める海外売上高の比率につきましては85.6%となりました。
売上原価は6,753億4千4百万円(前連結会計年度比10.2%減)、売上総利益は4,519億4千1百万円(前連結会計年度比14.1%減)となり、売上総利益率は40.1%(前連結会計年度比1.1ポイント減)となりました。
販売費及び一般管理費は2,146億4千9百万円(前連結会計年度比0.4%減)となり、連結売上高に対する比率は19.1%(前連結会計年度比2.2ポイント増)となりました。
これらの結果、営業利益は2,372億9千2百万円(前連結会計年度比23.6%減)となり、営業利益率は21.0%(前連結会計年度比3.3ポイント減)となりました。経常利益は、営業外収益84億5千2百万円、営業外費用7億6千5百万円を加減し2,449億7千9百万円(前連結会計年度比23.8%減)となりました。
税金等調整前当期純利益は2,446億2千6百万円(前連結会計年度比23.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,852億6百万円(前連結会計年度比25.4%減)となりました。
この結果、1株当たり当期純利益は1,170円57銭(前連結会計年度の1株当たり当期純利益は1,513円58銭)となりました。
当連結会計年度のセグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、セグメント利益は、連結損益計算書の税金等調整前当期純利益に対応しております。
・半導体製造装置
ロジック/ファウンドリ系半導体に対する設備投資は、最先端世代への移行に伴い活発におこなわれ好調に推移しました。また、一時的な調整局面にあったNANDフラッシュメモリ、DRAMについては、期の後半から需給バランスの改善が見られるなど、回復基調に転じており、半導体製造装置市場は堅調に推移しました。このような状況のもと、当セグメントの当連結会計年度の売上高は1兆609億9千7百万円(前連結会計年度比9.1%減)、セグメント利益は2,704億9千6百万円(前連結会計年度比17.2%減)となりました。
・FPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置
テレビ用大型液晶パネル向けの設備投資は継続しておこなわれたものの、モバイル用中小型有機ELパネル向け設備投資においては投資調整が見られるなど、一時的な調整局面にありますが、今後は回復基調に転じるものと見込んでおります。このような状況のもと、当セグメントの当連結会計年度の売上高は660億9千2百万円(前連結会計年度比40.6%減)、セグメント利益は105億8千9百万円(前連結会計年度比56.3%減)となりました。
・その他
当セグメントの当連結会計年度における売上高は194億8千9百万円(前連結会計年度比2.0%増)、セグメント利益は8億5千2百万円(前連結会計年度比17.7%減)となりました。
また、当連結会計年度末の財政状態の状況は以下のとおりとなりました。
当連結会計年度末の流動資産は、前連結会計年度末に比べ204億1千2百万円減少し、9,624億8千4百万円となりました。主な内容は、現金及び預金の減少277億2千8百万円、有価証券に含まれる短期投資の減少265億円、たな卸資産の増加378億4千5百万円によるものであります。
有形固定資産は、前連結会計年度末から255億1千万円増加し、1,755億8千万円となりました。
無形固定資産は、前連結会計年度末から18億6千7百万円増加し、109億2千1百万円となりました。
投資その他の資産は、前連結会計年度末から139億2百万円増加し、1,295億9百万円となりました。
これらの結果、総資産は、前連結会計年度末から208億6千7百万円増加し、1兆2,784億9千5百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ776億9千6百万円増加し、3,825億7千8百万円となりました。主として、前受金の増加580億7千8百万円、支払手形及び買掛金の増加204億8千9百万円によるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ15億9千6百万円増加し、662億2千4百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べ584億2千4百万円減少し、8,296億9千2百万円となりました。主として、自己株式の取得1,540億9千6百万円による減少、前期の期末配当及び当期の中間配当955億1千3百万円の実施による減少、親会社株主に帰属する当期純利益1,852億6百万円を計上したことによる増加によるものであります。この結果、自己資本比率は64.1%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ153億2千4百万円増加し、2,479億5千9百万円となりました。なお、現金及び現金同等物に含まれていない満期日又は償還日までの期間が3ヶ月を超える定期預金及び短期投資904億4千7百万円を加えた残高は、前連結会計年度末に比べ542億2千8百万円減少し、3,384億6百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、前連結会計年度に比べ635億4千5百万円増加の2,531億1千7百万円の収入となりました。主な要因につきましては、税金等調整前当期純利益2,446億2千6百万円、前受金の増加586億3千万円、減価償却費291億7百万円がそれぞれキャッシュ・フローの収入となり、たな卸資産の増加440億6千5百万円、法人税等の支払額418億8千8百万円がそれぞれキャッシュ・フローの支出となったことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローにつきましては、主として短期投資の減少による収入800億円、有形固定資産の取得による支出493億6千9百万円、定期預金の増加による支出104億4千9百万円により、前連結会計年度の840億3千3百万円の支出に対し159億5千1百万円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローにつきましては、主に自己株式の取得による支出1,540億9千6百万円、配当金の支払955億1千3百万円により、前連結会計年度の1,297億6千1百万円の支出に対し2,503億7千4百万円の支出となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは、市場の変化に柔軟に対応して生産活動を行っており、生産の実績は販売の実績と傾向が類似しているため、記載を省略しております。受注の実績については、短期の受注動向が顧客の投資動向により大きく変動する傾向にあり、中長期の会社業績を予測するための指標として必ずしも適切ではないため、記載しておりません。また、販売の実績については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績及び財政状態の状況」における各セグメントの業績に関連付けて説明しております。
なお、主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
前連結会計年度(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)
相手先販売高
(百万円)
割合
(%)
Intel Corporation199,59415.6
Samsung Electronics Co., Ltd.175,31513.7
SK hynix Inc.174,46813.6
Micron Technology, Inc.131,82110.3

当連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
相手先販売高
(百万円)
割合
(%)
Intel Corporation230,34020.4
Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Ltd.187,89016.7
Samsung Electronics Co., Ltd.120,12710.7

(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2 販売高には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売高を含めております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書の提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって採用された重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4 会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。
また、連結財務諸表の作成にあたっては、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示情報に影響を与える見積り及び予測が必要となります。当社グループは、たな卸資産の評価や製品保証費用等について、過去の実績や状況等を勘案し合理的な判断のもと継続的に見積り及び予測を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性により、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、新型コロナウィルス感染症が上記の見積りに与える影響は、半導体製造装置市場が拡大基調にあること、生産体制及び部品調達・供給体制等における当社グループの機動的な対応により、現時点においては限定的と認識しています。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績については、拡大を続ける半導体製造装置市場及びFPD製造装置市場において、顧客の設備投資が調整されたことにより、直近2期で連続して過去最高を更新していた売上高は一時的に減少し、1兆1,272億8千6百万円(前連結会計年度比11.8%減)となりました。
営業利益率は、前連結会計年度比3.3ポイント減の21.0%となりました。これは主に、顧客の投資が調整局面にある状況においても、当社グループの将来における成長機会を最大限取り込むため、研究開発等への成長投資を積極的に継続したことで、研究開発費等の対売上比率が上昇したことによるものです。なお、研究開発費の総額は前連結会計年度から62億8千7百万円増加、過去最高の1,202億6千8百万円となり、売上高に対する比率は前連結会計年度から1.8ポイント上昇し10.7%となりました。
営業利益に、営業外損益及び特別損益を反映し、税金費用を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は1,852億6百万円となり、売上高に対する比率は前連結会計年度から3.0ポイント低下し16.4%となりました。
財政状態及びキャッシュ・フローについては、当連結会計年度末における総資産が1兆2,784億9千5百万円(前連結会計年度末から208億6千7百万円増加)となりましたが、これは主に、たな卸資産と有形固定資産の増加によるものです。たな卸資産の増加は、翌連結会計年度の売上に貢献する出荷済み未設置在庫及び仕掛在庫の増加等によるものです。また、有形固定資産の増加は、山梨・東北工場における新生産棟の建設、及び評価用機械装置の取得等によるものです。設備においても研究開発と同様に、将来の市場成長に備えて積極的な投資を継続しましたが、これらの投資は手元資金で賄っております。このような背景により、総資産回転日数(注)は前連結会計年度末の359日から414日へ上昇しました。
研究開発及び設備等への成長投資を実施したうえで、積極的な株主還元への取り組みとして、業績連動型の配当に加えて、当連結会計年度においては自己株式の取得1,540億9千6百万円を実施しました。その結果、現金及び現金同等物に、満期日又は償還日までの期間が3ヶ月を超える定期預金及び短期投資を加えた残高は、前連結会計年度末から542億2千8百万円減少し、3,384億6百万円となりました。
なお、上述した、親会社株主に帰属する当期純利益の対売上高比率の低下、及び総資産回転日数の上昇により、ROE(自己資本利益率)は前連結会計年度の30.1%から21.8%へ低下しましたが、引き続き20%を超える高い資本効率を維持しております。
(注) 総資産回転日数=当連結会計年度末の総資産÷当連結会計年度の売上高×365
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、当社グループでは売上高、営業利益率、ROE(自己資本利益率)を中期経営計画上の財務モデルにおける指標として使用しております。
具体的には、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 ⑥ 目標とする経営指標」に記載のとおりであります。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、セグメント利益は、連結損益計算書の税金等調整前当期純利益に対応しております。
・半導体製造装置
当セグメントの当連結会計年度における事業環境は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績及び財政状態の状況」に記載のとおりであります。当セグメントの当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度比9.1%減の1兆609億9千7百万円となりました。過去数年続いたメモリ向け生産能力の増強投資が落ち着いたこと、歩留まり向上による顧客の設備投資の一時的な調整、新型コロナウィルスの影響による売上計上の一部遅延は生じましたが、ロジック/ファウンドリ向け装置の強い引合いから、最終的には期初及び期中に発表した会社計画を達成することができました。また、新規装置市場が前年比で下落するなか、中古装置や改造、パーツ・サービスの売上高は、累積出荷台数の増加と顧客の高い装置稼働に伴い、前連結会計年度から増加するなど堅調に推移しています。
セグメント利益率については、当連結会計年度は25.5%と、前連結会計年度の28.0%から2.5ポイント低下しました。将来の成長を見据えた開発・生産体制の増強、及び研究開発費の増加が主な要因であります。
・FPD製造装置
当セグメントの当連結会計年度における事業環境は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績及び財政状態の状況」に記載のとおりであります。当セグメントの当連結会計年度における売上高は、中小型有機ELパネル向け投資が一服したことに加え、新型コロナウィルスの影響による売上計上の一部遅延により、前連結会計年度比40.6%減、660億9千2百万円となりました。当セグメントで最も市場が大きい地域は中国であり、半導体製造装置セグメントよりも新型コロナウィルスの影響を大きく受けました。
セグメント利益率については、当連結会計年度は16.0%と、前連結会計年度の21.8%から5.8ポイント低下しました。売上の大幅な減少により固定費比率が上昇したことが主な要因ですが、下方柔軟性への取り組みの成果により、収益性を維持しております。