有価証券報告書-第59期(令和1年9月1日-令和2年8月31日)
(1)業績等の概要
① 業績
当連結会計年度(2019年9月1日~2020年8月31日)の連結業績は、売上収益が2兆88億円(前期比12.3%減)、営業利益が1,493億円(同42.0%減)と、減収減益となりました。これは主に、下期に新型コロナウイルス感染症の影響で各国・各エリアで数ヶ月間におよぶ店舗の臨時休業を行ったことや、外出自粛による客数減で大幅な減収減益となったためです。また、新型コロナウイルス感染症により業績が悪化したことで、店舗などの減損損失を通期で230億円計上しました。売上総利益率は前期比で0.3ポイント低下、売上高販管費率は同2.8ポイント上昇しました。また、金融損益は、為替差損益や受取利息などをネットで35億円計上しました。この結果、税引前利益は1,528億円(同39.4%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は903億円(同44.4%減)となりました。
当連結会計年度の設備投資は827億円、前期比24億円減となりました。内訳としては、国内ユニクロ事業が178億円、海外ユニクロ事業が235億円、ジーユー事業が85億円、グローバルブランド事業が24億円、システム他が304億円となっています。有明プロジェクトに関わるITシステムや倉庫投資、国内ユニクロ事業のグローバル旗艦店、大型店への投資が増加した一方で、海外ユニクロ事業を中心に出店数が減少したことにより、全体で若干減少しました。
[国内ユニクロ事業]
国内ユニクロ事業の当連結会計年度の売上収益は8,068億円(前期比7.6%減)、営業利益は1,046億円(同2.2%増)と、減収増益となりました。通期の既存店売上高(Eコマースを含む)は、同6.8%減となりました。上期は暖冬の影響で、防寒衣料の販売に苦戦し、前年同期比4.6%減となりました。下期は新型コロナウイルス感染症の影響で、3月下旬から5月上旬にかけて最大で311店舗が臨時休業したこと、外出自粛要請による客数減で、同9.6%減となりました。ただし、店舗の営業を再開した第4四半期3ヶ月間の既存店売上高は、同20.2%増と大幅な増収に転じました。これは、夏物コア商品や、在宅需要にマッチした商品、エアリズムマスクの販売が好調だったことによります。
通期のEコマース売上高は1,076億円、前期比29.3%増、売上構成比は前年の9.5%から13.3%へ上昇しました。特に、下期はデジタル広告やTVCMでEコマースの情報発信を強化したことに加え、アプリ会員特別限定価格を開始したことで、新規顧客が大幅に増加し、下期のEコマース売上高は前年同期比54.7%の大幅な増収となりました。
また、売上総利益率は、商品仕入れの為替レートが円高傾向にあったこと、集客のための過度な値引きを抑制したことで、前期比2.4ポイント改善しました。売上高販管費率は、同1.0ポイント上昇しましたが、前年に対して金額ベースで減少しました。この結果、通期の営業利益は若干の増益を達成することができました。
[海外ユニクロ事業]
海外ユニクロ事業の当連結会計年度の売上収益は8,439億円(前期比17.7%減)、営業利益は502億円(同63.8%減)と、大幅な減収減益となりました。これは、主に新型コロナウイルス感染症の影響を受け、下期に大幅な減収減益になったこと、韓国、米国を中心に海外ユニクロ事業で減損損失を通期で158億円計上したことによります。ただし、Eコマース事業は、約2割増収と、各国・各エリアで順調に拡大しています。
地域別では、グレーターチャイナは、売上収益が4,559億円(同9.3%減)、営業利益が656億円(同26.3%減)と、減収、大幅な減益となりました。ただし、LifeWearのコンセプトが浸透し、生活に欠かせない必需品として、お客様から支持をいただいていることから、3月以降は想定を上回るペースで業績が回復しました。特に、Eコマース売上高は、前期比約2割増収と好調でした。その他アジア・オセアニア地区(東南アジア・オーストラリア・インド)は、売上収益は約1,500億円(同約13%減)、営業利益は約40%減となりました。これは主に、上期は2桁の増収増益と好調だったものの、下期は新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けたためです。フィリピン、インドネシアは新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、売上回復に時間がかかっているものの、その他の国では、6月以降から順調に売上が回復しています。韓国は、日韓関係の影響に加え、新型コロナウイルス感染症の影響により既存店売上高は大幅な減収、営業利益は赤字となりました。北米は、3月中旬から6月末までほとんどの店舗で臨時休業、6月以降も社会情勢の変化や感染再拡大の影響で、大幅な減収、赤字幅は大幅に拡大しました。欧州も、多くの店舗が臨時休業したことに加え、観光客が大幅に減少するなど、新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、減収、若干の赤字となりました。
なお、2019年9月にはイタリア初の店舗をミラノに、同年10月にはインド初の店舗をニューデリーに、同年12月にはベトナム初の店舗をホーチミンに出店しました。新型コロナウイルス感染症の影響を受けたものの、イタリアは通期で黒字を達成しているほか、12月に営業を開始したベトナムは下期に黒字を達成することができました。
[ジーユー事業]
ジーユー事業の当連結会計年度の売上収益は2,460億円(前期比3.1%増)、営業利益は218億円(同22.5%減)と、増収減益となりました。
国内ジーユー事業は、上期はマストレンドを捉えたニットや薄手のアウターの販売が好調で、既存店売上高(Eコマースを除く)は増収となりましたが、下期に新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことで、通期では前期比5.2%減収となりました。ただし、第4四半期3ヶ月間は、売上収益が順調に回復し、既存店売上高は前年同期比2.2%の増収となりました。特に、マストレンドを捉えた商品や在宅需要にマッチした商品の販売が好調でした。通期のEコマース売上高は、人気商品の欠品率の改善や情報発信の強化により、前期比約6割増収と好調でした。通期の売上総利益率は、前年のハードルが高かったことに加え、春夏商品の在庫消化を進めたことで、前期比0.7ポイント低下しました。通期の売上高販管費率は、同1.8ポイント上昇しましたが、これは下期に売上収益が減少したことによります。
[グローバルブランド事業]
グローバルブランド事業の当連結会計年度の売上収益は1,096億円(前期比26.9%減)、営業利益は127億円の赤字(前期は36億円の黒字)と、大幅な減収減益となりました。これは主に、欧米で新型コロナウイルス感染症の影響が大きかったことから、コントワー・デ・コトニエ事業、プリンセス タム・タム事業、J Brand事業の赤字が継続したこと、セオリー事業が赤字に転じたことによります。セオリー事業は、店舗の臨時休業や外出自粛の影響により大幅な減収、値引き販売を強化した結果、営業利益は赤字となりました。プラステ事業も、新型コロナウイルス感染症の影響で減収、営業利益は若干の赤字となりました。コントワー・デ・コトニエ事業は、欧州で約2か月間臨時休業したことなどにより、大幅な減収、赤字が継続しました。
[サステナビリティ(持続可能性)活動]
「服のチカラを、社会のチカラに。」というステートメントのもと、6つの重点領域(マテリアリティ)を中心に、服のビジネスを通じたサステナビリティ活動をグローバルで推進しています。今期の主な活動は以下のとおりです。
■「環境への配慮」:ファーストリテイリンググループ全体で、2020年中にショッピングバッグと商品パッケージのプラスチック使用量85%(約7,800トン)を削減することを目標に、使用量の削減や、再生紙等の環境配慮型素材への切り替えを行っています。また、国内ユニクロでは、資源の有効活用を目的とし、従来より取り組んでいるユニクロ商品の回収に加え、2019年11月からダウンを回収し、取り出した羽毛を新しいダウン商品の素材として再利用する取り組みを開始しました。この他、2020年春夏シーズンより、PETボトル由来のリサイクルポリエステルを使用した高機能速乾ウエア「ドライEX」のポロシャツを東レ株式会社と協同で開発し、販売を開始しました。
■「サプライチェーンの人権・労働環境の尊重」:新型コロナウイルス感染症から生産パートナー及び生産工場の従業員の安心と安全を守るため、工場操業時の感染症対策の指導を徹底すると同時に、工場の休業による賃金補償や雇用等に関する問い合わせ窓口を設置することで、工場従業員が適正な待遇と補償を受けられるよう支援しています。
■「コミュニティとの共存・共栄」:新型コロナウイルス感染症と闘っている医療機関に対して、グローバルで約1,500万点のマスクを寄付した他、日本の医療機関には、アイソレーションガウン(医療現場で使用できる防護具)約120万点を寄付しました。また、社会的に脆弱な立場にある方々や医療機関を支援する団体に、エアリズム、ヒートテック、ダウンジャケット等のユニクロ商品を約52万着(7月末時点)寄付しています。日本では、さまざまな自然災害における支援を実施しています。「令和2年7月豪雨」で被災された九州地方の方々に対して、使い捨てマスク、ユニクロ商品、スニーカー等、約2万点を支援物資として寄付しました。
■「従業員の幸せ」:新型コロナウイルス感染拡大防止のため、店舗では、お客様とスタッフの健康を守ることを最優先とし、スタッフの体調確認、マスク着用や手指消毒などの対策を実施しています。従業員が安心、安全に働ける職場環境づくりのため、マスクや消毒液の提供、換気の強化、職務内容に応じた在宅勤務の推進等を行っています。
■「商品と販売を通じた新たな価値創造」:新型コロナウイルス感染症の予防のため、人々の生活にマスクが不可欠となったことを受け、2020年6月から全世界のユニクロの店舗でエアリズムマスクの発売を開始しています。今後もお客様の声を活かし、より優れたマスクの開発を進めていきます。
■「正しい経営(ガバナンス)」:リスクマネジメント委員会では、新型コロナウイルス感染症対応や、首都直下型地震等の大規模災害リスク、情報セキュリティのリスクと、これらの対応策について議論を重ねています。また、人権委員会では、ハラスメント防止策及び研修プログラムの策定が議論されています。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ、70億円増加し、1兆935億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による収入は、前連結会計年度末に比べ356億円減少し、2,648億円(前期比11.9%減)となりました。これは主として、減価償却費及びその他の償却費1,778億円(前期比1,293億円増)、税引前利益1,528億円(前期比995億円減)、その他の負債の減少額445億円(前期比814億円減)、棚卸資産の増加額26億円(前期比408億円減)、仕入債務の増加額186億円(前期比350億円増)等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金は、前連結会計年度に比べ27億円減少し、759億円(前期比3.5%減)となりました。これは主として、定期預金の純増額52億円(前期比61億円減)、有形固定資産の取得による支出465億円(前期比49億円増)、無形資産の取得による支出210億円(前期比31億円減)等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は、前連結会計年度に比べ808億円増加し、1,832億円(前期比78.9%増)となりました。これは主として、リース負債の返済による支出1,412億円(前期比1,412億円増)、前連結会計年度における社債の償還による支出300億円(前期比300億円減)、短期借入金の借入による収入350億円(前期比178億円減)等によるものです。
(2)販売及び仕入の状況
① 部門別売上状況
(注) 1.FC関連収入とは、フランチャイズ店に対する商品売上高、フランチャイズ店からのロイヤリティ収入であり、補正費売上高とは、パンツの裾上げ(補正)の加工賃及び刺繍プリントによる収入等であります。
2.ユニクロ事業とは、「ユニクロ」ブランドのカジュアル衣料品販売事業であります。
3.ジーユー事業とは、「ジーユー」ブランドのカジュアル衣料品販売事業であります。
4.グローバルブランド事業は、セオリー事業(「Theory(セオリー)」ブランド等の衣料品販売事業)、プラステ事業(「PLST(プラステ)」ブランド等の衣料品販売事業)、コントワー・デ・コトニエ事業(「COMPTOIR DES COTONNIERS(コントワー・デ・コトニエ)」ブランドの衣料品販売事業)、プリンセス タム・タム事業(「PRINCESSE TAM.TAM(プリンセス タム・タム)」ブランドの衣料品販売事業)及びJ Brand事業(「J BRAND(ジェイブランド)」ブランドの衣料品販売事業)で構成されております。
5.その他事業とは、不動産賃貸業等であります。
6.国内ユニクロ事業に含まれるEコマース売上高
前連結会計年度 83,228百万円、当連結会計年度 107,616百万円
7.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
② 単位当たりの売上状況
(注)1.国内・海外ユニクロ事業についてのみ記載しております。
2.売上収益は店舗商品売上高であり、国内ユニクロ事業のEコマース事業・FCに対する商品供給高・経営管理料及び補正費売上高は含まれておりません。
3.売場面積(平均)は、直営店売場の昨年度期末面積数と今年度期末面積数を平均算出しております。
4.従業員数(平均)は、準社員、アルバイト社員、委託社員及び受入出向社員を含み、執行役員を除いております。なお、準社員、アルバイト社員は在籍する年間の平均人員により記載しております。
5.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
③ 仕入実績
(注)1.ユニクロ事業とは、「ユニクロ」ブランドのカジュアル衣料品販売事業であります。
2.ジーユー事業とは、「ジーユー」ブランドのカジュアル衣料品販売事業であります。
3.グローバルブランド事業は、セオリー事業(「Theory(セオリー)」ブランド等の衣料品販売事業)、プラステ事業(「PLST(プラステ)」ブランド等の衣料品販売事業)、コントワー・デ・コトニエ事業(「COMPTOIR DES COTONNIERS(コントワー・デ・コトニエ)」ブランドの衣料品販売事業)、プリンセス タム・タム事業(「PRINCESSE TAM.TAM(プリンセス タム・タム)」ブランドの衣料品販売事業)及びJ Brand事業(「J BRAND(ジェイブランド)」ブランドの衣料品販売事業)で構成されております。
4.上記以外に、その他事業(不動産賃貸業等)がありますが、事業の性格上、仕入は発生しません。
5.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討事項
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、非金融資産の減損、繰延税金資産の回収可能性の判断等につきましては、過去の実績又は各状況下で合理的と判断される前提に基づき見積りを実施しております。
採用している重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績の分析
経営成績の分析については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
(1)業績等の概要」をご参照ください。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
Ⅰ 財務戦略の基本的な考え方
当社グループでは、強固な財務体質を維持しながら、事業活動によりフリー・キャッシュ・フローを最大化し、毎期一定程度の株主還元を維持しつつ、成長投資資金と手許流動性も確保していくことを財務戦略の基本方針としています。
強固な財務体質の維持に関しては、営業キャッシュ・フローにより投資資金を賄うことを原則としつつ、天候不順や新型コロナウイルス感染症といった不測の事態に耐えうる手許流動性を確保していきます。また、安定的な外部調達能力も担保していきます。
Ⅱ 資金のキャッシュ・フロー及び流動性の状況
当社グループでは、アパレル小売業としての特性上、運転資金と天候不順などの不測の事態に備えて月商3~5ヶ月分の手許流動性を確保するよう努めています。当連結会計年度の売上収益2兆88億円に対し、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は1兆935億円となっていますが、将来的に当社グループ事業全体で売上収益3兆円を超える計画に対し、月商4ヶ月分の手許流動性は1兆円であるため、足もとの手許流動性は適正水準であると考えております。
Ⅲ 資金需要の主な内容
当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では、仕入、物流費、広告宣伝費、地代家賃(店舗に係る賃貸料など)、人件費などがあります。
また、投資活動に係る資金支出では、店舗関連投資(新規店舗の出店や既存店舗の改装)のほか、有明プロジェクト推進における物流倉庫投資やIT投資(店舗のセルフレジ、Eコマース、サプライチェーン関連のシステム投資)があります。2021年8月期は、当社グループ全体で、新規店舗の出店投資に300億円、倉庫やITなどその他投資に602億円の設備投資を計画しております(「第3 設備の状況 3設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載しております。)。
Ⅳ 資金調達
当社グループ事業の維持拡大のために必要な資金を安定的且つ機動的に確保するため、事業活動によるフリー・キャッシュ・フローの最大化に努めるとともに、内部資金及び外部資金を有効に活用しています。
強固な財務体質を維持すべく、投資資金は、営業キャッシュ・フローにより賄うことを原則としていますが、資金調達の多様化と資本効率の向上を企図し、一部社債調達も活用しています。2018年6月には計2,500億円の社債調達を行い、社債償還資金に充当するとともに、海外事業の拡大や有明プロジェクト推進における投資資金として活用しています。
当社グループでは、安定的な外部資金調達能力の維持向上は重要な経営課題と認識しており、スタンダード&プアーズ(S&P)及び日本格付研究所(JCR)から格付を取得しています。本報告書提出時点において、S&Pの格付は「シングルA(安定的)」、JCRの格付は「ダブルA(安定的)」となっております。また、主要な取引先金融機関とは良好な取引関係を維持しております。
新型コロナウイルス感染症拡大による影響により、当連結会計年度は減収減益となりましたが、お取引先様の多大なるご協力を得ながら感染対策を強化したうえでの営業活動の継続、経費削減や在庫消化に努めることにより、追加の外部調達を行うことなく、十分な手許流動性を確保できています。
今後も新型コロナウイルス感染症による環境変化を注視しながら、強固な財務体質を維持するとともに、安定的な外部資金調達能力の維持向上に努めていきます。
① 業績
当連結会計年度(2019年9月1日~2020年8月31日)の連結業績は、売上収益が2兆88億円(前期比12.3%減)、営業利益が1,493億円(同42.0%減)と、減収減益となりました。これは主に、下期に新型コロナウイルス感染症の影響で各国・各エリアで数ヶ月間におよぶ店舗の臨時休業を行ったことや、外出自粛による客数減で大幅な減収減益となったためです。また、新型コロナウイルス感染症により業績が悪化したことで、店舗などの減損損失を通期で230億円計上しました。売上総利益率は前期比で0.3ポイント低下、売上高販管費率は同2.8ポイント上昇しました。また、金融損益は、為替差損益や受取利息などをネットで35億円計上しました。この結果、税引前利益は1,528億円(同39.4%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は903億円(同44.4%減)となりました。
当連結会計年度の設備投資は827億円、前期比24億円減となりました。内訳としては、国内ユニクロ事業が178億円、海外ユニクロ事業が235億円、ジーユー事業が85億円、グローバルブランド事業が24億円、システム他が304億円となっています。有明プロジェクトに関わるITシステムや倉庫投資、国内ユニクロ事業のグローバル旗艦店、大型店への投資が増加した一方で、海外ユニクロ事業を中心に出店数が減少したことにより、全体で若干減少しました。
[国内ユニクロ事業]
国内ユニクロ事業の当連結会計年度の売上収益は8,068億円(前期比7.6%減)、営業利益は1,046億円(同2.2%増)と、減収増益となりました。通期の既存店売上高(Eコマースを含む)は、同6.8%減となりました。上期は暖冬の影響で、防寒衣料の販売に苦戦し、前年同期比4.6%減となりました。下期は新型コロナウイルス感染症の影響で、3月下旬から5月上旬にかけて最大で311店舗が臨時休業したこと、外出自粛要請による客数減で、同9.6%減となりました。ただし、店舗の営業を再開した第4四半期3ヶ月間の既存店売上高は、同20.2%増と大幅な増収に転じました。これは、夏物コア商品や、在宅需要にマッチした商品、エアリズムマスクの販売が好調だったことによります。
通期のEコマース売上高は1,076億円、前期比29.3%増、売上構成比は前年の9.5%から13.3%へ上昇しました。特に、下期はデジタル広告やTVCMでEコマースの情報発信を強化したことに加え、アプリ会員特別限定価格を開始したことで、新規顧客が大幅に増加し、下期のEコマース売上高は前年同期比54.7%の大幅な増収となりました。
また、売上総利益率は、商品仕入れの為替レートが円高傾向にあったこと、集客のための過度な値引きを抑制したことで、前期比2.4ポイント改善しました。売上高販管費率は、同1.0ポイント上昇しましたが、前年に対して金額ベースで減少しました。この結果、通期の営業利益は若干の増益を達成することができました。
[海外ユニクロ事業]
海外ユニクロ事業の当連結会計年度の売上収益は8,439億円(前期比17.7%減)、営業利益は502億円(同63.8%減)と、大幅な減収減益となりました。これは、主に新型コロナウイルス感染症の影響を受け、下期に大幅な減収減益になったこと、韓国、米国を中心に海外ユニクロ事業で減損損失を通期で158億円計上したことによります。ただし、Eコマース事業は、約2割増収と、各国・各エリアで順調に拡大しています。
地域別では、グレーターチャイナは、売上収益が4,559億円(同9.3%減)、営業利益が656億円(同26.3%減)と、減収、大幅な減益となりました。ただし、LifeWearのコンセプトが浸透し、生活に欠かせない必需品として、お客様から支持をいただいていることから、3月以降は想定を上回るペースで業績が回復しました。特に、Eコマース売上高は、前期比約2割増収と好調でした。その他アジア・オセアニア地区(東南アジア・オーストラリア・インド)は、売上収益は約1,500億円(同約13%減)、営業利益は約40%減となりました。これは主に、上期は2桁の増収増益と好調だったものの、下期は新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けたためです。フィリピン、インドネシアは新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、売上回復に時間がかかっているものの、その他の国では、6月以降から順調に売上が回復しています。韓国は、日韓関係の影響に加え、新型コロナウイルス感染症の影響により既存店売上高は大幅な減収、営業利益は赤字となりました。北米は、3月中旬から6月末までほとんどの店舗で臨時休業、6月以降も社会情勢の変化や感染再拡大の影響で、大幅な減収、赤字幅は大幅に拡大しました。欧州も、多くの店舗が臨時休業したことに加え、観光客が大幅に減少するなど、新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、減収、若干の赤字となりました。
なお、2019年9月にはイタリア初の店舗をミラノに、同年10月にはインド初の店舗をニューデリーに、同年12月にはベトナム初の店舗をホーチミンに出店しました。新型コロナウイルス感染症の影響を受けたものの、イタリアは通期で黒字を達成しているほか、12月に営業を開始したベトナムは下期に黒字を達成することができました。
[ジーユー事業]
ジーユー事業の当連結会計年度の売上収益は2,460億円(前期比3.1%増)、営業利益は218億円(同22.5%減)と、増収減益となりました。
国内ジーユー事業は、上期はマストレンドを捉えたニットや薄手のアウターの販売が好調で、既存店売上高(Eコマースを除く)は増収となりましたが、下期に新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことで、通期では前期比5.2%減収となりました。ただし、第4四半期3ヶ月間は、売上収益が順調に回復し、既存店売上高は前年同期比2.2%の増収となりました。特に、マストレンドを捉えた商品や在宅需要にマッチした商品の販売が好調でした。通期のEコマース売上高は、人気商品の欠品率の改善や情報発信の強化により、前期比約6割増収と好調でした。通期の売上総利益率は、前年のハードルが高かったことに加え、春夏商品の在庫消化を進めたことで、前期比0.7ポイント低下しました。通期の売上高販管費率は、同1.8ポイント上昇しましたが、これは下期に売上収益が減少したことによります。
[グローバルブランド事業]
グローバルブランド事業の当連結会計年度の売上収益は1,096億円(前期比26.9%減)、営業利益は127億円の赤字(前期は36億円の黒字)と、大幅な減収減益となりました。これは主に、欧米で新型コロナウイルス感染症の影響が大きかったことから、コントワー・デ・コトニエ事業、プリンセス タム・タム事業、J Brand事業の赤字が継続したこと、セオリー事業が赤字に転じたことによります。セオリー事業は、店舗の臨時休業や外出自粛の影響により大幅な減収、値引き販売を強化した結果、営業利益は赤字となりました。プラステ事業も、新型コロナウイルス感染症の影響で減収、営業利益は若干の赤字となりました。コントワー・デ・コトニエ事業は、欧州で約2か月間臨時休業したことなどにより、大幅な減収、赤字が継続しました。
[サステナビリティ(持続可能性)活動]
「服のチカラを、社会のチカラに。」というステートメントのもと、6つの重点領域(マテリアリティ)を中心に、服のビジネスを通じたサステナビリティ活動をグローバルで推進しています。今期の主な活動は以下のとおりです。
■「環境への配慮」:ファーストリテイリンググループ全体で、2020年中にショッピングバッグと商品パッケージのプラスチック使用量85%(約7,800トン)を削減することを目標に、使用量の削減や、再生紙等の環境配慮型素材への切り替えを行っています。また、国内ユニクロでは、資源の有効活用を目的とし、従来より取り組んでいるユニクロ商品の回収に加え、2019年11月からダウンを回収し、取り出した羽毛を新しいダウン商品の素材として再利用する取り組みを開始しました。この他、2020年春夏シーズンより、PETボトル由来のリサイクルポリエステルを使用した高機能速乾ウエア「ドライEX」のポロシャツを東レ株式会社と協同で開発し、販売を開始しました。
■「サプライチェーンの人権・労働環境の尊重」:新型コロナウイルス感染症から生産パートナー及び生産工場の従業員の安心と安全を守るため、工場操業時の感染症対策の指導を徹底すると同時に、工場の休業による賃金補償や雇用等に関する問い合わせ窓口を設置することで、工場従業員が適正な待遇と補償を受けられるよう支援しています。
■「コミュニティとの共存・共栄」:新型コロナウイルス感染症と闘っている医療機関に対して、グローバルで約1,500万点のマスクを寄付した他、日本の医療機関には、アイソレーションガウン(医療現場で使用できる防護具)約120万点を寄付しました。また、社会的に脆弱な立場にある方々や医療機関を支援する団体に、エアリズム、ヒートテック、ダウンジャケット等のユニクロ商品を約52万着(7月末時点)寄付しています。日本では、さまざまな自然災害における支援を実施しています。「令和2年7月豪雨」で被災された九州地方の方々に対して、使い捨てマスク、ユニクロ商品、スニーカー等、約2万点を支援物資として寄付しました。
■「従業員の幸せ」:新型コロナウイルス感染拡大防止のため、店舗では、お客様とスタッフの健康を守ることを最優先とし、スタッフの体調確認、マスク着用や手指消毒などの対策を実施しています。従業員が安心、安全に働ける職場環境づくりのため、マスクや消毒液の提供、換気の強化、職務内容に応じた在宅勤務の推進等を行っています。
■「商品と販売を通じた新たな価値創造」:新型コロナウイルス感染症の予防のため、人々の生活にマスクが不可欠となったことを受け、2020年6月から全世界のユニクロの店舗でエアリズムマスクの発売を開始しています。今後もお客様の声を活かし、より優れたマスクの開発を進めていきます。
■「正しい経営(ガバナンス)」:リスクマネジメント委員会では、新型コロナウイルス感染症対応や、首都直下型地震等の大規模災害リスク、情報セキュリティのリスクと、これらの対応策について議論を重ねています。また、人権委員会では、ハラスメント防止策及び研修プログラムの策定が議論されています。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ、70億円増加し、1兆935億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による収入は、前連結会計年度末に比べ356億円減少し、2,648億円(前期比11.9%減)となりました。これは主として、減価償却費及びその他の償却費1,778億円(前期比1,293億円増)、税引前利益1,528億円(前期比995億円減)、その他の負債の減少額445億円(前期比814億円減)、棚卸資産の増加額26億円(前期比408億円減)、仕入債務の増加額186億円(前期比350億円増)等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金は、前連結会計年度に比べ27億円減少し、759億円(前期比3.5%減)となりました。これは主として、定期預金の純増額52億円(前期比61億円減)、有形固定資産の取得による支出465億円(前期比49億円増)、無形資産の取得による支出210億円(前期比31億円減)等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は、前連結会計年度に比べ808億円増加し、1,832億円(前期比78.9%増)となりました。これは主として、リース負債の返済による支出1,412億円(前期比1,412億円増)、前連結会計年度における社債の償還による支出300億円(前期比300億円減)、短期借入金の借入による収入350億円(前期比178億円減)等によるものです。
(2)販売及び仕入の状況
① 部門別売上状況
部門 | 前連結会計年度 (自 2018年9月1日 至 2019年8月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年9月1日 至 2020年8月31日) | ||
売上収益 (百万円) | 構成比 (%) | 売上収益 (百万円) | 構成比 (%) | |
メンズ | 343,243 | 15.0 | 319,985 | 15.9 |
ウィメンズ | 409,105 | 17.9 | 359,753 | 17.9 |
キッズ・ベビー | 66,303 | 2.9 | 60,804 | 3.0 |
グッズ・その他 | 22,947 | 1.0 | 35,391 | 1.8 |
国内ユニクロ商品売上合計 | 841,600 | 36.7 | 775,934 | 38.6 |
FC関連収入・補正費売上高 | 31,357 | 1.4 | 30,952 | 1.5 |
国内ユニクロ事業合計 | 872,957 | 38.1 | 806,887 | 40.2 |
海外ユニクロ事業 | 1,026,032 | 44.8 | 843,937 | 42.0 |
ユニクロ事業合計 | 1,898,990 | 82.9 | 1,650,825 | 82.2 |
ジーユー事業 | 238,741 | 10.4 | 246,091 | 12.3 |
グローバルブランド事業 | 149,939 | 6.5 | 109,633 | 5.5 |
その他事業 | 2,877 | 0.1 | 2,295 | 0.1 |
合計 | 2,290,548 | 100.0 | 2,008,846 | 100.0 |
(注) 1.FC関連収入とは、フランチャイズ店に対する商品売上高、フランチャイズ店からのロイヤリティ収入であり、補正費売上高とは、パンツの裾上げ(補正)の加工賃及び刺繍プリントによる収入等であります。
2.ユニクロ事業とは、「ユニクロ」ブランドのカジュアル衣料品販売事業であります。
3.ジーユー事業とは、「ジーユー」ブランドのカジュアル衣料品販売事業であります。
4.グローバルブランド事業は、セオリー事業(「Theory(セオリー)」ブランド等の衣料品販売事業)、プラステ事業(「PLST(プラステ)」ブランド等の衣料品販売事業)、コントワー・デ・コトニエ事業(「COMPTOIR DES COTONNIERS(コントワー・デ・コトニエ)」ブランドの衣料品販売事業)、プリンセス タム・タム事業(「PRINCESSE TAM.TAM(プリンセス タム・タム)」ブランドの衣料品販売事業)及びJ Brand事業(「J BRAND(ジェイブランド)」ブランドの衣料品販売事業)で構成されております。
5.その他事業とは、不動産賃貸業等であります。
6.国内ユニクロ事業に含まれるEコマース売上高
前連結会計年度 83,228百万円、当連結会計年度 107,616百万円
7.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
② 単位当たりの売上状況
摘要 | 当連結会計年度 (自 2019年9月1日 至 2020年8月31日) | 前期比(%) | |
売上収益 | 1,512,255百万円 | 84.7 | |
1㎡当たり売上収益 | 売場面積(平均) | 2,446,706㎡ | 105.4 |
1㎡当たり期間売上収益 | 618千円 | 80.4 | |
1人当たり売上収益 | 従業員数(平均) | 106,276人 | 98.2 |
1人当たり期間売上収益 | 14,229千円 | 86.3 |
(注)1.国内・海外ユニクロ事業についてのみ記載しております。
2.売上収益は店舗商品売上高であり、国内ユニクロ事業のEコマース事業・FCに対する商品供給高・経営管理料及び補正費売上高は含まれておりません。
3.売場面積(平均)は、直営店売場の昨年度期末面積数と今年度期末面積数を平均算出しております。
4.従業員数(平均)は、準社員、アルバイト社員、委託社員及び受入出向社員を含み、執行役員を除いております。なお、準社員、アルバイト社員は在籍する年間の平均人員により記載しております。
5.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
③ 仕入実績
商品部門別 | 当連結会計年度 (自 2019年9月1日 至 2020年8月31日) | ||
仕入高(百万円) | 前期比(%) | 構成比(%) | |
メンズ | 181,687 | 95.8 | 17.5 |
ウィメンズ | 196,950 | 88.2 | 18.9 |
キッズ・ベビー | 32,392 | 95.0 | 3.1 |
グッズ・その他 | 21,892 | 178.6 | 2.1 |
国内ユニクロ事業合計 | 432,922 | 94.3 | 41.6 |
海外ユニクロ事業 | 433,892 | 90.1 | 41.7 |
ユニクロ事業合計 | 866,814 | 92.1 | 83.3 |
ジーユー事業 | 127,536 | 107.1 | 12.3 |
グローバルブランド事業 | 45,652 | 80.7 | 4.4 |
合計 | 1,040,003 | 93.1 | 100.0 |
(注)1.ユニクロ事業とは、「ユニクロ」ブランドのカジュアル衣料品販売事業であります。
2.ジーユー事業とは、「ジーユー」ブランドのカジュアル衣料品販売事業であります。
3.グローバルブランド事業は、セオリー事業(「Theory(セオリー)」ブランド等の衣料品販売事業)、プラステ事業(「PLST(プラステ)」ブランド等の衣料品販売事業)、コントワー・デ・コトニエ事業(「COMPTOIR DES COTONNIERS(コントワー・デ・コトニエ)」ブランドの衣料品販売事業)、プリンセス タム・タム事業(「PRINCESSE TAM.TAM(プリンセス タム・タム)」ブランドの衣料品販売事業)及びJ Brand事業(「J BRAND(ジェイブランド)」ブランドの衣料品販売事業)で構成されております。
4.上記以外に、その他事業(不動産賃貸業等)がありますが、事業の性格上、仕入は発生しません。
5.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討事項
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、非金融資産の減損、繰延税金資産の回収可能性の判断等につきましては、過去の実績又は各状況下で合理的と判断される前提に基づき見積りを実施しております。
採用している重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績の分析
経営成績の分析については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
(1)業績等の概要」をご参照ください。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
Ⅰ 財務戦略の基本的な考え方
当社グループでは、強固な財務体質を維持しながら、事業活動によりフリー・キャッシュ・フローを最大化し、毎期一定程度の株主還元を維持しつつ、成長投資資金と手許流動性も確保していくことを財務戦略の基本方針としています。
強固な財務体質の維持に関しては、営業キャッシュ・フローにより投資資金を賄うことを原則としつつ、天候不順や新型コロナウイルス感染症といった不測の事態に耐えうる手許流動性を確保していきます。また、安定的な外部調達能力も担保していきます。
Ⅱ 資金のキャッシュ・フロー及び流動性の状況
当社グループでは、アパレル小売業としての特性上、運転資金と天候不順などの不測の事態に備えて月商3~5ヶ月分の手許流動性を確保するよう努めています。当連結会計年度の売上収益2兆88億円に対し、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は1兆935億円となっていますが、将来的に当社グループ事業全体で売上収益3兆円を超える計画に対し、月商4ヶ月分の手許流動性は1兆円であるため、足もとの手許流動性は適正水準であると考えております。
Ⅲ 資金需要の主な内容
当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では、仕入、物流費、広告宣伝費、地代家賃(店舗に係る賃貸料など)、人件費などがあります。
また、投資活動に係る資金支出では、店舗関連投資(新規店舗の出店や既存店舗の改装)のほか、有明プロジェクト推進における物流倉庫投資やIT投資(店舗のセルフレジ、Eコマース、サプライチェーン関連のシステム投資)があります。2021年8月期は、当社グループ全体で、新規店舗の出店投資に300億円、倉庫やITなどその他投資に602億円の設備投資を計画しております(「第3 設備の状況 3設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載しております。)。
Ⅳ 資金調達
当社グループ事業の維持拡大のために必要な資金を安定的且つ機動的に確保するため、事業活動によるフリー・キャッシュ・フローの最大化に努めるとともに、内部資金及び外部資金を有効に活用しています。
強固な財務体質を維持すべく、投資資金は、営業キャッシュ・フローにより賄うことを原則としていますが、資金調達の多様化と資本効率の向上を企図し、一部社債調達も活用しています。2018年6月には計2,500億円の社債調達を行い、社債償還資金に充当するとともに、海外事業の拡大や有明プロジェクト推進における投資資金として活用しています。
当社グループでは、安定的な外部資金調達能力の維持向上は重要な経営課題と認識しており、スタンダード&プアーズ(S&P)及び日本格付研究所(JCR)から格付を取得しています。本報告書提出時点において、S&Pの格付は「シングルA(安定的)」、JCRの格付は「ダブルA(安定的)」となっております。また、主要な取引先金融機関とは良好な取引関係を維持しております。
新型コロナウイルス感染症拡大による影響により、当連結会計年度は減収減益となりましたが、お取引先様の多大なるご協力を得ながら感染対策を強化したうえでの営業活動の継続、経費削減や在庫消化に努めることにより、追加の外部調達を行うことなく、十分な手許流動性を確保できています。
今後も新型コロナウイルス感染症による環境変化を注視しながら、強固な財務体質を維持するとともに、安定的な外部資金調達能力の維持向上に努めていきます。