有価証券報告書-第12期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、米中による関税引き上げの一部発動による対立で、両国経済の減速が世界経済の減速に波及するリスクの中で推移しました。国内は、2019年10月に消費税率の引き上げにより、個人消費の駆け込み需要はあったものの、その後反動減が続き、厳しい環境下で推移しました。また、夏季は長梅雨で長雨と低気温が続き、一方、冬は記録的暖冬となる等、小売業において天候不順や自然災害がマイナス影響を及ぼしました。雇用・所得は、比較的安定して推移しましたが、1月下旬以降は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、訪日外国人の急減に加え、日本国内もウイルスの感染拡大を防止するために消費行動を自粛する動きが高まり、内外需要とも急速に落ち込み、不確実性が高まりました。
このような中にあって、当社グループは2018年11月に発表した「三越伊勢丹グループ3ヶ年計画」において掲げた目指す姿「オンラインとオフラインのマッチングプラットフォーマー」の実現に向けて、2019年度は、ビジネスモデルの革新に取り組んでまいりました。私たちの原点である「人と時代をつなぐ三越伊勢丹グループ」の確立に向け、お客さまとモノ・コト・情報を「オフライン(店舗)とオンライン(デジタル)でマッチング(つなぐ)」することで新たな価値を創造してまいります。
また、2019年度は、伊勢丹相模原店、伊勢丹府中店、新潟三越など収益力に課題のあった大型店舗を営業終了し、加えて三越恵比寿店の営業終了を決定するなど、大規模構造改革に一定の目途をつけました。引き続き、ビジネスモデル転換に向けた事業基盤の整備、抜本的コスト構造改革を進めてまいります。
当連結会計年度の連結決算につきましては、売上高は1,119,191百万円(前連結会計年度比6.5%減)、営業利益は15,679百万円(前連結会計年度比46.4%減)、経常利益は19,771百万円(前連結会計年度比38.2%減)、親会社株主に帰属する当期純損失は11,187百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益13,480百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
百貨店業
百貨店業におきましては、消費税増税前の駆け込み需要や基幹店のリモデル効果があり、宝飾品等の高額品は好調に推移しました。また、コスト構造改革に本格着手し、販売管理費の削減をいたしました。一方、想定を超える消費税増税の反動減、台風や新型コロナウイルス感染症予防の対策として行った店舗の営業自粛や営業時間の短縮が大きく影響し、既存店ベースで前年実績を大幅に下回りました。
その中でも、お客さまの価値観や市場環境が大きく変化している中で、デジタルを活用した最高レベルのサービスを提供するために業務フロー・販売手法をはじめ店舗ビジネスモデルの抜本的な見直しを行い、当期は基幹店において以下の取り組みに具体的に着手しました。
伊勢丹新宿本店においては、新しい価値の創出と差別化を行い、心の豊かさを創造できるようリモデルを行いました。化粧品フロアは、リアルな場の体験価値向上のために、2019年9月に本館2階にスキンケアを中心としたフロアが、11月には本館1階にメイクアップ・フレグランスフロアが完成しました。婦人靴フロアでは商品・コトの充実に加え、デジタルを活用した新サービスも導入しました。ジュエリーやウォッチについても体験価値向上に取り組みました。
三越日本橋本店においては、2018年度からのリモデルを通じて、環境、サービス、商品を磨き上げてまいりました。2018年10月の第1期リモデルオープンに続き、本館では2019年5月に屋上日本橋庭園、8月に紳士フロア、ウォッチギャラリー、11月にジュエリーギャラリー、2020年3月に三越コンテンポラリーギャラリーがオープンしました。特選ブティックも改装を終え、第2期リモデルが完成いたしました。新館では、2月に「ビックカメラ日本橋三越」に加え、理美容室と写真室もオープンいたしました。また、3月には三越が保有する文化財や歴史資料の展示スペース「三越アーカイブス日本橋」がオープンいたしました。
店舗だけでは提供できない商品の拡大や購買手段の多様化を進めるため、新たなオンラインビジネスに取り組んでいます。2019年10月には、ワイシャツオンラインカスタムオーダーサービス「Hi TAILOR(ハイ・テーラー)」、SNSやメールで贈り物ができるオンラインギフトブティック「MOO:D MARK by ISETAN(ムードマークバイイセタン)」、三越伊勢丹クオリティの商品を集めた「三越伊勢丹ふるさと納税」を立ち上げ、2020年3月にはスタイリストがチャットでカウンセリングし定期的に洋服をお届けする「DROBE(ドローブ)」をスタートさせています。
なお、限られた経営資源を新たな成長分野へ再配分するため、収益性に課題のあった伊勢丹相模原店・伊勢丹府中店・新潟三越の営業を終了し、また、三越恵比寿店の営業終了を決定いたしました。店舗の営業終了に伴うご不便につきまして、深くお詫び申しあげるとともに今までの支援やご愛顧に心より御礼申しあげます。
このセグメントにおける、売上高は1,035,589百万円(前連結会計年度比6.8%減)、営業利益は2,203百万円(前連結会計年度比85.6%減)となりました。
クレジット・金融・友の会業
クレジット・金融・友の会業におきましては、株式会社エムアイカードが、百貨店カードおよび外部企業との提携カードの新規会員獲得やカードの利用促進による取扱高の拡大に取り組みました。
その結果、ショッピング総取扱高は1兆681億円(前年比97.5%)となりました。これは、通販分野やコンビニ・スーパーでの利用促進施策により取扱高が大きく伸長する一方、期中におけるグループ百貨店の営業終了(伊勢丹相模原店・伊勢丹府中店)や消費税増税後の売上減および2月以降の新型コロナウイルスの影響による売上減により、グループ百貨店内での取扱高が減少し、前述の結果となりました。
また、営業拡大の取り組みの一環として、外部企業との提携カードの発行にも注力しており、当年度においては新たに14社との提携カードを発行し、今後の取扱高および収益の拡大につなげてまいります。
このセグメントにおける、売上高は38,595百万円(前連結会計年度比1.3%減)、営業利益は5,669百万円(前連結会計年度比11.7%減)となりました。
不動産業
不動産業におきましては、グループの成長の一翼を担うべく事業の更なる強化を図ってまいりました。
前年度は株式会社三越伊勢丹不動産による分譲マンションの販売実績があったため、当年度はその反動減を主な要因として、売上高・営業利益ともに前年実績には及びませんでした。
レジデンス事業においては、保有する12物件を中心に引き続き高稼働を維持し、安定的な収益を確保いたしました。
また、建装・デザイン事業においては、受注物件数が増えたことで、業績も堅調に推移いたしました。
海外においては、野村不動産株式会社とフィリピン大手不動産会社Federal Land Incorporatedとの共同事業による、フィリピンでの複合不動産開発プロジェクトに継続して取り組み、レジデンスの販売に加え、2021年に予定する商業施設棟の開業準備を進めております。
このセグメントにおける、売上高は35,399百万円(前連結会計年度比26.7%減)、営業利益は5,970百万円(前連結会計年度比23.3%減)となりました。
その他
その他の事業におきましては、株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズの業務内製化による外注費等の削減効果や、株式会社三越伊勢丹ギフト・ソリューションズの事業構造見直しおよび株式会社スタジオアルタの収益改善等により営業利益が大きく改善いたしました。
その他の個別事業につきましては、旅行事業の株式会社三越伊勢丹ニッコウトラベル(株式会社ニッコウトラベルと株式会社三越伊勢丹旅行が2019年4月に経営統合)において、上期は大型連休特需もあり、海外事業における主力のクルーズ船ツアーが好調に推移いたしましたが、年度末にかけて世界的な新型コロナウイルス感染症の影響で、海外旅行を中心に大幅に減収という結果となりました。
美容事業の株式会社ソシエ・ワールドにおいては、主力であるエステティック事業の競合環境激化や新規顧客の獲得が低迷したことと、新型コロナウイルス感染症による影響を受け、売上高は前年実績を下回る結果となりました。今後の業績回復に向け、不採算店舗の閉鎖、さらなるコスト削減に取り組んでまいります。
引き続き「お客さまの生活のさまざまなシーンでお役に立つこと」の実現に向けて、新たな価値提供を目指してまいります。
このセグメントにおける、売上高は82,418百万円(前連結会計年度比7.4%減)、営業利益は1,618百万円(前連結会計年度は営業損失302百万円)となりました。
当連結会計年度末の総資産は1,223,800百万円となり、前連結会計年度末に比べ23,626百万円減少しました。これは主に、今後の新型コロナウイルスの業績への影響に対応すべく手元資金を充分に確保したために現金及び預金が増加している一方で3月の売上高急減により受取手形及び売掛金が減少したことと、株式市場全体の株価下落により保有する投資有価証券の時価が減少したことなどによるものです。
負債合計では673,639百万円となり、前連結会計年度末から11,927百万円増加しました。これは主に、前述の手元資金確保に向けコマーシャル・ペーパーを追加発行したことで有利子負債が増加している一方で、売掛金同様に3月の売上高急減に伴い支払手形及び買掛金が減少したことなどによるものです。
また、純資産は550,161百万円となり、前連結会計年度末から35,553百万円減少しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失の計上等により利益剰余金が減少したことと、中長期的な資本効率向上を目的に約100億円の自己株式取得を実施したことなどによるものです。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて26,511百万円増加し、76,659百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、16,281百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ収入が12,005百万円減少しました。これは主に、税金等調整前当期純損失と減益になり、また法人税等の支払額が増加したことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、9,965百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ支出が12,484百万円減少しました。これは主に、前連結会計年度においては本社不動産等の取得があったこともあり、有形固定資産の取得による支出が減少したことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、20,259百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ支出が29,323百万円減少しました。これは主に、前述したコマーシャル・ペーパーの発行による収入が増加したことなどによるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績及び受注実績
当社及び当社の関係会社においては、その他事業の一部に実績がありますが、当社グループ全体の事業活動に占める比重が極めて低いため、記載を省略しております。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5「経理の状況」の1「連結財務諸表」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に関する情報は、第5「経理の状況」の1「連結財務諸表」の「追加情報」に記載しております。
(a) 繰延税金資産
将来の利益計画に基づいた課税所得の見積りを行い、税務上の繰越欠損金を含む、将来減算一時差異等に対して繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の回収可能性は、外部の情報源に基づく情報等を含む、決算時点で入手可能な情報や資料に基づき合理的に判断しておりますが、新型コロナウイルスの影響により、店舗休業や外出自粛などが想定以上に長期化した場合など、将来の不確実な経済条件の変動等により、利益計画及び課税所得の見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(b) 固定資産の減損処理
当社グループは重要な店舗資産を有しており、営業活動から生ずる損益が継続してマイナスである資産グループについては、回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額の算定にあたっては、外部の情報源に基づく情報等を含む、決算時点で入手可能な情報や資料に基づき合理的に判断しておりますが、新型コロナウイルスの影響により、店舗休業や外出自粛などが想定以上に長期化した場合など、将来の不確実な経済条件の変動等により、利益計画の見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において追加の減損損失が発生する可能性があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の分析
1)概要
当社グループの当連結会計年度の経営成績の概要として、連結売上高は1,119,191百万円(前連結会計年度比6.5%減)、連結営業利益は15,679百万円(前連結会計年度比46.4%減)、連結経常利益は19,771百万円(前連結会計年度比38.2%減)を計上しました。特別損益及び税金費用等を控除した親会社株主に帰属する当期純損失は11,187百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益13,480百万円)となりました。以下、連結財務諸表に重要な影響を与えた要因について分析します。
2)売上高
連結売上高は、1,119,191百万円となりました。当社グループは2018年11月に発表した「三越伊勢丹グループ3ヶ年計画」において掲げた目指す姿「オンラインとオフラインのマッチングプラットフォーマー」の実現に向けて、2019年度は、ビジネスモデルの革新に取り組んでまいりました。
2019年10月に消費税率の引き上げにより、個人消費の駆け込み需要はあったものの、その後反動減が続き、厳しい環境下で推移しました。また、夏季は長梅雨で長雨と低気温が続き、一方、冬は記録的暖冬となる等、小売業において天候不順や自然災害がマイナス影響を及ぼしました。雇用・所得は、比較的安定して推移しましたが、1月下旬以降は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、訪日外国人の急減に加え、日本国内もウイルスの感染拡大を防止するために消費行動を自粛する動きが高まり、内外需要とも急速に落ち込んだ結果、計画値を下回りました。
3)販売費及び一般管理費
連結の販売費及び一般管理費は307,023百万円(前連結会計年度比3.8%減)となりました。各社でコスト構造改革を進め、人件費、地代家賃を中心に販売管理費を削減いたしました。
4)営業外損益
営業外損益は4,092百万円の利益となりました。営業外収益には未回収商品券受入益5,928百万円、固定資産受贈益5,231百万円などを計上しました。また、営業外費用には商品券回収損引当金繰入額5,873百万円などを計上しました。
5)特別損益
特別利益として9,751百万円を計上いたしました。主な内容は固定資産売却益6,637百万円などです。また特別損失として31,826百万円を計上いたしました。主な内容は減損損失10,844百万円、事業構造改善費用8,928百万円、店舗閉鎖損失6,988百万円などです。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりです。
当社グループの運転資金需要の主なものは、商品、原材料等の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また投資資金需要の主なものは、店舗のリモデル・設備の修繕・新規開発等の設備投資等であります。
当社グループは、現3ヶ年計画期間中においては、事業活動及び事業投資に必要となる資金は、営業キャッシュ・フローでまかなうことを基本方針とし、健全な財務基盤の維持に努めております。
また、適切な現預金残高を維持することと、一時的な資金不足に備え、主要取引銀行とのコミットメントライン契約及び当座借越契約、並びにコマーシャル・ペーパー発行枠を確保することにより、十分な流動性を確保しております。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローに関しては、新型コロナウイルスによる内外需要の急激な落ち込みにより収益が悪化し、営業キャッシュ・フローが昨年度に比べ大幅に減少しましたが、先行きの不確実性を鑑み、当連結会計年度末までにコマーシャル・ペーパー300億円を追加発行いたしました。加えて、有価証券報告書提出日現在までに、金融機関と追加のコミットメントライン契約を締結することにより、手元流動性の充実を図っております。現在の状況が長期化した場合の対応として、設備投資の削減や追加の経費削減にも取り組んでまいります。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、米中による関税引き上げの一部発動による対立で、両国経済の減速が世界経済の減速に波及するリスクの中で推移しました。国内は、2019年10月に消費税率の引き上げにより、個人消費の駆け込み需要はあったものの、その後反動減が続き、厳しい環境下で推移しました。また、夏季は長梅雨で長雨と低気温が続き、一方、冬は記録的暖冬となる等、小売業において天候不順や自然災害がマイナス影響を及ぼしました。雇用・所得は、比較的安定して推移しましたが、1月下旬以降は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、訪日外国人の急減に加え、日本国内もウイルスの感染拡大を防止するために消費行動を自粛する動きが高まり、内外需要とも急速に落ち込み、不確実性が高まりました。
このような中にあって、当社グループは2018年11月に発表した「三越伊勢丹グループ3ヶ年計画」において掲げた目指す姿「オンラインとオフラインのマッチングプラットフォーマー」の実現に向けて、2019年度は、ビジネスモデルの革新に取り組んでまいりました。私たちの原点である「人と時代をつなぐ三越伊勢丹グループ」の確立に向け、お客さまとモノ・コト・情報を「オフライン(店舗)とオンライン(デジタル)でマッチング(つなぐ)」することで新たな価値を創造してまいります。
また、2019年度は、伊勢丹相模原店、伊勢丹府中店、新潟三越など収益力に課題のあった大型店舗を営業終了し、加えて三越恵比寿店の営業終了を決定するなど、大規模構造改革に一定の目途をつけました。引き続き、ビジネスモデル転換に向けた事業基盤の整備、抜本的コスト構造改革を進めてまいります。
当連結会計年度の連結決算につきましては、売上高は1,119,191百万円(前連結会計年度比6.5%減)、営業利益は15,679百万円(前連結会計年度比46.4%減)、経常利益は19,771百万円(前連結会計年度比38.2%減)、親会社株主に帰属する当期純損失は11,187百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益13,480百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
百貨店業
百貨店業におきましては、消費税増税前の駆け込み需要や基幹店のリモデル効果があり、宝飾品等の高額品は好調に推移しました。また、コスト構造改革に本格着手し、販売管理費の削減をいたしました。一方、想定を超える消費税増税の反動減、台風や新型コロナウイルス感染症予防の対策として行った店舗の営業自粛や営業時間の短縮が大きく影響し、既存店ベースで前年実績を大幅に下回りました。
その中でも、お客さまの価値観や市場環境が大きく変化している中で、デジタルを活用した最高レベルのサービスを提供するために業務フロー・販売手法をはじめ店舗ビジネスモデルの抜本的な見直しを行い、当期は基幹店において以下の取り組みに具体的に着手しました。
伊勢丹新宿本店においては、新しい価値の創出と差別化を行い、心の豊かさを創造できるようリモデルを行いました。化粧品フロアは、リアルな場の体験価値向上のために、2019年9月に本館2階にスキンケアを中心としたフロアが、11月には本館1階にメイクアップ・フレグランスフロアが完成しました。婦人靴フロアでは商品・コトの充実に加え、デジタルを活用した新サービスも導入しました。ジュエリーやウォッチについても体験価値向上に取り組みました。
三越日本橋本店においては、2018年度からのリモデルを通じて、環境、サービス、商品を磨き上げてまいりました。2018年10月の第1期リモデルオープンに続き、本館では2019年5月に屋上日本橋庭園、8月に紳士フロア、ウォッチギャラリー、11月にジュエリーギャラリー、2020年3月に三越コンテンポラリーギャラリーがオープンしました。特選ブティックも改装を終え、第2期リモデルが完成いたしました。新館では、2月に「ビックカメラ日本橋三越」に加え、理美容室と写真室もオープンいたしました。また、3月には三越が保有する文化財や歴史資料の展示スペース「三越アーカイブス日本橋」がオープンいたしました。
店舗だけでは提供できない商品の拡大や購買手段の多様化を進めるため、新たなオンラインビジネスに取り組んでいます。2019年10月には、ワイシャツオンラインカスタムオーダーサービス「Hi TAILOR(ハイ・テーラー)」、SNSやメールで贈り物ができるオンラインギフトブティック「MOO:D MARK by ISETAN(ムードマークバイイセタン)」、三越伊勢丹クオリティの商品を集めた「三越伊勢丹ふるさと納税」を立ち上げ、2020年3月にはスタイリストがチャットでカウンセリングし定期的に洋服をお届けする「DROBE(ドローブ)」をスタートさせています。
なお、限られた経営資源を新たな成長分野へ再配分するため、収益性に課題のあった伊勢丹相模原店・伊勢丹府中店・新潟三越の営業を終了し、また、三越恵比寿店の営業終了を決定いたしました。店舗の営業終了に伴うご不便につきまして、深くお詫び申しあげるとともに今までの支援やご愛顧に心より御礼申しあげます。
このセグメントにおける、売上高は1,035,589百万円(前連結会計年度比6.8%減)、営業利益は2,203百万円(前連結会計年度比85.6%減)となりました。
クレジット・金融・友の会業
クレジット・金融・友の会業におきましては、株式会社エムアイカードが、百貨店カードおよび外部企業との提携カードの新規会員獲得やカードの利用促進による取扱高の拡大に取り組みました。
その結果、ショッピング総取扱高は1兆681億円(前年比97.5%)となりました。これは、通販分野やコンビニ・スーパーでの利用促進施策により取扱高が大きく伸長する一方、期中におけるグループ百貨店の営業終了(伊勢丹相模原店・伊勢丹府中店)や消費税増税後の売上減および2月以降の新型コロナウイルスの影響による売上減により、グループ百貨店内での取扱高が減少し、前述の結果となりました。
また、営業拡大の取り組みの一環として、外部企業との提携カードの発行にも注力しており、当年度においては新たに14社との提携カードを発行し、今後の取扱高および収益の拡大につなげてまいります。
このセグメントにおける、売上高は38,595百万円(前連結会計年度比1.3%減)、営業利益は5,669百万円(前連結会計年度比11.7%減)となりました。
不動産業
不動産業におきましては、グループの成長の一翼を担うべく事業の更なる強化を図ってまいりました。
前年度は株式会社三越伊勢丹不動産による分譲マンションの販売実績があったため、当年度はその反動減を主な要因として、売上高・営業利益ともに前年実績には及びませんでした。
レジデンス事業においては、保有する12物件を中心に引き続き高稼働を維持し、安定的な収益を確保いたしました。
また、建装・デザイン事業においては、受注物件数が増えたことで、業績も堅調に推移いたしました。
海外においては、野村不動産株式会社とフィリピン大手不動産会社Federal Land Incorporatedとの共同事業による、フィリピンでの複合不動産開発プロジェクトに継続して取り組み、レジデンスの販売に加え、2021年に予定する商業施設棟の開業準備を進めております。
このセグメントにおける、売上高は35,399百万円(前連結会計年度比26.7%減)、営業利益は5,970百万円(前連結会計年度比23.3%減)となりました。
その他
その他の事業におきましては、株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズの業務内製化による外注費等の削減効果や、株式会社三越伊勢丹ギフト・ソリューションズの事業構造見直しおよび株式会社スタジオアルタの収益改善等により営業利益が大きく改善いたしました。
その他の個別事業につきましては、旅行事業の株式会社三越伊勢丹ニッコウトラベル(株式会社ニッコウトラベルと株式会社三越伊勢丹旅行が2019年4月に経営統合)において、上期は大型連休特需もあり、海外事業における主力のクルーズ船ツアーが好調に推移いたしましたが、年度末にかけて世界的な新型コロナウイルス感染症の影響で、海外旅行を中心に大幅に減収という結果となりました。
美容事業の株式会社ソシエ・ワールドにおいては、主力であるエステティック事業の競合環境激化や新規顧客の獲得が低迷したことと、新型コロナウイルス感染症による影響を受け、売上高は前年実績を下回る結果となりました。今後の業績回復に向け、不採算店舗の閉鎖、さらなるコスト削減に取り組んでまいります。
引き続き「お客さまの生活のさまざまなシーンでお役に立つこと」の実現に向けて、新たな価値提供を目指してまいります。
このセグメントにおける、売上高は82,418百万円(前連結会計年度比7.4%減)、営業利益は1,618百万円(前連結会計年度は営業損失302百万円)となりました。
当連結会計年度末の総資産は1,223,800百万円となり、前連結会計年度末に比べ23,626百万円減少しました。これは主に、今後の新型コロナウイルスの業績への影響に対応すべく手元資金を充分に確保したために現金及び預金が増加している一方で3月の売上高急減により受取手形及び売掛金が減少したことと、株式市場全体の株価下落により保有する投資有価証券の時価が減少したことなどによるものです。
負債合計では673,639百万円となり、前連結会計年度末から11,927百万円増加しました。これは主に、前述の手元資金確保に向けコマーシャル・ペーパーを追加発行したことで有利子負債が増加している一方で、売掛金同様に3月の売上高急減に伴い支払手形及び買掛金が減少したことなどによるものです。
また、純資産は550,161百万円となり、前連結会計年度末から35,553百万円減少しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失の計上等により利益剰余金が減少したことと、中長期的な資本効率向上を目的に約100億円の自己株式取得を実施したことなどによるものです。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて26,511百万円増加し、76,659百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、16,281百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ収入が12,005百万円減少しました。これは主に、税金等調整前当期純損失と減益になり、また法人税等の支払額が増加したことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、9,965百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ支出が12,484百万円減少しました。これは主に、前連結会計年度においては本社不動産等の取得があったこともあり、有形固定資産の取得による支出が減少したことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、20,259百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ支出が29,323百万円減少しました。これは主に、前述したコマーシャル・ペーパーの発行による収入が増加したことなどによるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績及び受注実績
当社及び当社の関係会社においては、その他事業の一部に実績がありますが、当社グループ全体の事業活動に占める比重が極めて低いため、記載を省略しております。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
百貨店業 | 1,032,785 | △6.8 |
クレジット・金融・友の会業 | 23,015 | 2.5 |
不動産業 | 32,237 | 3.1 |
その他 | 31,153 | △9.8 |
合計 | 1,119,191 | △6.5 |
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5「経理の状況」の1「連結財務諸表」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に関する情報は、第5「経理の状況」の1「連結財務諸表」の「追加情報」に記載しております。
(a) 繰延税金資産
将来の利益計画に基づいた課税所得の見積りを行い、税務上の繰越欠損金を含む、将来減算一時差異等に対して繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の回収可能性は、外部の情報源に基づく情報等を含む、決算時点で入手可能な情報や資料に基づき合理的に判断しておりますが、新型コロナウイルスの影響により、店舗休業や外出自粛などが想定以上に長期化した場合など、将来の不確実な経済条件の変動等により、利益計画及び課税所得の見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(b) 固定資産の減損処理
当社グループは重要な店舗資産を有しており、営業活動から生ずる損益が継続してマイナスである資産グループについては、回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額の算定にあたっては、外部の情報源に基づく情報等を含む、決算時点で入手可能な情報や資料に基づき合理的に判断しておりますが、新型コロナウイルスの影響により、店舗休業や外出自粛などが想定以上に長期化した場合など、将来の不確実な経済条件の変動等により、利益計画の見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において追加の減損損失が発生する可能性があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の分析
1)概要
当社グループの当連結会計年度の経営成績の概要として、連結売上高は1,119,191百万円(前連結会計年度比6.5%減)、連結営業利益は15,679百万円(前連結会計年度比46.4%減)、連結経常利益は19,771百万円(前連結会計年度比38.2%減)を計上しました。特別損益及び税金費用等を控除した親会社株主に帰属する当期純損失は11,187百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益13,480百万円)となりました。以下、連結財務諸表に重要な影響を与えた要因について分析します。
2)売上高
連結売上高は、1,119,191百万円となりました。当社グループは2018年11月に発表した「三越伊勢丹グループ3ヶ年計画」において掲げた目指す姿「オンラインとオフラインのマッチングプラットフォーマー」の実現に向けて、2019年度は、ビジネスモデルの革新に取り組んでまいりました。
2019年10月に消費税率の引き上げにより、個人消費の駆け込み需要はあったものの、その後反動減が続き、厳しい環境下で推移しました。また、夏季は長梅雨で長雨と低気温が続き、一方、冬は記録的暖冬となる等、小売業において天候不順や自然災害がマイナス影響を及ぼしました。雇用・所得は、比較的安定して推移しましたが、1月下旬以降は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、訪日外国人の急減に加え、日本国内もウイルスの感染拡大を防止するために消費行動を自粛する動きが高まり、内外需要とも急速に落ち込んだ結果、計画値を下回りました。
3)販売費及び一般管理費
連結の販売費及び一般管理費は307,023百万円(前連結会計年度比3.8%減)となりました。各社でコスト構造改革を進め、人件費、地代家賃を中心に販売管理費を削減いたしました。
4)営業外損益
営業外損益は4,092百万円の利益となりました。営業外収益には未回収商品券受入益5,928百万円、固定資産受贈益5,231百万円などを計上しました。また、営業外費用には商品券回収損引当金繰入額5,873百万円などを計上しました。
5)特別損益
特別利益として9,751百万円を計上いたしました。主な内容は固定資産売却益6,637百万円などです。また特別損失として31,826百万円を計上いたしました。主な内容は減損損失10,844百万円、事業構造改善費用8,928百万円、店舗閉鎖損失6,988百万円などです。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりです。
当社グループの運転資金需要の主なものは、商品、原材料等の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また投資資金需要の主なものは、店舗のリモデル・設備の修繕・新規開発等の設備投資等であります。
当社グループは、現3ヶ年計画期間中においては、事業活動及び事業投資に必要となる資金は、営業キャッシュ・フローでまかなうことを基本方針とし、健全な財務基盤の維持に努めております。
また、適切な現預金残高を維持することと、一時的な資金不足に備え、主要取引銀行とのコミットメントライン契約及び当座借越契約、並びにコマーシャル・ペーパー発行枠を確保することにより、十分な流動性を確保しております。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローに関しては、新型コロナウイルスによる内外需要の急激な落ち込みにより収益が悪化し、営業キャッシュ・フローが昨年度に比べ大幅に減少しましたが、先行きの不確実性を鑑み、当連結会計年度末までにコマーシャル・ペーパー300億円を追加発行いたしました。加えて、有価証券報告書提出日現在までに、金融機関と追加のコミットメントライン契約を締結することにより、手元流動性の充実を図っております。現在の状況が長期化した場合の対応として、設備投資の削減や追加の経費削減にも取り組んでまいります。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。