有価証券報告書-第10期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/18 15:02
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は緩やかな景気回復が続き、消費環境においては訪日観光客増加や株高による資産効果もあり一部高額品の取り扱いなどは堅調に推移しました。一方、本年に入り円高傾向の強まりや株価下落などによる成長の減速や訪日観光客数の下押しリスクが懸念されます。
このような状況のもとで、当社は2017年11月に次期3ヶ年計画(2018~2020年度)を発表いたしました。次の成長に向けて「収益体質の強化」と「事業構造の転換」の2軸を掲げ、百貨店がここ数十年変えてこなかった「ビジネスモデル改革」を目指しております。2017年度は同計画の助走段階として、「構造改革」「収益体質の強化」に重点的に取り組み、不採算事業の改革、コスト構造の改革、要員政策、在庫リスクの先行処理などに着手してまいりました。
その結果、経費コントロールにより営業利益、経常利益は前期と同水準となりましたが、構造改革に伴う特別損失の計上等により、親会社株主に帰属する当期純利益は赤字となりました。
この結果、当連結会計年度の連結業績は、売上高は1,268,865百万円(前連結会計年度比1.2%増)、営業利益は24,413百万円(前連結会計年度比2.0%増)、経常利益は27,325百万円(前連結会計年度比0.3%減)、親会社株主に帰属する当期純損失は960百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益14,976百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
百貨店業
百貨店業においては、売上高は前期と同水準になりました。地域店における免税売上の伸長率が基幹3店である伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店の伸長率を上回るなど、訪日観光客の増加による免税売上は好調に推移し、また高額品の売れ行きも堅調でした。一方で、中間層の消費については依然慎重姿勢が続いています。
そのような消費環境を踏まえ、当期は収益体質の強化を目指し百貨店事業においても地域や店舗特性に応じた構造改革を徹底して進めてまいりました。この結果、限られた経営資源を新たな成長分野に再分配するため、2018年3月21日をもって伊勢丹松戸店の営業を終了いたしました。店舗の営業終了に伴うご不便につきまして、深くお詫び申しあげますとともに、今までのご支援やご愛顧に心より御礼申し上げます。今後も、地域や店舗特性に応じ、業態転換を含めたあらゆる手段を使って地域のお客さまのニーズに応えられるよう改革に取り組んでまいります。
コスト構造改革としては、業務の効率化、宣伝費削減等、徹底したコストコントロールを行い販売費および一般管理費の削減に努めてまいりました。同時に、要員政策においては、従来からのネクストキャリア制度の見直しと拡充をいたしました。さらに、在庫リスクの先行処理として、当期中に売価で100億円以上の在庫処理を行いました。2018年度は、顧客接点の要員は維持しながらも、本社要員の削減などを行うことにより引き続き要員構成の最適化を図ってまいります。
営業面においては、基幹店について中長期リモデルを含めた今後の収益の最大化に向けた計画の策定を行いました。三越日本橋本店では、お客さま一人ひとりに寄り添い、上質な暮らしのモノ・コトを日本随一のおもてなしでご提案するために、本年秋に第一期の完成を目指したリモデルを実施しております。3月にはこれに先駆けて新館1階をリフレッシュオープンいたしました。伊勢丹新宿本店におきましては、「ファッションの伊勢丹」に回帰し、お客さまのニーズにお応えするためのカテゴリーの再編とともに、デジタル情報発信の象徴として、本館・メンズ館のリモデルを順次実施してまいります。支店では、2017年11月に三越恵比寿店の1階をリフレッシュオープンいたしました。「上質な日常を彩るもの」をテーマに、近隣のお客さまの日常に新たな魅力をご提案し続けるべく、心地よい住まい、美容や装いを謳歌するための品揃えを強化し、ご好評をいただいております。
中小型店舗につきましては、構造改革の一環としてエムアイプラザ等の7店舗の営業を終了いたしました。一方、ラグジュアリーコスメの編集ショップである「イセタンミラー」は、新丸の内ビルディング、広島駅構内「ekie」、東京ミッドタウン日比谷の3店を新規出店し、合計で15店舗となりました。広島駅構内「ekie」内のショップは首都圏外で初となり、東京ミッドタウン日比谷店は約670㎡と最大規模で出店いたしました。既存の店舗につきましても好調に推移しています。
EC事業では、基幹3店と連動した企画や展開商品の拡大によりお客さまの利便性向上に取り組んでまいりました。2018年1月より順次全国の三越伊勢丹各支店・地域店におきまして、各店の情報をお客さまに発信する新たな販促手法として「ストアアプリ」の導入を開始しました。お客さまが日頃ご利用される店舗を選択いただくことで、その店舗の情報をタイムリーにお届けできるとともに、アプリからオンラインストアへの直接アクセスも可能になりました。今後も、デジタルを活用した顧客接点の拡大の取り組みを進めてまいります。
このセグメントにおける、売上高は1,144,486百万円(前連結会計年度比0.6%減)、営業利益は14,484百万円(前連結会計年度比30.6%増)となりました。
クレジット・金融・友の会業
クレジット・金融・友の会業におきましては、株式会社エムアイカードが、グループ外部でのカード取扱高拡大、ゴールドカードの会員拡大に取り組んだことにより売上高が伸長しました。カード会員の拡大に向けて、百貨店カードにプラチナグレードを加え、国分寺ミーツ、名古屋ラシックではオリジナルカードを発行いたしました。年会費に幅を持たせ、お客さまのご利用ニーズに合わせたカードのラインナップを揃えることで、エムアイカード会員をグループ内外に拡大すべく、将来への投資を行ってまいりました。また、百貨店カードの獲得においては、エムアイポイントの活用やWEBチャネルでの獲得など、新たな検証を積極的に実施したことなどから販売管理費が増加し、営業利益は一時的に減少いたしました。
グループのポイントプログラムである「エムアイポイント」は、その活用範囲をグループ外にも広げてまいります。また「エムアイカード」は、のれんを越えて百貨店カードの名称・デザインを統一することで百貨店全体の会員規模拡大を目指すと同時に、積極的にグループ外企業との提携カードの発行を推進し、引き続き、業績の拡大に取り組んでまいります。
このセグメントにおける、売上高は38,906百万円(前連結会計年度比3.0%増)、営業利益は5,364百万円(前連結会計年度比0.3%減)となりました。
小売・専門店業
小売・専門店業につきましては、収益力の改善を図るべく株式会社三越伊勢丹フードサービスにおいて2018年1月にクイーンズ伊勢丹大宮店、2月に同ひばりが丘店を閉店した一方で、3月に横浜相鉄ジョイナス内「FOOD& TIME ISETAN YOKOHAMA」に出店いたしました。
クイーンズ伊勢丹の既存店につきましては、高収益商品の強化や宣伝費をはじめとした効率的な販売管理費の運用等の構造改革を行ってまいりました。今後は、2017年度に進めた自主再建策に加え、スーパーマーケット事業分野において改革の実績をもつ株式会社丸の内キャピタルとの資本業務提携を通じ、新たに設立した株式会社エムアイフードスタイルとして早期の利益拡大を目指してまいります。
株式会社マミーナは、債務超過を解消すべく新ブランドの導入なども行ってまいりましたが、2018年3月に事業を終了いたしました。
このセグメントにおける、売上高は54,833百万円(前連結会計年度比2.2%減)、営業損失は1,226百万円(前連結会計年度は営業損失1,154百万円)となりました。
不動産業
不動産業につきましては、安定的な収益を確保すべく当社グループの保有する不動産活用を推進し、株式会社三越伊勢丹不動産が資本業務提携先である野村不動産株式会社との共同分譲事業の取り組みを行い、増収増益となりました。
また、株式会社三越伊勢丹プロパティ・デザインは、2018年3月に横浜相鉄ジョイナス内に「FOOD&TIME ISETAN YOKOHAMA」、4月に国分寺駅北口に地域密着型新規商業施設「ミーツ国分寺」を開業し、商業施設運営を手掛けております。
(「ちょっと上質なライフスタイル」と「集いの場」を提案する快適なデイリープレイス)をストアコンセプトとするミーツ国分寺は、ヒトが集まり、モノが集まり、情報が集まる、地域の新たなランドマークを目指します。
さらに海外においては、2017年7月にフィリピンにおける不動産複合開発事業への参画について発表しました。「日本」をコンセプトとした住宅分譲事業および日本での小売事業ノウハウを活かした商業施設開発に取り組むことで、フィリピンにおいて上質で新しいライフスタイルの提案をしてまいります。
今後も、グループの保有する国内外の優良不動産を活用した、収益性のある事業機会の創出に向けた検討を進めてまいります。
このセグメントにおける、売上高は45,071百万円(前連結会計年度比8.2%増)、営業利益は6,614百万円(前連結会計年度比2.6%増)となりました。
その他
美容事業の株式会社ソシエ・ワールドおよび旅行事業の株式会社ニッコウトラベルを子会社化したこと等により売上高は前期比18.6%増となり、百貨店と親和性の高い事業におきましては今後も最大限のシナジー効果を目指してまいります。一方、デジタル戦略の推進に伴い、情報処理サービス業の株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズにおけるシステム投資に伴う減価償却費が増加いたしました。
お客さまの関心に合わせた新しい事業の創出を目指すとともに、不採算事業の見直しなどの構造改革を引き続き進めてまいります。
なお、このセグメントにおける、売上高は91,749百万円(前連結会計年度比18.6%増)、営業損失は1,033百万円(前連結会計年度は営業利益1,920百万円)となりました。
当連結会計年度末の総資産は1,284,208百万円となり、前連結会計年度末に比べ27,866百万円減少しました。これは主に、商品及び製品、現金及び預金が減少したことなどによるものです。
負債合計では696,116百万円となり、前連結会計年度末から36,175百万円減少しました。これは主に、有利子負債が減少したことなどによるものです。
また、純資産は588,091百万円となり、前連結会計年度末から8,308百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失の計上等により利益剰余金が減少した一方で、為替換算調整勘定及び、保有する投資有価証券の時価上昇に伴いその他有価証券評価差額金の増加したことなどによるものです
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて6,054百万円減少し、53,969百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、72,972百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ収入が37,598百万円増加しました。これは主に、売上債権が減少(前期は増加)したことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、26,981百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ支出が13,932百万円減少しました。これは主に、前期は連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が発生したことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、52,753百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ支出が55,166百万円増加しました。これは主に、コマーシャル・ペーパーによる調達額が減少したことなどによるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績及び受注実績
当社及び当社の関係会社においては、その他事業の一部に実績がありますが、当社グループ全体の事業活動に占める比重が極めて低いため、記載を省略しております。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前連結会計年度比
(%)
百貨店業1,141,957△0.7
クレジット・金融・友の会業21,6566.3
小売・専門店業42,611△0.6
不動産業27,7088.3
その他34,929138.0
合計1,268,8651.2

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5「経理の状況」の1「連結財務諸表」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の分析
1)概要
当社グループの当連結会計年度の経営成績の概要として、連結売上高は1,268,865百万円(前連結会計年度比1.2%増)、連結営業利益は24,413百万円(前連結会計年度比2.0%増)、連結経常利益は27,325百万円(前連結会計年度比0.3%減)を計上しました。特別損益及び税金費用等を控除した親会社株主に帰属する当期純損失は960百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益14,976百万円)となりました。以下、連結財務諸表に重要な影響を与えた要因について分析します。
2)売上高
連結売上高は、1,268,865百万円となりました。中核の百貨店業では、訪日観光客増加や株高による資産効果もあり一部高額品の取り扱いなどは堅調に推移しました。一方、本年に入り円高傾向の強まりや株価下落などによる成長の減速や訪日観光客数の下押しリスクが懸念されます。
このような状況のもとで、当社は2017年11月に次期3ヶ年計画(2018~2020年度)を発表いたしました。次の成長に向けて「収益体質の強化」と「事業構造の転換」の2軸を掲げ、百貨店がここ数十年変えてこなかった「ビジネスモデル改革」を目指しております。2017年度は同計画の助走段階として、「構造改革」「収益体質の強化」に重点的に取り組み、不採算事業の改革、コスト構造の改革、要員政策、在庫リスクの先行処理などに着手してまいりました。
3)販売費及び一般管理費
連結の販売費及び一般管理費は342,869百万円(前連結会計年度比0.3%増)となりました。コスト構造改革として、業務の効率化、宣伝費削減等、徹底したコストコントロールを行い削減に努めてまいりましたが、前連結会計年度に新規連結範囲に加わった会社の影響により、前年を上回る実績となりました。
4)営業外損益
営業外損益は2,911百万円の利益となりました。営業外収益には未回収商品券受入益5,550百万円などを計上しました。また、営業外費用には商品券回収損引当金繰入額5,500百万円などを計上しました。
5)特別損益
特別利益として1,232百万円を計上いたしました。主な内容は投資有価証券売却益1,147百万円などです。また特別損失として26,124百万円を計上いたしました。主な内容は減損損失11,187百万円、事業構造改善費用5,030百万円、店舗閉鎖損失2,415百万円など構造改革にともなう特別損失となります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりです。
当社グループの運転資金需要の主なものは、商品、原材料等の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また投資資金需要の主なものは、店舗のリモデル・設備の修繕・新規開発等の設備投資等であります。
運転資金と投資資金については、営業キャッシュ・フローでの充当を基本とし必要に応じて資金調達を実施しております。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。