有価証券報告書-第13期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 14:06
【資料】
PDFをみる
【項目】
155項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により、大きな影響を受けました。世界的な人の移動の停滞や物の移動制限、対面サービス提供の停止等によりサプライチェーンの寸断が進み、国内においても2020年4月~6月の実質GDP成長率は前期比△7.9%、年率△28.1%と大きく停滞しました。2020年4月には緊急事態宣言が発出され、当社グループも、臨時休業(一部店舗は部分休業や時間短縮)を実施し、百貨店業およびその他事業の売上高がほぼ消滅する等多大な影響がありました。第1回緊急事態宣言解除後は、内需において特別定額給付金の支給、Go Toキャンペーン等の政策もあり低迷していた消費は持ち直してきたものの、国内景気はインバウンド需要の回復の遅れや、感染症再拡大による緊急事態宣言の再発出もあり、雇用や所得の伸び悩みにより消費マインドは低迷が続き、不確実性が高い中で推移しました。
このような中にあって、当社グループは2018年11月に発表した「三越伊勢丹グループ3ヶ年計画」において掲げた目指す姿「オンラインとオフラインのマッチングプラットフォーマー」の実現に向けて進めておりましたが、社会環境・消費動向の変化とその後の状況を踏まえ、戦略の一部修正とスピードの向上を図るため、昨年11月に一旦取り下げ、新たな中期計画の策定を進めることとしました。
なお、2020年度は、三越恵比寿店、イセタンハウス、バンコク伊勢丹など収益力に課題のあった店舗の営業終了、株式会社三越伊勢丹研究所の事業終了、株式会社三越伊勢丹不動産の株式譲渡など、経営資源の再配分、事業ポートフォリオの組み替えを進めてまいりました。今後も、新しいコミュニケーションの在り方、デジタルシフトの加速、それらを踏まえたビジネスモデル転換に向けた事業基盤の整備、収支構造の可視化による抜本的コスト構造改革を進めてまいります。
当連結会計年度の連結決算につきましては、売上高は816,009百万円(前連結会計年度比27.1%減)、営業損失は20,976百万円(前連結会計年度は営業利益15,679百万円)、経常損失は17,171百万円(前連結会計年度は経常利益19,771百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は41,078百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失11,187百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
百貨店業
百貨店業では、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、玄関口でのサーモグラフィによる検温や消毒など、全店舗において安心安全に最大限に配慮しご利用いただける体制を整え、お客さまをお迎えしてきましたが、緊急事態宣言発出に伴う休業や時短営業を実施した影響で大幅な減収となりました。
海外におきましても、2020年2月以降、中国・東南アジア・米国などを中心に、政府の規制強化の中順次休業を余儀なくされ、前年を大きく下回りました。
感染の収束が見えない状況が続く中でありますが、伊勢丹新宿本店・三越日本橋本店を中心にラグジュアリーブランドや時計・宝飾など付加価値の高い商品の売上は好調に推移しました。9月には三越日本橋本店新館7階に「ビックカメラ日本橋三越」が増床オープンし、ご好評をいただいているコンシェルジュ接客に加え、新たにフィットネス機器の提案やリフォームカウンターを新設し、サービスを拡充しています。地域店舗では伊勢丹新宿本店・三越日本橋本店からの商品お取り寄せによる外商顧客向けサービスが大きく伸長するなど、リモート接客による接客体験向上に向けた取組みもスタートしました。
オンライン推進の取組みでは、6月にECサイトを刷新し、同時にリリースした三越伊勢丹アプリにより、店舗へ来店することなくシームレスに百貨店のサービスをご利用いただける体制が整いました。
三越伊勢丹ECサイトでは食料品・住関連など巣ごもり需要による稼働が高まったことを受け、年末年始のオケージョン・在宅需要についてのオンライン提案を強化し、クリスマスケーキやおせち、福袋のオンライン予約・販売が伸長しました。また、食品宅配の「ISETAN DOOR」、化粧品EC「meeco」についても大きく伸長し、2020年度オンライン売上高合計で300億円を上回る結果となりました。
11月にはリアル店舗と同様のショッピング体験をオンライン上で提供するアプリ「三越伊勢丹リモートショッピング」を立ち上げ、トライアルを開始いたしました。家にいながら百貨店ならではの接客を1to1でお楽しみいただけるコンテンツとしてご好評をいただいています。
さらに、新しい取組みとして、仮想の都市空間でユーザー同士が会話やショッピングを楽しめるスマートフォン向けアプリ「レヴ ワールズ(REV WORLDS)」をスタートいたしました。リアル店舗では実現できないサービスを掛け合わせることで新しい顧客体験を提供するとともに、他社コンテンツを誘導するなどして、VRプラットフォームの拡大にも挑戦しています。
一方で、三越恵比寿店を2月に営業終了しました。営業終了に際し、ご不便をお掛けいたしますことをお詫びいたしますとともに、長年のご愛顧に心より御礼申し上げます。
このセグメントにおける、売上高は752,131百万円(前連結会計年度比27.4%減)、営業損失は30,302百万円(前連結会計年度は営業利益2,203百万円)となりました。
クレジット・金融・友の会業
クレジット・金融・友の会業におきましては、株式会社エムアイカードが、百貨店カードおよび外部企業との提携カードの新規会員獲得やカードの利用促進による取扱高の拡大に取組みました。
新型コロナウイルス感染症拡大防止に伴う臨時休業や営業時間短縮等によって、グループ百貨店内での取扱高が大きく減少し、グループ外においても、通販やスーパー・食品、家電分野は好調であるものの、飲食や旅行分野の取り扱いが低迷する結果となりました。
グループ百貨店内でのカード獲得が苦戦したため、営業拡大の施策として、WEBチャネルでの獲得強化、Apple Pay導入による会員利便性の向上と外部利用促進、新しい顧客層の開拓のためのグループ外企業との提携カードの発行等に取組みました。
今後は、前述した当年度の取組みの継続に加え、世の中のデジタル化の進展や、お客さまのニーズに合ったサービスを展開し、取扱高および収益の拡大につなげてまいります。
このセグメントにおける、売上高は32,542百万円(前連結会計年度比15.7%減)、営業利益は4,450百万円(前連結会計年度比21.5%減)となりました。
不動産業
不動産業におきましては、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言を受け、商業施設の休業や営業時間の短縮を余儀なくされたため大幅な減収となりました。
レジデンス事業においては、事業の選択と集中の一環として株式会社三越伊勢丹不動産を2021年1月に株式譲渡いたしました。このため通年では減収減益となりました。
株式会社三越伊勢丹プロパティ・デザインの建装事業においても、三越伊勢丹の店舗やラグジュアリーホテルの内装デザイン設計・工事・個人住宅のリフォーム・リノベーション工事等の受注は堅調であるものの、コロナ禍で工事の延期等が発生した影響を受け、減収減益となりました。
このセグメントにおける、売上高は28,367百万円(前連結会計年度比19.9%減)、営業利益は5,440百万円(前連結会計年度比8.9%減)となりました。
その他
その他事業におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、減収減益となりましたが、一部の企業につきましては増益となりました。株式会社三越伊勢丹ビジネス・サポートは、既存クライアントの受託領域拡大および新規クライアントの獲得を進め、増益となりました。株式会社三越伊勢丹ギフト・ソリューションズは、後方部門の効率化やビジネスフローの見直し等の構造改革に取組み、減収ながら増益を確保しました。
一方で、海外旅行が主力商品である株式会社三越伊勢丹ニッコウトラベルや美容事業の株式会社ソシエ・ワールドは大幅な減収となりました。株式会社三越伊勢丹ニッコウトラベルは、海外旅行がコロナ禍で通期運航がゼロとなり、国内旅行の回復も9月以降と遅れたため、大きく減収となりました。
なお、当社は事業構造改革、ビジネスモデル改革を進める中で、エステ事業を取り巻く環境の変化、今後の株式会社ソシエ・ワールドの事業の方向性を勘案した結果、株式を譲渡することといたしました。
今後の業績回復に向け、構造改革やコスト削減に取組むとともに、引き続き「お客さまの生活のさまざまなシーンでお役に立つこと」の実現や、百貨店業との連携強化による価値創造に取組んでまいります。
このセグメントにおける、売上高は63,656百万円(前連結会計年度比22.8%減)、営業損失は619百万円(前連結会計年度は営業利益1,618百万円)となりました。
当連結会計年度末の総資産は1,198,303百万円となり、前連結会計年度末に比べ25,497百万円減少しました。これは主に、連結子会社であった株式会社三越伊勢丹不動産の全株式を譲渡したことにより連結範囲から除外となったため、有形固定資産等が減少したことなどによるものです。
負債合計では690,027百万円となり、前連結会計年度末から16,388百万円増加しました。これは主に、新型コロナウイルス感染症拡大により業績の先行きが不透明な状況であることを踏まえ、安定的な資金確保のために有利子負債が増加したことなどによるものです。
また、純資産は508,275百万円となり、前連結会計年度末から41,885百万円減少しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことなどによるものです。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて26,138百万円増加し、102,797百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,197百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ収入が15,083百万円減少しました。これは主に、新型コロナウイルス感染症による大幅な売上高減少などにより、税金等調整前当期純損失を計上したことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、4,737百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ支出が5,228百万円減少しました。これは主に、株式会社三越伊勢丹不動産の株式売却収入を計上したことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、29,733百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ収入が9,474百万円増加しました。これは主に、前連結会計年度に実施した自己株式の取得による支出が減少したことなどによるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績及び受注実績
当社及び当社の関係会社においては、その他事業の一部に実績がありますが、当社グループ全体の事業活動に占める比重が極めて低いため、記載を省略しております。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前連結会計年度比(%)
百貨店業749,522△27.4
クレジット・金融・友の会業20,464△11.1
不動産業26,505△17.8
その他19,517△37.4
合計816,009△27.1

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載しております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の(重要な会計上の見積り)に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の分析
1)概要
当社グループの当連結会計年度の経営成績の概要として、連結売上高は816,009百万円(前連結会計年度比27.1%減)、連結営業損失は20,976百万円(前連結会計年度は営業利益15,679百万円)、連結経常損失は17,171百万円(前連結会計年度は経常利益19,771百万円)を計上しました。特別損益及び税金費用等を控除した親会社株主に帰属する当期純損失は41,078百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失11,187百万円)となりました。
以下、連結財務諸表に重要な影響を与えた要因について分析します。
2)売上高
連結売上高は、816,009百万円となりました。新型コロナウイルス感染症が拡大する中、百貨店店舗玄関口でのサーモグラフィによる検温や消毒など、全店舗において安心安全に最大限に配慮しご利用いただける体制を整えると共に、EC事業の強化などを進めてまいりましたが、店舗休業や営業時間の短縮、外出や消費行動の自粛、訪日外国人の渡航禁止等の影響を受けて大きく減少しました。
3)販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は248,542百万円(前連結会計年度比19.0%減)となりました。各社でコスト構造改革を進め、人件費、宣伝費、修理費などの経費削減を進めてまいりました。
4)営業外損益
営業外損益は3,805百万円の利益となりました。営業外収益には未回収商品券受入益6,722百万円、固定資産受贈益3,247百万円等を計上しました。また、営業外費用には商品券回収損引当金繰入額6,445百万円等を計上しました。
5)特別損益
特別利益として13,150百万円を計上いたしました。主な内容は関係会社株式売却益7,151百万円等です。また特別損失として26,975百万円を計上いたしました。主な内容は新型コロナウイルス感染症による損失12,637百万円、減損損失6,605百万円、事業構造改善費用2,592百万円等です。
6)資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、充分な流動性の確保及び財務健全性の維持を常にめざし、安定的な営業キャッシュ・フローの創出と幅広い資金調達手段の確保に努めております。
運転資金及び収益基盤拡大に必要な投融資資金は、営業キャッシュ・フローに加え、銀行借入金、社債、コマーシャル・ペーパー等により賄っております。
また、一時的な資金不足に備え、主要取引銀行とのコミットメントライン契約及び当座借越契約、並びにコマーシャル・ペーパー発行枠により、充分な流動性を確保しております。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。