有価証券報告書-第36期(平成31年2月1日-令和2年1月31日)

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2020/04/23 15:32
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「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の当社グループを取りまく環境としましては、センシング技術、通信技術、AI関連技術等の発展やそれらの利活用コストの低減を背景に、IoT(Internet of Things)関連市場やそれを支える5G通信技術が急速に成長しつつあります。当社グループは、これらの市場環境と自社の技術的優位性・事業経験を最大限に活用して中期的に大きな事業成長を実現すべく、製品開発投資・M&A等戦略投資・営業及び管理体制の強化を加速・積極化しております。
このような環境の下、当社グループにおきましては、前連結会計年度において2期連続の増収を果たし、当連結会計年度は安定的な利益成長を維持しつつ成長分野への製品開発投資と事業開拓を継続し、中長期的な事業成長へと繋げていく年と位置付け、IoT分野、電子出版分野及びネットワーク分野を注力事業として事業拡大に取り組んでまいりました。
その結果、上記注力分野においては、順調に成長し当初計画の水準となりました。その一方で海外事業においては、当連結会計年度に買収したNetRange MMH GmbHの寄与はあったものの、同社の買収関連費用の発生や車載向けマルチメディアコンテンツ配信プラットフォームの事業進捗が当初想定より遅れた影響により売上高・営業利益ともに当初計画を下回りました。
以上により、当連結会計年度の業績は、売上高94億22百万円(前年同期比15.8%増加)、経常利益4億30百万円(前年同期比15.4%減少)となり、前連結会計年度との比較においては増収減益となりました。
なお、当連結会計年度において、当社の連結子会社であるIP Infusion Inc.は、米国の大手情報通信・メディアコングロマリットであるAT&T Inc.の子会社との間で通信キャリア向けネットワーク機器のホワイトボックス(ハードウェアとソフトウェアの分離)ソリューションに関するライセンス契約及び業務提携契約を締結し、「DANOS-Vyatta edition」の開発販売事業を開始いたしました。「DANOS-Vyatta edition」は、現在AT&T Inc.のネットワークの実運用に使われており、通信事業者のネットワーク環境に求められる豊富な機能を備え、複数のハードウェアベンダーを選択して統合できるホワイトボックス型インフラ構築に必要な柔軟性を実現しています。
今後IP Infusion Inc.は、本提携を通じて従来のネットワークモデルに取って替わるコスト効率に優れた選択肢としてホワイトボックス型のソリューション(「OcNOS®」及び「DANOS-Vyatta edition」)の導入促進を図るとともに、ホワイトボックス型インフラ構築への顧客ニーズに対応してまいります。
以下、当連結会計年度における各セグメントの取り組みをご報告いたします。
○ 国内事業
センシング技術、通信技術、クラウド技術等を活用した各種IoTソリューションを提供するIoT分野と、スマートデバイス、情報家電や各種デバイス向けに豊富な搭載実績を持つ高性能・高機能ウェブブラウザ「NetFront® Browser」シリーズをはじめとした組み込みソフトウェア製品を提供するWebプラットフォーム分野、ならびに高度な表現力と多彩なコンテンツに対応する汎用性を兼ね備え、ユーザー向けアプリケーションからコンテンツ配信システム、サーバーシステムまでを包括的に提供するEPUB 3対応の電子出版ソリューション「PUBLUS®」を中核とする電子出版分野を主軸に事業展開しております。また、台湾子会社を通じて、現地に進出する日本の通販事業者向けに、業務支援システムや広告分析機能等を統合したクラウドサービス「CROS®」の提供を行うほか、国内子会社である株式会社ACCESS Worksにおいて各種ソフトウェア・システム開発の強化に取り組んでおります。
IoT分野の取り組みとしましては、各種センサー、IoTゲートウェイ機器向けエッジコンピューティングエンジン、AI機能を搭載したIoTカメラ、IoTサービス開発・運用プラットフォーム等の多彩なIoT関連製品・技術の開発を推進しており、センサーデバイスから個別アプリケーション、クラウド基盤までをワンストップで提供可能という当社の強みを活かし、様々な業界においてIoTサービス開発・構築案件の受注に取り組んでおります。Webプラットフォーム分野につきましては、TV向けブラウザにおける高いシェアの維持に努めつつ、車載機器向けに車両制御や交通情報等の運転支援情報と各種コンテンツの視聴等の娯楽情報を統合して提供する車載インフォテインメント需要への対応を図っております。また、電子出版分野における取り組みとしましては、有力な顧客基盤である大手出版社や独自コンテンツを保有する事業者との関係強化を推進するとともに、購読履歴の分析やプロモーション支援等の新たなビジネスモデルに対応したプラットフォームの機能強化とサービス提供範囲の拡大による収益拡大に取り組む等、堅調に成長している電子出版市場においてマーケットシェア及び事業領域の拡大に努めております。
当連結会計年度における当セグメントの業績につきましては、Webプラットフォーム分野・電子出版分野は前期比増収となりましたが、製品開発投資の強化に伴う減価償却費の増加や販売及び管理体制強化のための費用増が先行し、セグメント全体の前期比で増収減益となりました。
国内事業前連結会計年度当連結会計年度前年同期比
外部顧客への売上高5,025百万円5,884百万円17.1%
セグメント損益670百万円643百万円△4.0%

○ 海外事業
ドイツ・中国・韓国に現地法人を設置し、海外市場におけるスマートデバイス及び情報家電関連分野向けにブラウザ製品等のWebプラットフォームの提供を行っております。
ドイツにおきましては、ウェブとの融合が進む車載機器やTV・セットトップボックス等の情報家電向けに、多彩かつ高付加価値なインターネットサービスの提供に適したHTML5対応のブラウザソリューションを開発・展開するとともに、新規事業として、あらゆるスマートデバイスへセキュアにマルチメディアコンテンツ配信を実現し、あわせて視聴履歴の分析等の事業者向けサービスを可能とする「ACCESS Twine™」シリーズの拡販に努めております。特に、自動運転技術の発展に伴い市場が立ち上がりつつある車載インフォテインメント向け分野に注力し、高付加価値なサービスプラットフォームを提供し、ストック収益基盤を構築する方針です。
中国・韓国における取り組みとしましては、現地の大手情報家電メーカー向けにブラウザ製品を提供するほか、本社で新規開発・事業化したソリューションの現地展開を図っております。
当連結会計年度における当セグメントの業績につきましては、買収したNetRange MMH GmbHの寄与はあったものの、同社の買収関連費用の発生や車載向けマルチメディアコンテンツ配信プラットフォームの事業進捗が当初想定より遅れた影響により、セグメント全体の前期比で減収減益となりました。
海外事業前連結会計年度当連結会計年度前年同期比
外部顧客への売上高1,064百万円998百万円△6.2%
セグメント損益84百万円△85百万円-

○ ネットワークソフトウェア事業
米国子会社IP Infusion Inc.を中核としてインドやカナダ等に現地法人を設置し、既存ビジネスであるネットワーク機器向け基盤ソフトウェア・プラットフォーム「ZebOS®」シリーズの事業基盤維持に努めるとともに、新規分野として、ホワイトボックス向け統合Network OS「OcNOS®」の事業拡大に注力しております。ホワイトボックスは、5G時代を迎え更なる通信トラフィックの増加が見込まれる中、データセンター事業者、通信キャリア、IXP(インターネット相互接続ポイント)事業者等においてネットワークインフラ設備投資・運用コストを大幅に低減しつつ運用の自由度を高める有力な手段と目されており、米国を中心に近年急速に市場が拡大しつつあります。
前述の通り、当連結会計年度において、AT&T Inc.の子会社との間でライセンス契約ならびに業務提携契約を締結いたしました。あわせて、今後「DANOS-Vyatta edition」を、Open Optical & Packet Transport project groupを推進するテレコム・インフラ・プロジェクト(Telecom Infra Project、TIP)のDisaggregated Cell Site Gateway(DCSG)の仕様に対応させてまいります。
当連結会計年度における当セグメントの業績につきましては、「OcNOS®」の販売増やNorthforge Innovations Inc.の買収効果の通年化による売上増により、セグメント全体の前期比で増収増益となりました。
ネットワークソフトウェア事業前連結会計年度当連結会計年度前年同期比
外部顧客への売上高2,050百万円2,540百万円23.9%
セグメント損益△221百万円△171百万円-

なお、営業外収益としてNorthforge Innovations Inc.の条件付取得対価(アーンアウト対価)に係る公正価値の変動額113百万円、営業外費用としてNetRange MMH GmbHの条件付取得対価(アーンアウト対価)に係る公正価値の変動額68百万円を計上しております。
また、特別利益として当社が保有する投資有価証券の一部を売却したことによる投資有価証券売却益232百万円、特別損失として海外事業及びネットワークソフトウェア事業における要員の最適化・営業体制の刷新に伴う特別退職金88百万円を計上しております。
以上の結果、当連結会計年度における連結業績は、売上高94億22百万円(前年同期比15.8%増加)、経常利益4億30百万円(前年同期比15.4%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益4億93百万円(前年同期比30.6%増加)となりました。
当社グループの当連結会計年度末の資産は、現金及び預金が減少したものの、受取手形及び売掛金、ソフトウエア、のれんが増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ10億94百万円増加して327億83百万円となりました。
負債は、長期未払金が減少したものの、買掛金や未払法人税等が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ6億28百万円増加し25億59百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益4億93百万円を計上したこと等により、4億66百万円増加し302億24百万円となりました。その結果、自己資本比率は92.1%(前連結会計年度末は93.8%)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前連結会計年度末に比べて36億9百万円減少し、190億69百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金は4億91百万円の増加(前連結会計年度は5億85百万円の増加)となりました。その主な要因は、売上債権が12億21百万円増加した一方で、税金等調整前当期純利益5億85百万円及び減価償却費13億2百万円を計上したことであります。前連結会計年度との比較では、減価償却費及び売上債権が増加いたしました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金は41億21百万円の減少(前連結会計年度は31億58百万円の減少)となりました。その主な要因は、定期預金の払戻による収入が3億2百万円であった一方で、無形固定資産の取得による支出が35億3百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が7億8百万円であったことであります。前連結会計年度との比較では、無形固定資産の取得による支出が増加いたしました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金は23百万円の減少(前連結会計年度は4億円の減少)となりました。その要因は、配当金の支払額1億16百万円があった一方で、引出制限付預金の預入による支出が1億64百万円、引出制限付預金の引出による収入が3億28百万円であったことであります。前連結会計年度との比較では、引出制限付預金の預入による支出が減少し、引出による収入が発生いたしました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
国内事業4,624,038126.7
海外事業495,822100.8
ネットワークソフトウェア事業3,066,171189.8
合計8,186,032142.2

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.金額は販売価格によっており、ソフトウエアのうち自社開発分(資産計上分)を含んでおります。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
4.ネットワークソフトウェア事業の増加は、製品開発投資(自社開発のソフトウェア)によるものです。
b. 受注実績
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(千円)前年同期比(%)受注残高(千円)前年同期比(%)
国内事業3,759,398114.1596,140108.8
海外事業301,08671.227,064118.8
ネットワークソフトウェア事業717,86990.4155,94447.5
合計4,778,353105.9779,14986.7

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.ネットワークソフトウェア事業における受注残高の減少は、ビジネスモデル転換によるものです。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
国内事業5,884,123117.1
海外事業998,38493.8
ネットワークソフトウェア事業2,540,436123.9
合計9,422,944115.8

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
Ufi Space Co., Ltd.--1,095,60011.6

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断をおこなっておりますが、不確実性が内在しているため、将来生じる実際の結果と異なる可能性があります。
当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4.会計方針に関する事項」に記載の通りであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績及び財政状態の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
(資本の財源及び資金の流動性についての分析)
当社グループは、自社製品・サービス提供によるストック収益を中心とし、かつグローバルにスケール可能な事業構造への変革を推進しており、その実現にあたっては、通常の事業活動に加え、保有資金を有効活用することによって製品開発投資やM&A等の外部成長施策を遂行することを想定しております。なお、2021年1月期における製品開発投資は「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおり、約27億81百万円を計画しております。当社グループの当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は190億69百万円であることから、これらの資金需要については手元資金及び営業活動によるキャッシュ・フローによって充当することを想定しており、また、十分な流動性を確保可能と認識しております。