有価証券報告書-第39期(2022/02/01-2023/01/31)

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2023/04/21 15:13
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145項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度(2022年2月1日~2023年1月31日)における世界経済は、ウクライナにおける紛争の長期化に端を発したエネルギー価格の高騰に加え、半導体をはじめとする原材料の不足や世界的なインフレの進行が見られる等、経済活動への悪影響が懸念される状況が続いており、また、為替相場が急激に変動し大幅な円安となりました。他方、新型コロナウイルス感染症の拡大により制限を受けていた社会・経済活動は正常化へ向けて着実に進んでおり、その過程で急速に進展した社会のデジタル化が定着しつつあります。
このような環境下において、当社グループはホワイトボックス市場の本格的な立ち上げによるネットワーク事業の中長期的な成長実現に向けた事業基盤の構築やIoT事業・Webプラットフォーム事業の安定化に取り組んでまいりました。
その結果、ネットワーク事業の売上高が前期比2倍超となる成長を達成し過去最高を実現する等、当連結会計年度の売上高は大幅増収となり、またセグメント利益は全セグメントにおいて改善する等、為替相場の変動に伴う影響はありましたが事業面においては概ね順調に推移し、当連結会計年度の業績は、売上高130億60百万円(前年同期比32.5%増加)となり9期ぶりに100億円台を回復し、営業損失17億7百万円(前連結会計年度は営業損失32億19百万円)となり、前連結会計年度との比較においては増収増益となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、製品・サービス単位でのグローバルでの連携強化や更なるシナジー創出を企図した事業セグメントの変更を行っております。国内市場を中心としたIoT分野等の「IoT事業」、日本のWebプラットフォーム分野及びその傘下に欧州、中国、韓国の海外拠点を加えた「Webプラットフォーム事業」、米国子会社IP Infusion Inc.を中核とした「ネットワーク事業」と区分しており、これに伴い、以下の当連結会計年度の比較・分析は、変更後のセグメント区分に基づいております。セグメントに関する詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (セグメント情報等) セグメント情報 1.報告セグメントの概要 (3) 報告セグメントの変更等に関する事項」に記載のとおりであります。
○ IoT事業
通信技術、クラウド技術、アプリ開発力、センシング技術等をワンストップで提供できる強みを活かし、企業のいかなるDX(デジタルトランスフォーメーション)需要にも対応できるIoTプロフェッショナルサービスや、自社開発の各種IoTソリューションを提供するIoT分野を主軸に事業展開しております。また、高度な表現力と多彩なコンテンツに対応する汎用性を兼ね備え、ユーザー向けアプリケーションからコンテンツ配信システム、サーバーシステムまでを包括的に提供するEPUB 3対応の電子出版・ICT教育ソリューション「PUBLUS®」シリーズや、アジア地域に進出する日本の通販事業者向けに、オムニチャネルでの販路拡大機能と物流等のバックオフィス機能を統合した業務支援クラウドサービス「CROS®」の提供を行っております。
当連結会計年度につきましては、前連結会計年度に実施した大型のライセンス契約の反動により電子出版分野における減収や、「CROS®」についてもウクライナにおける紛争に伴う原材料不足による当社顧客の製品販売減の影響を受けた減収がありましたが、IoT分野では引き続き通信業、建設業、及び各種インフラ業等における旺盛な各種DX需要を背景に位置情報の利活用やエネルギーマネジメント等に関連するプロフェッショナルサービスの受注が増加したことから、売上高はその他分野の減収の影響を吸収して前期比で横ばいとなりました。他方、セグメント利益についてはIoT分野での売上増に加え、電子出版分野での収益改善施策が奏功し黒字化いたしました。
IoT事業前連結会計年度当連結会計年度前年同期比
外部顧客への売上高5,541百万円5,455百万円△1.6%
セグメント損益△126百万円66百万円-


○ Webプラットフォーム事業
ドイツ・中国・韓国に設置している現地法人と連携し、国内外の市場においてスマートデバイス、情報家電や各種デバイス向けに豊富な搭載実績を持つ高性能・高機能ウェブブラウザ「NetFront® Browser」シリーズをはじめとした組み込みソフトウェア製品を提供しており、グローバルでのシェア拡大を推進しております。また、中長期的な成長施策としてTV・放送及び車載インフォテインメント用途向けにコンテンツや動画の配信システム・サービスプラットフォームの事業育成を図っております。
当連結会計年度につきましては、日本を含むアジア地域においては総じて当社ブラウザを搭載した最終製品の出荷台数にかかるロイヤリティ収入が堅調に推移したほか、次世代のコンテンツ配信システムに関する受注も増加しました。欧州においては一部顧客においてTV向け半導体不足に起因する最終製品の出荷減の影響を受けましたが、車載インフォテインメント分野での受注が徐々に上向きになり始める等、増収基調となりました。これらの結果、前期比で増収増益となり、黒字化いたしました。
Webプラットフォーム事業前連結会計年度当連結会計年度前年同期比
外部顧客への売上高1,844百万円2,249百万円22.0%
セグメント損益△321百万円169百万円-

○ ネットワーク事業
米国子会社IP Infusion Inc.を中核としてインドやカナダ等に現地法人を設置し、既存ビジネスであるネットワーク機器向け基盤ソフトウェア・プラットフォーム「ZebOS®」シリーズの事業基盤維持に努めるとともに、ホワイトボックス向け統合Network OS「OcNOS®」の事業拡大に注力しております。ホワイトボックスは、5G時代を迎え更なる通信トラフィックの増加が見込まれる中、データセンター事業者、通信キャリア、IXP(インターネット相互接続ポイント)事業者等においてネットワークインフラ設備投資・運用コストを大幅に低減しつつ運用の自由度を高める有力な手段と目されており、世界的に市場が拡大しつつあります。この様な環境の中、IP Infusion Inc.では通信事業者向けのWAN/LAN向け共通プラットフォーム内のCSR(Cell Site Router)やuCPE(Universal Customer Premise Equipment、汎用顧客構内設備)、データセンター向けの商用版の「SONiC distribution」といった多岐にわたるホワイトボックスソリューションを展開しております。またKGPCoやTechDataといった大手ディストリビューターやWipro LimitedといったグローバルSIerとの提携を通じ、通信事業者へのホワイトボックスソリューションやサポート等の安定的な提供に取り組んでおります。
当連結会計年度につきましては、「OcNOS®」の事業拡大にあたりTier2/3通信事業者からの案件獲得に傾注し、販売・技術パートナー網の更なる拡充に取り組み、ハードウェアも含めたバンドル調達を求める顧客需要にも対応できる体制を構築いたしました。これらの諸施策が奏功し、当連結会計年度においては約90社の新規顧客を獲得し累計で200社以上の顧客基盤に成長するとともに、前連結会計年度までに獲得した顧客からのリピート受注の件数・受注単価も順調に増加いたしました。また、「OcNOS®」はとりわけ設備投資コストを低減することの重要性の観点から新興国での採用が先行しておりますが、直近では欧州でも大型案件の受注が実現する等の事業成果も現れております。これらの結果、前期比で売上高が2倍を超える大幅な増収増益となり、当社がIP Infusion Inc.を2006年に買収して以降で最高の売上高を達成し、セグメント損益についても前期から改善いたしました。
ネットワーク事業前連結会計年度当連結会計年度前年同期比
外部顧客への売上高2,467百万円5,355百万円117.0%
セグメント損益△2,778百万円△1,941百万円-


なお、営業外収益として為替差益6億2百万円、営業外費用として投資事業組合運用損2億73百万円、特別損失として他社製品の前払ロイヤリティにかかる長期前払費用償却11億96百万円を計上しております。
以上の結果、当連結会計年度における連結業績は、売上高130億60百万円(前年同期比32.5%増加)、営業損失17億7百万円(前連結会計年度は営業損失32億19百万円)、経常損失13億37百万円(前連結会計年度は経常損失26億46百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失26億84百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失30億49百万円)となり、前連結会計年度比では増収増益となりました。
当社グループの当連結会計年度末の資産は、受取手形、売掛金及び契約資産並びに使用権資産が増加したものの、現金及び預金の減少、前払ロイヤリティの一時償却に伴うその他投資その他の資産の減少及び投資事業組合運用損の計上に伴う投資有価証券の減少等により、前連結会計年度末に比べ27億21百万円減少して252億40百万円となりました。
負債は、未払法人税等が減少したものの、買掛金やその他流動負債が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ6億9百万円増加し31億77百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失26億84百万円、為替換算調整勘定の変動額5億76百万円等により、33億31百万円減少し220億62百万円となりました。その結果、自己資本比率は87.2%(前連結会計年度末は90.6%)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前連結会計年度末に比べて35億8百万円減少し、115億84百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金は9億53百万円の増加(前連結会計年度は6億41百万円の増加)となりました。その主な要因は、税金等調整前当期純損失26億3百万円の計上、売上債権が20億40百万円増加した一方で、減価償却費38億84百万円及び長期前払費用償却11億96百万円を計上したことによるものであります。前連結会計年度との比較では、売上債権の増減額が増加した一方、投資事業組合運用損及び長期前払費用償却の計上がありました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金は29億20百万円の減少(前連結会計年度は23億48百万円の減少)となりました。その主な要因は、無形固定資産の取得による支出が26億8百万円であったことであります。前連結会計年度との比較では、投資事業組合からの分配による収入が減少いたしました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金は13億22百万円の減少(前連結会計年度は36百万円の減少)となりました。その主な要因は、自己株式の取得による支出が12億90百万円であったことであります。前連結会計年度との比較では、自己株式の取得による支出が増加いたしました。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度より、製品・サービス単位でのグローバルでの連携強化や更なるシナジー創出を企図した事業セグメントの変更を行っております。国内市場を中心としたIoT分野等の「IoT事業」、日本のWebプラットフォーム分野及びその傘下に欧州、中国、韓国の海外拠点を加えた「Webプラットフォーム事業」、米国子会社IP Infusion Inc.を中核とした「ネットワーク事業」と区分しているため、以下の数値は、変更後のセグメント区分に基づいております。
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
IoT事業3,961,70495.5
Webプラットフォーム事業1,489,261124.7
ネットワーク事業3,692,813139.3
合計9,143,779114.4

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.金額は販売価格によっており、ソフトウェアのうち自社開発分(資産計上分)を含んでおります。
b. 受注実績
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(千円)前年同期比(%)受注残高(千円)前年同期比(%)
IoT事業4,538,473147.7594,859236.7
Webプラットフォーム事業1,180,537121.185,342104.5
ネットワーク事業1,305,634130.0331,986126.9
合計7,024,644139.11,012,187170.2

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.IoT事業における受注残高の増加は、案件数の増加によるものです。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
IoT事業5,455,13598.4
Webプラットフォーム事業2,249,435122.0
ネットワーク事業5,355,521217.0
合計13,060,092132.5

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.ネットワーク事業における販売実績の増加は、顧客数の増加によるものです。
3.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
株式会社集英社1,282,81313.0--
UniLab Solutions GmbH--1,320,30410.1

4.当連結会計年度の株式会社集英社については、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
5.前連結会計年度のUniLab Solutions GmbHについては、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断をおこなっておりますが、不確実性が内在しているため、将来生じる実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績及び財政状態の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
(資本の財源及び資金の流動性についての分析)
当社グループは、自社製品・サービス提供によるストック収益を中心とし、かつグローバルにスケール可能な事業構造への変革を推進しており、特にホワイトボックスソリューションを主としたネットワーク事業での事業成長に注力しております。その実現にあたっては、通常の事業活動に加え、製品開発投資やM&A等の外部成長施策を遂行することを想定しております。なお、2024年1月期における製品開発投資は「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおり、28億74百万円を計画しております。当社グループの当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は115億84百万円であることから、これらの資金需要については手元資金及び営業活動によるキャッシュ・フローによって充当することを想定しており、また、十分な流動性を確保可能と認識しております。