有価証券報告書-第29期(2023/11/01-2024/10/31)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度におけるわが国経済は、物価高への懸念から、個人消費などに足踏みが見られたものの、インバウンド需要の増加が続き緩やかな回復基調となりました。一方、中国経済の景気減速や米国次期大統領選挙後の政策運営による日本経済への影響も懸念され、依然として先行きは不透明な状況が続いております。
このような経営環境の中、当社グループは、中期経営計画に基づき、特に今後の成長性が期待されるブロックチェーン領域に経営資源を迅速に投下し、当社が掲げる「ブロックチェーン技術の社会実装を推進し、その普及に貢献する」というミッションの実現を目指しており、当社グループがタイトルスポンサーを務めたアジア最大級のグローバルWeb3カンファレンスである「WebX」等を通して、ブロックチェーン技術に対する社会的認知やマーケットの成長への期待は高まりつつあることから、現在のサービス及び収益基盤を維持しつつ、事業横断的なクライアントやパートナーとの連携を深めるため、新たなパイプラインや協業体制を開拓しております。
当社グループでは、日本企業のWeb3.0領域への参入障壁を下げ、日本企業のトークンを伴うWeb3.0事業立ち上げに向けた法務、会計、規制面をサポートするトークノミクスの活用にも注力しており、当社子会社であるチューリンガム株式会社及び株式会社Zaifによる垂直統合型Web3.0のバリューチェーン展開を推進しており、当社グループの強みであるトークン設計・発行を中心に収益事業の拡大を目指してまいります。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高1,613百万円(前連結会計年度比650百万円のプラス)、EBITDA△927百万円(前連結会計年度はEBITDA△931百万円)、営業損失1,133百万円(前連結会計年度は営業損失1,265百万円)、経常損失1,151百万円(前連結会計年度は経常損失1,401百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失1,960百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失2,742百万円)となりました。
(※)EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費
① 経営成績及び財政状態の状況
(ⅰ)経営成績の状況
当連結会計年度における報告セグメント別の概況は以下のとおりであります。
なお、当中間連結会計期間より、当社グループの業績管理方針の変更に伴う事業の実態をより経営成績に適切に反映させるため、活発な市場が存在しない暗号資産に関して、移動平均法による原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)に基づいて計上した評価損を、従来「売上高」のマイナスとして表示しておりましたが、「売上原価」に表示の変更をしております。このため、全社及びインキュベーション事業における売上高の前連結会計年度との比較については、表示変更後の数値に組み替えて行っております。
当社グループのセグメント別の製品・サービス分類は次のとおりです。
[ブロックチェーンサービス事業]
チューリンガム株式会社においては、ブロックチェーン技術や暗号理論を用いたR&Dをベースとしながら、ブロックチェーン開発支援や受託開発、トークンエコノミクスと言われる暗号資産をどのようにサービスやプロジェクトの中で利活用するのかという、トークンのデザインやマーケットへの供給を行う際に誰にどのように分配を行っていくかといった暗号資産開発に関わる包括的なサービスを提供しています。
当連結会計年度においては、ギグワークス株式会社の子会社である株式会社GALLUSYSとの共同事業であるGameFi「SNPIT」のSNPITトークンの価値向上戦略の策定と遂行を行いました。また株式会社Drecomとの共同事業であるGameFi「Wizardry Etarnal Crypt」においては同ゲームの暗号資産であるBlood Crystal(BCトークン)が国内取引所のCoinCheckに上場いたしました。
これらのGameFi共同事業の価値向上にも引き続き従事しながらも、国内の暗号資産業界への大企業の参入が相次いでいることを事業チャンスと捉え、こうした大企業における案件獲得・関係構築を進めることでTuringumが抱える高付加価値の人材を活かしたビジネスを進めております。
株式会社Zaifにおいては、暗号資産交換業者として顧客へ暗号資産の売買に係るサービスを提供しております。2023年11月(みなし取得日は2023年9月30日)より当社グループの一員となり、新経営体制の下『赤字体質からの脱却』を目標と据えて、預り残高を活用した安定収益源の創出、コスト最適化、新規暗号資産の上場、の3つの施策を中心に事業を推進しております。
預り残高を活用した安定収益源の創出につきましては、長期保有を志向するユーザーを多く抱えていることから、ユーザー志向に合致するステーキングサービスを2024年4月より開始いたしました。具体的には、EthereumネットワークのProof of Stakeというコンセンサスアルゴリズムを活用したETH(イーサリアム)を対象通貨としたステーキングサービスとなり、当第3四半期連結累計期間以降、安定的な収益の獲得に寄与しています。また、ステーキングサービスの対象通貨として2024年7月よりXYM(シンボル)を追加いたしました。本サービスの詳細については、株式会社Zaifウェブサイト(https://zaif.jp/doc_staking)にてご覧いただけます。
コスト最適化につきましては、今期の開発計画を大幅に見直し、収益面もしくは費用面において高い確率で効果が期待できる施策及び法令やルールに準拠するための施策に絞り、あわせてインフラ費用の見直しを進めた結果、前連結会計年度比約50%のコスト削減を実現しております。
新規暗号資産の上場につきましては、グループ会社であるチューリンガム株式会社及び暗号資産の発行体との連携により有望な暗号資産の新規上場に取り組み、収益の強化を目指してまいります。当連結会計年度においては、Skeb Coin(スケブコイン)が2024年5月22日に、BORA(ボラ)が2024年6月26日にそれぞれ上場いたしました。
以上の結果、当連結会計年度のブロックチェーンサービス事業全体における業績は、株式会社Zaifを連結の範囲に含めた影響により、売上高は729百万円(前連結会計年度比510百万円のプラス)、EBITDAは△624百万円(前連結会計年度はEBITDA△34百万円)、セグメント損失は772百万円(前連結会計年度はセグメント損失312百万円)となりました。
なお、ブロックチェーンサービス事業に関するのれん償却額144百万円は当セグメント損失に含めております。
[システムエンジニアリング事業]
株式会社クシムソフトにおいては、SES事業及びシステムの受託開発事業を担っております。
SES事業につきましては、ニーズの高いオープン系を中心としたIT技術者の採用と育成により、顧客システム開発の支援、エンジニア派遣事業を拡充しております。当連結会計年度においては、参画中のプロジェクト取引が継続し、ASTERIA Warp案件での中途採用メンバーがSES事業においての参画が叶ったことで売上回復に寄与いたしました。特に当第4四半期連結会計期間の平均においては97.8%と目標稼働率を超え、2024年8月は上述のASTERIA Warp案件での参画が実現したことにより100%稼働を達成いたしました。
受託開発事業につきましては、引き続き開発納品後の運用保守案件を中心に、既存顧客からの改修案件や当社が受託したシステムの運用保守の受注はありましたが、請負契約でのASTERIA Warp案件については案件化速度が鈍化しております。なお、当連結会計年度においてもすべての案件について滞りなく納品が完了しております。今後もASTERIA Warp案件の拡大に向けて、引き続きDX支援の領域にリソースを集中していくとともに、従来のSES事業で培ったシステム内部を読み解き開発する力を組み合わせることで専門性の高いDX人材を育成し、SES事業とともに両事業の売上高及び利益向上へ寄与するよう努めてまいります。
以上の結果、当連結会計年度のシステムエンジニアリング事業全体における業績は、SES事業の稼働率低下(対前連結会計年度比)に伴う減収等により、売上高492百万円(前連結会計年度比87百万円のマイナス)、EBITDA15百万円(前連結会計年度はEBITDA64百万円)、セグメント損失40百万円(前連結会計年度比49百万円のマイナス)となりました。
なお、システムエンジニアリング事業に関するのれん償却額55百万円は当セグメント利益に含めております。
[インキュベーション事業]
暗号資産運用につきましては、当社グループ全体で複数の暗号資産への投資を行っております。保有する暗号資産のうち、活発な市場が存在する暗号資産の評価益224百万円及び暗号資産売却益150百万円を売上高に、活発な市場が存在しない暗号資産の評価損364百万円を売上原価にそれぞれ計上しました。暗号資産市場はマクロ経済全体の影響を受ける可能性があり、今後もその影響を注視して運用をしてまいります。
M&A及び事業投資につきましては、引き続き、Web3.0分野でのシナジーを追求した案件選定を視野に入れて推進してまいります。
以上の結果、当連結会計年度のインキュベーション事業全体における業績は、活発な市場が存在する暗号資産の評価益224百万円及び暗号資産売却益150百万円を売上高に、活発な市場が存在しない暗号資産の評価損364百万円を売上原価に計上した影響により、売上高391百万円(前連結会計年度は163百万円)、EBITDA△18百万円(前連結会計年度はEBITDA△759百万円)、セグメント損失19百万円(前連結会計年度はセグメント損失759百万円)となりました。
(ⅱ)財政状態の状況
(資産の部)
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて25,974百万円増加し86,538百万円となりました。流動資産の残高は前連結会計年度末に比べて26,862百万円増加し85,470百万円となりました。これは、主に信託預金が555百万円増加、利用者暗号資産が26,617百万円増加、売掛金及び契約資産が135百万円減少したことによるものであります。
固定資産の残高は前連結会計年度末に比べて887百万円減少し1,067百万円となりました。これは、主にのれんが845百万円減少、繰延税金資産が49百万円減少したことによるものであります。
(負債の部)
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べて27,475百万円増加し85,106百万円となりました。流動負債の残高は前連結会計年度末に比べて27,050百万円増加し83,447百万円となりました。これは、主に、預り暗号資産が26,617百万円増加、預り金が588百万円増加、1年内返済予定の社債が100百万円減少したことによるものであります。
固定負債の残高は前連結会計年度末に比べて425百万円増加し1,658百万円となりました。これは、主に長期借入金が900百万円増加、社債が452百万円減少したことによるものであります。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べて1,500百万円減少し1,431百万円となりました。これは、主に新株予約権の発行及び減資の影響により資本剰余金が718百万円増加、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失を計上した影響により利益剰余金が1,958百万円減少、その他有価証券評価差額金が213百万円減少したことによるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ13百万円増加し、1,541百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは628百万円のマイナス(前連結会計年度は200百万円のマイナス)となりました。これは、主に税金等調整前当期純損失1,894百万円、のれん償却額199百万円、減損損失745百万円、預託金の増加額555百万円、売上債権及び契約資産の減少額135百万円、自己保有暗号資産の減少額5百万円、利用者暗号資産の増加額26,617百万円、預り金の増加額588百万円、預り暗号資産の増加額26,617百万円、法人税等の還付額96百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは301百万円のマイナス(前連結会計年度は612百万円のプラス)となりました。これは、主に投資有価証券の売却による収入142百万円、投資有価証券の取得による支出349百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは942百万円のプラス(前連結会計年度は52百万円のマイナス)となりました。これは、主に長期借入金の借入による収入330百万円、新株予約権の行使による株式の発行による収入662百万円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の状況
(ⅰ) 生産実績
生産に該当する事項がないため、記載する事項はありません。
(ⅱ) 受注実績
当社グループの事業は、受注から売上計上までの所要日数が短く、期中の受注高と販売実績とがほぼ対応するため、記載を省略しております。
(ⅲ) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
(注)1.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
2.当連結会計年度の前年同期比(%)及び(注)1.の前連結会計年度の割合(%)は、表示組替後の前連結会計年度の売上高をもとに算定しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
本有価証券報告書提出日現在における経営者は、形式上、仮取締役らということになりますが、既に述べましたとおり、仮取締役らは、基本的には、次の取締役が選任され、就任するまでの極めて短期間のみ、保全的な意味合いで取締役としての職務を暫定的に務めるにすぎません。実際、当社グループの場合においても、仮取締役らの選任(2025年4月1日)から本有価証券報告書提出日(2025年4月28日)まで極めて短期間であり、かつ、近々開催される予定の株主総会(2025年4月30日)において、次の取締役の選任が予定されており、そのため、本項目における経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、仮取締役らの選任以前において、当時の経営者の判断を記載したものとなりますので、その旨ご留意下さい。
① 当連結会計年度の経営成績の分析
(ⅰ) 経営成績
(売上高)
当連結会計年度における売上高は1,613百万円(前連結会計年度比650百万円のプラス)となりました。このセグメント別の主たる内訳は次の通りです。
ブロックチェーンサービス事業においては、主にチューリンガム株式会社のトークンエコノミクスのコンサルティングの受注案件の遅延による影響した一方で、前連結会計年度末に連結子会社化した株式会社Zaifの業績が当連結会計年度を通じて寄与した影響により、売上高が729百万円(前連結会計年度比510百万円のプラス)となりました。システムエンジニアリング事業においては、株式会社クシムソフトのSES事業の稼働率低下(対前連結会計年度比)の影響により売上高が492百万円(前連結会計年度比87百万円のマイナス)となりました。インキュベーション事業においては、当社グループ全体で複数の暗号資産への投資の結果、活発な市場が存在する暗号資産の評価益224百万円及び暗号資産売却益150百万円を計上した影響により、売上高が391百万円(前連結会計年度比228百万円のプラス)となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度における売上原価は975百万円 (前連結会計年度比544百万円のマイナス)となりました。この主たる内訳は、ブロックチェーンサービス事業における株式会社Zaifの業績が当連結会計年度を通じて寄与した影響、インキュベーション事業における活発な市場が存在しない暗号資産の評価損364百万円を計上した影響によるものです。販売費及び一般管理費は1,772百万円(前連結会計年度比1,064百万円のプラス)となりました。この主たる内訳は、ブロックチェーンサービス事業における株式会社Zaifの業績が当連結会計年度を通じて寄与した影響によるものです。これらの結果、営業損失は1,133百万円(前連結会計年度は営業損失1,265百万円)となりました。
(営業外損益、特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における営業外収益は9百万円(前連結会計年度比18百万円のマイナス)となりました。この主たる内訳は暗号資産売却益3百万円であります。営業外費用は26百万円(前連結会計年度比137百万円のマイナス)となりました。この主たる内訳は支払利息25百万円であります。特別利益は60百万円(前連結会計年度比336百万円のマイナス)となりました。この主たる内訳は投資有価証券売却益35百万円、新株予約権戻入益19百万円であります。特別損失は803百万円(前連結会計年度比858百万円のマイナス)となりました。この主たる内訳は訂正関連費用引当金繰入額50百万円、減損損失745百万円であります。これらの結果、親会社株主に帰属する当期純損失は1,960百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失2,742百万円)となりました。
(ⅱ) 財政状態
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フローの状況)
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(資本の財源)
当社グループは、営業活動によって獲得した資金を以って事業運営を行うことを原則とし、事業会社及び銀行等金融機関からの借入により、資金調達しております。また、借入金の使途は運転資金であります。なお、当連結会計年度末における借入金を含む有利子負債の残高は1,369百万円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に関する見積りを必要とします。会計上の見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的な見積り金額を判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、異なる可能性があります。なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
前記「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (1) 継続企業の前提に関する重要事象等について」のとおり、本件株式譲渡に伴うZEDホールディングス、株式会社Zaif、株式会社クシムソフト、チューリンガム株式会社、株式会社web3テクノロジーズ及びDigital Credence Technologies Limitedの連結子会社からの除外により、2025年10月期以降、当社連結損益計算書の売上高が相当額減少することが見込まれること、仮取締役らの選任等により当社の事業等に精通する役員が不在の状況となっていることなどが、当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
当連結会計年度におけるわが国経済は、物価高への懸念から、個人消費などに足踏みが見られたものの、インバウンド需要の増加が続き緩やかな回復基調となりました。一方、中国経済の景気減速や米国次期大統領選挙後の政策運営による日本経済への影響も懸念され、依然として先行きは不透明な状況が続いております。
このような経営環境の中、当社グループは、中期経営計画に基づき、特に今後の成長性が期待されるブロックチェーン領域に経営資源を迅速に投下し、当社が掲げる「ブロックチェーン技術の社会実装を推進し、その普及に貢献する」というミッションの実現を目指しており、当社グループがタイトルスポンサーを務めたアジア最大級のグローバルWeb3カンファレンスである「WebX」等を通して、ブロックチェーン技術に対する社会的認知やマーケットの成長への期待は高まりつつあることから、現在のサービス及び収益基盤を維持しつつ、事業横断的なクライアントやパートナーとの連携を深めるため、新たなパイプラインや協業体制を開拓しております。
当社グループでは、日本企業のWeb3.0領域への参入障壁を下げ、日本企業のトークンを伴うWeb3.0事業立ち上げに向けた法務、会計、規制面をサポートするトークノミクスの活用にも注力しており、当社子会社であるチューリンガム株式会社及び株式会社Zaifによる垂直統合型Web3.0のバリューチェーン展開を推進しており、当社グループの強みであるトークン設計・発行を中心に収益事業の拡大を目指してまいります。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高1,613百万円(前連結会計年度比650百万円のプラス)、EBITDA△927百万円(前連結会計年度はEBITDA△931百万円)、営業損失1,133百万円(前連結会計年度は営業損失1,265百万円)、経常損失1,151百万円(前連結会計年度は経常損失1,401百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失1,960百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失2,742百万円)となりました。
(※)EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費
① 経営成績及び財政状態の状況
(ⅰ)経営成績の状況
当連結会計年度における報告セグメント別の概況は以下のとおりであります。
なお、当中間連結会計期間より、当社グループの業績管理方針の変更に伴う事業の実態をより経営成績に適切に反映させるため、活発な市場が存在しない暗号資産に関して、移動平均法による原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)に基づいて計上した評価損を、従来「売上高」のマイナスとして表示しておりましたが、「売上原価」に表示の変更をしております。このため、全社及びインキュベーション事業における売上高の前連結会計年度との比較については、表示変更後の数値に組み替えて行っております。
当社グループのセグメント別の製品・サービス分類は次のとおりです。
セグメント | 製品・サービス |
ブロックチェーンサービス事業 | ・先端IT技術を適用するシステムの受託開発 ・先端IT技術の社会実装を目的とする受託研究 ・ブロックチェーン技術の基礎研究及びこれらに関する製品の製造及び販売並びに役務の提供 ・暗号資産交換業 |
システムエンジニアリング事業 | ・高度IT技術者の育成、ならびに紹介及び派遣事業 ・SES事業及びシステムの受託開発事業 |
インキュベーション事業 | ・経営及び各種コンサルティング事業 ・投融資業 |
[ブロックチェーンサービス事業]
チューリンガム株式会社においては、ブロックチェーン技術や暗号理論を用いたR&Dをベースとしながら、ブロックチェーン開発支援や受託開発、トークンエコノミクスと言われる暗号資産をどのようにサービスやプロジェクトの中で利活用するのかという、トークンのデザインやマーケットへの供給を行う際に誰にどのように分配を行っていくかといった暗号資産開発に関わる包括的なサービスを提供しています。
当連結会計年度においては、ギグワークス株式会社の子会社である株式会社GALLUSYSとの共同事業であるGameFi「SNPIT」のSNPITトークンの価値向上戦略の策定と遂行を行いました。また株式会社Drecomとの共同事業であるGameFi「Wizardry Etarnal Crypt」においては同ゲームの暗号資産であるBlood Crystal(BCトークン)が国内取引所のCoinCheckに上場いたしました。
これらのGameFi共同事業の価値向上にも引き続き従事しながらも、国内の暗号資産業界への大企業の参入が相次いでいることを事業チャンスと捉え、こうした大企業における案件獲得・関係構築を進めることでTuringumが抱える高付加価値の人材を活かしたビジネスを進めております。
株式会社Zaifにおいては、暗号資産交換業者として顧客へ暗号資産の売買に係るサービスを提供しております。2023年11月(みなし取得日は2023年9月30日)より当社グループの一員となり、新経営体制の下『赤字体質からの脱却』を目標と据えて、預り残高を活用した安定収益源の創出、コスト最適化、新規暗号資産の上場、の3つの施策を中心に事業を推進しております。
預り残高を活用した安定収益源の創出につきましては、長期保有を志向するユーザーを多く抱えていることから、ユーザー志向に合致するステーキングサービスを2024年4月より開始いたしました。具体的には、EthereumネットワークのProof of Stakeというコンセンサスアルゴリズムを活用したETH(イーサリアム)を対象通貨としたステーキングサービスとなり、当第3四半期連結累計期間以降、安定的な収益の獲得に寄与しています。また、ステーキングサービスの対象通貨として2024年7月よりXYM(シンボル)を追加いたしました。本サービスの詳細については、株式会社Zaifウェブサイト(https://zaif.jp/doc_staking)にてご覧いただけます。
コスト最適化につきましては、今期の開発計画を大幅に見直し、収益面もしくは費用面において高い確率で効果が期待できる施策及び法令やルールに準拠するための施策に絞り、あわせてインフラ費用の見直しを進めた結果、前連結会計年度比約50%のコスト削減を実現しております。
新規暗号資産の上場につきましては、グループ会社であるチューリンガム株式会社及び暗号資産の発行体との連携により有望な暗号資産の新規上場に取り組み、収益の強化を目指してまいります。当連結会計年度においては、Skeb Coin(スケブコイン)が2024年5月22日に、BORA(ボラ)が2024年6月26日にそれぞれ上場いたしました。
以上の結果、当連結会計年度のブロックチェーンサービス事業全体における業績は、株式会社Zaifを連結の範囲に含めた影響により、売上高は729百万円(前連結会計年度比510百万円のプラス)、EBITDAは△624百万円(前連結会計年度はEBITDA△34百万円)、セグメント損失は772百万円(前連結会計年度はセグメント損失312百万円)となりました。
なお、ブロックチェーンサービス事業に関するのれん償却額144百万円は当セグメント損失に含めております。
[システムエンジニアリング事業]
株式会社クシムソフトにおいては、SES事業及びシステムの受託開発事業を担っております。
SES事業につきましては、ニーズの高いオープン系を中心としたIT技術者の採用と育成により、顧客システム開発の支援、エンジニア派遣事業を拡充しております。当連結会計年度においては、参画中のプロジェクト取引が継続し、ASTERIA Warp案件での中途採用メンバーがSES事業においての参画が叶ったことで売上回復に寄与いたしました。特に当第4四半期連結会計期間の平均においては97.8%と目標稼働率を超え、2024年8月は上述のASTERIA Warp案件での参画が実現したことにより100%稼働を達成いたしました。
受託開発事業につきましては、引き続き開発納品後の運用保守案件を中心に、既存顧客からの改修案件や当社が受託したシステムの運用保守の受注はありましたが、請負契約でのASTERIA Warp案件については案件化速度が鈍化しております。なお、当連結会計年度においてもすべての案件について滞りなく納品が完了しております。今後もASTERIA Warp案件の拡大に向けて、引き続きDX支援の領域にリソースを集中していくとともに、従来のSES事業で培ったシステム内部を読み解き開発する力を組み合わせることで専門性の高いDX人材を育成し、SES事業とともに両事業の売上高及び利益向上へ寄与するよう努めてまいります。
以上の結果、当連結会計年度のシステムエンジニアリング事業全体における業績は、SES事業の稼働率低下(対前連結会計年度比)に伴う減収等により、売上高492百万円(前連結会計年度比87百万円のマイナス)、EBITDA15百万円(前連結会計年度はEBITDA64百万円)、セグメント損失40百万円(前連結会計年度比49百万円のマイナス)となりました。
なお、システムエンジニアリング事業に関するのれん償却額55百万円は当セグメント利益に含めております。
[インキュベーション事業]
暗号資産運用につきましては、当社グループ全体で複数の暗号資産への投資を行っております。保有する暗号資産のうち、活発な市場が存在する暗号資産の評価益224百万円及び暗号資産売却益150百万円を売上高に、活発な市場が存在しない暗号資産の評価損364百万円を売上原価にそれぞれ計上しました。暗号資産市場はマクロ経済全体の影響を受ける可能性があり、今後もその影響を注視して運用をしてまいります。
M&A及び事業投資につきましては、引き続き、Web3.0分野でのシナジーを追求した案件選定を視野に入れて推進してまいります。
以上の結果、当連結会計年度のインキュベーション事業全体における業績は、活発な市場が存在する暗号資産の評価益224百万円及び暗号資産売却益150百万円を売上高に、活発な市場が存在しない暗号資産の評価損364百万円を売上原価に計上した影響により、売上高391百万円(前連結会計年度は163百万円)、EBITDA△18百万円(前連結会計年度はEBITDA△759百万円)、セグメント損失19百万円(前連結会計年度はセグメント損失759百万円)となりました。
(ⅱ)財政状態の状況
(資産の部)
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて25,974百万円増加し86,538百万円となりました。流動資産の残高は前連結会計年度末に比べて26,862百万円増加し85,470百万円となりました。これは、主に信託預金が555百万円増加、利用者暗号資産が26,617百万円増加、売掛金及び契約資産が135百万円減少したことによるものであります。
固定資産の残高は前連結会計年度末に比べて887百万円減少し1,067百万円となりました。これは、主にのれんが845百万円減少、繰延税金資産が49百万円減少したことによるものであります。
(負債の部)
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べて27,475百万円増加し85,106百万円となりました。流動負債の残高は前連結会計年度末に比べて27,050百万円増加し83,447百万円となりました。これは、主に、預り暗号資産が26,617百万円増加、預り金が588百万円増加、1年内返済予定の社債が100百万円減少したことによるものであります。
固定負債の残高は前連結会計年度末に比べて425百万円増加し1,658百万円となりました。これは、主に長期借入金が900百万円増加、社債が452百万円減少したことによるものであります。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べて1,500百万円減少し1,431百万円となりました。これは、主に新株予約権の発行及び減資の影響により資本剰余金が718百万円増加、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失を計上した影響により利益剰余金が1,958百万円減少、その他有価証券評価差額金が213百万円減少したことによるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ13百万円増加し、1,541百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは628百万円のマイナス(前連結会計年度は200百万円のマイナス)となりました。これは、主に税金等調整前当期純損失1,894百万円、のれん償却額199百万円、減損損失745百万円、預託金の増加額555百万円、売上債権及び契約資産の減少額135百万円、自己保有暗号資産の減少額5百万円、利用者暗号資産の増加額26,617百万円、預り金の増加額588百万円、預り暗号資産の増加額26,617百万円、法人税等の還付額96百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは301百万円のマイナス(前連結会計年度は612百万円のプラス)となりました。これは、主に投資有価証券の売却による収入142百万円、投資有価証券の取得による支出349百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは942百万円のプラス(前連結会計年度は52百万円のマイナス)となりました。これは、主に長期借入金の借入による収入330百万円、新株予約権の行使による株式の発行による収入662百万円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の状況
(ⅰ) 生産実績
生産に該当する事項がないため、記載する事項はありません。
(ⅱ) 受注実績
当社グループの事業は、受注から売上計上までの所要日数が短く、期中の受注高と販売実績とがほぼ対応するため、記載を省略しております。
(ⅲ) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2023年11月1日 至 2024年10月31日) | 前年同期比 (%) |
金額(千円) | ||
ブロックチェーンサービス事業 | 729,936 | 232.4 |
システムエンジニアリング事業 | 492,188 | △15.1 |
インキュベーション事業 | 391,306 | 139.7 |
合計 | 1,613,430 | 67.6 |
(注)1.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
金額(千円) | 割合(%) | 金額(千円) | 割合(%) | |
株式会社CAICAテクノロジーズ | 101,223 | 10.51 | 81,749 | 5.07 |
2.当連結会計年度の前年同期比(%)及び(注)1.の前連結会計年度の割合(%)は、表示組替後の前連結会計年度の売上高をもとに算定しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
本有価証券報告書提出日現在における経営者は、形式上、仮取締役らということになりますが、既に述べましたとおり、仮取締役らは、基本的には、次の取締役が選任され、就任するまでの極めて短期間のみ、保全的な意味合いで取締役としての職務を暫定的に務めるにすぎません。実際、当社グループの場合においても、仮取締役らの選任(2025年4月1日)から本有価証券報告書提出日(2025年4月28日)まで極めて短期間であり、かつ、近々開催される予定の株主総会(2025年4月30日)において、次の取締役の選任が予定されており、そのため、本項目における経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、仮取締役らの選任以前において、当時の経営者の判断を記載したものとなりますので、その旨ご留意下さい。
① 当連結会計年度の経営成績の分析
(ⅰ) 経営成績
(売上高)
当連結会計年度における売上高は1,613百万円(前連結会計年度比650百万円のプラス)となりました。このセグメント別の主たる内訳は次の通りです。
ブロックチェーンサービス事業においては、主にチューリンガム株式会社のトークンエコノミクスのコンサルティングの受注案件の遅延による影響した一方で、前連結会計年度末に連結子会社化した株式会社Zaifの業績が当連結会計年度を通じて寄与した影響により、売上高が729百万円(前連結会計年度比510百万円のプラス)となりました。システムエンジニアリング事業においては、株式会社クシムソフトのSES事業の稼働率低下(対前連結会計年度比)の影響により売上高が492百万円(前連結会計年度比87百万円のマイナス)となりました。インキュベーション事業においては、当社グループ全体で複数の暗号資産への投資の結果、活発な市場が存在する暗号資産の評価益224百万円及び暗号資産売却益150百万円を計上した影響により、売上高が391百万円(前連結会計年度比228百万円のプラス)となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度における売上原価は975百万円 (前連結会計年度比544百万円のマイナス)となりました。この主たる内訳は、ブロックチェーンサービス事業における株式会社Zaifの業績が当連結会計年度を通じて寄与した影響、インキュベーション事業における活発な市場が存在しない暗号資産の評価損364百万円を計上した影響によるものです。販売費及び一般管理費は1,772百万円(前連結会計年度比1,064百万円のプラス)となりました。この主たる内訳は、ブロックチェーンサービス事業における株式会社Zaifの業績が当連結会計年度を通じて寄与した影響によるものです。これらの結果、営業損失は1,133百万円(前連結会計年度は営業損失1,265百万円)となりました。
(営業外損益、特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における営業外収益は9百万円(前連結会計年度比18百万円のマイナス)となりました。この主たる内訳は暗号資産売却益3百万円であります。営業外費用は26百万円(前連結会計年度比137百万円のマイナス)となりました。この主たる内訳は支払利息25百万円であります。特別利益は60百万円(前連結会計年度比336百万円のマイナス)となりました。この主たる内訳は投資有価証券売却益35百万円、新株予約権戻入益19百万円であります。特別損失は803百万円(前連結会計年度比858百万円のマイナス)となりました。この主たる内訳は訂正関連費用引当金繰入額50百万円、減損損失745百万円であります。これらの結果、親会社株主に帰属する当期純損失は1,960百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失2,742百万円)となりました。
(ⅱ) 財政状態
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フローの状況)
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(資本の財源)
当社グループは、営業活動によって獲得した資金を以って事業運営を行うことを原則とし、事業会社及び銀行等金融機関からの借入により、資金調達しております。また、借入金の使途は運転資金であります。なお、当連結会計年度末における借入金を含む有利子負債の残高は1,369百万円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に関する見積りを必要とします。会計上の見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的な見積り金額を判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、異なる可能性があります。なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
前記「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (1) 継続企業の前提に関する重要事象等について」のとおり、本件株式譲渡に伴うZEDホールディングス、株式会社Zaif、株式会社クシムソフト、チューリンガム株式会社、株式会社web3テクノロジーズ及びDigital Credence Technologies Limitedの連結子会社からの除外により、2025年10月期以降、当社連結損益計算書の売上高が相当額減少することが見込まれること、仮取締役らの選任等により当社の事業等に精通する役員が不在の状況となっていることなどが、当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。