有価証券報告書-第72期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/24 15:27
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当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の分析
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴うロックダウン等により、景気が急速に悪化し、極めて厳しい状況となりました。日本経済においても、緊急事態宣言の発出により経済活動が制限され、企業収益の悪化、個人消費の減退やインバウンド需要の急減など、厳しい状況が続きました。しかしながら、スナック菓子市場、シリアル食品市場においては、外出自粛要請による内食需要増加の傾向がみられ、市場規模は堅調に推移しました。
このような環境にあって、当社グループは、「長期ビジョン(2030ビジョン)」と「中期経営計画(2020年3月期~2024年3月期)」に基づき事業活動を推進するとともに、新型コロナウイルス感染症拡大を契機とした需要の変化への対応および感染症への対策に取り組みました。
国内事業においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、輸入原材料調達に遅延が生じましたが、商品政策の見直しや代替品の開発・発売を実施し、お客様への影響を最小限にとどめました。また、巣ごもり需要による急激な販売増を受けて、機動的な生産シフトで対応する等、商品の安定供給に努めました。オフィス勤務者については、モバイルワークを原則とすることで、従来から進めてきた新しい働き方をより進化させました。
また、2020年4月に「新たな食領域での事業確立」の一つとして、さつまいもの卸売事業および焼き芋等の直営販売事業を行う株式会社ポテトかいつか(以下、ポテトかいつか)の全株式を取得し、カルビーグループが所有する馬鈴しょの調達ノウハウを活用しながら甘しょ事業の拡大を進めました。持続的な成長を目指して、創業の地である広島県に新工場(2025年3月期操業開始)を建設すべく、2020年5月に広島県と立地協定を締結しました。新工場は既存商品の生産に留まらず、デジタルトランスフォーメーション(DX)等の最新テクノロジー導入による技術開発や新商品の創出等、最新鋭マザー工場の役割を担ってまいります。
海外事業においては、重点4地域(北米、中華圏、英国、インドネシア)での収益基盤確立に注力しました。中国では、Eコマース需要の高まりに合わせ、シリアル食品およびスナック菓子の品揃え強化と積極的な販売促進を行い、カルビーブランドの浸透を図りました。また北米では、2019年11月に連結を開始したWarnock Food Products, Inc.(以下、Warnock)を経営に統合する取り組みを進めました。
当連結会計年度の売上高は、巣ごもり需要およびポテトかいつかとWarnockの買収効果により、266,745百万円(前連結会計年度比4.2%増)となりました。営業利益は、増収効果に加えて、販売促進費や旅費交通費等の経費抑制効果が増益に寄与したものの、高付加価値の土産用商品の売上減少が利益にマイナスに影響し、27,064百万円(前連結会計年度比2.2%減)となり、営業利益率は10.1%(前連結会計年度比0.7ポイント低下)となりました。経常利益は、為替差益452百万円を計上し、27,522百万円(前連結会計年度比0.5%増)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、17,682百万円(前連結会計年度比0.8%増)となりました。
2020年3月期2021年3月期伸び率(%)現地通貨
ベースの
伸び率
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
国内売上高210,47082.2213,63980.1+1.5+1.5
海外売上高45,46817.853,10619.9+16.8+18.4
合計255,938100.0266,745100.0+4.2+4.5

事業別の売上高は以下のとおりです。
売上高2020年3月期2021年3月期
金額
(百万円)
金額
(百万円)
伸び率
(%)
① 食品製造販売事業254,092265,187+4.4
国内食品製造販売事業208,624212,080+1.7
国内スナック菓子182,086175,675△3.5
国内シリアル食品25,15727,722+10.2
国内その他食品1,3808,683+529.1
海外食品製造販売事業45,46853,106+16.8
海外スナック菓子38,99846,407+19.0
海外シリアル食品6,4696,699+3.5
② その他事業1,8461,558△15.6
合計255,938266,745+4.2

① 食品製造販売事業
(国内食品製造販売事業)
・国内スナック菓子
国内スナック菓子は、前連結会計年度比で減収となりました。
国内スナック菓子の製品別売上高は以下のとおりです。
売上高2020年3月期2021年3月期
金額
(百万円)
金額
(百万円)
伸び率
(%)
ポテト系スナック133,654128,841△3.6
ポテトチップス86,18986,593+0.5
じゃがりこ36,39034,539△5.1
Jagabee/じゃがポックル11,0757,708△30.4
小麦系スナック21,66321,498△0.8
かっぱえびせん10,06910,095+0.3
サッポロポテト等11,59411,403△1.6
コーン系・豆系スナック17,24417,099△0.8
その他スナック9,5248,235△13.5
国内スナック菓子 計182,086175,675△3.5

* 前期まで「その他スナック」に含まれていた一部の豆系スナックを、当期から「コーン系・豆系スナック」に含め、前連結会計年度の数値も組み替えて表記しています。
・ポテト系スナックは、土産用商品の需要が大きく減少したことにより、前連結会計年度に比べ減収となりました。
-ポテトチップスは、ほぼ前連結会計年度並みの売上高となりました。一部のポテトチップスは、急激な需要の増加に対応できず供給調整および休売を実施した影響で減収となったものの、販売エリアを全国に拡大した「シンポテト」や家庭内消費に適した「堅あげポテト」の売上が伸長しました。
-じゃがりこは、前連結会計年度に比べ減収となりました。「じゃがりこ」は期間限定商品の発売や包装形態の多様化により堅調に推移しましたが、土産用商品や素材系商品「とうもりこ」、「えだまりこ」の販売が振るいませんでした。
-Jagabee/じゃがポックルは、前連結会計年度に比べ大幅に減収となりました。土産用商品の「じゃがポックル」は、インバウンドや国内旅行者の減少の影響が大きく、物産展への出店等対策を講じましたが、売上の回復には至りませんでした。
・小麦系スナックは、ポテトチップスの価格改定影響により需要が増加した前連結会計年度並みの売上高となりました。
・コーン系・豆系スナックは、豆系スナックが販売チャネルの拡大により伸長したものの、コーン系スナックの販売が振るわず、前連結会計年度並みの売上高となりました。
・国内シリアル食品
国内シリアル食品は、国内消費向け、中華圏の小売店舗向けともに伸長し、前連結会計年度に比べ増収となりました。国内消費向けは、「フルグラ」定番品の売上が、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による輸入原材料の調達遅延に伴い、一時的に休売した影響によって前連結会計年度を下回りましたが、代替品「フルグラあっさりテイスト」および健康や機能性を訴求した「フルグラ糖質オフ」、「グラノーラプラス」が貢献し、増収となりました。
・国内その他食品(甘しょ・馬鈴しょ)
国内その他食品(甘しょ・馬鈴しょ)は、当期首から甘しょ事業を営むポテトかいつかが連結範囲に加わったことにより、前連結会計年度に比べ大幅に増収となりました。甘しょ事業においては、主に焼き芋に適した糖度の高い品種のさつまいもの卸売が伸長しています。
(海外食品製造販売事業)
海外食品製造販売事業は、前連結会計年度比で増収となりました。
海外食品製造販売事業の地域別売上高は以下のとおりです。
売上高2020年3月期2021年3月期
金額
(百万円)
金額
(百万円)
伸び率(%)
北米10,57614,442+36.6
中華圏12,77115,131+18.5
英国6,0476,507+7.6
インドネシア4,3514,055△6.8
その他地域11,72112,970+10.7
海外食品製造販売事業 計45,46853,106+16.8

*1 中華圏:中国、香港
*2 その他地域:韓国、タイ、シンガポール、豪州
・北米は、2019年11月からWarnockが連結範囲に加わったことにより、前連結会計年度に比べ大幅に増収となりました。既存事業においても、エスニック食品売り場向けの「かっぱえびせん」、ポテトチップス、「じゃがりこ」等のスナック菓子の売上が伸長するとともに、豆系スナック菓子「Harvest Snaps」は大手顧客向けが堅調に推移し、増収となりました。
・中華圏は、前連結会計年度に比べ増収となりました。スナック菓子は、日本からの輸出を強化したことにより、「Jagabee」、「じゃがポックル」、ポテトチップス等の売上が伸長しました。シリアル食品「フルグラ」は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けてEコマースの需要が高まったこと等から、売上が伸長しました。
・英国は、Seabrookブランドのポテトチップスのマルチパックの需要が増加したことに加え、新商品「Loaded Fries」の発売により、前連結会計年度に比べ増収となりました。
・インドネシアは、主力のポテトチップスにおいて新型コロナウイルス感染症拡大の影響で原材料調達に遅延が発生したこと等により、前連結会計年度に比べ減収となりました。
・その他地域は、主に豪州における「Harvest Snaps」と「Jagabee」の販売好調により、前連結会計年度に比べ増収となりました。
② その他事業
その他事業(物流事業)の売上高は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で共同配送が減少し、1,558百万円(前連結会計年度比15.6%減)となりました。
当社グループの経営方針・経営戦略等の進捗状況の評価を行うために有用な指標の状況は下記のとおりであります。
2021年3月期実績2021年3月期目標(期初)2024年3月期目標
連結売上高2,667億円2,700億円3,100億円
連結営業利益270億円245億円400億円
ROE10.4%-12%
国内営業利益率11.6%10.9%15%
海外売上高531億円534億円800億円


(2) 財政状態の分析
当連結会計年度末における資産は、前連結会計年度末に比べ24,011百万円増加し、238,978百万円となりました。この主な要因は、たな卸資産、有形固定資産およびのれんが増加したことによるものです。
たな卸資産およびのれんの増加は、ポテトかいつかの買収によるものであり、有形固定資産の増加は、主に「ポテトデラックス」の製造ラインの取得等国内既存事業の拡充を目的としたものです。
負債は、前連結会計年度末に比べ10,903百万円増加し、56,238百万円となりました。この主な要因は、ポテトかいつかが新たに連結範囲に加わったことにより、短期借入金および長期借入金が増加したことによるものです。
純資産は、主に利益剰余金が増加したことから、前連結会計年度末に比べ13,107百万円増加し、182,740百万円となりました。
この結果、自己資本比率は73.4%となり、前連結会計年度末に比べ2.5ポイント低下しました。
(3) キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ8,460百万円減少し、47,282百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度末と比べ9,998百万円収入が減少し、30,450百万円の純収入となりました。この主な要因は、売上債権の回収額が銀行休業日による入金のずれにより増加した前連結会計年度に比べ、減少したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出の増加、および有形固定資産の取得による支出の増加により、前連結会計年度と比べ18,607百万円支出が増加し、32,069百万円の純支出となりました。連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出はポテトかいつかを買収したことによるものです。有形固定資産の取得による支出は主に、「ポテトデラックス」や「大人のじゃがりこ」等の新商品の製造ライン新設等、国内既存事業の拡充を目的としたものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に短期借入金の純増減額が返済により減少したことにより、前連結会計年度と比べ1,356百万円支出が増加し、7,635百万円の純支出となりました。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
・資金需要の動向
当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では製品製造のための原材料費、労務費、経費および販売活動のための販売費、人件費、物流費等の支払いがあります。投資活動に係る資金支出では主に設備投資やM&Aにかかる資金需要、財務活動に係る資金支出は主に親会社の配当金にかかる資金需要があります。
投資活動および財務活動の資金支出計画については中期経営計画に基づき、2020年3月期から2024年3月期までの5か年で獲得する見込みの営業活動によるキャッシュ・フロー160,000百万円に手元資金20,000百万円を加えた180,000百万円を、既存事業の持続的成長・生産性向上、海外生産体制強化に向けた設備投資に60,000百万円、長期的視野に基づいた新規事業、DX推進、M&Aなどの成長基盤獲得のための投資に80,000百万円、連結ベースの配当性向40%以上を目指した継続的な株主還元に40,000百万円を、それぞれ配分することを計画しております。
当連結会計年度末時点での資金支出の状況は以下のとおりです。
2020年3月期
(百万円)
2021年3月期
(百万円)
中期経営計画
(百万円)
進捗状況
(%)
既存事業への投資8,75111,20560,00033.3
成長投資7,55813,33080,00026.1
株主還元6,4256,69340,00032.8
合計22,73531,229180,00030.0

・資金調達の方法
当社グループの資金調達の方法としては、原則、営業活動により得られたキャッシュ・フローで賄っており、一時的な資金不足については金融機関からの短期借入を基本としております。当社及び国内連結子会社においてはキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入し、グループ内資金を一元管理することにより、余剰資金を集中管理し資金の流動性確保、資金効率の向上を図っております。また、更なる資金の流動性を補完することを目的に複数の金融機関との間に当座貸越契約を締結しており、事業運営上の必要な資金の流動性は十分に確保していると認識しております。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成においては、経営者による会計上の見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や現状等を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
また、この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
① 固定資産の減損
当社グループは、営業活動から生ずる損益の継続的な赤字や市場価格の著しい下落等から減損の兆候が識別された場合、将来の事業計画等を考慮して、減損損失の認識の判定を行い、必要に応じて回収可能価額まで減損処理を行うこととしております。将来の市況悪化等により事業計画が修正される場合、減損処理を行う可能性があります。
なお、当社グループの無形固定資産のうち主なものは株式会社ポテトかいつかを取得したことにより発生したのれんであり、同社の事業は当連結会計年度において営業損益(のれん償却額を含む。以下同じ。)が赤字であるものの、翌連結会計年度において主に販売量及び仕入量の増加により営業損益の見込みが黒字となることから減損の兆候は認められないと判断しております。
② たな卸資産の評価
当社グループは、たな卸資産の評価方法として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しており、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。需要の変化によって過剰または滞留となったたな卸資産については、適正な価値で評価されるように評価減を行う可能性があります。
(5) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績を示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前期比(%)
食品製造販売事業266,892+5.1
合計266,892+5.1

(注)1 金額は、販売価格によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
② 受注実績
当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)
食品製造販売事業265,187+4.4
その他1,558△15.6
合計266,745+4.2

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
販売高
(百万円)
割合(%)販売高
(百万円)
割合(%)
三菱食品㈱31,74612.431,30211.7
㈱山星屋26,09610.227,63110.4

3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。