有価証券報告書-第65期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の概要
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、米国・欧州をはじめ各国において、緊急事態宣言の発出やロックダウンの実施など、社会・経済活動が大きく制限され、大幅に悪化しました。世界各国でワクチン接種が開始されたものの、世界的な感染収束には相応の時間を要する見方が強まっております。中国では、行動制限や財政・金融政策が寄与し、コロナ禍の最悪期からいち早く脱しました。コロナ禍前から堅調であった投資・輸出が下支えしたことに加え、個人消費も改善傾向にあり、経済は回復基調をたどっております。
わが国経済でも、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大が経済全体に大きなインパクトを与え、景気は急激に悪化しました。経済活動再開に伴い景気に持ち直しの兆しがありましたが、感染の再拡大、さらには緊急事態宣言が再発出されるなど、依然として厳しい状況が続き、景気停滞の長期化が懸念されております。
当社グループの主要な取引先であるアパレル業界においては、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、外出自粛及び休業要請により店舗における販売が大幅に減少し、経済活動再開後も、消費マインドが回復するまでには至りませんでした。消費者ニーズの的確な把握と対応、販売形態等の違いによって、業績に二極化が進む等、業界を取り巻く環境は、極めて厳しいものになりました。
このような状況の中、当社グループでは、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きく、アパレル市場の需要減少に伴い既存製品の受注が低迷し、売上高が減少しましたが、上半期における布製マスクの生産が、売上を下支えしました。利益は、売上高と同じくコロナ禍の影響があったものの、経費の削減等に努めたことにより増加しました。
当社グループが展開する国ごとの生産状況は以下のとおりであります。
(中国)
前連結会計年度末において、新型コロナウイルス感染拡大により一定期間の操業停止を余儀なくされたものの、いち早くコロナ禍の最悪期から脱し、布製マスクの生産に注力して操業度を維持するとともに生産性の向上に寄与しました。
(バングラデシュ)
新型コロナウイルス感染拡大のため、現地政府の指示により、1ヶ月程度の操業停止期間がありました。安全対策をとりながら工場の操業を継続しましたが、新型コロナウイルス感染拡大による需要の減少でインナーウェア等の受注が伸び悩み、生産は低調に推移しました。
(ベトナム)
2019年11月に設立したAN NAM MATSUOKA GARMENT CO., LTDが2020年7月より本格的な生産に着手し、順調に稼働しております。PHU THO MATSUOKA CO.,LTDでは、引き続き新型コロナウイルスの影響により、受注の伸び悩みはありましたが、顧客のニーズに柔軟に対応する等、効率性を高めた運営に注力し、ベトナム全体の生産を伸ばすことができました。
(ミャンマー)
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、2度にわたって現地政府による休業指示があるなかで、安全対策をとりながら工場の操業を継続しましたが、コロナ禍により受注も伸び悩みました。さらには2021年2月に発生した国軍のクーデターによる政情不安で、厳しい環境下での工場運営を余儀なくされました。
(インドネシア)
PT. MATSUOKA INDUSTRIES INDONESIAにおいて、コロナ禍におけるアパレル製品需要の急減による受注の伸び悩みがあり厳しい状況が継続しましたが、新設備の導入等により生産性向上に取り組みました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は539億28百万円(前期比5.6%減)となりましたが経費の削減等に努め、営業利益は45億63百万円(同75.3%増)となりました。また、営業外費用として海外協力工場に対する持分法投資損失等を計上しましたが、経常利益は40億73百万円(同61.4%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益も特別損失としてミャンマー連結子会社等における減損損失を計上しましたが、特別利益として中国での土地使用権と建物の売却に伴う固定資産売却益を計上したこと等により27億64百万円(同135.1%増)となりました。
総資産は、前連結会計年度末に比べて12億22百万円減少し、430億2百万円となりました。
負債は、前連結会計年度末に比べて24億33百万円減少し、164億34百万円となり、純資産は前連結会計年度末に比べて12億11百万円増加し、265億68百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、営業活動によるキャッシュ・フロー66億48百万円の増加、投資活動によるキャッシュ・フロー3億41百万円の減少、財務活動によるキャッシュ・フロー23億47百万円の減少となった結果、前連結会計年度末に比べて38億37百万円増加し、128億51百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは66億48百万円の増加(前期は22億82百万円の増加)となりました。主な要因としては、仕入れ債務の減少17億67百万円、法人税等の支払9億12百万円等があったものの、税金等調整前当期純利益の計上40億64百万円、売上債権の減少26億62百万円、減価償却費の計上12億81百万円、棚卸資産の減少5億89百万円等があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは3億41百万円の減少(前期は14億93百万円の減少)となりました。主な要因としては、有形固定資産の取得による支出18億80百万円等があったものの、固定資産の売却による収入20億円等があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは23億47百万円の減少(前期は1億44百万円の減少)となりました。主な要因としては、長期借入れによる収入22億33百万円等があったものの、長期借入金の返済による支出21億34百万円、短期借入金の純減額12億22百万円、自己株式の取得による支出7億43百万円等があったことによるものです。
③生産、受注及び販売の状況
a.生産実績
当社グループは、アパレルOEM事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。
(注)1.金額は、製造原価によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当社グループは、アパレルOEM事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の受注実績は次のとおりであります。
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
生産国別の販売実績は次のとおりであります。
(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.厚生労働省の前連結会計年度における販売実績は、総販売実績に占める割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度におけるアパレル業界は、以前からの天候不順や消費税増税等によるアパレル市場の低迷・縮小に加え、世界的に一気に広がった新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、需要が大幅に減少した1年となりました。売上高につきましては、アパレル製品の需要の減退で既存製品の受注が大きく減少する中、日本政府からの緊急要請による布製マスクの生産が貢献し、受注の減少幅を抑えた結果、前連結会計年度に比べて31億83百万円減少の539億28百万円(前期比5.6%減)となりました。
生産国別の販売実績では、既存製品の受注が大きく減少する中、バングラデシュやミャンマーでの生産が減少しましたが、布製マスクの生産が売上高を下支えした中国や、生産能力を拡大に努めているベトナムではAN NAM MATSUOKA GARMENT CO.,LTDの第一期工場が2020年7月に稼働を開始したことにより、それぞれほぼ横ばいになりました。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度に比べて45億86百万円減少の450億39百万円(同9.2%減)となりました。売上高の減少に伴い、売上原価が減少しております。また、既存製品の生産が落ち込みましたが、布製マスクの生産が操業度の維持に貢献し、さらには中国での生産により生産性向上を図ることができたこと、原価削減に努めたこと等から粗利率が上昇し、売上総利益は88億89百万円(同18.7%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べて5億58百万円減少の43億25百万円(同11.4%減)となりました。前連結会計年度に計上した協力工場向け債権に対する貸倒引当金繰入額4億28百万円が剥落したこと等による減少であります。この結果、営業利益は45億63百万円(同75.3%増)となりました。
(営業外収益、営業外費用及び経常利益)
当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度に計上した持分法による投資利益42百万円の剥落等により前連結会計年度に比べて1億17百万円減少の3億66百万円となりました。当連結会計年度の営業外費用は、前連結会計年度に計上した鞄事業に係る債権に対する貸倒引当金繰入額3億45百万円が剥落したものの、中国の協力工場に対する持分法による投資損失480百万円の発生や為替差損87百万円の発生により前連結会計年度に比べて2億93百万円増加の8億57百万円となりました。この結果、経常利益は40億73百万円(同61.4%増)となりました。
(特別利益、特別損失及び親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の特別利益は、中国での土地使用権及び建物売却に伴う固定資産売却益6億73百万円の計上により、前連結会計年度に比べて6億73百万円増加しております。当連結会計年度の特別損失は、前連結会計年度に比べて3億55百万円増加の6億81百万円となりました。これは主に減損損失が前連結会計年度に比べて2億5百万円増加の5億31百万円計上したためであります。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は27億64百万円(同135.1%増)となりました。
b.財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて12億22百万円減少し、430億2百万円となりました。 主な要因としては、現金及び預金の増加38億46百万円等があったものの、受取手形及び売掛金の減少27億31百万円、固定資産売却に係る未収入金の回収等によるその他流動資産の減少12億27百万円、棚卸資産の減少6億14百万円、投資有価証券の減少6億17百万円等があったことによるものです。
棚卸資産の増減については、商品及び製品の納期に連動しております。仕掛品や原材料及び貯蔵品の期末金額は毎年変動いたします。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて24億33百万円減少し、164億34百万円となりました。主な要因としては、未払法人税等の増加3億29百万円等があったものの、支払手形及び買掛金の減少21億35百万円、短期借入金の減少12億41百万円等があったことによるものです。
短期借入金の減少については、中国での資産売却による収入で金融機関へ返済したものです。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べて12億11百万円増加し、265億68百万円となりました。 主な要因としては、自己株式の取得7億43百万円、非支配株主持分の減少4億16百万円、配当金の支払4億1百万円等があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加27億64百万円等があったことによるものです。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容)
内容につきましては本書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」のとおりであります。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループの運転資本需要のうち主なものは、原材料の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、子会社株式の取得等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。
当連結会計年度末において借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は58億39百万円、現金及び現金同等物の残高は128億51百万円となっております。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による事業活動に支障が生じるような資金繰りの悪化は発生しておりません。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この作成においては、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、新型コロナウイルス感染症が当社グループの経営成績等に及ぼす影響については、連結財務諸表作成時点で入手可能な情報に基づき見積りを行っております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
・固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、主として会社別にグルーピングを行い、収益性が低下した資産グループについて、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。
収益性の低下の評価において用いる将来キャッシュ・フローについては、各社及び各工場の事業計画等に基づき見積っていますが、経営環境の変化等により当初見込んでいた利益が得られなかった場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において追加の減損損失が発生する可能性があります。
(3) 経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき、迅速かつ最善な経営戦略の立案、施策の実施に努めております。
当社グループの主要取引先であるアパレル業界においては、国内市場の縮小や販売チャネルの多様化、低価格志向や選別消費などの消費者行動の変化がみられる中、新型コロナウイルス感染拡大は世界的な広がりを見せ、グローバルなサプライチェーンの途絶や、休業要請や外出自粛により小売店舗での販売が大幅に減少するなど、その影響と収束の時期も含めた先行きを見通すことは非常に困難な状況にあります。
このような状況から、今後の当社グループを取り巻く事業環境は、一層厳しい環境下にあると言わざるを得ません。当社グループでは、日々刻々と変化する事業環境や、想定される様々なリスクを見極め、柔軟に対応できる体制を構築することこそ、最優先課題であると考えております。
今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、グローバルなビジネスやサプライチェーンに対して、新たな課題を突き付けることになりました。一方で、当社グループがこれまで取り組んできたグローバルな拠点展開と連携は、今後予測される先行き不透明な将来に対応するための、ビジネスモデル構築の基盤となるものとであると認識しております。今後も、グローバルネットワークをより一層強化し、生産拠点の最適化及びリスクの分散化により安定的な生産体制づくりを進め、当社グループの強みである海外生産の優位性をさらに引き出せるよう、取り組んでまいります。
①財政状態及び経営成績の概要
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、米国・欧州をはじめ各国において、緊急事態宣言の発出やロックダウンの実施など、社会・経済活動が大きく制限され、大幅に悪化しました。世界各国でワクチン接種が開始されたものの、世界的な感染収束には相応の時間を要する見方が強まっております。中国では、行動制限や財政・金融政策が寄与し、コロナ禍の最悪期からいち早く脱しました。コロナ禍前から堅調であった投資・輸出が下支えしたことに加え、個人消費も改善傾向にあり、経済は回復基調をたどっております。
わが国経済でも、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大が経済全体に大きなインパクトを与え、景気は急激に悪化しました。経済活動再開に伴い景気に持ち直しの兆しがありましたが、感染の再拡大、さらには緊急事態宣言が再発出されるなど、依然として厳しい状況が続き、景気停滞の長期化が懸念されております。
当社グループの主要な取引先であるアパレル業界においては、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、外出自粛及び休業要請により店舗における販売が大幅に減少し、経済活動再開後も、消費マインドが回復するまでには至りませんでした。消費者ニーズの的確な把握と対応、販売形態等の違いによって、業績に二極化が進む等、業界を取り巻く環境は、極めて厳しいものになりました。
このような状況の中、当社グループでは、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きく、アパレル市場の需要減少に伴い既存製品の受注が低迷し、売上高が減少しましたが、上半期における布製マスクの生産が、売上を下支えしました。利益は、売上高と同じくコロナ禍の影響があったものの、経費の削減等に努めたことにより増加しました。
当社グループが展開する国ごとの生産状況は以下のとおりであります。
(中国)
前連結会計年度末において、新型コロナウイルス感染拡大により一定期間の操業停止を余儀なくされたものの、いち早くコロナ禍の最悪期から脱し、布製マスクの生産に注力して操業度を維持するとともに生産性の向上に寄与しました。
(バングラデシュ)
新型コロナウイルス感染拡大のため、現地政府の指示により、1ヶ月程度の操業停止期間がありました。安全対策をとりながら工場の操業を継続しましたが、新型コロナウイルス感染拡大による需要の減少でインナーウェア等の受注が伸び悩み、生産は低調に推移しました。
(ベトナム)
2019年11月に設立したAN NAM MATSUOKA GARMENT CO., LTDが2020年7月より本格的な生産に着手し、順調に稼働しております。PHU THO MATSUOKA CO.,LTDでは、引き続き新型コロナウイルスの影響により、受注の伸び悩みはありましたが、顧客のニーズに柔軟に対応する等、効率性を高めた運営に注力し、ベトナム全体の生産を伸ばすことができました。
(ミャンマー)
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、2度にわたって現地政府による休業指示があるなかで、安全対策をとりながら工場の操業を継続しましたが、コロナ禍により受注も伸び悩みました。さらには2021年2月に発生した国軍のクーデターによる政情不安で、厳しい環境下での工場運営を余儀なくされました。
(インドネシア)
PT. MATSUOKA INDUSTRIES INDONESIAにおいて、コロナ禍におけるアパレル製品需要の急減による受注の伸び悩みがあり厳しい状況が継続しましたが、新設備の導入等により生産性向上に取り組みました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は539億28百万円(前期比5.6%減)となりましたが経費の削減等に努め、営業利益は45億63百万円(同75.3%増)となりました。また、営業外費用として海外協力工場に対する持分法投資損失等を計上しましたが、経常利益は40億73百万円(同61.4%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益も特別損失としてミャンマー連結子会社等における減損損失を計上しましたが、特別利益として中国での土地使用権と建物の売却に伴う固定資産売却益を計上したこと等により27億64百万円(同135.1%増)となりました。
総資産は、前連結会計年度末に比べて12億22百万円減少し、430億2百万円となりました。
負債は、前連結会計年度末に比べて24億33百万円減少し、164億34百万円となり、純資産は前連結会計年度末に比べて12億11百万円増加し、265億68百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、営業活動によるキャッシュ・フロー66億48百万円の増加、投資活動によるキャッシュ・フロー3億41百万円の減少、財務活動によるキャッシュ・フロー23億47百万円の減少となった結果、前連結会計年度末に比べて38億37百万円増加し、128億51百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは66億48百万円の増加(前期は22億82百万円の増加)となりました。主な要因としては、仕入れ債務の減少17億67百万円、法人税等の支払9億12百万円等があったものの、税金等調整前当期純利益の計上40億64百万円、売上債権の減少26億62百万円、減価償却費の計上12億81百万円、棚卸資産の減少5億89百万円等があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは3億41百万円の減少(前期は14億93百万円の減少)となりました。主な要因としては、有形固定資産の取得による支出18億80百万円等があったものの、固定資産の売却による収入20億円等があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは23億47百万円の減少(前期は1億44百万円の減少)となりました。主な要因としては、長期借入れによる収入22億33百万円等があったものの、長期借入金の返済による支出21億34百万円、短期借入金の純減額12億22百万円、自己株式の取得による支出7億43百万円等があったことによるものです。
③生産、受注及び販売の状況
a.生産実績
当社グループは、アパレルOEM事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |
金額(百万円) | 前期比(%) | |
アパレルOEM事業 | 44,405 | 90.2 |
合計 | 44,405 | 90.2 |
(注)1.金額は、製造原価によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当社グループは、アパレルOEM事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の受注実績は次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |||
受注高(百万円) | 前期比(%) | 受注残高(百万円) | 前期比(%) | |
アパレルOEM事業 | 53,772 | 108.6 | 14,389 | 98.9 |
合計 | 53,772 | 108.6 | 14,389 | 98.9 |
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
生産国別の販売実績は次のとおりであります。
国名 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |
販売高(百万円) | 前期比(%) | |
中国 | 30,629 | 99.5 |
バングラデシュ | 10,828 | 79.0 |
ベトナム | 7,761 | 100.8 |
ミャンマー | 3,123 | 79.7 |
インドネシア | 1,585 | 163.9 |
その他 | 0 | 0.1 |
合計 | 53,928 | 94.4 |
(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
東レインターナショナル株式会社 | 11,430 | 20.0 | 11,029 | 20.5 |
Toray Industries(H.K.)Ltd. | 11,479 | 20.1 | 9,298 | 17.2 |
株式会社ユニクロ | 9,756 | 17.1 | 6,192 | 11.5 |
厚生労働省 | ― | ― | 5,948 | 11.0 |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.厚生労働省の前連結会計年度における販売実績は、総販売実績に占める割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度におけるアパレル業界は、以前からの天候不順や消費税増税等によるアパレル市場の低迷・縮小に加え、世界的に一気に広がった新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、需要が大幅に減少した1年となりました。売上高につきましては、アパレル製品の需要の減退で既存製品の受注が大きく減少する中、日本政府からの緊急要請による布製マスクの生産が貢献し、受注の減少幅を抑えた結果、前連結会計年度に比べて31億83百万円減少の539億28百万円(前期比5.6%減)となりました。
生産国別の販売実績では、既存製品の受注が大きく減少する中、バングラデシュやミャンマーでの生産が減少しましたが、布製マスクの生産が売上高を下支えした中国や、生産能力を拡大に努めているベトナムではAN NAM MATSUOKA GARMENT CO.,LTDの第一期工場が2020年7月に稼働を開始したことにより、それぞれほぼ横ばいになりました。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度に比べて45億86百万円減少の450億39百万円(同9.2%減)となりました。売上高の減少に伴い、売上原価が減少しております。また、既存製品の生産が落ち込みましたが、布製マスクの生産が操業度の維持に貢献し、さらには中国での生産により生産性向上を図ることができたこと、原価削減に努めたこと等から粗利率が上昇し、売上総利益は88億89百万円(同18.7%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べて5億58百万円減少の43億25百万円(同11.4%減)となりました。前連結会計年度に計上した協力工場向け債権に対する貸倒引当金繰入額4億28百万円が剥落したこと等による減少であります。この結果、営業利益は45億63百万円(同75.3%増)となりました。
(営業外収益、営業外費用及び経常利益)
当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度に計上した持分法による投資利益42百万円の剥落等により前連結会計年度に比べて1億17百万円減少の3億66百万円となりました。当連結会計年度の営業外費用は、前連結会計年度に計上した鞄事業に係る債権に対する貸倒引当金繰入額3億45百万円が剥落したものの、中国の協力工場に対する持分法による投資損失480百万円の発生や為替差損87百万円の発生により前連結会計年度に比べて2億93百万円増加の8億57百万円となりました。この結果、経常利益は40億73百万円(同61.4%増)となりました。
(特別利益、特別損失及び親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の特別利益は、中国での土地使用権及び建物売却に伴う固定資産売却益6億73百万円の計上により、前連結会計年度に比べて6億73百万円増加しております。当連結会計年度の特別損失は、前連結会計年度に比べて3億55百万円増加の6億81百万円となりました。これは主に減損損失が前連結会計年度に比べて2億5百万円増加の5億31百万円計上したためであります。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は27億64百万円(同135.1%増)となりました。
b.財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて12億22百万円減少し、430億2百万円となりました。 主な要因としては、現金及び預金の増加38億46百万円等があったものの、受取手形及び売掛金の減少27億31百万円、固定資産売却に係る未収入金の回収等によるその他流動資産の減少12億27百万円、棚卸資産の減少6億14百万円、投資有価証券の減少6億17百万円等があったことによるものです。
棚卸資産の増減については、商品及び製品の納期に連動しております。仕掛品や原材料及び貯蔵品の期末金額は毎年変動いたします。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて24億33百万円減少し、164億34百万円となりました。主な要因としては、未払法人税等の増加3億29百万円等があったものの、支払手形及び買掛金の減少21億35百万円、短期借入金の減少12億41百万円等があったことによるものです。
短期借入金の減少については、中国での資産売却による収入で金融機関へ返済したものです。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べて12億11百万円増加し、265億68百万円となりました。 主な要因としては、自己株式の取得7億43百万円、非支配株主持分の減少4億16百万円、配当金の支払4億1百万円等があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加27億64百万円等があったことによるものです。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容)
内容につきましては本書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」のとおりであります。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループの運転資本需要のうち主なものは、原材料の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、子会社株式の取得等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。
当連結会計年度末において借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は58億39百万円、現金及び現金同等物の残高は128億51百万円となっております。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による事業活動に支障が生じるような資金繰りの悪化は発生しておりません。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この作成においては、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、新型コロナウイルス感染症が当社グループの経営成績等に及ぼす影響については、連結財務諸表作成時点で入手可能な情報に基づき見積りを行っております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
・固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、主として会社別にグルーピングを行い、収益性が低下した資産グループについて、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。
収益性の低下の評価において用いる将来キャッシュ・フローについては、各社及び各工場の事業計画等に基づき見積っていますが、経営環境の変化等により当初見込んでいた利益が得られなかった場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において追加の減損損失が発生する可能性があります。
(3) 経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき、迅速かつ最善な経営戦略の立案、施策の実施に努めております。
当社グループの主要取引先であるアパレル業界においては、国内市場の縮小や販売チャネルの多様化、低価格志向や選別消費などの消費者行動の変化がみられる中、新型コロナウイルス感染拡大は世界的な広がりを見せ、グローバルなサプライチェーンの途絶や、休業要請や外出自粛により小売店舗での販売が大幅に減少するなど、その影響と収束の時期も含めた先行きを見通すことは非常に困難な状況にあります。
このような状況から、今後の当社グループを取り巻く事業環境は、一層厳しい環境下にあると言わざるを得ません。当社グループでは、日々刻々と変化する事業環境や、想定される様々なリスクを見極め、柔軟に対応できる体制を構築することこそ、最優先課題であると考えております。
今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、グローバルなビジネスやサプライチェーンに対して、新たな課題を突き付けることになりました。一方で、当社グループがこれまで取り組んできたグローバルな拠点展開と連携は、今後予測される先行き不透明な将来に対応するための、ビジネスモデル構築の基盤となるものとであると認識しております。今後も、グローバルネットワークをより一層強化し、生産拠点の最適化及びリスクの分散化により安定的な生産体制づくりを進め、当社グループの強みである海外生産の優位性をさらに引き出せるよう、取り組んでまいります。