有価証券報告書-第7期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/29 10:46
【資料】
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【項目】
104項目
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
a.財政状態
当事業年度末の財政状態は、前事業年度末に比べて純資産が239,524千円増加し、財政状態は良好な状態で推移しております。資産、負債、純資産別の財政状態は以下のとおりです。
(資産)
当事業年度末の資産は、前事業年度末に比べて359,600千円増加し1,603,761千円となりました。これは主に税引前当期純利益の計上等による現金及び預金の増加229,509千円、売上増に伴う売掛金の増加71,037千円、本社移転に伴うオフィス内装工事による建物の増加22,233千円によるものです。
(負債)
当事業年度末の負債は、前事業年度末に比べて、120,075千円増加し337,309千円となりました。これは主に仕入原価増に伴う買掛金の増加76,318千円、未払法人税等の増加27,674千円によるものです。
(純資産)
当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べて、239,524千円増加し1,266,452千円となりました。これは主に当期純利益の計上等による利益剰余金の増加213,204千円及び新株予約権の行使に伴う資本金5,985千円、資本準備金5,985千円の増加によるものです。
b.経営成績
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による急激な景気の落ち込みから、社会・経済活動の再開に伴う緩やかな持ち直しの動きが一部では見られたものの、国内外における新型コロナウイルス感染症の再拡大により、先行きの不透明感は再び強まっております。
SMS配信サービス業界においては、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響を受け、ニューノーマルと呼ばれる、社会・経済活動が大きく変容するなかで、SMS配信サービスの認知度が向上し、SNSやスマートフォンアプリの利用時などの本人認証通知、公共料金・税金など督促の通知、飲食業界のノー・ショウ(飲食店における無断キャンセル)対策としての予約確認など企業と個人の間でのコミュニケーション手段として高い到達率と開封率というSMSの有用性を再認識する企業の増加に伴い、SMS配信市場は急速な広がりをみせており、2024年の国内直収市場規模は配信数84億4,000万通と予想され(「ミックITリポート 2020年11月号」(デロイトトーマツミック経済研究所))、2021年度から2024年度までの年平均成長率は46.1%増で、引き続き安定高成長を続けると予想されております。
このような状況の中、当社は「デジタル社会に、リアルな絆を」というビジョンを掲げ、「コミュニケートするすべての人に、セキュアで最適なプラットフォームを提供する」というミッションのもと、国内の携帯電話事業者4社との直接回線接続、大量配信に耐えうるSMS配信システムなどから海外SMSアグリゲーター、IT企業、コールセンター、人材サービス会社等からの支持を受け、業界内でのポジションを確立しSMS配信サービス事業を展開しております。また、2020年11月には、このような活動を評価いただき、Forbes Asiaからアジア太平洋地域におけるBest 200 Under A Billionの1社に選ばれております。
当事業年度におきましては、国内売上について、第2四半期累計期間において、新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、外出自粛要請・緊急事態宣言により臨時休業や営業時間短縮を余儀なくされた飲食店や娯楽施設など業績が大きく冷え込んだ業界の影響はあったものの、第3四半期以降、営業再開により持ち直しの傾向が見え、配信数や取引社数ともに順調に推移した結果、対前年同期比で大幅に増加しました。また、海外SMSアグリゲーター経由の海外売上については、当社が提供する「国内正規配信ルート」とは別に、配信ルートの競合として安価な「海外グレー配信ルート」が存在し、価格競争が激化し、フィッシングSMS配信の一因となっていましたが、前第2四半期以降、収益性や安心・安全な信頼性重視という方針のもと、不採算取引先の整理やプライシングスキームの変更等を行った結果、減少傾向にあった配信数も第3四半期以降回復基調となり、対前事業年度比において増加となりました。
以上の結果、売上高は1,731,803千円(前事業年度比22.5%増)、営業利益は344,415千円(同35.6%増)、経常利益は345,077千円(同38.6%増)、当期純利益は241,080千円(同41.2%増)となりました。
なお、当社はSMS配信サービス事業の単一セグメントであるため、セグメントの記載は省略しております。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は、前事業年度末に比べて229,509千円増加し、1,217,791千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は316,298千円(前事業年度は211,301千円の獲得)となりました。収入の主な内訳は、税引前当期純利益345,077千円、仕入債務の増加76,318千円であり、支出の主な内訳は、売上債権の増加71,037千円、法人税等の支払い80,709千円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は71,127千円(前事業年度は19,261千円の支出)となりました。支出の主な内訳は、本社移転に伴うオフィス内装工事など有形固定資産の取得35,793千円、ソフトウエアの開発等による無形固定資産の取得20,190千円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は15,662千円(前事業年度は26,870千円の獲得)となりました。収入の主な内訳は、株式の発行による収入11,970千円、支出の主な内訳は、配当金の支払い27,560千円であります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は、生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称当事業年度
(自 2020年1月1日
至 2020年12月31日)
金額(千円)前事業年度比(%)
SMS配信サービス事業1,731,803122.5
合計1,731,803122.5

(注)1.当社の事業セグメントは、SMS配信サービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績は記載しておりません。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前事業年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
当事業年度
(自 2020年1月1日
至 2020年12月31日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
Nexmo, Inc.257,55218.2357,73520.66
ヤフー株式会社157,75011.2179,36810.36

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態
当連結会計年度末の財政状態につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.財政状態」に記載のとおりであります。
b.経営成績
当事業年度の経営成績は、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績」にも記載しておりますが、売上高は1,731,803千円(前事業年度比22.5%増)となりました。これは主に、認証用途を中心に国内SMS配信市場の拡大により国内市場向けのSMS配信数が増加したこと、価格競争により一時期落ち込んだ海外SMSアグリゲーターを経由したSMS配信数が、前第2四半期以降、収益性や安心・安全な信頼性重視という方針のもと、不採算取引先の整理やプライシングスキームの変更等を行った結果、減少傾向にあった配信数も第3四半期以降回復基調となり一転、増収に転じたことによるものであります。
売上原価は、1,041,203千円(同15.5%増)となりました。これは主に、SMS配信数増加に伴う携帯電話事業者からの仕入高増加によるものであります。また、売上原価率は60.1%(同3.6ポイント低下)となりました。これは主に、利益率の高い国内市場向けのSMS配信数が増加したことによるものであります。
販売費及び一般管理費は、346,184千円(同33.9%増)となりました。これは主に、事業拡大に伴う人員増による人件費の増加61,053千円、オフィス移転に伴う関連費用、広告及び販促費用の増加等26,498千円によるものであります。
結果、営業利益は344,415千円(同35.6%増)となり、販売費及び一般管理費が増加したものの、売上原価率が3.6ポイント低下したこと等により、営業利益率は19.9%(同1.9ポイント上昇)となりました。
営業外損益は、為替差損の減少により662千円(前事業年度は△4,992千円)となりました。
結果、経常利益は345,077千円(前事業年度比38.6%増)、経常利益率は19.9%(同2.3ポイント上昇)となり、税引前当期純利益は345,077千円(同38.6%増)、当期純利益は241,080千円(同41.2%増)となりました。
c.新型コロナウイルス感染症の影響
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、さらなる拡散の脅威や経済活動の停滞等が継続する可能性があります。当社におきましては、顧客基盤が、IT関連サービス、コールセンター、通信販売、人材関連サービス、小売、飲食店、娯楽施設など多岐にわたっており、業績悪化で配信数が減少している業界がある一方で、業績好調により配信数が伸びている業界もあり、結果として、当社全体としては堅調に成長することができており、新型コロナウイルスが当社の経営環境に与える影響は限定的であると考えております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フロー
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は316,298千円(前事業年度は211,301千円の獲得)となりました。収入の主な内訳は、税引前当期純利益345,077千円、仕入債務の増加76,318千円であり、支出の主な内訳は、売上債権の増加71,037千円、法人税等の支払い80,709千円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は71,127千円(前事業年度は19,261千円の支出)となりました。支出の主な内訳は、本社移転に伴うオフィス内装工事など有形固定資産の取得35,793千円、ソフトウエアの開発等による無形固定資産の取得20,190千円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は15,662千円(前事業年度は26,870千円の獲得)となりました。収入の主な内訳は、株式の発行による収入11,970千円、支出の主な内訳は、配当金の支払い27,560千円であります。
以上により、当事業年度末における現金及び現金同等物は1,217,791千円(前事業年度末は988,282千円)となりました。
b.資本の財源及び資金の流動性
当社の資金需要のうち主なものは、ソフトウエアの開発による無形固定資産取得のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。
また、今後のさらなる成長の為に、SMSを活用した付加価値の高いサービスの開発や、SMS配信サービスの営業体制強化のためのプロモーション、また新事業領域への進出を見据えた研究開発等に取り組む方針です。これらの事業活動に必要となる資金は、自己資金により充当する事が基本方針でありますが、必要に応じて資金調達を実施いたします。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりましては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、過去の実績等を勘案して合理的な見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染拡大における影響は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 追加情報」に記載のとおり、限定的であると認識しております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載しておりますが、当社の売上高の43.9%(2020年12月期)を占める海外SMSアグリゲーターの動向、競合企業の動向及び携帯電話事業者との契約関係は、当社の経営成績に重要な影響を与える要因であると認識しております。
⑤ 経営戦略の現状と見通し
当社は、「デジタル社会に、リアルな絆を」というビジョンを掲げ、「コミュニケートするすべての人に、セキュアで最適なプラットフォームを提供する」というミッションのもと、SMSマーケットのパイオニアとして永年の経験に裏打ちされたSMSに関するノウハウと、高い技術力を持つ自社エンジニアの開発したSMS配信プラットフォーム「SMSコネクト」を主力サービスとして、国内企業向けの直接販売及び販社・代理店販売とグローバルIT企業等海外企業向けの海外SMSアグリゲーター経由での配信に大別し、安定したSMS配信サービスを提供することで、事業を拡大してまいりました。
今後もさらなる収益拡大のため、国内企業向け販売につきましては、直接もしくは販社・代理店と連携し、各企業が抱える課題をSMS配信により解決することで、新たな用途開発を推進し、シェア拡大を目指し、海外SMSアグリゲーター向けにつきましては、当社の提供するSMPP国際ゲートウェイサービスをできるだけ多くの海外SMSアグリゲーターと接続することで、グローバルIT企業等の日本国内へのSMS配信を集積させ、国内企業・海外企業ともに市場拡大とシェア獲得を推進してまいります。
また、付加価値の高い新サービス「SMS×α」や、SMSの次世代規格である「+メッセージ」などの新しいサービスの市場開拓や普及により、SMS配信サービス企業からSMSを活用したサービスプロバイダーへの転換を図り、今後の事業のさらなる成長・発展のために、「安心・安全・信頼」をテーマに、多要素認証や新たな認証基盤技術に基づく認証やセキュリティにつながる基盤づくりや、多様なデータソースと連動させながら、デジタルと行動データを駆使し、最適なタイミングで最適なコミュニケーションがとれる基盤づくりなど、セキュリティ、コグニティブRPAや機械学習、AIに強い企業との積極的なテクノロジー・パートナーシップを築くことで、「セキュリティ×コミュニケーション」の軸で、新たな基盤づくりを目指し、SMS配信サービス以外の電話番号に捉われない事業分野への進出により、さらなる収益の向上を果たしてまいります。
⑥ 経営者の問題認識と今後の方針について
当社は、「デジタル社会に、リアルな絆を」を会社のビジョンとして掲げ、「コミュニケートするすべての人に、セキュアで最適なプラットフォームを提供する」というミッションのもと、SMS配信サービス事業を展開しております。
今後の方針としましても、引き続き市場の拡大が見込まれる当該事業領域へ経営資源を投入すること、あわせて、SMS配信サービスに付加価値をつけた「SMS×α」の販売拡大、次世代メッセージサービスとして「+メッセージ」への取組み、これまでの電話番号に捉われない新事業領域への展開等を進めることで中長期の持続的な成長を目指してまいります。
経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。