有価証券報告書-第78期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/22 11:41
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136項目
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当期の世界経済は、米国において景気回復が着実に続いており、中国を始めとしたアジア諸国においても持ち直しの動きが見られるなど、全般的に緩やかな回復が続きました。わが国経済は、個人消費に一部弱さが見られるものの、雇用情勢の改善、生産や設備投資の増加、企業収益の向上など、緩やかな回復の動きを見せました。
当社グループと関係が深い国内の住宅市場に関しましては、住宅ローン金利が低水準で推移したものの、商談の長期化傾向が続いていることや、平成27年の相続税制改正等を背景として好調であった賃貸住宅市場に一服感が見られたこと等から、新設住宅着工戸数は94万6千戸(前期比2.8%減)となりました。このうち、持家の着工戸数は28万2千戸(同3.3%減)となりました。
このような事業環境のもと、当社グループは、当期を2年目とする「住友林業グループ 中期経営計画2018」の実現に向けて、主力事業である戸建注文住宅事業と木材建材事業の収益力向上に努めたほか、海外での事業規模及び事業領域の拡大に経営資源を積極的に投入するとともに、木質バイオマス発電事業を始めとした資源環境事業に注力するなど、引き続き、収益源の多様化に取り組みました。
その結果、売上高は1兆2,219億98百万円(前期比9.8%増)、営業利益は530億21百万円(同1.8%減)、経常利益は578億65百万円(同0.0%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は301億35百万円(同12.7%減)となりました。
また、自己資本利益率(ROE)につきましては10.3%となり、前期の13.3%から低下したものの目標に掲げている10%以上を達成しております。
なお、退職給付会計に係る数理計算上の差異については、前期は49億81百万円、当期は22億91百万円と2期連続で増益要因となりましたが、数理計算上の差異を除いた経常利益は、前期の528億60百万円に対して、当期が555億74百万円と5.1%の増益となりました。また、特別損益については、米国において住宅事業を行う持分法適用関連会社の持分を追加取得し連結子会社としたことに伴う、段階取得に係る差益64億64百万円を特別利益に計上した一方で、ベトナムのパーティクルボード製造設備について減損損失57億27百万円を特別損失に計上しています。
このほかに、当社は、中大規模木造建築物を始めとした木化・緑化関連建設事業という新たな市場の創出や付加価値の高い建築技術の開発等を目的として、平成29年11月に、株式会社熊谷組と業務・資本提携に関する契約を締結しました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。各セグメントの売上高は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含んでおります。
<木材建材事業>国内の木材・建材流通事業におきましては、世界的な木材需要の増加や円安の影響等により、仕入価格が上昇したものの、森林認証材や植林木を原材料とした環境配慮型の合板である「きこりん-プライウッド」の拡販、取引先との連携強化等に取り組んだことにより、業績は堅調に推移しました。また、多様な収益源の構築に取り組むべく、発電用木質燃料の取扱数量の拡大、純木質耐火集成材「木ぐるみFR」の拡販、国産材の輸出拡大に注力しました。
国内の建材製造事業におきましては、差別化商品である階段材やフロア材の拡販に注力するなど、収益性の向上に取り組みました。
海外の流通事業においては、統括拠点であるシンガポールを中心に主に東南アジア諸国での拡販に注力したほか、ベトナムの内装建材会社と資本業務提携契約を締結し、住宅需要の増加が見込まれる同国内及び他エリアにおいて販路拡大等を目指す取り組みを開始しました。
以上の結果、木材建材事業の売上高は4,355億8百万円(前期比2.6%増)、経常利益は55億83百万円(同25.3%増)となりました。
<住宅事業>戸建注文住宅事業におきましては、高い耐震性能と設計自由度の高いオリジナルの「BF構法(ビッグフレーム構法)」を採用した住宅の販売促進に努めたほか、仕様等に関するお客様の多様なニーズに応える商品を提供するなど、受注拡大とお客様満足の最大化に取り組みましたが、前期の受注低迷に伴う完工引渡棟数の減少等により、業績は伸び悩みました。商品面では、選べる天井高による多様な室内空間と革新的な技術による大開口を実現した商品「The Forest BF(ザ フォレスト ビーエフ)」や、当社がこれまでお引き渡しさせていただいた約30万邸の「住友林業の家」のノウハウをもとに、暮らしやすさの観点より厳選したプランから選択していただくセレクトスタイル商品「Forest Selection BF(フォレストセレクション ビーエフ)」を発売しました。
賃貸住宅事業におきましては、ビッグコラム(大断面集成柱)が建物の躯体を支えることで間取りの可変性を高くし、入居者ニーズの変化にも対応しやすいオリジナルの「WF構法(ウォールフレーム構法)」を採用した賃貸住宅の受注拡大に取り組みましたが、貸家市場の減速等により、業績は伸び悩みました。
リフォーム事業におきましては、オリジナルの耐震・制震工法等の高い技術力を活かした耐震リフォームの受注拡大に努めたほか、「住友林業の家」に長年お住まいになられているオーナー様向けの巡回・点検サービスの提供に伴う需要の掘り起こし等に注力しました。その結果、業績は堅調に推移しました。
木化事業におきましては、国産材を活用した公共建築物等の木造化・木質化が広がっている中で、当期は、中学校の寄宿舎、リハビリテーション病院の新棟を竣工しました。また、耐震・耐火性能の高い木質部材であるCLT(直交集成板)を活かした事務所建物を竣工するなど、木造化・木質化の市場拡大に努めました。
このほか、訪日外国人旅行者が急増し、多様化する宿泊ニーズに対応する宿泊施設の整備が急務とされている中で、当社は、他社と業務提携契約を締結し、国家戦略特別区域法に基づく特区民泊制度を活用した既存の賃貸マンションを民泊施設として運営する取り組みを開始しました。
以上の結果、住宅事業の売上高は4,492億1百万円(前期比3.7%減)、経常利益は249億45百万円(同22.9%減)となりました。
<海外事業>製造事業におきましては、ニュージーランドにおいて、日本向けのMDF(中密度繊維板)や、同国内及び豪州向けのLVL(単板積層材)の販売が好調であったこと等から、業績は堅調に推移しました。インドネシアにおいては、パーティクルボードの販売数量が伸びたものの、木材価格が上昇したこと等により合板の収益が低迷するなど、業績は伸び悩みました。
住宅・不動産事業におきましては、米国及び豪州の堅調な住宅市場を背景として、既存の現地関係会社の引渡戸数が前期より増加したほか、昨年5月には持分法適用関連会社のBloomfield Homes, L.P. 他1社(本社:米国テキサス州)を連結子会社化したこと等により、業績は大幅に伸長しました。また、東南アジアにおいても、住宅・不動産事業を拡大するべく、インドネシアでの戸建分譲住宅事業及びタイにおける分譲マンション事業に進出するなど、事業展開エリア拡大による海外事業の収益基盤強化を図りました。
以上の結果、海外事業の売上高は3,528億97百万円(前期比42.4%増)、経常利益は264億91百万円(同37.2%増)となりました。
<その他事業>当社グループは、上記事業のほか、バイオマス発電事業、海外における植林事業、有料老人ホーム運営事業、住宅顧客等を対象とする保険代理店業等の各種サービス事業、農園芸用資材の製造・販売事業、土木・建築工事の請負等を行っています。
なお、平成28年12月より営業運転を開始した北海道紋別市におけるバイオマス発電事業の業績は、堅調に推移しました。
その他事業の売上高は370億7百万円(前期比61.0%増)、経常利益は49億34百万円(同122.0%増)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
①受注状況
当連結会計年度における住宅事業の受注状況を示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度(自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日)
セグメントの名称受注高
(百万円)
受注残高
(百万円)
前期比
(%)
前期比
(%)
住宅事業(提出会社)309,23698.5280,28399.1

(注) 1 住宅事業のうち、提出会社における注文住宅及び賃貸住宅、並びにその他請負の該当金額を記載しております。
2 受注高には、当連結会計年度の新規受注に加えて、期中の追加工事によるものが含まれております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
4 当社グループの展開する事業は多様であり、生産実績を定義することが困難であるため「生産状況」は記載しておりません。
②販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
金額(百万円)前期比(%)
木材建材事業435,508102.6
住宅事業449,20196.3
海外事業352,897142.4
報告セグメント計1,237,605108.7
その他事業37,007161.0
調整額△52,615
合計1,221,998109.8

(注) 1 各セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高又は振替高を含んでおります。
2 調整額には、特定のセグメントに区分できない管理部門等における売上高を含み、セグメント間の内部売上高を消去しております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 財政状態
当連結会計年度末における総資産は、海外住宅・不動産事業の拡大に伴いたな卸資産が増加したことに加え、持 分法適用関連会社株式の取得により投資有価証券が増加したこと等により、前連結会計年度末より1,093億22百万円増加し、9,036億82百万円となりました。負債は、設備投資や買収等の資金に充当するために社債を発行したこと等により、前連結会計年度末より595億40百万円増加し、5,580億43百万円になりました。また、純資産は3,456億39百万円、自己資本比率は34.5%となりました。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
<木材建材事業>当連結会計年度末における木材建材事業の資産は、当連結会計年度の末日が金融機関の休日であり、連結会計年度末日満期の受取手形が未決済となったこと等により、前連結会計年度末より130億65百万円増加し、1,574億48百万円となりました。
<住宅事業>当連結会計年度末における住宅事業の資産は、前連結会計年度末より41百万円減少し、1,440億66百万円となりました。
<海外事業>当連結会計年度末における海外事業の資産は、海外住宅・不動産事業の拡大に伴いたな卸資産が増加したこと等により、前連結会計年度末より494億94百万円増加し、2,779億3百万円となりました。
<その他事業>当連結会計年度末におけるその他事業の資産は、持分法適用関連会社株式の取得により投資有価証券が増加したこと等により、前連結会計年度末より520億86百万円増加し、1,320億64百万円となりました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末より71億52百万円減少して1,255億55百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により資金は137億32百万円増加しました(前連結会計年度は403億37百万円の増加)。これは、海外住宅・不動産事業の拡大に伴うたな卸資産の増加等により資金が減少した一方で、税金等調整前当期純利益585億38百万円の計上等により資金が増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により資金は462億50百万円減少しました(前連結会計年度は623億50百万円の減少)。これは、国内及び米国の持分法適用関連会社の持分取得等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により資金は251億56百万円増加しました(前連結会計年度は142億67百万円の増加)。これは、配当金の支払や長期借入金の返済等により資金が減少した一方で、社債発行や第三者割当による新株式発行等により資金が増加したことによるものであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、長短の資金使途に応じて最適な資金調達手法を機動的に利用し、資金返済時期の分散や調達コストの低減を実現することを基本方針としております。当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は2,006億30百万円となっております。