有価証券報告書-第85期(2024/01/01-2024/12/31)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当期の世界経済は、これまでの主要各国の金融引き締め策の影響により物価上昇に落ち着きが見られ、米国では実質賃金が上昇し個人消費が拡大したほか、欧州では一部を除いて景気の持ち直しの動きが見られました。わが国経済は、物価上昇の影響があったものの、企業における賃上げにより所得環境の改善が進み、個人消費に持ち直しの動きが見られたことから、景気は緩やかに回復しました。
住宅市場に関しましては、国内では、建設資材の高騰による建設費の上昇が続いたほか、政策金利引き上げに伴う住宅ローン金利の上昇懸念等により消費に慎重な動きが見られたことから、新設住宅着工戸数は減少しました。米国では、住宅の供給不足を背景とした販売価格の高止まりに加え、一服感が見られていた長期金利及び住宅ローン金利の再上昇等もあり、市場は調整局面が続きました。豪州では、住宅ローン金利や販売価格の高止まり等を背景として、市場は厳しい状況が続きました。
このような事業環境のもと、当社グループは、当期を最終年度とする中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase1」の目標達成に向け、国内では、福島県いわき市において国産スギを中心に製材及び木材加工品の製造工場の建設に着手するなど、国産材を積極的に活用する取り組みを推進しました。米国においては、戸建住宅事業の更なる拡大を図るべく、フロリダ州における分譲住宅会社の事業を譲り受けたほか、豪州においては、同国最大手の住宅会社を買収し、事業規模の拡大を図るなど、当社グループのより一層の成長に向けた事業の推進に注力しました。
その結果、売上高は2兆536億50百万円(前期比18.5%増)、営業利益は1,945億88百万円(同33.0%増)、経常利益は1,979億55百万円(同24.6%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は1,165億28百万円(同14.1%増)となりました。なお、退職給付会計に係る数理計算上の差異はプラス98億2百万円となり、数理計算上の差異を除いた経常利益は1,881億53百万円となりました。
(事業セグメント別の経営成績)
事業セグメント別の業績は、次のとおりです。なお、当連結会計年度より、従来「海外住宅・建築・不動産事業」としていたセグメント名称を「建築・不動産事業」に変更しております。また、各事業セグメントの売上高には、事業セグメント間の内部売上高を含めております。
<木材建材事業>流通事業におきましては、国内における新設住宅着工戸数の減少等を背景に厳しい市場環境が続いたなか、取引先との連携強化及び拡販に継続的に取り組んだほか、住宅着工の影響を受けないバイオマス発電向けの木質燃料の拡販に注力しました。その結果、バイオマス発電向け燃料の販売数量及び単価は上昇したものの、住宅建設向けの木材及び木材製品の販売単価が下落したこと等から、業績は伸び悩みました。
製造事業におきましては、国内において、ビルダー向けの建材の販売が減少したことから、業績は伸び悩みました。海外においては、ニュージーランドのLVL(単板積層材)やベトナムのパーティクルボードの販売数量が増加したこと等から業績は回復しました。
また、脱炭素設計の標準化を図る「One Click LCA」*の普及拡大等に引き続き注力するとともに、建材流通事業者の業務効率化を支援する事業として、「JUCORE 見積」**の機能拡充と、首都圏にて「JUCORE 物流」***のサービスを開始しました。
* One Click LCAとは、建設にかかる原材料調達から、加工、輸送、建設、改修、廃棄時のCO2排出量を算定できるソフトウェアです。
** JUCORE 見積とは、物件情報、見積内容、受注見込、予算実績等のデータを一元管理できるソフトウェアです。
*** JUCORE 物流とは、建築現場への邸別物流の効率化・現場工事の生産性向上を実現する建築資材の共同物流サービスです。
以上の結果、木材建材事業の売上高は2,531億56百万円(前期比7.2%増)、経常利益は100億1百万円(同10.6%減)となりました。
<住宅事業>戸建注文住宅事業におきましては、エネルギー消費量が正味ゼロとなるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様住宅の高付加価値提案に引き続き努めたほか、Webを通じて1,500の間取りから選択する企画型商品「Forest Selection BF」 の販売促進や、「邸宅設計プロジェクト」を通じた高価格帯の受注拡大に努めました。その結果、前期までに実施した販売価格の改定効果もあり、業績は堅調に推移しました。
賃貸住宅事業におきましては、事務所や医療施設等の木造化・木質化を推進するべく、昨年5月に木造の事業用建築ブランド「The Forest Barque(ザ・フォレスト バーク)」を発売したほか、デザインと性能を両立した賃貸用木造マンション「Forest Maison GRANDE(フォレストメゾン グランデ)」の受注拡大に引き続き注力しました。
分譲住宅事業におきましては、販売棟数は前期を上回ったものの、一部のプロジェクトにおいて価格調整を進めた結果、業績は伸び悩みました。
リフォーム事業におきましては、断熱性能の向上をはじめとする環境配慮型リフォームの受注を促進したことに加え、戸建リフォーム商品「Reforest」において独自の耐震・制震技術のメリットをお客様に訴求したことにより、業績は堅調に推移しました。
なお、当社が施工した一部建物において、軒裏の45分準耐火構造の国土交通大臣認定に適合しない仕様があったことが判明し、昨年12月に国土交通省に報告いたしました。国土交通省並びに特定行政庁の指導のもと、お客様に丁寧な説明を実施させていただき、必要な調査を行ったうえで速やかに改修等を進めてまいります。お客様や関係者の皆様にご心配とご迷惑をお掛けしておりますこと、深くお詫び申し上げます。また、当社は今回の事象を厳粛に受け止め、迅速な是正を実施するとともに全社を挙げて再発防止に努めてまいります。
以上の結果、住宅事業の売上高は5,423億円(前期比1.5%増)、経常利益は351億73百万円(同7.3%増)となりました。
<建築・不動産事業>米国での戸建住宅事業におきましては、当社グループが事業活動を展開しているテキサス州、メリーランド州、ユタ州及びワシントン州等の地域において、底堅い住宅需要を背景として販売単価が上昇し、販売戸数も増加したことから業績は堅調に推移しました。また、昨年3月にはフロリダ州で戸建分譲住宅事業を展開するBiscayne Homes 社の事業を譲受し、同州における事業基盤を強化しました。パネル設計、製造、配送、施工までを一貫して提供し生産体制の合理化等を図るFully Integrated Turnkey Provider事業(FITP事業)においては、ノースカロライナ州の新工場が稼働するなど事業体制を拡充したものの、集合住宅市場の低迷が影響したことから、業績は伸び悩みました。
不動産開発事業におきましては、当期に予定していた集合住宅及び商業複合施設の売却を一部延期したことから、業績は伸び悩みました。なお、昨年4月には米国テキサス州において飯野海運株式会社、株式会社熊谷組及び現地大手デベロッパーとの協業により木造7階建のESG配慮型オフィスビルが竣工する等、脱炭素社会の実現に貢献する取り組みを推進しました。
豪州での戸建住宅事業におきましては、政策金利及び建築コストの高止まりにより厳しい市場環境が続きましたが、西オーストラリア州において一次取得者を中心とした需要が堅調に推移したほか、販売単価も上昇したことから業績は回復しました。また、昨年11月には主に豪州東部で注文住宅事業等を展開する同国最大手のMetriconグループの持分を取得し、豪州における戸建住宅事業の更なる拡大に取り組みました。
国内の中大規模木造建築事業では、昨年12月に千葉県八千代市において、株式会社熊谷組との共同企業体による木造及び鉄骨造の混構造である小学校施設を着工する等、同社との協業を着実に進めました。
以上の結果、建築・不動産事業の売上高は1兆2,399億97百万円(前期比30.8%増)、経常利益は1,474億51百万円(同31.6%増)となりました。
<資源環境事業>再生可能エネルギー事業におきましては、全国6か所で展開する木質バイオマス発電事業所が安定的に稼働しましたが、燃料価格の高騰が続いたことにより利益率が低下し、業績は伸び悩みました。
森林資源事業におきましては、ニュージーランドにおける中国向け原木の販売単価の下落や、インドネシアにおける植林地の整備にかかるコストの上昇により、業績は伸び悩みました。
なお、昨年8月、当社はインドネシアにおいて、先端技術を活用した新たな泥炭地管理技術の実証事業を開始しました。本事業では、日本の環境省とインドネシアの環境林業省で締結した協力覚書の下、泥炭火災や煙害を防止する等の持続可能な熱帯泥炭地の管理モデルの構築に取り組み、経済と環境が両立した森林経営を目指してまいります。
以上の結果、資源環境事業の売上高は269億50百万円(前期比8.5%増)、経常利益は2億36百万円(同58.1%減)となりました。
<その他事業>当社グループは、上記事業のほか、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の運営事業、住宅顧客等を対象とする保険代理店業等の各種サービス事業等を行っています。また、株式会社熊谷組に係る持分法による投資利益も含まれます。
その他事業の売上高は273億14百万円(前期比4.9%増)、経常利益は7億5百万円(同67.8%減)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
①生産実績
当社グループの展開する事業は多様であり、生産実績を定義することが困難であるため記載しておりません。
②受注実績
当連結会計年度における住宅事業の受注実績を示すと、次のとおりであります。
(注) 1 住宅事業のうち、提出会社における注文住宅及び賃貸住宅の該当金額を記載しております。なお、前連結会計年度の受注高及び受注残高に含まれていたその他請負の金額を控除後の数値で比較しております。
2 受注高には、当連結会計年度の新規受注に加えて、期中の追加工事によるものが含まれております。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 各セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高又は振替高を含んでおります。
2 調整額には、特定のセグメントに区分できない管理部門等における売上高を含み、セグメント間の内部売上高を消去しております。
(2)財政状態
当連結会計年度末における総資産は、主に米国における分譲住宅事業の拡大に伴う販売用不動産の増加や、為替換算や新規連結の影響等により、前連結会計年度末より4,364億2百万円増加し、2兆2,611億28百万円となりました。負債は、借入金の増加等により、前連結会計年度末より2,427億37百万円増加し、1兆2,410億2百万円となりました。なお、純資産は1兆201億27百万円、自己資本比率は40.7%となりました。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
<木材建材事業>当連結会計年度末における木材建材事業の資産は、主に福島県いわき市における製材及び木材加工品の製造工場の建設による有形固定資産の増加や現預金の増加等により、前連結会計年度末より169億96百万円増加し、2,437億39百万円となりました。
<住宅事業>当連結会計年度末における住宅事業の資産は、主に分譲住宅事業における販売用不動産や仕掛販売用不動産の増加、注文住宅事業の販売単価の上昇及び販売棟数の増加に伴う契約資産の増加等により、前連結会計年度末より194億41百万円増加し、2,363億58百万円となりました。
<建築・不動産事業>当連結会計年度末における建築・不動産事業の資産は、主に円安による外貨建資産の円換算金額の増加、米国の分譲住宅事業の拡大に伴う棚卸資産の増加、米国の戸建分譲住宅事業会社の事業譲受や豪州の住宅事業会社の新規連結等により、前連結会計年度末より3,471億68百万円増加し、1兆3,937億53百万円となりました。
<資源環境事業>当連結会計年度末における資源環境事業の資産は、海外における植林資産の増加に伴う有形固定資産の増加等により、前連結会計年度末より19億17百万円増加し、909億7百万円となりました。
<その他事業>当連結会計年度末におけるその他事業の資産は、持分法適用会社の投資有価証券の減少等により、前連結会計年度末より21億61百万円減少し、737億25百万円となりました。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末より315億26百万円増加して2,062億97百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により資金は270億78百万円増加しました(前連結会計年度は1,253億円の増加)。これは、主に米国における分譲住宅事業の拡大に伴う販売用不動産の増加等により資金が減少した一方で、税金等調整前当期純利益1,920億29百万円の計上等により資金が増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により資金は1,351億3百万円減少しました(前連結会計年度は1,124億97百万円の減少)。これは、主に米国における集合住宅の開発や戸建分譲住宅事業会社の事業譲受に資金を使用したこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により資金は1,332億25百万円増加しました(前連結会計年度は102億36百万円の増加)。これは、配当金の支払により資金が減少した一方で、長期借入金の増加等により資金が増加したことによるものであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、長短の資金使途に応じて最適な資金調達手法を機動的に利用し、資金返済時期の分散や調達コストの低減を実現することを基本方針としております。また、金融機関との取引関係の維持、調達先の分散、複数の金融機関とのコミットメントライン(特定融資枠)の設定など、資金調達リスクを軽減するため様々な対応策をとっております。当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は6,134億11百万円となっております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項については、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
当社は特に以下の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定が重要であると考えております。なお、固定資産の減損及び繰延税金資産については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」にも記載しております。
①販売用不動産及び仕掛販売用不動産の評価
販売用不動産及び仕掛販売用不動産について、正味売却価額が帳簿価額を下回る場合、棚卸資産の簿価切下げに伴う評価損を計上しております。正味売却価額の見積りにあたっては、近隣地域における市場価格や直近の販売状況等を踏まえた販売計画に基づいて、当連結会計年度末現在における販売見込額を算定しております。経済情勢や不動産市況の悪化等により、正味売却価額が見込以上に下落した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
②投資有価証券の評価
その他有価証券のうち、市場価格のない株式等以外のものについては時価法を、市場価格のない株式等については移動平均法による原価法を採用しております。市場価格のない株式等について、その実質価額が取得原価に比べ著しく下落した場合、回復の見込が確実と認められなければ、減損処理しております。市場価格のない株式等の実質価額の見積りにあたっては、投資先の直近の業績や事業計画等を総合的に勘案し、当連結会計年度末現在における回収可能見込額を算定しております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が発生した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
③貸倒引当金
売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。貸倒懸念債権等特定の債権の回収可能性の見積りにあたっては、直近の回収状況や取引先の経営状況等を総合的に勘案し、当連結会計年度末現在における回収可能見込額を算定しております。取引先の財政状態及び業況が見込以上に悪化した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
④固定資産の減損
減損の兆候がある資産又は資産グループについて、そこから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が減損損失判定時点の帳簿価額の合計を下回る場合、減損損失判定時点の帳簿価額の合計と回収可能価額との差額を減損損失として計上しております。回収可能価額は、正味売却価額又は使用価値のいずれか高い方の金額としており、正味売却価額については、売却予定価額又は鑑定評価額を基に算定し、また、使用価値については、取締役会等で承認された予算及び中長期の事業計画を基礎として、資産グループから生じる将来キャッシュ・フローを見積り、これを現在価値に割り引いております。これらの見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
⑤繰延税金資産
繰延税金資産は、将来の課税所得の見積り、将来減算一時差異の将来解消見込年度のスケジューリング等に基づき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について計上しております。加えて、当社及び国内の連結子会社については、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第26号)に示される企業の分類を考慮して回収可能性を判断しております。将来の課税所得の見積りは、取締役会等で承認された予算及び中長期の事業計画を基礎としております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りや将来減算一時差異のスケジューリングに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において繰延税金資産の調整額を収益又は費用として計上する可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当期の世界経済は、これまでの主要各国の金融引き締め策の影響により物価上昇に落ち着きが見られ、米国では実質賃金が上昇し個人消費が拡大したほか、欧州では一部を除いて景気の持ち直しの動きが見られました。わが国経済は、物価上昇の影響があったものの、企業における賃上げにより所得環境の改善が進み、個人消費に持ち直しの動きが見られたことから、景気は緩やかに回復しました。
住宅市場に関しましては、国内では、建設資材の高騰による建設費の上昇が続いたほか、政策金利引き上げに伴う住宅ローン金利の上昇懸念等により消費に慎重な動きが見られたことから、新設住宅着工戸数は減少しました。米国では、住宅の供給不足を背景とした販売価格の高止まりに加え、一服感が見られていた長期金利及び住宅ローン金利の再上昇等もあり、市場は調整局面が続きました。豪州では、住宅ローン金利や販売価格の高止まり等を背景として、市場は厳しい状況が続きました。
このような事業環境のもと、当社グループは、当期を最終年度とする中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase1」の目標達成に向け、国内では、福島県いわき市において国産スギを中心に製材及び木材加工品の製造工場の建設に着手するなど、国産材を積極的に活用する取り組みを推進しました。米国においては、戸建住宅事業の更なる拡大を図るべく、フロリダ州における分譲住宅会社の事業を譲り受けたほか、豪州においては、同国最大手の住宅会社を買収し、事業規模の拡大を図るなど、当社グループのより一層の成長に向けた事業の推進に注力しました。
その結果、売上高は2兆536億50百万円(前期比18.5%増)、営業利益は1,945億88百万円(同33.0%増)、経常利益は1,979億55百万円(同24.6%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は1,165億28百万円(同14.1%増)となりました。なお、退職給付会計に係る数理計算上の差異はプラス98億2百万円となり、数理計算上の差異を除いた経常利益は1,881億53百万円となりました。
(事業セグメント別の経営成績)
事業セグメント別の業績は、次のとおりです。なお、当連結会計年度より、従来「海外住宅・建築・不動産事業」としていたセグメント名称を「建築・不動産事業」に変更しております。また、各事業セグメントの売上高には、事業セグメント間の内部売上高を含めております。
<木材建材事業>流通事業におきましては、国内における新設住宅着工戸数の減少等を背景に厳しい市場環境が続いたなか、取引先との連携強化及び拡販に継続的に取り組んだほか、住宅着工の影響を受けないバイオマス発電向けの木質燃料の拡販に注力しました。その結果、バイオマス発電向け燃料の販売数量及び単価は上昇したものの、住宅建設向けの木材及び木材製品の販売単価が下落したこと等から、業績は伸び悩みました。
製造事業におきましては、国内において、ビルダー向けの建材の販売が減少したことから、業績は伸び悩みました。海外においては、ニュージーランドのLVL(単板積層材)やベトナムのパーティクルボードの販売数量が増加したこと等から業績は回復しました。
また、脱炭素設計の標準化を図る「One Click LCA」*の普及拡大等に引き続き注力するとともに、建材流通事業者の業務効率化を支援する事業として、「JUCORE 見積」**の機能拡充と、首都圏にて「JUCORE 物流」***のサービスを開始しました。
* One Click LCAとは、建設にかかる原材料調達から、加工、輸送、建設、改修、廃棄時のCO2排出量を算定できるソフトウェアです。
** JUCORE 見積とは、物件情報、見積内容、受注見込、予算実績等のデータを一元管理できるソフトウェアです。
*** JUCORE 物流とは、建築現場への邸別物流の効率化・現場工事の生産性向上を実現する建築資材の共同物流サービスです。
以上の結果、木材建材事業の売上高は2,531億56百万円(前期比7.2%増)、経常利益は100億1百万円(同10.6%減)となりました。
<住宅事業>戸建注文住宅事業におきましては、エネルギー消費量が正味ゼロとなるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様住宅の高付加価値提案に引き続き努めたほか、Webを通じて1,500の間取りから選択する企画型商品「Forest Selection BF」 の販売促進や、「邸宅設計プロジェクト」を通じた高価格帯の受注拡大に努めました。その結果、前期までに実施した販売価格の改定効果もあり、業績は堅調に推移しました。
賃貸住宅事業におきましては、事務所や医療施設等の木造化・木質化を推進するべく、昨年5月に木造の事業用建築ブランド「The Forest Barque(ザ・フォレスト バーク)」を発売したほか、デザインと性能を両立した賃貸用木造マンション「Forest Maison GRANDE(フォレストメゾン グランデ)」の受注拡大に引き続き注力しました。
分譲住宅事業におきましては、販売棟数は前期を上回ったものの、一部のプロジェクトにおいて価格調整を進めた結果、業績は伸び悩みました。
リフォーム事業におきましては、断熱性能の向上をはじめとする環境配慮型リフォームの受注を促進したことに加え、戸建リフォーム商品「Reforest」において独自の耐震・制震技術のメリットをお客様に訴求したことにより、業績は堅調に推移しました。
なお、当社が施工した一部建物において、軒裏の45分準耐火構造の国土交通大臣認定に適合しない仕様があったことが判明し、昨年12月に国土交通省に報告いたしました。国土交通省並びに特定行政庁の指導のもと、お客様に丁寧な説明を実施させていただき、必要な調査を行ったうえで速やかに改修等を進めてまいります。お客様や関係者の皆様にご心配とご迷惑をお掛けしておりますこと、深くお詫び申し上げます。また、当社は今回の事象を厳粛に受け止め、迅速な是正を実施するとともに全社を挙げて再発防止に努めてまいります。
以上の結果、住宅事業の売上高は5,423億円(前期比1.5%増)、経常利益は351億73百万円(同7.3%増)となりました。
<建築・不動産事業>米国での戸建住宅事業におきましては、当社グループが事業活動を展開しているテキサス州、メリーランド州、ユタ州及びワシントン州等の地域において、底堅い住宅需要を背景として販売単価が上昇し、販売戸数も増加したことから業績は堅調に推移しました。また、昨年3月にはフロリダ州で戸建分譲住宅事業を展開するBiscayne Homes 社の事業を譲受し、同州における事業基盤を強化しました。パネル設計、製造、配送、施工までを一貫して提供し生産体制の合理化等を図るFully Integrated Turnkey Provider事業(FITP事業)においては、ノースカロライナ州の新工場が稼働するなど事業体制を拡充したものの、集合住宅市場の低迷が影響したことから、業績は伸び悩みました。
不動産開発事業におきましては、当期に予定していた集合住宅及び商業複合施設の売却を一部延期したことから、業績は伸び悩みました。なお、昨年4月には米国テキサス州において飯野海運株式会社、株式会社熊谷組及び現地大手デベロッパーとの協業により木造7階建のESG配慮型オフィスビルが竣工する等、脱炭素社会の実現に貢献する取り組みを推進しました。
豪州での戸建住宅事業におきましては、政策金利及び建築コストの高止まりにより厳しい市場環境が続きましたが、西オーストラリア州において一次取得者を中心とした需要が堅調に推移したほか、販売単価も上昇したことから業績は回復しました。また、昨年11月には主に豪州東部で注文住宅事業等を展開する同国最大手のMetriconグループの持分を取得し、豪州における戸建住宅事業の更なる拡大に取り組みました。
国内の中大規模木造建築事業では、昨年12月に千葉県八千代市において、株式会社熊谷組との共同企業体による木造及び鉄骨造の混構造である小学校施設を着工する等、同社との協業を着実に進めました。
以上の結果、建築・不動産事業の売上高は1兆2,399億97百万円(前期比30.8%増)、経常利益は1,474億51百万円(同31.6%増)となりました。
<資源環境事業>再生可能エネルギー事業におきましては、全国6か所で展開する木質バイオマス発電事業所が安定的に稼働しましたが、燃料価格の高騰が続いたことにより利益率が低下し、業績は伸び悩みました。
森林資源事業におきましては、ニュージーランドにおける中国向け原木の販売単価の下落や、インドネシアにおける植林地の整備にかかるコストの上昇により、業績は伸び悩みました。
なお、昨年8月、当社はインドネシアにおいて、先端技術を活用した新たな泥炭地管理技術の実証事業を開始しました。本事業では、日本の環境省とインドネシアの環境林業省で締結した協力覚書の下、泥炭火災や煙害を防止する等の持続可能な熱帯泥炭地の管理モデルの構築に取り組み、経済と環境が両立した森林経営を目指してまいります。
以上の結果、資源環境事業の売上高は269億50百万円(前期比8.5%増)、経常利益は2億36百万円(同58.1%減)となりました。
<その他事業>当社グループは、上記事業のほか、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の運営事業、住宅顧客等を対象とする保険代理店業等の各種サービス事業等を行っています。また、株式会社熊谷組に係る持分法による投資利益も含まれます。
その他事業の売上高は273億14百万円(前期比4.9%増)、経常利益は7億5百万円(同67.8%減)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
①生産実績
当社グループの展開する事業は多様であり、生産実績を定義することが困難であるため記載しておりません。
②受注実績
当連結会計年度における住宅事業の受注実績を示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高 (百万円) | 2023年12月期比 (%) | 受注残高 (百万円) | 2023年12月期比 (%) |
住宅事業(提出会社) | 417,167 | +15.1 | 355,551 | +14.0 |
(注) 1 住宅事業のうち、提出会社における注文住宅及び賃貸住宅の該当金額を記載しております。なお、前連結会計年度の受注高及び受注残高に含まれていたその他請負の金額を控除後の数値で比較しております。
2 受注高には、当連結会計年度の新規受注に加えて、期中の追加工事によるものが含まれております。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 2023年12月期比(%) |
木材建材事業 | 253,156 | +7.2 |
住宅事業 | 542,300 | +1.5 |
建築・不動産事業 | 1,239,997 | +30.8 |
資源環境事業 | 26,950 | +8.5 |
報告セグメント計 | 2,062,404 | +18.3 |
その他事業 | 27,314 | +4.9 |
調整額 | △36,067 | - |
合計 | 2,053,650 | +18.5 |
(注) 1 各セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高又は振替高を含んでおります。
2 調整額には、特定のセグメントに区分できない管理部門等における売上高を含み、セグメント間の内部売上高を消去しております。
(2)財政状態
当連結会計年度末における総資産は、主に米国における分譲住宅事業の拡大に伴う販売用不動産の増加や、為替換算や新規連結の影響等により、前連結会計年度末より4,364億2百万円増加し、2兆2,611億28百万円となりました。負債は、借入金の増加等により、前連結会計年度末より2,427億37百万円増加し、1兆2,410億2百万円となりました。なお、純資産は1兆201億27百万円、自己資本比率は40.7%となりました。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
<木材建材事業>当連結会計年度末における木材建材事業の資産は、主に福島県いわき市における製材及び木材加工品の製造工場の建設による有形固定資産の増加や現預金の増加等により、前連結会計年度末より169億96百万円増加し、2,437億39百万円となりました。
<住宅事業>当連結会計年度末における住宅事業の資産は、主に分譲住宅事業における販売用不動産や仕掛販売用不動産の増加、注文住宅事業の販売単価の上昇及び販売棟数の増加に伴う契約資産の増加等により、前連結会計年度末より194億41百万円増加し、2,363億58百万円となりました。
<建築・不動産事業>当連結会計年度末における建築・不動産事業の資産は、主に円安による外貨建資産の円換算金額の増加、米国の分譲住宅事業の拡大に伴う棚卸資産の増加、米国の戸建分譲住宅事業会社の事業譲受や豪州の住宅事業会社の新規連結等により、前連結会計年度末より3,471億68百万円増加し、1兆3,937億53百万円となりました。
<資源環境事業>当連結会計年度末における資源環境事業の資産は、海外における植林資産の増加に伴う有形固定資産の増加等により、前連結会計年度末より19億17百万円増加し、909億7百万円となりました。
<その他事業>当連結会計年度末におけるその他事業の資産は、持分法適用会社の投資有価証券の減少等により、前連結会計年度末より21億61百万円減少し、737億25百万円となりました。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末より315億26百万円増加して2,062億97百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により資金は270億78百万円増加しました(前連結会計年度は1,253億円の増加)。これは、主に米国における分譲住宅事業の拡大に伴う販売用不動産の増加等により資金が減少した一方で、税金等調整前当期純利益1,920億29百万円の計上等により資金が増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により資金は1,351億3百万円減少しました(前連結会計年度は1,124億97百万円の減少)。これは、主に米国における集合住宅の開発や戸建分譲住宅事業会社の事業譲受に資金を使用したこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により資金は1,332億25百万円増加しました(前連結会計年度は102億36百万円の増加)。これは、配当金の支払により資金が減少した一方で、長期借入金の増加等により資金が増加したことによるものであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、長短の資金使途に応じて最適な資金調達手法を機動的に利用し、資金返済時期の分散や調達コストの低減を実現することを基本方針としております。また、金融機関との取引関係の維持、調達先の分散、複数の金融機関とのコミットメントライン(特定融資枠)の設定など、資金調達リスクを軽減するため様々な対応策をとっております。当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は6,134億11百万円となっております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項については、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
当社は特に以下の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定が重要であると考えております。なお、固定資産の減損及び繰延税金資産については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」にも記載しております。
①販売用不動産及び仕掛販売用不動産の評価
販売用不動産及び仕掛販売用不動産について、正味売却価額が帳簿価額を下回る場合、棚卸資産の簿価切下げに伴う評価損を計上しております。正味売却価額の見積りにあたっては、近隣地域における市場価格や直近の販売状況等を踏まえた販売計画に基づいて、当連結会計年度末現在における販売見込額を算定しております。経済情勢や不動産市況の悪化等により、正味売却価額が見込以上に下落した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
②投資有価証券の評価
その他有価証券のうち、市場価格のない株式等以外のものについては時価法を、市場価格のない株式等については移動平均法による原価法を採用しております。市場価格のない株式等について、その実質価額が取得原価に比べ著しく下落した場合、回復の見込が確実と認められなければ、減損処理しております。市場価格のない株式等の実質価額の見積りにあたっては、投資先の直近の業績や事業計画等を総合的に勘案し、当連結会計年度末現在における回収可能見込額を算定しております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が発生した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
③貸倒引当金
売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。貸倒懸念債権等特定の債権の回収可能性の見積りにあたっては、直近の回収状況や取引先の経営状況等を総合的に勘案し、当連結会計年度末現在における回収可能見込額を算定しております。取引先の財政状態及び業況が見込以上に悪化した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
④固定資産の減損
減損の兆候がある資産又は資産グループについて、そこから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が減損損失判定時点の帳簿価額の合計を下回る場合、減損損失判定時点の帳簿価額の合計と回収可能価額との差額を減損損失として計上しております。回収可能価額は、正味売却価額又は使用価値のいずれか高い方の金額としており、正味売却価額については、売却予定価額又は鑑定評価額を基に算定し、また、使用価値については、取締役会等で承認された予算及び中長期の事業計画を基礎として、資産グループから生じる将来キャッシュ・フローを見積り、これを現在価値に割り引いております。これらの見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
⑤繰延税金資産
繰延税金資産は、将来の課税所得の見積り、将来減算一時差異の将来解消見込年度のスケジューリング等に基づき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について計上しております。加えて、当社及び国内の連結子会社については、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第26号)に示される企業の分類を考慮して回収可能性を判断しております。将来の課税所得の見積りは、取締役会等で承認された予算及び中長期の事業計画を基礎としております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りや将来減算一時差異のスケジューリングに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において繰延税金資産の調整額を収益又は費用として計上する可能性があります。