有価証券報告書-第118期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度の売上高は,前連結会計年度に比べ2.0%増加し1兆6,982億円となった。
利益については,営業利益は前連結会計年度に比べ3.2%増加し1,338億円,経常利益は3.0%増加し1,379億円,親会社株主に帰属する当期純利益は0.7%減少し989億円となった。
セグメントの業績は,以下のとおりである。(セグメントの業績については,セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。また,報告セグメントの利益は,連結財務諸表の作成にあたって計上した引当金の繰入額及び取崩額を含んでいない。なお,セグメント利益は,連結損益計算書の営業利益と調整を行っている。)
(当社建設事業)
当社建設事業の売上高は,前連結会計年度に比べ2.1%増加し1兆4,080億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ8.4%増加し1,451億円となった。
(当社投資開発事業)
当社投資開発事業の売上高は,前連結会計年度に比べ33.7%増加し338億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ17.8%増加し103億円となった。
(その他)
当社が営んでいるエンジニアリング事業,LCV事業及び子会社が営んでいる各種事業の売上高は,前連結会計年度に比べ2.9%増加し5,201億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ11.3%増加し223億円となった。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況については,投資活動により1,157億円資金が減少したが(前連結会計年度は526億円の資金減少),営業活動により1,705億円資金が増加し(前連結会計年度は149億円の資金減少),財務活動により687億円の資金が増加した結果(前連結会計年度は424億円の資金減少),現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は,前連結会計年度末に比べ1,227億円増加し,3,527億円となった。
③ 生産,受注及び販売の状況
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業及び開発事業では,「生産」を定義することが困難であり,また,子会社が営んでいる事業には,「受注」生産形態をとっていない事業もあるため,当該事業においては生産実績及び受注実績を示すことはできない。
また,当社グループの主な事業である建設事業では,請負形態をとっているので,「販売」という概念には適合しないため,販売実績を示すことはできない。
このため,「生産,受注及び販売の状況」については,記載可能な項目を「① 経営成績の状況」においてセグメントの業績に関連付けて記載している。
なお,参考のため当社単体の事業の状況は次のとおりである。
a. 受注(契約)高,売上高,及び次期繰越高
(注) 1 前期以前に受注したもので,契約の更改により請負金額に変更のあるものについては,当期受注(契約)
高にその増減額を含む。したがって当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 開発事業等は,投資開発事業,エンジニアリング事業及びLCV事業等である。
b. 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は,特命と競争に大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
c. 売上高
(注) 完成工事のうち主なものは,次のとおりである。
第117期
第118期
d. 次期繰越高(2020年3月31日現在)
(注) 次期繰越工事のうち主なものは,次のとおりである。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績の分析
2019年度の日本経済は,企業収益や雇用・所得環境の着実な改善を背景に緩やかな回復傾向が続いたものの,2020年1月下旬以降は新型コロナウイルス感染症の世界経済への影響が懸念されるなど,先行きが不透明な状況となった。
建設業界においては,官公庁工事で前年度に大型案件の受注があった反動や,民間工事で消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられ,業界全体の受注高は前年度を下回る水準で推移した。
このような状況のもと,当社グループの売上高は,完成工事高及び開発事業等売上高の増加により,前連結会計年度に比べ2.0%増加し1兆6,982億円となった。
利益については,国内建築及び国内土木工事の工事採算の改善などにより完成工事総利益が増加したことに加え,開発物件の売却による開発事業等総利益の増加などにより,営業利益は前連結会計年度に比べ3.2%増加し1,338億円,経常利益は前連結会計年度に比べ3.0%増加し1,379億円となった。親会社株主に帰属する当期純利益は,固定資産の減損損失などを特別損失に計上したことから,0.7%減少し989億円となった。
セグメントの業績は,以下のとおりである。(セグメントの業績については,セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。また,報告セグメントの利益は,連結財務諸表の作成にあたって計上した引当金の繰入額及び取崩額を含んでいない。なお,セグメント利益は,連結損益計算書の営業利益と調整を行っている。)
(当社建設事業)
当社建設事業の売上高は,前連結会計年度に比べ2.1%増加し1兆4,080億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ8.4%増加し1,451億円となった。
(当社投資開発事業)
当社投資開発事業の売上高は,大型開発物件を売上計上したことなどにより,前連結会計年度に比べ33.7%増加し338億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ17.8%増加し103億円となった。
(その他)
当社が営んでいるエンジニアリング事業,LCV事業及び子会社が営んでいる各種事業の売上高は,前連結会計年度に比べ2.9%増加し5,201億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ11.3%増加し223億円となった。
② 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部は,受取手形・完成工事未収入金等は減少したものの,現金同等物(現金預金及び有価証券に含まれる譲渡性預金)の増加などにより,1兆9,049億円となり,前連結会計年度末に比べ441億円増加した。
当連結会計年度末の負債の部は,支払手形・工事未払金等は減少したものの,コマーシャル・ペーパーを発行したことなどにより1兆1,685億円となり,前連結会計年度末に比べ429億円増加した。
連結有利子負債の残高は4,413億円となり,前連結会計年度末に比べ1,219億円増加した。
当連結会計年度末の純資産の部は,保有株式の時価の下落や売却に伴い,その他有価証券評価差額金が減少したことに加え,自己株式の取得を実施したものの,親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加などにより7,364億円となり,前連結会計年度末に比べ11億円増加した。また,自己資本比率は38.3%となり,前連結会計年度末に比べ0.9%ポイント減少した。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況については,投資活動により1,157億円資金が減少したが,営業活動により1,705億円,財務活動により687億円それぞれ資金が増加した結果,現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は,前連結会計年度末に比べ1,227億円増加し3,527億円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは,税金等調整前当期純利益1,413億円の計上などにより,1,705億円の資金増加となった。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは,賃貸事業をはじめとする事業用固定資産の取得などにより1,157億円の資金減少となった。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは,コマーシャル・ペーパーの発行などにより687億円の資金増加となった。
④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資金需要の主なものは,建設事業における工事代金の立替金や販売費及び一般管理費などの営業活動に伴う支出,不動産開発事業における賃貸事業用資産の取得などの設備投資に伴う支出である。また,当社グループは,2019年5月に策定した「中期経営計画〈2019‐2023〉」において,建設事業での安定的な収益基盤を維持しつつ,非建設事業の着実な収益力向上を図ることを目的とし,2019年度から5年間で生産性向上・研究開発,不動産開発事業,新規事業などに7,500億円の投資を計画している。
これらの資金需要に対し,自己資金に加え,金融機関からの借入金やノンリコース借入金などの有利子負債を活用することにより,必要資金の調達を行う方針である。
なお,財務体質の健全性を維持するため,自己資本比率を40%以上,負債資本倍率(D/Eレシオ)を0.7倍以下とすることを財務上のKPIとして設定している。
当連結会計年度においては,新型コロナウイルス感染症拡大の影響による工事代金の入金遅延等の不測の事態に備えるため,2020年3月にコマーシャル・ペーパーの発行800億円を行ったことなどから,当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は3,527億円となった。
⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は,我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。この連結財務諸表の作成にあたっては,期末日時点の状況をもとに種々の見積りを行っているが,これらの見積りには不確実性が伴うため,実際の結果と異なることがある。
当社グループが連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち,重要なものは以下のとおりである。
なお,新型コロナウイルス感染症の拡大による影響に係る会計上の見積りの前提は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 (追加情報)」に記載している。
(工事進行基準による収益認識)
当社グループは,完成工事高及び完成工事原価の計上にあたり,期末日までの進捗部分について,成果の確実性が認められる工事については工事進行基準を適用している。
工事進行基準の適用にあたっては,工事収益総額,工事原価総額及び期末日における工事進捗度を合理的に見積る必要があるが,建設資材単価や労務単価等が,請負契約締結後に予想を超えて大幅に上昇する場合など,工事原価総額の見積りには不確実性を伴うため,当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
(固定資産の減損)
当社グループは,固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり,資産のグルーピングを行い,収益性が著しく低下した資産グループについて,固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し,当該減少額を減損損失として計上している。
固定資産の回収可能価額については,将来キャッシュ・フロー,割引率,正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているが,市況の変動などにより前提条件に変更があった場合には,当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
⑥ 経営方針・経営戦略,経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2019年5月に策定した「中期経営計画〈2019‐2023〉」の初年度である2019年度の経営数値目標(連結ベース)に対する実績は以下のとおりである。
(単位:億円)
① 経営成績の状況
当連結会計年度の売上高は,前連結会計年度に比べ2.0%増加し1兆6,982億円となった。
利益については,営業利益は前連結会計年度に比べ3.2%増加し1,338億円,経常利益は3.0%増加し1,379億円,親会社株主に帰属する当期純利益は0.7%減少し989億円となった。
セグメントの業績は,以下のとおりである。(セグメントの業績については,セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。また,報告セグメントの利益は,連結財務諸表の作成にあたって計上した引当金の繰入額及び取崩額を含んでいない。なお,セグメント利益は,連結損益計算書の営業利益と調整を行っている。)
(当社建設事業)
当社建設事業の売上高は,前連結会計年度に比べ2.1%増加し1兆4,080億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ8.4%増加し1,451億円となった。
(当社投資開発事業)
当社投資開発事業の売上高は,前連結会計年度に比べ33.7%増加し338億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ17.8%増加し103億円となった。
(その他)
当社が営んでいるエンジニアリング事業,LCV事業及び子会社が営んでいる各種事業の売上高は,前連結会計年度に比べ2.9%増加し5,201億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ11.3%増加し223億円となった。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況については,投資活動により1,157億円資金が減少したが(前連結会計年度は526億円の資金減少),営業活動により1,705億円資金が増加し(前連結会計年度は149億円の資金減少),財務活動により687億円の資金が増加した結果(前連結会計年度は424億円の資金減少),現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は,前連結会計年度末に比べ1,227億円増加し,3,527億円となった。
③ 生産,受注及び販売の状況
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業及び開発事業では,「生産」を定義することが困難であり,また,子会社が営んでいる事業には,「受注」生産形態をとっていない事業もあるため,当該事業においては生産実績及び受注実績を示すことはできない。
また,当社グループの主な事業である建設事業では,請負形態をとっているので,「販売」という概念には適合しないため,販売実績を示すことはできない。
このため,「生産,受注及び販売の状況」については,記載可能な項目を「① 経営成績の状況」においてセグメントの業績に関連付けて記載している。
なお,参考のため当社単体の事業の状況は次のとおりである。
a. 受注(契約)高,売上高,及び次期繰越高
期別 | 種類別 | 前期 繰越高 (百万円) | 当期 受注(契約)高 (百万円) | 計 (百万円) | 当期 売上高 (百万円) | 次期 繰越高 (百万円) | |||
第117期
| 建設事業 | ||||||||
建築工事 | 1,287,422 | 1,342,071 | 2,629,494 | 1,047,964 | 1,581,530 | ||||
土木工事 | 493,041 | 286,140 | 779,181 | 300,157 | 479,023 | ||||
計 | 1,780,464 | 1,628,211 | 3,408,675 | 1,348,122 | 2,060,553 | ||||
開発事業等 | 39,281 | 97,245 | 136,526 | 58,607 | 77,918 | ||||
合計 | 1,819,746 | 1,725,456 | 3,545,202 | 1,406,730 | 2,138,472 | ||||
第118期
| 建設事業 | ||||||||
建築工事 | 1,581,530 | 907,799 | 2,489,330 | 1,073,463 | 1,415,866 | ||||
土木工事 | 479,023 | 286,981 | 766,005 | 283,251 | 482,753 | ||||
計 | 2,060,553 | 1,194,781 | 3,255,335 | 1,356,715 | 1,898,620 | ||||
開発事業等 | 77,918 | 79,622 | 157,541 | 60,889 | 96,651 | ||||
合計 | 2,138,472 | 1,274,404 | 3,412,876 | 1,417,604 | 1,995,272 |
(注) 1 前期以前に受注したもので,契約の更改により請負金額に変更のあるものについては,当期受注(契約)
高にその増減額を含む。したがって当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 開発事業等は,投資開発事業,エンジニアリング事業及びLCV事業等である。
b. 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は,特命と競争に大別される。
期別 | 区分 | 特命(%) | 競争(%) | 計(%) | |
第117期 | (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 建築工事 | 32.5 | 67.5 | 100 |
土木工事 | 20.0 | 80.0 | 100 | ||
第118期 | (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 建築工事 | 50.9 | 49.1 | 100 |
土木工事 | 14.9 | 85.1 | 100 |
(注) 百分比は請負金額比である。
c. 売上高
期別 | 区分 | 官公庁(百万円) | 民間(百万円) | 合計(百万円) | |||
第117期
| 建設事業 | ||||||
建築工事 | 130,016 | 917,947 | 1,047,964 | ||||
土木工事 | 198,177 | 101,980 | 300,157 | ||||
計 | 328,193 | 1,019,928 | 1,348,122 | ||||
開発事業等 | 378 | 58,229 | 58,607 | ||||
合計 | 328,572 | 1,078,157 | 1,406,730 | ||||
第118期
| 建設事業 | ||||||
建築工事 | 130,307 | 943,156 | 1,073,463 | ||||
土木工事 | 182,237 | 101,014 | 283,251 | ||||
計 | 312,544 | 1,044,170 | 1,356,715 | ||||
開発事業等 | 300 | 60,588 | 60,889 | ||||
合計 | 312,845 | 1,104,759 | 1,417,604 |
(注) 完成工事のうち主なものは,次のとおりである。
第117期
浜松町一丁目地区市街地再開発組合 | 浜松町一丁目地区第一種市街地再開発事業に伴う 施設建築物新築工事 |
ファナック(株) | ファナック(株)筑波第1ロボット工場建設工事 |
セイコーエプソン(株) | エプソン広丘事業所 9号館新築工事 |
国土交通省 | 宮古盛岡横断道路 平津戸トンネル工事 |
東洋エンジニアリング(株) | 瀬戸内Kirei太陽光発電所建設工事 |
第118期
森トラスト(株) | 東京ワールドゲート 神谷町トラストタワー 新築工事 |
キオクシア(株) | キオクシア岩手株式会社 510棟(CR棟) 新築建築工事 |
道玄坂一丁目駅前地区市街地 再開発組合 | 道玄坂一丁目駅前地区第一種市街地再開発事業 施設建築物新築工事(渋谷フクラス) |
東日本高速道路(株) | 東京外環自動車道 大和田工事 |
国土交通省 | 八ッ場ダム本体建設工事 |
d. 次期繰越高(2020年3月31日現在)
区分 | 官公庁(百万円) | 民間(百万円) | 合計(百万円) |
建設事業 | |||
建築工事 | 200,871 | 1,214,995 | 1,415,866 |
土木工事 | 311,544 | 171,209 | 482,753 |
計 | 512,416 | 1,386,204 | 1,898,620 |
開発事業等 | 14 | 96,636 | 96,651 |
合計 | 512,431 | 1,482,841 | 1,995,272 |
(注) 次期繰越工事のうち主なものは,次のとおりである。
虎ノ門・麻布台地区市街地 再開発組合 | 虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業に係る A街区・B-2街区施設建築物等新築建築工事 |
東京ガス(株) | (仮称)TGMM芝浦プロジェクトB棟Ⅱ期新築工事 |
勝どき東地区市街地再開発組合 | 勝どき東地区第一種市街地再開発事業施設建築物 A2地区新築工事 |
東日本高速道路(株) | 東京外かく環状道路本線トンネル(南行)大泉南工事 |
国土交通省 | 東京国際空港際内トンネル他築造等工事 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績の分析
2019年度の日本経済は,企業収益や雇用・所得環境の着実な改善を背景に緩やかな回復傾向が続いたものの,2020年1月下旬以降は新型コロナウイルス感染症の世界経済への影響が懸念されるなど,先行きが不透明な状況となった。
建設業界においては,官公庁工事で前年度に大型案件の受注があった反動や,民間工事で消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられ,業界全体の受注高は前年度を下回る水準で推移した。
このような状況のもと,当社グループの売上高は,完成工事高及び開発事業等売上高の増加により,前連結会計年度に比べ2.0%増加し1兆6,982億円となった。
利益については,国内建築及び国内土木工事の工事採算の改善などにより完成工事総利益が増加したことに加え,開発物件の売却による開発事業等総利益の増加などにより,営業利益は前連結会計年度に比べ3.2%増加し1,338億円,経常利益は前連結会計年度に比べ3.0%増加し1,379億円となった。親会社株主に帰属する当期純利益は,固定資産の減損損失などを特別損失に計上したことから,0.7%減少し989億円となった。
セグメントの業績は,以下のとおりである。(セグメントの業績については,セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。また,報告セグメントの利益は,連結財務諸表の作成にあたって計上した引当金の繰入額及び取崩額を含んでいない。なお,セグメント利益は,連結損益計算書の営業利益と調整を行っている。)
(当社建設事業)
当社建設事業の売上高は,前連結会計年度に比べ2.1%増加し1兆4,080億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ8.4%増加し1,451億円となった。
(当社投資開発事業)
当社投資開発事業の売上高は,大型開発物件を売上計上したことなどにより,前連結会計年度に比べ33.7%増加し338億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ17.8%増加し103億円となった。
(その他)
当社が営んでいるエンジニアリング事業,LCV事業及び子会社が営んでいる各種事業の売上高は,前連結会計年度に比べ2.9%増加し5,201億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ11.3%増加し223億円となった。
② 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部は,受取手形・完成工事未収入金等は減少したものの,現金同等物(現金預金及び有価証券に含まれる譲渡性預金)の増加などにより,1兆9,049億円となり,前連結会計年度末に比べ441億円増加した。
当連結会計年度末の負債の部は,支払手形・工事未払金等は減少したものの,コマーシャル・ペーパーを発行したことなどにより1兆1,685億円となり,前連結会計年度末に比べ429億円増加した。
連結有利子負債の残高は4,413億円となり,前連結会計年度末に比べ1,219億円増加した。
当連結会計年度末の純資産の部は,保有株式の時価の下落や売却に伴い,その他有価証券評価差額金が減少したことに加え,自己株式の取得を実施したものの,親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加などにより7,364億円となり,前連結会計年度末に比べ11億円増加した。また,自己資本比率は38.3%となり,前連結会計年度末に比べ0.9%ポイント減少した。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況については,投資活動により1,157億円資金が減少したが,営業活動により1,705億円,財務活動により687億円それぞれ資金が増加した結果,現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は,前連結会計年度末に比べ1,227億円増加し3,527億円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは,税金等調整前当期純利益1,413億円の計上などにより,1,705億円の資金増加となった。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは,賃貸事業をはじめとする事業用固定資産の取得などにより1,157億円の資金減少となった。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは,コマーシャル・ペーパーの発行などにより687億円の資金増加となった。
④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資金需要の主なものは,建設事業における工事代金の立替金や販売費及び一般管理費などの営業活動に伴う支出,不動産開発事業における賃貸事業用資産の取得などの設備投資に伴う支出である。また,当社グループは,2019年5月に策定した「中期経営計画〈2019‐2023〉」において,建設事業での安定的な収益基盤を維持しつつ,非建設事業の着実な収益力向上を図ることを目的とし,2019年度から5年間で生産性向上・研究開発,不動産開発事業,新規事業などに7,500億円の投資を計画している。
これらの資金需要に対し,自己資金に加え,金融機関からの借入金やノンリコース借入金などの有利子負債を活用することにより,必要資金の調達を行う方針である。
なお,財務体質の健全性を維持するため,自己資本比率を40%以上,負債資本倍率(D/Eレシオ)を0.7倍以下とすることを財務上のKPIとして設定している。
当連結会計年度においては,新型コロナウイルス感染症拡大の影響による工事代金の入金遅延等の不測の事態に備えるため,2020年3月にコマーシャル・ペーパーの発行800億円を行ったことなどから,当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は3,527億円となった。
⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は,我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。この連結財務諸表の作成にあたっては,期末日時点の状況をもとに種々の見積りを行っているが,これらの見積りには不確実性が伴うため,実際の結果と異なることがある。
当社グループが連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち,重要なものは以下のとおりである。
なお,新型コロナウイルス感染症の拡大による影響に係る会計上の見積りの前提は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 (追加情報)」に記載している。
(工事進行基準による収益認識)
当社グループは,完成工事高及び完成工事原価の計上にあたり,期末日までの進捗部分について,成果の確実性が認められる工事については工事進行基準を適用している。
工事進行基準の適用にあたっては,工事収益総額,工事原価総額及び期末日における工事進捗度を合理的に見積る必要があるが,建設資材単価や労務単価等が,請負契約締結後に予想を超えて大幅に上昇する場合など,工事原価総額の見積りには不確実性を伴うため,当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
(固定資産の減損)
当社グループは,固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり,資産のグルーピングを行い,収益性が著しく低下した資産グループについて,固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し,当該減少額を減損損失として計上している。
固定資産の回収可能価額については,将来キャッシュ・フロー,割引率,正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているが,市況の変動などにより前提条件に変更があった場合には,当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
⑥ 経営方針・経営戦略,経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2019年5月に策定した「中期経営計画〈2019‐2023〉」の初年度である2019年度の経営数値目標(連結ベース)に対する実績は以下のとおりである。
(単位:億円)
中期経営計画〈2019‐2023〉 | ||||||
2019年度実績 | 2023年度目標 | 財務KPI | 2019年度実績 | 2023年度目標 | ||
総売上高 | 16,982 | 18,800 | RОE | 13.6% | 10%以上 | |
建設事業 | 15,178 | 15,500 | 自己資本比率 | 38.3% | 40%以上 | |
非建設事業 | 1,804 | 3,300 | 負債資本倍率 (D/Eレシオ) | 0.6倍 | 0.7倍以下 | |
売上利益 | 2,256 | 2,350 | ||||
建設事業 | 1,987 | 1,850 | 配当性向 | 29.6% | 30%程度 | |
非建設事業 | 269 | 500 | ||||
経常利益 | 1,379 | 1,400 |