四半期報告書-第95期第3四半期(令和1年10月1日-令和1年12月31日)

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2020/02/13 10:00
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当社グループは前連結会計年度(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)より、従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、前第3四半期連結累計期間の数値をIFRSに組替えて比較分析を行っております。
(1)業績の概況
当第3四半期連結累計期間の世界経済は、米国においては個人消費が底堅く推移しているものの、中国においては米中貿易摩擦を背景に個人消費を中心に景気が減速傾向にあり、同国政府がインフラ投資の促進等景気の下支え策を継続している状況にあります。日本経済は、雇用・所得環境が底堅く推移しているものの、通商摩擦や外需の減速に伴う製造業の景況悪化により、景気の停滞感が強まりつつあります。
(当第3四半期連結累計期間のセグメント別の業績概況)
こうしたなか、当社グループは、各セグメントにおいて、各社がそれぞれの事業環境変化に対応しながら、収益改善に努めてまいりました。
当第3四半期連結累計期間における各セグメント別の業績の概況は以下のとおりです。
(単位:億円)
売上収益事業利益
当第3四半期連結累計期間前第3四半期連結累計期間当第3四半期連結累計期間前第3四半期連結累計期間
製鉄39,88840,432△3,1532,204
エンジニアリング2,3942,5378357
ケミカル&マテリアル(*)1,6931,910173197
システムソリューション1,9891,901202184
合計45,96546,783△2,6942,644
調整額△1,205△1,030△98△10
要約四半期連結損益計算書計上額44,76045,752△2,7932,633

(*)2018年10月、新日鉄住金化学㈱と新日鉄住金マテリアルズ㈱が統合し日鉄ケミカル&マテリアル㈱が発足したことにより、化学セグメントと新素材セグメントを統合し、ケミカル&マテリアルセグメントとした。
前期のケミカル&マテリアルセグメントの数値は、変更後の区分方法により作成したものを記載している。
<製鉄>国内外の鉄鋼需要については、中国の景気悪化懸念による消費財の生産減もあり、鋼板系品種を中心に需要の伸びは力強さを欠いています。国内では輸出や設備投資に関連する分野の活動水準が前年を下回っています。また、国内市況については、足元やや軟化しており、海外市況については、需要低迷に加えて、ロシアやインドからの鋼材流入等によりASEANを中心に悪化しています。
このような事業環境において、当第3四半期の業績は、前年度の豪雨・台風・地震影響からの戻りがあるなか、コスト改善と紐付き分野の価格改善を進めてきたものの、生産出荷量の減少、原料価格の上昇、海外鋼材市況の悪化、本年度に発生した災害の影響(千葉県で発生した落雷による君津製鉄所の停電影響、日鉄日新製鋼㈱呉製鉄所第1製鋼工場の火災影響、台風15号による君津製鉄所等への影響)、在庫評価差、グループ会社損益悪化等により、前年同期に比べて減益となりました。
さらに、鹿島製鉄所、名古屋製鉄所及び広畑製鉄所については、継続的に赤字を計上している状況にあり、足元の経営環境等も踏まえ、減損損失を計上することと致しました。
製鉄セグメントとして、売上収益は3兆9,888億円(前年同期は4兆432億円)、事業利益は△3,153億円(前年同期は2,204億円)となりました。
<エンジニアリング>日鉄エンジニアリング㈱においては、製鉄・環境・エネルギー関連のプラント分野に関する建設・施設運営から、大型鋼構造建築・超高層建築・パイプライン建設等の多様な領域で、総合エンジニアリング技術を活かしたサービスをグローバルに提供しております。当期は、各分野における着実な実行管理によりプロジェクトが順調に進捗し、複数の国内案件が完成したことにより売上が堅調であったことに加え、関連会社の収益改善等もありました。
エンジニアリングセグメントとして、売上収益は2,394億円(前年同期は2,537億円)、事業利益は83億円(前年同期は57億円)となりました。
<ケミカル&マテリアル>日鉄ケミカル&マテリアル㈱においては、堅調に推移してきました黒鉛電極向けニードルコークスの需要が減少するとともに、スチレンモノマーの市況低迷が続きました。機能材料事業分野ではスマートフォン向け回路基板材料の販売は足元伸び悩んでおりますが、今後の需要増が期待される5G(第5世代移動通信システム)向け新規格の量産を開始致しました。また、データセンター投資の回復に伴うハードディスクドライブ需要の増加により、サスペンション向け金属箔の販売が伸長しました。
ケミカル&マテリアルセグメントとして、売上収益は1,693億円(前年同期は1,910億円)、事業利益は173億円(前年同期は197億円)となりました。
<システムソリューション>日鉄ソリューションズ㈱においては、幅広い業種の顧客に対し、システムの企画、構築、運用・保守を一貫して提供するとともに、顧客の事業環境変化に対応した先進的なソリューション・サービスを展開しております。当期は、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進による顧客の旺盛なIT投資等を背景として、堅調な事業環境が継続しました。その中で、IoTを活用したソリューションの販売拡大を積極的に進めるとともに、5G関連ソリューション販売に向けた整備にも取り組みました。
システムソリューションセグメントとして、売上収益は1,989億円(前年同期は1,901億円)、事業利益は202億円(前年同期は184億円)となりました。
(売上・損益)
当第3四半期連結累計期間の業績は、売上収益は4兆4,760億円(前年同期は4兆5,752億円)、事業利益は△2,793億円(前年同期は2,633億円)、加えて、事業再編損の計上、繰延税金資産の一部取崩し等により、親会社の所有者に帰属する四半期利益は△3,573億円(前年同期は2,066億円)となりました。
(2)当第3四半期連結会計期間末の資産、負債、資本及び当第3四半期連結累計期間のキャッシュ・フロー
当第3四半期連結会計期間末の連結総資産については、現金及び現金同等物の増加(970億円)に加え、AMNS Luxembourg Holding S.A.社への短期貸付金を主体とした流動資産のその他の金融資産の増加(1,915億円)や同社株式取得等による持分法で会計処理されている投資の増加(971億円)、IFRS16号適用に伴うオペレーティング・リースのオンバランスの影響等による使用権資産の増加(812億円)等がありました。一方、事業用資産の減損損失等による有形固定資産の減少(4,593億円)、営業債権及びその他の債権の減少(2,127億円)、投資有価証券の売却を主体とした非流動資産のその他の金融資産の減少(1,471億円)等があり、当第3四半期連結会計期間末の連結総資産は前期末(8兆495億円)から2,898億円減少し7兆7,596億円となりました。
負債については、劣後債の発行等により有利子負債が2兆7,334億円と前期末(2兆3,692億円)から3,642億円増加した一方、営業債務及びその他の債務の減少(2,042億円)や、未払法人所得税等の減少(206億円)等があり、前期末(4兆4,421億円)から1,384億円増加し4兆5,805億円となりました。
資本については、親会社の所有者に帰属する四半期損失による減少(3,573億円)、配当金の支払いによる減少(461億円)、その他の資本の構成要素の減少(769億円)等により、前期末(3兆6,073億円)から4,283億円減少し3兆1,790億円となりました。なお、当第3四半期連結会計期間末の親会社の所有者に帰属する持分は2兆8,190億円となり、親会社の所有者に帰属する持分に対する有利子負債の比率(D/Eレシオ)は0.97倍となりました。
当第3四半期連結累計期間における営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期損失3,856億円に、減価償却費及び償却費(3,209億円)・減損損失(3,179億円)・事業再編損(932億円)の加算のほか、営業債権及びその他の債権の減少(1,976億円)等による収入があった一方、営業債務及びその他の債務の減少(1,607億円)、法人所得税の支払い(815億円)等による支出があり、2,983億円の収入(前年同期は2,720億円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入(1,518億円)があった一方、有形固定資産及び無形資産の取得による支出(3,373億円)、AMNS Luxembourg Holding S.A.社株式等の関係会社株式の取得(1,114億円)及び同社向けを主体とした貸付による支出(1,883億円)等もあり、4,514億円の支出(前年同期は3,215億円の支出)となりました。この結果、フリーキャッシュ・フローは1,531億円の支出(前年同期は495億円の支出)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、オペレーティング・リースのオンバランスによる増加等を控除した有利子負債について、劣後債の発行等による実質的な増加(3,250億円)による収入があった一方、配当金の支払(461億円)等により、2,580億円の収入(前年同期は657億円の収入)となりました。以上により、当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物は2,601億円となりました。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
世界経済は、保護貿易的な政策等を背景に不確実性が高まっており、景気減速の傾向が継続するものと見込まれます。日本経済についても、世界経済の動向による影響及び消費増税に伴う消費マインド悪化の懸念等から、先行きの不透明感が強い状況にあります。
国内外の鉄鋼需要については、世界経済の動向に伴って、各分野において下振れリスクが高まっています。市況については、海外は先行きが不透明であり、国内と合わせて、今後の動向を引き続き注視していく必要があります。
2019年度の連結業績につきましては、全社をあげた設備・操業安定化対策やコスト改善の実行及び紐付き分野の価格改善を継続する一方で、生産出荷量の減少、グループ会社の損益悪化、事業用資産の減損損失の計上等により、第2四半期決算発表時(2019 年11 月1日)の予想に対して大幅に減少し、事業利益は△3,100億円となる見通しです。これに加えて、事業再編損の計上、繰延税金資産の一部取崩し等により、親会社の所有者に帰属する当期利益は△4,400億円となる見通しです。
(注)上記の見通しには、2020年2月7日の2019年度第3四半期決算発表時点の将来見通し・計画に基づく予測が含まれております。実際の業績は、今後様々な要因によって大きく異なる結果となる可能性があります。
(利益配分に関する基本方針及び当期末の剰余金配当)
当社は、業績に応じた利益の配分を基本として、企業価値向上に向けた投資等に必要な資金所要、先行きの業績見通し、連結及び単独の財務体質等を勘案しつつ、第2四半期末及び期末の剰余金の配当を実施する方針と致しております。「業績に応じた利益の配分」の指標としては、連結配当性向年間30%程度を目安と致します。なお、第2四半期末の剰余金の配当は、中間期業績及び年度業績見通し等を踏まえて判断することとしております。
当期末の剰余金の配当については、第2四半期決算発表時(2019年11月1日)では未定としておりましたが、上記方針に従い、当期の業績見通し等を踏まえ、誠に遺憾ではありますが、実施を見送ることとさせていただく予定です(年間配当金としては1株につき10円)。
今後も中長期的には、国内市場は高齢化・人口減少やユーザーの海外現地生産拡大等に伴う鉄鋼需要の減少が見込まれ、海外市場においても競合激化が想定されます。一方、当社グループは、主力製鉄所が建設から50年程度経過し、現状の生産能力を維持するために大規模な老朽更新投資が必要な時期を迎える状況にあります。
こうした厳しい環境を見据え、当社は本年2月7日、「生産設備構造対策と経営ソフト刷新施策の実施について」を決定、公表致しました。
今回決定した生産設備構造を前提として、製鉄所統合によるシナジー効果、合理化による労働生産性向上、変動費改善等の効果を積み上げていくこととします。
加えて、今回の生産設備構造をステップとして、一層競争力ある最適生産体制の構築に向けた検討を継続するとともに、設備投資の選択と集中を実施し、さらには、今後の国内外の需給バランス、そのもとで当社が獲得しうる収益の動向等を見極めつつ、環境変化に応じ、さらなる対策を講じることとします。
合わせて、超ハイテン鋼板の供給体制強化、電磁鋼板能力・品質向上対策、インドEssar Steel India Limited社の買収等の成長分野・地域への戦略的投資を実行するとともに、将来的に収益回復の見込みがない不採算海外事業の再編・撤退を加速化するなど、収益力の向上に向けた諸対策も確実に推進していきます。
足元、「つくる力」の再構築及び紐付き分野の価格改善に継続して取り組むとともに、今般決定した諸施策の実行を通じ、一刻も早い収益基盤の立て直し・財務体質の改善を実現し、株主の皆様に対する利益還元を図ってまいります。
(財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針に関する事項)
当社は、財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を次のとおり定めております。
<当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容>当社グループは、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて社会の発展に貢献することを企業理念に掲げ、この理念に基づき経営戦略を立案・遂行し、競争力・収益力を向上させることにより、企業価値ひいては株主共同の利益の向上を目指しております。
当社は、第三者から当社株式の大量買付け行為等の提案(以下、「買収提案」といいます。)がなされた場合、これを受け入れるか否かの最終的な判断は、その時点における株主の皆様に委ねられるべきものと考えております。他方で、買収提案の中には、当社の企業価値や株主共同の利益に対し明白な侵害をもたらすおそれのあるもの、株主の皆様に当社株式の売却を事実上強要することとなるおそれのあるもの等が含まれる可能性があると考えております。
従って、当社は、第三者から買収提案がなされた場合に株主の皆様にこのような不利益が生じることがないよう、当社株式の取引状況や株主の異動状況等を注視するとともに、実際に買収提案がなされた場合には、株主の皆様が必要な情報と相当な検討期間をもって適切な判断(インフォームド・ジャッジメント)を行うことができるように努めます。仮に、買収提案が当社の企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するおそれがあると合理的に判断される場合には、その時点における関係法令の許容する範囲内において、適切な措置を速やかに講じることにより、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保を図って参ります。
(4)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における当社及び連結子会社全体の研究開発費は573億円です。