有価証券報告書-第158期(2022/01/01-2022/12/31)

【提出】
2023/03/30 16:15
【資料】
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【項目】
145項目
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営成績
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度増減額増減率 (%)
受注高771,483815,21843,7355.7
売上収益603,213680,87077,65612.9
営業利益61,37270,5729,19915.0
売上収益営業利益率 (%)10.210.4--
親会社の所有者に帰属する
当期利益
43,61650,4886,87115.8
基本的1株当たり当期利益 (円)463.44548.6185.1718.4

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症対策が徐々に緩和され、経済活動の正常化によって持ち直しの動きがみられました。日本経済においても、新型コロナウイルス感染症の抑制対策と経済活動の正常化が進む中で、設備投資は持ち直しの動きがみられました。一方、国内外の経済における先行きについては、原材料価格の高騰や半導体不足、ウクライナ情勢に伴う資源価格への影響、為替変動など依然として不透明な状況が継続しました。
当社グループの主要市場である建築設備市場や石油・ガス市場においては、新型コロナウイルス感染症の対策緩和による需要回復が進む一方で、インフレ懸念や長期化するウクライナ情勢などの影響によって一部投資案件に遅れがみられました。半導体市場においては、足元ではメモリ価格下落や米国による対中国輸出規制強化を受け、一部では設備投資の延期などがみられるものの、全体としては、半導体の需要および顧客の設備投資は高水準で推移しました。また、日本の国土強靭化関連の公共投資については引き続き堅調に推移しました。
このような事業環境下、当連結会計年度の受注高は、環境プラント事業で前期を下回りましたが風水力事業および精密・電子事業が堅調に推移したことで、全社としては前期を上回りました。売上収益については3事業共に前期を上回りました。風水力事業では、販売価格の改善やサービス&サポート需要の取り込みを着実に進めてきたことで、国内・海外ともに順調に売上収益を伸ばしました。環境プラント事業では、EPC工事進行売上が順調に進捗したことで前期を上回りました。精密・電子事業においては、部材不足や出荷遅れの状況は依然として継続していますが、人員体制の強化や増産体制を整備してきたほか、顧客側での高水準の工場稼働にも対応してきたことで、製品・サービス&サポート共に売上収益を伸ばしました。
営業利益は、原材料価格高騰の影響や人件費を中心とした固定費増加によるマイナス要因はありましたが、風水力事業や精密・電子事業における増収や収益性が改善したことに加え、円安がプラスに寄与したことで、全体としては前期を上回りました。
これらの結果、当連結会計年度における受注高は8,152億18百万円(前期比5.7%増)、売上収益は6,808億70百万円(前期比12.9%増)、営業利益は705億72百万円(前期比15.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は504億88百万円(前期比15.8%増)となり、いずれの項目においても過去最高額を更新しました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(単位:百万円)
セグメント受注高売上収益セグメント損益
前連結
会計年度
当連結
会計年度
増減率
(%)
前連結
会計年度
当連結
会計年度
増減率
(%)
前連結
会計年度
当連結
会計年度
増減率
(%)
風水力354,810406,48814.6336,980383,39313.824,79332,03829.2
環境プラント129,496105,810△18.371,82473,7382.75,6323,669△34.9
精密・電子285,401301,5515.7192,791222,25915.328,03536,18329.1
報告セグメント計769,708813,8495.7601,596679,39112.958,46171,89023.0
その他1,7751,368△22.91,6171,478△8.61,168△1,216-
調整額------1,743△101-
合計771,483815,2185.7603,213680,87012.961,37270,57215.0

<風水力事業>受注高は前期から516億77百万円増の4,064億88百万円、売上収益は464億13百万円増の3,833億93百万円、営業利益は72億44百万円増の320億38百万円で、受注高、営業利益は過去最高額を更新しました。
ポンプ事業は、前期比増収増益で、主に建築設備市場向けの標準ポンプ事業が好調に推移しました。海外、国内ともに価格改定や、円安のプラス効果もあり受注高、売上収益、営業利益いずれも前期を上回りました。トップラインの成長においては、海外を中心としたオーガニック成長に加え、21年と22年に実施したM&Aによるインオーガニック成長分も寄与しました。一方でカスタムポンプ事業は、低調な中国市場の影響を受け、石油・ガス市場向けの売上が伸び悩みました。
コンプレッサ・タービン事業は、新規製品市場ではインフレやウクライナ情勢の長期化など先行き不透明感を受け、顧客の投資判断には慎重な姿勢が継続して見られる状況でした。一方、定期修繕工事などのサービス&サポートの需要は増加し、リードタイムが短く比較的採算性の高い売上案件も多かったことから、同事業全体としては前期比増収増益となりました。
冷熱事業は、中国市場の需要が堅調で増収でしたが、営業利益はほぼ横這いで推移しました。
<環境プラント事業>受注高は前期から236億85百万円減の1,058億10百万円、売上収益は19億13百万円増の737億38百万円、営業利益は19億62百万円減の36億69百万円となりました。
受注案件数は前期比で増加しましたが案件規模の違いもあり受注高は減少しました。売上収益はEPC工事案件の工事進捗が進み増収となりました。営業利益の減少は、国内のEPC案件で一過性の追加コストが発生したことや、ごみ処理施設での発電をベースに行っている売電事業において市場調達コストが増加したことによるものです。海外においても中国子会社での機器の製造委託案件での追加コストの発生や、海外案件の売上期ずれにより収益性が低下しました。
※EPC(Engineering, Procurement, Construction)…プラントの設計・調達・建設
<精密・電子事業>受注高は前期から161億50百万円増の3,015億51百万円、売上収益は294億68百万円増の2,222億59百万円、営業利益は81億47百万円増の361億83百万円でいずれも過去最高額を更新しました。
年度末に向けてメモリ価格低下の影響などにより、一部の顧客で設備投資計画を見直す動きや工場稼働を調整する動きなどがみられましたが、年間を通じて顧客の設備投資は高水準で推移しました。依然として部材不足に起因する出荷遅れの影響などはあるものの、コンポーネント、CMPともに受注高、売上収益は堅調で前期を上回りました。営業利益については、売上増に加え、ドライ真空ポンプの自動化工場稼働による生産性の向上や、サービス&サポートの需要増などが寄与し前期を上回りました。
《セグメント別の事業環境と事業概況》
セグメント2022年12月期の事業環境2022年12月期の事業概況と
受注高の増減率 (注)1
風水力ポンプ<海外>・石油・ガス市場は、前期と比較すると回復基調にあり、サウジアラビア、カタールなどで大型案件が始動している。一方、中国では計画されている超大型石油化学コンプレックスや旧式小型製油所の統合・効率化案件がCO2排出量調整のために遅延している。
・水インフラ市場は、中国や東南アジアの案件に動きがあり回復傾向にある。北米では価格競争が厳しいものの老朽化設備更新案件が再開している。
・建築設備市場は、原材料価格高騰などによる投資抑制傾向にある。また、中国はゼロコロナ政策解除後も、需要回復のペースは鈍い。
<国内>・建築設備市場は、建築着工棟数は回復傾向にある。
・社会インフラの更新・補修に対する投資は、堅調に推移している
<海外>・石油・ガス関連の受注は前期を上回る。
・水インフラの受注は前期を下回る
・建築設備向けの受注は前期を上回る。
<国内>・建築設備向けの受注は前期を上回る。
・公共向けの受注は総合評価案件やアフターサービスの受注拡大などの施策効果はあるものの、大型案件の受注があった前期を下回る。
コンプレッサ・
タービン
・新規製品市場は、中東では石油化学市場など案件に動きがあり、北米ではウクライナ情勢やインフレなどの影響もあるが一部案件に動きが出てきている。中国では経済の先行き不透明感の高まりにより低調に推移している。
・サービス市場は、全般的にメンテナンス・修理・部品などの需要が堅調に推移している。
・LNG市場(クライオポンプ)は、一部案件に動きが出てきており、回復傾向にある。
・製品の受注は、一部案件の発注時期の見直しにより前期を下回る。
・サービス分野の受注は移動制限の緩和により前期を上回る。
冷熱・国内では、産業系市場に続き、建築市場でも設備投資が回復している。
・中国は脱炭素化規制を見越した設備投資が活発であるが、原材料価格高騰が継続しており、電力不足や物流の混乱などが懸念される。
・国内の受注は前期を上回る。
・中国の受注は製品の受注が堅調なため前期を上回る。
環境プラント
(注)2
・公共向け廃棄物処理施設の新規建設需要は例年通りに推移している。
・既存施設のO&Mの発注量は例年どおり推移している。
・民間向けの木質バイオマス発電施設や廃プラスチックなどの産業廃棄物処理施設は、一定の建設需要が継続している。
・大型案件は前期を上回る7件を受注したが、今期の受注高は1件当たりの案件規模が大きかった前期と比較すると下回る。
<大型案件の受注状況>・公共向け廃棄物処理施設のEPC案件(1件)
・公共向け廃棄物処理施設のDBO案件(1件)
・公共向け長期包括運営契約(3件)
・公共向け基幹的設備改良工事(2件)
精密・電子・半導体不足を背景として、半導体メーカの投資は活発化しており、半導体製造装置市場は、前期の規模を上回るが、足下ではメモリ価格下落や米国による対中国輸出規制強化を受け、一部で設備投資の延期などがみられる。・一部の半導体メーカで投資減速の動きがあったものの、市場全体としては好調を継続し、また中国顧客の投資拡大の影響を受け、受注は前期を上回った。

(注)1.矢印は受注高の前期比の増減率を示しています。

+5%以上の場合は、△5%以下の場合は、±5%の範囲内の場合はで表しています。

2.O&M(Operation & Maintenance)………プラントの運転管理・メンテナンス
DBO(Design, Build, Operate)………プラントの設計・調達・建設に加え、建設後の運転管理・メ
ンテナンスを一定期間請け負う。

生産、受注及び販売の状況は以下のとおりです。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
セグメントの名称生産高(百万円)前期比(%)
報告セグメント
風水力384,78814.1
環境プラント21,4553.4
精密・電子183,48922.0
報告セグメント計589,73316.0
その他39129.3
合計590,12416.0

② 受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)
報告セグメント
風水力406,48814.6269,78820.2
環境プラント105,810△18.3317,49111.3
精密・電子301,5515.7230,81162.8
報告セグメント計813,8495.7818,09125.6
その他1,368△22.967△61.8
合計815,2185.7818,15825.6

③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)
報告セグメント
風水力383,39313.8
環境プラント73,7382.7
精密・電子222,25915.3
報告セグメント計679,39112.9
その他1,478△8.6
合計680,87012.9

(注)上記①から③の金額は、いずれも販売価格によっており、セグメント間取引消去後の金額です。


(2)財政状態
① 資産
当連結会計年度末における資産総額は、前年度末に比べて棚卸資産が599億47百万円、営業債権及びその他の債権が215億43百万円、のれん及び無形資産が201億28百万円増加したことなどにより1,083億13百万円増加し、8,280億49百万円となりました。
セグメントごとでは、風水力事業は4,295億17百万円(前年度末比685億31百万円増)、環境プラント事業は646億56百万円(前年度末比95億93百万円増)、精密・電子事業は2,289億75百万円(前年度末比478億35百万円増)、その他は435億7百万円(前年度末比87億74百万円増)となりました。
② 負債
当連結会計年度末における負債総額は、前年度末に比べて営業債務及びその他の債務が328億33百万円、契約負債が133億96百万円、その他の流動負債が71億68百万円増加したことなどにより、602億43百万円増加し、4,583億23百万円となりました。
③ 資本
当連結会計年度末における資本は、配当金を182億16百万円支払った一方、親会社の所有者に帰属する当期利益504億88百万円を計上し、在外営業活動体の換算差額が141億34百万円増加したことなどにより、前年度末に比べて480億69百万円増加し、3,697億25百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する持分は3,599億66百万円で、親会社所有者帰属持分比率は43.5%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、営業利益は堅調であったものの、棚卸資産の増加による支出544億11百万円があった結果、370億70百万円の収入超過(前期比357億88百万円の収入減少)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出243億47百万円や連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出146億75百万円などにより、383億24百万円の支出超過(前期比69億62百万円の支出増加)となりました。
営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、12億54百万円の支出超過(前期は414億97百万円の収入超過)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金及び長期借入金が純額で80億29百万円減少したことや、配当金の支払い182億16百万円などにより、237億49百万円の支出超過(前期比57億39百万円の支出減少)となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前年度末から203億51百万円減少し、1,161億37百万円となりました。
② 財務戦略の基本方針
当社グループは、資本効率と財務健全性のバランスに配慮しつつ、適宜適切なタイミングで資本の調達と配分を行うことを財務戦略の基本と考えています。現在の事業推進に必要十分と考える「シングルAフラット(※)」の信用格付け維持を基本とし、D/Eレシオを財務規律としつつ負債の活用を図ります。また、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善と非効率資産の選別/処分を通じ投下資本の効率的活用を促進します。その上で、株主還元として連結配当性向35%以上を維持しつつ、企業価値向上に繋がる投資対象への資本投下の機を逃さずに行い、「長期的な企業価値の最大化」を目指します。
(※)格付投資情報センター(R&I)による格付
③ 資金調達について
当社グループは、事業を行う上で必要となる運転資金や成長のための投資資金として、営業キャッシュ・フローを主とした内部資金だけでなく金融機関からの借入や社債の発行などの外部資金を有効に活用していきます。D/Eレシオは0.3~0.5を基準に負債の活用を進め、資本コストの低減・資本効率の向上を図ります。
また、現金・預金等の水準(手元流動性)については、連結売上収益の2か月分を目安に適正水準の範囲でコントロールする方針です。これに加えて、金融上のリスクに対応するためにコミットメントライン契約等を締結することで、代替流動性を確保しています。なお、グループ内の資金効率を高めるため、資金を当社に集中する制度を運用しています。
代替流動性
当座貸越契約 50億円
コミットメントライン契約 800億円
いずれの契約においても、当連結会計年度末の借入実行残高はありません。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼします。
詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。