有価証券報告書-第156期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営成績
(単位:百万円)
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響による景気減速から先行き不透明な状況が続きました。日本経済においても設備投資は減少しており厳しい状況が続きましたが、一方で公共投資は大規模自然災害からの復旧・復興対策などに向けて堅調に推移しました。
当社グループの主要市場である石油・ガス市場においては、新型コロナウイルス感染症の影響と原油価格下落の影響が継続し案件の遅延や延期の動きがありました。また、建築設備市場においても一部の国や地域によっては引き続き工事中断や遅延の動きがみられました。一方、半導体市場においては米中貿易摩擦の影響はあるものの半導体需要は底堅く、回復基調となりました。
このような環境下、当連結会計年度の受注高は、半導体需要の拡大により精密・電子事業で前期を大きく上回りました。新型コロナウイルス感染症からの影響を受けた風水力事業では、春先以降、一部の地域で回復はみられるものの、新規投資案件の延期や渡航制限などが依然として継続しており前期を下回りました。また、環境プラント事業においては、投資案件の期ずれによる影響や公共向け大型投資案件を複数受注した前期と比べると受注水準は低く、全体でも前期を下回りました。
売上高は、精密・電子事業で伸長したものの風水力事業の建築設備市場向け売上が減少したことなどにより全体でも前期並みとなりました。
営業利益は、精密・電子事業による増収に加え、風水力事業において製品の収益性改善や固定費抑制などにより全体では前期を上回る結果となりました。
当連結会計年度における受注高は5,119億21百万円(前期比7.3%減)、売上高は5,237億27百万円(前期比0.2%増)、営業利益は378億79百万円(前期比7.3%増)、経常利益は368億59百万円(前期比3.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は244億73百万円(前期比4.8%増)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2018年3月30日)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号 2018年3月30日)を当連結会計年度の期首から適用しています。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」をご参照ください。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(単位:百万円)
前述のとおり、当連結会計年度の期首から収益認識会計基準等を適用し、収益認識に関する会計処理方法を変更したため、事業セグメントの利益又は損失の測定方法を同様に変更しています。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」をご参照ください。
<風水力事業>受注高は前期から306億円減の3,009億円、売上高は95億円減の3,135億円、営業利益は25億円増の197億円となりました。ポンプ事業では、中国での石油化学プラント向けや国内公共事業向けの需要は堅調に推移しましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた建築設備市場では需要回復の遅れなどにより減収減益となりました。コンプレッサ・タービン事業では、新型コロナウイルス感染症拡大に加え、原油価格の低迷により顧客の設備投資の延期や移動制限などによって受注高・売上高は減少しましたが、製品の収益性改善やS&S内のミックスにより増益となりました。冷熱事業では、中国市場は需要が回復基調にあるものの厳しい価格競争が続いており受注高は減少しました。売上高は国内市場で減少しましたが、主に国内冷却塔事業における収益性改善や経費抑制によって増益となりました。
<環境プラント事業>受注高は前期から294億円減の620億円、売上高は19億円減の675億円、営業利益は3億円減の71億円となりました。当初見込んでいたごみ焼却施設の大型案件が期ずれしたことや前期の受注水準が比較的高かったこともあり、受注高は減少しました。EPC※の工事進行基準案件が工事進捗の端境期となり減収減益となりましたが、長期包括契約において原価低減施策などが順調に進み、収益性は改善しました。
※EPC(Engineering, Procurement, Construction)…プラントの設計・調達・建設
<精密・電子事業>受注高は前期から197億円増の1,474億円、売上高は128億円増の1,411億円、営業利益は10億円増の114億円となりました。半導体市場における設備投資は一部で計画に遅れもみられましたが、引き続きファウンドリ、ロジックが堅調でメモリメーカにも回復の動きがみられ受注高は前期を上回りました。売上高は、需要拡大に伴うCMP事業の売上増加や、顧客の工場稼働が高い水準で推移したことにより部品やオーバーホールなどの売上が増加しました。営業利益は、コンポーネント事業にてドライ真空ポンプの自動化工場関連コストが発生したことにより固定費は増加しましたが、増収が寄与して増益となりました。
《セグメント別の事業環境と事業概況》
生産、受注及び販売の状況は以下のとおりです。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
② 受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
(2)財政状態
① 資産
当連結会計年度末における資産総額は、前年度末に比べて、仕掛品が224億33百万円減少した一方、現金及び預金が279億81百万円、建設仮勘定が115億38百万円増加したことなどにより、263億38百万円増加し、6,215億78百万円となりました。建設仮勘定の増加は、主に精密・電子事業における国内の工場増設など、成長投資の実行によるものです。
セグメントごとでは、風水力事業は3,158億58百万円(28億26百万円増)、環境プラント事業は533億19百万円(9億1百万円増)、精密・電子事業は1,505億74百万円(86億65百万円増)、その他は241億36百万円(31億20百万円減)となりました。
② 負債
当連結会計年度末における負債総額は、前年度末に比べて短期借入金が229億9百万円減少した一方、前受金が228億95百万円、社債が100億円増加したことなどにより、136億96百万円増加し、3,171億8百万円となりました。
③ 純資産
当連結会計年度末における純資産は、利益剰余金が148億10百万円増加したことと、為替換算調整勘定が33億89百万円減少したことなどにより、前年度末に比べて126億42百万円増加の3,044億70百万円となりました。なお、利益剰余金が148億10百万円増加した内訳は、親会社株主に帰属する当期純利益244億73百万円の計上による増加、連結範囲の変動に伴う5億25百万円の増加、「収益認識に関する会計基準」等の適用による44億73百万円の期首残高減少、配当金の支払い57億13百万円による減少です。
自己資本は2,962億32百万円で、自己資本比率は47.7%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは堅調な営業利益に支えられ、642億34百万円の収入超過(前期比375億13百万円の収入増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出311億72百万円などにより、290億71百万円の支出超過(前期比49億93百万円の支出増加)となりました。
営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、351億63百万円の収入超過(前期比325億20百万円の収入増加)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による収入100億円があったものの短期借入金及び長期借入金が純額で118億56百万円減少したことや、配当金の支払い57億13百万円などにより、96億28百万円の支出超過(前期比105億60百万円の支出減少)となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前年度末から271億92百万円増加し、1,205億44百万円となりました。
② 財務戦略の基本方針
当社グループは、企業価値向上のために適宜適切なタイミングで経営資源を配分することを財務戦略の基本方針としており、強固な財務体質と高い資本効率をともに兼ね備えることが重要だと考えています。
自己資本は信用格付として維持すべき水準と考える『シングルAフラット(※)』となり、現在の事業推進に必要十分な状態となっています。従って、現在の当社の財務の状態においては、売上債権、棚卸資産を圧縮し、創出された資金を厳選した成長投資に振り向け固定資産を増強する一方、資本効率を高めるために自己資本を一定水準に抑制していきます。
(※)格付投資情報センター(R&I)による格付
③ 資金調達について
当社グループは、事業を行う上で必要となる運転資金や成長のための投資資金を、営業キャッシュ・フローを主とした内部資金だけでなく金融機関からの借入や社債の発行などの外部資金を有効に活用していきます。D/Eレシオは0.3~0.5を基準に負債の活用を進め、資本コストの低減・資本効率の向上を図ります。
また、現金・預金等の水準(手元流動性)については、連結売上高の2か月分を目安に適正水準の範囲でコントロールする方針です。これに加えて、金融上のリスクに対応するためにコミットメントライン契約等を締結することで、代替流動性を確保しています。なお、グループ内の資金効率を高めるため、資金を当社に集中する制度を運用しています。
代替流動性
当座貸越契約 50億円
コミットメントライン契約 800億円
いずれの契約においても、当連結会計年度末の借入実行残高はありません。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼします。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。
① 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しています。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。
② 退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しています。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しています。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。
③ 完成工事補償引当金
完成工事高に対して将来予想される瑕疵担保費用を一定の比率で算定し、完成工事補償引当金として計上しています。
引当金の見積りにおいて想定していなかった完成工事の不具合による補償義務の発生や、引当の額を超えて補償費用が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。一方、実際の補償費用が引当金の額を下回った場合は引当金戻入益を計上することになります。
④ 製品保証引当金
製品売上高に対して将来予想される瑕疵担保費用を一定の比率で算定し、製品保証引当金として計上しています。
引当金の見積りにおいて想定していなかった製品の不具合による保証義務の発生や、引当の額を超えて保証費用が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。一方、実際の保証費用が引当金の額を下回った場合は引当金戻入益を計上することになります。
⑤ 工事損失引当金
受注時における戦略的低採算案件や工事契約における未引渡工事のうち損失の発生する可能性が高く、工事損失額を期末において合理的に見積ることが出来る工事等については、当該損失見込額を工事損失引当金として計上しています。
技術的難易度の高い長期請負工事や海外でのカントリー・リスク等のある工事等において、工事の進行に伴い見積りを超えた原価が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
⑥ 完成工事高及び完成工事原価の計上
成果の確実性が認められる工事については、工事進行基準(工事の進捗率の見積りは原価比例法)により完成工事高を計上しています。想定していなかった原価の発生等により工事進捗度が変動した場合は、完成工事高及び完成工事原価が影響を受け、当社グループの業績を変動させる可能性があります。
⑦ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、各社ごとに資産のグルーピングをセグメント別に行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しています。
固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症による影響については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営成績
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 (%) | |
受注高 | 552,225 | 511,921 | △40,304 | △7.3 |
売上高 | 522,424 | 523,727 | 1,302 | 0.2 |
営業利益 | 35,298 | 37,879 | 2,580 | 7.3 |
売上高営業利益率 (%) | 6.8 | 7.2 | - | - |
経常利益 | 35,571 | 36,859 | 1,287 | 3.6 |
親会社株主に帰属する 当期純利益 | 23,349 | 24,473 | 1,124 | 4.8 |
1株当たり当期純利益 (円) | 241.79 | 256.85 | 15.05 | 6.2 |
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響による景気減速から先行き不透明な状況が続きました。日本経済においても設備投資は減少しており厳しい状況が続きましたが、一方で公共投資は大規模自然災害からの復旧・復興対策などに向けて堅調に推移しました。
当社グループの主要市場である石油・ガス市場においては、新型コロナウイルス感染症の影響と原油価格下落の影響が継続し案件の遅延や延期の動きがありました。また、建築設備市場においても一部の国や地域によっては引き続き工事中断や遅延の動きがみられました。一方、半導体市場においては米中貿易摩擦の影響はあるものの半導体需要は底堅く、回復基調となりました。
このような環境下、当連結会計年度の受注高は、半導体需要の拡大により精密・電子事業で前期を大きく上回りました。新型コロナウイルス感染症からの影響を受けた風水力事業では、春先以降、一部の地域で回復はみられるものの、新規投資案件の延期や渡航制限などが依然として継続しており前期を下回りました。また、環境プラント事業においては、投資案件の期ずれによる影響や公共向け大型投資案件を複数受注した前期と比べると受注水準は低く、全体でも前期を下回りました。
売上高は、精密・電子事業で伸長したものの風水力事業の建築設備市場向け売上が減少したことなどにより全体でも前期並みとなりました。
営業利益は、精密・電子事業による増収に加え、風水力事業において製品の収益性改善や固定費抑制などにより全体では前期を上回る結果となりました。
当連結会計年度における受注高は5,119億21百万円(前期比7.3%減)、売上高は5,237億27百万円(前期比0.2%増)、営業利益は378億79百万円(前期比7.3%増)、経常利益は368億59百万円(前期比3.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は244億73百万円(前期比4.8%増)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2018年3月30日)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号 2018年3月30日)を当連結会計年度の期首から適用しています。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」をご参照ください。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(単位:百万円)
セグメント | 受注高 | 売上高 | セグメント損益 | ||||||
前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減率 (%) | 前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減率 (%) | 前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減率 (%) | |
風水力 | 331,607 | 300,987 | △9.2 | 323,139 | 313,581 | △3.0 | 17,274 | 19,789 | 14.6 |
環境プラント | 91,479 | 62,035 | △32.2 | 69,505 | 67,536 | △2.8 | 7,486 | 7,146 | △4.5 |
精密・電子 | 127,611 | 147,411 | 15.5 | 128,255 | 141,119 | 10.0 | 10,371 | 11,448 | 10.4 |
報告セグメント計 | 550,698 | 510,433 | △7.3 | 520,900 | 522,238 | 0.3 | 35,131 | 38,385 | 9.3 |
その他 | 1,527 | 1,487 | △2.6 | 1,524 | 1,489 | △2.4 | 145 | △459 | - |
調整額 | 21 | △46 | |||||||
合計 | 552,225 | 511,921 | △7.3 | 522,424 | 523,727 | 0.2 | 35,298 | 37,879 | 7.3 |
前述のとおり、当連結会計年度の期首から収益認識会計基準等を適用し、収益認識に関する会計処理方法を変更したため、事業セグメントの利益又は損失の測定方法を同様に変更しています。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」をご参照ください。
<風水力事業>受注高は前期から306億円減の3,009億円、売上高は95億円減の3,135億円、営業利益は25億円増の197億円となりました。ポンプ事業では、中国での石油化学プラント向けや国内公共事業向けの需要は堅調に推移しましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた建築設備市場では需要回復の遅れなどにより減収減益となりました。コンプレッサ・タービン事業では、新型コロナウイルス感染症拡大に加え、原油価格の低迷により顧客の設備投資の延期や移動制限などによって受注高・売上高は減少しましたが、製品の収益性改善やS&S内のミックスにより増益となりました。冷熱事業では、中国市場は需要が回復基調にあるものの厳しい価格競争が続いており受注高は減少しました。売上高は国内市場で減少しましたが、主に国内冷却塔事業における収益性改善や経費抑制によって増益となりました。
<環境プラント事業>受注高は前期から294億円減の620億円、売上高は19億円減の675億円、営業利益は3億円減の71億円となりました。当初見込んでいたごみ焼却施設の大型案件が期ずれしたことや前期の受注水準が比較的高かったこともあり、受注高は減少しました。EPC※の工事進行基準案件が工事進捗の端境期となり減収減益となりましたが、長期包括契約において原価低減施策などが順調に進み、収益性は改善しました。
※EPC(Engineering, Procurement, Construction)…プラントの設計・調達・建設
<精密・電子事業>受注高は前期から197億円増の1,474億円、売上高は128億円増の1,411億円、営業利益は10億円増の114億円となりました。半導体市場における設備投資は一部で計画に遅れもみられましたが、引き続きファウンドリ、ロジックが堅調でメモリメーカにも回復の動きがみられ受注高は前期を上回りました。売上高は、需要拡大に伴うCMP事業の売上増加や、顧客の工場稼働が高い水準で推移したことにより部品やオーバーホールなどの売上が増加しました。営業利益は、コンポーネント事業にてドライ真空ポンプの自動化工場関連コストが発生したことにより固定費は増加しましたが、増収が寄与して増益となりました。
《セグメント別の事業環境と事業概況》
セグメント | 2020年12月期の事業環境 | 2020年12月期の事業概況と 受注高の増減率 (注)1 | ||
風水力 | ポンプ | <海外>・石油・ガス市場は、中国は堅調だが、新型コロナウイルス感染症と原油価格下落の影響により、他の地域では軒並み案件が遅延・延期となっている。顧客からの引合いも低調で、少数の案件に多数のベンダーが入札し価格競争が激化している。 ・水インフラ市場は、中国、東南アジアで案件に動きがあり回復傾向にある。一方、北米では老朽化設備更新の需要が増加傾向にあるものの、新型コロナウイルス感染症の影響が続いており、発注者となる公共機関の機能低下に伴い各案件の始動が遅れている。 ・電力市場はCO2排出規制の影響を受けて石炭火力が低調だが、ガス火力の需要は堅調。 <国内>・建築設備市場は、建築着工棟数の減少等により縮小傾向にある。 ・社会インフラの更新・補修に対する投資は、前期を上回る。 | <海外>・石油・ガス関連の受注は前期を下回る。 ・水インフラの受注は前期を下回る。 ・電力関連の受注は前期を下回る。 <国内>・建築設備向けの受注は新型コロナウイルス感染症の影響による工事中断や着工遅延などにより、前期を下回る。 ・公共向けの受注は総合評価案件やアフターサービスの受注拡大等の施策の効果により前期を上回る。 | ![]() |
コンプ レッサ・ タービン | ・新規製品市場全体としては、中国で石油化学が依然堅調に推移している。北米のシェールガス関連では、一部のLNGプロジェクトに動きがあったものの、全体としては遅延、停滞している。インド、ロシアでも引き続き投資が遅延傾向にある。 ・サービス市場は、新型コロナウイルス感染拡大防止のための移動制限により、指導員派遣で影響が続いており、全体として低調に推移している。 ・LNG市場(クライオポンプ)は、一部案件に動きはあるものの、原油価格下落の影響が続いており、投資判断が遅延傾向にある。 | ・製品の受注は案件延期、投資抑制の影響もあり、前期を下回る。 ・サービス分野の受注は、前期を下回る。 | ![]() | |
冷熱 | ・国内では、生活様式の変化の影響を受けた宿泊施設や大型ショッピングセンター等の設備更新計画や既設製品の定期メンテナンス案件の延期・凍結が見られる。 ・中国では、火力発電等の一部業界で、市場回復が遅れている。 | ・国内の受注は前期を下回る。 ・中国の受注は前期を下回る。 | ![]() |
セグメント | 2020年12月期の事業環境 | 2020年12月期の事業概況と 受注高の増減率 (注)1 | ||
環境プラント (注)2 | ・公共向け廃棄物処理施設の新規建設需要は、発注時期の遅れ等により例年を下回る。 ・既存施設のO&Mの発注量は例年どおり推移している。 ・民間企業向けの木質バイオマス発電施設や廃プラスチック等を処理する産業廃棄物処理施設の建設需要は継続している。 | ・公共向け廃棄物処理施設のDBO案件1件、基幹改良工事1件、民間企業向け産業廃棄物処理施設の建設工事1件を受注したが、大型の公共向けDBO案件3件及び基幹改良工事2件、民需案件2件を受注した前期を下回る。 <大型案件の受注状況>・公共向け廃棄物処理施設のDBO案件(1件) ・公共向け長期包括契約(前期までに落札したDBO案件の長期包括部分)(1件) ・公共向け廃棄物処理施設の基幹改良工事案件(1件) ・民間向け産業廃棄物処理施設の建設工事案件(1件) | ![]() | |
精密・電子 | ・半導体市場及び半導体製造装置市場は新型コロナウイルス感染症による経済活動停滞の影響を一部で受けつつも、テレワークの定着や巣ごもり需要の増大等による半導体需要の底堅さにより、全体としては引き続き回復傾向にある。 ・ファウンドリ及びメモリメーカの設備投資は回復基調にある中、米中貿易摩擦の影響を受けつつも中国市場が存在感を高めている。 | ・ファウンドリに加え、メモリメーカの設備投資は回復基調にあり、受注は前期を上回る。 ・顧客は高水準の稼働を継続しており、また一部の顧客で、新型コロナウイルス感染症拡大による稼働停止リスクを低減するための安全在庫増加施策が継続した。これらの影響によりS&Sは引き続き堅調に推移した。 | ![]() |
(注) | 1 | 矢印は受注高の前期比の増減率を示しています。 |
+5%以上の場合は | ![]() | 、△5%以下の場合は | ![]() | 、±5%の範囲内の場合は | ![]() | で表しています。 |
2 | O&M(Operation & Maintenance) | ……………………プラントの運転管理・メンテナンス | |
DBO(Design, Build, Operate) | ……………………プラントの設計・調達・建設に加え、建設後の 運転管理・メンテナンスを一定期間請け負う。 |
生産、受注及び販売の状況は以下のとおりです。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
セグメントの名称 | 生産高(百万円) | 前期比(%) |
報告セグメント | ||
風水力事業 | 291,235 | △8.7 |
環境プラント事業 | 13,004 | △29.7 |
精密・電子事業 | 103,965 | 16.8 |
報告セグメント計 | 408,205 | △4.3 |
その他 | 244 | - |
合計 | 408,449 | △4.2 |
② 受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前期比(%) | 受注残高(百万円) | 前期比(%) |
報告セグメント | ||||
風水力事業 | 300,987 | △9.2 | 195,723 | △9.7 |
環境プラント事業 | 62,035 | △32.2 | 226,743 | △4.0 |
精密・電子事業 | 147,411 | 15.5 | 46,537 | 34.5 |
報告セグメント計 | 510,433 | △7.3 | 469,005 | △3.8 |
その他 | 1,487 | △2.6 | 18 | 507.5 |
合計 | 511,921 | △7.3 | 469,023 | △3.8 |
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前期比(%) |
報告セグメント | ||
風水力事業 | 313,581 | △3.0 |
環境プラント事業 | 67,536 | △2.8 |
精密・電子事業 | 141,119 | 10.0 |
報告セグメント計 | 522,238 | 0.3 |
その他 | 1,489 | △2.4 |
合計 | 523,727 | 0.2 |
(注) | 上記①から③の金額は、いずれも販売価格によっており、消費税等は含まれていません。また、セグメント間取引消去後の金額です。 |
(2)財政状態
① 資産
当連結会計年度末における資産総額は、前年度末に比べて、仕掛品が224億33百万円減少した一方、現金及び預金が279億81百万円、建設仮勘定が115億38百万円増加したことなどにより、263億38百万円増加し、6,215億78百万円となりました。建設仮勘定の増加は、主に精密・電子事業における国内の工場増設など、成長投資の実行によるものです。
セグメントごとでは、風水力事業は3,158億58百万円(28億26百万円増)、環境プラント事業は533億19百万円(9億1百万円増)、精密・電子事業は1,505億74百万円(86億65百万円増)、その他は241億36百万円(31億20百万円減)となりました。
② 負債
当連結会計年度末における負債総額は、前年度末に比べて短期借入金が229億9百万円減少した一方、前受金が228億95百万円、社債が100億円増加したことなどにより、136億96百万円増加し、3,171億8百万円となりました。
③ 純資産
当連結会計年度末における純資産は、利益剰余金が148億10百万円増加したことと、為替換算調整勘定が33億89百万円減少したことなどにより、前年度末に比べて126億42百万円増加の3,044億70百万円となりました。なお、利益剰余金が148億10百万円増加した内訳は、親会社株主に帰属する当期純利益244億73百万円の計上による増加、連結範囲の変動に伴う5億25百万円の増加、「収益認識に関する会計基準」等の適用による44億73百万円の期首残高減少、配当金の支払い57億13百万円による減少です。
自己資本は2,962億32百万円で、自己資本比率は47.7%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは堅調な営業利益に支えられ、642億34百万円の収入超過(前期比375億13百万円の収入増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出311億72百万円などにより、290億71百万円の支出超過(前期比49億93百万円の支出増加)となりました。
営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、351億63百万円の収入超過(前期比325億20百万円の収入増加)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による収入100億円があったものの短期借入金及び長期借入金が純額で118億56百万円減少したことや、配当金の支払い57億13百万円などにより、96億28百万円の支出超過(前期比105億60百万円の支出減少)となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前年度末から271億92百万円増加し、1,205億44百万円となりました。
② 財務戦略の基本方針
当社グループは、企業価値向上のために適宜適切なタイミングで経営資源を配分することを財務戦略の基本方針としており、強固な財務体質と高い資本効率をともに兼ね備えることが重要だと考えています。
自己資本は信用格付として維持すべき水準と考える『シングルAフラット(※)』となり、現在の事業推進に必要十分な状態となっています。従って、現在の当社の財務の状態においては、売上債権、棚卸資産を圧縮し、創出された資金を厳選した成長投資に振り向け固定資産を増強する一方、資本効率を高めるために自己資本を一定水準に抑制していきます。
(※)格付投資情報センター(R&I)による格付
③ 資金調達について
当社グループは、事業を行う上で必要となる運転資金や成長のための投資資金を、営業キャッシュ・フローを主とした内部資金だけでなく金融機関からの借入や社債の発行などの外部資金を有効に活用していきます。D/Eレシオは0.3~0.5を基準に負債の活用を進め、資本コストの低減・資本効率の向上を図ります。
また、現金・預金等の水準(手元流動性)については、連結売上高の2か月分を目安に適正水準の範囲でコントロールする方針です。これに加えて、金融上のリスクに対応するためにコミットメントライン契約等を締結することで、代替流動性を確保しています。なお、グループ内の資金効率を高めるため、資金を当社に集中する制度を運用しています。
代替流動性
当座貸越契約 50億円
コミットメントライン契約 800億円
いずれの契約においても、当連結会計年度末の借入実行残高はありません。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼします。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。
① 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しています。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。
② 退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しています。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しています。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。
③ 完成工事補償引当金
完成工事高に対して将来予想される瑕疵担保費用を一定の比率で算定し、完成工事補償引当金として計上しています。
引当金の見積りにおいて想定していなかった完成工事の不具合による補償義務の発生や、引当の額を超えて補償費用が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。一方、実際の補償費用が引当金の額を下回った場合は引当金戻入益を計上することになります。
④ 製品保証引当金
製品売上高に対して将来予想される瑕疵担保費用を一定の比率で算定し、製品保証引当金として計上しています。
引当金の見積りにおいて想定していなかった製品の不具合による保証義務の発生や、引当の額を超えて保証費用が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。一方、実際の保証費用が引当金の額を下回った場合は引当金戻入益を計上することになります。
⑤ 工事損失引当金
受注時における戦略的低採算案件や工事契約における未引渡工事のうち損失の発生する可能性が高く、工事損失額を期末において合理的に見積ることが出来る工事等については、当該損失見込額を工事損失引当金として計上しています。
技術的難易度の高い長期請負工事や海外でのカントリー・リスク等のある工事等において、工事の進行に伴い見積りを超えた原価が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
⑥ 完成工事高及び完成工事原価の計上
成果の確実性が認められる工事については、工事進行基準(工事の進捗率の見積りは原価比例法)により完成工事高を計上しています。想定していなかった原価の発生等により工事進捗度が変動した場合は、完成工事高及び完成工事原価が影響を受け、当社グループの業績を変動させる可能性があります。
⑦ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、各社ごとに資産のグルーピングをセグメント別に行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しています。
固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症による影響については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりです。