有価証券報告書-第155期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)
「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(2019年1月31日内閣府令第3号)による改正後の「企業内容等の開示に関する内閣府令」第二号様式記載上の注意(32)の規定を当事業年度に係る有価証券報告書から適用しています。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績
(単位:百万円)
当連結会計年度における事業環境は、世界経済では石油・ガス市場において一定の投資水準が継続する一方、半導体市場においては投資の調整局面にありましたが、一部で設備投資再開の動きも見られました。日本経済では、公共投資が堅調に推移しており、民間設備投資では例年並みの状況が続いています。全体として市況は底堅く推移しました。
こうした事業環境の下、当連結会計年度の受注高は、風水力事業が増加したものの、環境プラント事業と精密・電子事業の減少により前期比で233億50百万円減少して5,522億25百万円となりました。
売上高は、精密・電子事業が減少したものの、風水力事業と環境プラント事業の増加により、前期比で132億49百万円増加して5,224億24百万円となりました。
売上原価は3,857億36百万円、売上原価率は73.8%となり、売上総利益は1,366億88百万円となりました。販売費及び一般管理費は1,013億89百万円、営業利益は精密・電子事業が減少したものの、風水力事業と環境プラント事業の増加により前期比で28億16百万円増加して352億98百万円となりました。
営業外損益の純額は、持分法による投資利益7億49百万円を計上したことなどにより、2億72百万円のプラスとなりました。その結果、経常利益は前期比で42億90百万円増加して355億71百万円となりました。
特別損益の純額は、減損損失11億12百万円を計上したことなどにより、3億86百万円のマイナスとなりました。その結果、税金等調整前当期純利益は、351億84百万円となりました。
また、法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額が100億45百万円になったほか、非支配株主に帰属する当期純利益は17億89百万円となりました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比で50億87百万円増加して233億49百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(単位:百万円)
セグメント別では、受注高は環境プラント事業と精密・電子事業で前期を下回りました。環境プラント事業の減少は、前年の受注が例年に比べ高水準だったことがその要因です。精密・電子事業の減少は、半導体設備投資の減速による影響を受けたことによるものです。売上高・営業利益は風水力事業、環境プラント事業でいずれも増収増益と堅調に推移しましたが、精密・電子事業は半導体メモリメーカによる投資減速の影響が大きく、減収減益となりました。
風水力事業では、受注高は前期から53億29百万円増の3,316億7百万円、売上高は141億39百万円増の3,231億39百万円、営業利益は85億26百万円増の172億74百万円となりました。ポンプ事業については、中国で石油ガス市場向けの需要が旺盛だったことに加え、国内の標準ポンプ事業において業務効率化や価格改定効果などもあり、増収増益となりました。コンプレッサ・タービン事業については、サービス&サポートによる売上増に加え、クライオポンプ事業が好調により増収増益となりました。冷熱事業は中国市場での新製品投入や国内更新需要の着実な取り込みなどにより増収増益となりました。
環境プラント事業では、受注高は前期から155億8百万円減の914億79百万円、売上高は66億93百万円増の695億5百万円、営業利益は25億81百万円増の74億86百万円となりました。前期はDBOや長期包括契約によるO&M※などの大型案件を複数受注したため、過去の水準と比べても受注高が高水準でした。今期の受注高も引き続きDBO案件を3件受注するなど高水準を維持しました。前期に長期包括や延命化案件などの受注が増加したことに加え、原価低減が進捗したことなどにより増収増益となりました。
精密・電子事業では、受注高は前期から130億43百万円減の1,276億11百万円、売上高は74億53百万円減の1,282億55百万円、営業利益は81億96百万円減の103億71百万円となり、いずれも前期を下回りました。メモリメーカを中心に投資低迷の影響を受けましたが、第3四半期の後半から一部の顧客で設備投資を再開する動きがみられ、発注や前倒し納入依頼がありました。営業利益は、減収に加え、CMP事業における案件ミックス、開発案件や人件費などがかさみ、収益性が低下しました。また、開発案件の増加や海外拠点の人員強化なども行っており減収減益となりました。
※O&M(Operation & Maintenance) プラントの運転管理・メンテナンス
《セグメント別の事業環境と事業概況》
注)1.矢印は受注高の前期比の増減率を示しています。
2.EPC(Engineering, Procurement, Construction)…プラントの設計・調達・建設
O&M(Operation & Maintenance) ……………………プラントの運転管理・メンテナンス
DBO(Design, Build, Operate)………………………プラントの設計・調達・建設に加え、建設後の
運転管理・メンテナンスを一定期間請け負う。
また、当社グループは、投下資本利益率(ROIC)、全社及び各報告セグメント別の売上高営業利益率を経営指標としています。中期経営計画「E-Plan2019」(2017年度~2019年度)の最終年度である当連結会計年度の実績は以下のとおりとなり、目標に対して未達でした。これを踏まえて次期中期経営計画「E-Plan2022」(2020年度~2022年度)において、経営指標の改善に邁進していく所存です。
(ROIC)
(売上高営業利益)
生産、受注及び販売の状況は以下のとおりです。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
② 受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
(注) 上記①から③の金額は、いずれも販売価格によっており、消費税等は含まれていません。また、セグメント間取引消去後の金額です。
(2) 財政状態
① 資産
当連結会計年度末における資産総額は、前年度末に比べて、現金及び預金が165億95百万円減少した一方、建物及び構築物が117億52百万円、建設仮勘定が61億7百万円増加したことなどにより、36億57百万円増加し、5,952億39百万円となりました。建物及び構築物と建設仮勘定の増加は、主に精密・電子事業における国内の工場増設など、成長投資の実行によるものです
セグメントごとでは、風水力事業は3,130億32百万円(28億36百万円増)、環境プラント事業は524億18百万円(102億85百万円増)、精密・電子事業は1,419億9百万円(107億36百万円増)、その他は272億57百万円(17億58百万円増)となりました。
② 負債
当連結会計年度末における負債総額は、前年度末に比べて流動負債(その他:設備未払金等)が67億64百万円増加した一方、電子記録債務が30億6百万円、支払手形及び買掛金が27億39百万円、長期借入金が23億89百万円減少したことなどにより、13億92百万円減少し、3,034億11百万円となりました。
③ 純資産
当連結会計年度末における純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益を233億49百万円計上した一方、自己株式の取得による減少150億4百万円、配当金を58億77百万円支払ったことなどにより50億49百万円増加し、2,918億27百万円となりました。自己資本は2,836億51百万円で、自己資本比率は47.7%となりました。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度末との比較を行っています。
(3) キャッシュ・フロー並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、風水力事業を中心に事業が好調に推移した結果、267億20百万円の収入超過(前期比78億90百万円の収入減少)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に精密・電子事業における国内の工場増設など、成長投資の実行により、240億77百万円の支出超過(前期比81億49百万円の支出増加)となりました。
営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、26億43百万円の収入超過(前期比160億39百万円の収入減少)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出150億4百万円、配当金の支払い58億77百万円などにより、201億88百万円の支出超過(前期比262億23百万円の支出減少)となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前年度末から172億5百万円減少し、933億51百万円となりました。
② 財務戦略の基本方針
当社グループは、企業価値向上のために適宜適切なタイミングで経営資源を配分することを財務戦略の基本方針としており、強固な財務体質と高い資本効率をともに兼ね備えることが重要だと考えています。
自己資本は信用格付として維持すべき水準と考える『シングルAフラット(※)』となり、現在の事業推進に必要十分な状態となっています。従って、現在の当社の財務の状態においては、売上債権、棚卸資産を圧縮し、創出された資金を厳選した成長投資に振り向け固定資産を増強する一方、資本効率を高めるために自己資本を一定水準に抑制していきます。
(※)格付投資情報センター(R&I)による格付
③ 資金調達について
当社グループは、事業を行う上で必要となる運転資金や成長のための投資資金を、営業キャッシュ・フローを主とした内部資金だけでなく金融機関からの借入や社債の発行などの外部資金を有効に活用していきます。D/Eレシオは0.3~0.5を基準に負債の活用を進め、資本コストの低減・資本効率の向上を図ります。
また、資金の流動性については、連結売上高の2か月分を目安に適正水準の範囲でコントロールする方針です。これに加えて、金融上のリスクに対応するためにコミットメントライン契約等を締結することで、手許流動性を確保しています。なお、グループ内の資金効率を高めるため、資金を当社に集中する制度を運用しています。
代替流動性
当座貸越契約 50億円
コミットメントライン契約 450億円
いずれの契約においても、当連結会計年度末の借入実行残高はありません。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼします。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。
① 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しています。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。
② 退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しています。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しています。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。
③ 完成工事補償引当金
完成工事高に対して将来予想される瑕疵担保費用を一定の比率で算定し、完成工事補償引当金として計上しています。
引当金の見積りにおいて想定していなかった完成工事の不具合による補償義務の発生や、引当の額を超えて補償費用が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。一方、実際の補償費用が引当金の額を下回った場合は引当金戻入益を計上することになります。
④ 製品保証引当金
製品売上高に対して将来予想される瑕疵担保費用を一定の比率で算定し、製品保証引当金として計上しています。
引当金の見積りにおいて想定していなかった製品の不具合による保証義務の発生や、引当の額を超えて保証費用が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。一方、実際の保証費用が引当金の額を下回った場合は引当金戻入益を計上することになります。
⑤ 工事損失引当金
受注時における戦略的低採算案件や工事契約における未引渡工事のうち損失の発生する可能性が高く、工事損失額を期末において合理的に見積ることが出来る工事等については、当該損失見込額を工事損失引当金として計上しています。
技術的難易度の高い長期請負工事や海外でのカントリー・リスク等のある工事等において、工事の進行に伴い見積りを超えた原価が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
⑥ 完成工事高及び完成工事原価の計上
成果の確実性が認められる工事については、工事進行基準(工事の進捗率の見積りは原価比例法)により完成工事高を計上しています。想定していなかった原価の発生等により工事進捗度が変動した場合は、完成工事高及び完成工事原価が影響を受け、当社グループの業績を変動させる可能性があります。
⑦ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、各社ごとに資産のグルーピングをセグメント別に行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しています。
固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 (%) | |
受注高 | 575,576 | 552,225 | △23,350 | △4.1 |
売上高 | 509,175 | 522,424 | 13,249 | 2.6 |
営業利益 | 32,482 | 35,298 | 2,816 | 8.7 |
売上高営業利益率 (%) | 6.4 | 6.8 | - | - |
経常利益 | 31,281 | 35,571 | 4,290 | 13.7 |
親会社株主に帰属する 当期純利益 | 18,262 | 23,349 | 5,087 | 27.9 |
1株当たり当期純利益 (円) | 179.94 | 241.79 | 61.85 | 34.4 |
当連結会計年度における事業環境は、世界経済では石油・ガス市場において一定の投資水準が継続する一方、半導体市場においては投資の調整局面にありましたが、一部で設備投資再開の動きも見られました。日本経済では、公共投資が堅調に推移しており、民間設備投資では例年並みの状況が続いています。全体として市況は底堅く推移しました。
こうした事業環境の下、当連結会計年度の受注高は、風水力事業が増加したものの、環境プラント事業と精密・電子事業の減少により前期比で233億50百万円減少して5,522億25百万円となりました。
売上高は、精密・電子事業が減少したものの、風水力事業と環境プラント事業の増加により、前期比で132億49百万円増加して5,224億24百万円となりました。
売上原価は3,857億36百万円、売上原価率は73.8%となり、売上総利益は1,366億88百万円となりました。販売費及び一般管理費は1,013億89百万円、営業利益は精密・電子事業が減少したものの、風水力事業と環境プラント事業の増加により前期比で28億16百万円増加して352億98百万円となりました。
営業外損益の純額は、持分法による投資利益7億49百万円を計上したことなどにより、2億72百万円のプラスとなりました。その結果、経常利益は前期比で42億90百万円増加して355億71百万円となりました。
特別損益の純額は、減損損失11億12百万円を計上したことなどにより、3億86百万円のマイナスとなりました。その結果、税金等調整前当期純利益は、351億84百万円となりました。
また、法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額が100億45百万円になったほか、非支配株主に帰属する当期純利益は17億89百万円となりました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比で50億87百万円増加して233億49百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(単位:百万円)
セグメント | 受注高 | 売上高 | セグメント損益 | ||||||
前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減率 (%) | 前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減率 (%) | 前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減率 (%) | |
風水力 | 326,278 | 331,607 | 1.6 | 308,999 | 323,139 | 4.6 | 8,747 | 17,274 | 97.5 |
環境プラント | 106,987 | 91,479 | △14.5 | 62,812 | 69,505 | 10.7 | 4,904 | 7,486 | 52.6 |
精密・電子 | 140,654 | 127,611 | △9.3 | 135,709 | 128,255 | △5.5 | 18,567 | 10,371 | △44.1 |
報告セグメント計 | 573,921 | 550,698 | △4.0 | 507,520 | 520,900 | 2.6 | 32,220 | 35,131 | 9.0 |
その他 | 1,655 | 1,527 | △7.7 | 1,655 | 1,524 | △7.9 | 291 | 145 | △50.1 |
調整額 | - | - | - | - | - | - | △29 | 21 | - |
合計 | 575,576 | 552,225 | △4.1 | 509,175 | 522,424 | 2.6 | 32,482 | 35,298 | 8.7 |
セグメント別では、受注高は環境プラント事業と精密・電子事業で前期を下回りました。環境プラント事業の減少は、前年の受注が例年に比べ高水準だったことがその要因です。精密・電子事業の減少は、半導体設備投資の減速による影響を受けたことによるものです。売上高・営業利益は風水力事業、環境プラント事業でいずれも増収増益と堅調に推移しましたが、精密・電子事業は半導体メモリメーカによる投資減速の影響が大きく、減収減益となりました。
風水力事業では、受注高は前期から53億29百万円増の3,316億7百万円、売上高は141億39百万円増の3,231億39百万円、営業利益は85億26百万円増の172億74百万円となりました。ポンプ事業については、中国で石油ガス市場向けの需要が旺盛だったことに加え、国内の標準ポンプ事業において業務効率化や価格改定効果などもあり、増収増益となりました。コンプレッサ・タービン事業については、サービス&サポートによる売上増に加え、クライオポンプ事業が好調により増収増益となりました。冷熱事業は中国市場での新製品投入や国内更新需要の着実な取り込みなどにより増収増益となりました。
環境プラント事業では、受注高は前期から155億8百万円減の914億79百万円、売上高は66億93百万円増の695億5百万円、営業利益は25億81百万円増の74億86百万円となりました。前期はDBOや長期包括契約によるO&M※などの大型案件を複数受注したため、過去の水準と比べても受注高が高水準でした。今期の受注高も引き続きDBO案件を3件受注するなど高水準を維持しました。前期に長期包括や延命化案件などの受注が増加したことに加え、原価低減が進捗したことなどにより増収増益となりました。
精密・電子事業では、受注高は前期から130億43百万円減の1,276億11百万円、売上高は74億53百万円減の1,282億55百万円、営業利益は81億96百万円減の103億71百万円となり、いずれも前期を下回りました。メモリメーカを中心に投資低迷の影響を受けましたが、第3四半期の後半から一部の顧客で設備投資を再開する動きがみられ、発注や前倒し納入依頼がありました。営業利益は、減収に加え、CMP事業における案件ミックス、開発案件や人件費などがかさみ、収益性が低下しました。また、開発案件の増加や海外拠点の人員強化なども行っており減収減益となりました。
※O&M(Operation & Maintenance) プラントの運転管理・メンテナンス
《セグメント別の事業環境と事業概況》
セグメント | 2019年12月期の事業環境 | 2019年12月期の事業概況と 受注高の増減率 (注)1 | ||
風水力 | ポンプ | <海外>・石油・ガス市場は、原油価格が上昇傾向にあり、引合いが増加している。特に中国において需要が高い傾向にある。一方で、競合との価格競争が厳しくなってきている。 ・水インフラ市場は回復傾向にあり、特に中国、東南アジアで需要が増加傾向にある。 ・電力市場はCO2排出規制の影響を受けて石炭火力が低調。 <国内>・建築着工棟数は前期並みで推移。 ・社会インフラの更新・補修に対する投資は前期を下回る。 | <海外>・石油・ガス関連の受注は前期を下回る。 ・水インフラの受注は前期を上回る。 ・電力関連では既存の発電施設の定期点検が多く、アフター案件を複数受注し前期を上回る。 <国内>・建築設備向けの受注は前期並み。 ・公共向けの受注は、受注拡大に向けた施策の効果により、前期を上回る。 | ![]() |
コンプ レッサ・ タービン | ・新規製品市場は投資が回復傾向にある。中国、インド、ロシア、中東では投資が活発になっている。アメリカではシェールガスやエチレン関連投資が増加しているが、大型プロジェクト案件では厳しい価格競争が継続している。 ・サービス市場は堅調に推移している。 ・LNG市場(クライオポンプ)は回復傾向にある。価格競争は厳しいもののアジア市場が活況。 | ・価格競争の激化や発注時期の遅れもあり、新規製品の受注は前期を下回る。 ・部品案件とフィールドサービス案件が堅調であり、前期を上回るが、改造及び修理案件の受注は前期を下回り、サービス分野全体の受注は前期を下回る。 | ![]() | |
冷熱 | ・国内市況は前期並み。更新需要が堅調に推移している。 ・中国では、継続していた材料費高騰は一段落し安定傾向にある。石油化学市場が好調だが、一方で建築設備市場では景気減速による厳しい競争環境が継続している。 | ・国内の受注は前期並み。 ・中国の受注は前期を下回る。 | ![]() | |
環境プラント (注)2 | ・公共向け廃棄物処理施設のEPCの発注量は、2018年12月期から発注がずれ込んだ影響で前期を上回る。 ・既存施設のO&Mの発注量は例年どおり推移。 ・民間企業での木質系バイオマス燃料を用いた発電施設及び産業廃棄物処理施設の建設需要は継続している。 | ・複数の大型案件を受注したが、受注水準が非常に高かった前期を下回る(前期は民需案件に加え、大型の公共向けDBO案件及び長期包括案件を複数受注)。 <大型案件の受注状況>・公共向け廃棄物処理施設のDBO案件 (3件) ・産業廃棄物処理施設の建設(1件) ・バイオマス発電施設の建設(1件) ・一般廃棄物処理施設の基幹改良工事(2件) | ![]() | |
精密・電子 | ・ファウンドリやイメージセンサの設備投資は回復基調にあるものの、メモリメーカの設備投資は引き続き低調。 | ・一部の半導体メーカの設備投資が再開したものの、メモリメーカを中心とした投資減速の影響が大きく、前期を下回る。 | ![]() |
注)1.矢印は受注高の前期比の増減率を示しています。
+5%以上の場合は | ![]() | 、△5%以下の場合は | ![]() | 、±5%の範囲内の場合は | ![]() | で表しています。 |
2.EPC(Engineering, Procurement, Construction)…プラントの設計・調達・建設
O&M(Operation & Maintenance) ……………………プラントの運転管理・メンテナンス
DBO(Design, Build, Operate)………………………プラントの設計・調達・建設に加え、建設後の
運転管理・メンテナンスを一定期間請け負う。
また、当社グループは、投下資本利益率(ROIC)、全社及び各報告セグメント別の売上高営業利益率を経営指標としています。中期経営計画「E-Plan2019」(2017年度~2019年度)の最終年度である当連結会計年度の実績は以下のとおりとなり、目標に対して未達でした。これを踏まえて次期中期経営計画「E-Plan2022」(2020年度~2022年度)において、経営指標の改善に邁進していく所存です。
(ROIC)
当連結会計年度 | 中期経営計画 「E-Plan2019」目標 |
6.5% | 8.0%以上 |
(売上高営業利益)
当連結会計年度 | 中期経営計画 「E-Plan2019」目標 | |
グループ全体 | 6.8% | 9.0%以上 |
風水力事業 | 5.3% | 8.5%以上 |
ポンプ事業 | 6.3% | 8.0%以上 |
コンプレッサ・タービン事業 | 5.1% | 11.0%以上 |
冷熱事業 | 4.9% | 7.0%以上 |
環境プラント事業 | 10.8% | 11.0%以上 |
精密・電子事業 | 8.1% | 12.0%以上 |
生産、受注及び販売の状況は以下のとおりです。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
セグメントの名称 | 生産高(百万円) | 前期比(%) |
報告セグメント | ||
風水力事業 | 318,849 | 7.2 |
環境プラント事業 | 18,487 | 2.5 |
精密・電子事業 | 89,034 | △20.5 |
報告セグメント計 | 426,371 | △0.2 |
その他 | - | - |
合計 | 426,371 | △0.2 |
② 受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前期比(%) | 受注残高(百万円) | 前期比(%) |
報告セグメント | ||||
風水力事業 | 331,607 | 1.6 | 216,701 | 3.5 |
環境プラント事業 | 91,479 | △14.5 | 236,151 | 10.2 |
精密・電子事業 | 127,611 | △9.3 | 34,592 | △2.1 |
報告セグメント計 | 550,698 | △4.0 | 487,445 | 6.2 |
その他 | 1,527 | △7.7 | 3 | 242.2 |
合計 | 552,225 | △4.1 | 487,448 | 6.2 |
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前期比(%) |
報告セグメント | ||
風水力事業 | 323,139 | 4.6 |
環境プラント事業 | 69,505 | 10.7 |
精密・電子事業 | 128,255 | △5.5 |
報告セグメント計 | 520,900 | 2.6 |
その他 | 1,524 | △7.9 |
合計 | 522,424 | 2.6 |
(注) 上記①から③の金額は、いずれも販売価格によっており、消費税等は含まれていません。また、セグメント間取引消去後の金額です。
(2) 財政状態
① 資産
当連結会計年度末における資産総額は、前年度末に比べて、現金及び預金が165億95百万円減少した一方、建物及び構築物が117億52百万円、建設仮勘定が61億7百万円増加したことなどにより、36億57百万円増加し、5,952億39百万円となりました。建物及び構築物と建設仮勘定の増加は、主に精密・電子事業における国内の工場増設など、成長投資の実行によるものです
セグメントごとでは、風水力事業は3,130億32百万円(28億36百万円増)、環境プラント事業は524億18百万円(102億85百万円増)、精密・電子事業は1,419億9百万円(107億36百万円増)、その他は272億57百万円(17億58百万円増)となりました。
② 負債
当連結会計年度末における負債総額は、前年度末に比べて流動負債(その他:設備未払金等)が67億64百万円増加した一方、電子記録債務が30億6百万円、支払手形及び買掛金が27億39百万円、長期借入金が23億89百万円減少したことなどにより、13億92百万円減少し、3,034億11百万円となりました。
③ 純資産
当連結会計年度末における純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益を233億49百万円計上した一方、自己株式の取得による減少150億4百万円、配当金を58億77百万円支払ったことなどにより50億49百万円増加し、2,918億27百万円となりました。自己資本は2,836億51百万円で、自己資本比率は47.7%となりました。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度末との比較を行っています。
(3) キャッシュ・フロー並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、風水力事業を中心に事業が好調に推移した結果、267億20百万円の収入超過(前期比78億90百万円の収入減少)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に精密・電子事業における国内の工場増設など、成長投資の実行により、240億77百万円の支出超過(前期比81億49百万円の支出増加)となりました。
営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、26億43百万円の収入超過(前期比160億39百万円の収入減少)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出150億4百万円、配当金の支払い58億77百万円などにより、201億88百万円の支出超過(前期比262億23百万円の支出減少)となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前年度末から172億5百万円減少し、933億51百万円となりました。
② 財務戦略の基本方針
当社グループは、企業価値向上のために適宜適切なタイミングで経営資源を配分することを財務戦略の基本方針としており、強固な財務体質と高い資本効率をともに兼ね備えることが重要だと考えています。
自己資本は信用格付として維持すべき水準と考える『シングルAフラット(※)』となり、現在の事業推進に必要十分な状態となっています。従って、現在の当社の財務の状態においては、売上債権、棚卸資産を圧縮し、創出された資金を厳選した成長投資に振り向け固定資産を増強する一方、資本効率を高めるために自己資本を一定水準に抑制していきます。
(※)格付投資情報センター(R&I)による格付
③ 資金調達について
当社グループは、事業を行う上で必要となる運転資金や成長のための投資資金を、営業キャッシュ・フローを主とした内部資金だけでなく金融機関からの借入や社債の発行などの外部資金を有効に活用していきます。D/Eレシオは0.3~0.5を基準に負債の活用を進め、資本コストの低減・資本効率の向上を図ります。
また、資金の流動性については、連結売上高の2か月分を目安に適正水準の範囲でコントロールする方針です。これに加えて、金融上のリスクに対応するためにコミットメントライン契約等を締結することで、手許流動性を確保しています。なお、グループ内の資金効率を高めるため、資金を当社に集中する制度を運用しています。
代替流動性
当座貸越契約 50億円
コミットメントライン契約 450億円
いずれの契約においても、当連結会計年度末の借入実行残高はありません。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼします。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。
① 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しています。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。
② 退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しています。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しています。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。
③ 完成工事補償引当金
完成工事高に対して将来予想される瑕疵担保費用を一定の比率で算定し、完成工事補償引当金として計上しています。
引当金の見積りにおいて想定していなかった完成工事の不具合による補償義務の発生や、引当の額を超えて補償費用が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。一方、実際の補償費用が引当金の額を下回った場合は引当金戻入益を計上することになります。
④ 製品保証引当金
製品売上高に対して将来予想される瑕疵担保費用を一定の比率で算定し、製品保証引当金として計上しています。
引当金の見積りにおいて想定していなかった製品の不具合による保証義務の発生や、引当の額を超えて保証費用が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。一方、実際の保証費用が引当金の額を下回った場合は引当金戻入益を計上することになります。
⑤ 工事損失引当金
受注時における戦略的低採算案件や工事契約における未引渡工事のうち損失の発生する可能性が高く、工事損失額を期末において合理的に見積ることが出来る工事等については、当該損失見込額を工事損失引当金として計上しています。
技術的難易度の高い長期請負工事や海外でのカントリー・リスク等のある工事等において、工事の進行に伴い見積りを超えた原価が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
⑥ 完成工事高及び完成工事原価の計上
成果の確実性が認められる工事については、工事進行基準(工事の進捗率の見積りは原価比例法)により完成工事高を計上しています。想定していなかった原価の発生等により工事進捗度が変動した場合は、完成工事高及び完成工事原価が影響を受け、当社グループの業績を変動させる可能性があります。
⑦ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、各社ごとに資産のグルーピングをセグメント別に行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しています。
固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。