四半期報告書-第150期第1四半期(令和2年4月1日-令和2年6月30日)
三菱電機グループの要約四半期連結財務諸表はIFRSに基づいて作成しています。三菱電機グループは要約四半期連結財務諸表の作成において資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を行っており、実際の業績がこれらの見積りと異なる場合があります。
(1)業績
当第1四半期連結累計期間の景気は、中国では、固定資産投資の持ち直しもあり、緩やかに回復しました。一方、日本、米国、欧州では、新型コロナウイルス感染症の影響深刻化により企業部門、家計部門ともに大幅に減速し、総じてみれば経営環境は厳しい状況となりました。なお、足元で各国・地域の経済活動の本格的再開に向けた動きもあって一部に景気底打ちの動きがみられました。
この結果、当第1四半期連結累計期間の業績は、以下のとおりとなりました。
<連結決算概要>
①売上高
売上高は、全てのセグメントで減収となり、前年同四半期連結累計期間比1,926億円減少の8,581億円となりました。重電システム部門では国内の交通事業や電力事業などが堅調で社会インフラ事業は増加しましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、各国の都市開発、建設が停滞してビルシステム事業が減少しました。産業メカトロニクス部門では各国での新車販売が減速して自動車機器事業が大幅に減少し、家庭電器部門では海外で経済活動が著しく制限されたことに加え、国内での設備投資が抑制されたことなどで空調機器が大幅に減少しました。
<売上高における為替影響額>
②営業利益
営業利益は、重電システム部門および電子デバイス部門で増益となりましたが、産業メカトロニクス部門、家庭電器部門、情報通信システム部門などの減益により、前年同四半期連結累計期間比347億円減少の202億円となりました。営業利益率は、売上高の減少などにより、前年同四半期連結累計期間比2.8ポイント悪化の2.4%となりました。
売上原価率は、売上高の減少に伴う操業度低下などによる産業メカトロニクス部門や家庭電器部門の悪化に加え、円高の影響もあり、前年同四半期連結累計期間比0.9ポイント悪化しました。販売費及び一般管理費は、経費の抑制などにより前年同四半期連結累計期間比276億円減少しましたが、売上高比率は2.0ポイント悪化しました。その他の損益は、前年同四半期連結累計期間比8億円増加し、売上高比率は0.1ポイント改善しました。
③税引前四半期純利益
税引前四半期純利益は、営業利益の減少に対し、為替差損の減少などによる営業外損益の改善があり、前年同四半期連結累計期間比326億円減少の271億円、売上高比率は3.2%となりました。
④親会社株主に帰属する四半期純利益
親会社株主に帰属する四半期純利益は、税引前四半期純利益の減少などにより、前年同四半期連結累計期間比248億円減少の178億円、売上高比率は2.1%となりました。
事業の種類別セグメントの業績は、次のとおりです。
①重電システム
社会インフラ事業の事業環境は、国内の電力システム改革に伴う需要や国内の公共事業における防災・減災向けの投資などが堅調に推移しました。このような状況の中、同事業の受注高は国内の電力事業や公共事業などの増加、売上高は国内の交通事業や電力事業などの増加により前年同四半期連結累計期間を上回りました。
ビルシステム事業の事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響により、各国で都市開発案件の停滞や建設計画の遅延などが発生し、国内外ともに新設事業を中心に需要が減少しました。このような状況の中、同事業は国内・アジアを中心に減少し、受注高・売上高とも前年同四半期連結累計期間を下回りました。
この結果、部門全体では、売上高は前年同四半期連結累計期間比96%の2,657億円となりました。
営業利益は、売上案件の変動や費用改善などにより、前年同四半期連結累計期間比94億円増加の186億円となりました。
②産業メカトロニクス
FAシステム事業の事業環境は、海外を中心に5G通信ネットワークや半導体などの一部で需要が堅調に推移したことに加え、海外でのマスク製造の増加に伴う需要などがありましたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、国内外の自動車、国内の工作機械関連を中心に需要が減速しました。このような状況の中、同事業は受注高・売上高とも前年同四半期連結累計期間を下回りました。
自動車機器事業の事業環境は、低迷が続いていた新車販売台数が、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、中国を除く全地域でさらに大きく減少しました。このような状況の中、同事業はモーター・インバーターなどの車両電動化関連製品の販売は増加しましたが、その他の自動車用電装品の減少により、受注高・売上高とも前年同四半期連結累計期間を下回りました。
この結果、部門全体では、自動車機器事業の減速を中心に売上高は前年同四半期連結累計期間比71%の2,362億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより、前年同四半期連結累計期間比245億円悪化の34億円の損失となりました。
③情報通信システム
情報システム・サービス事業の事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響で、テレワークに関連したインフラ構築の需要増加などがありましたが、製造業向けを中心にIT関連の投資案件の延期や中止などがありました。このような状況の中、同事業はシステムインテグレーション事業などの減少により、受注高・売上高とも前年同四半期連結累計期間を下回りました。
電子システム事業は、宇宙システム事業の大口案件の減少などにより、受注高・売上高とも前年同四半期連結累計期間を下回りました。
この結果、部門全体では、売上高は前年同四半期連結累計期間比73%の632億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより、前年同四半期連結累計期間比19億円悪化の5億円の損失となりました。
④電子デバイス
電子デバイス事業の事業環境は、高周波光デバイスにおいて、5G通信ネットワークや次世代データセンター関連の堅調な需要が継続しましたが、パワー半導体については、自動車向けの需要が減速しました。このような状況の中、同事業は通信用光デバイスを中心とした高周波光デバイスは増加しましたが、自動車用のパワー半導体や液晶の減少などにより、受注高は前年同四半期連結累計期間を下回り、売上高は前年同四半期連結累計期間比98%の497億円となりました。
営業利益は、機種構成の変動などにより、前年同四半期連結累計期間比24億円増加の30億円となりました。
⑤家庭電器
家庭電器事業の事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う、外出自粛などによる家庭向け需要が一定程度ありましたが、海外での都市封鎖や経済活動の著しい制限、国内での設備投資の抑制などにより、国内外の空調機器市場の需要減少などがありました。このような状況の中、同事業は国内外での空調機器の減少や円高の影響などにより、売上高は前年同四半期連結累計期間比80%の2,373億円となりました。
営業利益は、売上高の減少や円高の影響などにより、前年同四半期連結累計期間比176億円減少の135億円となりました。
⑥その他
売上高は、資材調達・物流の関係会社でのグループ向けの減少などにより、前年同四半期連結累計期間比84%の1,254億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより、前年同四半期連結累計期間比35億円悪化の13億円の損失となりました。
(2)経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
①経営方針
三菱電機グループは、「企業理念*1」及び「7つの行動指針*2」に基づき、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)を企業経営の基本と位置付け、「成長性」「収益性・効率性」「健全性」の3つの視点による「バランス経営」を継続し、強固な経営基盤の確立と持続的成長を追求してまいります。
また、コーポレートステートメント「Changes for the Better」に基づき、変革に挑戦し、常により良い明日への探求を続け、「社会」「顧客」「株主」「従業員」をはじめとするステークホルダーから信頼と満足を得られるよう取り組んでまいります。

②経営環境及び対処すべき課題
世界経済の先行きは、新型コロナウイルス感染症の影響深刻化が景気に著しい悪影響を及ぼしており、各国・地域において経済対策は実施されているものの、本格的な景気回復には至らず、年度を通じた経済成長率は前連結会計年度と比べて大幅に減速することが見込まれます。また、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化すれば、経営環境が一層厳しくなると予想されます。
かかる中、三菱電機グループの「連結売上高5兆円以上」「営業利益率8%以上」としている2020年度成長目標については、需要伸長の停滞、為替変動など外部要因や競争環境の激化、価格下落等の市場環境変化への対応不足などに加え、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、目標を下回る見込みです。継続的に達成すべき経営指標については、「借入金比率15%以下」は維持していますが、「ROE10%以上」については現段階で未達となる見込みであり、早期に回復できるよう努めてまいります。新型コロナウイルス感染症に対しては、雇用維持を基本としつつ、収束までの期間が長期化する場合にも、業績への影響が極小化できるよう対応してまいります。
2020年度は、業績を改善して収益性を伴う「質のよい」成長を実現すべく、グローバル及びグループトータルでの最適な事業推進体制を構築・強化し、日本・欧米・中国における事業競争力を強化するとともに、インド・東南アジア等の成長市場における需要獲得に注力してまいります。そのために、製品・技術等の補完や新地域・新市場での販売網・サービス網の確保、人的資源の獲得を目的とした協業・M&Aなどにも取り組んでまいります。あわせて、資本コストを意識した経営を進めていく中で、開発投資や設備投資などを含む経営資源の最適な配分、「ものづくり力」の強化に資する開発・生産力の強化、開発設計段階からの品質作り込み、間接部門における業務効率化も含むJust In Time改善活動を通じた生産性向上、人材構造適正化及び最適配置、更なる財務体質の改善等に引き続き取り組むとともに、事業別資産効率指標として導入した三菱電機版ROIC*3を継続的に運用し、中長期視点で、総合的な事業効率性の向上を目指してまいります。
新たな中期経営計画の策定にあたっては、オープンイノベーション等の積極活用により事業モデルの変革を加速し、多様化する社会課題の解決に向けたソリューション事業を重点的に強化するとともに、収益力向上と経営資源の有効活用のための事業ポートフォリオの見直しを図り、経営基盤をより一層強化することを基本に考えています。
三菱電機グループは、環境問題や資源・エネルギー問題等の社会課題に対し、製品・システム・サービスを組み合わせたソリューションの提供に取り組み、「持続可能な社会と安心・安全・快適性の両立」をはじめとする価値創出を、ライフ、インダストリー、インフラ、モビリティの4つの領域において、より一層推進してまいります。加えて、全ての企業活動を通じて、世界共通の目標であるSDGsの17の目標達成に貢献してまいります。
価値創出の推進にあたっては、経営基盤(顧客との繋がり、技術、人材、製品、企業文化等)の強化とあらゆる連携の強化による「技術シナジー・事業シナジー」の進化に加え、事業モデルの変革を進めています。


かかる三菱電機グループの取り組みの中で、「環境」については、低炭素社会や循環型社会の形成等に貢献すべく、創立100周年の2021年を目標年とする「環境ビジョン2021」の下、製品使用時におけるCO2排出量の30%削減(2000年度比)と、グループ全体での製品生産時のCO2排出総量の30%削減(1990年度比*4)を目指してまいります。また、2030年に向けてSBTイニシアチブに認定された温室効果ガス削減目標であるスコープ1+2で18%削減(2016年度比)、スコープ3で15%削減(2018年度比)*5の達成を目指すとともに、TCFD*6の提言に基づいた気候変動に係るリスクと機会の開示に向けて取り組んでいます。2021年以降の新たな長期環境経営ビジョンとして策定した「環境ビジョン2050」を踏まえて取り組んでまいります。「倫理・遵法」については、近年三菱電機グループにおいて、様々な課題があることが明らかになっております。社員の心身の健康にかかわる労務問題やお客様との契約を守らずに製品を納入していた品質不適切行為、不正アクセスによる個人情報と企業機密の流出可能性などに対して、再発防止に真摯に取り組んでまいります。労務問題に対しては「三菱電機 職場風土改革プログラム」を中心とした施策により、「風通しよくコミュニケーションができる職場づくり」「メンタルヘルス不調者への適切なケアの徹底」などを進めてまいります。品質不適切行為に対しては、品質意識の一層の醸成に加え、迅速な初動対応を強化してまいります。不正アクセスに対しては、社長直轄の「情報セキュリティ統括室」を中心に、侵入防止、拡散防止、流出防止、グローバル対応、文書管理を強化・徹底してまいります。加えて、コンプライアンス方針の再徹底、内部統制の強化、教育を核としたコンプライアンス活動による一層の意識浸透にグループ全体で真摯に取り組んでまいります。あわせて、コーポレートガバナンス・コードへの適切な対応を図るなど、「コーポレート・ガバナンス」の継続的な向上策に取り組むとともに、適時適切な情報開示に努め、社会・顧客・株主・従業員等とのより高い信頼関係の確立に一層努めてまいります。
新型コロナウイルス感染症に対しては、顧客・取引先をはじめとする関係者の皆さまと従業員・家族の安全・健康を最優先とし、在宅勤務の活用や生産・工事・サービス関連部門でのソーシャルディスタンス確保等、感染防止対策を十分に講じた上で、市民生活の維持に向けた企業としての社会的責任を果たすために必要な事業を継続し、製品の安定供給やサービスの提供、顧客へのご支援等を行ってまいります。
三菱電機グループは、上記施策を着実に展開することにより、更なる企業価値の向上を目指します。
*1 「企業理念」:三菱電機グループは、技術、サービス、創造力の向上を図り、活力とゆとりある社会の実現に貢献する。
*2 「7つの行動指針」:
・「信頼」:社会・顧客・株主・社員・取引先等との高い信頼関係を確立する。
・「品質」:最良の製品・サービス、最高の品質の提供を目指す。
・「技術」:研究開発・技術革新を推進し、新しいマーケットを開拓する。
・「貢献」:グローバル企業として、地域、社会の発展に貢献する。
・「遵法」:全ての企業行動において規範を遵守する。
・「環境」:自然を尊び、環境の保全と向上に努める。
・「発展」:適正な利益を確保し、企業発展の基盤を構築する。
*3 三菱電機版ROIC(投下資本利益率):各事業部門での把握・改善が容易となるように、「資本」「負債」ではなく、資産項目(固定資産・現預金等)に基づいて算出。
*4 削減目標の基準年度:当社単独1990年、国内関係会社2000年、海外関係会社2005年
*5 SBT(Science Based Targets)イニシアチブ: 科学的根拠に基づく二酸化炭素排出量削減目標を立てることを求める、 国連グローバル・コンパクト (UNGC)、世界自然保護基金(WWF)、CDP、世界資源研究所(WRI)による国際的イニシアチブ。スコープ1:自社における燃料使用に伴う直接排出、スコープ2:外部から購入した電力や熱の使用に伴う間接排出、スコープ3:スコープ1、2を除くバリューチェーン全体からの間接排出
*6 TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):G20の財務大臣・中央銀行総裁からの要請により設置された、民間主導による気候関連財務情報の開示に関するタスクフォース。
(3)資産及び負債・資本の状況分析
総資産残高は、前連結会計年度末比366億円増加の4兆4,463億円となりました。売上債権が回収等により2,331億円減少した一方、現金及び現金同等物が1,927億円、棚卸資産が855億円それぞれ増加したことがその主な要因です。
売上債権の減少は、前連結会計年度の売上計上案件の回収や、新型コロナウイルス感染症の影響による売上高の減少などによるものです。現金及び現金同等物の増加は、新型コロナウイルス感染症の影響による資金収支の悪化に備え、借入の実行により手許流動性を確保したことによるものです。
負債の部は、買入債務が946億円、その他の金融負債が487億円減少した一方、社債、借入金及びリース負債が1,850億円増加したこと等から、負債残高は前連結会計年度末比459億円増加の1兆9,169億円となりました。なお、リース負債を除く借入金・社債残高は前連結会計年度末比1,829億円増加の4,499億円、借入金比率は10.1%(前連結会計年度末比+4.0ポイント)となりました。
資本の部は、親会社株主に帰属する四半期純利益178億円の計上及び株価上昇・為替円安等を背景としたその他の包括利益累計額275億円の増加等はありましたが、配当金の支払い558億円による減少等により、親会社株主に帰属する持分は前連結会計年度末比105億円減少の2兆4,191億円、親会社株主帰属持分比率は54.4%(前連結会計年度末比△0.7ポイント)となりました。
(4)キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間は、営業活動によるキャッシュ・フローが1,335億円の収入となった一方、投資活動によるキャッシュ・フローが552億円の支出となったため、フリー・キャッシュ・フローは783億円の収入となりました。これに対し、財務活動によるキャッシュ・フローは1,123億円の収入となったこと等から、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末比1,927億円増加の7,303億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、四半期純利益の減少等はありましたが、前連結会計年度計上の売上債権の回収進捗に加え、当第1四半期連結累計期間の売上減少に対して資材・経費等の投入を抑制したこと等により、前年同四半期連結累計期間比70億円の収入増加となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得の増加等により、前年同四半期連結累計期間比42億円の支出増加となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加等により、前年同四半期連結累計期間比1,943億円の収入増加となりました。
(5)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、455億円(製造費用へ計上した改良費等を含む)です。
なお、当第1四半期連結累計期間において、三菱電機グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(1)業績
当第1四半期連結累計期間の景気は、中国では、固定資産投資の持ち直しもあり、緩やかに回復しました。一方、日本、米国、欧州では、新型コロナウイルス感染症の影響深刻化により企業部門、家計部門ともに大幅に減速し、総じてみれば経営環境は厳しい状況となりました。なお、足元で各国・地域の経済活動の本格的再開に向けた動きもあって一部に景気底打ちの動きがみられました。
この結果、当第1四半期連結累計期間の業績は、以下のとおりとなりました。
<連結決算概要>
前年第1四半期 連結累計期間 | 当第1四半期 連結累計期間 | 前年第1四半期 連結累計期間比 | |
売上高 | 10,507億円 | 8,581億円 | 1,926億円減 |
営業利益 | 549億円 | 202億円 | 347億円減 |
税引前四半期純利益 | 597億円 | 271億円 | 326億円減 |
親会社株主に帰属する四半期純利益 | 427億円 | 178億円 | 248億円減 |
①売上高
売上高は、全てのセグメントで減収となり、前年同四半期連結累計期間比1,926億円減少の8,581億円となりました。重電システム部門では国内の交通事業や電力事業などが堅調で社会インフラ事業は増加しましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、各国の都市開発、建設が停滞してビルシステム事業が減少しました。産業メカトロニクス部門では各国での新車販売が減速して自動車機器事業が大幅に減少し、家庭電器部門では海外で経済活動が著しく制限されたことに加え、国内での設備投資が抑制されたことなどで空調機器が大幅に減少しました。
<売上高における為替影響額>
前年第1四半期 連結累計期間 期中平均レート | 当第1四半期 連結累計期間 期中平均レート | 当第1四半期 連結累計期間 売上高への影響額 | |
連結合計 | - | - | 約130億円減 |
内、米ドル | 110円 | 107円 | 約20億円減 |
内、ユーロ | 123円 | 119円 | 約30億円減 |
内、人民元 | 16.0円 | 15.1円 | 約50億円減 |
②営業利益
営業利益は、重電システム部門および電子デバイス部門で増益となりましたが、産業メカトロニクス部門、家庭電器部門、情報通信システム部門などの減益により、前年同四半期連結累計期間比347億円減少の202億円となりました。営業利益率は、売上高の減少などにより、前年同四半期連結累計期間比2.8ポイント悪化の2.4%となりました。
売上原価率は、売上高の減少に伴う操業度低下などによる産業メカトロニクス部門や家庭電器部門の悪化に加え、円高の影響もあり、前年同四半期連結累計期間比0.9ポイント悪化しました。販売費及び一般管理費は、経費の抑制などにより前年同四半期連結累計期間比276億円減少しましたが、売上高比率は2.0ポイント悪化しました。その他の損益は、前年同四半期連結累計期間比8億円増加し、売上高比率は0.1ポイント改善しました。
③税引前四半期純利益
税引前四半期純利益は、営業利益の減少に対し、為替差損の減少などによる営業外損益の改善があり、前年同四半期連結累計期間比326億円減少の271億円、売上高比率は3.2%となりました。
④親会社株主に帰属する四半期純利益
親会社株主に帰属する四半期純利益は、税引前四半期純利益の減少などにより、前年同四半期連結累計期間比248億円減少の178億円、売上高比率は2.1%となりました。
事業の種類別セグメントの業績は、次のとおりです。
①重電システム
社会インフラ事業の事業環境は、国内の電力システム改革に伴う需要や国内の公共事業における防災・減災向けの投資などが堅調に推移しました。このような状況の中、同事業の受注高は国内の電力事業や公共事業などの増加、売上高は国内の交通事業や電力事業などの増加により前年同四半期連結累計期間を上回りました。
ビルシステム事業の事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響により、各国で都市開発案件の停滞や建設計画の遅延などが発生し、国内外ともに新設事業を中心に需要が減少しました。このような状況の中、同事業は国内・アジアを中心に減少し、受注高・売上高とも前年同四半期連結累計期間を下回りました。
この結果、部門全体では、売上高は前年同四半期連結累計期間比96%の2,657億円となりました。
営業利益は、売上案件の変動や費用改善などにより、前年同四半期連結累計期間比94億円増加の186億円となりました。
②産業メカトロニクス
FAシステム事業の事業環境は、海外を中心に5G通信ネットワークや半導体などの一部で需要が堅調に推移したことに加え、海外でのマスク製造の増加に伴う需要などがありましたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、国内外の自動車、国内の工作機械関連を中心に需要が減速しました。このような状況の中、同事業は受注高・売上高とも前年同四半期連結累計期間を下回りました。
自動車機器事業の事業環境は、低迷が続いていた新車販売台数が、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、中国を除く全地域でさらに大きく減少しました。このような状況の中、同事業はモーター・インバーターなどの車両電動化関連製品の販売は増加しましたが、その他の自動車用電装品の減少により、受注高・売上高とも前年同四半期連結累計期間を下回りました。
この結果、部門全体では、自動車機器事業の減速を中心に売上高は前年同四半期連結累計期間比71%の2,362億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより、前年同四半期連結累計期間比245億円悪化の34億円の損失となりました。
③情報通信システム
情報システム・サービス事業の事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響で、テレワークに関連したインフラ構築の需要増加などがありましたが、製造業向けを中心にIT関連の投資案件の延期や中止などがありました。このような状況の中、同事業はシステムインテグレーション事業などの減少により、受注高・売上高とも前年同四半期連結累計期間を下回りました。
電子システム事業は、宇宙システム事業の大口案件の減少などにより、受注高・売上高とも前年同四半期連結累計期間を下回りました。
この結果、部門全体では、売上高は前年同四半期連結累計期間比73%の632億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより、前年同四半期連結累計期間比19億円悪化の5億円の損失となりました。
④電子デバイス
電子デバイス事業の事業環境は、高周波光デバイスにおいて、5G通信ネットワークや次世代データセンター関連の堅調な需要が継続しましたが、パワー半導体については、自動車向けの需要が減速しました。このような状況の中、同事業は通信用光デバイスを中心とした高周波光デバイスは増加しましたが、自動車用のパワー半導体や液晶の減少などにより、受注高は前年同四半期連結累計期間を下回り、売上高は前年同四半期連結累計期間比98%の497億円となりました。
営業利益は、機種構成の変動などにより、前年同四半期連結累計期間比24億円増加の30億円となりました。
⑤家庭電器
家庭電器事業の事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う、外出自粛などによる家庭向け需要が一定程度ありましたが、海外での都市封鎖や経済活動の著しい制限、国内での設備投資の抑制などにより、国内外の空調機器市場の需要減少などがありました。このような状況の中、同事業は国内外での空調機器の減少や円高の影響などにより、売上高は前年同四半期連結累計期間比80%の2,373億円となりました。
営業利益は、売上高の減少や円高の影響などにより、前年同四半期連結累計期間比176億円減少の135億円となりました。
⑥その他
売上高は、資材調達・物流の関係会社でのグループ向けの減少などにより、前年同四半期連結累計期間比84%の1,254億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより、前年同四半期連結累計期間比35億円悪化の13億円の損失となりました。
(2)経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
①経営方針
三菱電機グループは、「企業理念*1」及び「7つの行動指針*2」に基づき、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)を企業経営の基本と位置付け、「成長性」「収益性・効率性」「健全性」の3つの視点による「バランス経営」を継続し、強固な経営基盤の確立と持続的成長を追求してまいります。
また、コーポレートステートメント「Changes for the Better」に基づき、変革に挑戦し、常により良い明日への探求を続け、「社会」「顧客」「株主」「従業員」をはじめとするステークホルダーから信頼と満足を得られるよう取り組んでまいります。

②経営環境及び対処すべき課題
世界経済の先行きは、新型コロナウイルス感染症の影響深刻化が景気に著しい悪影響を及ぼしており、各国・地域において経済対策は実施されているものの、本格的な景気回復には至らず、年度を通じた経済成長率は前連結会計年度と比べて大幅に減速することが見込まれます。また、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化すれば、経営環境が一層厳しくなると予想されます。
かかる中、三菱電機グループの「連結売上高5兆円以上」「営業利益率8%以上」としている2020年度成長目標については、需要伸長の停滞、為替変動など外部要因や競争環境の激化、価格下落等の市場環境変化への対応不足などに加え、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、目標を下回る見込みです。継続的に達成すべき経営指標については、「借入金比率15%以下」は維持していますが、「ROE10%以上」については現段階で未達となる見込みであり、早期に回復できるよう努めてまいります。新型コロナウイルス感染症に対しては、雇用維持を基本としつつ、収束までの期間が長期化する場合にも、業績への影響が極小化できるよう対応してまいります。
2020年度は、業績を改善して収益性を伴う「質のよい」成長を実現すべく、グローバル及びグループトータルでの最適な事業推進体制を構築・強化し、日本・欧米・中国における事業競争力を強化するとともに、インド・東南アジア等の成長市場における需要獲得に注力してまいります。そのために、製品・技術等の補完や新地域・新市場での販売網・サービス網の確保、人的資源の獲得を目的とした協業・M&Aなどにも取り組んでまいります。あわせて、資本コストを意識した経営を進めていく中で、開発投資や設備投資などを含む経営資源の最適な配分、「ものづくり力」の強化に資する開発・生産力の強化、開発設計段階からの品質作り込み、間接部門における業務効率化も含むJust In Time改善活動を通じた生産性向上、人材構造適正化及び最適配置、更なる財務体質の改善等に引き続き取り組むとともに、事業別資産効率指標として導入した三菱電機版ROIC*3を継続的に運用し、中長期視点で、総合的な事業効率性の向上を目指してまいります。
新たな中期経営計画の策定にあたっては、オープンイノベーション等の積極活用により事業モデルの変革を加速し、多様化する社会課題の解決に向けたソリューション事業を重点的に強化するとともに、収益力向上と経営資源の有効活用のための事業ポートフォリオの見直しを図り、経営基盤をより一層強化することを基本に考えています。
三菱電機グループは、環境問題や資源・エネルギー問題等の社会課題に対し、製品・システム・サービスを組み合わせたソリューションの提供に取り組み、「持続可能な社会と安心・安全・快適性の両立」をはじめとする価値創出を、ライフ、インダストリー、インフラ、モビリティの4つの領域において、より一層推進してまいります。加えて、全ての企業活動を通じて、世界共通の目標であるSDGsの17の目標達成に貢献してまいります。
価値創出の推進にあたっては、経営基盤(顧客との繋がり、技術、人材、製品、企業文化等)の強化とあらゆる連携の強化による「技術シナジー・事業シナジー」の進化に加え、事業モデルの変革を進めています。


かかる三菱電機グループの取り組みの中で、「環境」については、低炭素社会や循環型社会の形成等に貢献すべく、創立100周年の2021年を目標年とする「環境ビジョン2021」の下、製品使用時におけるCO2排出量の30%削減(2000年度比)と、グループ全体での製品生産時のCO2排出総量の30%削減(1990年度比*4)を目指してまいります。また、2030年に向けてSBTイニシアチブに認定された温室効果ガス削減目標であるスコープ1+2で18%削減(2016年度比)、スコープ3で15%削減(2018年度比)*5の達成を目指すとともに、TCFD*6の提言に基づいた気候変動に係るリスクと機会の開示に向けて取り組んでいます。2021年以降の新たな長期環境経営ビジョンとして策定した「環境ビジョン2050」を踏まえて取り組んでまいります。「倫理・遵法」については、近年三菱電機グループにおいて、様々な課題があることが明らかになっております。社員の心身の健康にかかわる労務問題やお客様との契約を守らずに製品を納入していた品質不適切行為、不正アクセスによる個人情報と企業機密の流出可能性などに対して、再発防止に真摯に取り組んでまいります。労務問題に対しては「三菱電機 職場風土改革プログラム」を中心とした施策により、「風通しよくコミュニケーションができる職場づくり」「メンタルヘルス不調者への適切なケアの徹底」などを進めてまいります。品質不適切行為に対しては、品質意識の一層の醸成に加え、迅速な初動対応を強化してまいります。不正アクセスに対しては、社長直轄の「情報セキュリティ統括室」を中心に、侵入防止、拡散防止、流出防止、グローバル対応、文書管理を強化・徹底してまいります。加えて、コンプライアンス方針の再徹底、内部統制の強化、教育を核としたコンプライアンス活動による一層の意識浸透にグループ全体で真摯に取り組んでまいります。あわせて、コーポレートガバナンス・コードへの適切な対応を図るなど、「コーポレート・ガバナンス」の継続的な向上策に取り組むとともに、適時適切な情報開示に努め、社会・顧客・株主・従業員等とのより高い信頼関係の確立に一層努めてまいります。
新型コロナウイルス感染症に対しては、顧客・取引先をはじめとする関係者の皆さまと従業員・家族の安全・健康を最優先とし、在宅勤務の活用や生産・工事・サービス関連部門でのソーシャルディスタンス確保等、感染防止対策を十分に講じた上で、市民生活の維持に向けた企業としての社会的責任を果たすために必要な事業を継続し、製品の安定供給やサービスの提供、顧客へのご支援等を行ってまいります。
三菱電機グループは、上記施策を着実に展開することにより、更なる企業価値の向上を目指します。
*1 「企業理念」:三菱電機グループは、技術、サービス、創造力の向上を図り、活力とゆとりある社会の実現に貢献する。
*2 「7つの行動指針」:
・「信頼」:社会・顧客・株主・社員・取引先等との高い信頼関係を確立する。
・「品質」:最良の製品・サービス、最高の品質の提供を目指す。
・「技術」:研究開発・技術革新を推進し、新しいマーケットを開拓する。
・「貢献」:グローバル企業として、地域、社会の発展に貢献する。
・「遵法」:全ての企業行動において規範を遵守する。
・「環境」:自然を尊び、環境の保全と向上に努める。
・「発展」:適正な利益を確保し、企業発展の基盤を構築する。
*3 三菱電機版ROIC(投下資本利益率):各事業部門での把握・改善が容易となるように、「資本」「負債」ではなく、資産項目(固定資産・現預金等)に基づいて算出。
*4 削減目標の基準年度:当社単独1990年、国内関係会社2000年、海外関係会社2005年
*5 SBT(Science Based Targets)イニシアチブ: 科学的根拠に基づく二酸化炭素排出量削減目標を立てることを求める、 国連グローバル・コンパクト (UNGC)、世界自然保護基金(WWF)、CDP、世界資源研究所(WRI)による国際的イニシアチブ。スコープ1:自社における燃料使用に伴う直接排出、スコープ2:外部から購入した電力や熱の使用に伴う間接排出、スコープ3:スコープ1、2を除くバリューチェーン全体からの間接排出
*6 TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):G20の財務大臣・中央銀行総裁からの要請により設置された、民間主導による気候関連財務情報の開示に関するタスクフォース。
(3)資産及び負債・資本の状況分析
総資産残高は、前連結会計年度末比366億円増加の4兆4,463億円となりました。売上債権が回収等により2,331億円減少した一方、現金及び現金同等物が1,927億円、棚卸資産が855億円それぞれ増加したことがその主な要因です。
売上債権の減少は、前連結会計年度の売上計上案件の回収や、新型コロナウイルス感染症の影響による売上高の減少などによるものです。現金及び現金同等物の増加は、新型コロナウイルス感染症の影響による資金収支の悪化に備え、借入の実行により手許流動性を確保したことによるものです。
負債の部は、買入債務が946億円、その他の金融負債が487億円減少した一方、社債、借入金及びリース負債が1,850億円増加したこと等から、負債残高は前連結会計年度末比459億円増加の1兆9,169億円となりました。なお、リース負債を除く借入金・社債残高は前連結会計年度末比1,829億円増加の4,499億円、借入金比率は10.1%(前連結会計年度末比+4.0ポイント)となりました。
資本の部は、親会社株主に帰属する四半期純利益178億円の計上及び株価上昇・為替円安等を背景としたその他の包括利益累計額275億円の増加等はありましたが、配当金の支払い558億円による減少等により、親会社株主に帰属する持分は前連結会計年度末比105億円減少の2兆4,191億円、親会社株主帰属持分比率は54.4%(前連結会計年度末比△0.7ポイント)となりました。
(4)キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間は、営業活動によるキャッシュ・フローが1,335億円の収入となった一方、投資活動によるキャッシュ・フローが552億円の支出となったため、フリー・キャッシュ・フローは783億円の収入となりました。これに対し、財務活動によるキャッシュ・フローは1,123億円の収入となったこと等から、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末比1,927億円増加の7,303億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、四半期純利益の減少等はありましたが、前連結会計年度計上の売上債権の回収進捗に加え、当第1四半期連結累計期間の売上減少に対して資材・経費等の投入を抑制したこと等により、前年同四半期連結累計期間比70億円の収入増加となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得の増加等により、前年同四半期連結累計期間比42億円の支出増加となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加等により、前年同四半期連結累計期間比1,943億円の収入増加となりました。
(5)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、455億円(製造費用へ計上した改良費等を含む)です。
なお、当第1四半期連結累計期間において、三菱電機グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。