有価証券報告書-第150期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
三菱電機グループが当連結会計年度中にとった主な施策及び翌連結会計年度以降に向けての施策については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」などに記載のとおりですが、これらの施策の実施状況を踏まえた当連結会計年度に関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は以下のとおりです。
(1) 業績概要
当連結会計年度の景気は、中国では、景気対策の効果もあって公共投資を中心に固定資産投資が持ち直すなど、回復傾向が継続しました。また、日本、米国、欧州などでは、第1四半期連結会計期間に新型コロナウイルス感染症の影響深刻化による大幅な景気減速がみられたのち、個人消費は感染拡大の状況等により回復ペースにばらつきはあるものの、企業部門は総じてみれば持ち直しました。
かかる中、三菱電機グループは、これまでの事業競争力強化・経営体質強化に加え、自らの強みに根ざした成長戦略の推進に、従来以上に軸足を置いて取り組んでまいりました。
この結果、当連結会計年度の業績は、以下のとおりとなりました。
<連結決算概要>
①売上高
売上高は、下期では前連結会計年度を上回りましたが、上期を中心に新型コロナウイルス感染症が大きく影響し、全てのセグメントで減収となり、前連結会計年度比2,710億円減少の4兆1,914億円となりました。産業メカトロニクス部門では、FAシステム事業は国内外の自動車関連や国内の工作機械・建屋関連の需要停滞が影響した一方で、5G関連や半導体関連需要の拡大により前連結会計年度並みとなり、自動車機器事業は中国を除く全地域での新車販売台数の減少影響により減少しました。家庭電器部門では、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う在宅時間の増加などによる家庭向け需要がありましたが、海外での経済活動の制限や国内外での設備投資抑制などの影響により、一部空調機器などが減少しました。
<売上高における為替影響額>
②営業利益
営業利益は、下期では前連結会計年度を上回りましたが、重電システム部門を除く全てのセグメントで減益となり、前連結会計年度比294億円減少の2,301億円となりました。営業利益率は、売上高の減少などにより、前連結会計年度比0.3ポイント悪化の5.5%となりました。
売上原価率は、売上案件の変動などにより重電システム部門での改善はありましたが、売上高の減少に伴う操業度低下などによる産業メカトロニクス部門の悪化などにより、前連結会計年度比0.3ポイント悪化しました。販売費及び一般管理費は、経費の抑制などにより前連結会計年度比634億円減少し、売上高比率は前連結会計年度並みとなりました。その他の損益は、固定資産減損損失の増加などにより前連結会計年度比49億円減少し、売上高比率は前連結会計年度並みとなりました。
③税引前当期純利益
税引前当期純利益は、営業利益の減少に対し、為替差損益の改善などによる営業外損益の改善があり、前連結会計年度比232億円減少の2,587億円、売上高比率は6.2%となりました。
④親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、税引前当期純利益の減少に加え、前連結会計年度に海外の関係会社再編に伴う法人所得税費用の減少があった影響などにより、前連結会計年度比287億円減少の1,931億円、売上高比率は4.6%となりました。
なお、ROEは前連結会計年度比1.7ポイント悪化の7.5%となりました。
事業の種類別セグメントの業績は、次のとおりです。
① 重電システム
社会インフラ事業の事業環境は、国内の公共事業における防災・減災向けの投資や国内の電力システム改革に伴う需要などが堅調に推移しましたが、国内外で発電関連の需要が減少し、新型コロナウイルス感染症の影響を受け国内の鉄道各社の設備投資計画に見直しの動きがみられました。このような状況の中、同事業の受注高は、国内の交通・電力事業などの減少により前連結会計年度を下回りましたが、売上高は国内の電力事業の既受注案件の進捗や国内の公共事業の増加などにより前連結会計年度を上回りました。
ビルシステム事業の事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響による市況低迷を受け、各国で建設計画の遅延や設備投資計画の見直しなどが発生し、国内外ともに新設・リニューアル事業を中心に需要が減少しました。このような状況の中、同事業はアジア・国内を中心に減少し、受注高・売上高ともに前連結会計年度を下回りました。
この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比97%の1兆2,702億円となりました。
営業利益は、売上案件の変動や費用改善などにより、前連結会計年度比266億円増加の1,089億円となりました。
② 産業メカトロニクス
FAシステム事業の事業環境は、国内外の自動車関連、国内の工作機械・建屋関連を中心に需要の停滞が続きましたが、海外を中心に5G関連や半導体関連の需要が拡大したことに加え、中国でのマスク製造の増加に伴う需要などがありました。このような状況の中、同事業の受注高は半導体・リチウムイオンバッテリー関連の需要の増加などにより前連結会計年度を上回り、売上高は前連結会計年度並みとなりました。
自動車機器事業の事業環境は、上期を中心に新型コロナウイルス感染症の影響を受け、新車販売台数が中国を除く全地域で減少しました。このような状況の中、同事業はモーター・インバーターなどの車両電動化関連製品の販売は増加しましたが、その他の自動車用電装品の減少により、受注高・売上高とも前連結会計年度を下回りました。
この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比93%の1兆2,485億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより、前連結会計年度比283億円減少の405億円となりました。
③ 情報通信システム
情報システム・サービス事業の事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、製造業向けを中心にシステム開発案件の延期や中止などがありました。このような状況の中、同事業は、システムインテグレーション事業などの減少により、受注高・売上高とも前連結会計年度を下回りました。
電子システム事業は、防衛システム事業の大口案件の減少などにより、受注高・売上高とも前連結会計年度を下回りました。
この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比83%の3,801億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより、前連結会計年度比100億円減少の164億円となりました。
④ 電子デバイス
電子デバイス事業の事業環境は、高周波光デバイスにおいて、次世代データセンター関連などの堅調な需要が継続しましたが、パワー半導体については、電鉄・産業向けの需要が減速しました。このような状況の中、同事業は受注高が自動車向けのパワー半導体の増加などにより前連結会計年度を上回りましたが、売上高は通信用光デバイスを中心とした高周波光デバイスは増加した一方で液晶や産業・電鉄向けのパワー半導体の減少などにより、前連結会計年度比98%の2,052億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより、前連結会計年度比24億円減少の62億円となりました。
⑤ 家庭電器
家庭電器事業の事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う在宅時間の増加などによる家庭向け需要がありましたが、上期を中心に海外での都市封鎖や経済活動の著しい制限、国内外での設備投資の抑制などにより、国内外の一部空調機器の需要減少などがありました。このような状況の中、同事業は一部空調機器の減少などにより、売上高は前連結会計年度比95%の1兆383億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより前連結会計年度比24億円減少の757億円となりました。
⑥ その他
売上高は、サービス・エンジニアリング部門の関係会社での減少などにより、前連結会計年度比91%の6,030億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより、前連結会計年度比124億円減少の136億円となりました。
顧客の所在地別の売上高の状況は、次のとおりです。
① 日本
社会インフラ事業を除く全ての事業の減少などにより、前連結会計年度比93%の2兆4,308億円となりました。
② 北米
自動車機器事業の減少などにより、前連結会計年度比88%の3,792億円となりました。
③ アジア
ビルシステム事業及び空調機器の減少などはありましたが、FAシステム事業の増加などにより、前連結会計年度比101%の9,265億円となりました。
アジアのうち中国については、FAシステム事業、自動車機器事業の増加などにより、前連結会計年度比115%の4,818億円となりました。
④ 欧州
自動車機器事業の減少などにより、前連結会計年度比90%の3,916億円となりました。
⑤ その他
その他の地域にはオセアニアなどが含まれており、前連結会計年度並みの631億円となりました。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 上記金額は、仕込製品については仕切予定価格、注文製品については受注価格で示しています。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 「家庭電器」「その他」については受注生産形態をとらない製品が多いため、受注規模を金額で示していません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 各種類別セグメントの金額には、セグメント間の内部売上高(振替高)を含めて表示しています。
(3) 資産及び負債・資本の状況分析
総資産残高は、前連結会計年度末比3,881億円増加の4兆7,979億円となりました。現金及び現金同等物が2,298億円、その他の非流動資産が1,249億円、その他の金融資産が861億円増加したことがその主な要因です。運転資本は、売上債権と契約資産の合計で630億円減少した一方、棚卸資産が498億円増加しました。
現金及び現金同等物の増加は、当連結会計年度の売上減少に伴う売上債権の回収減少を上回る資材・経費等の支出減少によるものです。その他の非流動資産の増加は、株価上昇等に伴う退職給付に係る資産の増加等によるものです。その他の金融資産の増加は、株価上昇等に伴う有価証券の残高増加等によるものです。
負債の部は、社債、借入金及びリース負債が115億円減少した一方、未払費用が373億円、契約負債が268億円それぞれ増加したこと等から、負債残高は前連結会計年度末比563億円増加の1兆9,273億円となりました。なお、リース負債を除く借入金・社債残高は前連結会計年度末比181億円減少の2,488億円、借入金比率は5.2%(前連結会計年度末比△0.9ポイント)となりました。
資本の部は、配当金の支払い772億円による減少等はありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益1,931億円の計上及び株価上昇・為替円安等を背景としたその他の包括利益累計額1,296億円の増加等により、親会社株主に帰属する持分は前連結会計年度末比3,245億円増加の2兆7,542億円、親会社株主帰属持分比率は57.4%(前連結会計年度末比+2.3ポイント)となりました。
⦅財政状態計算書関連指標⦆
(注) 1 売掛債権回転率は、売上債権と契約資産の合計より算出しています。
2 借入金比率は、リース負債を除く借入金・社債残高より算出しています。
(4) 資本の財源及び資金の流動性
①財務戦略に関する基本的な考え方
三菱電機グループは、健全な財務体質を維持するため、業績向上による資金収支の改善に加え、棚卸資産の縮減活動、売掛債権の回収促進といった資産の効率化、グループ内資金の更なる有効活用による資金の効率化に引き続き取り組んでまいります。
また、2025年度に向けた新たな中期経営計画におけるキャピタル・アロケーション方針のもと、成長投資を最優先としつつ、利益成長を通じた株主還元強化を踏まえた資本政策の実行により、更なる資本効率の向上を図ってまいります。
なお、成長戦略を進めて行く中で、必要となります設備投資、研究開発、M&A等の資金につきましては、重点成長事業を中心とした営業活動において創出されたキャッシュ・フローを源泉に、自己資金の活用を図りつつ、必要に応じて金融機関等から機動的に資金調達を行ってまいります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度は、営業活動によるキャッシュ・フローが5,421億円の収入となった一方、投資活動によるキャッシュ・フローが1,765億円の支出となったため、フリー・キャッシュ・フローは3,655億円の収入超過となりました。これに対し、財務活動によるキャッシュ・フローは1,573億円の支出となったこと等から、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末比2,298億円増加の7,674億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、当期純利益の減少はありましたが、年間を通じた資材・経費等の投入抑制と、下期後半以降の受注回復対応の買入債務等未払いの増加もあり、前連結会計年度比1,462億円の収入増加となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得の減少等により、前連結会計年度比274億円の支出減少となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度比8億円の支出増加となりました。
③財源及び流動性
運転資金需要のうち主なものは、生産に必要な材料購入費の他、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であり、投資を目的とした資金需要は、設備投資、M&A等によるものです。
短期運転資金は、自己資金と金融機関からの短期借入等により、設備投資や長期運転資金は、自己資金の活用を図りつつ金融機関からの長期借入及び社債により調達を行っています。
なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は7,674億円、社債、借入金及びリース負債残高は3,654億円です。社債、借入金及びリース負債の内訳は、短期借入金が720億円、社債及び長期借入金が1,768億円、リース負債が1,165億円です。
三菱電機グループは、上記施策を着実に展開することにより、更なる企業価値の向上を目指します。
(5) 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断
当社の連結財務諸表はIFRSに基づいて作成しています。これらの連結財務諸表の作成にあたって、経営者は、資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を使用する必要があります。実際の業績は、これらの見積りとは異なる場合があります。当社の連結財務諸表の金額に重要な影響を与える可能性のある主要な会計上の見積り及び仮定は以下のとおりです。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関しては、事業の特性や各国・地域により足元の状況は異なるものの、長期的に重要な影響はないと仮定し、「有形固定資産、のれん及び無形資産の回収可能価額」等の会計上の見積りを行っています。当社は、上記の仮定は期末日時点における最善の見積りであると判断していますが、想定以上に新型コロナウイルス感染症の影響が拡大した場合は連結財務諸表の金額に重要な影響を与える可能性があります。
①一定の期間にわたり履行義務を充足する契約における見積総費用
重電システム部門及び情報通信システム部門における一定の要件を満たす特定の工事請負契約については、当該工事請負契約の当期末時点の進捗度に応じて収益を計上しています。進捗度は、当期までの発生費用を工事完了までの見積総費用と比較することにより測定しています。
見積総費用は、契約ごとに当該工事請負契約の契約内容、要求仕様、技術面における新規開発要素の有無、過去の類似契約における発生原価実績などのさまざまな情報に基づいて算定しています。
工事請負契約は、契約仕様や作業内容が顧客の要求に基づき定められており契約内容の個別性が強く、また比較的長期にわたる契約が多いことから、作業工程の遅れ等による当初見積りに対する原価の増加や、新規開発技術を利用した工事遂行における当初想定していない事象の発生による原価の変動など、工事の進行途中の環境の変化によって、見積総費用が変動することがあります。
経営者は、四半期ごとに当四半期までの発生費用と事前の見積りとの比較や、その時点での工事の進捗状況等を踏まえた最新の情報に基づいて見直した工事請負契約の見積総費用を妥当なものと考えていますが、将来の状況の変化によって見積りと実績が乖離した場合は、三菱電機グループが認識する収益の金額に影響を与える可能性があります。
②引当金の認識及び測定
受注工事損失引当金は、重電システム部門及び情報通信システム部門における工事請負契約において、当該工事の見積総費用が請負受注金額を超える可能性が高く、かつ予想される損失額を合理的に見積もることができる場合に、将来の損失見込額を引当金として計上しています。当連結会計年度末における受注工事損失引当金の残高は、40,082百万円です。
見積総費用は、契約ごとに当該工事請負契約の契約内容、要求仕様、技術面における新規開発要素の有無、過去の類似契約における発生原価実績などのさまざまな情報に基づいて算定しています。
工事請負契約は、契約仕様や作業内容が顧客の要求に基づき定められており契約内容の個別性が強く、また比較的長期にわたる契約が多いことから、作業工程の遅れ等による当初見積りに対する原価の増加や、新規開発技術を利用した工事遂行における当初想定していない事象の発生による原価の変動など、工事の進行途中の環境の変化によって、見積総費用が変動することがあります。
経営者は、四半期ごとに当四半期までの発生費用と事前の見積りとの比較や、その時点での工事の進捗状況等を踏まえた最新の情報に基づいて見直した将来工事損失見込額を妥当なものと考えていますが、将来の状況の変化によって見積りと実績が乖離した場合は、三菱電機グループの損益に影響を与える可能性があります。
製造上やその他の不具合に対し、製品の種類や販売地域及びその他の要因ごとに定められた期間又は一定の使用条件に応じて製品保証を行っており、期末日現在において将来の費用発生の可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができる場合に、製品保証引当金を計上しています。将来の発生費用は、主に過去の無償工事実績及び補修費用に関する現状に基づいて見積っています。当連結会計年度末における製品保証引当金の残高は、52,696百万円です。
経営者は、発生費用の見積り額を妥当なものと考えていますが、将来の状況の変化によって見積りと実績が乖離した場合は、三菱電機グループの損益に影響を与える可能性があります。
③有形固定資産の回収可能価額
有形固定資産は、減損の兆候の有無を判断しており、減損の兆候が存在する場合は、減損テストを実施しています。
資産又は資金生成単位の見積回収可能価額は、使用価値と売却費用控除後の公正価値のうちいずれか大きい方の金額としています。使用価値の算定における見積将来キャッシュ・フローは、貨幣の時間的価値及び当該資産に固有のリスクを反映した税引前割引率を用いて現在価値に割り引いています。資産又は資金生成単位の帳簿価額が見積回収可能価額を超過する場合には、当期の純損益において減損損失を認識しています。
経営者は、使用価値の算定における見積将来キャッシュ・フロー及び売却費用控除後の公正価値の見積りはいずれも妥当なものと考えていますが、三菱電機グループのビジネスや前提条件の変化等によって見積りが変更となることにより資産又は資金生成単位の見積回収可能価額が変動し、結果として、将来において有形固定資産の減損損失の認識に影響を与える可能性があります。
④のれん及び無形資産の回収可能価額
耐用年数を確定できる無形資産は、減損の兆候の有無を判断しており、減損の兆候が存在する場合は、減損テストを実施しています。のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については少なくとも1年に一度、同時期に減損テストを実施しています。
重要なのれんは家庭電器部門に配分されたのれんであり、減損テストの回収可能価額は、主として経営者が承認した今後5年度分の事業計画及び成長率を基礎としたキャッシュ・フローの見積り額を現在価値に割り引いた使用価値で算定しています。割引率は、税引前の加重平均資本コストを基に算定しており、当連結会計年度における割引率は、9.8%です。成長率は、のれんが配分されている資金生成単位グループが属する市場の長期期待成長率を参考に算定しており、当連結会計年度における成長率は0.8%です。
経営者は、事業計画や成長率を基礎としたキャッシュ・フローの見積り額や割引率は妥当なものと考えていますが、三菱電機グループのビジネスや前提条件の変化等によってキャッシュ・フローの見積り額や割引率が変更となることにより使用価値が変動し、結果として、将来においてのれん及び無形資産の減損損失の認識に影響を与える可能性があります。
⑤繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、将来減算一時差異、未使用の税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除のうち、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。繰延税金資産は期末日に見直し、税務便益が実現する可能性が高くない場合は、繰延税金資産の計上額を減額しています。
三菱電機グループは繰延税金資産の実現可能性の評価にあたり、繰延税金資産の一部又は全部が実現する可能性が実現しない可能性より高いかどうかを考慮しています。繰延税金資産の実現は、最終的には将来減算一時差異、未使用の税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除が減算可能な期間における将来課税所得によって決定されます。その評価にあたり、予定される繰延税金負債の戻入、予測される将来課税所得及び税務戦略を考慮しています。
経営者は、当連結会計年度末の認識可能と判断された繰延税金資産が実現する蓋然性は高いと考えていますが、繰延期間における将来の見積課税所得が減少した場合には、実現する可能性が高いと考えられる繰延税金資産は減少することとなります。
⑥確定給付制度債務の測定
三菱電機グループは、従業員を対象とする従業員非拠出制及び拠出制の確定給付型退職給付制度を採用しています。従業員の確定給付制度債務は、割引率、退職率、一時金選択率や死亡率など年金数理計算上の基礎率に基づき算定しています。確定給付制度債務の現在価値及び制度資産の公正価値の再測定による変動は、発生した期においてその他の包括利益として一括認識し、直ちに利益剰余金に振り替えています。
割引率は、将来の毎年度の給付支払見込日までの期間を基に割引期間を設定し、割引期間に対応した期末日時点の優良社債の市場利回りに基づき算定しており、当連結会計年度末の割引率は0.6%です。
経営者は、年金数理計算上の基礎率の算定は妥当なものと考えていますが、実績との差異または基礎率自体の変更により、確定給付制度債務の金額に影響を与える可能性があります。
⑦金融商品の公正価値
三菱電機グループは、主に取引関係維持・強化を目的として保有している資本性金融商品をその他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産に指定しています。このうち非上場株式の公正価値については、投資先の純資産等に関する定量的な情報及び投資先の将来キャッシュ・フローに関する予想等を総合的に勘案して算定しています。
経営者は、公正価値の見積りは妥当なものと考えていますが、投資先の業績や将来キャッシュ・フロー等の見積りの前提条件が変動した場合は、三菱電機グループのその他の包括利益の金額に影響を与える可能性があります。
(1) 業績概要
当連結会計年度の景気は、中国では、景気対策の効果もあって公共投資を中心に固定資産投資が持ち直すなど、回復傾向が継続しました。また、日本、米国、欧州などでは、第1四半期連結会計期間に新型コロナウイルス感染症の影響深刻化による大幅な景気減速がみられたのち、個人消費は感染拡大の状況等により回復ペースにばらつきはあるものの、企業部門は総じてみれば持ち直しました。
かかる中、三菱電機グループは、これまでの事業競争力強化・経営体質強化に加え、自らの強みに根ざした成長戦略の推進に、従来以上に軸足を置いて取り組んでまいりました。
この結果、当連結会計年度の業績は、以下のとおりとなりました。
<連結決算概要>
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 前連結会計年度比 | |
売上高 | 44,625億円 | 41,914億円 | 2,710億円減 |
営業利益 | 2,596億円 | 2,301億円 | 294億円減 |
税引前当期純利益 | 2,819億円 | 2,587億円 | 232億円減 |
親会社株主に帰属 する当期純利益 | 2,218億円 | 1,931億円 | 287億円減 |
①売上高
売上高は、下期では前連結会計年度を上回りましたが、上期を中心に新型コロナウイルス感染症が大きく影響し、全てのセグメントで減収となり、前連結会計年度比2,710億円減少の4兆1,914億円となりました。産業メカトロニクス部門では、FAシステム事業は国内外の自動車関連や国内の工作機械・建屋関連の需要停滞が影響した一方で、5G関連や半導体関連需要の拡大により前連結会計年度並みとなり、自動車機器事業は中国を除く全地域での新車販売台数の減少影響により減少しました。家庭電器部門では、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う在宅時間の増加などによる家庭向け需要がありましたが、海外での経済活動の制限や国内外での設備投資抑制などの影響により、一部空調機器などが減少しました。
<売上高における為替影響額>
前連結会計年度 期中平均レート | 当連結会計年度 期中平均レート | 当連結会計年度 売上高への影響額 | |
連結合計 | - | - | 約130億円減 |
内、米ドル | 109円 | 106円 | 約130億円減 |
内、ユーロ | 121円 | 124円 | 約80億円増 |
内、人民元 | 15.6円 | 15.7円 | 約10億円増 |
②営業利益
営業利益は、下期では前連結会計年度を上回りましたが、重電システム部門を除く全てのセグメントで減益となり、前連結会計年度比294億円減少の2,301億円となりました。営業利益率は、売上高の減少などにより、前連結会計年度比0.3ポイント悪化の5.5%となりました。
売上原価率は、売上案件の変動などにより重電システム部門での改善はありましたが、売上高の減少に伴う操業度低下などによる産業メカトロニクス部門の悪化などにより、前連結会計年度比0.3ポイント悪化しました。販売費及び一般管理費は、経費の抑制などにより前連結会計年度比634億円減少し、売上高比率は前連結会計年度並みとなりました。その他の損益は、固定資産減損損失の増加などにより前連結会計年度比49億円減少し、売上高比率は前連結会計年度並みとなりました。
③税引前当期純利益
税引前当期純利益は、営業利益の減少に対し、為替差損益の改善などによる営業外損益の改善があり、前連結会計年度比232億円減少の2,587億円、売上高比率は6.2%となりました。
④親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、税引前当期純利益の減少に加え、前連結会計年度に海外の関係会社再編に伴う法人所得税費用の減少があった影響などにより、前連結会計年度比287億円減少の1,931億円、売上高比率は4.6%となりました。
なお、ROEは前連結会計年度比1.7ポイント悪化の7.5%となりました。
事業の種類別セグメントの業績は、次のとおりです。
① 重電システム
社会インフラ事業の事業環境は、国内の公共事業における防災・減災向けの投資や国内の電力システム改革に伴う需要などが堅調に推移しましたが、国内外で発電関連の需要が減少し、新型コロナウイルス感染症の影響を受け国内の鉄道各社の設備投資計画に見直しの動きがみられました。このような状況の中、同事業の受注高は、国内の交通・電力事業などの減少により前連結会計年度を下回りましたが、売上高は国内の電力事業の既受注案件の進捗や国内の公共事業の増加などにより前連結会計年度を上回りました。
ビルシステム事業の事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響による市況低迷を受け、各国で建設計画の遅延や設備投資計画の見直しなどが発生し、国内外ともに新設・リニューアル事業を中心に需要が減少しました。このような状況の中、同事業はアジア・国内を中心に減少し、受注高・売上高ともに前連結会計年度を下回りました。
この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比97%の1兆2,702億円となりました。
営業利益は、売上案件の変動や費用改善などにより、前連結会計年度比266億円増加の1,089億円となりました。
② 産業メカトロニクス
FAシステム事業の事業環境は、国内外の自動車関連、国内の工作機械・建屋関連を中心に需要の停滞が続きましたが、海外を中心に5G関連や半導体関連の需要が拡大したことに加え、中国でのマスク製造の増加に伴う需要などがありました。このような状況の中、同事業の受注高は半導体・リチウムイオンバッテリー関連の需要の増加などにより前連結会計年度を上回り、売上高は前連結会計年度並みとなりました。
自動車機器事業の事業環境は、上期を中心に新型コロナウイルス感染症の影響を受け、新車販売台数が中国を除く全地域で減少しました。このような状況の中、同事業はモーター・インバーターなどの車両電動化関連製品の販売は増加しましたが、その他の自動車用電装品の減少により、受注高・売上高とも前連結会計年度を下回りました。
この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比93%の1兆2,485億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより、前連結会計年度比283億円減少の405億円となりました。
③ 情報通信システム
情報システム・サービス事業の事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、製造業向けを中心にシステム開発案件の延期や中止などがありました。このような状況の中、同事業は、システムインテグレーション事業などの減少により、受注高・売上高とも前連結会計年度を下回りました。
電子システム事業は、防衛システム事業の大口案件の減少などにより、受注高・売上高とも前連結会計年度を下回りました。
この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比83%の3,801億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより、前連結会計年度比100億円減少の164億円となりました。
④ 電子デバイス
電子デバイス事業の事業環境は、高周波光デバイスにおいて、次世代データセンター関連などの堅調な需要が継続しましたが、パワー半導体については、電鉄・産業向けの需要が減速しました。このような状況の中、同事業は受注高が自動車向けのパワー半導体の増加などにより前連結会計年度を上回りましたが、売上高は通信用光デバイスを中心とした高周波光デバイスは増加した一方で液晶や産業・電鉄向けのパワー半導体の減少などにより、前連結会計年度比98%の2,052億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより、前連結会計年度比24億円減少の62億円となりました。
⑤ 家庭電器
家庭電器事業の事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う在宅時間の増加などによる家庭向け需要がありましたが、上期を中心に海外での都市封鎖や経済活動の著しい制限、国内外での設備投資の抑制などにより、国内外の一部空調機器の需要減少などがありました。このような状況の中、同事業は一部空調機器の減少などにより、売上高は前連結会計年度比95%の1兆383億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより前連結会計年度比24億円減少の757億円となりました。
⑥ その他
売上高は、サービス・エンジニアリング部門の関係会社での減少などにより、前連結会計年度比91%の6,030億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより、前連結会計年度比124億円減少の136億円となりました。
顧客の所在地別の売上高の状況は、次のとおりです。
① 日本
社会インフラ事業を除く全ての事業の減少などにより、前連結会計年度比93%の2兆4,308億円となりました。
② 北米
自動車機器事業の減少などにより、前連結会計年度比88%の3,792億円となりました。
③ アジア
ビルシステム事業及び空調機器の減少などはありましたが、FAシステム事業の増加などにより、前連結会計年度比101%の9,265億円となりました。
アジアのうち中国については、FAシステム事業、自動車機器事業の増加などにより、前連結会計年度比115%の4,818億円となりました。
④ 欧州
自動車機器事業の減少などにより、前連結会計年度比90%の3,916億円となりました。
⑤ その他
その他の地域にはオセアニアなどが含まれており、前連結会計年度並みの631億円となりました。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
事業の種類別セグメントの名称 | 生産高(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
重電システム | 888,152 | 102 |
産業メカトロニクス | 1,139,911 | 94 |
情報通信システム | 292,577 | 76 |
電子デバイス | 165,517 | 95 |
家庭電器 | 761,739 | 97 |
その他 | 1,365 | 93 |
計 | 3,249,261 | 95 |
(注) 上記金額は、仕込製品については仕切予定価格、注文製品については受注価格で示しています。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
事業の種類別セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
重電システム | 1,167,995 | 87 |
産業メカトロニクス | 1,309,631 | 96 |
情報通信システム | 380,229 | 85 |
電子デバイス | 226,047 | 102 |
(注) 「家庭電器」「その他」については受注生産形態をとらない製品が多いため、受注規模を金額で示していません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
事業の種類別セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
重電システム | 1,270,287 | 97 |
産業メカトロニクス | 1,248,566 | 93 |
情報通信システム | 380,159 | 83 |
電子デバイス | 205,260 | 98 |
家庭電器 | 1,038,310 | 95 |
その他 | 603,089 | 91 |
消去 | △554,238 | - |
計 | 4,191,433 | 94 |
(注) 各種類別セグメントの金額には、セグメント間の内部売上高(振替高)を含めて表示しています。
(3) 資産及び負債・資本の状況分析
総資産残高は、前連結会計年度末比3,881億円増加の4兆7,979億円となりました。現金及び現金同等物が2,298億円、その他の非流動資産が1,249億円、その他の金融資産が861億円増加したことがその主な要因です。運転資本は、売上債権と契約資産の合計で630億円減少した一方、棚卸資産が498億円増加しました。
現金及び現金同等物の増加は、当連結会計年度の売上減少に伴う売上債権の回収減少を上回る資材・経費等の支出減少によるものです。その他の非流動資産の増加は、株価上昇等に伴う退職給付に係る資産の増加等によるものです。その他の金融資産の増加は、株価上昇等に伴う有価証券の残高増加等によるものです。
負債の部は、社債、借入金及びリース負債が115億円減少した一方、未払費用が373億円、契約負債が268億円それぞれ増加したこと等から、負債残高は前連結会計年度末比563億円増加の1兆9,273億円となりました。なお、リース負債を除く借入金・社債残高は前連結会計年度末比181億円減少の2,488億円、借入金比率は5.2%(前連結会計年度末比△0.9ポイント)となりました。
資本の部は、配当金の支払い772億円による減少等はありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益1,931億円の計上及び株価上昇・為替円安等を背景としたその他の包括利益累計額1,296億円の増加等により、親会社株主に帰属する持分は前連結会計年度末比3,245億円増加の2兆7,542億円、親会社株主帰属持分比率は57.4%(前連結会計年度末比+2.3ポイント)となりました。
⦅財政状態計算書関連指標⦆
前連結会計年度末 | 当連結会計年度末 | 前連結会計年度末比 | |
売掛債権回転率 | 3.59回転 | 3.55回転 | 0.04回転減 |
棚卸資産回転率 | 6.43回転 | 5.64回転 | 0.79回転減 |
借入金比率 | 6.1% | 5.2% | 0.9ポイント減 |
親会社株主帰属持分比率 | 55.1% | 57.4% | 2.3ポイント増 |
(注) 1 売掛債権回転率は、売上債権と契約資産の合計より算出しています。
2 借入金比率は、リース負債を除く借入金・社債残高より算出しています。
(4) 資本の財源及び資金の流動性
①財務戦略に関する基本的な考え方
三菱電機グループは、健全な財務体質を維持するため、業績向上による資金収支の改善に加え、棚卸資産の縮減活動、売掛債権の回収促進といった資産の効率化、グループ内資金の更なる有効活用による資金の効率化に引き続き取り組んでまいります。
また、2025年度に向けた新たな中期経営計画におけるキャピタル・アロケーション方針のもと、成長投資を最優先としつつ、利益成長を通じた株主還元強化を踏まえた資本政策の実行により、更なる資本効率の向上を図ってまいります。
なお、成長戦略を進めて行く中で、必要となります設備投資、研究開発、M&A等の資金につきましては、重点成長事業を中心とした営業活動において創出されたキャッシュ・フローを源泉に、自己資金の活用を図りつつ、必要に応じて金融機関等から機動的に資金調達を行ってまいります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度は、営業活動によるキャッシュ・フローが5,421億円の収入となった一方、投資活動によるキャッシュ・フローが1,765億円の支出となったため、フリー・キャッシュ・フローは3,655億円の収入超過となりました。これに対し、財務活動によるキャッシュ・フローは1,573億円の支出となったこと等から、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末比2,298億円増加の7,674億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、当期純利益の減少はありましたが、年間を通じた資材・経費等の投入抑制と、下期後半以降の受注回復対応の買入債務等未払いの増加もあり、前連結会計年度比1,462億円の収入増加となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得の減少等により、前連結会計年度比274億円の支出減少となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度比8億円の支出増加となりました。
③財源及び流動性
運転資金需要のうち主なものは、生産に必要な材料購入費の他、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であり、投資を目的とした資金需要は、設備投資、M&A等によるものです。
短期運転資金は、自己資金と金融機関からの短期借入等により、設備投資や長期運転資金は、自己資金の活用を図りつつ金融機関からの長期借入及び社債により調達を行っています。
なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は7,674億円、社債、借入金及びリース負債残高は3,654億円です。社債、借入金及びリース負債の内訳は、短期借入金が720億円、社債及び長期借入金が1,768億円、リース負債が1,165億円です。
三菱電機グループは、上記施策を着実に展開することにより、更なる企業価値の向上を目指します。
(5) 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断
当社の連結財務諸表はIFRSに基づいて作成しています。これらの連結財務諸表の作成にあたって、経営者は、資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を使用する必要があります。実際の業績は、これらの見積りとは異なる場合があります。当社の連結財務諸表の金額に重要な影響を与える可能性のある主要な会計上の見積り及び仮定は以下のとおりです。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関しては、事業の特性や各国・地域により足元の状況は異なるものの、長期的に重要な影響はないと仮定し、「有形固定資産、のれん及び無形資産の回収可能価額」等の会計上の見積りを行っています。当社は、上記の仮定は期末日時点における最善の見積りであると判断していますが、想定以上に新型コロナウイルス感染症の影響が拡大した場合は連結財務諸表の金額に重要な影響を与える可能性があります。
①一定の期間にわたり履行義務を充足する契約における見積総費用
重電システム部門及び情報通信システム部門における一定の要件を満たす特定の工事請負契約については、当該工事請負契約の当期末時点の進捗度に応じて収益を計上しています。進捗度は、当期までの発生費用を工事完了までの見積総費用と比較することにより測定しています。
見積総費用は、契約ごとに当該工事請負契約の契約内容、要求仕様、技術面における新規開発要素の有無、過去の類似契約における発生原価実績などのさまざまな情報に基づいて算定しています。
工事請負契約は、契約仕様や作業内容が顧客の要求に基づき定められており契約内容の個別性が強く、また比較的長期にわたる契約が多いことから、作業工程の遅れ等による当初見積りに対する原価の増加や、新規開発技術を利用した工事遂行における当初想定していない事象の発生による原価の変動など、工事の進行途中の環境の変化によって、見積総費用が変動することがあります。
経営者は、四半期ごとに当四半期までの発生費用と事前の見積りとの比較や、その時点での工事の進捗状況等を踏まえた最新の情報に基づいて見直した工事請負契約の見積総費用を妥当なものと考えていますが、将来の状況の変化によって見積りと実績が乖離した場合は、三菱電機グループが認識する収益の金額に影響を与える可能性があります。
②引当金の認識及び測定
受注工事損失引当金は、重電システム部門及び情報通信システム部門における工事請負契約において、当該工事の見積総費用が請負受注金額を超える可能性が高く、かつ予想される損失額を合理的に見積もることができる場合に、将来の損失見込額を引当金として計上しています。当連結会計年度末における受注工事損失引当金の残高は、40,082百万円です。
見積総費用は、契約ごとに当該工事請負契約の契約内容、要求仕様、技術面における新規開発要素の有無、過去の類似契約における発生原価実績などのさまざまな情報に基づいて算定しています。
工事請負契約は、契約仕様や作業内容が顧客の要求に基づき定められており契約内容の個別性が強く、また比較的長期にわたる契約が多いことから、作業工程の遅れ等による当初見積りに対する原価の増加や、新規開発技術を利用した工事遂行における当初想定していない事象の発生による原価の変動など、工事の進行途中の環境の変化によって、見積総費用が変動することがあります。
経営者は、四半期ごとに当四半期までの発生費用と事前の見積りとの比較や、その時点での工事の進捗状況等を踏まえた最新の情報に基づいて見直した将来工事損失見込額を妥当なものと考えていますが、将来の状況の変化によって見積りと実績が乖離した場合は、三菱電機グループの損益に影響を与える可能性があります。
製造上やその他の不具合に対し、製品の種類や販売地域及びその他の要因ごとに定められた期間又は一定の使用条件に応じて製品保証を行っており、期末日現在において将来の費用発生の可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができる場合に、製品保証引当金を計上しています。将来の発生費用は、主に過去の無償工事実績及び補修費用に関する現状に基づいて見積っています。当連結会計年度末における製品保証引当金の残高は、52,696百万円です。
経営者は、発生費用の見積り額を妥当なものと考えていますが、将来の状況の変化によって見積りと実績が乖離した場合は、三菱電機グループの損益に影響を与える可能性があります。
③有形固定資産の回収可能価額
有形固定資産は、減損の兆候の有無を判断しており、減損の兆候が存在する場合は、減損テストを実施しています。
資産又は資金生成単位の見積回収可能価額は、使用価値と売却費用控除後の公正価値のうちいずれか大きい方の金額としています。使用価値の算定における見積将来キャッシュ・フローは、貨幣の時間的価値及び当該資産に固有のリスクを反映した税引前割引率を用いて現在価値に割り引いています。資産又は資金生成単位の帳簿価額が見積回収可能価額を超過する場合には、当期の純損益において減損損失を認識しています。
経営者は、使用価値の算定における見積将来キャッシュ・フロー及び売却費用控除後の公正価値の見積りはいずれも妥当なものと考えていますが、三菱電機グループのビジネスや前提条件の変化等によって見積りが変更となることにより資産又は資金生成単位の見積回収可能価額が変動し、結果として、将来において有形固定資産の減損損失の認識に影響を与える可能性があります。
④のれん及び無形資産の回収可能価額
耐用年数を確定できる無形資産は、減損の兆候の有無を判断しており、減損の兆候が存在する場合は、減損テストを実施しています。のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については少なくとも1年に一度、同時期に減損テストを実施しています。
重要なのれんは家庭電器部門に配分されたのれんであり、減損テストの回収可能価額は、主として経営者が承認した今後5年度分の事業計画及び成長率を基礎としたキャッシュ・フローの見積り額を現在価値に割り引いた使用価値で算定しています。割引率は、税引前の加重平均資本コストを基に算定しており、当連結会計年度における割引率は、9.8%です。成長率は、のれんが配分されている資金生成単位グループが属する市場の長期期待成長率を参考に算定しており、当連結会計年度における成長率は0.8%です。
経営者は、事業計画や成長率を基礎としたキャッシュ・フローの見積り額や割引率は妥当なものと考えていますが、三菱電機グループのビジネスや前提条件の変化等によってキャッシュ・フローの見積り額や割引率が変更となることにより使用価値が変動し、結果として、将来においてのれん及び無形資産の減損損失の認識に影響を与える可能性があります。
⑤繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、将来減算一時差異、未使用の税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除のうち、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。繰延税金資産は期末日に見直し、税務便益が実現する可能性が高くない場合は、繰延税金資産の計上額を減額しています。
三菱電機グループは繰延税金資産の実現可能性の評価にあたり、繰延税金資産の一部又は全部が実現する可能性が実現しない可能性より高いかどうかを考慮しています。繰延税金資産の実現は、最終的には将来減算一時差異、未使用の税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除が減算可能な期間における将来課税所得によって決定されます。その評価にあたり、予定される繰延税金負債の戻入、予測される将来課税所得及び税務戦略を考慮しています。
経営者は、当連結会計年度末の認識可能と判断された繰延税金資産が実現する蓋然性は高いと考えていますが、繰延期間における将来の見積課税所得が減少した場合には、実現する可能性が高いと考えられる繰延税金資産は減少することとなります。
⑥確定給付制度債務の測定
三菱電機グループは、従業員を対象とする従業員非拠出制及び拠出制の確定給付型退職給付制度を採用しています。従業員の確定給付制度債務は、割引率、退職率、一時金選択率や死亡率など年金数理計算上の基礎率に基づき算定しています。確定給付制度債務の現在価値及び制度資産の公正価値の再測定による変動は、発生した期においてその他の包括利益として一括認識し、直ちに利益剰余金に振り替えています。
割引率は、将来の毎年度の給付支払見込日までの期間を基に割引期間を設定し、割引期間に対応した期末日時点の優良社債の市場利回りに基づき算定しており、当連結会計年度末の割引率は0.6%です。
経営者は、年金数理計算上の基礎率の算定は妥当なものと考えていますが、実績との差異または基礎率自体の変更により、確定給付制度債務の金額に影響を与える可能性があります。
⑦金融商品の公正価値
三菱電機グループは、主に取引関係維持・強化を目的として保有している資本性金融商品をその他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産に指定しています。このうち非上場株式の公正価値については、投資先の純資産等に関する定量的な情報及び投資先の将来キャッシュ・フローに関する予想等を総合的に勘案して算定しています。
経営者は、公正価値の見積りは妥当なものと考えていますが、投資先の業績や将来キャッシュ・フロー等の見積りの前提条件が変動した場合は、三菱電機グループのその他の包括利益の金額に影響を与える可能性があります。