有価証券報告書-第149期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/26 14:46
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三菱電機グループが当連結会計年度中にとった主な施策及び翌連結会計年度以降に向けての施策については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」などに記載のとおりですが、これらの施策の実施状況を踏まえた当連結会計年度に関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は以下のとおりです。
なお、三菱電機グループは、当連結会計年度よりIFRS第16号「リース」を適用しています。当該基準の詳細を含む主要な会計方針の要約は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 (連結財務諸表注記)」に記載しています。
(1) 業績概要
当連結会計年度の景気は、第3四半期連結会計期間までは日本、米国、欧州において総じてみれば緩やかな回復基調は維持されたものの企業部門が減速しました。また、中国では成長が鈍化し、企業部門をみると輸出や固定資産投資が減速しました。さらに、第4四半期連結会計期間以降、新型コロナウイルス感染症の拡大とともにその影響によって、各国・地域の経済は大幅に下押しされてきました。
かかる中、三菱電機グループは、これまでの事業競争力強化・経営体質強化に加え、自らの強みに根ざした成長戦略の推進に、従来以上に軸足を置いて取り組んでまいりました。
この結果、当連結会計年度の業績は、以下のとおりとなりました。
<連結決算概要>
前連結会計年度当連結会計年度前連結会計年度比
売上高45,199億円44,625億円574億円減
営業利益2,904億円2,596億円308億円減
税引前当期純利益3,159億円2,819億円339億円減
親会社株主に帰属
する当期純利益
2,266億円2,218億円48億円減

① 売上高
売上高は、情報通信システム部門、家庭電器部門、重電システム部門、電子デバイス部門で増収となりましたが、産業メカトロニクス部門などの減収により、前連結会計年度比574億円減少の4兆4,625億円となりました。産業メカトロニクス部門は、国内外の設備投資などの需要の停滞によるFAシステム事業の減少や、各国での新車販売の減速による自動車機器事業の減少により減収になりました。
なお、売上高の減少には円高による影響や、当年度第4四半期連結会計期間からの新型コロナウイルス感染症の影響もありました。
<売上高における為替影響額>
前連結会計年度
期中平均レート
当連結会計年度
期中平均レート
当連結会計年度
売上高への影響額
連結合計--約620億円減
内、米ドル111円109円約90億円減
内、ユーロ128円121円約200億円減
内、人民元16.5円15.6円約170億円減

② 営業利益
営業利益は、家庭電器部門、情報通信システム部門、電子デバイス部門などで増益となりましたが、産業メカトロニクス部門などの減益により、前連結会計年度比308億円減少の2,596億円となりました。営業利益率は、売上原価率の悪化などにより、前連結会計年度比0.6ポイント悪化の5.8%となりました。
売上原価率は、操業度低下や機種構成変動、成長事業への先行投資影響などによる産業メカトロニクス部門の悪化に加え、円高の影響もあり、前連結会計年度比1.2ポイント悪化しました。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度比262億円減少し、売上高比率は0.3ポイント改善しました。
その他の損益は、土地の売却などにより前連結会計年度比136億円増加し、売上高比率は0.3ポイント改善しました。
③ 税引前当期純利益
税引前当期純利益は、営業利益の減少に加え、為替差損などによる金融費用の増加、持分法による投資利益の減少などにより、前連結会計年度比339億円減少の2,819億円、売上高比率は6.3%となりました。
④ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、税引前当期純利益の減少はありましたが、海外の関係会社再編に伴う法人所得税費用の減少などにより、前連結会計年度比48億円減少の2,218億円、売上高比率は5.0%となりました。
なお、ROEは前連結会計年度比0.5ポイント悪化の9.2%となりました。
事業の種類別セグメントの業績は、次のとおりです。
① 重電システム
社会インフラ事業の事業環境は、国内の公共事業における防災・減災向けの投資や、国内外の鉄道事業における投資が堅調に推移し、また国内の電力システム改革に伴う需要が継続しました。このような状況の中、同事業の受注高は国内外の電力事業や国内の公共・交通事業などの増加により前連結会計年度を上回りましたが、国内外の火力発電事業の減少などにより売上高は前連結会計年度並みとなりました。
ビルシステム事業の事業環境は、海外では中国の高級・大規模オフィス案件の需要減少や、中東の市況低迷が継続しましたが、国内ではリニューアル需要が増加しました。このような状況の中、同事業の受注高は中国及び中東向けなどを中心に減少しましたが、売上高は首都圏を中心とした国内の新設事業の増加などにより前連結会計年度並みとなりました。
この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比101%の1兆3,073億円となりました。
営業利益は、円高の影響や売上案件の変動などにより、前連結会計年度比1億円減少の823億円となりました。
② 産業メカトロニクス
FAシステム事業の事業環境は、国内外の自動車関連、国内の半導体・工作機械関連、海外の有機EL・スマートフォン関連需要の停滞が継続しました。このような状況の中、同事業は円高の影響や国内外のFA機器・加工機・数値制御装置などの減少により、受注高・売上高とも前連結会計年度を下回りました。
自動車機器事業の事業環境は、車両電動化関連市場がグローバルで拡大しましたが、各国での新車販売が減速し、当年度第4四半期連結会計期間には新型コロナウイルス感染症の影響も顕在化しました。このような状況の中、同事業はモーター・インバーターなどの車両電動化関連製品の販売は増加しましたが、その他の自動車用電装品の減少や円高の影響などにより、受注高・売上高とも前連結会計年度を下回りました。
この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比92%の1兆3,494億円となりました。
営業利益は、売上高の減少や機種構成の変動、成長事業への先行投資などにより、前連結会計年度比736億円減少の689億円となりました。
③ 情報通信システム
通信システム事業の事業環境は、5G通信ネットワークの拡大などに向けた通信トラフィックの増大に伴う通信事業者の投資が堅調に推移しました。このような状況の中、同事業は通信インフラ機器の需要増加などにより、受注高・売上高とも前連結会計年度を上回りました。
情報システム・サービス事業の事業環境は、クラウド活用やサイバーセキュリティー強化、業務プロセス効率化などに関連した需要が増加しました。このような状況の中、同事業はシステムインテグレーション事業の増加などにより、受注高・売上高とも前連結会計年度を上回りました。
電子システム事業は、受注高が宇宙システム事業の大口案件の増加など、売上高が防衛システム事業の大口案件の増加などにより、前連結会計年度を上回りました。
この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比107%の4,555億円となりました。
営業利益は、売上高の増加や売上案件の変動などにより、前連結会計年度比142億円増加の264億円となりました。
④ 電子デバイス
電子デバイス事業の事業環境は、5G通信ネットワークや次世代データセンター関連需要の立ち上がり、電動化車両の開発・市場投入の加速などがありました。このような状況の中、同事業は通信用光デバイスを中心とした高周波光デバイス、自動車用を中心としたパワー半導体の増加などにより、受注高は前連結会計年度を上回り、売上高は前連結会計年度比104%の2,087億円となりました。
営業利益は、売上高の増加や機種構成の変動などにより、前連結会計年度比72億円増加の87億円となりました。
⑤ 家庭電器
家庭電器事業の事業環境は、環境意識の高まりにより、北米市場ではダクトレス空調の需要が増加し、欧州市場ではヒートポンプ式温水暖房の需要が拡大しました。また国内市場では学校向けの業務用空調の需要増加などがありました。このような状況の中、同事業は国内・北米・欧州向け空調機器の増加により、売上高が前連結会計年度比102%の1兆902億円となりました。
営業利益は、売上高の増加や費用改善などにより、前連結会計年度比187億円増加の782億円となりました。
⑥ その他
売上高は、資材調達・物流の関係会社でのグループ向けの減少などにより、前連結会計年度比97%の6,596億円となりました。
営業利益は、費用改善などにより、前連結会計年度比18億円増加の260億円となりました。
顧客の所在地別の売上高の状況は、次のとおりです。
① 日本
FAシステム事業の減少などはありましたが、社会インフラ事業、電子システム事業及び空調機器の増加などにより、前連結会計年度比102%の2兆6,103億円となりました。
② 北米
FAシステム事業、自動車機器事業の減少などはありましたが、空調機器の増加などにより、前連結会計年度比101%の4,320億円となりました。
③ アジア
ビルシステム事業、FAシステム事業及び空調機器の減少などにより、前連結会計年度比91%の9,199億円となりました。
アジアのうち中国については、FAシステム事業及び空調機器の減少などにより、前連結会計年度比86%の4,205億円となりました。
④ 欧州
空調機器の増加などはありましたが、FAシステム事業及び自動車機器事業の減少などにより、前連結会計年度比96%の4,372億円となりました。
⑤ その他
その他の地域にはオセアニアなどが含まれており、前連結会計年度比95%の629億円となりました。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
事業の種類別セグメントの名称生産高(百万円)前連結会計年度比(%)
重電システム869,572100
産業メカトロニクス1,213,55788
情報通信システム384,209106
電子デバイス174,032108
家庭電器781,65297
その他1,46581
3,424,48796

(注) 上記金額は、仕込製品については仕切予定価格、注文製品については受注価格で示しています。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
事業の種類別セグメントの名称受注高(百万円)前連結会計年度比(%)
重電システム1,348,866104
産業メカトロニクス1,358,00195
情報通信システム448,892107
電子デバイス221,610111

(注) 「家庭電器」「その他」については受注生産形態をとらない製品が多いため、受注規模を金額で示していません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
事業の種類別セグメントの名称販売高(百万円)前連結会計年度比(%)
重電システム1,307,389101
産業メカトロニクス1,349,42992
情報通信システム455,596107
電子デバイス208,750104
家庭電器1,090,248102
その他659,63697
消去△608,539-
4,462,50999

(注) 各種類別セグメントの金額には、セグメント間の内部売上高(振替高)を含めて表示しています。
(3) 資産及び負債・資本の状況分析
IFRS第16号「リース」の適用により、適用開始日にリース関連の資産930億円を主に有形固定資産へ、負債951億円を社債、借入金及びリース負債へ追加的に認識しました。
総資産残高は、前連結会計年度末比535億円増加の4兆4,097億円となりました。棚卸資産が352億円、その他の金融資産が334億円それぞれ減少した一方、有形固定資産が938億円、現金及び現金同等物が233億円それぞれ増加したことがその主な要因です。
棚卸資産の減少は、産業メカトロニクス部門での市場の減速に伴う在庫の縮小、家庭電器部門での消費増税及び学校向けの業務用空調需要増加等に対応した在庫の消化、為替円高影響等によるものです。棚卸資産回転率は、前連結会計年度末比0.23回転改善の6.43回転となりました。
負債の部は、買入債務が323億円、退職給付に係る負債が128億円それぞれ減少した一方、社債、借入金及びリース負債が785億円増加したこと等から、負債残高は前連結会計年度末比258億円増加の1兆8,709億円となりました。なお、リース負債を除く借入金・社債残高は前連結会計年度末比89億円減少の2,670億円、借入金比率は6.1%(前連結会計年度末比△0.2ポイント)となりました。
資本の部は、配当金の支払い858億円による減少及び為替円高・株価下落等を背景としたその他の包括利益累計額816億円の減少等はありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益2,218億円の計上等により、親会社株主に帰属する持分は前連結会計年度末比297億円増加の2兆4,297億円、親会社株主帰属持分比率は55.1%(前連結会計年度末に対し変動なし)となりました。
⦅財政状態計算書関連指標⦆
前連結会計年度末当連結会計年度末前連結会計年度末比
売掛債権回転率3.66回転3.59回転0.07回転減
棚卸資産回転率6.20回転6.43回転0.23回転増
借入金比率6.3%6.1%0.2ポイント減
親会社株主帰属持分比率55.1%55.1%変動なし

(注) 1 売掛債権回転率は、売上債権と契約資産の合計より算出しています。
2 借入金比率は、リース負債を除く借入金・社債残高より算出しています。
(4) 資本の財源及び資金の流動性
①財務戦略に関する基本的な考え方
三菱電機グループは、健全な財務体質を維持するため、業績向上による資金収支の改善に加え、棚卸資産の縮減活動、売掛債権の回収促進といった資産の効率化、グル-プ内資金の更なる有効活用による資金の効率化に引き続き取り組んでいます。
更なる企業価値の向上を図るために、資本コストを意識した経営を推進していますが、開発投資や設備投資を含む経営資源の最適な配分などの取り組みにより、より一層の収益力改善や資本効率改善を進めてまいります。
なお、成長戦略を進めて行く中で、必要となります設備投資資金やM&A等の資金につきましては、自己資金の活用を図りつつ、必要に応じて金融機関等から機動的に資金調達を行ってまいりますが、その場合も、継続的に達成すべき経営指標のひとつとして掲げている「借入金比率15%以下」を維持していきます。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度は、営業活動によるキャッシュ・フローが3,958億円の収入となった一方、投資活動によるキャッシュ・フローが2,039億円の支出となったため、フリー・キャッシュ・フローは1,918億円の収入超過となり、前連結会計年度比1,626億円増加しました。これに対し、財務活動によるキャッシュ・フローは1,564億円の支出となったこと等から、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末比233億円増加の5,375億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産への支出の減少や売上債権の回収の増加、IFRS第16号「リース」適用に伴う減価償却費の増加等により、前連結会計年度比1,560億円の収入増加となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券や有形固定資産の取得の増加等はありましたが、固定資産売却収入の増加等により、前連結会計年度比66億円の支出減少となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、IFRS第16号「リース」適用に伴うリース負債の返済の増加等により、前連結会計年度比443億円の支出増加となりました。
③財源及び流動性
運転資金需要のうち主なものは、生産に必要な材料購入費の他、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であり投資を目的とした資金需要は、設備投資、M&A等によるものです。
短期運転資金は、自己資金と金融機関からの短期借入等により、設備投資や長期運転資金は、自己資金の活用を図りつつ金融機関からの長期借入及び社債により調達を行っています。
なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は5,375億円、社債、借入金及びリース負債残高は3,770億円です。社債、借入金及びリース負債の内訳は、短期借入金が529億円、社債及び長期借入金が2,140億円、リース負債が1,099億円です。
また、当連結会計年度末において、未使用のコミットメントライン残高は827億円ですが、足元では新型コロナウイルス感染症の影響による売上高の減少等に伴う資金収支の悪化に備え、支出の抑制を図るとともに、借入実行による手許流動性の確保や、未使用のコミットメントライン残高の3,000億円程度までの増枠等を行っています。
(5) 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断
当社の連結財務諸表はIFRSに基づいて作成しています。これらの連結財務諸表の作成にあたって、経営者は、資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を使用する必要があります。実際の業績は、これらの見積りとは異なる場合があります。当社の連結財務諸表の金額に重要な影響を与える可能性のある主要な会計上の見積り及び仮定は以下のとおりです。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関して、期末日時点では各国・地域での市況低迷とその後の市況回復過程により、翌年度第2四半期連結会計期間まで売上高や営業利益などに大きく影響すると仮定して、「有形固定資産、のれん及び無形資産の回収可能価額」等の会計上の見積りを行っていますが、収束時期の遅れや各国・地域での市況低迷とその後の市況回復の状況変化、感染症を契機とした社会の価値観や行動様式の急変による需要構造の変化などが生じた場合、実際の業績はこれらの見積りとは異なる場合があります。
①一定の期間にわたり履行義務を充足する契約における収益認識
重電システム部門及び情報通信システム部門における一定の要件を満たす特定の工事請負契約については、当該工事請負契約の当期末時点の進捗度に応じて収益を計上しています。進捗度は、当期までの発生費用を工事完了までの見積総費用と比較することにより測定しています。
見積総費用は、契約ごとに当該工事請負契約の契約内容、要求仕様、技術面における新規開発要素の有無、過去の類似契約における発生原価実績などのさまざまな情報に基づいて算定しています。
工事請負契約は、契約仕様や作業内容が顧客の要求に基づき定められており契約内容の個別性が強く、また比較的長期にわたる契約が多いことから、作業工程の遅れ等による当初見積りに対する原価の増加や、新規開発技術を利用した工事遂行における当初想定していない事象の発生による原価の変動など、工事の進行途中の環境の変化によって、見積総費用が変動することがあります。
経営者は、四半期ごとに当四半期までの発生費用と事前の見積りとの比較や、その時点での工事の進捗状況等を踏まえた最新の情報に基づいて見直した工事請負契約の見積総費用を妥当なものと考えていますが、将来の状況の変化によって見積りと実績が乖離した場合は、三菱電機グループが認識する収益の金額に影響を与える可能性があります。
②引当金の認識及び測定
受注工事損失引当金は、重電システム部門及び情報通信システム部門における個別受注工事において、当該工事の見積総費用が請負受注金額を超える可能性が高く、かつ予想される損失額を合理的に見積もることができる場合に、将来の損失見込額を引当金として計上しています。当連結会計年度末における受注工事損失引当金の残高は、40,181百万円です。
見積総費用は、契約ごとに当該工事請負契約の契約内容、要求仕様、技術面における新規開発要素の有無、過去の類似契約における発生原価実績などのさまざまな情報に基づいて算定していますが、個別受注工事は契約仕様や作業内容が顧客の要求に基づき定められており契約内容の個別性が強く、また比較的長期にわたる契約が多いことから、作業工程の遅れ等による当初見積りに対する原価の増加や、新規開発技術を利用した工事遂行における当初想定していない事象の発生による原価の変動など、工事の進行途中の環境の変化によって、見積総費用が変動することがあります。
経営者は、四半期ごとに当四半期までの発生費用と事前の見積りとの比較や、その時点での工事の進捗状況等を踏まえた最新の情報に基づいて見直した将来工事損失見込額を妥当なものと考えていますが、将来の状況の変化によって見積りと実績が乖離した場合は、三菱電機グループの損益に影響を与える可能性があります。
製造上やその他の不具合に対し、製品の種類や販売地域及びその他の要因ごとに定められた期間又は一定の使用条件に応じて製品保証を行っており、期末日現在において将来の費用発生の可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができる場合に、製品保証引当金を計上しています。将来の発生費用は、主に過去の無償工事実績を基に見積っています。当連結会計年度末における製品保証引当金の残高は、53,999百万円です。
経営者は、発生費用の見積り額を妥当なものと考えていますが、将来の状況の変化によって見積りと実績が乖離した場合は、三菱電機グループの損益に影響を与える可能性があります。
③有形固定資産
有形固定資産は、減損の兆候の有無を判断しており、減損の兆候が存在する場合は、減損テストを実施しています。
資産又は資金生成単位の見積回収可能価額は、使用価値と売却費用控除後の公正価値のうちいずれか大きい方の金額としています。使用価値の算定における見積将来キャッシュ・フローは、貨幣の時間的価値及び当該資産に固有のリスクを反映した税引前割引率を用いて現在価値に割り引いています。資産又は資金生成単位の帳簿価額が見積回収可能価額を超過する場合には、当期の純損益において減損損失を認識しています。
経営者は、使用価値の算定における見積将来キャッシュ・フロー及び売却費用控除後の公正価値の見積りはいずれも妥当なものと考えていますが、三菱電機グループのビジネスや前提条件の変化等によって見積りが変更となることにより資産又は資金生成単位の見積回収可能価額が変動し、結果として、将来において有形固定資産の減損損失の認識に影響を与える可能性があります。
④のれん及び無形資産
耐用年数を確定できる無形資産は、減損の兆候の有無を判断しており、減損の兆候が存在する場合は、減損テストを実施しています。のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については少なくとも1年に一度、同時期に減損テストを実施しています。
重要なのれんは家庭電器部門に配分されたのれんであり、減損テストの回収可能価額は、主として経営者が承認した今後5年度分の事業計画及び成長率を基礎としたキャッシュ・フローの見積り額を現在価値に割り引いた使用価値で算定しています。割引率は、税引前の加重平均資本コストを基に算定しており、当連結会計年度における割引率は、9.3%です。成長率は、のれんが配分されている資金生成単位グループが属する市場の長期期待成長率を参考に算定しており、当連結会計年度における成長率は0.8%です。
経営者は、事業計画や成長率を基礎としたキャッシュ・フローの見積り額や割引率は妥当なものと考えていますが、三菱電機グループのビジネスや前提条件の変化等によってキャッシュ・フローの見積り額や割引率が変更となることにより使用価値が変動し、結果として、将来においてのれん及び無形資産の減損損失の認識に影響を与える可能性があります。
⑤繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、将来減算一時差異、未使用の税務上の繰越欠損金及び繰延税額控除のうち、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。繰延税金資産は期末日に見直し、税務便益が実現する可能性が高くない場合は、繰延税金資産の計上額を減額しています。
三菱電機グループは繰延税金資産の実現可能性の評価にあたり、繰延税金資産の一部又は全部が実現する可能性が実現しない可能性より高いかどうかを考慮しています。繰延税金資産の実現は、最終的には将来減算一時差異、未使用の税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除が減算可能な期間における将来課税所得によって決定されます。その評価にあたり、予定される繰延税金負債の戻入、予測される将来課税所得及び税務戦略を考慮しています。
経営者は、当連結会計年度末の認識可能と判断された繰延税金資産が実現する蓋然性は高いと考えていますが、繰延期間における将来の見積課税所得が減少した場合には、実現する可能性が高いと考えられる繰延税金資産は減少することとなります。
⑥確定給付制度債務の測定
三菱電機グループは、従業員を対象とする従業員非拠出制及び拠出制の確定給付型退職給付制度を採用しています。従業員の確定給付費用及び確定給付制度債務は、割引率、退職率、一時金選択率や死亡率など年金数理計算上の基礎率に基づき算定しています。確定給付制度債務の現在価値及び制度資産の公正価値の再測定による変動は、発生した期においてその他の包括利益として一括認識し、直ちに利益剰余金に振り替えています。
割引率は、将来の毎年度の給付支払見込日までの期間を基に割引期間を設定し、割引期間に対応した期末日時点の優良社債の市場利回りに基づき算定しており、当連結会計年度末の割引率は0.5%です。
経営者は、年金数理計算上の基礎率の算定は妥当なものと考えていますが、実績との差異または基礎率自体の変更により、確定給付費用や確定給付制度債務の金額に影響を与える可能性があります。
⑦金融商品の公正価値
三菱電機グループは、主に取引関係維持・強化を目的として保有している資本性金融商品をその他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産に指定しています。このうち非上場株式の公正価値については、投資先の純資産等に関する定量的な情報及び投資先の将来キャッシュ・フローに関する予想等を総合的に勘案して算定しています。
経営者は、公正価値の見積りは妥当なものと考えていますが、投資先の業績や将来キャッシュ・フロー等の見積りの前提条件が変動した場合は、三菱電機グループのその他の包括利益の金額に影響を与える可能性があります。