四半期報告書-第144期第3四半期(令和1年10月1日-令和1年12月31日)
(1)経営成績
当社は2019年度を起点に、創立100周年を迎える2023年度を最終年度とする5ヵ年中期経営計画「令和.Prosperity2023」をスタートし、成長分野であるパワエレシステム事業、パワー半導体事業へのリソース傾注や海外事業拡大等の成長戦略を推進しています。
当第3四半期連結累計期間における当社を取り巻く市場環境は、海外では、昨年度から続く米中貿易摩擦の長期化影響等により、中国を中心に投資抑制傾向が継続しました。国内では、海外市場の減速を受け、工作機械関連の輸出が低調に推移する等の影響がみられましたが、老朽化設備の更新需要は堅調に推移しました。
このような環境のもと、当第3四半期連結累計期間の連結業績の売上高は、前年同期の大口案件影響、米中貿易摩擦影響による国内外の生産調整及び設備投資の抑制等により、「パワエレシステム エネルギー」を除く主要4部門で需要が減少し、前年同期に比べ105億18百万円減少の6,117億32百万円となりました。
損益面では、原価低減等を推進したものの、売上高の減少及び為替変動の影響等を主因に、営業損益は前年同期に比べ76億36百万円減少の168億36百万円、経常損益は前年同期に比べ87億49百万円減少の177億13百万円、親会社株主に帰属する四半期純損益は前年同期に比べ60億82百万円減少の102億84百万円となりました。
<セグメント別状況>■パワエレシステム エネルギー部門
売上高:1,462億61百万円(前年同期比 1.8%増加) 営業損益:46億85百万円(前年同期比 31億80百万円減少)
施設・電源システム分野の需要が好調に推移し、売上高は前年同期を上回りましたが、器具分野の需要減少を主因に、営業損益は前年同期を下回りました。
・エネルギーマネジメント分野は、前年同期の海外電力向け大口案件の影響等により、売上高は前年同期を下回りましたが、原価低減等の推進により、営業損益は前年同期を上回りました。
・施設・電源システム分野は、前年同期の国内大口案件が影響したものの、盤事業の海外大口案件の増加等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・器具分野は、工作機械をはじめとする機械セットメーカの需要が減少し、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
■パワエレシステム インダストリー部門
売上高:2,043億73百万円(前年同期比 4.0%減少) 営業損益:11億41百万円(前年同期比 32億22百万円減少)
オートメーション分野の需要減少ならびに社会ソリューション分野の前年同期の大口案件影響を主因に、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・オートメーション分野は、国内及び中国市場を中心に低圧インバータ、FAコンポーネント等の需要が減少し、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・社会ソリューション分野は、前年同期の鉄道車両用電機品の大口案件影響を主因に、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・設備工事分野は、電気設備工事及び空調設備工事が減少し、売上高は前年同期を下回りましたが、原価低減等の推進により、営業損益は前年同期を上回りました。
・ITソリューション分野は、民需分野の大口案件の増加により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■電子デバイス部門
売上高:1,026億31百万円(前年同期比 1.2%減少) 営業損益:89億29百万円(前年同期比 27億76百万円減少)
・電子デバイス分野は、自動車(xEV)向けパワー半導体の需要は増加したものの、中国市場を中心に産業分野向けの需要が減少したことに加え、為替影響等により、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
■食品流通部門
売上高:776億74百万円 (前年同期比 5.0%減少) 営業損益:30億95百万円(前年同期比 80百万円減少)
・自販機分野は、国内及び中国市場の需要が減少したことにより、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・店舗流通分野は、コンビニエンスストア向け店舗設備機器等の需要増加により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■発電プラント部門
売上高:695億68百万円 (前年同期比 2.1%減少) 営業損益:11億13百万円(前年同期比 15億99百万円増加)
・発電プラント分野は、火力・地熱発電設備の大口案件が増加したものの、太陽光発電システムの大口案件が減少し、売上高は前年同期を下回りましたが、営業損益は前年同期に大口案件のコスト増があった影響等により、前年同期を上回りました。
■その他部門
売上高:457億4百万円 (前年同期比 0.4%減少) 営業損益:17億41百万円(前年同期比 16百万円減少)
(注)第1四半期連結会計期間より、組織構造の変更に伴い、パワエレシステム事業の報告セグメントを従来の「パワエレシステム・エネルギーソリューション」及び「パワエレシステム・インダストリーソリューション」から、「パワエレシステム エネルギー」及び「パワエレシステム インダストリー」に変更しております。また、従来「発電」としていた報告セグメントの名称を「発電プラント」に変更しており、各セグメントの前年同期比につきましては、前年同期の数値を変更後の報告セグメントの区分・名称に組み替えたうえで算出しております。
(2)財政状態
当第3四半期連結会計期間末の総資産額は9,817億28百万円となり、前連結会計年度末に比べ290億69百万円増加しました。
流動資産は5,790億21百万円となり、前連結会計年度末に比べ59億25百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ売上債権が524億60百万円減少した一方で、たな卸資産が465億28百万円増加したことなどによるものであります。
固定資産は4,025億79百万円となり、前連結会計年度末に比べ231億69百万円増加しました。このうち、有形固定資産と無形固定資産の合計は2,171億77百万円となり、前連結会計年度末に比べ172億9百万円増加しました。また、投資その他の資産は1,854億2百万円となり、前連結会計年度末に比べ59億60百万円増加しました。これは、主に投資有価証券が、その他有価証券の時価評価差額相当分の増加を主因として、99億65百万円増加したことなどによるものであります。
当第3四半期連結会計期間末の負債合計は5,798億33百万円となり、前連結会計年度末に比べ192億35百万円増加しました。
流動負債は4,285億31百万円となり、前連結会計年度末に比べ26億37百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ短期借入金が217億84百万円、仕入債務が129億85百万円、それぞれ減少した一方で、コマーシャル・ペーパーが455億円、1年内償還予定の社債が150億円、それぞれ増加したことなどによるものであります。
固定負債は1,513億2百万円となり、前連結会計年度末に比べ165億98百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ社債が150億円減少した一方で、長期借入金が190億70百万円増加したことなどによるものであります。
なお、当第3四半期連結会計期間末の有利子負債残高は2,078億68百万円となり、前連結会計年度末に比べ538億83百万円増加しました。また、同残高の総資産に対する比率は21.2%となり、前連結会計年度末に比べ5.0ポイント増加しました。
当第3四半期連結会計期間末の純資産合計は4,018億94百万円となり、前連結会計年度末に比べ98億33百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べその他有価証券評価差額金が116億94百万円増加したことなどによるものであります。これらの結果、自己資本比率は36.9%となり、前連結会計年度末に比べ0.1ポイント減少しました。
(3)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、対処すべき課題について重要な変更はありません。
なお、当社は財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を定めており、その内容等(会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項)は次のとおりであります。
① 基本方針の内容
富士電機(注)は、基本理念を実践し、企業価値の持続的向上を図る過程で、独自の技術、経験及びノウハウ等を積み重ねるとともに、顧客、取引先、地域社会、従業員等さまざまなステークホルダーとの間の良好な関係の維持、発展に努めてまいりました。
これらは、富士電機の有形・無形の貴重な財産であり、いわば“富士電機のDNA”とも呼ぶべき、富士電機の企業価値の創造を支える源泉であります。
富士電機は、その経営理念に基づき、環境の変化に適合した経営を実践し、中長期的な視野で企業価値と株主の皆様の共同利益を一層向上させていくことが、富士電機の企業価値を損なう当社株式の買付行為に対する最も有効な対抗手段であると認識しており、その実現に努めてまいります。
また、当社の株式価値を適正にご理解いただくようIR活動に積極的に取り組むとともに、株主の皆様には四半期毎の業績等に関する報告書の発行、工場見学会の開催等により、富士電機に対するご理解をより一層深めていただくよう努めてまいります。
当社取締役会は、上場会社として株主の皆様の自由な売買を認める以上、特定の者による当社株式の大規模買付行為がなされる場合、これに応ずるべきか否かの判断は、最終的には株主の皆様のご判断に委ねられるべきと考えます。
しかしながら、一般にも高値での売り抜け等の不当な目的による企業買収の存在は否定できないところであり、当社取締役会は、このような富士電機の企業価値・株主の皆様の共同利益を損なう当社株式の大規模買付行為や提案を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として、適当ではないと考えております。
現時点において、当社株式の大規模買付に係る具体的な脅威が生じている訳でなく、また当社としても、そのような買付者が現れた場合の具体的な取り組み(いわゆる「買収防衛策」)を予め定めるものではありません。
しかし、当社取締役会は、株主の皆様から経営の負託を受けた経営者の責務として、富士電機の企業価値・株主の皆様の共同利益を損なうおそれがある株式の大規模買付行為がなされた場合に適切な措置を執り得る社内体制を整備いたします。
(注)本四半期報告書における「富士電機」の表現は、当社並びに子会社及び関連会社から成る企業集団を指します。
② 基本方針を実現するための当社の取り組み
1)企業価値向上の取り組み
富士電機は、持続的成長に向けた基本戦略として、世界各国で見込まれるエネルギー・環境投資を背景として、長年培ってきた電気を自在に操る「パワーエレクトロニクス技術」をベースとし、グローバル市場で成長を成し遂げることを目指しております。
その実現に向け、迅速に経営リソースを「エネルギー・環境」事業にシフトし、「事業を通じてグローバル社会に貢献する企業」として企業価値の最大化とCSR経営の実現を目指します。
2)基本方針に照らし不適切な者による当社の支配を防止するための取り組み
当社は、上記①の基本方針に基づき、富士電機の企業価値・株主の皆様の共同利益を損なう、又はそのおそれのある当社株式の買付行為に備え、社内体制の整備に努めております。
具体的には、日常より当社株式の取引や株主の異動状況を常に注視するとともに、平時より有事対応の初動マニュアルを整備し、外部専門家との連携体制等を整えておりますが、今後とも迅速かつ適切に具体的対抗措置を決定、実行し得る社内体制の充実に努めてまいります。
また、いわゆる「買収防衛策」の導入につきましても、法制度や関係当局の判断・見解、社会動向やステークホルダーの意見等を踏まえ、企業価値、株主の皆様の共同利益の確保、向上の観点から、引き続き検討してまいります。
③ 上記の取り組みに対する取締役会の判断及び判断理由
当社取締役会は、上記②.1)の取り組みが当社の企業価値を中期的に維持・拡大させるものであり、また、同②.2)の取り組みが富士電機の企業価値・株主の皆様の共同利益を毀損するような当社株式の大規模買付行為に対応するための社内体制を整備するものであることから、そのいずれの取り組みも、上記①の基本方針に即したものであり、株主の皆様の共同利益を損なうものではなく、現経営陣の地位の維持を目的とするものでもない旨を確認し決議しました。
また、監査役についても上記②の取り組みについてその具体的運用が適切に行われることを条件として、全員が同意しております。
(5)研究開発活動
持続的成長企業としての基盤を確立するため、パワーエレクトロニクス技術やパワー半導体技術のシナジーを生かした強いコンポーネントとシステム並びに要素技術を複合して顧客価値を創出するソリューションを生み出す研究開発に注力しています。
事業戦略に沿った新製品の開発や海外向け商材開発の現地化、技術マーケティングを活用したテーマ探索の強化、開発の生産性向上に取り組んでいます。
当第3四半期連結累計期間における富士電機の研究開発費は253億27百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。
また、当第3四半期連結会計期間末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は12,835件です。
■パワエレシステム エネルギー部門
電力流通分野では、経済産業省の「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント(VPP)構築実証事業」(2016年度~2020年度)の関西VPPプロジェクトに参加しています。2021年度に創設予定の需給市場に向け、共通実証仕様を実現するための詳細仕様を検討し、実証のための作業を開始しています。実証では需要家向け蓄電池システムに周波数制御用の高速な制御機能を実装した試験も実施します。また、変電所におけるプロセスバスの適用に向け、「変電所保護制御システムのフルデジタル化に向けた開発研究」(2018年度~2019年度)を中部電力株式会社と共同で実施しています。IEC61850準拠の保護制御ユニットIED(Intelligent Electronic Device)およびデータ収集ユニットMU(Merging Unit)の試作と評価を完了し、量産化に向けた変電所全体のシステム構成と機能実装を検討しています。
施設・電源システム分野では、大手クラウドプロバイダーの多い北米やアジアを中心に建設が増大しているハイパースケールデータセンター(超大型)向けに、大容量無停電電源装置(UPS)「7400WX-T3U」を開発し発売しました。本製品はモジュール型構造を採用し、1台330kVAのUPSユニットを4台組み合わせて単機容量で最大1000kVAまで対応することができ、さらに、8機の並列運転が可能であるため最大8000kVAの大規模システムを構築できます。また、独自開発した逆阻止IGBT(RB-IGBT)に加え、SiCパワーデバイスをUPS内の回路に採用し、業界最高レベルの97.4%の装置変換効率を実現し、負荷率25%においても96%以上の装置変換効率を達成しました。さらに本製品の最適負荷運転モードは自動でUPS各機の負荷率を判別し給電調整を行い、システム全体の効率改善に寄与し、データセンターの大容量化と省エネのニーズに応えます。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は51億9百万円です。
■パワエレシステム インダストリー部門
低圧インバータ分野では、耐環境インバータ「FRENIC-eFIT」シリーズを開発し発売しました。本製品はSiCパワーデバイスを採用することにより全閉自冷構造を実現しています。腐食性ガスが発生する化学系プラント、塩害が懸念される沿岸部の工場、風雨に曝される屋外設備等にインバータ本体をそのまま設置して、10年間のメンテナンスフリーが可能です。本インバータは設置・運用コストの削減に貢献いたします。
小容量電源分野では、GXシリーズ用ネットワークカード「Web/SNMPカードⅡ」を開発し発売しました。従来よりも通信セキュリティーを強化し、業界初となるネットワーク規格GbE(ギガビットイーサネット)にも対応し、仮想化システムのシャットダウン処理速度を従来比30倍に高速化しました。また、IPアドレス自動設定機能や瞬低検出機能、Auto-MDIX機能を追加し、利便性の更なる向上を図りました。
また、産業機器向けAC/DC電源「FIP06シリーズ」を開発し発売しました。AC100V~240Vの入力電圧に対応します。12Vと24Vの出力ブロック基板を組み合わせて、お客様が希望する出力数と出力電圧を自由に選択できます。オプションの外付けバッテリによって、停電時に動作継続が必要な装置にも対応します。
FAコンポーネント分野では、発売済のサーボシステムALPHA7シリーズの汎用タイプ(パルス/アナログ/位置決め/Modbus)、SXバスタイプ、EtherCAT通信タイプの容量を5kWまで拡大し、発売しました。印刷機械、巻取り装置、搬送装置などの大型の機械装置の更なる高精度化・高機能化・生産性向上に貢献します。また、主に国内のインフラ設備向けに、システムを二重化することで信頼性を高めたコントローラ「MICREX-SX SPH5000H」を開発し発売しました。CPUとCPUを上位システムにつなぐ制御ネットワークを二重化しました。さらに、CPUと入出力ユニットをつなぐI/Oネットワークは二重化かつループ化することで、インフラ設備の安定稼働に貢献します。
計測機器・センサー分野では、クランプオン式で飽和蒸気の流量計測ができる蒸気用超音波流量計を世界で初めて開発し発売しました。この流量計は、配管工事が不要であるため蒸気ラインを止めずに設置でき、圧力損失もありません。飽和蒸気流量の見える化により、効率的な利用と省エネに貢献します。
また、船舶スクラバ用レーザ方式ガス分析計を開発し発売しました。盤体への収納を不要にして世界最小サイズを実現しました。採取部、検出部と制御部の各ユニットは、個別に壁面や床に設置できるので、制約の多い既存船でも容易に設置できます。また、安定性に優れるレーザ方式を採用したことから、交換部品が少なく、さらに、校正頻度を下げることができるため、ランニングコストは従来に比べ50%以下になります。
FAシステム分野では、IoT(Internet of Things)による製造業のデジタル化を推進するため、現場型診断装置「SignAiEdge」を開発し発売しました。タッチオペレーションが可能な表示器一体型のこのエッジコントローラは、富士電機のアナリティクス・AI(MSPC)のほかに、現場情報の解析・診断に必要な機能を全て搭載しています。現場で誰にでも使いやすいこの診断装置を使って、これまで見えなかった問題点を可視化し、生産性の改善に貢献します。
また、既に発売した船舶向けSOxスクラバよりも大容量の機種を開発し系列を拡大しました。独自のサイクロン技術によって、小型化と排ガス浄化(脱硫)性能を両立しています。このライナップの拡大により、大型船(エンジン出力16~24MW)にも対応できるようになりました。
駆動制御システム分野では、主に駆動制御を行う電機高速コントローラ「MICREX-View XX XCS-3000 Type E」を開発し発売しました。伝送容量の増大と業界最速の高速データ更新(最速0.5ms)により、鉄鋼/非鉄プラントを始めとするプラント設備で性能を発揮します。また、コントローラ間ネットワークおよびI/O機器間ネットワークをそれぞれループ接続することで、ネットワークの高信頼化を図り、産業プラントの安定操業に貢献します。
社会ソリューション分野では、オフィスビル向けに建物の挙動の三次元計測とそのデータの収集を行う「建物構造ヘルスモニタリングシステム」を開発し発売しました。地震発生時に建物の被災度を判定する別のシステムと連携することで、建物の安全性や損傷状況が速やかに判定できます。避難指示や事業継続の判断を支援してオフィスビル利用者に安全安心を提供します。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は66億45百万円です。
■電子デバイス部門
パワー半導体分野では、低損失及び高温動作保証を可能とした最新の第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。第7世代IGBTモジュールは、1700V,1200V,650Vの標準製品の系列化を完了しました。第7世代IGBT製品では、駆動機能や保護機能を備えたIPM(Intelligent Power Module)の系列化を進めています。最初の製品として定格650V/75A品を開発し、電力変換装置の小型化・高効率化・高信頼性化に貢献します。また、産業用途にRC-IGBT(逆導通IGBT)チップを開発し、産業用RC-IGBTモジュール1200V/50Aと1000Aを系列に加えました。RC-IGBTの採用によりパワー密度が向上し、チップ面積が大幅に縮小できます。これによりIGBTモジュールが小型化し、パワーエレクトロニクス装置の小型・軽量化に貢献します。
さらに、シリコンに代わる半導体材料として注目されているSiC(炭化ケイ素)を使った低損失のSiC-SBDと第7世代IGBTを組み合わせた3300V/1200A,1800Aハイブリッドモジュールを開発しました。SiCチップの採用により、パワーエレクトロニクス装置の更なる電力効率の向上や小型化に貢献します。
電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)で使用される車載用直接水冷型パワーモジュールの供給先の拡大と新規のスペックインを継続しています。また、2020年モデル向けに、従来よりもオン電圧とスイッチング損失を低減したRC-IGBTを開発し量産を開始しました。EVやHEVシステム全体の小型軽量化や高効率化に貢献します。
EVやHEV、プラグインハイブリット車(PHEV)で使用される車載用直接水冷型パワーモジュールの供給先を拡げました。また、従来よりもオン電圧とスイッチング損失を低減した2020年モデル向けのRC-IGBTの開発を完了しました。システム全体の小型・軽量化及び高効率化に貢献します。
産業用ディスクリート製品では、最新の低損失設計となる第7世代IGBT技術をディスクリート用に最適化した1200Vの低損失ディスクリートIGBT XSシリーズの40A品を開発し系列に加えました。オン電圧を下げつつ、定常損失とスイッチング損失を同時に低減したので、小型UPSやソーラPCS、サーバとEV充電器など各種機器の損失低減、高効率化に貢献します。
感光体分野では、最新のオフィス向けカラー複写機用感光体を開発し発売しました。高精度素管の採用により高い色再現性を確保すると共に、摩耗耐性を持つ樹脂の採用により周辺部材からの機械的ストレス影響を抑制し、長寿命を実現しました。これにより長期間にわたり高い印字品質の維持が可能となります。
ディスク媒体部門では、データセンター等で活用されているニアライン用ハードディスクドライブ16TB機種用媒体(3.5インチ、ガラス基板、1.78TB/枚)を開発しました。磁性およびHDI(ヘッド・ディスクインタフェース)に新規技術を採用することで、高記録密度と高い信頼性を確保しています。本製品は第4四半期の生産開始を目指し、更なる改善を継続しています。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は81億86百万円です。
■食品流通部門
自販機分野では、レギュラーコーヒーのニーズが高まる中、シロップレス・コンパクトカップ自販機「FXA2」を開発し発売しました。前面扉の一部をシースルー化し調理シーンが見える斬新なデザインを採用しました。また、利用者の操作性に配慮し、商品ラベルや選択ボタンをレイアウトしました。更に自販機用通信モジュールを搭載し、自販機のIoT化を推進しています。これによりマーケティングデータの収集やオペレーション効率の向上が可能になります。
海外向けでは、東南アジアを中心に多く流通している背の高いスリーク缶や600mlペットボトルなどの大型商品に対応した缶・ペット自販機のシリーズ化を図りました。東南アジアでニーズの高い小容量のガラス瓶(ドリンク瓶)飲料を全コラムで販売できる販売機構を開発し、この機構を搭載したドリンク瓶販売機を発売しました。また、国内と同様に前面扉の一部をシースルー化し調理シーンが見える小型のコンパクトカップ機を開発し発売しました。
金銭分野では、検銭レベルを向上するとともに、保守作業時に2次元コードを読み取って簡単にオンラインマニュアルにアクセスできる新コインメックを開発し発売しました。
店舗分野では少子高齢化に伴う人手不足、賃金高騰化、コンビニの24時間営業問題など小売業界の共通課題を解決する提案として「2WAY販売機」を展示会に参考出品しました。自動化技術を活用し夜間は自動販売機として無人販売、昼間はショーケースとして有人販売を一台で実現するショーケース型販売機の開発を進めていきます。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は32億46百万円です。
■発電プラント部門
火力発電分野では、二酸化炭素の排出量を削減するため、蒸気タービンの高効率化の技術を継続的に開発しています。また、発電機の稼働率を向上できるようにメンテナンスサービスの劣化診断を短時間で行える技術を継続的に開発しています。
再生可能エネルギー分野では、地熱発電の蒸気タービンの汚損抑制や寿命拡大、風力発電では高度の系統連系でも安定した電力供給ができる高効率な出力安定化装置、太陽光発電では安定して電力供給できるコンパクトな蓄電池併用パワーコンディショナを継続的に開発しています。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は20億80百万円です。
■新技術・基盤技術部門
プラントモデルを用いて将来の挙動を予測しながら、高精度な制御ができるモデル予測制御(MPC)を当社のプログラマブルロジックコントローラ(PLC)に搭載できる技術を開発しました。以前は高速な計算機が必要でしたが、数式処理技術を応用して事前に解析することで、PLCで動作できるようにしました。これにより、PID制御では考慮が難しい外乱の影響を受けにくい安定した制御を実現できます。今後、化学プラントを初め様々な対象への適用を進めていく予定です。
電力の安定供給に不可欠なガス絶縁開閉装置(GIS)などの高電圧装置の信頼性の向上や小型化を実現する高絶縁性の材料の開発をNEDOの助成を受けて行っています。絶縁電界にあわせて絶縁材料の誘電率を最適に制御する材料技術(誘電率傾斜技術)を開発し、実サイズのモデルを使い、従来よりも30%高い絶縁特性を持つことを実証しました。今後は、長期絶縁寿命特性の評価や量産技術の開発を行っていきます。
■その他部門
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は59百万円です。
(注)上記のうち、将来の経営目標等に関する記載は、本四半期報告書の提出日現在において合理的と判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は、実際の結果とは実質的に異なる可能性があり、当社はこれらの記載のうち、いかなる内容についても、確実性を保証するものではありません。
当社は2019年度を起点に、創立100周年を迎える2023年度を最終年度とする5ヵ年中期経営計画「令和.Prosperity2023」をスタートし、成長分野であるパワエレシステム事業、パワー半導体事業へのリソース傾注や海外事業拡大等の成長戦略を推進しています。
当第3四半期連結累計期間における当社を取り巻く市場環境は、海外では、昨年度から続く米中貿易摩擦の長期化影響等により、中国を中心に投資抑制傾向が継続しました。国内では、海外市場の減速を受け、工作機械関連の輸出が低調に推移する等の影響がみられましたが、老朽化設備の更新需要は堅調に推移しました。
このような環境のもと、当第3四半期連結累計期間の連結業績の売上高は、前年同期の大口案件影響、米中貿易摩擦影響による国内外の生産調整及び設備投資の抑制等により、「パワエレシステム エネルギー」を除く主要4部門で需要が減少し、前年同期に比べ105億18百万円減少の6,117億32百万円となりました。
損益面では、原価低減等を推進したものの、売上高の減少及び為替変動の影響等を主因に、営業損益は前年同期に比べ76億36百万円減少の168億36百万円、経常損益は前年同期に比べ87億49百万円減少の177億13百万円、親会社株主に帰属する四半期純損益は前年同期に比べ60億82百万円減少の102億84百万円となりました。
<セグメント別状況>■パワエレシステム エネルギー部門
売上高:1,462億61百万円(前年同期比 1.8%増加) 営業損益:46億85百万円(前年同期比 31億80百万円減少)
施設・電源システム分野の需要が好調に推移し、売上高は前年同期を上回りましたが、器具分野の需要減少を主因に、営業損益は前年同期を下回りました。
・エネルギーマネジメント分野は、前年同期の海外電力向け大口案件の影響等により、売上高は前年同期を下回りましたが、原価低減等の推進により、営業損益は前年同期を上回りました。
・施設・電源システム分野は、前年同期の国内大口案件が影響したものの、盤事業の海外大口案件の増加等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・器具分野は、工作機械をはじめとする機械セットメーカの需要が減少し、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
■パワエレシステム インダストリー部門
売上高:2,043億73百万円(前年同期比 4.0%減少) 営業損益:11億41百万円(前年同期比 32億22百万円減少)
オートメーション分野の需要減少ならびに社会ソリューション分野の前年同期の大口案件影響を主因に、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・オートメーション分野は、国内及び中国市場を中心に低圧インバータ、FAコンポーネント等の需要が減少し、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・社会ソリューション分野は、前年同期の鉄道車両用電機品の大口案件影響を主因に、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・設備工事分野は、電気設備工事及び空調設備工事が減少し、売上高は前年同期を下回りましたが、原価低減等の推進により、営業損益は前年同期を上回りました。
・ITソリューション分野は、民需分野の大口案件の増加により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■電子デバイス部門
売上高:1,026億31百万円(前年同期比 1.2%減少) 営業損益:89億29百万円(前年同期比 27億76百万円減少)
・電子デバイス分野は、自動車(xEV)向けパワー半導体の需要は増加したものの、中国市場を中心に産業分野向けの需要が減少したことに加え、為替影響等により、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
■食品流通部門
売上高:776億74百万円 (前年同期比 5.0%減少) 営業損益:30億95百万円(前年同期比 80百万円減少)
・自販機分野は、国内及び中国市場の需要が減少したことにより、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・店舗流通分野は、コンビニエンスストア向け店舗設備機器等の需要増加により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■発電プラント部門
売上高:695億68百万円 (前年同期比 2.1%減少) 営業損益:11億13百万円(前年同期比 15億99百万円増加)
・発電プラント分野は、火力・地熱発電設備の大口案件が増加したものの、太陽光発電システムの大口案件が減少し、売上高は前年同期を下回りましたが、営業損益は前年同期に大口案件のコスト増があった影響等により、前年同期を上回りました。
■その他部門
売上高:457億4百万円 (前年同期比 0.4%減少) 営業損益:17億41百万円(前年同期比 16百万円減少)
(注)第1四半期連結会計期間より、組織構造の変更に伴い、パワエレシステム事業の報告セグメントを従来の「パワエレシステム・エネルギーソリューション」及び「パワエレシステム・インダストリーソリューション」から、「パワエレシステム エネルギー」及び「パワエレシステム インダストリー」に変更しております。また、従来「発電」としていた報告セグメントの名称を「発電プラント」に変更しており、各セグメントの前年同期比につきましては、前年同期の数値を変更後の報告セグメントの区分・名称に組み替えたうえで算出しております。
(2)財政状態
当第3四半期連結会計期間末の総資産額は9,817億28百万円となり、前連結会計年度末に比べ290億69百万円増加しました。
流動資産は5,790億21百万円となり、前連結会計年度末に比べ59億25百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ売上債権が524億60百万円減少した一方で、たな卸資産が465億28百万円増加したことなどによるものであります。
固定資産は4,025億79百万円となり、前連結会計年度末に比べ231億69百万円増加しました。このうち、有形固定資産と無形固定資産の合計は2,171億77百万円となり、前連結会計年度末に比べ172億9百万円増加しました。また、投資その他の資産は1,854億2百万円となり、前連結会計年度末に比べ59億60百万円増加しました。これは、主に投資有価証券が、その他有価証券の時価評価差額相当分の増加を主因として、99億65百万円増加したことなどによるものであります。
当第3四半期連結会計期間末の負債合計は5,798億33百万円となり、前連結会計年度末に比べ192億35百万円増加しました。
流動負債は4,285億31百万円となり、前連結会計年度末に比べ26億37百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ短期借入金が217億84百万円、仕入債務が129億85百万円、それぞれ減少した一方で、コマーシャル・ペーパーが455億円、1年内償還予定の社債が150億円、それぞれ増加したことなどによるものであります。
固定負債は1,513億2百万円となり、前連結会計年度末に比べ165億98百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ社債が150億円減少した一方で、長期借入金が190億70百万円増加したことなどによるものであります。
なお、当第3四半期連結会計期間末の有利子負債残高は2,078億68百万円となり、前連結会計年度末に比べ538億83百万円増加しました。また、同残高の総資産に対する比率は21.2%となり、前連結会計年度末に比べ5.0ポイント増加しました。
当第3四半期連結会計期間末の純資産合計は4,018億94百万円となり、前連結会計年度末に比べ98億33百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べその他有価証券評価差額金が116億94百万円増加したことなどによるものであります。これらの結果、自己資本比率は36.9%となり、前連結会計年度末に比べ0.1ポイント減少しました。
(3)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、対処すべき課題について重要な変更はありません。
なお、当社は財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を定めており、その内容等(会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項)は次のとおりであります。
① 基本方針の内容
富士電機(注)は、基本理念を実践し、企業価値の持続的向上を図る過程で、独自の技術、経験及びノウハウ等を積み重ねるとともに、顧客、取引先、地域社会、従業員等さまざまなステークホルダーとの間の良好な関係の維持、発展に努めてまいりました。
これらは、富士電機の有形・無形の貴重な財産であり、いわば“富士電機のDNA”とも呼ぶべき、富士電機の企業価値の創造を支える源泉であります。
富士電機は、その経営理念に基づき、環境の変化に適合した経営を実践し、中長期的な視野で企業価値と株主の皆様の共同利益を一層向上させていくことが、富士電機の企業価値を損なう当社株式の買付行為に対する最も有効な対抗手段であると認識しており、その実現に努めてまいります。
また、当社の株式価値を適正にご理解いただくようIR活動に積極的に取り組むとともに、株主の皆様には四半期毎の業績等に関する報告書の発行、工場見学会の開催等により、富士電機に対するご理解をより一層深めていただくよう努めてまいります。
当社取締役会は、上場会社として株主の皆様の自由な売買を認める以上、特定の者による当社株式の大規模買付行為がなされる場合、これに応ずるべきか否かの判断は、最終的には株主の皆様のご判断に委ねられるべきと考えます。
しかしながら、一般にも高値での売り抜け等の不当な目的による企業買収の存在は否定できないところであり、当社取締役会は、このような富士電機の企業価値・株主の皆様の共同利益を損なう当社株式の大規模買付行為や提案を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として、適当ではないと考えております。
現時点において、当社株式の大規模買付に係る具体的な脅威が生じている訳でなく、また当社としても、そのような買付者が現れた場合の具体的な取り組み(いわゆる「買収防衛策」)を予め定めるものではありません。
しかし、当社取締役会は、株主の皆様から経営の負託を受けた経営者の責務として、富士電機の企業価値・株主の皆様の共同利益を損なうおそれがある株式の大規模買付行為がなされた場合に適切な措置を執り得る社内体制を整備いたします。
(注)本四半期報告書における「富士電機」の表現は、当社並びに子会社及び関連会社から成る企業集団を指します。
② 基本方針を実現するための当社の取り組み
1)企業価値向上の取り組み
富士電機は、持続的成長に向けた基本戦略として、世界各国で見込まれるエネルギー・環境投資を背景として、長年培ってきた電気を自在に操る「パワーエレクトロニクス技術」をベースとし、グローバル市場で成長を成し遂げることを目指しております。
その実現に向け、迅速に経営リソースを「エネルギー・環境」事業にシフトし、「事業を通じてグローバル社会に貢献する企業」として企業価値の最大化とCSR経営の実現を目指します。
2)基本方針に照らし不適切な者による当社の支配を防止するための取り組み
当社は、上記①の基本方針に基づき、富士電機の企業価値・株主の皆様の共同利益を損なう、又はそのおそれのある当社株式の買付行為に備え、社内体制の整備に努めております。
具体的には、日常より当社株式の取引や株主の異動状況を常に注視するとともに、平時より有事対応の初動マニュアルを整備し、外部専門家との連携体制等を整えておりますが、今後とも迅速かつ適切に具体的対抗措置を決定、実行し得る社内体制の充実に努めてまいります。
また、いわゆる「買収防衛策」の導入につきましても、法制度や関係当局の判断・見解、社会動向やステークホルダーの意見等を踏まえ、企業価値、株主の皆様の共同利益の確保、向上の観点から、引き続き検討してまいります。
③ 上記の取り組みに対する取締役会の判断及び判断理由
当社取締役会は、上記②.1)の取り組みが当社の企業価値を中期的に維持・拡大させるものであり、また、同②.2)の取り組みが富士電機の企業価値・株主の皆様の共同利益を毀損するような当社株式の大規模買付行為に対応するための社内体制を整備するものであることから、そのいずれの取り組みも、上記①の基本方針に即したものであり、株主の皆様の共同利益を損なうものではなく、現経営陣の地位の維持を目的とするものでもない旨を確認し決議しました。
また、監査役についても上記②の取り組みについてその具体的運用が適切に行われることを条件として、全員が同意しております。
(5)研究開発活動
持続的成長企業としての基盤を確立するため、パワーエレクトロニクス技術やパワー半導体技術のシナジーを生かした強いコンポーネントとシステム並びに要素技術を複合して顧客価値を創出するソリューションを生み出す研究開発に注力しています。
事業戦略に沿った新製品の開発や海外向け商材開発の現地化、技術マーケティングを活用したテーマ探索の強化、開発の生産性向上に取り組んでいます。
当第3四半期連結累計期間における富士電機の研究開発費は253億27百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。
また、当第3四半期連結会計期間末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は12,835件です。
■パワエレシステム エネルギー部門
電力流通分野では、経済産業省の「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント(VPP)構築実証事業」(2016年度~2020年度)の関西VPPプロジェクトに参加しています。2021年度に創設予定の需給市場に向け、共通実証仕様を実現するための詳細仕様を検討し、実証のための作業を開始しています。実証では需要家向け蓄電池システムに周波数制御用の高速な制御機能を実装した試験も実施します。また、変電所におけるプロセスバスの適用に向け、「変電所保護制御システムのフルデジタル化に向けた開発研究」(2018年度~2019年度)を中部電力株式会社と共同で実施しています。IEC61850準拠の保護制御ユニットIED(Intelligent Electronic Device)およびデータ収集ユニットMU(Merging Unit)の試作と評価を完了し、量産化に向けた変電所全体のシステム構成と機能実装を検討しています。
施設・電源システム分野では、大手クラウドプロバイダーの多い北米やアジアを中心に建設が増大しているハイパースケールデータセンター(超大型)向けに、大容量無停電電源装置(UPS)「7400WX-T3U」を開発し発売しました。本製品はモジュール型構造を採用し、1台330kVAのUPSユニットを4台組み合わせて単機容量で最大1000kVAまで対応することができ、さらに、8機の並列運転が可能であるため最大8000kVAの大規模システムを構築できます。また、独自開発した逆阻止IGBT(RB-IGBT)に加え、SiCパワーデバイスをUPS内の回路に採用し、業界最高レベルの97.4%の装置変換効率を実現し、負荷率25%においても96%以上の装置変換効率を達成しました。さらに本製品の最適負荷運転モードは自動でUPS各機の負荷率を判別し給電調整を行い、システム全体の効率改善に寄与し、データセンターの大容量化と省エネのニーズに応えます。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は51億9百万円です。
■パワエレシステム インダストリー部門
低圧インバータ分野では、耐環境インバータ「FRENIC-eFIT」シリーズを開発し発売しました。本製品はSiCパワーデバイスを採用することにより全閉自冷構造を実現しています。腐食性ガスが発生する化学系プラント、塩害が懸念される沿岸部の工場、風雨に曝される屋外設備等にインバータ本体をそのまま設置して、10年間のメンテナンスフリーが可能です。本インバータは設置・運用コストの削減に貢献いたします。
小容量電源分野では、GXシリーズ用ネットワークカード「Web/SNMPカードⅡ」を開発し発売しました。従来よりも通信セキュリティーを強化し、業界初となるネットワーク規格GbE(ギガビットイーサネット)にも対応し、仮想化システムのシャットダウン処理速度を従来比30倍に高速化しました。また、IPアドレス自動設定機能や瞬低検出機能、Auto-MDIX機能を追加し、利便性の更なる向上を図りました。
また、産業機器向けAC/DC電源「FIP06シリーズ」を開発し発売しました。AC100V~240Vの入力電圧に対応します。12Vと24Vの出力ブロック基板を組み合わせて、お客様が希望する出力数と出力電圧を自由に選択できます。オプションの外付けバッテリによって、停電時に動作継続が必要な装置にも対応します。
FAコンポーネント分野では、発売済のサーボシステムALPHA7シリーズの汎用タイプ(パルス/アナログ/位置決め/Modbus)、SXバスタイプ、EtherCAT通信タイプの容量を5kWまで拡大し、発売しました。印刷機械、巻取り装置、搬送装置などの大型の機械装置の更なる高精度化・高機能化・生産性向上に貢献します。また、主に国内のインフラ設備向けに、システムを二重化することで信頼性を高めたコントローラ「MICREX-SX SPH5000H」を開発し発売しました。CPUとCPUを上位システムにつなぐ制御ネットワークを二重化しました。さらに、CPUと入出力ユニットをつなぐI/Oネットワークは二重化かつループ化することで、インフラ設備の安定稼働に貢献します。
計測機器・センサー分野では、クランプオン式で飽和蒸気の流量計測ができる蒸気用超音波流量計を世界で初めて開発し発売しました。この流量計は、配管工事が不要であるため蒸気ラインを止めずに設置でき、圧力損失もありません。飽和蒸気流量の見える化により、効率的な利用と省エネに貢献します。
また、船舶スクラバ用レーザ方式ガス分析計を開発し発売しました。盤体への収納を不要にして世界最小サイズを実現しました。採取部、検出部と制御部の各ユニットは、個別に壁面や床に設置できるので、制約の多い既存船でも容易に設置できます。また、安定性に優れるレーザ方式を採用したことから、交換部品が少なく、さらに、校正頻度を下げることができるため、ランニングコストは従来に比べ50%以下になります。
FAシステム分野では、IoT(Internet of Things)による製造業のデジタル化を推進するため、現場型診断装置「SignAiEdge」を開発し発売しました。タッチオペレーションが可能な表示器一体型のこのエッジコントローラは、富士電機のアナリティクス・AI(MSPC)のほかに、現場情報の解析・診断に必要な機能を全て搭載しています。現場で誰にでも使いやすいこの診断装置を使って、これまで見えなかった問題点を可視化し、生産性の改善に貢献します。
また、既に発売した船舶向けSOxスクラバよりも大容量の機種を開発し系列を拡大しました。独自のサイクロン技術によって、小型化と排ガス浄化(脱硫)性能を両立しています。このライナップの拡大により、大型船(エンジン出力16~24MW)にも対応できるようになりました。
駆動制御システム分野では、主に駆動制御を行う電機高速コントローラ「MICREX-View XX XCS-3000 Type E」を開発し発売しました。伝送容量の増大と業界最速の高速データ更新(最速0.5ms)により、鉄鋼/非鉄プラントを始めとするプラント設備で性能を発揮します。また、コントローラ間ネットワークおよびI/O機器間ネットワークをそれぞれループ接続することで、ネットワークの高信頼化を図り、産業プラントの安定操業に貢献します。
社会ソリューション分野では、オフィスビル向けに建物の挙動の三次元計測とそのデータの収集を行う「建物構造ヘルスモニタリングシステム」を開発し発売しました。地震発生時に建物の被災度を判定する別のシステムと連携することで、建物の安全性や損傷状況が速やかに判定できます。避難指示や事業継続の判断を支援してオフィスビル利用者に安全安心を提供します。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は66億45百万円です。
■電子デバイス部門
パワー半導体分野では、低損失及び高温動作保証を可能とした最新の第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。第7世代IGBTモジュールは、1700V,1200V,650Vの標準製品の系列化を完了しました。第7世代IGBT製品では、駆動機能や保護機能を備えたIPM(Intelligent Power Module)の系列化を進めています。最初の製品として定格650V/75A品を開発し、電力変換装置の小型化・高効率化・高信頼性化に貢献します。また、産業用途にRC-IGBT(逆導通IGBT)チップを開発し、産業用RC-IGBTモジュール1200V/50Aと1000Aを系列に加えました。RC-IGBTの採用によりパワー密度が向上し、チップ面積が大幅に縮小できます。これによりIGBTモジュールが小型化し、パワーエレクトロニクス装置の小型・軽量化に貢献します。
さらに、シリコンに代わる半導体材料として注目されているSiC(炭化ケイ素)を使った低損失のSiC-SBDと第7世代IGBTを組み合わせた3300V/1200A,1800Aハイブリッドモジュールを開発しました。SiCチップの採用により、パワーエレクトロニクス装置の更なる電力効率の向上や小型化に貢献します。
電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)で使用される車載用直接水冷型パワーモジュールの供給先の拡大と新規のスペックインを継続しています。また、2020年モデル向けに、従来よりもオン電圧とスイッチング損失を低減したRC-IGBTを開発し量産を開始しました。EVやHEVシステム全体の小型軽量化や高効率化に貢献します。
EVやHEV、プラグインハイブリット車(PHEV)で使用される車載用直接水冷型パワーモジュールの供給先を拡げました。また、従来よりもオン電圧とスイッチング損失を低減した2020年モデル向けのRC-IGBTの開発を完了しました。システム全体の小型・軽量化及び高効率化に貢献します。
産業用ディスクリート製品では、最新の低損失設計となる第7世代IGBT技術をディスクリート用に最適化した1200Vの低損失ディスクリートIGBT XSシリーズの40A品を開発し系列に加えました。オン電圧を下げつつ、定常損失とスイッチング損失を同時に低減したので、小型UPSやソーラPCS、サーバとEV充電器など各種機器の損失低減、高効率化に貢献します。
感光体分野では、最新のオフィス向けカラー複写機用感光体を開発し発売しました。高精度素管の採用により高い色再現性を確保すると共に、摩耗耐性を持つ樹脂の採用により周辺部材からの機械的ストレス影響を抑制し、長寿命を実現しました。これにより長期間にわたり高い印字品質の維持が可能となります。
ディスク媒体部門では、データセンター等で活用されているニアライン用ハードディスクドライブ16TB機種用媒体(3.5インチ、ガラス基板、1.78TB/枚)を開発しました。磁性およびHDI(ヘッド・ディスクインタフェース)に新規技術を採用することで、高記録密度と高い信頼性を確保しています。本製品は第4四半期の生産開始を目指し、更なる改善を継続しています。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は81億86百万円です。
■食品流通部門
自販機分野では、レギュラーコーヒーのニーズが高まる中、シロップレス・コンパクトカップ自販機「FXA2」を開発し発売しました。前面扉の一部をシースルー化し調理シーンが見える斬新なデザインを採用しました。また、利用者の操作性に配慮し、商品ラベルや選択ボタンをレイアウトしました。更に自販機用通信モジュールを搭載し、自販機のIoT化を推進しています。これによりマーケティングデータの収集やオペレーション効率の向上が可能になります。
海外向けでは、東南アジアを中心に多く流通している背の高いスリーク缶や600mlペットボトルなどの大型商品に対応した缶・ペット自販機のシリーズ化を図りました。東南アジアでニーズの高い小容量のガラス瓶(ドリンク瓶)飲料を全コラムで販売できる販売機構を開発し、この機構を搭載したドリンク瓶販売機を発売しました。また、国内と同様に前面扉の一部をシースルー化し調理シーンが見える小型のコンパクトカップ機を開発し発売しました。
金銭分野では、検銭レベルを向上するとともに、保守作業時に2次元コードを読み取って簡単にオンラインマニュアルにアクセスできる新コインメックを開発し発売しました。
店舗分野では少子高齢化に伴う人手不足、賃金高騰化、コンビニの24時間営業問題など小売業界の共通課題を解決する提案として「2WAY販売機」を展示会に参考出品しました。自動化技術を活用し夜間は自動販売機として無人販売、昼間はショーケースとして有人販売を一台で実現するショーケース型販売機の開発を進めていきます。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は32億46百万円です。
■発電プラント部門
火力発電分野では、二酸化炭素の排出量を削減するため、蒸気タービンの高効率化の技術を継続的に開発しています。また、発電機の稼働率を向上できるようにメンテナンスサービスの劣化診断を短時間で行える技術を継続的に開発しています。
再生可能エネルギー分野では、地熱発電の蒸気タービンの汚損抑制や寿命拡大、風力発電では高度の系統連系でも安定した電力供給ができる高効率な出力安定化装置、太陽光発電では安定して電力供給できるコンパクトな蓄電池併用パワーコンディショナを継続的に開発しています。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は20億80百万円です。
■新技術・基盤技術部門
プラントモデルを用いて将来の挙動を予測しながら、高精度な制御ができるモデル予測制御(MPC)を当社のプログラマブルロジックコントローラ(PLC)に搭載できる技術を開発しました。以前は高速な計算機が必要でしたが、数式処理技術を応用して事前に解析することで、PLCで動作できるようにしました。これにより、PID制御では考慮が難しい外乱の影響を受けにくい安定した制御を実現できます。今後、化学プラントを初め様々な対象への適用を進めていく予定です。
電力の安定供給に不可欠なガス絶縁開閉装置(GIS)などの高電圧装置の信頼性の向上や小型化を実現する高絶縁性の材料の開発をNEDOの助成を受けて行っています。絶縁電界にあわせて絶縁材料の誘電率を最適に制御する材料技術(誘電率傾斜技術)を開発し、実サイズのモデルを使い、従来よりも30%高い絶縁特性を持つことを実証しました。今後は、長期絶縁寿命特性の評価や量産技術の開発を行っていきます。
■その他部門
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は59百万円です。
(注)上記のうち、将来の経営目標等に関する記載は、本四半期報告書の提出日現在において合理的と判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は、実際の結果とは実質的に異なる可能性があり、当社はこれらの記載のうち、いかなる内容についても、確実性を保証するものではありません。