四半期報告書-第146期第1四半期(令和3年4月1日-令和3年6月30日)

【提出】
2021/08/11 15:30
【資料】
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【項目】
38項目
(1)経営成績
当社は2019年度を起点に、創立100周年を迎える2023年度を最終年度とする5ヵ年中期経営計画「令和.Prosperity2023」をスタートさせ、成長分野であるパワエレシステム事業、パワー半導体事業へのリソース傾注や海外事業拡大等の成長戦略を推進しています。
当第1四半期連結累計期間における当社を取り巻く市場環境は、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復基調が継続しました。とりわけ、製造業の設備投資の持ち直しにより、工作機械関連の需要が好調に推移したほか、自動車の電動化や再生可能エネルギーのニーズの高まりを受け、半導体の需要が大幅に拡大しました。
このような環境のもと、当第1四半期連結累計期間の連結業績の売上高は、「パワエレシステム エネルギー」「パワエレシステム インダストリー」「半導体」を中心とした需要の増加により、前年同期に比べ211億14百万円増加の1,899億58百万円となりました。
損益面では、売上高の増加により、営業損益は前年同期に比べ28億64百万円増加の52億99百万円、経常損益は前年同期に比べ32億70百万円増加の59億9百万円、親会社株主に帰属する四半期純損益は前年同期に比べ36億17百万円増加の49億73百万円となりました。
<セグメント別状況>■パワエレシステム エネルギー部門
売上高:474億18百万円(前年同期比 23.5%増加) 営業損益:10億97百万円(前年同期比 92百万円減少)
全ての分野において需要が拡大し、売上高は前年同期を上回りました。また、営業損益は器具分野で増加したものの、その他の分野における案件差等により、前年同期を下回りました。
・エネルギーマネジメント分野は、電力流通及び産業向け変電機器の大口案件等により、売上高は前年同期を上回りましたが、案件差等により、営業損益は前年同期を下回りました。
・施設・電源システム分野は、データセンター及び半導体向けの大口案件等により、売上高は前年同期を上回りましたが、案件差等により、営業損益は前年同期を下回りました。
・器具分野は、工作機械をはじめとする国内外の機械セットメーカの需要が拡大し、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■パワエレシステム インダストリー部門
売上高:625億69百万円(前年同期比 8.0%増加) 営業損益:2億24百万円(前年同期比 15億97百万円増加)
ITソリューション分野の売上高が減少したものの、オートメーション分野を中心に需要が拡大し、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・オートメーション分野は、低圧インバータ及びFAコンポーネントを中心に国内外で需要が拡大し、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・社会ソリューション分野は、鉄道車両用電機品及び放射線機器の需要が増加し、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・設備工事分野は、電気設備工事の需要が増加し、売上高は前年同期を上回りましたが、案件差等により、営業損益は前年同期を下回りました。
・ITソリューション分野は、前年同期の公共分野の大口案件影響等により、売上高は前年同期を下回りましたが、案件差等により、営業損益は前年同期を上回りました。
(注)2021年3月期第3四半期連結会計期間より、「船舶用排ガス浄化システム」を「オートメーション分野」から「社会ソリューション分野」に移管しており、前年同期の数値を移管後の分野に組み替えたうえで算出しております。
■半導体部門
売上高:445億29百万円(前年同期比 27.2%増加) 営業損益:55億53百万円(前年同期比 28億6百万円増加)
・半導体分野は、パワー半導体生産能力増強及び研究開発に係る費用が増加したものの、電気自動車(xEV)向け及び産業分野向けのパワー半導体の需要拡大により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■発電プラント部門
売上高:119億52百万円(前年同期比 23.7%減少) 営業損益:△6億73百万円(前年同期比 15億69百万円減少)
・発電プラント分野は、前年同期の再生可能エネルギーの大口案件影響により、売上高は前年同期を下回りました。また、売上高の減少及び案件差等により、営業損益も前年同期を下回りました。
■食品流通部門
売上高:220億55百万円(前年同期比 15.9%増加) 営業損益:2億10百万円(前年同期比 3億89百万円増加)
店舗流通分野の需要拡大により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・自販機分野は、固定費削減等を推進したものの、国内飲料メーカの設備投資計画の延伸等により、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・店舗流通分野は、コンビニエンスストア向け店舗設備機器等の需要拡大により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■その他部門
売上高:123億36百万円(前年同期比 1.3%増加) 営業損益:4億69百万円(前年同期比 1億52百万円増加)
(注)当第1四半期連結会計期間より、従来「電子デバイス」としていた報告セグメントの名称を「半導体」に
変更しております。
(2)財政状態
当第1四半期連結会計期間末の総資産額は1兆190億30百万円となり、前連結会計年度末に比べ329億22百万円減少しました。
流動資産は5,894億61百万円となり、前連結会計年度末に比べ397億46百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べ現金及び預金が105億10百万円増加した一方で、受取手形、売掛金及び契約資産が301億81百万円、棚卸資産が234億62百万円、それぞれ減少したことなどによるものであります。
固定資産は4,294億81百万円となり、前連結会計年度末に比べ68億29百万円増加しました。このうち、有形固定資産と無形固定資産の合計は2,354億54百万円となり、前連結会計年度末に比べ22億70百万円増加しました。また、投資その他の資産は1,940億27百万円となり、前連結会計年度末に比べ45億59百万円増加しました。これは、主に投資有価証券が、その他有価証券の時価評価差額相当分の増加を主因として、87億72百万円増加したことによるものであります。
当第1四半期連結会計期間末の負債合計は5,479億73百万円となり、前連結会計年度末に比べ427億25百万円減少しました。
流動負債は3,217億3百万円となり、前連結会計年度末に比べ347億13百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べ短期借入金が93億50百万円増加した一方で、仕入債務が304億89百万円、未払法人税等が139億97百万円、それぞれ減少したことなどによるものであります。
固定負債は2,262億69百万円となり、前連結会計年度末に比べ80億12百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べ長期借入金が111億6百万円減少したことなどによるものであります。
なお、当第1四半期連結会計期間末の有利子負債残高は2,147億35百万円となり、前連結会計年度末に比べ14億70百万円減少しました。また、同残高の総資産に対する比率は21.1%となり、前連結会計年度末に比べ0.5ポイント増加しました。
当第1四半期連結会計期間末の純資産合計は4,710億57百万円となり、前連結会計年度末に比べ98億3百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べその他有価証券評価差額金が90億3百万円増加したことなどによるものであります。これらの結果、自己資本比率は41.8%となり、前連結会計年度末に比べ2.2ポイント増加しました。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4)経営方針・経営戦略等
当第1四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6)財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第1四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更はありません。
(7)研究開発活動
富士電機は、パワー半導体、パワーエレクトロニクス、計測・制御、冷熱などのコア技術を活用して、創エネルギーからエネルギー安定供給や省エネルギー、オートメーション、モビリティの電動化など、多くの先端的なシステムを手掛けています。
当第1四半期連結累計期間における富士電機の研究開発費は76億91百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。
また、当第1四半期連結会計期間末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,336件です。
■パワエレシステム エネルギー部門
IoT・AI技術を活用して、受配電設備の保全計画立案から設備の監視、設備更新計画の立案までを支援する「まるごとスマート保安サービス」を開発し発売しました。エッジコントローラで収集した稼動データをクラウド上のサーバに蓄積して一元管理し、設備の稼働監視と劣化診断を行うことで予防保全を可能にし、設備保全業務の効率化を支援します。
器具分野では、配線用遮断器・漏電遮断器「G-TWⅠNおよびG-TWⅠNラムダ 母線プラグイン」シリーズにおいて、半導体装置やデータセンター、低圧受電盤、分電盤向けに標準の30mmピッチ品と、北米・アジア・EUの規格を取得したグローバル対応の30mm・70mmピッチ品を開発し発売しました。プラグイン方式により、省スペース化と施工作業性が向上し、容量変更や増設が容易になります。また、ユーザーのグローバルな展開に貢献します。
当第1四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は14億65百万円です。
■パワエレシステム インダストリー部門
スマートファクトリーを実現するため、パワエレシステム事業におけるシステム製品のマザー工場である東京工場で、自営の第5世代移動通信システム(ローカル5G)の実証実験を開始しました。工作機械や加工中の金属部品などの遮蔽物が多い環境下で電波の伝搬を調査し、生産管理システムなどの工場全体の情報を管理する基幹システムと、機械加工現場にある設備や機器との間における大容量データ通信の有効性を実証しています。本実証実験で得られた知見を当社の生産活動に活用するとともに、ローカル5Gの特長を生かしたソリューションを創出します。
当第1四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は21億54百万円です。
■半導体部門
産業用モジュールでは、低損失で高温動作を保証した最新の第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。
第7世代IGBTモジュールは、標準品の系列化が昨年度末に完了し、駆動機能や保護機能を備えたIPM(Intelligent Power Module)の系列化を進めています。第7世代IGBT-IPMは、FA、工作機械、空調機器向けに650V/20~250A、1,200V/10~150Aの系列化が完了しました。さらに大容量の650V/300~450A、1,200Ⅴ/200~300Aの開発を進めています。また、ルームエアコンやモータードライブ向けには650V/15~30Aの第3世代小容量IPMを開発しました。本製品はデバイスのプロセス条件を最適化することにより、インバータの発生損失と放射ノイズのトレードオフ特性を改善しました。これにより、省エネとEMC規格対応を実現します。
さらに、Si(シリコン)に代わる半導体材料として注目されているSiC(炭化ケイ素)を使ったSiCモジュール製品の系列化を進めています。第2世代トレンチMOSFETチップを搭載した1,200Ⅴ/300~600A、1,700V/200~400AのAll-SiCモジュールのサンプル展開を開始しました。SiCチップにより、電力変換装置の更なる電力効率の向上や小型化に貢献します。
車載モジュールでは、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の2021年以降のモデル向けに、第4世代直接水冷技術や次世代チップ技術を適用して電力密度を更に高めた直接水冷型パワーモジュールを開発しています。また、小型モータ駆動用の小容量IPMの系列拡大を進めています。これらの製品を通じて、EVやHEVシステム全体の小型軽量化や高効率化に貢献します。
ディスクリート製品では、サーバや通信基地局などの電源向けに、順電圧VFの低減とサージ順電流IFSMを向上させた650V/10Aの第2世代ディスクリートSiC-SBDを開発しました。これにより、電源機器の高効率化と高信頼性に貢献します。
IC製品では、LED照明などの電源向けに低THD(全高調波ひずみ)制御回路と起動回路を内蔵した臨界モードPFC(力率改善)制御ICを開発しました。THD制御回路によりPFC回路部の入力電流が低ひずみ化され高調波規格への対応が容易になります。また、起動回路により電源投入時のLED照明の高速起動と待機時のPFC回路の低待機電力化による電源の省エネの両立が可能となります。
感光体製品では、オフィス向け中高速カラーA4プリンタ用有機感光体を開発し量産を開始しました。高濃度および色の再現性、ならびに環境変化および印刷枚数増大に伴う電気特性変動の抑制を実現し、印字品質の長期安定化を達成しています。
当第1四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は28億25百万円です。
■発電プラント部門
再生可能エネルギー分野では、地熱発電の蒸気タービンの汚損を抑制する技術や寿命を拡大する技術を開発しています。また、風力発電の高度な系統連系条件でも安定した電力供給ができる高効率な出力安定化装置や太陽光パネルの出力が変動しても安定した無駄のない電力供給ができるコンパクトな蓄電池併用PCSを開発しています。
火力発電分野では、二酸化炭素の排出量を削減するため、蒸気タービンの高効率化の技術を開発しています。また、メンテナンスサービスとして、コロナ禍においてもお客様への対応を可能とするリモート技術や診断時間を短縮する技術を開発しています。
当第1四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は5億48百万円です。
■食品流通部門
自販機分野では、スマートフォンで決済可能なキャッシュレス装置を開発しました。当社が開発した自販機用通信端末「MCU」と自販機表面に貼り付けたステッカーなどの二次元コード(QRコード)だけで構成されています。利用者は、スマートフォンの決済アプリケーションを立ち上げて自販機前面のQRコードを読み取り、決済アプリケーション上で商品を選択すると自動的に決済され商品が購入できます。缶・ボトル用自販機から適用を開始し、食品用自販機や物品用自販機に拡大していく予定です。従来より安価に導入できるため、キャッシュレス決済に対応した自販機台数の拡大に貢献します。
当第1四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は6億95百万円です。
■新技術・基盤技術部門
脱炭素化を進める上で重要な太陽光発電が電力系統に大量導入されると発電機の回転体が持つ慣性の作用が低下し、事故などで需給バランスが崩れたときに系統周波数の維持が困難になります。そこで、太陽光発電用PCSの制御を工夫して慣性の作用を疑似的に持たせることで系統周波数を維持する機能を開発しています。昨年度までに電流制御型と電圧制御型の2方式の周波数維持機能(疑似慣性制御)を太陽光発電用PCSに実装して周波数変動が抑制できることを検証しました。今年度は、模擬系統に接続して各方式の周波数安定化の効果を評価するとともに、両方式が混在した場合の影響について評価する予定です。
アナリティクス・AIでは、お客様のDXの推進に寄与するAIエンジンを開発しています。画像AIでは、製造現場の外観検査を対象に、AIシステム運用時の課題であるAIの性能を長期にわたって安定的に維持させるための技術を開発しています。また、動画像を解析し、時間的な変化を認識できる状態監視技術の開発にも着手しました。
北極海航路を利用した船舶の航行が増加する中、国際海事機関(IMO)を中心に国際的な排出規制の検討が始まっています。そこで、道路用集塵機で培った集塵技術を応用して、船舶向けにディーゼルエンジンの排ガスに含まれる微粒子(PM)を効果的に捕集する技術を開発しています。国立研究開発法人 海上技術安全研究所の設備を利用した性能評価により、高い集塵特性が得られることを検証しました。SOxを削減するスクラバー技術や排熱回収技術と組み合わせることで、船舶の排ガスをよりクリーンにするだけでなく、エネルギー利用の効率化と耐用寿命の延伸も期待できます。
■その他部門
当第1四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は2百万円です。
(注)上記のうち、将来の経営目標等に関する記載は、本四半期報告書の提出日現在において合理的と判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は、実際の結果とは実質的に異なる可能性があり、当社はこれらの記載のうち、いかなる内容についても、確実性を保証するものではありません。