四半期報告書-第145期第3四半期(令和2年10月1日-令和2年12月31日)
(1)経営成績
当社は2019年度を起点に、創立100周年を迎える2023年度を最終年度とする5ヵ年中期経営計画「令和.Prosperity2023」をスタートさせ、成長分野であるパワエレシステム事業、パワー半導体事業へのリソース傾注や海外事業拡大等の成長戦略を推進しています。
当第3四半期連結累計期間における当社を取り巻く市場環境は、世界的に拡大した新型コロナウイルス感染症の影響により、国内外で投資抑制傾向が継続する等、厳しい状況が続きました。こうした中で、中国では上期より経済活動の再開がいち早く進み、製造業の設備投資に持ち直しの動きが見られました。
このような環境のもと、当第3四半期連結累計期間の連結業績の売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、設備投資抑制や納期延伸及び前年同期の大口案件影響により、「電子デバイス」を除く4部門で需要が減少し、前年同期に比べ504億22百万円減少の5,613億10百万円となりました。
損益面では、原価低減及び固定費削減等を推進したものの、売上高、生産高の大幅な減少等により、営業損益は前年同期に比べ27億63百万円減少の140億73百万円、経常損益は前年同期に比べ37億57百万円減少の139億56百万円、親会社株主に帰属する四半期純損益はパワー半導体の特定分野向けの一部の製品の不具合対策費用として166億57百万円を特別損失に計上したこと等により、前年同期に比べ143億17百万円減少の△40億33百万円となりました。
なお、当第3四半期連結会計期間の連結業績は、売上高は「食品流通」の顧客の投資抑制継続及び「発電プラント」の前年同期の大口案件の影響があったものの、「パワエレシステム エネルギー」、「パワエレシステム インダストリー」及び「電子デバイス」における需要が堅調に推移し、前年並みとなりました。営業損益は、パワー半導体の需要増加及び固定費削減等の推進により、前年同期に比べ大幅な増加となりました。
<セグメント別状況>■パワエレシステム エネルギー部門
売上高:1,363億40百万円(前年同期比 6.8%減少) 営業損益:49億78百万円(前年同期比 2億93百万円増加)
全ての分野において売上高は前年同期を下回りましたが、固定費削減の推進や案件差等により、営業損益は前年同期を上回りました。
・エネルギーマネジメント分野は、産業向け電源機器の前年同期大口案件の影響及びスマートメータの需要減少により、売上高は前年同期を下回りましたが、案件差等により、営業損益は前年同期を上回りました。
・施設・電源システム分野は、電機盤の前年同期大口案件影響により、売上高は前年同期を下回りましたが、原価低減等により、営業損益は前年同期を上回りました。
・器具分野は、工作機械をはじめとする国内の機械セットメーカならびに受配電盤メーカの需要減少により、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
■パワエレシステム インダストリー部門
売上高:2,016億円(前年同期比 1.4%減少) 営業損益:23億円(前年同期比 11億59百万円増加)
社会ソリューション分野の需要が増加したものの、国内におけるオートメーション分野の需要減少、設備工事分野及びITソリューション分野の前年同期の大口案件の影響を主因に売上高は前年同期を下回りましたが、原価低減及び固定費削減等の推進により、営業損益は前年同期を上回りました。
・オートメーション分野は、中国において低圧インバータ及びFAコンポーネントの需要が増加したものの、国内における需要が低調に推移し、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・社会ソリューション分野は、鉄道車両用電機品及び船舶用排ガス浄化システムの需要が拡大し、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・設備工事分野は、設備投資計画の延伸や前年同期の電気設備工事の大口案件影響等により、売上高は前年同期を下回りましたが、原価低減等の推進により、営業損益は前年同期を上回りました。
・ITソリューション分野は、前年同期の大口案件の影響により、売上高は前年同期を下回りましたが、案件差等により、営業損益は前年同期を上回りました。
(注)第3四半期連結会計期間より、「船舶用排ガス浄化システム」を「オートメーション分野」から「社会ソリューション分野」に移管しており、前年同期の数値を移管後の分野に組み替えたうえで算出しております。
■電子デバイス部門
売上高:1,123億35百万円(前年同期比 9.5%増加) 営業損益:114億27百万円(前年同期比 24億98百万円増加)
・電子デバイス分野は、電気自動車(xEV)向け、新エネルギー市場向け及び工作機械顧客向けのパワー半導体の需要増加により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■食品流通部門
売上高:540億94百万円(前年同期比 30.4%減少) 営業損益:△44億13百万円(前年同期比 75億8百万円減少)
自販機分野及び店舗流通分野ともに、新型コロナウイルス感染症の影響継続に伴う設備投資抑制や納期延伸等により需要が減少し、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・自販機分野は、国内飲料メーカの設備投資の抑制、ならびに中国の需要減少により、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・店舗流通分野は、コンビニエンスストア向け店舗設備機器等の需要減少により、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
■発電プラント部門
売上高:508億21百万円(前年同期比 26.9%減少) 営業損益:17億53百万円(前年同期比 6億40百万円増加)
・発電プラント分野は、前年同期の火力発電設備及び再生可能エネルギーの大口案件影響により、売上高は前年同期を下回りましたが、営業損益は案件差等により、前年同期を上回りました。
■その他部門
売上高:384億21百万円(前年同期比 15.9%減少) 営業損益:11億75百万円(前年同期比 5億66百万円減少)
(2)財政状態
当第3四半期連結会計期間末の総資産額は1兆789億99百万円となり、前連結会計年度末に比べ821億72百万円増加しました。
流動資産は6,448億45百万円となり、前連結会計年度末に比べ491億53百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ売上債権が456億94百万円減少した一方で、現金及び預金が420億5百万円、たな卸資産が392億36百万円、それぞれ増加したことなどによるものであります。
固定資産は4,340億56百万円となり、前連結会計年度末に比べ330億40百万円増加しました。このうち、有形固定資産と無形固定資産の合計は2,219億43百万円となり、前連結会計年度末に比べ45億56百万円減少しました。また、投資その他の資産は2,121億13百万円となり、前連結会計年度末に比べ375億96百万円増加しました。これは、主に投資有価証券が、その他有価証券の時価評価差額相当分の増加を主因として、460億29百万円増加したことなどによるものであります。
当第3四半期連結会計期間末の負債合計は6,541億35百万円となり、前連結会計年度末に比べ633億10百万円増加しました。
流動負債は4,209億88百万円となり、前連結会計年度末に比べ21億72百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べコマーシャル・ペーパーが515億円増加した一方で、仕入債務が240億56百万円、1年内償還予定の社債が150億円、それぞれ減少したことなどによるものであります。
固定負債は2,331億47百万円となり、前連結会計年度末に比べ654億83百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ長期借入金が586億90百万円増加したことなどによるものであります。
なお、当第3四半期連結会計期間末の有利子負債残高は3,128億81百万円となり、前連結会計年度末に比べ955億17百万円増加しました。また、同残高の総資産に対する比率は29.0%となり、前連結会計年度末に比べ7.2ポイント増加しました。
当第3四半期連結会計期間末の純資産合計は4,248億63百万円となり、前連結会計年度末に比べ188億61百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ利益剰余金が154億94百万円減少した一方で、その他有価証券評価差額金が323億72百万円増加したことなどによるものであります。これらの結果、自己資本比率は35.5%となり、前連結会計年度末に比べ1.2ポイント減少しました。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6)財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第3四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更はありません。
(7)研究開発活動
パワーエレクトロニクス技術やパワー半導体技術のシナジーを生かした強いコンポーネントとシステム並びに要素技術を複合して顧客価値を創出するソリューションを生み出す研究開発に注力しています。
メーカーとしてリアルの技術を磨くとともに、最新のデジタル技術を深化させ、アナリティクス・AIの応用拡大を加速しています。クリーンな創エネルギーからエネルギーの安定供給、需要家サイドに至る自動化、省エネ・省力化などに貢献します。
当第3四半期連結累計期間における富士電機の研究開発費は244億89百万円であり、各部門の研究成果および研究開発費は次のとおりです。
また、当第3四半期連結会計期間末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,257件です。
■パワエレシステム エネルギー部門
電力流通分野では、2021年度に創設される予定の需給調整市場に向け、経済産業省の「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント(VPP)構築実証事業」(2016年度~2020年度)に参画し、DR(Demand Response)や高速な周波数制御の実証試験を実施しています。
器具分野では、「AR22・DR22、AR30・DR30押しボタンスイッチ」を開発し、スプリング端子機器「F-QuiQ」シリーズに加えました。「プッシュイン方式」を採用しているので、より線の先端に取り付けた棒状のフェルール端子を差し込むだけで配線できます。固定用の端子ねじも配線用の工具も不要で誰でも簡単にばらつきなく確実に配線できます。配線工数の削減と作業品質の安定化により、装置や制御盤などの生産効率の向上に大きく貢献します。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は46億46百万円です。
■パワエレシステム インダストリー部門
低圧インバータ分野では、制動エネルギーを電源側に回生するPWMコンバータ「FRENIC-RHCシリーズ」を開発し発売しました。様々な通信プロトコルに対応したオプションカードを揃えています。標準装備したトレースバック機能によりアラーム発生時に保持したデータを使って容易に故障解析ができます。また、最大4台まで並列接続することにより2,800kWまで容量を拡大できます。プラント設備や大容量クレーン、サーボプレスなどの省エネルギー化に貢献します。
小容量電源分野では、制御盤用のAC/DC電源を開発しています。AC100V~240Vの入力電圧に対応し、出力電圧24Vで出力電流10A、20A、40Aの3タイプに対してそれぞれ標準モデルとメンテナンスフリーモデルをラインアップしました。ラックマウントや低背構造、コネクタ接続により制御盤内の電源や配線を従来よりも最大50%省スペース化したことで、より多くの制御機器が設置できます。また、電源の信頼性が要求されるシステムに対応できるよう二重化機能を内蔵しています。2台の電源を並列接続するだけで簡単に冗長運転が可能になり、1台の電源が故障しても制御盤の稼働が継続できます。
FAコンポーネント分野では、高速・高精度な制御が求められる包装機や印刷機、半導体製造装置などのモーションコントロールシステム向けに、多軸同期制御を実現するプログラマブルコントローラ「MICREX-SXシリーズ」の新CPUモジュール「SPH5000M」を開発し発売しました。マルチコアアーキテクチャを採用し、演算処理能力を高めることにより、同一制御周期で同期できる軸(サーボモータ)数を当社従来機種に対して倍増させました。お客様の設備の性能向上に貢献します。さらに、お客様の基幹システムやサーバなどと接続するEthernetポートの伝送速度を1Gbpsに高めることで設備のIoT化を支援し、設備の稼働データ分析や、遠隔地からのリモート監視・制御などを実現します。また、近年の生産設備におけるエッジコンピューティングに対する強いニーズに応えることができる新しいプログラマブル表示器「MONITOUCH X1 Series」を開発し発売しました。Windowsを搭載することにより、プログラマブル表示器の機能に加えて、情報処理端末で行っていた多くの作業をこのプログラマブル表示器1台で行えます。また、日本国内ならびに欧州、中国、東南アジアなどの生産現場で使用されている通信規格に幅広く対応しています。
高圧インバータやパワーコンディショナ(PCS)分野では、大容量(2,500kVA)太陽光発電用PCS「PVI1500CJ-3/2500」を開発し発売しました。日照の少ない時間帯でも発電量を確保するため、PCSの出力容量を超えた太陽光パネルを設置する過積載が一般的になってきています。PCSの定格出力容量に対して設置する太陽光パネル容量の比として定義される過積載率の限度を従来の150%から200%に増やし、さらに低出力時の変換効率を最大3.5ポイント改善することで、さらなる発電量の向上に貢献します。
駆動制御システム分野では、鉄鋼プラントをはじめとする素材産業向けに、高い安全性を規定した新JISに準拠し、保護機能や運転時の監視機能を充実させた低圧インバータ「FRENIC4000VM6」を開発し発売しました。本機種と従来機種「FRENIC4000VM5R」のユニットに互換性を持たせたため、従来機種の部分更新が可能です。高速大容量の専用通信「E-SXバス」を新たに搭載したことで、コントローラと接続できるインバータの台数が従来の8倍に増加し、大規模プラントのシステム構築を容易にします。さらに、「XCS3000TypeE」コントローラと組み合わせることで、ループバック制御により通信線の1か所が断線しても運転継続ができるため、設備の信頼性が向上し、安定稼働を実現します。
鉄道車両分野では、2020年7月から営業運転を開始した東海旅客鉄道株式会社のN700S系新幹線電車向けに、主回路装置(自社製SiCパワー半導体モジュールを使用した主変換装置、主電動機、主変圧器)、および新たに採用されたフルアクティブダンパ駆動装置(インバータ、小型モータ)を開発し納入を開始しました。
放射線機器・システム分野では、海外の原子力関連施設における個人線量管理に用いる電子式個人線量計として、従来のγ線測定用のNRF50に中性子線測定機能を加えたNRF51とβ線測定機能を加えたNRF54を開発し発売しました。大型ドットディスプレイにより視認性が向上しました。標準装備の無線モジュールと汎用通信モジュールにより900MHz無線やWi‐Fi、赤外線通信、USB、Bluetoothなどの多くの通信手段が利用できます。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は70億55百万円です。
■電子デバイス部門
半導体デバイス分野の産業用モジュールでは、低損失で高温動作を保証した最新の第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。電鉄向けに大容量IGBTモジュール「HPnC」の系列化を進めています。内部構造を最適化することで、高速スイッチングの妨げとなる内部インダクタンスを低減した新たなパッケージを開発し、さらなる低損失化と小型・軽量化を実現しました。これにより、車両機器のエネルギー消費量の低減と小型・軽量化に貢献します。
最新の第7世代「Xシリーズ」素子を搭載した650V/20A~75A、1,200V/10A~35Aの「XシリーズIGBT-IPM」を開発し、量産を開始しました。第7世代チップとパッケージ技術に加え、制御回路の改良により、さらなる低損失化と小型化を実現しました。また、従来の保護機能に加え、インバータをはじめとする電力変換装置がIPMの過熱異常により突然停止する前に、出力を抑制するなどの対応ができるようにアラーム信号を出力する予防保全機能を世界で初めて搭載しました。これらの技術や機能により、電力変換装置の小型化や高効率化、高信頼性化を可能にします。
さらに、シリコンに代わる半導体材料として注目されているSiC(炭化ケイ素)を使った産業向けSiCモジュール製品の系列化を進めています。医療用電源などの高周波用途向けに低損失のSiC-SBDと高速スイッチング特性を持つSi-IGBTを組み合わせた1,200V/300A、450A高速ハイブリッドモジュールを開発しました。SiCチップの採用により、電力変換装置の更なる電力効率の向上や小型化に貢献します。
電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の2020年モデル向けに、従来よりもパワー密度を高めた車載用直接水冷型パワーモジュールの量産を開始しました。さらに、小型モータ駆動用の小容量IPM、DC/DCコンバータ用モジュールなど小容量モジュールの系列を拡大しました。これらの製品を通じて、EVやHEVシステム全体の小型軽量化や高効率化に貢献します。
IC製品では、LED照明や液晶テレビなどの電源向けに高周波バースト制御、共振電流位相比制御などの機能を備えたLLC電流共振ICを開発しました。スイッチング周波数に下限を設けた高周波バースト制御の採用により、LLC電源の実際の使用において大半を占める軽負荷領域の変換効率が向上したので電源の省エネが図れます。また、出力電圧のリップルが抑制されるため、負荷の誤動作を防止します。さらに、新たに共振電流位相比制御機能を内蔵したことにより、安定動作のために従来必要であった位相補償用の外付け回路が不要になり、電源部品点数が削減できます。
ディスクリート製品では、車載部品の信頼性規格AEC-Q101に準拠した車載用「Super J MOS S2A シリーズ」に650Vを開発し系列に加えました。オン抵抗とスイッチング損失を低減したことで、車載用DC/DCコンバータや充電器など各種機器の損失低減や高効率化、小型化に貢献します。
感光体分野では、オフィス向け高速モノクロプリンタ用有機感光体を開発し発売しました。高感度な電荷発生材に加え、使用環境の温度や湿度が変化しても感度特性の変動が少ない下引き層を用いることで、長期にわたり安定した画像品質を実現しました。
ディスク媒体分野では、データセンターなどで活用されているニアライン用ハードディスクドライブ18TB機種向け磁気記録媒体(3.5インチ、ガラス基板、2TB/枚)を開発しました。磁性設計およびHDI(ヘッドディスクインタフェース)に新規技術を採用することで、高記録密度と高信頼性を確保しました。これらによりビット単価低減に貢献します。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は76億66百万円です。
■食品流通部門
自販機分野では、新型コロナウイルス感染症の影響でマスクの必要性が高まる中、いつでもどこでも安心してマスクなどの衛生用品を購入できる自動販売機(以下、マスク自販機)を開発し発売しました。マスクのほかに除菌シートなどを販売することもできます。多くの人が集まる商業施設や公共施設、交通機関などへの展開を見込んでいます。マスク自販機は、ボタンや返却レバー、商品の取り出し口などに抗菌処理を施してあります。庫内温度を18℃以下に保つ機能も備え、夏場に冷やしたマスクを販売することもできます。
東南アジア向けの大型グラスフロント自販機を開発し発売しました。商品の収容数を15%増やし、消費電力量を20%削減しました。また、3.5インチ液晶ディスプレーを搭載し、キャッシュレス決済用のQRコードが表示できます。
店舗流通分野では、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の一助となるよう、ノータッチで手指を消毒できる大容量自動手指消毒機を開発し発売しました。消毒液の噴霧量はダイヤルを回すだけで変更できます。5Lの大型消毒液タンクを内蔵し、噴霧量を約2mLとすると1回の補充で2,000回以上使用できます。さらに鍵付きのため消毒液の盗難の恐れがありません。これらにより、多くの人が集まる学校、オフィス、工場、商業施設などへの設置に適した製品となっています。
省エネ性を向上させたショーケースの系列を拡大し、量産を開始しました。CO2排出量を削減するとともに地球温暖化係数が低い冷媒を採用することにより環境負荷を低減し、持続可能でよりよい社会の実現を目指してまいります。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は31億2百万円です。
■発電プラント部門
火力発電分野では、二酸化炭素の排出量を削減するため、蒸気タービンの高効率化の技術を開発しています。また、メンテナンスサービスにおける劣化診断時間を短縮する技術を開発し、診断メニューの拡張を図っています。
再生可能エネルギー分野では、地熱発電の蒸気タービンの汚損抑制や寿命拡大、風力発電では高度の系統連系でも安定した電力供給ができる高効率な出力安定化装置、太陽光発電では安定して電力供給できるコンパクトな蓄電池併用PCSを開発しています。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は20億6百万円です。
■新技術・基盤技術部門
今後のCO2削減目標を達成するためには太陽光をはじめとする再生可能エネルギーの導入拡大が必須です。火力発電などで従来から用いられている発電機は、電力の需給バランスがくずれても回転体のもつ慣性の作用により系統周波数の変動を緩和する機能を持っています。しかし、そのような機能がない太陽光発電設備が大量導入されると周波数の維持が困難になります。そこで、太陽光発電用PCSの制御を工夫し、周波数を維持する機能を開発しています。この機能を太陽光発電用PCSに実装し、効果の検証を進めていく予定です。
製造現場のデジタル化を進めるIoTプラットフォームの拡充に取り組んでいます。独自の構造化Deep Learningなどに注力して、説明できるAIを実現する技術を開発しています。また、エッジ機器へ搭載可能なアナリティクス・AI技術を開発しています。
SiCデバイスの性能を向上させるため、大規模な分子動力学計算を用いてデバイス特性を劣化させる欠陥の発生メカニズム解明に取り組んでいます。今後、半導体製造プロセス中の反応工程にも計算科学を適用していく予定です。
■その他部門
当第3四半期連結累計期間におけるその他部門の研究開発費は13百万円です。
(8)設備の新設、除却等の計画
2020年11月13日提出の第145期第2四半期報告書において記載した内容から著しい変更はありません。
(注)上記のうち、将来の経営目標等に関する記載は、本四半期報告書の提出日現在において合理的と判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は、実際の結果とは実質的に異なる可能性があり、当社はこれらの記載のうち、いかなる内容についても、確実性を保証するものではありません。
当社は2019年度を起点に、創立100周年を迎える2023年度を最終年度とする5ヵ年中期経営計画「令和.Prosperity2023」をスタートさせ、成長分野であるパワエレシステム事業、パワー半導体事業へのリソース傾注や海外事業拡大等の成長戦略を推進しています。
当第3四半期連結累計期間における当社を取り巻く市場環境は、世界的に拡大した新型コロナウイルス感染症の影響により、国内外で投資抑制傾向が継続する等、厳しい状況が続きました。こうした中で、中国では上期より経済活動の再開がいち早く進み、製造業の設備投資に持ち直しの動きが見られました。
このような環境のもと、当第3四半期連結累計期間の連結業績の売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、設備投資抑制や納期延伸及び前年同期の大口案件影響により、「電子デバイス」を除く4部門で需要が減少し、前年同期に比べ504億22百万円減少の5,613億10百万円となりました。
損益面では、原価低減及び固定費削減等を推進したものの、売上高、生産高の大幅な減少等により、営業損益は前年同期に比べ27億63百万円減少の140億73百万円、経常損益は前年同期に比べ37億57百万円減少の139億56百万円、親会社株主に帰属する四半期純損益はパワー半導体の特定分野向けの一部の製品の不具合対策費用として166億57百万円を特別損失に計上したこと等により、前年同期に比べ143億17百万円減少の△40億33百万円となりました。
なお、当第3四半期連結会計期間の連結業績は、売上高は「食品流通」の顧客の投資抑制継続及び「発電プラント」の前年同期の大口案件の影響があったものの、「パワエレシステム エネルギー」、「パワエレシステム インダストリー」及び「電子デバイス」における需要が堅調に推移し、前年並みとなりました。営業損益は、パワー半導体の需要増加及び固定費削減等の推進により、前年同期に比べ大幅な増加となりました。
<セグメント別状況>■パワエレシステム エネルギー部門
売上高:1,363億40百万円(前年同期比 6.8%減少) 営業損益:49億78百万円(前年同期比 2億93百万円増加)
全ての分野において売上高は前年同期を下回りましたが、固定費削減の推進や案件差等により、営業損益は前年同期を上回りました。
・エネルギーマネジメント分野は、産業向け電源機器の前年同期大口案件の影響及びスマートメータの需要減少により、売上高は前年同期を下回りましたが、案件差等により、営業損益は前年同期を上回りました。
・施設・電源システム分野は、電機盤の前年同期大口案件影響により、売上高は前年同期を下回りましたが、原価低減等により、営業損益は前年同期を上回りました。
・器具分野は、工作機械をはじめとする国内の機械セットメーカならびに受配電盤メーカの需要減少により、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
■パワエレシステム インダストリー部門
売上高:2,016億円(前年同期比 1.4%減少) 営業損益:23億円(前年同期比 11億59百万円増加)
社会ソリューション分野の需要が増加したものの、国内におけるオートメーション分野の需要減少、設備工事分野及びITソリューション分野の前年同期の大口案件の影響を主因に売上高は前年同期を下回りましたが、原価低減及び固定費削減等の推進により、営業損益は前年同期を上回りました。
・オートメーション分野は、中国において低圧インバータ及びFAコンポーネントの需要が増加したものの、国内における需要が低調に推移し、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・社会ソリューション分野は、鉄道車両用電機品及び船舶用排ガス浄化システムの需要が拡大し、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・設備工事分野は、設備投資計画の延伸や前年同期の電気設備工事の大口案件影響等により、売上高は前年同期を下回りましたが、原価低減等の推進により、営業損益は前年同期を上回りました。
・ITソリューション分野は、前年同期の大口案件の影響により、売上高は前年同期を下回りましたが、案件差等により、営業損益は前年同期を上回りました。
(注)第3四半期連結会計期間より、「船舶用排ガス浄化システム」を「オートメーション分野」から「社会ソリューション分野」に移管しており、前年同期の数値を移管後の分野に組み替えたうえで算出しております。
■電子デバイス部門
売上高:1,123億35百万円(前年同期比 9.5%増加) 営業損益:114億27百万円(前年同期比 24億98百万円増加)
・電子デバイス分野は、電気自動車(xEV)向け、新エネルギー市場向け及び工作機械顧客向けのパワー半導体の需要増加により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■食品流通部門
売上高:540億94百万円(前年同期比 30.4%減少) 営業損益:△44億13百万円(前年同期比 75億8百万円減少)
自販機分野及び店舗流通分野ともに、新型コロナウイルス感染症の影響継続に伴う設備投資抑制や納期延伸等により需要が減少し、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・自販機分野は、国内飲料メーカの設備投資の抑制、ならびに中国の需要減少により、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・店舗流通分野は、コンビニエンスストア向け店舗設備機器等の需要減少により、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
■発電プラント部門
売上高:508億21百万円(前年同期比 26.9%減少) 営業損益:17億53百万円(前年同期比 6億40百万円増加)
・発電プラント分野は、前年同期の火力発電設備及び再生可能エネルギーの大口案件影響により、売上高は前年同期を下回りましたが、営業損益は案件差等により、前年同期を上回りました。
■その他部門
売上高:384億21百万円(前年同期比 15.9%減少) 営業損益:11億75百万円(前年同期比 5億66百万円減少)
(2)財政状態
当第3四半期連結会計期間末の総資産額は1兆789億99百万円となり、前連結会計年度末に比べ821億72百万円増加しました。
流動資産は6,448億45百万円となり、前連結会計年度末に比べ491億53百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ売上債権が456億94百万円減少した一方で、現金及び預金が420億5百万円、たな卸資産が392億36百万円、それぞれ増加したことなどによるものであります。
固定資産は4,340億56百万円となり、前連結会計年度末に比べ330億40百万円増加しました。このうち、有形固定資産と無形固定資産の合計は2,219億43百万円となり、前連結会計年度末に比べ45億56百万円減少しました。また、投資その他の資産は2,121億13百万円となり、前連結会計年度末に比べ375億96百万円増加しました。これは、主に投資有価証券が、その他有価証券の時価評価差額相当分の増加を主因として、460億29百万円増加したことなどによるものであります。
当第3四半期連結会計期間末の負債合計は6,541億35百万円となり、前連結会計年度末に比べ633億10百万円増加しました。
流動負債は4,209億88百万円となり、前連結会計年度末に比べ21億72百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べコマーシャル・ペーパーが515億円増加した一方で、仕入債務が240億56百万円、1年内償還予定の社債が150億円、それぞれ減少したことなどによるものであります。
固定負債は2,331億47百万円となり、前連結会計年度末に比べ654億83百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ長期借入金が586億90百万円増加したことなどによるものであります。
なお、当第3四半期連結会計期間末の有利子負債残高は3,128億81百万円となり、前連結会計年度末に比べ955億17百万円増加しました。また、同残高の総資産に対する比率は29.0%となり、前連結会計年度末に比べ7.2ポイント増加しました。
当第3四半期連結会計期間末の純資産合計は4,248億63百万円となり、前連結会計年度末に比べ188億61百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ利益剰余金が154億94百万円減少した一方で、その他有価証券評価差額金が323億72百万円増加したことなどによるものであります。これらの結果、自己資本比率は35.5%となり、前連結会計年度末に比べ1.2ポイント減少しました。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6)財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第3四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更はありません。
(7)研究開発活動
パワーエレクトロニクス技術やパワー半導体技術のシナジーを生かした強いコンポーネントとシステム並びに要素技術を複合して顧客価値を創出するソリューションを生み出す研究開発に注力しています。
メーカーとしてリアルの技術を磨くとともに、最新のデジタル技術を深化させ、アナリティクス・AIの応用拡大を加速しています。クリーンな創エネルギーからエネルギーの安定供給、需要家サイドに至る自動化、省エネ・省力化などに貢献します。
当第3四半期連結累計期間における富士電機の研究開発費は244億89百万円であり、各部門の研究成果および研究開発費は次のとおりです。
また、当第3四半期連結会計期間末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,257件です。
■パワエレシステム エネルギー部門
電力流通分野では、2021年度に創設される予定の需給調整市場に向け、経済産業省の「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント(VPP)構築実証事業」(2016年度~2020年度)に参画し、DR(Demand Response)や高速な周波数制御の実証試験を実施しています。
器具分野では、「AR22・DR22、AR30・DR30押しボタンスイッチ」を開発し、スプリング端子機器「F-QuiQ」シリーズに加えました。「プッシュイン方式」を採用しているので、より線の先端に取り付けた棒状のフェルール端子を差し込むだけで配線できます。固定用の端子ねじも配線用の工具も不要で誰でも簡単にばらつきなく確実に配線できます。配線工数の削減と作業品質の安定化により、装置や制御盤などの生産効率の向上に大きく貢献します。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は46億46百万円です。
■パワエレシステム インダストリー部門
低圧インバータ分野では、制動エネルギーを電源側に回生するPWMコンバータ「FRENIC-RHCシリーズ」を開発し発売しました。様々な通信プロトコルに対応したオプションカードを揃えています。標準装備したトレースバック機能によりアラーム発生時に保持したデータを使って容易に故障解析ができます。また、最大4台まで並列接続することにより2,800kWまで容量を拡大できます。プラント設備や大容量クレーン、サーボプレスなどの省エネルギー化に貢献します。
小容量電源分野では、制御盤用のAC/DC電源を開発しています。AC100V~240Vの入力電圧に対応し、出力電圧24Vで出力電流10A、20A、40Aの3タイプに対してそれぞれ標準モデルとメンテナンスフリーモデルをラインアップしました。ラックマウントや低背構造、コネクタ接続により制御盤内の電源や配線を従来よりも最大50%省スペース化したことで、より多くの制御機器が設置できます。また、電源の信頼性が要求されるシステムに対応できるよう二重化機能を内蔵しています。2台の電源を並列接続するだけで簡単に冗長運転が可能になり、1台の電源が故障しても制御盤の稼働が継続できます。
FAコンポーネント分野では、高速・高精度な制御が求められる包装機や印刷機、半導体製造装置などのモーションコントロールシステム向けに、多軸同期制御を実現するプログラマブルコントローラ「MICREX-SXシリーズ」の新CPUモジュール「SPH5000M」を開発し発売しました。マルチコアアーキテクチャを採用し、演算処理能力を高めることにより、同一制御周期で同期できる軸(サーボモータ)数を当社従来機種に対して倍増させました。お客様の設備の性能向上に貢献します。さらに、お客様の基幹システムやサーバなどと接続するEthernetポートの伝送速度を1Gbpsに高めることで設備のIoT化を支援し、設備の稼働データ分析や、遠隔地からのリモート監視・制御などを実現します。また、近年の生産設備におけるエッジコンピューティングに対する強いニーズに応えることができる新しいプログラマブル表示器「MONITOUCH X1 Series」を開発し発売しました。Windowsを搭載することにより、プログラマブル表示器の機能に加えて、情報処理端末で行っていた多くの作業をこのプログラマブル表示器1台で行えます。また、日本国内ならびに欧州、中国、東南アジアなどの生産現場で使用されている通信規格に幅広く対応しています。
高圧インバータやパワーコンディショナ(PCS)分野では、大容量(2,500kVA)太陽光発電用PCS「PVI1500CJ-3/2500」を開発し発売しました。日照の少ない時間帯でも発電量を確保するため、PCSの出力容量を超えた太陽光パネルを設置する過積載が一般的になってきています。PCSの定格出力容量に対して設置する太陽光パネル容量の比として定義される過積載率の限度を従来の150%から200%に増やし、さらに低出力時の変換効率を最大3.5ポイント改善することで、さらなる発電量の向上に貢献します。
駆動制御システム分野では、鉄鋼プラントをはじめとする素材産業向けに、高い安全性を規定した新JISに準拠し、保護機能や運転時の監視機能を充実させた低圧インバータ「FRENIC4000VM6」を開発し発売しました。本機種と従来機種「FRENIC4000VM5R」のユニットに互換性を持たせたため、従来機種の部分更新が可能です。高速大容量の専用通信「E-SXバス」を新たに搭載したことで、コントローラと接続できるインバータの台数が従来の8倍に増加し、大規模プラントのシステム構築を容易にします。さらに、「XCS3000TypeE」コントローラと組み合わせることで、ループバック制御により通信線の1か所が断線しても運転継続ができるため、設備の信頼性が向上し、安定稼働を実現します。
鉄道車両分野では、2020年7月から営業運転を開始した東海旅客鉄道株式会社のN700S系新幹線電車向けに、主回路装置(自社製SiCパワー半導体モジュールを使用した主変換装置、主電動機、主変圧器)、および新たに採用されたフルアクティブダンパ駆動装置(インバータ、小型モータ)を開発し納入を開始しました。
放射線機器・システム分野では、海外の原子力関連施設における個人線量管理に用いる電子式個人線量計として、従来のγ線測定用のNRF50に中性子線測定機能を加えたNRF51とβ線測定機能を加えたNRF54を開発し発売しました。大型ドットディスプレイにより視認性が向上しました。標準装備の無線モジュールと汎用通信モジュールにより900MHz無線やWi‐Fi、赤外線通信、USB、Bluetoothなどの多くの通信手段が利用できます。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は70億55百万円です。
■電子デバイス部門
半導体デバイス分野の産業用モジュールでは、低損失で高温動作を保証した最新の第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。電鉄向けに大容量IGBTモジュール「HPnC」の系列化を進めています。内部構造を最適化することで、高速スイッチングの妨げとなる内部インダクタンスを低減した新たなパッケージを開発し、さらなる低損失化と小型・軽量化を実現しました。これにより、車両機器のエネルギー消費量の低減と小型・軽量化に貢献します。
最新の第7世代「Xシリーズ」素子を搭載した650V/20A~75A、1,200V/10A~35Aの「XシリーズIGBT-IPM」を開発し、量産を開始しました。第7世代チップとパッケージ技術に加え、制御回路の改良により、さらなる低損失化と小型化を実現しました。また、従来の保護機能に加え、インバータをはじめとする電力変換装置がIPMの過熱異常により突然停止する前に、出力を抑制するなどの対応ができるようにアラーム信号を出力する予防保全機能を世界で初めて搭載しました。これらの技術や機能により、電力変換装置の小型化や高効率化、高信頼性化を可能にします。
さらに、シリコンに代わる半導体材料として注目されているSiC(炭化ケイ素)を使った産業向けSiCモジュール製品の系列化を進めています。医療用電源などの高周波用途向けに低損失のSiC-SBDと高速スイッチング特性を持つSi-IGBTを組み合わせた1,200V/300A、450A高速ハイブリッドモジュールを開発しました。SiCチップの採用により、電力変換装置の更なる電力効率の向上や小型化に貢献します。
電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の2020年モデル向けに、従来よりもパワー密度を高めた車載用直接水冷型パワーモジュールの量産を開始しました。さらに、小型モータ駆動用の小容量IPM、DC/DCコンバータ用モジュールなど小容量モジュールの系列を拡大しました。これらの製品を通じて、EVやHEVシステム全体の小型軽量化や高効率化に貢献します。
IC製品では、LED照明や液晶テレビなどの電源向けに高周波バースト制御、共振電流位相比制御などの機能を備えたLLC電流共振ICを開発しました。スイッチング周波数に下限を設けた高周波バースト制御の採用により、LLC電源の実際の使用において大半を占める軽負荷領域の変換効率が向上したので電源の省エネが図れます。また、出力電圧のリップルが抑制されるため、負荷の誤動作を防止します。さらに、新たに共振電流位相比制御機能を内蔵したことにより、安定動作のために従来必要であった位相補償用の外付け回路が不要になり、電源部品点数が削減できます。
ディスクリート製品では、車載部品の信頼性規格AEC-Q101に準拠した車載用「Super J MOS S2A シリーズ」に650Vを開発し系列に加えました。オン抵抗とスイッチング損失を低減したことで、車載用DC/DCコンバータや充電器など各種機器の損失低減や高効率化、小型化に貢献します。
感光体分野では、オフィス向け高速モノクロプリンタ用有機感光体を開発し発売しました。高感度な電荷発生材に加え、使用環境の温度や湿度が変化しても感度特性の変動が少ない下引き層を用いることで、長期にわたり安定した画像品質を実現しました。
ディスク媒体分野では、データセンターなどで活用されているニアライン用ハードディスクドライブ18TB機種向け磁気記録媒体(3.5インチ、ガラス基板、2TB/枚)を開発しました。磁性設計およびHDI(ヘッドディスクインタフェース)に新規技術を採用することで、高記録密度と高信頼性を確保しました。これらによりビット単価低減に貢献します。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は76億66百万円です。
■食品流通部門
自販機分野では、新型コロナウイルス感染症の影響でマスクの必要性が高まる中、いつでもどこでも安心してマスクなどの衛生用品を購入できる自動販売機(以下、マスク自販機)を開発し発売しました。マスクのほかに除菌シートなどを販売することもできます。多くの人が集まる商業施設や公共施設、交通機関などへの展開を見込んでいます。マスク自販機は、ボタンや返却レバー、商品の取り出し口などに抗菌処理を施してあります。庫内温度を18℃以下に保つ機能も備え、夏場に冷やしたマスクを販売することもできます。
東南アジア向けの大型グラスフロント自販機を開発し発売しました。商品の収容数を15%増やし、消費電力量を20%削減しました。また、3.5インチ液晶ディスプレーを搭載し、キャッシュレス決済用のQRコードが表示できます。
店舗流通分野では、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の一助となるよう、ノータッチで手指を消毒できる大容量自動手指消毒機を開発し発売しました。消毒液の噴霧量はダイヤルを回すだけで変更できます。5Lの大型消毒液タンクを内蔵し、噴霧量を約2mLとすると1回の補充で2,000回以上使用できます。さらに鍵付きのため消毒液の盗難の恐れがありません。これらにより、多くの人が集まる学校、オフィス、工場、商業施設などへの設置に適した製品となっています。
省エネ性を向上させたショーケースの系列を拡大し、量産を開始しました。CO2排出量を削減するとともに地球温暖化係数が低い冷媒を採用することにより環境負荷を低減し、持続可能でよりよい社会の実現を目指してまいります。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は31億2百万円です。
■発電プラント部門
火力発電分野では、二酸化炭素の排出量を削減するため、蒸気タービンの高効率化の技術を開発しています。また、メンテナンスサービスにおける劣化診断時間を短縮する技術を開発し、診断メニューの拡張を図っています。
再生可能エネルギー分野では、地熱発電の蒸気タービンの汚損抑制や寿命拡大、風力発電では高度の系統連系でも安定した電力供給ができる高効率な出力安定化装置、太陽光発電では安定して電力供給できるコンパクトな蓄電池併用PCSを開発しています。
当第3四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は20億6百万円です。
■新技術・基盤技術部門
今後のCO2削減目標を達成するためには太陽光をはじめとする再生可能エネルギーの導入拡大が必須です。火力発電などで従来から用いられている発電機は、電力の需給バランスがくずれても回転体のもつ慣性の作用により系統周波数の変動を緩和する機能を持っています。しかし、そのような機能がない太陽光発電設備が大量導入されると周波数の維持が困難になります。そこで、太陽光発電用PCSの制御を工夫し、周波数を維持する機能を開発しています。この機能を太陽光発電用PCSに実装し、効果の検証を進めていく予定です。
製造現場のデジタル化を進めるIoTプラットフォームの拡充に取り組んでいます。独自の構造化Deep Learningなどに注力して、説明できるAIを実現する技術を開発しています。また、エッジ機器へ搭載可能なアナリティクス・AI技術を開発しています。
SiCデバイスの性能を向上させるため、大規模な分子動力学計算を用いてデバイス特性を劣化させる欠陥の発生メカニズム解明に取り組んでいます。今後、半導体製造プロセス中の反応工程にも計算科学を適用していく予定です。
■その他部門
当第3四半期連結累計期間におけるその他部門の研究開発費は13百万円です。
(8)設備の新設、除却等の計画
2020年11月13日提出の第145期第2四半期報告書において記載した内容から著しい変更はありません。
(注)上記のうち、将来の経営目標等に関する記載は、本四半期報告書の提出日現在において合理的と判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は、実際の結果とは実質的に異なる可能性があり、当社はこれらの記載のうち、いかなる内容についても、確実性を保証するものではありません。